出血性ショックは重篤化しやすく、対処が遅くなれば死に至ることもある危険な症状です。そのため、徴候や症状の発現時には、速やかに対処する必要があります。
今回は、症状や観察項目、対処法などについて詳しく解説しますので、重篤化を防ぐために、出血性ショックについてしっかりと把握しておいてください。
1、出血性ショックとは
出血性ショックとは、出血により血液量が減少し内臓に有効な血流が維持できず血圧低下、冷汗、呼吸困難、尿量の減少、意識障害などの症状で生命の危機に陥ることです。
1時間に100ml 以上の出血が続くと、出血性ショックが起こることがあります。成人の血液量は体重の7%ぐらいで、その20%以上を失うと様々なショック症状を起こします。
■出血性ショックの原因
外出血 | 四肢切断、頭部外傷、開放骨折など |
内出血 | 大動脈瘤破裂、肺挫傷、子宮外妊娠、胃潰瘍による消化管出血、食道静脈瘤の破裂など |
多くは、外傷や血管疾患、消化管出血、手術などの出血によって血液が減少することで起こります。血液量の減少で臓器に十分な酸素が運ばれなくなると、最終的には多臓器不全に至ります。脳や腎臓は多くの酸素を必要とするので、脳梗塞や腎不全になる場合もあります。
2、出血性ショックの症状
出血性ショックの初期症状ではどういった症状が出現するのか、進行した場合にはどうなるのでしょうか。
2-1、出血性ショックの初期症状
出血性ショックの初期症状では、脳・心臓へ血液が優先的に配分されるため、皮膚の症状は蒼白で冷汗が出たり皮膚が冷たく、湿り気が感じられます。脈の状態は頻脈となり脈が速く弱くなります。これは状態の悪化を示しており、更に早期の対応が必要です。
また、呼吸は早く浅くなり、呼吸不全を引き起こします。心拍出量が減少し、血圧が低下していき心拍数が増加し、末梢血管が収縮します。
爪の圧迫により、末梢血管再充填時間が遅延している場合は指先の血流が不良となり循環障害が生じる可能性があります。
このような症状は循環血液量の15~30%の出血で見られ、循環障害が生じていけば、皮膚は冷感が生じ、蒼白く見えます。
血圧が低下していない場合でも出血性ショックの可能性があるので、出血を伴う症例では、入念な観察が必要不可欠です。
2-2、出血性ショックが進行した場合
出血性ショックの状態が続くと全身に循環する血流量が低下し、これによって心拍出量が減少して血圧が低下します。血圧が低下すると脳へ血流を送る圧力も血液量も減り脳への血流量も減少するので意識が朦朧状態となります。
意識が朦朧状態になるとぐったりとし、自力で動けない状態になります。意識が朦朧になることで不安な状態や不穏状態、攻撃的になったり非協力的になるといった症状も生じます。そのまま放置されると、意識レベルは昏睡状態となります。意識障害が生じる前兆として生あくびをすることもあります。
また、血液の循環不全により、酸素が運搬される量も左右されるため、呼吸状態が不安定となり低酸素血症を引き起こす可能性もあります。更に過呼吸を引き起こします。過呼吸になる理由は、血中のpHを保持するために二酸化炭素の排出を増やそうと過度に酸素を吸い込んでしまうからであり、筋組織は低酸素状態になるため、筋力も低下します。
体内の血液量が大量に減ることで更に過度の脱水状態にも陥ります。そして多量の出血が続くと多臓器不全となり、死に至るといった生命に関わるケースもあります。
ショックから助かることができた後にも様々な全身の臓器の機能低下などがあるため、集中的な治療をしばらく継続しなければなりません。
3、出血性ショックの観察項目
血圧の低下が出血性ショックの兆候となりますが、血圧が下がる前、脈が速くなった時点で、出血に気付きたいものです。血圧が下がった時点では、すでに相当量の出血があると考えられます。
出血性ショックの治療は、輸液、輸血の準備、出血源の確認と止血などを行います。目に見える出血への対応はもちろんですが、次の症状がないのかまず確認してください。
・ 表情はぼんやり、目はうつろになっていないか?
・ 皮膚は青白く冷たくなっていないか? ・ 冷汗がでているか? ・ 唇は紫色か白っぽい。 ・ 呼吸は速く、浅いか? ・ 脈拍は弱く、速いか? |
出血性ショックを看護する時には、まずよく観察し、頻脈のときには血圧低下がなくても初期症状の可能性があるので、注意して経過を観察する必要があります。
もしも出血性ショックの場合は、気道確保、酸素投与・換気、静脈路確保、輸液投与などの緊急処置を行います。大量の輸液と輸血をする可能性があり、その場合は体温が低下するので保温しておくことが必要です。
止血のため手術が必要とされた場合、看護師は直ちに手術の手配・準備を行うことが必要です。その場合患者さんや家族の了解を取ることが必須となるので、家族に対する緊急連絡は誰がどのような方法で行うか決めておくことも大切です。
4、出血性ショックへの対処法
出血性ショックを理解するためにポイントとなるのは血圧です。血圧が低下すると、体では代償機能が働きます。一般的には血圧が低下しますが、血圧が低下する前に、その他の症状が先に現れるので、血圧が下がり始める前に出血性ショックの有無を判断し、迅速な処置を行う必要があります。
出血量が大量であると、心臓に帰ってくる血液の量が少なくなり、全身に送り出す血液の量が少なくなります。ショックの大まかな意味を低血圧だと捉えられることもあります。出血が疑われたら、ショックの徴候がないかを観察します。血圧低下がなくても、頻脈の時はすでに出血性ショックの初期症状の可能性があるので、注意が必要です。
出血性ショックの場合は、気道確保、酸素投与・換気、静脈路確保、輸液投与などの緊急処置を行います。静脈路確保を行う際は、輸血が必要になることを想定して、なるべく太い静脈ルートを確保します。
また、大量の輸液と輸血により体温が低下するので保温を行い、どこから出血しているかを見極めます。術後の患者さんであれば手術による出血が、内科病棟の患者さんであれば下血などが考えられます。止血のため手術が必要とされた場合、看護師は直ちに手術の手配・準備を行わなければなりません。
この場合、患者さんや家族の了解を取ることが必須となるので、家族に対する緊急連絡は、誰がどのような方法で行うか決めておくことも大切なことです。
では応急処置はどのようにすれば良いのでしょうか。まずは出血が疑われたらよく観察し、目に見える体表部分の出血には、可能な範囲で止血を試みることが応急処置となります。
基本的な止血方法としては、圧迫止血法を行うのが一般的です。圧迫止血法には、直接圧迫止血法、間接圧迫止血法があります。
臨床現場以外においては、清潔なハンカチなどを直接傷口に当て、強く圧迫してください。(直接圧迫止血法)。手をビニール袋などで覆い、圧迫すれば血液感染の防止になります。
直接圧迫止血で血が止まらない場合、出血しているところより体の中心部側にあたる動脈を圧迫して血を止めるという方法もあります(間接圧迫止血法)。
まとめ
出血とは怪我や手術にはつきものですが、大量の出血は命を脅かすものです。出血は目に見えるものだけではなく、お腹の中や胸の中など体内でも起こり得るもので、ショックの症状が見受けられたら早急な対処が必要となります。
ショック状態、症状などを知ることで、疑わしい症状が見られた時に対処ができることは命を救うことにもなります。まずは出血傾向のある患者に対して入念な観察を行ってください。