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胃カメラ検査の看護|検査前~検査後における看護ケアと観察項目

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胃カメラの看護

胃カメラは、簡単な検査手段として広く認知され、また頻繁に実施されていることから、医師や看護師など医療従事者は安易に捉えてしまいがちです。

しかし、胃カメラの検査を受ける患者さんの多くは、身体的な負担に加え、精神的不安を抱えています。そのため、看護師は患者さんに対して、身体的・精神的の双方から献身的なケアを実施する必要があります。

 

1、胃カメラとは

胃カメラとは、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸までの上部消化管の様子をみる検査のことを指し、正式には「上部消化管内視鏡検査」と言います。

胃カメラは炎症や潰瘍などの発見のために行う場合や、組織診を目的として行う場合があり、また治療を目的に実施されることも多々あります。

 

一般検査 炎症性病変(食道炎・急性胃炎・慢性胃炎など)や潰瘍(食道潰瘍・胃潰瘍・十二指腸潰瘍など)の観察
特殊検査 ポリープ(粘膜の変化や良性・悪性の識別をして必要時に組織採取)や腫瘍(腫瘍の範囲や進展度、経過など)の観察や組織診
内視鏡的治療 ポリープや腫瘍などの切除

 

1-1、経口内視鏡と経鼻内視鏡の違い

患者さんが感じる違いは、嘔吐感・息苦しさ・挿入時の苦痛度です。経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べて直径が約半分(5~6mm)と径が細いため、挿入もあまり気になりません。また、スコープが舌根部に触れないことで、嘔吐反射が少ないことから苦痛度は低くなります。さらに、検査中の会話も経鼻内視鏡の場合には可能になることから、心理的にも経口内視鏡にくらべて負担は軽くなります。

そして、これら苦痛度の違いは、心拍数や血圧の増加といった数字にも表れてきます。経口内視鏡では心拍数・血圧が上昇することが多く、それに伴い心筋酸素消費量も増加するのに比べ、経鼻内視鏡では心拍数がわずかに増加するに留まるため、心筋酸素消費量も変化しません。

一方で、内視鏡のスペックとしては、経口内視鏡と経鼻内視鏡は同様のスペックを有しているものの、経鼻内視鏡は経口内視鏡と比べて、個々のサイズが小さく、機能が劣るものもあります。例えば、ライトは光源が弱いため経口内視鏡の撮影映像に比べて鮮明さに欠け、解像度は劣ってしまいます。また、経鼻内視鏡は鉗子孔などが小さく、切除用処置具の通過が困難であるため、早期癌の粘膜の内視鏡的切除などは原則として行われません。

 

2、胃カメラによる合併症・副作用

胃カメラは基本的に安全な検査であるものの、約0.012%で消化管出血や、穿孔などの偶発症の可能性があることから、偶発症の可能性を念頭に置いて介助・看護をする必要があります。

 

薬剤アレルギー

経口・経鼻いずれの内視鏡検査においても、前処理で局所麻酔を使用します。その際に用いられる麻酔薬がアレルギー反応、発熱、痙攣、不整脈、呼吸抑制、心停止などの副作用を起こすことがあります。事故を防ぐためにも、患者さんの過去の使用歴などを事前に確認をしておくことが大切です。

 

出血

経鼻内視鏡検査では、前処理の血管収縮薬や局所麻酔薬の点鼻や鼻腔内散布の際に、チューブなどがあたって鼻出血が生じることがあります。また、組織生検のために粘膜を採取したあとは少量の出血が起こります。

さらに、ポリープや早期癌の内視鏡的切除の際には、ポリペクトミー内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(EDS)のいずれかの方法がとられます。これらの切除後には出血や穿孔の恐れがありますので、入念な観察が必要不可欠です。

 

消化管の穿孔

嘔吐反射などにより胃の中の圧が高くなることで消化管の粘膜が裂けることがあります。この場合、内科治療で穿孔がふさがることもありますが、輸血などの緊急処置・手術が必要になることもあります。

 

咽頭・消化管の損傷

のどの奥や十二指腸の狭い部分、胃と食道の結合部で粘膜の弱いところなど、内視鏡を通すのが難しい箇所では内視鏡で傷をつけてしまうことがあります。

 

3、看護・介助の流れと注意点

患者さんの身体はもちろん、心の負担を軽減することが大切です。緊張をほぐすことで、検査もスムーズに進みます。そのためには、内視鏡検査の必要性や方法、さらには合併症の可能性まで説明し、患者さんの承認を得ることはもちろん、検査の安全性についても十分に伝えることが大切です。

その際に、看護師は患者さんをよく観察し、医師の説明を理解しているかを確認し、必要があれば補足説明をすることが求められます。患者さんに不安を言語化してもらい不安を共有し、解消してあげることで心身の緊張を解きほぐします。

 

3-1、患者の状態を一番近くで観察する

まずは、病歴・検査データを把握して、全身状態をよく観察します。次に、禁忌の確認をします。心肺の重大な疾患、緑内障、前立腺肥大、消化管穿孔、消化管高度の炎症、咽頭・食道上部の通過障害などの有無を確認します。

さらに、服薬の確認です。抗凝固薬(ワルファリンカリウム、塩酸チクロピジン)などの服用の有無も確認が必要です。なぜなら、これらの薬を内服していると、思わぬ出血で止血処置に苦労することがあるからです。

また、禁忌ではないものの、スコープの機種選択や麻酔の考慮が必要な患者さんもいます。例えば、高齢者、循環系異常、頸部・脊椎異常、消化管の手術直後などの患者さんには注意深く検査を行う必要があります。

処置台に移動の際にも患者さんの緊張をやわらげるために声掛けは有効です。検査に入ってからも、状態を常に観察することが求められます。検査医は内視鏡操作に集中するあまり、患者さんの表情を見逃すことがあります。表情や呼吸の状態を注意深く観察して、声掛け行うことで、患者さんの苦痛を和らげます。

また、検査後の観察も重要です。「2、胃カメラによる合併症・副作用」の他にも検査後の吐き気、空嘔吐、腹部膨満感、めまいなど、軽微な偶発症が発症することがあります。そのため、患者さんの安静を確保し、観察を怠らないようにします。

のどの不快感や腹痛の症状を訴えていないか、吐血・下血の有無などを確認します。これらの症状の多くは安静により自然に回復しますが、持続する場合や症状によっては点滴などの処置が必要になります。

 

まとめ

胃カメラは広く周知されていることや、検査自体が約5分~20分で終わることから、医療従事者には、あまり重く受け止められませんが、患者さんは大きな不安とストレスを抱えています。

そのため、検査前には、患者さんの不安を取り除けるように十分に説明をし、その上で疾患や服薬状況などについても具体的に問いかけ、患者さん本人に声に出して答えてもらって確認をすることが大切です。

検査中においてはしっかりと観察を行いましょう。特に、経口内視鏡検査では患者さんはしゃべれません。様子を常に観察し、わずかな表情や呼吸の変化などを見逃さずに、声をかけることが大切です。

検査後も同様です。鎮静薬からの回復を見守り、軽微な偶発症を見逃さないようにします。何事も声に出して確実に確認をすることが大切です。看護師が声を出すことで事故を未然に防ぐことができます。


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