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ダンピング症候群の看護|症状・治療法と発症を防ぐための予防策・注意点

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ダンピング症候群の看護

ダンピング症候群の症状・治療法と発症を防ぐための予防策・注意点

 

食べ物を食べるとその食物は胃を通過することになります。胃は食べ物を分解してお粥みたいにドロっとした状態にしてから腸へと運ばれて、食物の栄養を体中に取り入れていきます。上記は健全者の胃の働きですが、ガンなどの病気で胃を切除してしまうと食べ物を食べた後、一気に腸へと流れ込んでしまいます。

この結果、全身に不快感を感じてしまう症状が発生。この症状のことを「ダンピング症候群」と言います。ここではダンピング症候群とは何かを説明するとともに、改善する為の看護ケアをご紹介していきたいと思います。

 

1、ダンピング症候群とは

ダンピング症候群とは胃切除後に起きる症状。切除後に食べ物を食べると食物が急速に十二指腸と小腸の最初の部分となる空腸と言われる場所へ流れ込んでいきます。すると腸は食物が流れ込んだことによって拡張するとともに、食物に含まれている水分が移動し、全身の血液量変動や血糖の急上昇、血糖の急低下によって、さまざまな不快な症状が発現します。術式や吻合によって発生する確率は変化してきますが、大体10~40%とされております。

 

2、ダンピング症候群の症状と原因

ダンピング症候群が起きる要因を一つに絞ってあげることは非常に難しいとされており、いくつかの原因が重なって起きるものとされております。その主な要因とは、

 

①   胃の食物等の急速な排出

②   腸の運動が激しくなった時

③   循環血流量の変動と末梢血流量の変動

④   体液性因子(セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニンなど)の変動

⑤   血液生化学的変化(血糖の変化や低カリウム血症、血清鉄の減少など)

 

などがあり、これらが重なり合ってなるものとされております。これらの原因が重複することで、腸からセロトニンやプロスタグラジンなどの物質が放出されることによって神経が刺激され、ダンピング症候群が発生するとされております。

 

3、ダンピング症候群の種類

ダンピング症候群は二種類に分類されます。一つ目は胃を切除した後に食事を行った時、30分程度でダンピング症候群とされる症状が発生した場合を「早期ダンピング症候群」と分類。二つ目は食後2~3時間経過後、個人差によって程度の差がありますが、めまいなどの諸症状が現れた場合を「後期ダンピング症候群」としております。下記に早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群の症状をまとめましたのでご紹介します。

 

3-1、早期ダンピング症候群の症状と治療

早期ダンピング症候群は全身症状と腹部を中心とした症状が発生します。全体症状はめまい、冷や汗、動悸、眠気、腹痛、全身脱力感などがあり、また下腹部においては吐き気、下痢、腹部の不快感などが発生します。

腹部の諸症状においては、ダンピング症候群が原因とは限らない可能性が高く、看護・医療分野における今後の研究によって明らかになってくると思われます。これらダンピング症候群を治療するにはいくつかの方法があります。

薬物療法が良いとされております。投与する薬物としては抗セロトニン薬、抗ヒスタミン薬、抗ブラジキニン薬などが胃の排出遅延や小腸運動減少を目的として用いられます。薬物療法によって治療を続けても効果が見られないダンピング症候群の治療法として外科療法があります。

原則として、外科療法を行う場合は胃を切除後約6ヶ月経過してから行うものとしています。しかし、外科療法は多くの問題点を有しているため、積極的に使われない療法となっております。

 

3-2、後期ダンピング症候群の症状と治療

後期ダンピング症状は前期ダンピング症候群と違い、食事の後2~3時間経過してから発生します。主な症状としては、全身の脱力感や倦怠感、めまい、失神発作、気力消失などが重複して起きるとされており、一般的に30~40分程持続します。

早期ダンピング症候群と重複して発生することもありますが、後期ダンピング症候群単体で起きる可能性もあります。後期ダンピング症候群に対しては、早期ダンピング症候群のように薬物療法や外科療法などはなく、食事摂取の方法を改善することによって回復を図ります。

ご飯を食べてから2時間位間を空けた後に間食したり、冷や汗、動悸などの低血糖症状が表れた際には、アメや氷砂糖など舐めることによって収まります。上記の方法をとる事によって改善することができるとされております。

 

4、ダンピング症候群の予防策

胃を胃潰瘍やその他の病気によって切除すると、切除以前のようにいっぱいご飯を食べることができなくなっていることでしょう。この時に無理して以前のようにいっぱいご飯を食べると、ダンピング症候群が起きやすくなるので注意が必要です。

ダンピング症候群を予防するためには、①食事に時間をかける、②少量摂取を心がける、③食後の休息・安楽な体勢をとる、などが重要となってくるため、看護師はこれらの予防策を患者にしっかりと伝えるようにしてください。

 

一回の食事に30分以上かけて食べること 胃が部分的にのこっていても機能自体は低下しており、全摘で食道と小腸を繋いだ場合、食道と小腸では食物や飲み物などの通過速度に差異があり、速く食べると小腸のつなぎ目でつかえやすくなるため、ゆっくり食べることが予防に繋がります。
焦らず欲張らずに少量でやめる 一回でご飯を食べられる量には個人差があります。食事の摂取量が多いとダンピング症候群を引き起こす可能性が高まるため、看護師は患者の食事の摂取量をしっかりと把握し、少量摂取を行うよう指導してください。
ご飯を食べたあとの過ごし方に注意する ご飯を食べたあとの過ごし方によってダンピング症候群を改善できるとされております。ダンピング症候群を頻繁に起こしてしまう方は、食道から小腸への食べ物や飲み物の流れがゆっくりとなるように横になるのがいいでしょう。また、ただゴロンと横になるのではなく、上半身を少し高くして横になって休むと効果的です。ただし、胃もたれする方は横にならずに座って休むか、ちょっとしたウォーキングなどをすると良いとされております。

 

これらのほか、食事のメニューに気を付けることも大切です。脂質の少ない赤身のお肉や鶏のササミ、ご飯、チーズやヨーグルトなどの乳製品などが、ダンピング症候群の予防に適していると言われています。

入院時の食事は栄養士がしっかりと調整しているため、基本的に問題はありませんが、退院後の食管理は患者自身が行わなければいけませんので、看護師は患者に対して、上記メニューのほか、糖分の多い食品を避けるなど、入念に説明・指導してください。

 

まとめ

ダンピング症候群は胃を切除した場合に起きる症状ですが、現在では減少傾向にある症例です。しかし、もしこの症状が発生したときは、食事の改善によって治る可能性が高い病気です。

発症時の改善策として、また発症しないための予防策として、上記で紹介した、①食事に時間をかける、②少量摂取を心がける、③食後の休息・安楽な体勢をとる、などの実施は不可欠ですので、患者が自分の意思でしっかり行えるよう、看護師は患者に対して入念な説明と指導を行っていってください。

 


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