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セルフケアの看護|オレムの看護理論や看護目標・看護計画、看護研究

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オレムのセルフケア看護

セルフケアとは健康維持のための自己管理のことです。患者はADLの低下のために、セルフケア不足に陥りやすいので、看護師は患者がセルフケアできるように援助する必要があります。

セルフケアの基礎知識や看護理論、看護目標や看護計画、看護アプローチの方法、看護研究などをまとめました。セルフケア不足の患者の看護に迷っている人は、ぜひ参考にしてください。

 

1、セルフケアとは

セルフケアとは、健康面での自己管理のことです。他者の助けを借りずに、自分自身で健康を管理し、健康維持のための取り組みをすることをセルフケアと言います。セルフケアには様々な方法があります。

・休養=睡眠や休息

・食事=ダイエット、栄養のバランスの取れた食事、食育、食事療法

・運動=ウォーキング、ストレッチ

・衛生=入浴、歯磨き

・メンタルヘルス=ストレス管理、レクリエーション

これらの方法を用いて、セルフケアをすることで、健康の維持・増進をすることができるのです。

 

2、セルフケアの看護理論

看護学においては、ドロセア・オレムがセルフケアの看護理論を提唱しています。オレムは、「セルフケアとは個人が生命、健康、安寧を維持する上で自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践である」と定義づけています。

オレムは、3つのタイプのセルフケア要件があるとしています。

・普遍的セルフケア=人生のあらゆる段階全てに共通するもの

・発達的セルフケア=様々な発達段階や出来事、発達を阻害する出来事に関連して起こるもの

・健康逸脱に関するセルフケア=疾病や障害が原因で生じるもの

この3つの要件のセルフケアのいずれかができなくなった時、患者はセルフケア不足に陥るため、看護師はセルフケア不足に対する援助を行う必要が出てきます。

セルフケア不足の援助のシステムは、次の3つの看護システムに分類できます。

・全代償的看護システム

・一部代償的看護システム

・支持・教育的看護システム

全くセルフケアができない患者には全代償的看護システムが、一部だけセルフケアができる患者には一部代償的看護システムが、セルフケアのほとんどを自分でできる患者には指示・教育的看護システムが適用となります。

また、オレムはセルフケアに対する援助方法は、5つあるとしています。

・他者に代わって行動する

・他者を指導する

・他者を支持する

・他者を教育する

・個人の発達を促進する環境を提供する

この5つの方法を用いて、セルフケア不足の患者を援助していきます。

 

3、セルフケア不足の看護目標と看護計画

セルフケア不足の患者の看護計画を立案する上で、最も難しいことが看護目標の設定です。セルフケア不足の患者の究極の看護目標は、「自分でセルフケアができるようになる」ですね。つまり、自立です。

でも、看護計画を立てて、看護師が精いっぱい援助をしたからといって、全ての患者さんがこの自立という看護目標を達成できるわけではありません。

例えば、大腿骨を骨折していて、直達牽引をしている患者に、「自力でトイレに行く」、「一人で入浴できる」という看護目標を立てても、それは長期目標としては可能ですが、短期目標としては達成不可能な目標になります。

看護目標がずれていたら、看護計画もその患者の状況に合っていないものになりますので、適切な看護を提供することができません。

セルフケア不足の看護目標を立てる時は、その患者のADLや疾患・障害を考慮して、患者の状態に合った達成可能な看護目標を設定することが重要になります。

 

3-1、セルフケア不足の看護計画

セルフケアの看護計画は、まずは適切な看護目標を設定することが大切になりますが、看護目標を設定したら、次はどの看護システムが適用になるのかを考えてから看護計画を立てるようにしましょう。

看護システムとは、先ほど紹介した「全代償的看護システム」、「一部代償的看護システム」、「支持・教育的看護システム」の3つです。患者さんのADLや認知力などによって、どの看護システムが適しているのかが変わってきます。

また、オレムの看護理論では5つの援助方法があるとされていますので、次の5つの方法を用いて看護計画を立案しましょう。

・他者に代わって行動する→TP(ケア項目)

・他者を指導する→EP(教育項目)

・他者を支持する→TP(ケア項目)

・他者を教育する→EP(教育項目)

・個人の発達を促進する環境を提供する→(ケア項目)

セルフケア不足の看護計画の詳細な内容は、セルフケア不足の項目(入浴・清潔、更衣・整容、排泄、摂食)や患者のADLなどによって大きく変わっていますので、ここではセルフケア不足の看護計画の中で共通する部分が多い観察項目をご紹介します。

 

■セルフケア不足のOP(観察項目)

・バイタルサイン

・検査データ

・残存機能(障害の有無)

・安静度

・ADLの自立度

・認知障害の有無

・生活習慣

これらの観察項目を参考にしながら、看護目標に合った看護計画を立案するようにしましょう。

 

3-2、セルフケアの看護アプローチ

セルフケア不足の患者に対して、どのような看護アプローチをすると効果的なのでしょうか。セルフケア不足の患者は、セルフケアをすることに「面倒臭い」、「できないことをやらなくてはいけない」というマイナスの感情を抱いていることが多いので、適切な看護アプローチをしないと、看護目標を達成できず、セルフケア不足の問題を解決することができません。

正木治恵著「セルフケア援助に関する研究―糖尿病患者の1事例を通して」では、セルフケアの援助のためには、存在認知的アプローチと指導的アプローチが効果的であり、この2つの看護アプローチを使い分けることが必要であるとしています。

存在認知的アプローチとは患者の存在を価値あるものとして認知して、患者の持つ力を信じ、患者があるがままの自分を語れるように接していくアプローチのことです。

指導的アプローチはセルフケアのプロセスを判断して、それに応じて指導・教育していく看護アプローチのことです。

存在認知的アプローチはセルフケアへの態度をより積極的な方向に変化させることに効果的であり、指導的アプローチはセルフケアの習得を促すために効果的な看護アプローチであるとしています。

セルフケア不足の患者の看護をする時は、この存在認知的アプローチと指導的アプローチを使い分けて、援助すると良いと思います。

また、もっと詳しくセルフケアの看護アプローチを知りたい人は、野嶋佐由美 粕田孝行 宇佐美しおり著「セルフケア看護アプローチ―理と実践―そして創造」を参考にすることをおすすめします。

この本ではオレムの看護理論を用いた看護展開などを詳しく説明していますので、セルフケア不足の患者への具体的な看護アプローチの方法がわかると思います。

 

4、セルフケアの看護研究

最後に、セルフケアに関する看護研究の論文を紹介します。セルフケアの看護研究はたくさん行われていますので、セルフケアの看護計画や看護の進め方で迷ったら、次に紹介する論文を参考にすると良いでしょう。

野口美和子「千葉大学看護学部におけるセルフケアに関する研究」

金子文代「看護師が認識する療養している高齢者のセルフケアとセルフケアに関する要因」

小松里加「セルフケア能力が不十分な慢性疾患患者の看護を考える」

作並亜紀子、服部ユカリ「高齢糖尿病患者のセルフケア能力と関連要因について―前期高齢者と後期高齢者の比較―」

清水由美子「高齢透析患者のセルフケアへの支援に関する研究」

矢野香代「在宅高齢者の健康度低下に伴うセルフケア行動の実態」

中村陽子「高齢者のセルフケアにおける依存行動」

ご紹介したものは、セルフケアの看護研究の中でも一部になりますので、もっとたくさんのセルフケアの看護研究を探したいという人は、「看護研究のテーマ(文献)を効果的に検索する方法とコツ」を参考にして、看護研究を探してみてください。

 

まとめ

セルフケアの基礎知識や看護理論、看護目標や計画、看護研究などをまとめました。セルフケアは健康維持のための基本中の基本ですので、セルフケア不足の患者には、セルフケア不足の問題を解消できるように援助しましょう。

セルフケア不足の患者の援助をする時は、看護師が援助しすぎてしまい、患者ができないことを全て代わりに行ってしまいがちですが、それでは患者のADLは拡大しませんし、いつまでもセルフケア不足は解決できません。

そのため、ADLを拡大させるような看護目標を立てて、効果的にアプローチするようにしましょう。


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