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 尿閉(排尿障害)の看護計画|尿閉の原因と治療、看護目標、看護問題

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尿閉看護

普段何気なく行っている排泄行動は、実は時間をかけて、失敗をしながら確立したことを私たちは忘れがちです。排泄動作の学びは生まれてからすぐに始まります。新生児は、排泄後の快の感覚を学び、また排泄後に感じるおむつが濡れた不快な感覚を覚えます。幼児期には、失敗を繰り返しながら、尿意を感じ、トイレで我慢して、ズボンを汚さずに脱ぎ、排尿できるようになります。体の発達ともに、確立されていくのが排泄動作です。一旦確立されると、排泄行動は意識をせず行えます。しかし、加齢や疾患などにより排泄が障害されることがあります。今回は、尿閉という膀胱に尿が貯留しているにもかかわらず、排泄されない異常に対しての看護の介入方法を考えたいと思います。

 

1、尿閉(排尿障害)

排泄とは、人間の生態としてホメオスタシス(恒常性)を保ち、生きていくうえで欠くことのできない行為です。外界から栄養素や酸素を取り入れた後、不要になった代謝産物や有害物質を対外に排出することで、生命を維持しています。尿は腎臓で生成され、血液中に取り込まれた水分と老廃物が糸球体でろ過されます。量として、150リットル/日と想像以上の量です。しかし、水分や必要なアミノ酸や糖は再利用されるため、1~1.5リットル/日が実際に尿として排泄される量になります。厚生労働省によると、尿閉は膀胱に充満した尿が、尿意があっても排尿できない状態のことをいいます。

 

2、尿閉の原因

尿閉の原因を理解するうえで大切なのが、膀胱の収縮と尿道抵抗のバランスです。腎臓で正常な尿を作っても、膀胱が収縮し膀胱の出口が開くことが必要です。しかし、何らかの原因尿道抵抗が高くなり、膀胱の出口が十分に開かなければ、膀胱が収縮しているにも関わらず尿が排泄できない状態になります。尿道の閉鎖疾患でもっとも多い疾患は男性の場合は、前立腺疾患です。そして、男性と女性に共通する尿閉の原因の一つに、膀胱の収縮と尿道の動きを調整する神経の障害により起こる神経因性膀胱があります。

尿閉の原因

出典:日本泌尿器科学会

 

2-1、尿閉の原因

主な要因を以下の表にまとめました。

 

下部の尿路閉鎖 ・前立腺肥大

・前立腺癌

・前立腺炎

・尿道狭窄

・膀胱頸部狭窄(拘縮など)

・排尿括約筋の疾患

・膀胱瘤

・尿道癌・尿道の腫瘍など尿道の疾患

・手術の合併症(麻酔後など)

排尿筋収縮障害 ・糖尿病性末梢神経障害による神経因性膀胱

・腰部椎間板ヘルニアによる神経因性膀胱

・ 腰部脊椎管狭窄症による神経因性膀胱 二分脊椎症による神経因性膀胱 ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群による 神経因性膀胱

・直腸癌根治手術後の神経因性膀胱

・子宮癌根治手術後の神経因性膀胱

・加齢による膀胱収縮障害

・ 長期下部尿路閉塞に伴う膀胱収縮障害 など

・事故や手術による骨盤神経の損傷

薬の副作用

 

 

・抗コリン作用を持つ薬剤(セロクエル・レペタン)

・抗不安薬や鎮静に使用される中枢性筋弛緩作用を持つ薬剤(ニトラゼパム・ハルラック)

・アルツハイマー型認知症治療薬(アリセプトD錠)

出典:重篤副作用疾患別対応マニュアル(尿閉・排尿困難)

 

尿閉は、この表以外の薬剤でも起こります。新しい薬剤を投与された患者が尿閉を起こしたら、その都度薬剤の副作用を調べることが大切になります。

 

3、尿閉の治療法

治療を早期に始めるためには、早期発見が大切になります。まず、状態の変化を患者の表情、言動、そして身体から見つけましょう。認知症がある患者は、自分の体の不調をそのまま表現することが困難なことがあります。不眠やせん妄などの落ち着きのなさや不明言動もアセスメントの重要な情報となります。尿量の減少や下腹部の膨隆があったら、医師に直ちに報告しましょう。医師による、エコーなどは外見などではわかりにくい尿の潮流を診断できます。また、一時的導尿から残尿を測定したデータは、看護目標の一つの指標となります。尿閉のもっとも多い原因の前立腺肥大の治療には、下記の疾患のグレードによって分かれる下記の治療選択があります。

尿閉の治療法

出典: 上尾中央総合病院

 

■治療方法

内服薬 ・α1アドレナリン受容体遮断薬(タムスロシンなど)

・5α還元酵素阻害薬(デュタステリドなど)

・抗アンドロゲン(クロマジノン)

外科治療(手術療法) ・開放手術(古典的な手技で解放性に線種を核出する。)

・経尿道的前立腺切除術TURP: transurethral resection of the prostate(最も広く行われている主義で、中等症までの前立腺肥大が適応。効果の持続性も高い。)

・経尿動的前立腺切開術:TUIP(5時と7時で膀胱頸部から前立腺尖端までを切開し、前立腺尿道を開大させる方法。比較的小さな前立腺が対象となる。)

・生理食塩水還流経尿道的前立腺切除術(ほかの治療と効果は同等で、低ナトリウム血症の発症頻度が低い。)

・ホルミウムレーザー前立腺摘出術:HoLEP(前立腺体積によらず適応が可能。合併症を含めて、開腹手術やTURPとの比較で明らかに劣る点はない。)

そのほか ・尿道ステント(合併症も多いが、手術治療や低侵襲治療が困難なハイリスク症例に適応。)

出典:前立腺肥大症診療ガイドライン

 

■HoLEP とTURPの違い

HoLEPとTURPの違い

■HoLEP治療手段

HoLEP治療手段①

 

 

 

 

HoLEP治療手段②

 

 

 

 

HoLEP治療手段③

出典: 上尾中央総合病院

 

もう一つの神経性膀胱の治療は、前立腺肥大症とは違い根本的に治る外科的治療はありません。排尿障害に対しては、手で下腹部を圧迫し腹圧を利用する排尿訓練や排尿筋の収縮力を強くする目的で、副交感刺激役を使用することもあります。それでも、排尿が困難な場合は、間欠自己導尿や尿道留置カテーテルを使用します。

 

4、尿閉の看護問題

・前立腺肥大による尿道狭窄

・膀胱括約筋の弛緩

・手術侵襲による骨盤神経・陰部神経損傷・膀胱括約筋への影響に伴う羞恥心

・排泄行動の変化、尿失禁に伴う羞恥心

・術後の麻酔の影響、症状安静による腹圧の低下

・なれない環境に伴う精神的ストレス

 

5、尿閉の看護目標

・その人のあった排尿パターンが確立できる(例、残尿が50ml以下になる。)

・排尿障害に対してのセルフマネジメントができる(水分管理・服薬・清潔保持など)

 

6、尿閉の看護計画

■観察計画

・入院前後の排尿パターン

・既往歴・病状

・排尿の状態:回数、時間、一回尿量、排尿時痛、残尿感、排泄困難

・疾患・治療の状況・術式

・麻酔の影響や安静度

・飲水量、食事内容

・尿意の感じ方:尿意の有無、下腹部痛、下腹部の重い感じ、下腹部膨満感、排尿を我慢できるかどうか

・残尿感と残尿測定の結果、尿失禁の有無

・排尿動作:剤・立位バランス・手技動作・腹圧の程度

・発熱の有無の検査データ(WBC,CRP,尿細菌検査、X線、腹部超音波)

・排泄環境(これまでの排尿設備、和式、様式、ポータブルトイレ使用の有無)

・睡眠状況

・ストレスの有無

・排尿障害に対するセルフマネジメント

・排尿障害のセルフマネジメントが困難な場合の支援状況

 

■ケア計画

・排尿パターン障害についてアセスメントする

・排尿パターンの確立

・ゆったりとした気分で排尿するような環境の調整

・排尿しやすい体位の工夫(便座に座った時かかとを挙げ、前かがみになるなど)

・定期的に排尿を促しトイレに誘導する

・尿量を確保するために、飲水量を決め、定期的に促す

・患者の生活にあった水分量と排尿パターンに近づける

 

■教育計画

・患者にあった排尿パターン確立の必要性と方法について説明する。例えば、体位の工夫や飲水の方法と量

・排尿パターンを把握するために、排尿日記、(尿回数、夜間尿の有無、回数、水分量)をつけることを説明する

・下腹部や骨盤の手術など排尿障害が予測される場合には、術後の様子がイメージできるように、術前に排尿障害とその対処方法を説明する。

 

まとめ

排泄行動は、プライベートのことであって本来はほかの誰かに見せることはありません。自尊心が傷つき、心理社会的側面に大きく影響を受ける可能性があります。そのため、患者は、医療者や家族が介入することに対して、羞恥心を持つことが多いと思います。そのため、介入するためには、日々のかかわりの中で患者との信頼関係を築くことが必要になります。そして、プライバシーを配慮しながらアセスメントを行いましょう。排尿環境を整え、セルフマネジメントができるように健康教育を行い、患者を支えることが大事になります。

 

参考文献

基準看護計画第3版―臨床でよく出会う看護診断、潜在的合併症(矢田昭子|186-194|2016/06/30)

日本泌尿器科学会/編:前立腺肥大症診察ガイドライン(日本泌尿器科学会|2011/06/25)

重篤副作用疾患別対応マニュアル~尿閉・排尿障害~(厚生労働省|2009/05)


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