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ネフローゼ症候群の看護計画|原因と症状、治療の看護過程と看護問題

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ネフローゼ症候群看護

ネフローゼ症候群とは、高度なタンパク尿と浮腫がみられる状態です。臨床症状から付けられた名称であり、病名ではありません。ネフローゼ症候群の病態と、求められる看護について考えます。

 

1、ネフローゼ症候群とは

ネフローゼ症候群とは、腎臓の糸球体で本来ろ過されるべき蛋白質が、尿中に漏れることによって低蛋白血症をきたし、浮腫を合併する症状の総称です。下の基準を満たすことで、ネフローゼ症候群という診断になります。

 

■成人ネフローゼ症候群の診断基準

➀タンパク尿:3.5g/dlが持続する

(随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5 g/gCr 以上の場合もこれに準ずる)。

②低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dl

(血清総蛋白しか測定されていない場合には血清総蛋白6.0 g/日以下でもよい)

③浮腫

④脂質異常症(高LDLコレステロール血症)

 

注1)➀②の両条件を認めること

注2)③は必須条件ではないが、重要な所見である

注3)④は必須条件ではない

注4)卵円形脂肪体は本症候群の診断の参考となる

(平成22年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害に関する調査研究班)

 

2、ネフローゼ症候群の原因

ネフローゼ症候群は、本来腎臓の糸球体でろ過されるはずの蛋白が出てくる、タンパク尿が特徴です。他の症状は、タンパク尿から不随してきた症状とも言えます。そして、蛋白が漏れ出て来てしまう理由は、大きく2つに分けることができます。1つは糸球体そのものの病気で、これを「一次性糸球体疾患」もしくは「一次性ネフローゼ症候群」といいます。もう1つは、別の病気(全身の病気)によって腎障害が出てしまった場合で、こちらを「二次性糸球体疾患」もしくは「二次性ネフローゼ症候群」と言います。ネフローゼ症候群は年齢を問わず一次性が多く、子どもで90%以上、大人で70~80%といわれています。

 

2-1、ネフローゼ症候群をきたす疾患

■一次性糸球体疾患:腎臓そのものの疾患

1.微小糸球体病変

2.巣状分節性糸球体硬化症

3.慢性糸球体腎炎

(1)膜性糸球体腎炎(膜性腎症)

(2)増殖性糸球体腎炎

1)メサンギウム増殖性糸球体腎炎

IgA 腎症(WHO分類では二次性、日本では一次性に分類されている)

2)管内増殖性糸球体腎炎

3)膜性増殖性糸球体腎炎

4)管外増殖性糸球体腎炎(半月体形成性糸球体腎炎)

(3)硬化性糸球体腎炎

  1. 分類不能の糸球体腎炎

 

■二次性糸球体疾患:別の病気(全身性)による腎障害

1.全身性疾患に伴うもの

(1)ループス腎炎

(2)Schonlein-Hwnoch(シェーンライン ヘノッホ)紫斑病性腎炎

2.代謝性疾患に関連するもの

(1)糖尿病性腎症

(2)アミロイドーシス

(3) fibrillary glomerulonephritis

(4)クリオグロブリン血症

(5)dense deposit 病(膜性増殖性糸球体腎炎II 型)

3.遺伝疾患

(1)Alport 症候群

(2)菲薄基底膜症候群

 

これらの疾患は、ネフローゼ症候群をきたす疾患の中のごく一部です。原因疾患として一番多いのは慢性糸球体腎炎です。

 

3、ネフローゼ症候群の症状

ネフローゼ症候群は、タンパク尿と低アルブミン血症が起こります。ですから、症状として現れるのは、タンパクの喪失に起因するものになります。タンパク尿の程度と浮腫の程度は一致しませんが、体重が5kg以上増加する全身浮腫を起こすと、腹水や胸水・肺水腫を呈するようになります。(ここまで浮腫がひどくなると、一時的に人工透析で水分を取り除く必要があります。)

 

■ネフローゼの症状

・食欲不振

・倦怠感

・泡沫尿(高濃度のタンパクに起因)

・全身浮腫(特に下肢)

・呼吸困難(胸水または喉頭浮腫)

・関節痛(関節水腫)

・腹痛(腹水または小児においては腸間膜浮腫)

・脂質異常症

・凝固線溶系異常(それに伴う血栓症)

・免疫異常症(それに伴う感染症)

 

4、ネフローゼ症候群の治療法

ネフローゼ症候群の治療は、原因となる疾患の治療でもあります。ですから、治療はさまざまです。たとえば、糖尿病からくるものなら血糖コントロールは欠かせません。腎臓の糸球体そのものの病気である一次性ネフローゼ症候群の治療は、①安静②食事療法③薬物療法になります。

 

■ネフローゼ症候群の治療

➀安静

入院によるベッド上安静で、腎血流の増加による腎保護と、浮腫の軽減を図ります。

 

②食事療法

浮腫軽減のため、塩分制限が必須です。また、蛋白制限は過去には推奨されていましたが、現在は否定的(蛋白制限食の有効性に関するエビデンスが十分ではない)で、

(1)微小変化型ネフローゼ症候群患者では 1.0~1.1 g/kg 標準体重/日

(2)微小変化型ネフローゼ症候群以外のネフローゼ症候群患者では 0.8 g/kg 標準体重/日が推奨されています。

総カロリー摂取量は、窒素バランスを保つため、35 kcal/kg 標準体重/日が推奨されています。

 

③薬物療法

副腎皮質ステロイドホルモン:腎臓に対する抗炎症作用

免疫抑制剤:ステロイドで状態の改善がない場合使用

利尿薬:浮腫に対する対症療法として

ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬:腎臓の保護目的

スタチン:高LDLコレステロール血症に対して

抗血小板薬:血栓症に対して

 

④血液浄化療法

ステロイド療法や免疫抑制剤の投与でも状態改善のない難治性ネフローゼ症候群の場合、血漿交換療法や血液浄化療法を行うことがあります。

 

5、ネフローゼ症候群の看護過程の展開

5-1、アセスメント

タンパク尿を起こす原因となる糸球体疾患への治療には、ステロイドや免疫抑制剤を使用するため感染対策が必要です。また、全身浮腫を起こすことから浮腫に対する症状緩和も看護師に求められます。ネフローゼ症候群は寛解と再発を繰り返すため、退院後の生活も自己管理する必要があります。疾患・治療に対する指導も、入院中の看護に取り入れたい内容です。これらをふまえると、下記の看護問題が考えられます。

 

#1低アルブミン血症による浮腫が出現し、倦怠感・違和感がある

#2低アルブミン血症、ステロイド・免疫抑制剤の使用によって易感染状態にある

#3ステロイド療法による副作用が出現する可能性がある

#4安静・食事制限・治療の長期化による、精神的ストレス

#5今後の治療に対する不安

#6浮腫・低アルブミン血症による皮膚損傷を起こす可能性がある

 

原因疾患によってステロイドの使用量や安静・食事制限の程度も異なりますが、ネフローゼ症候群の患者の治療で最も重要な#2について計画していきます。

 

5-2、看護計画

■看護問題

#2低アルブミン血症、ステロイド・免疫抑制剤の使用によって易感染状態にある

 

■看護目標

感染を避け、退院まで感染徴候(発熱・WBC上昇・CRP上昇)なく過ごすことができる

 

OP(観察項目)

1.バイタルサイン(特に体温・呼吸数)

2.皮膚の状態(発赤・腫脹・創傷の有無)

3.浮腫の程度(下肢・上肢・顔面・眼瞼など)

4.感冒症状(咳嗽・鼻汁・咽頭痛・嗄声・頭痛)

5.採血データ(WBC・CRPの上昇、TPの低下)

6.尿中蛋白、尿中白血球・尿量

7.画像データ(胸部レントゲン・胸部CT)

8.倦怠感の有無・程度

9.食事摂取量

10.体重の増減

 

TP(ケア項目)

1.食前に手洗いと含嗽をする

2.食後に口腔内の保清・含嗽する

3.確実に内服したか確認する

4.同室者・面会者に感染症の可能性がある場合、隔離・保護する

5.爪が長い場合は切る

6.入浴やシャワー浴ができない場合、清拭・陰部洗浄を行う

7.皮膚に創傷がある場合、医師へ報告し指示通りの処置を行う

8.下肢を挙上する

9.利尿剤投与時など、必要に応じてトイレ介助・ポータブルトイレを設置する

10.医師の指示により、膀胱留置カテーテルを挿入・管理する

 

EP(指導・教育項目)

1.感染予防の必要性を説明する

2.食事毎の口腔内の保清と含嗽を声掛け・指導する3.安静の必要性を説明する

4.食事療法の必要性を説明する

 

まとめ

ネフローゼ症候群は、低アルブミン血症によって起こるそれぞれの症状に対するケア、治療によって易感染性に対する感染予防が、入院中の看護の要となります。また、患者への教育的な関わりも多いのが、ネフローゼ症候群の患者への関わりの特徴です。

 

参考文献

ネフローゼ症候群診療指針  <完全版>(厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班|難治性ネフローゼ症候群分科会|2012)

一次性ネフローゼ症候群(指定難病222)(難病情報センター|2015/08/17)

ネフローゼ症候群の原因(MSDマニュアル プロフェッショナル版)


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