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倦怠感の看護計画|倦怠感を引き起こす原因と看護問題とケア

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倦怠感看護

ストレス過多の現代人にとって、疲労感・倦怠感を避けることはなかなか難しく、慢性疲労に悩んでいる現代人の割合は40パーセントに上るとも言われています。しかし、たかが倦怠感といって見逃していると、背景にはうつ病、糖尿病、肝炎など重大な疾患が隠れていることもありますので、原因疾患を突き止めることが重要です。

 

1、倦怠感とは

倦怠感とは、体全体が疲れている、または疲れやすい状態をさします。体の疲れには2つあり、運動時に起こる筋肉の疲労である末梢疲労と、脳の疲労である中枢性疲労に分けられます。末梢疲労では身体的なだるさが現れ、中枢性疲労では無気力などの精神症状が現れますが、どちらの疲労にも共通して働くメカニズム(疲労を感じる神経回路のようなもの)があり、そこに様々な修飾が及んでいると考えられています。この神経回路については、トリプトファン・セロトニン仮設など様々な研究がなされており、達成感や日内変動とも密に関係していると報告されています。十分な休息をとり回復する疲労であれば、生理的な疲労であるため問題ないですが、回復しない疲労は疾患が関係していることがあるので注意が必要です。

 

2、倦怠感の原因

倦怠感の原因には、不規則な生活や過労、睡眠不足や精神的ストレスなどの日常生活から引き起こされるばかりでなく、貧血や風邪やインフルエンザなどの感染症、肝炎、更年期障害、睡眠時無呼吸症候群、精神疾患、ビタミン欠乏症、糖尿病などの疾患から症状が出てくることがあります。以下、各疾患ごとになぜ倦怠感が出るのかをまとめました。

■貧血

貧血とは末梢血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態をさします。貧血の基準値は以下の通りです。

 

分類 ヘモグロビン濃度
成人男性 13g/dL未満
成人女性

小児(6~14歳)

12g/dL未満
妊婦

幼児(6か月から6歳)

11g/dL未満

出典:看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|G-22 2015/03/09)

貧血でヘモグロビン濃度が減少すると、体内が慢性的な酸素不足に陥るため全身倦怠感が現れます。

 

■インフルエンザ

インフルエンザは上気道粘膜から主に感染し、典型的な症状として38度を超える発熱、上気道炎症状、全身倦怠感、筋肉・関節痛を生じます。ウイルスに感染すると、体内の免疫機構が活性化されるため発熱や倦怠感を生じます。

 

■急性肝炎、慢性肝炎

肝細胞内で増殖するウイルスにより、発熱や全身倦怠感が現れます。急性肝炎では前駆期にインフルエンザ様症状(発熱、全身倦怠感、悪心嘔吐、食欲不振、腹部鈍痛)があり、黄疸期には皮膚掻痒感、黄疸、肝腫大が生じます。慢性肝炎では全身倦怠感のほかに自覚症状は少なく、食欲不振、熱感などの風邪症状程度しか現れません。

 

■更年期障害

更年期とは、卵巣機能が減退し消失するまでの時期(閉経前後数年)のことをさします。更年期障害は器質的疾患がないにもかかわらず、自律神経失調を中心としたさまざまな不定愁訴がみられる症候群です。更年期ではエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌低下と社会的・心理的要因により、自律神経失調症状、精神神経症状のほか、全身倦怠感や肩こり、腰痛が出現します。自律神経失調症状にはのぼせ、顔面紅潮、発汗、頭痛、めまいなどの症状が、精神神経症状には憂鬱感、いらいら、不安、不眠、記憶力低下などの症状がみとめられるようになります。

倦怠感の看護

出典:更年期障害とは(つのだレディースクリニック)

 

■睡眠時無呼吸症候群

睡眠1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上で、無呼吸に伴う自他覚所見を伴う場合を睡眠時無呼吸症候群といいます。

 

AHI:睡眠時の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の和

(単位:回/時間)

 

睡眠時に無呼吸が繰り返され、夜間の覚醒、深睡眠の減少により日中の眠気や倦怠感を伴います。

 

■精神疾患

気分の安定に関連する神経伝達物質のひとつであるセロトニンや、ノルアドレナリンの脳内代謝異常、遺伝・性格・ストレスにより発症するうつ病。抑うつ気分、興味や喜びがなくなる精神症状だけではなく、疲れやすい、体がだるいなどの身体症状も出現します。

 

■ビタミン欠乏症

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあり、欠乏すると多種多様な症状が出現します。特にビタミンB1は糖質の代謝や神経細胞を正常に働かせる役割をし、不足すると末梢神経障害、心筋障害、脳症を引き起こします。普段の生活でのビタミン不足だけではなく、透析、静脈栄養、アルコール依存症でも出現しやすいです。主なビタミンと働きは以下の表を参考にしてください。

 

名称 主な働きと特徴 欠乏症状
脂溶性ビタミン ビタミンA ・視覚、上皮組織の機能維持等 脂溶性ビタミンは、過剰に摂取すると体内に蓄積されるため、過剰症が出現しやすい。 ・夜盲症

・眼球乾燥症

・角膜軟化症

ビタミンD ・Ca、P吸収増加

・副甲状腺ホルモン(PTH)分泌抑制

・くる病

・骨軟化症

ビタミンE ・抗酸化作用 ・溶血性貧血(未熟児)
ビタミンK ・血液凝固因子の生合成

・骨形成促進

・出血傾向
水溶性ビタミン ビタミンB群 ビタミンB1 ・糖質の代謝

・神経細胞の正常な働き

水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても大部分が尿中に排泄されるため、過剰症が発生することはまれである。 ・脚気(末梢神経・心筋の障害)

・ウェルニッケ脳症

・高ピルビン酸血症

ビタミンB2 ・脂質、蛋白質、糖質の代謝 ・口角炎

・脂漏性皮膚炎

ナイアシン ・糖質・脂質の代謝 ペラグラ
ビタミンB6 ・蛋白質の代謝 ・皮膚炎

・口内炎

・生後まもなく全身けいれん

・末梢神経障害

ビタミンB12 ・赤血球の生成

・核酸の生成

・巨赤芽球性貧血

・ハンター舌炎

・亜急性脊髄連合変性症

葉酸 ・赤血球の生成

・核酸の生成

・巨赤芽球性貧血

・神経管閉鎖障害(二分脊髄・無脳症)

ビタミンC ・コラーゲンの生合成

・抗酸化作用

・壊血病

・皮膚出血

・創傷治癒の阻害因子

出典:看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|D-60 2015/03/09)

 

■糖尿病

インスリンの作用不足によって引き起こされる糖尿病。高血糖症状に陥ると、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感が現れます。糖尿病には2タイプあり、膵β細胞の障害により高度のインスリン分泌障害が成員となる1型糖尿病と、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性が関与しインスリンの作用不足が成因となる2型糖尿病に分かれます。

 

3、倦怠感の看護問題と看護計画

3-1、看護目標:倦怠感が軽減したと感じることができる

■観察項目

・バイタルサイン

・一日の活動状況と休息のバランス

・検査データ

・食事摂取量

・排泄状況

・夜間睡眠状況

・倦怠感を生じる疾患の有無と症状

・疾患に対する治療の進行状況

・ストレスの有無と対処法

 

■ケア項目

・安楽な体位に調節する

・ストレスを発散する方法を患者と一緒に考える

・適宜眠剤使用

・昼寝を制限し夜間良眠できるようにする

・医師の指示に従い必要薬剤投与

 

■指導項目

・栄養のある食事を摂取できるよう献立指導を行う

・寝る前に電子機器を触ったり、過度に飲酒しないよう指導する

・倦怠感を生じる疾患がある場合、家族や職場とも連携し、確実に治療が受けられるよう指導、サポートする

 

まとめ

体がだるいのは働きすぎだ、睡眠不足だ、などと原因は生活にあると思い込んでいて、なかなかその背景に重大な疾患が隠れていることに気づかない患者は多いです。「だるい」という患者の言葉が、果たしてどこが原因で来ているのか、考えながら患者と向き合えるよう、ぜひ今回の記事を参考にしてください!

 

参考文献

疲労、全身倦怠感(体が重い、だるい、疲れがとれない)(神科杉浦こころのクリニック)疲労の分子神経メカニズムと疲労克服|大阪市立大学大学院医学研究科システム神経科学(渡辺恭良|2007/02/14)

看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|I-32 B-18-21 P-11-12 I-59 D-38-39 D-60 2015/03/09)


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