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高血圧(HT)の看護|症状の観察項目とアセスメント、看護問題、看護計画

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高血圧看護

日本で男女ともに通院者数も最も高い原因疾病である高血圧症。高血圧は、腎血管性、内分泌性など原因が明らかな二次性高血圧と、それ以外の本態性高血圧症に分けられ、一般に40歳以上では80~90%が本態性高血圧症と言われています。高血圧症を合併している患者に出会うことは良くあること。ここでしっかり高血圧症の観察ポイントを押さえて、日ごろのケアの質をアップさせましょう。

 

1、高血圧(HT)とは

血圧とは、血流が動脈血管に与える圧力の大きさのことで、心拍出量と末梢血管抵抗の2つで規定されています。血圧の方程式は

 

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗

 

と定めることができます。心拍出量とは1分間に拍出される血液量で、通常成人で4~5Lはあります。末梢抵抗とは血圧の流れにくさをいい、心拍出量が増大するか、あるいは末梢血管抵抗が増大すれば血圧が上昇します。日本高血圧治療ガイドライン2009では、軽症高血圧以上の高血圧の基準を140/90mmHg以上と定めていますが、さらにくわしい血圧の基準は以下の図を参照してください。

高血圧の看護

出典元:全国健康保険協会 協会けんぽ

 

血圧測定のポイントについては、「血圧測定の看護|水銀血圧計での測定方法と手順やコツ」をご覧ください。

高血圧とは、持続的に血圧が高い状態をいいます。高血圧は腎血管性、内分泌性などの原因疾患が明らかな二次性高血圧と、それ以外の本態性高血圧に分けられ、一般に40歳以上では80~90%が本態性高血圧です。本態性高血圧の原因は、遺伝や環境にあるといわれており、環境要因としては、過剰な食塩摂取、過体重、アルコール、喫煙などが挙げられます。また、本態性高血圧の中には、診察室の白衣を見ただけで高血圧になる白衣高血圧も含まれます。一方内分泌性の二次性高血圧として代表的なものには、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群があり、腎性高血圧は腎臓そのものの疾患が原因の腎実質性高血圧と、腎動脈狭窄などによる腎血流減少でレニンが分泌され、血圧が上昇する腎血管性高血圧に分かれます。高血圧のこわいところは、多臓器への影響が大きく、心臓、脳、腎臓、眼などに血管障害を引き起こし、動脈硬化が進行すれば狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、眼底出血などにもなりえるのです。そしてこれらの疾患は要介護状態を引き起こす要因となり、超高齢化社会に突入した日本の社会的問題でもあります。

 

2、高血圧の症状

高血圧の一般症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こりなど様々で、精神的・身体的ストレス、あるいはストレスの結果生じた首や肩の筋緊張による頭痛や肩こりがもとで血圧が上がっていることも多いです。無症状という患者も多々います。なお急激な血圧上昇により、脳、心臓、腎臓などの臓器障害をきたす高血圧緊急症の場合は、嘔吐、複視、頭痛、頭重、意識障害、乏尿などをきたし、脳出血、大動脈解離、高血圧性脳症を合併することもあるので注意が必要です。

 

3、高血圧の症状アセスメント

多くの場合、高血圧患者は無症状のことが多いため、看護アセスメントにおいては心血管病の危険因子を含めた健康歴、血圧コントロールの実際、検査データ、生活習慣に着目していきます。

 

目的 アセスメント項目 備考
1、身体的側面

1) 高血圧のコントロール状況をアセスメントする

2) 高血圧による心血管系合併症の徴候をアセスメントする

理学的データ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

検査データ

①    血液・一般尿検査

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②    呼吸・循環・血管系薬剤

 

 

 

③    腎・泌尿器系

④    脳神経系

 

 

⑤    2次性高血圧スクリーニングのための検査

 

バイタルサイン

血圧(診察室・外来血圧、家庭血圧測定、24時間自由行動した血圧測定)

バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸、意識レベル)

身長・体重・肥満度(BMI)、腹囲

眼底所見

甲状腺腫・頸静脈怒張の有無と程度

心雑音:Ⅲ音とⅣ音の有無

 

尿(タンパク、赤血球、白血球、糖)

赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット

血液生化学検査(尿酸値、中性脂肪、LDL・HDL・総コレステロール、空腹時血糖、HbA1c、Na、K、Cl、Ca、総タンパク、ALT、AST、γ-GTP、LDH、ビリルビンなど)

胸部X線写真、心電図、心エコー、頸動脈エコー、ABI、PWV、AugmentationIndex、高感度CRP

BUN、クレアチニン、尿中微量アルブミン排泄量

 

血圧に影響を与える薬剤(甘草、非ステロイド抗炎症薬、経口避妊薬およびシクロスポリン)の確認

体温、脈拍、血圧、呼吸数、身長、体重、肥満度(BMI)

がいらいにおける血圧測定の際は、5分間以上の安静坐位後に行う。また一過性の血圧上昇を招くため30分以内のカフェインの摂取、喫煙を控える。

初診時および入院時は、必ず左右上肢の血圧を測定する。

家庭血圧・ABPMで得られる情報:白衣高血圧:逆白衣高血圧・早期高血圧・夜間高血圧(ABPMによる睡眠時血圧を夜間血圧と呼ぶ)

 

2、日常生活の側面

1)血圧のコントロールおよび生活習慣の修正が日常生活に及ぼす影響をアセスメントする

食事

 

 

 

排泄

 

 

 

 

 

 

睡眠

 

 

 

清潔

運動

 

 

喫煙の有無・程度

 

 

日常生活動作

 

趣味・余暇活動

 

 

セルフケア能力

 

 

食事内容(回数、量)、食欲、水分摂取量、塩分・脂質を多く含む食事についての嗜好

排尿回数、排尿量と性状

排便回数、便の固さ、排便習慣の工夫(その人なりの工夫)、下剤・整腸剤使用の有無と程度

睡眠時間、熱器や目覚めの状況、睡眠薬・精神安定薬使用の有無と程度

入浴の有無

運動習慣の有無とその内容(運動の種類、運動強度、回数、時間)

ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)

どのような動きが障害されているか

どのような趣味・余暇活動を行っているか、患者が行っている工夫

日常生活において自分でできることとできないことを把握する

調理を行う人、家族の嗜好についても確認する(塩分や油の多い食事を好むものかなど)。

 

便が固く、排便時「いきむ」ことで一過性に血圧が上がる

3、認知・心理的側面

1)疾患及び治療、生活習慣修正に向けた取り組みが心理状態に及ぼす影響をアセスメントする

理解力および受け止め

 

 

 

 

 

 

価値観

 

対処方法

 

心理状態

①    疾患及び心血管病危険因子、治療およびその副作用をどのように理解し、しれを受け止めているか

②    指導するうえで必要な理解力

何に価値をおき、何を大切にしているか

これまで問題にどのように対処してきたか

いらだち、不安、抑うつの有無や程度、認知症の有無・程度

4、社会・経済的側面

1)疾患及び治療、生活習慣修正に向けた取り組みが社会・経済状態に及ぼす影響をアセスメントする

職業

 

 

 

役割

 

ソーシャルサポート

 

経済状態

 

 

 

家族構成

 

 

 

キーパーソン

 

 

家族の状態

就業の有無、仕事内容、勤務時間、労働量、通勤時間・手段、職場環境や人間関係

家庭における役割、職場における地位・役割

友人・同僚・知人などのサポートの有無

医療保険の種類、民間保険の加入の有無、医療費の支払能力の有無、程度

何人暮らしか

家屋の状況(階段、手すりなどのバリアフリーの状況)

家族または周囲の人のなかでのキーパーソンは誰か

家族の病気や治療の理解力および受け止め、協力体制の状態

 

出典元:成人看護学慢性期看護 病気とともに生活する人を支える|株式会社南江堂

 

4、高血圧の看護計画

4-1、非効果的自己健康管理

■看護目標:血圧のコントロールが行え、症状が軽減したと感じることができる

 

■観察項目

・処方された薬が確実に内服できているか

・降圧剤の副作用

・血圧

・頭痛、肩こり、めまいなど高血圧症状の有無

・家庭や社会での役割

・睡眠時間

・食事内容

・現状の理解度

・検査データ(尿酸値、中性脂肪、LDL・HDL・総コレステロール、空腹時血糖、HbA1c、Na、K、Cl、Ca、総タンパク、ALT、AST、γ-GTP、LDH、ビリルビン)

・健康管理への意欲

 

■ケア項目

・医師の指示に従い運動プログラムへの参加を促す

・医師の指示に従い塩分制限実施(1日6g未満とする)

・栄養指導(個別指導、集団指導)への参加を促す

・高血圧及び高血圧による合併症についての理解を促す

・適正体重維持に努める

・医師の指示に従いアルコール制限実施

・排便時血圧上昇予防のため適時浣腸緩下剤使用

・性生活について話しやすい環境づくりを行う

 

■指導項目

・患者がセルフモニタリングしやすいようなグラフ、レイアウトを提案する

・禁煙指導実施

・長風呂は控え、ややぬるめのお湯(38~42℃)で5~10分浸かるよう説明する

・定期的な受診や緊急時の対応について説明する

・家族にも高血圧症状や健康管理について説明する

 

まとめ

無症状なことが多いうえに、いざ管理するとなると難しい高血圧症。生活を変えていくことに大きなストレスを抱える患者も多々おり、なにかのきっかけで治療を断念してしまうことも。治療を続けるには患者だけではなくその家族、職場の協力も必要不可欠です。患者が家に帰った後どのような生活を営んでいけばいいのか具体的にイメージできるよう、協力して生活指導をしていきましょう。

 

参考文献

成人看護学慢性期看護 病気とともに生活する人を支える|株式会社南江堂(鈴木久美、野澤明子、森一恵|232-240 2012年8月20日)

看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊| C-82-83平成27年3月19日)


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