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MMT(徒手筋力テスト)の看護|判断基準とやり方・方法、注意点7つ

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徒手筋力テスト(MMT)とは、患者の筋力を6段階で判定する方法のことです。MMTは整形外科や脳神経外科で用いられることが多いですが、それ以外の診療科の看護師も基礎知識として覚えておく必要があります。

MMTの意味や目的、結果を正しく理解することで、その患者に合わせたADLアップのためのケア、セルフケアができるような援助を行うことができます。MMTの基本や判断基準、評価表、やり方・方法、看護の注意点をまとめましたので、実際の看護に役立ててください。

 

1、徒手筋力テスト(MMT)とは

徒手筋力テストとはMarual Muscle Testingのことで、MMTと略されます。このMMTは患者の筋力を人の手で判定する方法のことです。患者に筋肉を収縮させることができるか、さらに抵抗を加えられても筋肉の収縮を維持することができるかどうかを6段階で判定します。

MMTの目的は、次の4つがあります。

・筋力の低下の有無・程度を判定する

・診断の補助

・治療効果の判定

・治療の1つの方法

一般的には、MMTは筋力低下の有無や程度を判定しますが、神経の損傷の程度を判定し、神経を損傷した病巣部位や障害の程度を診断するのに役立つこともあります。

また、以前と比べて筋力はアップしたかどうかという治療効果を判定することもできますし、関節運動・筋力運動になりますので、筋力アップのための治療の1つと言うこともできます。

 

2、徒手筋力テスト(MMT)の判断基準

MMTは0~5の6段階で判断します。判断基準は以下の通り1です。

5=Normal:強い抵抗を加えても、運動範囲全体にわたって動かすことができる

4=Good:抵抗を加えても、運動範囲全体にわたって動かすことができる

3=Fair:抵抗を加えなければ、重力に負けず運動範囲全体にわたって動かすことができ

2=Poor:重力がなければ運動範囲全体にわたって動かすことができる

1=Trace :筋の収縮はあるが、関節運動はできない

0=Zero:筋の収縮も関節運動も認められない

この6段階での判断が難しい場合は、+と-を用いて、3+や5-のよう判断・評価することもあります。

 

3、徒手筋力テスト(MMT)の評価表

MMTは評価表を用いて記録していきます。評価表は、その病院・施設によって異なりますが、一般的には以下のような評価表が用いられます。

 左 筋肉部位 支配神経
日付 日付 日付 日付
僧帽筋 C2、C3
三角筋 C5
上腕二頭筋 C5、C6
上腕三頭筋 C6、C7
腕橈骨筋 C5、C6
腸腰筋 L1、L2
大腿四頭筋 L4
大腿二頭筋 L5、S1、S2
前脛骨筋 L4、L5、S1
腓腹筋 L4、L5、S1、S2

日付の下にMMTの結果を記入します。このように左右に分かれていて、日付ごとに記入できるような評価表だと、筋力の変化が一目でわかるようになり、治療やリハビリの効果を判定しやすくなります。またその筋肉を支配する神経がわかれば、神経損傷の部位を特定しやすくなります。

 

4、徒手筋力テストのやり方・方法

MMTは、筋肉ごとに判定します。

 

■僧帽筋

  • 肩を挙上できるかを確認
  • 挙上可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 挙上不可なら仰臥位で挙上できるかを確認し判定

 

■三角筋

  • 腕を水平に保持できるかを確認
  • 保持が可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 保持が不可であれば、仰臥位で水平に保持できるかを確認

 

■上腕二頭筋

  • 前腕回外位で肘を屈曲できるかを確認
  • 屈曲が可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 屈曲不可であれば、テーブルに腕を置いた状態で屈曲できるかを確認

 

■上腕三頭筋

  • 肘を屈曲させた状態から伸展できるかを確認
  • 伸展が可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 伸展不可であれば、テーブルに腕を置いた状態で伸展できるかを確認

 

■腕橈骨筋

  • 前腕回内位と回外位の中間位で肘を屈曲できるかを確認
  • 屈曲が可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 屈曲不可であれば、テーブルに腕を置いた状態で屈曲できるかを確認

 

■腸腰筋

  • 座位の状態で股関節と膝関節を曲げ、さらに股関節を屈曲できるかを確認
  • 屈曲可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 屈曲不可であれば、側臥位で屈曲できるかを確認

 

■大腿四頭筋

  • 座位で膝を伸展さることができるかを確認
  • 伸展可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 伸展不可であれば、側臥位で伸展できるかを確認

 

■大腿二頭筋

  • 腹臥位で膝を屈曲できるかを確認
  • 屈曲可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 屈曲不可であれば、側臥位で屈曲できるかを確認

 

■前脛骨筋

  • 座位で足首を屈曲させる(つま先を持ち上げる・背屈)ことができるかを確認
  • 屈曲可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 屈曲不可なら、側臥位の状態で足首を屈曲できるかを確認

 

■腓腹筋

  • 座位で足底が地面につかない状態で足首を進展させる(つま先を伸ばす・底屈)ことが できるかを確認
  • 伸展可能であればMMT3以上。そこから抵抗を加えて判定
  • 伸展不可なら、側臥位で足首を伸展させられるかを確認

 

5、徒手筋力テストの看護のポイント

MMTは整形外科や脳神経外科、リハビリ科、ICU、救命救急(救急外来)などで用いられることが多いです。医師や理学療法士、作業療法士のほかに、看護師も使いますので、MMTをする時の看護のポイントを押さえておきましょう。

 

■MMTのやり方や目的を説明する

MMTをする時は、患者にやり方やその目的をきちんと説明しなければいけません。看護師側はやり方や目的を把握しているので、つい患者への説明を省いてしまうことがあります。患者にきちんと説明し、協力してもらわないと、正しく測定することができませんので、事前に詳しく説明して、了解を得ることはとても大切です。

 

■プライバシーに配慮する

MMTを行う時にはプライバシーに配慮しましょう。MMTの判定をする部位は筋収縮を見るためにも露出させる必要がありますが、そのほかの部分は露出させないような配慮が必要です。

 

■患者を疲労させない

筋力が低下した患者にとって、全身のMMTを測定することは、とても疲れます。

座位になり、仰臥位になり、左右の側臥位になり、腹臥位になり、のようにMMTを測定するために、体位を変えなければいけませんが、最小限に効率よく行って、患者の負担をできるだけ少なくしましょう。

 

■毎回同じ力で行う

MMT3以上の時は、看護師が抵抗を加えて判定しますが、同一部位には毎回同じ力で抵抗を加えるようにしましょう。そうしないと、判定結果にばらつきが出てきてしまう可能性があります。

 

■意識レベルが低い人は痛み刺激で判定する

MMTは基本的に意識がはっきりしている人、従命動作ができる人に対してのみ行うことができます。

ただ、脳神経外科などで意識レベルが低い人の麻痺の状態を知るためにMMTを行うこともあります。そういう場合は、痛み刺激を与えることで、ある程度判定することができます。痛み刺激に対して、垂直方向に払いのける仕草をすればMMT3以上になります。水平方向に払いのける仕草があればMMT2、筋収縮のみだったらMMT1です。

筋収縮も一切起こらない場合は、意識レベルが低く、痛み刺激に反応しない可能性もありますので、MMT0かどうかの判断は難しいです。

 

■しびれや知覚の有無も確認

MMTは筋力の状態を見るための検査ですが、しびれや知覚の有無も同時に確認しておきましょう。神経損傷や脳疾患等で筋力低下が出ている場合は、しびれや知覚障害が出ていることも多いですから、一緒に確認しておく必要があります。

 

まとめ

MMTの基礎知識や判断基準、評価表、やり方・方法、看護のポイントをまとめました。

MMTは簡単に筋力の評価ができるものです。整形外科や脳神経外科で使われることが多いですが、それ以外の診療科の看護師も看護師なら押さえておくべき知識ですので、しっかりと確認しておきましょう。

 

参考文献

1)徒手筋力検査(大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学|2014年)


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