川崎病は乳児および小児に発生する血管炎の疾患で、学生時代の小児科実習で受け持った人も多いことでしょう。特徴は、高熱や苺舌だけではなく、合併症である冠動脈瘤と血栓の形成にあります。わが子が川崎病と診断された保護者は、合併症や予後に対する不安を抱えています。川崎病の病態を振り返り、患児と児を支える家族(主に母親)に対する看護計画を立案します。
1、川崎病とは
川崎病は、1967年に川崎富作博士が「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」として発表した症候群から、博士の名前をとって川崎病となりました。この病気はアジア系の乳児および1~8歳の小児に発生しやすく(患児の80%は5歳未満)、男女比はおよそ1.5:1というデータがあります。
川崎病は、一言で表すと血管炎です。炎症を起こす部位は冠動脈が最も顕著で、小児でも心筋梗塞を起こす可能性があります。無治療で経過した場合、20%の児に冠動脈障害があるとされています。急性期を脱したのちも、冠動脈に対するフォローが年単位で定期的に必要となります。川崎病の特徴である動脈瘤と血栓を形成していく過程は、以下の通りです。
■川崎病による冠動脈の変化
(1)冠動脈に炎症が起こり、1~2週後に以下のタイプに分かれる
➀血管炎のみで炎症がおさまる ②血管の軽度の拡張(瘤なし、通常3㎜以下) ③瘤の出現 (2)冠動脈瘤の中に血栓ができる(凝固因子の活性化、血小板増加による) (3)瘤が小さくなり、冠動脈狭窄を起こす(瘤を形成するときに血管壁が強く破壊されて肥厚するため、内腔が狭くなる) 発症後1~2年と10年以上経過してから出てくることがあり、冠動脈障害は年数を経るごとに変化していく |
川崎病は、このような血管の変化をきたし、その過程において血栓を形成することが問題となります。治療は、アスピリン内服と免疫グロブリン療法(IGIV)です。アスピリンは血栓形成を予防し、免疫グロブリン療法(ガンマグロブリン療法)は、炎症を抑えてリンパ球や血小板の働きを抑えるために行います。この治療法は現時点で最も効果的な治療法ですが、グロブリンを投与しても冠動脈の狭窄をきたした場合は、十分な血流を確保するための血行再建術が必要となります。
■川崎病の治療
(1)アスピリン内服
(2)免疫グロブリン療法(IGIV) (3)血行再建術 ➀バルーンカテーテルによるインターベンション ②冠動脈バイパス手術 |
2、川崎病の原因
川崎病は比較的新しい病気で、原因はまだはっきりと解明されていません。もともとの体質的な素因の上にウイルスや細菌感染したことがきっかけになり、それを身体が防ごうとする免疫反応の結果であるとされています。
まず、血液中の白血球が何らかの感染源が体内に侵入したことで増加し、血管壁に集まって炎症を起こします。炎症反応が強すぎると、自分自身を攻撃して(白血球から放出される酵素によって)血管壁を傷めてしまいます。そうして脆弱な部分が拡大して、瘤(こぶ)を作ります。この瘤こそが川崎病の冠動脈障害で、後遺症でもあります。
3、川崎病の症状
川崎病というと「苺舌」と覚えている人も多いでしょう。しかし、川崎病の症状は他にも特有のものがありますので、症状と診断基準を合わせてもう一度復習しておきましょう。
■川崎病の症状
➀5日以上続く発熱(38度以上)
➁発疹(蕁麻疹様・多形紅斑様・猩紅熱様) ③両側眼球結膜充血(目が赤くなる) ④唇が赤くなったり、苺のように真っ赤な舌になる ⑤片側の頸部リンパ節腫脹 ➅病気の初期に手足の腫れ、手掌や足底の発赤がみられる |
■特異性の低い症状として
BCG接種部位の発赤、間接の痛み、嘔吐、下痢、腹部膨満、浮腫、尿道炎、無菌性髄膜炎、肝炎、耳炎、胆嚢水腫 など |
■川崎病の診断基準
【定型の川崎病】
上記➀~➅の症状のうち、 ・5つ以上がみられた場合 ・4つの症状しかなくても、冠動脈瘤がみられた場合 【非定型の川崎病】 ・症状はそろわないが、他の病気ではないと判断されたもの |
4、川崎病の看護過程・アセスメント
小児看護の対象は患児だけでなく母1、川崎病 とは
川崎病は、1967年に川崎富作博士が「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」として発表した症候群から、博士の名前をとって川崎病となりました。この病気はアジア系の乳児および1~8歳の小児に発生しやすく(患児の80%は5歳未満)、男女比はおよそ1.5:1というデータがあります。
川崎病は、一言で表すと血管炎です。炎症を起こす部位は冠動脈が最も顕著で、小児でも心筋梗塞を起こす可能性があります。無治療で経過した場合、20%の児に冠動脈障害があるとされています。急性期を脱したのちも、冠動脈に対するフォローが年単位で定期的に必要となります。川崎病の特徴である動脈瘤と血栓を形成していく過程は、以下の通りです。
■川崎病による冠動脈の変化
(1)冠動脈に炎症が起こり、1~2週後に以下のタイプに分かれる
➀血管炎のみで炎症がおさまる ②血管の軽度の拡張(瘤なし、通常3㎜以下) ③瘤の出現 (2)冠動脈瘤の中に血栓ができる(凝固因子の活性化、血小板増加による) (3)瘤が小さくなり、冠動脈狭窄を起こす(瘤を形成するときに血管壁が強く破壊されて肥厚するため、内腔が狭くなる) 発症後1~2年と10年以上経過してから出てくることがあり、冠動脈障害は年数を経るごとに変化していく |
川崎病は、このような血管の変化をきたし、その過程において血栓を形成することが問題となります。治療は、アスピリン内服と免疫グロブリン療法(IGIV)です。アスピリンは血栓形成を予防し、免疫グロブリン療法(ガンマグロブリン療法)は、炎症を抑えてリンパ球や血小板の働きを抑えるために行います。この治療法は現時点で最も効果的な治療法ですが、グロブリンを投与しても冠動脈の狭窄をきたした場合は、十分な血流を確保するための血行再建術が必要となります。
■川崎病の治療
(1)アスピリン内服
(2)免疫グロブリン療法(IGIV) (3)血行再建術 ➀バルーンカテーテルによるインターベンション ②冠動脈バイパス手術 |
5、川崎病の原因
川崎病は比較的新しい病気で、原因はまだはっきりと解明されていません。もともとの体質的な素因の上にウイルスや細菌感染したことがきっかけになり、それを身体が防ごうとする免疫反応の結果であるとされています。
まず、血液中の白血球が何らかの感染源が体内に侵入したことで増加し、血管壁に集まって炎症を起こします。炎症反応が強すぎると、自分自身を攻撃して(白血球から放出される酵素によって)血管壁を傷めてしまいます。そうして脆弱な部分が拡大して、瘤(こぶ)を作ります。この瘤こそが川崎病の冠動脈障害で、後遺症でもあります。
6、川崎病の症状
川崎病というと「苺舌」と覚えている人も多いでしょう。しかし、川崎病の症状は他にも特有のものがありますので、症状と診断基準を合わせてもう一度復習しておきましょう。
■川崎病の症状
➀5日以上続く発熱(38度以上)
➁発疹(蕁麻疹様・多形紅斑様・猩紅熱様) ③両側眼球結膜充血(目が赤くなる) ④唇が赤くなったり、苺のように真っ赤な舌になる ⑤片側の頸部リンパ節腫脹 ➅病気の初期に手足の腫れ、手掌や足底の発赤がみられる |
■特異性の低い症状として
BCG接種部位の発赤、間接の痛み、嘔吐、下痢、腹部膨満、浮腫、尿道炎、無菌性髄膜炎、肝炎、耳炎、胆嚢水腫 など |
■川崎病の診断基準
【定型の川崎病】
上記➀~➅の症状のうち、 ・5つ以上がみられた場合 ・4つの症状しかなくても、冠動脈瘤がみられた場合 【非定型の川崎病】 ・症状はそろわないが、他の病気ではないと判断されたもの |
親を含め周囲の人間にも及びます。また、小児期独自の看護としては、入院中も成長発達を支援するような関わりが必要となります。疾患による症状だけではなく、これらも含めた情報収集とアセスメントを行い、ケア計画につなげる必要があります。収集した情報や病態生理をふまえて全体像からアセスメントしていくと、看護師が介入すべきものとして、以下の問題が考えられると思います。
➀発熱 →血管炎により、抗生剤の効かない高熱が続く
急性期の炎症の程度や持続期間は合併症へ影響する ②合併症による突然死の可能性 →心筋梗塞、その他の冠動脈障害 ③皮膚・粘膜の清潔 →発熱、発疹、口唇の発赤・亀裂、オムツ使用 ④不安・ストレス →入院による処置(点滴など)、環境の変化、行動制限 ➄母親の不安 →合併症や予後に対する不安にケアが必要 ➅成長発達への援助 →トイレトレーニングなど、自宅と同様の発達を援助 |
7、川崎病の看護問題
アセスメントの結果考えられた6つの観点から、下記の看護問題を考えました。
①血管炎による高熱の持続
②発熱や発疹、口腔粘膜の症状により、水分摂取不足、栄養状態が低下する可能性がある ③発熱に伴う発汗・オムツの使用により、皮膚が汚染する ④慣れない環境下や処置・検査の苦痛によるストレスを抱えている ⑤冠動脈の炎症による動脈瘤の形成・血栓形成により、心合併症を起こす可能性がある ⑥急性期症状の持続・予後(心合併症)による母親が不安・ストレスを抱えている ⑦入院による環境の変化や治療上の行動制限により、児の発達が阻害される可能性がある |
この中で最も重要な問題は命に直結する#5ですが、看護師が介入することで改善されるも
の、また優先度を考慮すると、最初に考えるべき看護問題は#2であると考えられます。
8、川崎病の看護目標と看護計画
②発熱や発疹、口腔粘膜の症状により、水分摂取不足、栄養状態が低下する可能性がある
看護目標:1日500ml以上の経口摂取を維持することができる
食事を2/3以上摂取することができる
■看護計画
・O-P
1.バイタルサイン(特に発熱の程度・熱型、解熱薬の効果)
2.口唇の発赤・亀裂・乾燥の有無、程度 3.口腔粘膜・舌の状態 4.食事摂取量・食事形態 5.水分摂取量・水分出納バランス 6.排尿・排便状態(回数・量・性状) 7.血液データ 8.食欲の程度、児の好む食事・水分 9.患児の訴え、表情、行動 10.母親の疾患に対する理解度、飲水・食事摂取への介助の状態 |
・T-P
1.発熱に対し、冷罨法(クーリング)を行う
2.必要時、医師の指示により解熱薬を使用する 3.輸液・薬剤の確実な投与・確認をする 4.食事前後での含嗽(ブラッシングは口腔内の状態により)を行う 5.口唇をワセリンで保護し、乾燥・亀裂の改善を図る 6.食事形態の工夫をする(刺激の少ない物、柔らかいものなど) 7.食間にも細目な水分摂取を促す(母親に対しても声をかける) 8.児の好む食べ物・飲み物があれば、医師に確認して家族に届けてもらう |
・E-P
1.水分摂取の必要性を説明する(児・母親それぞれの理解できる言葉で)
2.口腔内の保清が食事摂取状態にも影響することを説明し、保清の方法を指導する 3.川崎病に特徴的な口唇や舌・口腔粘膜の症状について説明する 4.不安な点や質問があればいつでも相談にのることを伝える |
まとめ
川崎病は心臓の合併症を伴うため、母親の合併症や予後に対する不安は、他の発熱性疾患よりも強いと言えるでしょう。また、児本人の熱発や口腔粘膜の変調による身体的ストレス、検査やグロブリン投与などの各種処置に対する精神的ストレスも、大人が考える以上に大きなものとなります。好発年齢が未就学児に多いことから、看護師は児の成長・発達まで見据えた看護を行う必要があります。
参考文献
[31] 川崎病のはなし(国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス|2002/03/01)
川崎病 (KD)(MSDマニュアル プロフェッショナル版)