研修中の方や新人の看護師の方であれば、毎日の朝礼で発表することになる”「行動計画」の作成”という行為自体に「苦戦した」という方も少なくないのではないでしょうか。
まだ社会人暦も浅く、看護師として右も左もわからない状態にもかかわらず、課される行動計画の作成というタスク。1日の業務内容を整理して、それぞれに要するであろう時間配分を考えるなど、内容はギッシリです。
今回は、看護における「行動計画」作成の意味と重要性、計画の仕方(書き方)、注意すべきポイントについて、分かりやすく簡潔にご紹介していきますので、「行動計画」に悩んでいる方はぜひ参考にしていただければと思います。
1、行動計画とは
行動計画とは、看護過程(看護の目標を成し遂げるための一連の行い)で、看護の目標を計画的に実施していく、いわば看護の指示書のようなものです。患者に看護問題を解決、改善していくため、行動計画にしたがって日々の看護は行われています。
行動計画には、ルーティーンで行われる処置と、看護問題、その解決のための目標と看護計画が書かれており、誰が閲覧してもわかりやすい内容になっています。
つまりは、デイリーの「Todoリスト」のようなものを指していますが、単に「AM10:30 A病棟701号室の田中さん」というタイムテーブルではなく、プラスαとして「何のために」「どのような処置を」という詳細な内容を付け加える必要があります。これが行動計画で重要な要素であり、如何に理解してスケジュールが組まれているのかがポイントとなります。
ちなみに、その際、より情報伝達の精度とスピードを向上させるという意味で盛り込みたいのが「5W1H」という概念です。これは、「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という6つの要素を表し、これに沿って整理することで情報伝達の乖離が少なく、より明確に意思疎通を図ることができます。
2、看護過程における行動計画の位置づけ
行動計画は1日のタスクの流れを書いたもので、その中で出てくる複数の対応内容に対して、『行動目標』や『看護計画』、『看護目標』というのが存在します。
1日のタスクには、これら『看護目標』が複数存在して、これらをすべてクリアできた状態が一番望まれる形となります。ちなみに、『看護目標』が完了したのかを評価する基準とされているのが、下記にある5つとなります。
この5つは、看護過程において、独自の知識体系に基づき、ヘルスケア、看護ケアを必要としている対象者に的確に応えるため、どのような計画・介入援助が望ましいかを考え、系統的・組織的に行う活動のことです。詳細は下表のとおりです。
①アセスメント | 患者の健康問題、または潜在的な問題を把握するために情報を収集するフェーズです。 |
②看護診断 | ①で収集した情報をもとに、優先順位をつけて看護問題か否かを確認するフェーズです。 |
③看護計画立案 | ②の診断結果をもとに、解決と目標達成のために行動計画を作成するフェーズです。 |
④看護計画実施 | ③で立てた目標を実際にアクションに起こすフェーズです。 |
⑤看護計画評価 | ④で実施した結果を踏まえ、その成果・看護計画の改善点などを確認するフェーズです。 |
これらを患者と一緒に繰り返していきます。そして、満足のいく看護が提供できなければ、計画改善もしくは実施内容を見直して、再び①からプロセスをやり直します。
行動計画は、1日の計画を考える上で軸となるものです。通常は行動計画を立てた上で、各々の『行動目標』や『看護計画』、『看護目標』を設定します。ただ、研修中などは、ある程度1日のタスクが実習形式で決められているものであるため、『看護目標』から逆算する形で、行動計画を作成するパターンもあります。
いずれにしても、患者のために行動することは変わらないので、きちんとした行動計画の下、漏れのないように情報共有して、チームで1日の動きを共有して動きたいものです。
3、看護実習における行動計画
通常の看護ではもちろんですが、看護実習の際も行動計画の作成と共有が行われます。看護計画に加えて、自身の学習計画も記載していきます。毎日行動計画を発表する病棟が多いので最初は緊張することもあると思いますが、要点を抑えた目標の明確な行動計画を作成できるよう心がけていきましょう。
不明な点や理解できないことなどは、先輩看護師や指導者に積極的に質問や相談をして指示を仰ぎましょう。
看護実習初日は病棟オリエンテーションが行われ、まだ受け持ちの患者が決まっていない場合が多いので、事前準備と挨拶を心がけましょう。それに加え、実習施設の概要や特徴、看護体制など調べられる情報は収集し、余裕をもって初日に臨むことがオススメです。
3-1、行動計画の書き方
担当する患者が決定したら、その方の説明と紹介を受けます。そして、看護問題を明確にするため、必要な情報を収集して、先に説明した①アセスメントのフェーズに移っていきます。(アセスメントの方法については、「看護過程の1つ「アセスメント」ゴードン等の書き方と事例」をお読みください)
具体的には、患者の疾患名、治療方針、治療内容、禁忌事項などについて情報を集めていきます。患者と充分にコミュニケーションが取れて、アセスメントによる看護診断から看護問題が見えてきたら、次は行動計画の作成です。行動計画は以下の順序に従って書いていきます。
①毎日決まっている処置や予定を先に書き込む
体重測定、経管栄養、リハビリ、診察、面会、患者の方の日課、実習のカンファレンスなど、あらかじめ決められた項目を書き込みます。
②残りの時間を調整して、看護計画を立てる
看護計画に記載するのは、看護問題と看護目標、それに必要とされる看護計画のOP(観察計画)、TP(実施計画)、EP(教育・指導計画)と評価欄です。患者の方に対してどんな看護をしたいのか、なぜその看護が必要なのかを考えて適切な看護目標を設定し、看護計画を立てていきます。
③学習目標と評価を記載する
看護実習の中で、何を学ぶことができるかという学習目標の記載も重要です。適切な看護援助を体験し今度の看護活動に生かしていけるように、目標設定をして看護への理解を深めていきましょう。
例)
・ 患者の方の全体像を把握し、患者の具体的な援助を導くための学習の整理を行う。 ・ 受け持ち患者の方のバイタルサインが測定できる。 ・ 身だしなみに注意し実習生としての自覚をもち、挨拶や態度を意識した行動がとれるように心がける。 |
4、看護実習での行動計画作成の注意点
- セッティング準備、看護の実施、片付けまでの流れを時間にゆとりを持って予定する
- 根拠ある目標設定で、その内容が計画と照らし合わせた際、妥当か否か確認する
- 患者の体調や活動パターン、日課や処置スケジュール等がわかれば、それらを考慮する
例)体調:午後は疲れやすい、午前中は血圧が低いなど
例)日課:午後の面会前に清潔援助を済ませる、リハビリ後は休憩を挟んで入浴介助を行う
- 休憩時間の確保を忘れずにしましょう。
まとめ
看護における「行動計画」の重要性と書き方などについてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。理解しているようでそうでない箇所、まさに今勉強中でなかなか自分事化できずに悩んでいたところは、問題解決に至りましたか。
行動計画を学ぶ課程で、そのほか「看護目標」までの流れやその過程のチェックポイントとして5段階評価が存在すること、様々な点で気づきがあったのではないでしょうか。
きちんと全てのステップが行われて初めて、患者と看護師の納得できる看護が提供できます。先輩看護士や支持者の助けをかりながら、質の高い行動計画の作成を行い、患者の方にとって満足度の高い看護が提供できるように努めていきましょう。そのために、今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。