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静脈注射(IV)が成功するどうかは、穿刺前3つの準備で8割決まる

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静脈注射は看護師の基本技術の一つですが、静脈にアプローチするため採血の手技と重なる部分もあります。短時間で作用の強い薬液を投与することもありますので、正しい手技を覚えることは、リスク管理の面からも非常に重要です。エビデンスとコツを含め、正しい静脈注射の手技をお伝えします。

 

1、静脈注射(IV) (用語)とは

静脈注射とは血管内に直接薬液を注入する方法で、静脈内に入った薬剤は全身から戻った血液と融合し、1分後には動脈を介して全身に達します。

 

<静脈注射を行うのは、どんなとき?>

・経口的に内服できない(意識障害、嚥下障害)

・緊急時(速やかで確実な投与が必要)

・静脈内にのみ投与できる薬剤

 

静脈注射には、その薬液のみを一時的に投与する「ワンショット」と、持続点滴によって時間をかけて投与する「点滴静脈注射」がありますが、どちらも静脈内注射に属します。一般に静脈注射というとワンショットを意味し、その薬剤を投与するためだけに穿刺する場合と、既に確保されているルートから投与する場合があります。臨床現場では静脈内留置針(サーフロー)によってルートを確保したあとで三方活栓から投与することが多いのですが、外来では注射針や翼状針で投与すること場面も多々あります。

 

静脈注射の経路と使用する針の種類をまとめると、以下のようになります。

<静脈注射の経路と使用する針>

○ワンショット 比較的少量(50ml以内)の薬液を一度に投与する
①注射針で直接静脈内に投与

②翼状針で直接静脈内に投与

③留置針で直接静脈内に投与

④持続点滴中の三方活栓から投与(末梢静脈・中心静脈)

○点滴静脈注射 比較的大量の薬液を、時間をかけて投与する
①翼状針を刺して静脈内に投与

②留置針を刺して静脈内に投与

③中心静脈カテーテルから投与

C型肝炎やB型肝炎の治療が発達していなかった時代には、肝庇護薬であるネオファーゲンの静脈内投与を週に3回通わなくてはならない患者が多く、看護師が静脈注射を行う機会は今より多く、日常的な業務でした。近年はこのような投与方法をする機会は減りましたが、看護の基本となる手技の一つですからきちんと基本を理解しておきましょう。

 

2、静脈注射(IV) 看護手順

静脈注射の投与方法には上に示す通りいくつかの経路がありますが、ここでは最も基本となる「注射針で静脈を穿刺し、薬液を投与する」方法をお伝えしていきましょう。

 

<静脈注射の手順>

①必要物品をそろえる

・アルコール綿            ・駆血帯

・処置用シーツ(必要時)      ・注射針(21~23G)

・シリンジ             ・薬液(アンプル・バイアル)

・止血用品(パッド付テープ等)   ・手台もしくは採血枕

・トレー              ・手袋

・針捨て容器

 

②注射伝票と投与する薬液を用意し、2人以上で薬液を確認する。

<絶対覚えておきたい‼ 注射事故防止のための“5R”>

・Right Patient 正しい患者さんか?
・RightTime 正しい時間か?
・RightDrug 正しい薬剤か?
・Right Dose 正しい量か?
・Right Route 正しい方法か?

 

③流水下もしくはアルコール消毒等で衛生学的手洗いを行う。

④所定の量の薬液を吸う。

⑤物品を患者のもとへ持っていく、もしくは患者を処置する部屋へ呼び入れる。

⑥患者本人から名乗る・伝票のバーコードをスキャンする等で名前を確認し、注射の目的や内容を説明する。

⑦薬液・アルコール消毒に対するアレルギーの確認を行う。

⑧手台や採血枕などを調節し、採血部位を探しながら適切な体位をとらせる。

⑨穿刺部位を確定する。

⑩穿刺部位の7~10㎝中枢に駆血帯を巻き、患者に親指を中にして手を握るように声をかける。

⑪患者に声をかけてから、穿刺部位の3 ~5㎝手前の皮膚を自分の方へ引っ張って血管を押さえ、15~20度を目安に穿刺する。

⑫針先に血液が来たのが見えたらシリンジを引き、逆血を確認する。

⑬ゆっくりシリンジを押し、薬液を静脈内に投与する。

⑭抜針し、針は針捨てボックスへ破棄して穿刺部位をアルコール綿で抑える。

⑮止血を確認したら、止血用のテープを貼付する。

(止血確認を待たない場合は、専用の止血バンドを利用するか患者に2~3分しっかり押さえていてもらうように伝える。)

⑯気分不快がないか確認し、患者へ処置が終了したことを説明する。

⑰物品を片づける。

 

3、静脈注射(IV) 部位

静脈注射を成功させるコツは、実は穿刺そのものよりも、刺す前にポイントがあります。この準備を確実にするかどうかで、8割決まると言っても過言ではありません。

<静脈注射 成功のための3つのポイント>

①注射する部位を丁寧に探すこと

②血管の怒張を促すこと

③血管に対してまっすぐに立つこと

 

当たり前のようですが、準備を丁寧に行うことが一番上手に、患者にとって苦痛なく注射するための秘訣です。さっと駆血帯を巻いて一発で刺せたらカッコいいですが、大切なことは確実に・安全に・患者にとって安楽に薬液を投与することです。ですから、穿刺する前に物品だけではなく、患者と自分自身も体勢を整えてから行いましょう。

 

静脈注射をする穿刺部位は基本的には静脈採血と同じで、一般的には下の3つが適しています。

①肘正中皮静脈

②横側皮静脈

③尺側皮静脈

 

静脈注射

引用:看護技術が見えるvol.2臨床看護技術(メディックメディア)

 

これらは比較的血管の怒張しやすい部分ですが、深く刺しすぎてしまうと近くを走行している神経にあたってしまう恐れがあるので、穿刺する際には血管を突き破らないように注意する必要があります。採血時に神経を障害させてしまうことをカウザルギーといい、後遺症を残して訴訟問題に発展することもあります。これを予防するためには、解剖生理を頭に入れ、神経に近い危険な部位での静脈注射を避けることが重要です。

 

中でも絶対に避けなくてはならないのは、手首の橈側皮静脈で、手首を中心とした8~10㎝の範囲は神経損傷の起こりやすい部位となっています。比較的血管が出やすい部位なのでついつい穿刺してしまいたくなりますが、リスクを考慮して他の安全な部位を探しましょう。

穿刺する部位がなかなか見つけられない場合や血管の怒張が弱い場合には、心臓よりも腕を下げる「アームダウン」の姿勢になるようにするとわかりやすくなりますし、更に患者にグーとパーを交互にしてもらうと、より血管が怒張してきます。しっかり血管を怒張させて穿刺部位を確保することが一番のコツです。

そして、穿刺する部位を定めたら、無理のない体勢で行えるようにセッティングします。自分が不自然な恰好で行うと、穿刺に失敗したり薬液をしっかり注入することができないリスクがあります。刺すだけが看護技術ではありません。静脈注射の成功の秘訣は、穿刺前の準備にあるといっても過言ではないのです。

 

4、IV看護師とは

昔は採血や静脈注射、血管確保は看護師が行うことが当然でした。それが時代とともに医師が行うべきでという風潮も出てきましたが、現実問題として医師が全ての穿刺業務を行うことはできません。そこで、抗がん剤や危険な薬物の投与のみ医師が行うように変わり、近年は更に新たな動きが出ています。

「IV看護師」や「IVナース」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?これは、専門的な研修を積んだ静脈注射と血管確保のエキスパートの看護師です。IV看護師は単に穿刺技術の習得にとどまるのではなく、薬液の特性や危険性を認識した上で安全に薬液を投与できる人材でなくてはなりません。まだ各医療機関で研修や認定制度を導入している段階ですが、今後IV看護師の必要性は高くなっていくことでしょう。

 

まとめ

静脈注射は看護の基本となる手技の一つですが、基本や解剖生理をおさえないままに経験だけで実施してしまうと、神経損傷などの後遺症を残したり大きな医療事故になりかねません。エビデンスに基づいた基本技術を頭に入れ、「穿刺前の準備が8割」を意識して経験を積み、確実で安全・安楽な静脈注射を行うことができるようになりましょう。

 

<参考資料>

看護技術が見えるvol.2臨床看護技術(メディックメディア|2013年3月22日)

IVナース(群馬大学医学部看護附属病院看護学部)


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