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手浴が看護の現場に果たす役割と効果、実施に際する注意点

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手浴の看護

看護や介護の現場で、患者の手や指を清潔にするために手浴が実施されることがあります。手浴は足浴や清拭と同じく、自力での入浴が困難な患者に対する清潔ケアの一環でもあり、さらに体温の上昇や冷え取り、血行促進、発汗、デトックス効果などが見込めるとして、妊婦やダイエット中の人に対しても、幅広い人たちにすすめられています。

ここでは看護や介護の現場で活用されるケースをメインに、手浴に期待される効果や手順、注意点などを紹介します。

 

1、手浴とは

手浴は、看護や介護の現場で行われる部分浴の一つで、患者の手を湯に浸けて清潔にするほか、手の血流を改善させたり、手を温める働きなどでも知られています。手を洗うだけでなく、マッサージなどを加える方法もあります。

 

2、手浴の効果

手浴の効果には、さまざまな種類があります。衛生、メンタル、鎮痛など、看護や介護に関わる多方面から注目が注がれる手浴の効果について、紹介します。

 

清潔ケア

脳血管障害などで長期臥床となり、手に麻痺が残ったり掌屈位となると、手や指の密着した部分が湿ったりして不衛生になりやすく、白癬症や臭気、褥瘡の発生につながる可能性もあります。そのため、手浴は自分で手洗いができない長期臥床患者にとって、通常の入浴介助だけでは落としきれない手の汚れを改善させることができると言われています。

 

入眠促進

手浴をすることで身体が温まり、眠りに入りやすくなると言われています。

 

浮腫の予防

湯の中で手を洗ったり、マッサージや手の運動をすることで血流を改善させたり、手や指の筋肉をほぐす効果が見込まれるため、浮腫の予防につながるとも言われています。

 

リラックス

メンタルに関わる面で言えば、手浴にはリラックス効果があるとよく言われています。手浴によって、被験者の緊張や怒りの気持ちを落ち着かせたり、副交感神経が上昇する傾向がみられたという研究結果があります1)。また、手浴によって身体の一部分が加温されることで、保温効果だけでなく、被験者に爽快感がもたらされることを示す研究もあります2)

 

鎮痛効果

脳血管障害を抱え、手や指に麻痺や痺れがあったり、指先での細かい動作が困難な患者に対して行われた実態調査3)によると、手浴をすることによって一時的に痛みや痺れが緩和されたり、手の動きが改善される感覚を持った、という実績が示されています。他にも、手浴を実施した際に、実施場所以外の部位の痛みを鎮める効果が認められた実験もあります2)

 

3、手浴の手順

具体的に、手浴はどのようにして行えば良いのでしょうか。手順やポイントを挙げてみましょう。

 

湯の温度と時間

手浴に使われる湯については、38~43度程度の温度が示されるケースが多いようです。熱さをめぐる表現としては「ぬるま湯」「少し熱め」など幅があります。また、手浴にかかる時間は5~10分間、手浴を行うタイミングとしては、食前や排せつ後などが示されています。

 

具体的な手順

湯の入った洗面器に患者の手のひらと指、手首を入れ、湯に浸けます。手浴中には血行が良くなることに合わせて、患者の手のマッサージをしたり、可能であれば指を曲げたり引っ張ったりして運動させることもおすすめです。また、手首までしっかりと湯に浸けるようにして温めましょう。

石鹸やウォッシュクロスを使って指の間や手のひらをきれいに洗う場合、洗った後に湯を取りかえて手をすすぐ必要があります。すすぎが終了したら、手にかけ湯をした後、タオルを使って手に残った水分をふき取りましょう。

 

4、手浴をする際に注意すること

手浴は部分浴の中でも比較的簡易な作業と言え、さらにさまざまな効果が期待されるというメリットもあります。しかし、実行する際には注意点もありますので、以下のポイントを踏まえた上で手浴をするようにしましょう。

 

患者の体調

全身浴ではないにしても、手浴は温浴ですので、実施すると体調の変化が起こりやすくなると言われています。手浴中や手浴終了後に患者の体調に変化がないかどうか、注意しながら行いましょう。手浴前に体調をチェックしておくことも重要となります。

 

患者への配慮

患者が起き上がることができない状態の場合、左側臥位で右手、右側臥位で左手を洗うなど、配慮するようにしてください。手浴中は湯加減が熱くないかどうかを確かめるなど、患者とコミュニケーションを取りながら行うことも重要です。

 

患者の状態をよく観察する

手浴は、患者の手の状態を確認するということにおいても重要なポイントとなり得ます。手浴を実行するにあたり、患者の手の皮膚の色や乾燥具合、爪の状態、さらに掻痒感や臭気がないかどうか、といったことを観察してください。

 

5、手浴との相乗効果が見込まれる方法

手浴をする際には、お湯の中に手や指を入れて汚れを落とし、清潔にするだけでなく、マッサージなどを加えることもできます。手浴と組み合わせることで、温浴やメンタルの面で相乗効果が出ることが期待される方法を紹介します。

 

5-1、手・指の屈伸運動

手浴の温熱効果を促進させる方法として、加温効果のある炭酸泉入浴剤入りの炭酸泉を使い、さらに手浴中に手指の屈伸運動を実施した結果、深部体温の上昇がみられたという研究結果4)があります。

しかもその上昇度合いは、炭酸泉や単純泉で手浴しながら手指の屈伸運動をしなかったケースに比べても大きかったとのことです。このことから、単純な手指屈伸運動でも、温浴効果に対して果たす役割が大きいことがうかがえます。

 

5-2、アロマテラピー

アロマテラピーは、植物由来の香りや有効成分を含む精油を使い、不調を抱える心身に癒しを提供したり、自然治癒力を高めることなどを目的とした療法です。近年、看護や介護の場でも、アロマテラピーを取り入れる動きが見受けられます。

手浴をする場合、ハンドマッサージがつくことがありますが、マッサージに使用するオイルに、リラックス効果などが見込まれる精油を混ぜる事例が、しばしば見受けられます。また、手浴や足浴などの温浴に使われる湯の中に精油を入れることで、患者はアロマの香りを楽しみながら、清潔ケアを受けることもできます。

血行促進効果が期待できるレモン、ひんやりとした心地を楽しめるペパーミント、リラックス効果が見込まれるラベンダーやローマンカモミールなど、患者の状態や気温、時間帯などによって使用する精油を変えてみたりすることで、より満足度の高い療法になります。

ただし妊婦に対して行う場合は、種類によっては避けた方が良い精油もありますので、注意が必要です。

 

まとめ

手浴は比較的簡易な作業で患者の清潔ケアができるほか、メンタルや鎮痛などの面でも効果が期待できるため、非常に便利なケア方法となります。

特に寝たきり状態となっている患者に対して、不衛生になりやすいとされる麻痺の残った手や指を清潔に保つのに有効である点や、痛みや痺れが緩和されたり、リラックス効果も期待できる点は、闘病生活をサポートする上で、有効な方法となり得るでしょう。

ただし、手先だけでなく身体に麻痺や障害を抱える患者が対象となるケースが多いことを踏まえ、手浴を実行する際は患者の体調管理や観察をしっかりと行い、コミュニケーションを取りながら患者がケアを受けやすい体勢や環境を整えるなど、配慮しながら行うようにしてください。

 

参考文献

1)石井ゆり香 他「手浴によるリラックス効果の検討―対象者の気分による主観的評価と自律神経活動の変化―

2)池田理恵・深井喜代子・岡田淳子「手浴が実験的疼痛閾値に及ぼす影響」2002『川崎医療福祉学会誌』

3)矢野理香・石本政恵・品地智子・飯野智恵子「脳血管障害患者における手浴―7事例の検討を通して―」2009『日本看護技術学会誌』

4)大重匡・高森明久・西宏晃・田中信行「手浴の温熱効果を向上させる方法について


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