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気管支喘息患者に対する看護目標・看護計画と具体的なケアの方法

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気管支喘息の看護

「喘息は大人になったら治る」という考えが一般に広まっているため、気管支喘息は軽い病気であると誤解している人が少なくありません。さらに、発作が起きない状態が続くと「治った」と勘違いされることが多く、このこともこの病気を深刻に考えない傾向に拍車をかけています。

しかし気管支喘息は、悪化と改善を繰り返しながら、数十年という期間を経て肺の機能を低下させ重症化する病気です。最悪、死亡に至ることもあります。

気管支喘息で入院する患者は、激しい発作を起こして救急搬送されるケースが多く、患者や家族は強い恐怖心を持つこともあるため、入院患者への看護では、患者への症状の鎮静化とともに、患者やその家族への心のケアも重要になります。

入院期間中に、日常生活でも発作をコントロールできるよう指導・教育することも看護師の大きな仕事になります。

 

1、気管支喘息とは

気管支喘息の症状は、突然の呼吸困難から始まります。急に「ぜいぜい」「ひゅうひゅう」し始め、すぐに呼吸が苦しくなるのです。患者は横になるとつらいため、椅子に座って前かがみの姿勢を取ります。

呼吸困難の次に患者を襲うのは、激しい空咳です。そのまま放置すると、チアノーゼ状態に陥ったり、血液中の酸素が不足して意識を失ったりすることもあり、そのまま死に至るケースも少なくありません。

 

1-1、発作性疾患説とアレルギー説

気管支喘息は長年、発作性の疾患と考えられてきましたが、近年は、気道のアレルギー反応が原因であるとの見解が主流になっています。しかしいずれの説でも、気道に起きる炎症から発生しているとの見方は共通していて、患者の気道の粘膜を採取すると、炎症を引き起こす好酸球やTリンパ球といった炎症細胞が見られます。

気管支喘息が発作と改善を繰り返すのは、「きっかけ」があるかないかによる、と考えられています。「きっかけ」は人それぞれで、ある人はダニによって喘息発作を起こすことがありますし、そばや魚といった食材が引き金となる人や、解熱鎮痛薬などの薬が引き起こすこともあります。

 

1-2、薬物療法

気管支喘息の治療は薬物療法が行われます。気道の炎症を抑える効果が期待できる吸入式のステロイド薬が主流になっています。また、アレルギーが原因で発作を起こす患者には、抗アレルギー薬で改善を図ります。

また、喉の気管支平滑筋という筋が過度に収縮してしまう患者には、気管を開くために気管支拡張薬であるテオフィリン(商品名テオドール)やベータ2刺激薬といった薬で改善を図ります。

 

2、気管支喘息の入院患者への看護目標

気管支喘息で入院する患者は、ほとんどが激しい発作を起こし救急搬送されるため、患者もその家族も興奮状態にあることが多いでしょう。また小児患者も珍しくないため、患者家族への精神的ケアは、治療に向けた直接的な看護と同じくらい重要になります。

気管支喘息のクリニカルパス(入院診療計画書)は、6日間用と9日間用を準備している病院が多いようですが、ここでは9日間用のクリニカルパスから1日ごとの看護目標を見てみます。

 

入院当日(1日目) 脱水症状の改善、家族の不安を最小限にする、患者と家族を落ち着かせる
2日目 低酸素症状の改善
3~4日目 発作がなくなる、呼吸が楽になる、睡眠の質が改善
5~6日目 喘鳴の軽減、酸素吸入の中止、表情が穏やかになる
7~8日目 食事量が元に戻る
退院日(9日目) 活動が増える、喘鳴がなくなる

 

3、気管支喘息の看護計画と具体的な看護ケア

次に、入院日ごとの看護計画と具体的な看護ケアをみてみましょう。ここでも9日間の入院を想定して解説をしますが、入院期間が短縮した場合でも、すべての課題をここで紹介する順番にクリアしていくことには変わりありません。

 

3-1、1日目は脱水の改善と不安の解消

入院初日は血液検査とレントゲン検査があります。脱水症状を軽減させるため、24時間持続の点滴を行います。吸入式によるステロイドの投与は、退院後は患者自身が行わなければならないため、正しい吸引方法や使用頻度の指導は、患者やその家族の理解度を把握した上で、複数回行うことが望ましいでしょう。

抗生剤の使用はケースバイケースですが、使用する場合は、1日の回数と服用時間を患者に指導するとともに、アドヒアランスを向上させられるよう努めてください。

患者が日頃から気管支拡張薬のテオフィリンを服用しているかどうかの確認は必須です。医師に確認の上、使用しないよう患者または患者家族に伝えますが、医療機関によっては看護師がテオフィリンを預かります。

激しい喘息発作は血液中の酸素を減らし、患者を重篤に陥らせる可能性があります。そのため、患者の指にSpO2モニターを装着し、血中酸素飽和度を計測しなければなりません。場合によっては酸素吸入が必要になります。呼吸状態の観察では、呼吸のリズム・深さ・数、喘鳴音と肺雑音の有無を記録します。

血中酸素飽和度と呼吸の観察に関わる情報は、医師の治療判断を左右する重要事項ですので、これらの測定と観察は退院まで行います。

特に小児患者が初めて入院するケースでは、看護師は患者家族に対し、気管支喘息という病気について説明したり、入院期間に行う治療の説明、疑問点の整理といった手厚いケアをする必要があります。

また、食物アレルギーによって気管支喘息が起きることがあるので、アレルギーの有無は複数回のチェックが必要になります。また給食部門にきちんと情報が伝達されているかどうかも確認しましょう。

 

3-2、2~6日目は薬の効果を確認する

入院2日目から6日目までの期間で、喘息発作の消失や喘鳴の軽減を目指します。静養と薬の効果を待つ期間といえます。

看護師は医師から退院日の見通しを聞き、患者に正しい情報を伝えます。入院期間が短縮される場合はトラブルになりにくいのですが、延長となった場合は思わぬクレームにつながります。

特に症状が治まっているのに入院期間が長引けば、患者や家族は「重大な病気が見付かったのでは」と心配になります。正確な情報を把握するだけでなく、早めに伝えてあげることも心掛けてください。

 

3-3、7~9日目は退院後の生活を見据えた看護を

入院7日目から、気管支拡張薬テオフィリンを使った治療が始まります。医師は、患者の食事量や活動量、喘鳴の程度によって退院日を判断します。

退院後の生活上の注意は、紙に書いたものを渡すとよいでしょう。またこの病気は治療の効果が出やすい反面、長期化しやすいということも、繰り返し伝える必要があります。

過度に恐がらせてもいけませんが、「軽い病気」「簡単に症状が治まった」と認識させないように注意してください。治らない場合でもコントロールは十分可能な病気です。

 

まとめ

気管支喘息の治療は、病院とかかりつけ医の連携も重要です。病院看護師が直接かかりつけ医や診療所看護師と連絡を取ることはまれですが、自院の地域連携室から退院後の患者の情報を得ることは可能です。再入院が珍しくない病気であることを覚えておく必要があります。

病院と診療所がクリニカルパスを共有する「病診連携クリニカルパス」を導入している先進地域の取り組みは参考になるでしょう。


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