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絶対に言えない!看護師が患者に秘密にしている”あるある”10選

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看護師の秘密

ナースというのは「秘密が多い職業」と言われています。ナースは、日々患者や患者の家族に秘密にしていることがあります。それは、「患者が知るべきでないこと」や「(患者には)どうしようもできないこと」であることが多いです。今回は、「ナースが患者に秘密にしていること10選」をご紹介します。

 

1. 実は、とても疲れていること

ナースは、絶対にどれだけ疲れているかを患者に言うことはありません。「疲れてる?」と聞かれて、正直に答えたいですが、答えることはありません。

 

2. 毎朝の薬の投与はとても大変な仕事ということ

薬(丸薬)を患者さんに服用してもらうのは、ナースの仕事です。しかし、ナースは、「薬(の投与)はとても時間がかかる、面倒な作業の多い仕事」ということは秘密にしています。薬を軽量し、カップにいれ、患者のベッドの横にもっていく……など実は作業が多いのです。しかも、副作用にも気をつけなければならず、非常に緊張する仕事なのです。

(お薬がすべてバーコード式で配れればいいですよね!)

 

3. ルール違反をしていること

ナースに何かをお願いしたとき、大体の答えが「できません」か「確認させてください」と答えるでしょう。

患者の安全と患者の快適さのバランスを保つのはとても大変なのです。

 

4. 体調が悪くても隠していること

たとえ体調が悪くても、ナースは、患者さんに心配をかけないように平静をよそおっています。慢性の腰痛や肩こりに悩まされているナースも、「大丈夫?」と聞かれてれば、いつも「大丈夫です」と答えています。

 

5. 他の患者が死んでしまったこと

病院では、例えばすぐ隣の部屋の別の患者の容態が悪いことを患者に伝えることはありません。ときどき、ナースがイライラしてしまったり、ぼーっとしていたりするときは、誰か別の患者が亡くなってしまったというときがありますが、決してその事実を口にすることはありません。

 

6. 家族が病気になっていること

ナースは、家族が病気になっていても、目の前の患者に集中しなければなりません。ベッドサイドでは常に100%の力を出し切るのが、ナースの仕事だからです。ですから、病気の家族がいても、仕事場で思い出すことはしません。

 

7. 家族はとても似ているということ

例えば、患者であるお父さんが思い病を乗り越えようとしているとき、家族も同じように着丈に戦います。

 

8. どれだけ飲み会に参加しているか

ナースは勤務時間中には患者さんのために全てを尽くしますが、仕事が終わったあとはみんなで飲みに行くのが通例。ですが、決して患者さんには言いません。

 

9. 患者さんがいなくなってしまうのがこわいということ

ナースのほとんどは、患者の容態が悪化したり、何か悪い反応が出てしまうことが「とても怖い」と思っています。検査などからなかなか帰ってこないときも、とても心配しています。

 

10. 残業時間中にどう患者のことを考えているか

残業時間帯も、ナースは患者のことを気にかけています。時には、残業中やシフトを外れているときも、患者の容態を電話で聞いたりするときもあるんです。

 

いかがでしたか?これらの「秘密」は、ただ秘密にしたいだけでなく、「言葉にできない」というものも多いのです。

 Reference:Huffpost


血液透析|シャントの管理と観察項目(スリル・音の有無など)

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シャント

血液透析の際に必要となるシャント。長持ちさせるためにはさまざまなことに留意しなければならず、ひとたび合併症が起こると患者の負担となるばかりか、場合によっては重篤な疾患を招いてしまうため、シャント部の観察やシャントの管理が非常に大切です。

ここでは、観察項目や管理、日常生活における注意点などについて詳しくご説明しますので、合併症の予防や早期発見・早期対処ができるよう、しっかり把握しておいてください。

 

1、シャントとは

シャントとは、動脈と静脈を体外または体内で直接つなぎ合わせた血管の事を指し、体内に溜まった老廃物を取り除くために行われる「血液透析」の際に行われます。

血液透析の目的は主に老廃物の除去であることから、効率的に浄化するための十分な血液量(毎分200cc程度)を確保しなければいけませんが、血液透析は危険度の低い静脈に穿刺し、自然に流れる静脈の血液量は血液透析を行うには不十分です。

そこで、血液量を補うために動脈に流れる血液が必要となり、動脈と静脈をつなぎ合わせるシャントの増設が不可欠になるのです。

 

2、シャントの種類

シャントには大別して「外シャント」と「内シャント」の2種類あり、患者の疾患や状態によって使い分けられますが、「外シャント」は血液の凝固が起こりやすく感染症の発症率高いことで、現在では「内シャント」が主な増設術となっています。

 

外シャント

血が固まりにくいシリコンやテフロンを用いてチューブを作り、その先端を腕の動脈と静脈に挿入し、チューブを介して動脈と静脈を連結する増設術。チューブは体外に出ていることで外シャントと呼ばれ、血液透析が発明された当初は外シャントが選択されていました。

しかしながら、チューブを介することで血液の凝固が起こりやすく、またチューブが体外にあることで感染症の発症率が高いため、最近ではほとんど行われていません。

 

内シャント

動脈と静脈を皮膚の下で直接つなぎ合わせる増設術。外科的につなぎ合わせるため、チューブは必要としません。患者自身の動脈と静脈を用いることで、血液の凝固はほとんど起こらず、また感染症の発症率も外シャントより低いため、最近ではシャントといえば内シャントを意味するほど、内シャントが実施されています。

患者自身の動脈・静脈が細い、あるいは位置関係が悪いなどの理由で使えない場合には、テフロンやポリウレタンなどの素材を用いて人工血管を作り、シャントを増設します。

 

2、シャントの観察項目

シャントは血液透析を行う上で重要なものであり、透析患者にとっての命綱です。ゆえに、シャントの閉塞や感染などのトラブルが起こると患者の負担増を招き、場合によっては死に至ることもあります。

シャントのトラブル回避においては看護師側のみの観察では不十分であり、患者の協力が必要不可欠であるため、看護師側の観察はもちろん、患者自身が積極的に実施していけるよう、以下に述べる事項について患者にしっかりと説明・促進を行ってください。

 

スリルの有無の確認

スリルとは、いわゆる“振動”のこと。動脈と静脈の吻合部(シャント部)に皮膚上から触れると、振動が伝わってきます。振動がない場合には、吻合の離脱または閉塞が考えられ、この場合には血液透析を行う上で必要となる十分な血液量が確保されていません。

シャントの閉塞は低血圧や透析中・透析後の血圧低下、長期的な透析実施に伴う血管の縮小・血瘤、静脈内側の膜の損傷に伴う内腔の狭細化、感染後の血管の狭窄など、さまざまな原因が考えられます。

多くは突然起こらず前兆を伴いますが、毎日スリルの有無を確認することで、スリルの強弱を把握でき、早期に対処することができます。スリルの有無や強弱を毎日確認するよう促すとともに、看護師側も患者の入院時には毎日確認するようにしてください。

 

シャント音の確認

シャント部に聴診器を当てると、「ザーザー」や「ゴーゴー」といった低い音が聞こえます。この低い音の時は正常に血液が流れている状態です。しかしながら、「ヒュンヒュン」や「キュンキュン」といった高い音がする場合やいつもより音が弱くなっている場合には狭窄の可能性があります。

スリルと同様に、音の変化に気づくためには毎日の確認が不可欠です。毎日確認するよう患者に促し、看護師側も直接確認するか患者に聴くようにしてください。

 

皮膚・血管の状態の確認

感染は主に穿刺した部位に起こります。穿刺部を不潔にすることで細菌が繁殖して、穿刺部周辺に発赤や発疹、熱感、かゆみ、かぶれなどの症状が現れます。また、血管に痛みや赤みが伴うこともあります。

皮膚上の軽度の感染であれば抗生物質で改善しますが、細菌が体内に侵入し敗血症を起こすと外科的治療が必要となり、患者に大きな負担となります。まずは予防のために清潔にし、早期発見・早期対処ができるよう、皮膚の状態を毎日確認するようにしてください。

また、血瘤の有無や指先の冷感・紫色化・疼痛(スチール症候群)の有無も同時に確認してください。血瘤の場合は瘤の摘出、スチール症候群の場合は血管拡張薬の使用・バンディング手術によって改善を図ります。

 

3、シャント管理

上記のように、シャント増設に伴う合併症の多くは「狭窄・閉塞」と「感染症」です。これら合併症は多発する傾向が強く、また発症するとシャントの再増設が必要となることもあり、患者の負担は非常に大きくなります。

合併症を防ぐためには、日常生活においてさまざまなことに留意する必要があり、看護師の患者に対する指導はもちろん、患者本人の協力が必要不可欠であるため、以下の留意点をしっかり把握し、患者に対して詳細に指導しつつ遵守することを促してください。

 

シャント部を圧迫しない

シャント部を圧迫することで狭窄や閉塞が起こることがあります。腕時計で締め付ける、カバンなど重たいものを持つ、圧迫されるような衣類を着る、手枕をするなど、シャント部を圧迫しないよう日頃から気をつけることが大切です。

また、シャント部だけでなく腕の動脈・静脈すべてにおいて圧迫しないことが狭窄・閉塞の予防となります。なお、血流を良くするために、シャント部の腕の適度な運動は問題ありませんが、過度な運動は血管を傷つける原因にもなるため、あくまで補佐的な運動としてください。

シャント圧迫の危険因子
・  シャントのある腕に重い物をぶらさげる

・  シャントのある腕で手枕をする

・  シャントのある腕を時計・包帯・サポーターなどで締め付ける

・  シャントのある腕で血圧測定をする

・  シャント周囲をぶつける

・  シャント周囲をひっかく

 

常に清潔に保つ

血液透析に際して静脈に穿刺を行いますが、感染症のほとんどは穿刺部周辺に起こります。穿刺部周辺を不潔すると感染確率は高まるため、常に清潔にするよう心がけます。また、清潔保持のほか、爪を短くする、乾燥によるかゆみ防止のためクリームを使用するなど、副次的な予防策を積極的に実施するよう指導してください。

シャント感染の危険因子
・  透析当日に入浴をする

・  透析後の絆創膏を翌日以降もつけたままにする

・  濡れた・湿った絆創膏をつけ続ける

・  穿刺部周辺をひっかく

・  手洗い・消毒を行わない

 

より良い生活習慣を心がける

シャントはいつかはダメになってしまい、再増設が必要となります。それに起因するのが不適切な生活習慣であり、いわゆる生活習慣病を防ぐことでシャントを長持ちさせることができます。

偏った食事を続けると血流が悪くなり、血流が悪くなることでシャントの狭窄や閉塞が起こります。また、十分な栄養が摂れていないと免疫力が低下し、容易に感染症を起こしてしまいます。バランスの良い食事や適度な運動などを継続的に行い、より良い生活習慣を心がけることを指導ならびに促進してください。

留意すべき栄養素
・  タンパク質・・・タンパク質は血液や筋肉を構成する重要な栄養素です。ただし、必要以上に摂取すると老廃物が体内に貯留し、尿素窒素・リン・カリウム値が上昇し、さまざまな悪影響を及ぼします。過度に摂取しないよう注意してください。

・  塩分・・・塩分を過度に摂取すると水分を欲し体重が増加します。また、高血圧を起因し血管に負荷がかかってしまいます。過度に摂取しないよう心がけ、定期的に血圧測定を行ってください。なお、血圧測定の際にはシャントのない腕で行ってください。

・  カリウム・・・カリウムは腎臓で排泄されますが、透析患者の腎機能は低下しているため、上手く排泄されません。カリウムを過度に摂取すると高カリウム血症となり、時に重大な不整脈や死に至ることもあるため、過度に摂取しないよう注意してください。

・  リン・・・リンの過剰摂取は、動脈硬化や骨の脆弱化、皮膚の痒みなどの影響を及ぼします。動脈硬化はシャントの狭窄・閉塞、皮膚の痒みは感染症に起因するため、リン値のコントールに努めてください。

 

まとめ

シャントは透析患者の命綱であり、狭窄・閉塞や感染症を起こすと患者の負担となるばかりではなく、重篤な二次的疾患を引き起こす可能性があります。

シャントの観察や日常生活における注意点などを詳しく把握し、患者にしっかり指導するとともに、患者本人が積極的に実施するよう促すことが合併症の予防に繋がり、シャントを長く保つことができます。

シャント管理は看護師だけでなく患者の協力も必要ですので、指導・促進をしっかり行い、合併症の予防ならびに早期対処に努めてください。

吸引の看護|口腔・鼻腔・気管カニューレ内吸引の手技と留意点

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吸引看護

鼻水や唾液などの喀痰の排出を介助的に行う吸引。操作自体はそれほど難しいものではありませんが、いくつか気をつけなければならないことがあり、間違った方法で行うと患者の負担になるばかりか、時として症状の悪化や感染症などの二次的疾患を招いてしまいます。

当ページでは、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内の3つの吸入法について詳しくご説明しますので、吸引において不安があるという方は最後までお読みいただき、参考にして頂ければ幸いです。

 

1、吸引(喀痰)とは

私たちは、鼻をかんで鼻水を排泄したり、すすって唾液として吐いたり、唾液を飲み込むことで自力で鼻水・唾液の排泄を行います。

しかしながら、加齢に伴う反射機能の低下、嚥下障害があり胃の中に飲み込めない、咳ができない、気管支拡張症や肺化膿症など痰が多く出る疾患を有している、気管切開をしている場合など、自力ですべての鼻水・唾液を排泄できないとそれは局所に溜まっていき、呼吸困難や窒息、肺炎などの感染症の原因となってしまいます。

それら二次的症状・疾患を防ぐために、また安楽のために看護師が吸引装置を用いて、自力排泄が困難な患者の喀痰(唾液や鼻水など)を吸引してあげることが必要となるのです。

なお、吸引には鼻の穴から吸引カテーテルを入れる「鼻腔内吸引」、口腔内に吸引カテーテルを入れる「口腔内吸引」、そのほか気管切開している患者には気管カニューレ内に吸引カテーテルを入れる「気管カニューレ内吸引」があります。

 

2、吸引が必要となる病態・疾患

吸引が必要となるのは、主に「嚥下障害、嚥下反射が弱い」、「一次的に嚥下・呼吸機能に障害がある」、「二次的に嚥下・呼吸機能が低下している」場合です。また、これら以外でも患者が必要とする場合には適宜、行います。

 

嚥下障害、嚥下反射が弱い

事故による脳外傷、脳血管障害や低酸素血症による重度の脳障害、遷延性の意識障害や高度の脳発達障害のある先天性疾患や脳性麻痺等の重症心身障害児など、反射的な嚥下や咳き込むのが困難な場合。

 

一次的に嚥下・呼吸機能に障害がある

脳梗塞、脳出血、筋ジストロディー、進行期のパーキンソン病、筋委縮側索硬化症などの神経筋疾患を有する場合。

 

二次的に嚥下・呼吸機能が低下している

寝たきりの高齢者、神経筋疾患以外の症例に伴う全身の運動機能の低下とともに嚥下・呼吸機能が二次的に低下している場合。

 

3、喀痰の性状

喀痰の性状は、主に吸い込んだホコリの量や細菌の種類などによって変化しますが、通常時はやや粘り気があり無色透明~白色で、臭味はありません。

一方、粘り気が強く黄色~緑色で、臭味が強い場合には細菌に感染している場合があり、口腔内・鼻腔内・気管などに傷がついている場合には、血の混じった赤い喀痰が出ます。血の混じった喀痰においては、少量であれば問題はありませんが、真っ赤なサラサラした褐炭であれば緊急を要する出血をしている可能性があるため、早急に医師に報告し対処しなければいけません。

なお、粘り気が強いとき、色味が黄色~緑色のとき、臭味が強いとき、喀痰が硬いときには、体内の水分が不足している可能性もあります。喀痰の性状が通常ではない場合には注意深く経過観察する必要があります。

吸引は単なる喀痰の排出と考えられがちですが、喀痰の性状によって患者の状態や疾患を判断できることが多々あるため、吸引時には性状をしっかり確認するようにしてください。

正常な喀痰 異常な喀痰
・  やや粘り気がある

・  無色透明~やや白っぽい

・  臭味なし

・  粘り気が強い(またはサラサラしている)

・  黄色~やや緑色っぽい

・  臭味が強い

・  濁りが強い

・  いつもより喀痰の量が多い

・  硬くまとまっている

・  血液が混じっている

 

4、吸引が必要となる時

通常は、ナースコールを通して患者から依頼を受けた時に行います。また、食後や飲水後は喀痰が溜まりやすいため、飲食において介助を必要とする場合には飲食後に吸引の意思を伝え、同意があれば吸引を行います。

さらに、状況によっても吸引を必要となる場合があります。たとえば、唾液が口の中に溜まっている、上気道でゴロゴロとして音がする、呼吸器アラームが鳴っている、酸素飽和度の値が低下している、明らかに呼吸がしにくそうな場合など、状況に応じて患者の同意のもと行います。

注意点として、時間を決めて定期的に吸引するのではなく、必要なときにのみ行うようにしてください。

吸引が必要となる時 ・  ナースコール

・  患者の表情により要望をキャッチする

・  異物の音が聞こえる(ゴロゴロ、ヒューヒューなど)

・  胸を触ると音が響く

・  呼吸器アラーム(気道内圧の上昇)

・  血中酸素飽和度の低下

 

5、吸引の手順

ナースコールや訪室時の患者の依頼によって吸引を行う際、まずは手洗いやカテーテルの清潔・無菌、ベッド周辺の掃除・片付けなど、感染予防に取り組んでください。ベッド周辺の掃除は軽視されがちですが、吸引に使用する各種物品が汚れてしまい感染症の原因となる恐れがありますので、掃除・片付けはしっかりしておいてください。

また、始めるにあたって「声かけ」も非常に大切です。心の準備または体の準備ができていないうちにカテーテルを挿入すると、苦痛により驚き、カテーテルが気道粘膜に接触したり、誤嚥を起こしたりと支障をきたします。患者の同意を確認するという意味でも、吸引開始時には必ず声かけを行ってください。

 

口腔内・鼻腔内吸引の手順

①吸引における意思・同意を確認する

②手洗いの後、必要に応じて未滅菌手袋をはめる

③吸引カテーテルを吸引器に連結した接続管に繋げる

④吸引カテーテルを利き手に持ち、反対の手で吸引器の電源を入れる

⑤親指で吸引カテーテル先端、あるいは根元を塞ぐ

⑥吸引圧が20KPa以下であることを確認する

⑦声かけを行い、開始の旨を伝える

⑧指で吸引カテーテルを軽く折り曲げ、陰圧をかけずに口腔内に挿入する

⑨折り曲げていた指を離し、捻じるように回転させながら吸引する

⑩吸引終了の旨を伝える

⑪吸引カテーテルの外側をアルコール綿で拭き取る

⑫吸引カテーテルと接続管の内腔を水で洗い流す

⑬吸引器の電源を切って終了する

 

気道カニューレ内吸引の手順

①吸引における意思・同意を確認する

②手洗いの後、使い捨ての手袋をはめる

③吸引カテーテルを吸引器に連結した接続管に繋げる

④吸引カテーテルを利き手に持ち、反対の手で吸引器の電源を入れる

⑤親指で吸引カテーテル先端、あるいは根元を塞ぐ

⑥吸引圧が20KPa~26KPa以下であることを確認する

⑦声かけを行い、開始の旨を伝える

⑧人工呼吸器使用者の場合、フレキシブルチューブのコネクタを気管カニューレから外す

⑨指で吸引カテーテルを軽く折り曲げ、陰圧をかけずに気管カニューレ内に挿入する

⑩折り曲げていた指を離し、ゆっくり引きながら15秒以内に吸引する

⑪人工呼吸器使用者の場合、フレキシブルチューブのコネクタを気道カニューレに接続する

⑫吸引終了の旨を伝える

⑬吸引カテーテルの外側をアルコール綿で拭き取る

⑭吸引カテーテルと接続管の内腔を水で洗い流す

⑮吸引器の電源を切って終了する

 

6、吸引時の注意点

口腔内や鼻腔内、気道内の粘膜は非常に柔らかいため、吸引チューブの不適切な操作により細かい血管が傷つき出血する場合があります。また、圧をかけることで吸引を行うため、必然と苦痛や不快感が伴います。ゆえに、吸引チューブの操作は適切に、そして細やかな配慮が必要不可欠です。

また、吸引による感染が懸念されます。一度感染を起こすと治すのが難しく、呼吸困難をさらに悪化させ、時として死に至ることもあります。カテーテル側の無菌操作に加え、看護師側の減菌・清潔管理もしっかり行わなければいけません。

 

迅速かつ効率的な吸引を

口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内、すべての吸引では、カテーテルによる刺激や吸引時の圧によって苦痛や不快感が伴います。患者が動くことでカテーテルが粘膜に接触することがあり、これにおいては防ぎようがありませんが、看護師側のミスで接触させるのは防がなければいけません。

さらに、吸引が長引くことで苦痛や不快感の時間も長くなり患者の負担になってしまいます。場合によっては低酸素血症や肺胞虚脱(主に気管カニューレ内吸引)を起こすこともあるため、迅速かつ効率的に可能な限り10~15秒以内で吸引を終わらすようにしてください。

 

挿入深度に注意し適切な操作を

カテーテルの挿入深度を見誤り、必要以上に挿入してしまうと、口腔内であれば嘔気・出血、鼻腔内・気管カニューレ内であれば苦痛・出血などを伴います。口腔内での嘔気は消化管内の飲食物の逆流をもたらすこともあり軽視できません。

カテーテルを挿入する長さの目安は、口腔内が10~12cm、鼻腔内が15~20cm、気管カニューレ内が12~15cmですが、人それぞれ異なりますので、あくまで目安とし、各患者に合わせた深度に止めてください。

また、口腔・鼻腔・気管すべてにおいて湾曲させて挿入しなければ奥まで入りません。この際、カテーテルが各部の粘膜に接触すると出血することがあります。また、異なる場所に挿入するとさまざまな支障をきたします。必ず構造をしっかり把握した上で、粘膜に接触させないのはもちろん、不適切な場所に挿入しないよう注意してください。

 

感染予防のために清潔・無菌操作を

人間の体は外からの多少の細菌では感染は起こりにくいものの、吸引介助を必要とする患者は健康な人と比べて免疫力が低下しています。それにより、通常よりも感染症の発症率は高いと言えます。

また、上気道(口腔・鼻腔・咽頭・ 喉頭)は常在菌や弱毒菌が住み着いていますが、それより下の下気道は原則として無菌状態です。ゆえに、特に気道カニューレ内吸引は無菌的に行わなければいけません。口腔・鼻腔吸引においては原則として無菌的に行う必要はありませんが、看護師の手やカテーテルは清潔にし、感染予防に努める必要があります。

なお、患者の中には上気道に各種抗生物質に抵抗性を持った薬剤耐性菌(メチリン耐性ブドウ球菌・多剤耐性緑膿菌など)が住み着いている場合があります。健康な人なら感染しないものの、免疫力の弱った患者は重篤な感染症を起こし治療も困難であるため、院内感染に細心の注意を払ってください。

 

まとめ

吸引が初めての方や苦手の方でも機会が多いことですぐに慣れ、短期間のうちに適切に行えるようになりますが、回数を重ねるほど減菌・無菌対策を怠り、カテーテル操作も雑になってしまうもの。

そうなると、看護師側のミスや配慮に欠けた操作により、患者の負担増、粘膜からの出血・炎症、低酸素血症・肺胞虚脱、感染症などを起こしてしまいます。

慣れれば手技自体は簡単ですが、慣れてきた頃の事故の発生率が高く、時として重篤な疾患に発展することもあるため、吸引時間やカニューレの挿入深度や減菌・滅菌操作などを常に意識し、また時には初心に戻って注意点などを確認しておいてください。

チアノーゼの看護|症状・原因からみる効果的な対処法

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チアノーゼの看護

さまざまな疾患や症状の変化に伴って現れるチアノーゼ。一症状であり、ほとんどは原疾患に起因しているため、通常は経過観察で問題はありません。しかしながら、場合によっては長期的な発症により合併症を引き起こすことも多々あるため、軽視すべきではありません。

今回は、概要から対処までチアノーゼについて詳しく解説しますので、チアノーゼ患者の看護に関して不安がある方は、ぜひ最後までしっかりお読みいただき参考にしてください。

 

1、チアノーゼとは

チアノーゼとは、血中の還元ヘモグロビンや非酸化ヘモグロビンが総量で5g/d以上に増加し、皮膚や粘膜が紫色~暗紫色になる状態のことを言います。

血中の酸素量(血中酸素飽和度)は、健常者の場合、動脈血酸素飽和度が100%、静脈血酸素飽和度が70%、毛細血管内血液酸素飽和度が70%ですが、これらのうちのすべて、あるいはいずれかが低下することで、赤血球中のヘモグロビンが通常時の赤色から紫色~暗紫色へと変化します。

要するに、チアノーゼは酸素が欠乏した時に起こり、皮膚上からみえる紫色~暗紫色の色調はヘモグロビンの色なのです。毛細血管が多い、表皮が薄いなどの理由から、多くは口唇、口腔粘膜、鼻尖、耳朶、指先、爪床などに発症しますが、チアノーゼを引き起こす原因疾患の種類によっては全身にみられるものもあるなど、ひとえにチアノーゼと言っても発現部位や原疾患の種類は多岐に渡ります。

チアノーゼは一症状であり軽度なものが多いため、通常は経過観察で様子をみますが、長期化することで呼吸困難や意識障害、場合によっては重篤な合併症を引き起こすこともあります。特に小児や高齢者においては重篤化する傾向が強いため、軽視すべきではありません。

チアノーゼによる合併症の発症を防ぐためには、原因となる疾患の有無、随伴症状の有無など、患者情報を細かく把握した上で綿密な観察が必要不可欠。また、チアノーゼに関する知識も非常に重要ですので、適切な看護を行うにあたって、深い知識を有しておいてください。

 

2、チアノーゼの種類と原因疾患

チアノーゼは、大きく分けて「中枢性チアノーゼ」「末梢性チアノーゼ」「血液性チアノーゼ」の3つに分類されます。

中枢性チアノーゼは、動脈血酸素飽和度、静脈血酸素飽和度、毛細血管内血液酸素飽和度のすべてが低下した全身性のチアノーゼのことで、呼吸機能障害や左右シャント、肺胞内酸素分圧低下の3つが主な原因。中でも呼吸機能障害(特に小児)が原因となることが多いのが実情です。

末梢性チアノーゼの場合には動脈血酸素飽和度は正常で、静脈血酸素飽和度と毛細血管内血液酸素飽和が低下する場合に該当します。また、中枢性チアノーゼとは異なり、末梢性チアノーゼの多くは指尖や鼻尖などの末端部に症状が現れ、末梢循環不全や動脈・静脈閉塞性疾患が主な原因で、新生児にみられる低血糖の一症状として発現することもあります。

血液性チアノーゼは、酸素親和性の低いメトヘモグロビンが関与しており、血中のメトヘモグロビンの含有量は正常であれば2%未満ですが、これが15%以上となるとチアノーゼの症状に加え、頭痛や倦怠感など他の症状が併発します。原因は主にヘモグロビンの異常によるもので、乳児に多くみられます。

1、中枢性チアノーゼ
 1)呼吸機能障害
 ①肺胞低換気
  中枢性低換気 泣き入りひきつけ、脳圧亢進、髄膜炎、神経筋疾患
  末梢性低換気 呼吸窮迫症候群、新生児一過性多呼吸、胎便吸引症候群、横隔膜へルニア肺水腫、新生児遷延性肺高血圧、重症肺炎重症喘息、気道異物、クループ、間質性肺炎、cystic fibrosis
 ②換気血流比不均等
 ③拡散障害
 2)右左シャント
 ①先天性心疾患 チアノーゼ性心疾患(Fallot四徴、両大血管右室起始、完全大血管転位、総肺静脈環流異常、肺動脈閉鎖、三尖弁閉鎖、総動脈幹、単心室左心低形成など)、アイゼンメンゲル症候群
 ②先天性肺血管異常 肺動静脈瘻
 3)肺胞内酸素分圧低下 高地環境
2、末梢性チアノーゼ
 1) 末梢循環不全 低心拍出症候群、低血糖、寒冷曝露、赤血球増多症、レイノー現象
2)動脈閉塞性疾患 血栓性動脈炎、動脈性塞栓症、閉塞性動脈硬化症
3)静脈閉塞性疾患 血栓性静脈炎、静脈瘤
3、血液性チアノーゼ

(ヘモグロビンの異常)

先天性メトヘモグロビン血症、二次性メトヘモグロビン血症(フェナセチン、硝酸剤、一酸化窒素吸入)、ヘムグロビンM血症、スルホヘモグロビン血症、乳児メトヘモグロビン血症

 

3、チアノーゼによる全身合併症

呼吸器に関わる疾患が原因でチアノーゼを呈する場合には、おおむね酸素投与などにより短期的に改善を図ることができますが、その他の多くの疾患が起因している場合には酸素投与では改善されず、原因となる疾患自体を治さなければいけません。

また、チアノーゼの症状が継続的にみられる場合には、さまざまな全身合併症を発症することがあり、場合によっては死に直結することもあるため、長期にわたってチアノーゼが持続する場合には合併症の管理が非常に重要となります。

長期的なチアノーゼによる全身合併症
①血液学的異常 赤血球増多、過粘稠度症候群
②末梢血管異常 血管新生、血管拡張
③出血傾向 血小板減少、凝固能低下
④ビリルビン代謝異常 胆石、胆嚢炎
⑤尿酸代謝異常 高尿酸血症、痛風
⑥肺血管障害 肺出血、肺動静脈瘻、肺血栓
⑦脳血管障害 脳梗塞
⑧腎臓合併症 蛋白尿、腎不全、ネフローゼ症候群
⑨四肢・長管骨の異常 ばち状指、肥厚性骨関節症
⑩感染性心内膜炎

 

①血液学的異常

慢性的な低酸素血症によるエリスロポイエチンの増加に伴い、赤血球が増加します。また、血液粘稠度の上昇による過粘稠度症候群では、頭痛、めまい、耳鳴り、疲労、倦怠感、失神、複視、視野欠損、指尖・口唇の感覚異常、筋肉痛、筋力低下などの症状を呈し、多くはヘマトクリット値が65%以上になるとこれらの症状が発現します。

 

②末梢血管異常

血液粘稠度増加に伴うずり応力(shear stress)により、血管内皮から一酸化窒素が放出され、血管の拡張・蛇行が出現します。また、慢性的な低酸素状態では、末梢血管や毛細血管が新生あるいは増生します。

 

③出血傾向

ヴォン・ヴィレブランド因子をはじめとする凝固因子の低下、血小板の減少・機能異常に伴い、出血傾向を示し、末梢血管の増生も相まって、鼻出血、歯肉出血、月経過多などがよくみられます。出血傾向を示すと、手術時に大量出血をきたすことがあるため、注意が必要です。

 

④ビリルビン代謝異常

赤血球の増多に伴いビリルビン代謝は亢進しますが、肝臓での処理が追いつかなくなると解毒作用が働かなくなり、グルクロン酸抱合されない間接ビリルビンが胆汁に排泄されるようになります。その結果、間接ビリルビンはカルシウムと結合し、ビリルビンカルシウム結石が生成されます。また、胆嚢炎などの重篤な感染症を引き起こすことも少なくありません。

 

⑤尿酸代謝異常

尿細管における尿酸再吸収増加、赤血球破壊に伴う尿酸産生により、血液中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症や痛風を引き起こすことがあります。

 

⑥肺血管障害

出血傾向や、肺動静脈瘻、肺塞栓、肺動脈瘤破裂、肺内新生血管、体肺側副血行路などの肺血管の異常が原因となり、時に致命的となることがあります。喀血や肺出血においては成人期においても比較的多く認められ、気管支鏡検査では多量の出血を伴うこともあるため注意が必要となります。

 

⑦肺血管障害

脳血栓の発症率は多くはありませんが、頭部CT・MRI検査において無症候性陳旧性脳梗塞を認めることは少なくありません。

 

⑧腎臓合併症

糸球体の肥大、糸球体毛細管の増生と拡張、メサンギウム基質の増加、メサンギウム細胞増殖、メサンギウム融解、傍糸球体細胞の増殖、輸入細動脈の拡張、糸球体病変などの病理学的変化に伴い、チアノーゼ腎症をきたします。

 

⑨四肢・長管骨の異常

毛細血管内の血流の著しい低下、酸素放出量増加に伴う酸素飽和度の低下が継続化すると、爪の付け根が肥大し、爪の先が手の平側に曲がって大きくなる“ばち状指”となり、多くは幼児期以降に出現します。

 

⑩感染性心内膜炎

チアノーゼ性心疾患に起因し、多くは術後(姑息術後)にチアノーゼが残存する時期に発症し、時に重篤化することもあるため注意が必要な合併症です。

 

4、チアノーゼの看護

チアノーゼというのは症状であり病気ではありません。「2、チアノーゼの種類と原因疾患

」に記載してあるように、チアノーゼを引き起こす原因疾患は多岐に渡り、これら原因疾患を改善させることでチアノーゼが消失します。

しかしながら、治療中において体温の低下や吸気量の減少など、副次的に起こる症状によりチアノーゼが出現することも多々あり、この場合には“チアノーゼの出現=患者状態の悪化”と捉えることができるため、治療中におけるチアノーゼの発現に起因する原因を改善することが大切です。

 

4-1、観察とアセスメント

まずは、出現しているチアノーゼが「中枢性チアノーゼ」なのか、「末梢性チアノーゼ」なのかを確認してください。「中枢性チアノーゼ」であれば症状が全身に認められ、「末梢性チアノーゼ」であれば口唇や四肢末端など局所的に認められます。

分類を把握することで、それが背景疾患に起因しているものなのか、入院環境や患者状態の悪化によるものなのかを判断することができます。

なお、チアノーゼのみを主訴とすることは稀であり、多くはチアノーゼとともに何らかの症状が発現します。

起因する疾患の有無 呼吸器疾患・心疾患などの有無、気管支喘息、異物混入、服薬歴など
状態・発現部位 症状の程度、急性・慢性の確認、発現の時期、部位(全身性か局所性か)、活動・動作(安静時・入浴・運動・哺乳・排便)との関連
随伴症状 呼吸状態、意識状態、けいれん、気分、食欲、脱水症状、浮腫、心音(心雑音の有無・性状・ギャロップ)の有無
全身状態 体温、上下肢の血圧差、抹消冷感、四肢における脈拍触知状態、血中酸素飽和度、活気

 

4-2、症状出現時の対処

背景疾患が起因している場合には、その疾患を改善させることでチアノーゼが消失するため、ひとまず経過観察で問題ありません。ただし、体温の低下や吸気量の減少、激しい体動など背景疾患と深く結びつかない場合には、それらの原因を取り除き、積極的な対処を行ってください。

 

①保温

体温の低下に伴い、チアノーゼが発現する場合には、患者の体全体を温めてください。口唇や手足末端など局所的に発現している場合でも、体全体の血流を良くするために毛布を一枚増やすなど工夫し、マッサージや手足湯などを行うことでも効果が得られます。

 

②安静な体位の維持

チアノーゼ発現時には安静な体位を維持するとともに、呼吸困難感が同時にみられる場合には上半身への血流を確保する目的で、体を折りたたむように膝を胸につける体位(膝胸位)をとらせてください。この際、衣類や寝具の圧迫除去にも努めてください。また、患者本人で安静な体位の維持・膝胸位が困難な場合があるため、患者家族への説明と協力を仰ぎましょう。

 

③酸素の投与

チアノーゼと酸素量は密接な関わりがあります。酸素を投与することで血中酸素飽和度が上昇し、チアノーゼ症状は瞬く間に消失します。呼吸困難感がある場合には気道確保の上、積極的に酸素投与を行い、酸素チューブ離脱の有無など継続的に投与ができているかを適宜確認し、必要に応じて吸痰を行ってください。

 

④薬物の投与

薬物によりチアノーゼを改善させることは難しく、またチアノーゼ自体は軽度な症状であることから通常は薬物治療を行わず、①保温、②安静な体位の維持、③酸素の投与、の3つの方法で改善を図ります。留意点として、有する疾患の治療薬の副作用としてチアノーゼが発現することがあります。通常、程度が弱ければ継続投薬を行いますが、程度が強くチアノーゼに加え他の症状が発現し患者の負担が大きい場合には、薬物の変更を行います。ただし、薬物の変更は医師の判断ですので医師に報告の上、指示を仰いでください。

 

まとめ

チアノーゼの原因の多くは背景疾患に起因しており、背景疾患の改善によりチアノーゼ症状は消失するため、通常は経過観察で問題ありません。

しかしながら、背景疾患に起因しておらず、環境や行動などによりチアノーゼが発現する場合には、「4-2、症状出現時の対処」で記載した各項目を積極的に行っていってください。また、これらは背景疾患と起因している場合でも、改善がみられる場合が多々ありますので、必要があれば実践してください。

ミルキングとは|適切かつ効果的に行うための方法と注意点

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ミルキング看護

ドレーンなどの内部に貯留した血液や排液の排出のために行われるミルキング。手技自体は簡単であるものの、不適切な方法で行うと症状の増悪や二次的合併症の発症を助長してしまいます。

ここでは、ミルキングの注意点やミルキングの方法・手順についてご説明しますので、適切な方法で行うための知識習得にお役立てください。

 

1、ミルキングとは

ミルキングとは、ドレーン(以下、チューブも統合する)に貯留した血液や排液を人為的に、排液バッグの方に流す作業のことを言い、搾って(しごいて)排出を促すことから、「乳搾り」の意味を持つ「Milking」が医療用語として使用されています。

ドレナージには、腹腔ドレーンや胸腔ドレーンなどがあり、各部に貯留した血液や排液などを体外に排出させるために行われます。しかしながら、常にドレーンから十分な量の血液・排液が排出されるわけではなく、また屈曲・圧迫、浮遊物・凝血に伴う狭窄・閉塞などにより、ドレーン内に血液・排液が貯留してしまうことがあります。

この状態が続けば適切に排出されず、ドレナージが正常に行われなくなり、症状の悪化を招いてしまいます。それを防ぐために、適宜ミルキングを行い、正常に流れるようにしてあげる必要があるのです。

なお、ミルキングはドレーンだけでなく、尿道バルーンカテーテルやシャント血管、点滴など、貯留した“液体”を援助的に排出する作業すべてに該当しますが、ここでは主にドレーンにおけるミルキングについてご説明します。

 

2、ミルキングの種類

ミルキングには、ミルキングローラーと呼ばれる専用の器具を用いて行う場合と、手で行う場合の2つの方法があります。ミルキングローラーを使用すれば、ドレーン内に貯留した血液・排液を効果的に排出させることができますが、その反面、ドレーンを損傷させる恐れがあります。

反対に、手で行えばドレーンを損傷させる可能性は低い反面、ドレーンを圧迫する力が弱く接地面が少ないことで、排出効果はミルキングローラーより劣ります。しかしながら、ミルキングは必ずしも必要な行為ではなく、貯留した血液・排液が自然に排出されることも多々あるため、現在では安全性を考慮して多くの医療施設では手によるミルキングが行われています。

 

3、ミルキングの注意点

ミルキングでも最も懸念すべきは「逆流」です。特に脳室・脳槽ドレーンにおける髄液の逆流は致命的となり、生死に関わることがあるため、逆流に気をつけ適切な方法で行わなければいけません。

また、シャント血管におけるミルキングは、血管の状態によって禁忌が存在します。①シャント作製後2週間未満、②新シャント穿刺3回目までの血管、③狭窄部位に強度の痛み・腫脹がある場合、④シャント瘤が外科的に処置が必要となる血管、⑤ステントのエッジ部分、⑥高齢者・表皮が薄くない血管や表皮剥離のリスクがある場合など、禁忌は多岐に渡るため、シャント血管におけるミルキングは医師の指示に従ってください。

 

4、ミルキングの方法

ミルキングの方法は至ってシンプルで難しいものではありませんが、逆流により重篤な疾患を助長する危険があるため、逆流に留意して適切な方法で実施する必要があります。

以下に、「ミルキングローラー使用時」の方法と、「手で行う場合」の方法の2通りをご紹介しますが、基本的な方法はどちらも同じです。

 

4-1、ミルキングローラー使用時

①ドレーンを手で持つ

ドレーン抜去を防ぐために、引っ張らないよう少し撓みをもたせるように手で持ち固定します。また、逆流を防ぐために、ミルキングしたい位置よりやや患者側のドレーンを指で遮断し、そのまま保持します。

 

②ローラーを挟む

ミルキングしたい場所にローラーの中央を挟みます。ローラーのエッジ部(端)を挟むと、ローラーが回転せずドレーンを損傷させる危険があるため、必ず中央を挟むようにしてください。

 

③ゆっくり滑らせ排出させる

ハンドルを押さえたまま、ゆっくり排液バッグの方に滑らすような感じで移動させ排出を促します。この際、ドレーンが引っ張られることで抜去の可能性があるため、ドレーンを持っている手(指)をしっかり固定しておいてください。

 

④伸びたドレーンを元に戻す

排出が終わると、ローラーで挟んだまま、ミルキングによって伸びてしまったドレーンを元に戻します。

 

⑤遮断した流路を解放する

最初に指で遮断していた患者側のドレーンを開放し、次にローラーのハンドルを緩めて流路を開放します。これらの作業を必要な回数繰り返してミルキングを行います。

 

4-2、手で行う場合

①ドレーンを手で持つ

ドレーン抜去を防ぐために、引っ張らないよう少し撓みをもたせるように手で持ち固定します。また、逆流を防ぐために、ミルキングしたい位置よりやや患者側のドレーンを指で遮断し、そのまま保持します。

 

②ゆっくり滑らせ排出させる

ミルキングした場所を反対の手の親指と人差し指で圧迫しながら、ゆっくりと排液バック側へずらして排出させます。

 

どちらも逆流を防ぐため、また効果的に排出させるために、患者側のドレーンより排液バック側が下になるようにし、ゆっくり絞るようにしてください。

 

まとめ

ミルキング自体はそれほど難しいものではありませんが、不適切な方法で行うと逆流の危険があります。また、強く搾りすぎるとドレーンが損傷し交換が必要となることもあるため、適切な方法で行う必要があります。

ミルキングローラーを使用する場合には、損傷の危険がさらに高くなりますが、必ず医師の指示のもとで使用するようにしてください。

医者が絶対に言わないADHDの子どもの真実

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こども

子どもにとって、10年以上にもわたって、1日8時間以上教室でずっと、じっとし続けることは、ほぼ非現実的なことなのです。仮にじっとできてないからといって、医学的に問題があるとは限りません。今回は、医者や教育者が語らない、両親が知らないADHDの真実を4つご紹介します。

 

1. 集中力を維持できないことはおかしいことではない

集中力

多くの医者や先生は、子どもが教室でじっとし続けられないからといって、すぐに「医学的に問題がある」と決めつけるのはよくないことを知っています。子どもが興味のないもの(特に動かないもの)に興味が持てず、動き回ってしまうことは不自然なことではありません。その結果、授業の内容に集中力が向けられず成績が下がってしまうものですが、成績が悪い子どものほうが、成績の良い子どもよりもより多くの知識があることもあります。

 

2. 無秩序の裏側には創造性がある

創造力

最近の研究によると、ADHDの子どもと創造性に富んだクリエイターに共通する部分があるといいます。それが、“想像力を抑えられない”ということ。学校の教育では想像力や創造性に対する客観的な評価軸がなく、軽視されがちですが、専門家によると、ADHDの人はそうでない人よりもクリエイティビティ性が高いと言われています。

 

“学校教育の問題点は、「なんでも教えよう」とすること。しかもその動機は「成績を落としたくない」「教室から追い出されるかも」という、恐怖心でしかない。興味がモチベーションになれば、まるで爆竹のように学びが進んでいく”と指摘する専門家も。

 

3. ADHD診断は必ずしも“医学的”とはいえない

看護師のアドバイス

ADHDは精神疾患に分類されますが、血液検査などの“医学的”診断方法はなく、全て診断マニュアルに従った診断になります。

海外では、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)のパネルメンバーの約90%が、何かしらの医薬産業とビジネス的なつながりがあるなど、医薬業界とのコネも示唆されています。

ですから、もしかしたらADHDの診断結果も、お金目当ての診断の可能性だってあるのです。

 

4. 最新研究が明かす、ADHDの子どもの集中力を伸ばす方法

看護師_離職率

最新研究では、ADHD的(多動や注意欠陥)症状を改善する一つの方法として、「食事療法」があるといわれています。グルテンフリーとカゼインフリーの食物が、自閉症的症状の緩和に役立つことが知られはじめており、ADHDの子どもを持つ親の間ではすでに浸透しはじめています。また、Mayo Clinicによると、一定の食品保存料や着色料も症状を促進させるともいわれているので、できる限オーガニックな食物を選ぶことも大切です。また、人工砂糖ではなく、フルーツなどを摂取することも効果的。

さらに、太極拳やヨガをすることで、気分を落ち着かせ、多動の症状が緩和したという報告も。

ですが、基本的にやはり必要なのは、「(ADHDの)子どもの目線にたって話す」ということ。

 

そして、親として大切なことは、子どもに貼られた「ADHD」というレッテルをうのみにしないことと、「悪いのは、子どもではなく環境である」という原点に立ち戻ることなのです。

reference:collective-evolution

アンプタの術後看護|合併症の予防と疼痛・精神不安へのケア

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アンプタ看護

アンプタ後の合併症は多岐に渡り、合併症の種類や程度によっては再切断を行う必要がでることもあります。また、四肢の喪失に伴う精神的負担は多大であり、中には精神障害を患う患者もいるほどです。

看護師の少しの努力で患者のQOLの向上、リハビリテーションへの積極的な参加、早期の社会復帰を援助することができますので、当ページでアンプタの概要や起こりうる合併症の種類、看護のポイントなどについて詳しく学び、今後の看護実践にお役立てください。

 

1、アンプタとは

アンプタとは、“四肢の切断”または“切除術”を意味する医療用語のこと。事故などによる重度の外傷、凍傷、糖尿病や動脈硬化症などの重度の血管障害、重度の感染症、悪性腫瘍など、アンプタ以外での治療が困難な場合の最終手段として行われます。

近年では、義肢の製作技術・装置技術が進歩したことで体幹に近い高位の部位での切断が可能になりましたが、原則的には患者の負担や生活・社会復帰における影響などを考慮して、なるべく長い断端を残すように切断しています。

アンプタを行えば多くは原因となる症例・疾患がなくなりますが、それで完結というわけではなく、アンプタ後に起こりえるさまざまな合併症に対処していく必要があり、また四肢切除に伴う精神的不安を呈する患者が非常に多いため、合併症への対処に加え精神的安楽を図るための看護が重要となってきます。

 

2、アンプタの適応

アンプタが適応となる症例・疾患、「重度の外傷・凍傷」「血管障害に伴う四肢壊死」「重度の感染症」「悪性腫瘍」など多岐に渡りますが、医療技術の発展に伴い、アンプタを回避できる場合も多々あります。

経済の発展や食生活の変化に伴い、動脈硬化症や糖尿病によるアンプタの症例が増加してきており、これらは他の多くの原因症例・疾患と異なり、予後良好とは言えず薬物療法や生活習慣の改善など継続的な治療が必要となります。

 

重度の外傷・凍傷

事故などにより、すでに広域に切断されている、主要となる血管が損傷し修復が困難、そのほか重度の軟部組織・神経の損傷など、いわゆる重度四肢外傷で外科的治療が困難な場合にアンプタが適応となります。また、凍傷では組織の壊疽が進行し修復が困難な場合にアンプタが実施されます。

 

血管障害に伴う四肢壊死

動脈硬化症に伴う血管の閉塞(閉塞性動脈硬化症)、糖尿病による壊疽(糖尿病性壊疽)など、重度の血管障害に陥った場合に適応されます。ただし、近年ではインターベンション治療によって拡張する新たな治療法が開発され、これによりアンプタを回避できる場合もあります。

 

重度の感染症

壊死性蜂巣炎や壊死性筋膜炎、ガス壊疽など重度の感染症に陥ると、抗生物質で改善がみられなく進行し続けるためにアンプタを実施する必要があります。また、細菌性の軽度の感染症であっても、感染が広域に達したり深部にまで広がってしまうと抗生物質の効果が追い付かず、全身感染を防ぐために早期にアンプタを行う場合もあります。

 

悪性腫瘍

骨肉腫・軟部肉腫などで血管や神経を巻き込んでいる症例、または転移の可能性のある場合で、患肢温存術での効果がみられない場合にアンプタが実施されます。

 

3、アンプタ後の合併症

アンプタ後の合併症には大きく分けて「身体的合併症」と「精神的合併症」の2つがあります。

「身体的合併症」には、皮膚創部の壊死、血液の循環不良・再灌流症候群、筋肉・腱の機能障害、感染、浮腫、幻肢痛、断端神経腫などがあり、「精神的合併症」には、社会復帰への不安、生活の変化に対する不安などがあります。

精神的な問題は厳密に言えば合併症に分類されませんが、四肢切断に伴う精神的負担は多大であり、看護師の支援が重要となってくるため、ここでは精神的な問題も合併症の1つとして考えます。

 

3-1、身体的合併症

皮膚創部の壊死

アンプタ後には断端の皮膚縫合部が壊死しやすく、中でも血管障害や循環障害が原因の場合には壊死が起こりやすい傾向があり、一度壊死が起こると壊死した皮膚を切除して再縫合する、または高位での再切断が必要となります。

 

血液の循環不良・再灌流症候群

アンプタ後に血液の流れがつまって循環状態が悪くなり、再切断が必要となることがあります。また、上肢や大腿部での再接着においては、アンプタ後に急な血流の再開が起こり、それに伴って腎障害などの再灌流症候群を起こすこともあります。

 

筋肉・腱の機能障害

癒着などにより筋肉や腱の動きが悪くなり、手足が十分に曲げることができない機能障害が残ることがあります。ただし、リハビリテーションで機能の改善・再生を図ることができます。

 

感染・浮腫

アンプタ後まもなくの断端は縫合が不完全であり、細菌感染を起こしやすい状態にあります。一度感染を起こすと深部へと広がることが多く、その場合には高位での再切断が必要になるため、厳重な清潔保持と観察が不可欠。また、義肢着用における接触皮膚炎、外傷後表皮嚢腫、毛嚢炎、白癬、摩擦性皮膚炎などの合併症も懸念されます。

 

浮腫

アンプタに伴う外部刺激や血管障害・循環障害では、断端浮腫が生じやすく、多くは浮腫による大きな影響はありませんが、義肢の装着が困難となるため、リジッドドレッシングの実施、四肢の拳上や体位(姿勢)の変換などを行い、早期に浮腫の予防に努めることが大切です。

 

幻肢痛

失った四肢が存在していた空間に温冷感や痺れ感、激しい痛みを感じることがあり、これはアンプタを行った患者の約8割が経験すると言われています。時間の経過とともに痛みは消失していきますが、幻肢痛に耐えられずQOLが著しく低下する患者は少なくありません。

 

断端神経腫

神経線維は切断されるとその末梢部に神経線維の絡み合った腫瘤を形成します。これは切断方法に関わらず形成され、腫自体には自発痛は生じませんが、圧迫などの刺激を受けた時に激しい痛みが生じます。痛みの程度が強ければ切除し、修復には神経縫合術を行います。

 

3-2、精神的合併症

喪失に対する悲哀

これまで使えていた四肢を失うことで悲しみを訴える患者は少なくありません。喪失に対する悲哀の程度は、アンプタ後まもなくはそれほど強くはないものの時間の経過とともに強くなっていき、事実を受け入れることで次第に消失していきます。

 

生活上の不安

これまで行えていた生活動作が困難となることで、不自由な生活に対する不安を呈します。特に利き腕・利き足(または両腕・両足)を喪失した場合の不安の程度は大きく、思うように生活動作が行えない葛藤に苛まれます。

 

社会復帰に対する不安

四肢切断に伴い退職を余儀なくされるケースは少なくありません。また、これまで問題なく行えていた業務に支障をきたし、業務の幅が著しく狭くなることで就職・転職が困難となるなど、アンプタを実施した患者のほぼ全てが社会復帰に対する不安を抱えています。

 

4、アンプタの看護

このことから、アンプタ後の看護は身体的・精神的の両面からの支援が必要不可欠となります。アンプタ後まもなく断端部の疼痛が生じるケースは多く、また感染症などの合併症の発症率は高い傾向にあります。

さらに、ほぼすべての患者が四肢の喪失により情緒不安定に陥るため、患者のQOL向上ならびに早期に社会復帰できるよう、身体的な支援だけでなく精神的な支援も積極的に行ってください。

 

疼痛の緩和

アンプタに伴う断端の疼痛に対しては鎮痛剤などの薬物の投与や皮膚管理、幻肢痛に対しては抗うつ剤や受容体拮抗薬など薬物の投与、義肢の早期着用、リジッドドレッシングなどで対処します。疼痛の原因によって対処が異なるため、患者の訴えや断端の観察、各種薬物の効果などで原因を正しく判断して対処してください。

 

合併症の予防

皮膚創部の壊死、血液の循環不良・再灌流症候群、筋肉・腱の機能障害、感染・浮腫、断端神経腫など、アンプタに伴う身体的合併症は数多く存在します。特に断端部の皮膚トラブルや感染は起こりやすいため、皮膚ケアが非常に重要です。症状の悪化・進行具合によっては再切断が必要になるため、早期発見・早期治療が行えるよう綿密に観察してください。

 

精神安楽への支援

アンプタに伴う精神的不安は多大であり、喪失に対する悲哀、生活上の不安、社会復帰に対する不安などさまざまです。中には、鬱などの精神障害が発現する患者もいるため、アンプタ後まもなくから精神的安楽を図ることが大切です。コミュニケーションにより精神的不安が軽減できることも多いため、まずは積極的にコミュニケーションを図ってください。

 

リハビリテーションケア

リハビリテーションの実施において看護師が積極的に介入することはほとんどありませんが、理学療法士などリハビリ担当者と連携を図ることで補助的にケアを行うことができます。また、接触皮膚炎、外傷後表皮嚢腫、毛嚢炎、白癬、摩擦性皮膚炎など、義肢装着に伴う合併症は多岐に渡りますので、患者からの訴えや傾聴はもちろん、リハビリ担当者としっかり連携を図り、合併症の早期発見・早期治療に努めてください。

 

まとめ

アンプタ後の合併症の発症率は高く、また疼痛や精神的負担によりQOLが著しく低下する患者は非常に多いのが実情です。

看護師不足が顕著な昨今、精神的な支援まで手が回らないこともあるでしょうが、患者家族にはできない、医療従事者だからできる精神的支援が多々あります。

数多くの患者と接してきた看護師は患者にとって落ち着く存在であり、不安に関する話を傾聴したり積極的にコミュニケーションを図ることで精神的負担が大きく軽減することも少なくありませんので、多忙であっても可能な範囲でコミュニケーションを図っていってください。

看護におけるヘルスプロモーションの意味と実践・活動の具体例

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ヘルスプロモーション看護

健康増進の意味を持つヘルスプロモーション。現在、企業や教育機関、医療機関などさまざまな現場でヘルスプロモーションという言葉が用いられています。

医療機関(看護)におけるヘルスプロモーションは、医療・看護を“患者”や“地域の人々”に提供することが推進に向けた取り組みの主軸を担っていますが、専門性の高い医療・看護の性質上、さらに高いレベルの健康を考え、多角的な視点から包括的に支援することが求められます。

どのような取り組みがヘルスプロモーションの促進に繋がるのか、考え方は人それぞれであるため、行うべき活動内容は多岐に渡ります。

当ページでは推進に向けた活動内容の具体例を多数提言していますが、各個人によって考え方は異なりますので、あくまで一例と捉えておいてください。また、看護師1人1人がヘルスプロモーションについて深く考えることは非常に大切ですので、この機会に一緒に考えてみてください。

 

1、ヘルスプロモーションの定義

ヘルスプロモーションとは、一言で表すと「健康を増進すること」ですが、ひとえに「健康」と言っても定義や概念はさまざまであり、また「ヘルスプロモーション」の定義・概念も人によって機関によって異なります。

健康の定義と概念の一例

WHO憲章(※1 身体的、精神的、社会的に完全に健全な状態であって、単に病気が無いとか虚弱でないということではない
WHOオタワ憲章(※2 健康とは、日常生活の資源であって、人生の目的ではない。個人やグループが、どれだけ希望を持ち、ニーズを満たし、環境を変えたり克服したりできるかという程度を意味している
Stokes(※3 解剖学的・生理学的・心理学的な完全さ、個人的に価値ある家族上・仕事上・コミュニテイ上の役割を果たす能力、良好な状態と感じていること、疾病のリスクが無く、早死しないことなどを特徴とする状態
Last(※4 人間と、物理的・生物学的-社会的環境とが調和のとれた状態であり、十分な機能的活動性を備えていること

 

ヘルスプロモーションの定義と概念の一例

WHOオタワ憲章(※2 人々が健康をよりコントロールし、改善できるようになるプロセス
Last(※4 特定の疾患に対する人々のリスクに焦点をあてるより、むしろ日々の生活の文脈の中で、全体としての人間集団の参加を求めるものであり、健康の決定因子や原因へのアクションに向かう方向性を持っている
Pender(※5 安寧を高め、人間としての健康の可能性を現実のものにしたいという望みに動機付けられた行動
Green(※6 健康を導く生活行動や生活条件に対する教育的支援とエコロジカルな支援を組み合わせたもの

 

このように、「健康」や「ヘルスプロモーション」の定義・概念は提唱する人や機関によって異なります。

しかしながら、「健康」は“心身ともに健やかな状態”、「ヘルスプロモーション」は“健康を増進すること”というように、根本的な考え方は同じです。よって、定義・概念を深く考えず、簡易的に捉えておきましょう。

 

2、看護とヘルスプロモーション

ヘルスプロモーションという言葉は医療の現場だけでなく、さまざまな分野・場面で用いられているため、分野・場面によって実施内容が大きく異なります。それゆえ、看護におけるヘルスプロモーションの取り組みを考える前に、まずは看護とはどういうものなのかを理解しておきましょう。

看護の定義と概念の一例

国際看護師協会(※7

 

看護とは、あらゆる場であらゆる年代の個人および家族、集団、コミュニテイを対象に、対象がどのような健康状態であっても、独自にまたは他と協働して行われるケアの総体である。看護には、健康増進および疾病予防、病気や障害を有する人々あるいは死に臨む人々のケアが含まれる。また、アドボカシーや環境安全の促進、研究、教育、健康政策策定への参画、患者・保健医療システムのマネジメントへの参与も、看護が果たすべき重要な役割である
アメリカ看護協会(※8 看護とは、現にある、あるいはこれから起こるであろう健康問題に対する人間の反応を診断し、かつそれに対処すること
日本看護協会(※9 健康のあらゆるレベルにおいて、個人が健康的に正常な日常生活ができるように援助すること
ナイチンゲール(※10 看護は新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔、静けさを保ち、適切な食事を準備して、患者の自然治癒力が発揮できるように患者の最良の状態に保つ役割を担っている。人間の健康の成立は自然環境と人間個体の相互関係にあり、人間個体と自然の関わりを最良の状態におき、人間自身に備わっている自然治癒力を引き出し、強めていくのが看護の力である
ヘンダーソン(※11 看護師が、病人や健康人をケアする際の独自な機能とは、まず、彼らの健康状態についての彼ら自身の反応をよく考え評価し、健康や回復や尊厳死のためになる彼らの活動(それは、もしその人が必要な強さや意志や知識を持ちえていれば自力で行えたはずのものである)を援助することである。そして、この支援は、できるだけ早く完全にあるいは部分的に自立できるように促しながら行うのである

 

「健康」・「ヘルスプロモーション」と同様に、「看護」の定義・概念も人によって機関によって異なりますが、根本となるものは“患者の健康を支援すること”であり、それを行うための活動内容がヘルスプロモーションそのものといっても過言ではありません。

 

3、看護におけるヘルスプロモーションの具体例

では、看護におけるヘルスプロモーションの実践内容とはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

ひとえに看護と言っても、それが患者1人に対するものなのか、病院全体の患者に対するものなのか、地域社会全体に対するものなのか、看護を提供する対象者はさまざまです。

また、看護師1人1人の看護行為に焦点を当てているのか、医療機関など組織・集団の看護行為に焦点を当てているのか、視点となる者もさまざまです。

対象となる者、視点となる者によって看護の実態は大きく異なり、それによってヘルスプロモーション推進に向けた実践内容も異なってきます。

また、上で述べたように「健康」「ヘルスプロモーション」「看護」のそれぞれの定義・概念は人によって機関によって異なるように、「ヘルスプロモーションの実践内容」も人によって機関によって異なります。

視点となる者・対象となる者によって、またそれぞれの定義・概念によってヘルスプロモーションの形は大きく変化しますが、ここでは「健康」を“心身ともに健やかな状態”、「ヘルスプロモーション」を“健康を増進すること”、「看護」を“患者の健康を支援すること”と簡略的に定義し、「患者1人(狭域)」「患者全体(広域)」「看護師個人」の3つを対象・視点にし、ヘルスプロモーションの実践内容を包括的に、そして具体的に述べていきます。

 

3-1、具体例:患者1人(狭域)

まず始めに、狭域でのヘルスプロモーションの実践例についてです。NANDA看護診断分類法Ⅱの領域1に「ヘルスプロモーション」があるように、看護師が行う業務、いわゆる看護そのものがヘルスプロモーションの一部を担っています。

狭域におけるヘルスプロモーションの実践例は、たとえば、「①QOLの向上」「②エンパワメントの向上」「③アドヒアランスの向上」「④メンタルヘルスケア」「⑤生活習慣の改善指導」「⑥栄養管理・指導」「⑦保健指導」などが挙げられます。

 

QOLの向上

看護実践の主軸となるのがQOLの向上です。入院時など看護師が積極的に看護介入できる状況において、いかに患者が集中的に治療に専念できるか、いかに快適な生活を送れるかについて考え実践することで患者のQOL向上、はたまたQOL向上によるヘルスプロモーションの推進を図ることができます。

QOLを向上させるためには、苦痛の軽減、合併症の予防、コミュニケーション、環境の整備など、多角的な視点から支援を行う必要があり、これは患者によって異なるため、まずは患者のニードを把握することが何より大切です。そして、把握した上でニードを可能な限り満たすことで治療に専念でき、また快適な療養生活を送ることができるのです。

なお、QOL向上における取り組みについては、「看護におけるQOLの意味とQOL向上に向けた取り組み」を参照ください。

 

②エンパワメントの向上

エンパワメントとは、患者が持つ力(生きる力や健康促進への力)を看護師が湧き出させるよう支援することを言います。エンパワメントを向上させるためには、問題の特定、感情の明確化、目標の設定、計画の立案、結果の評価という、ある種の看護過程を患者本人が実践できるよう補佐的に支援することが大切であり、それには看護師=患者間の信頼が非常に重要となります。

患者本人が自身の生きる力や健康促進への力を持つことで、看護師など医療従事者がいなくても健康状態を維持または向上することができることから、これもヘルスプロモーションの取り組みの1つと言えるでしょう。

エンパワメント向上への取り組み・ポイントについては、「看護におけるエンパワメントの定義(意味)と向上のポイント」に詳しく記述しています。

 

③アドヒアランスの向上

アドヒアランスとは、患者が服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に“自らの意思で実施しているか”を評価することです。円滑かつ効率的に、そして健康的な生活を送るためには服薬・行動制限が非常に重要である反面、継続的に実施するためには患者の強い意思と理解が不可欠です。

以前は、コンプライアンスという言葉が使われていましたが、これは服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に従っているかを評価する概念のことであり、患者の意思に関係なく指示通り服薬や行動制限が出来ていれば良しという考え方でした。

しかしながら、継続的に実施するためには患者の強い意思が重要であることから、今ではアドヒアランスが優先的に用いられるようになりました。

なお、アドヒアランスを向上させるためには、患者側の問題、医療従事者側の問題、患者・医療従事者の相互関係、の3つの側面から、さまざまな問題を1つずつ解決していくことが大切です。

アドヒアランスを向上させるための詳しいポイントについては、「看護におけるアドヒアランスの意味と向上に向けた取り組み」をお読みください。

 

④メンタルヘルスケア

医療に対する不安、環境の変化に伴うストレス、社会復帰への不安、身体的苦痛によるストレスなど、患者はさまざまな精神的負担を感じています。中には、これら精神的負担が増大することで、うつ病、統合失調症、自律神経失調症などの精神障害を併発する患者は少なくありません。

患者の精神的負担を軽減させるためには、患者とのコミュニケーションが非常に重要であり、傾聴するだけでも不安やストレスを取り除くことができます。なお、より効率的に軽減させるためには、看護師自身のコミュニケーション力の向上、ならびに信頼の獲得が重要となります。

 

⑤生活習慣の改善指導

中でも生活習慣病に分類される、「糖尿病」「高脂血症」「高血圧症」「動脈硬化」「脳卒中」などの治療には生活習慣の改善が必要不可欠です。バランスの良い食事、適度な運動、十分かつ良質な睡眠などにより、有する疾患の早期改善を促すばかりか、再発や合併症の予防に役立ち、これら生活習慣の改善を看護師がしっかり指導し、患者が自分の意思で積極的に行うことでヘルスプロモーションは推進されます。

 

⑥栄養管理・指導

⑤生活習慣の改善指導で述べたように、バランスの良い食事はヘルスプロモーションの推進に一役買いますが、ひとえにバランスの良い食事といっても、身長・体重による必要カロリー、疾患による栄養素の制限、アレルギーなどによる摂取不可能な成分など、患者によって“良い食事”は異なります。

それゆえ、入院時・退院後に関わらず、各患者に合った栄養管理が必要であり、栄養過多または栄養過少にならないように栄養指導を行うことが大切です。

 

⑦保健指導

保健指導にはさまざまな形がありますが、患者主体でみれば「定期検診の実施」や「疾患への理解」などが当てはまります。退院後の自宅療養において、健康管理を行うのは患者自身です。

また、疾患の症状が軽減されていても必ずしもそれが“良好な状態”ではなく、自覚症状がなくても進行している場合が多々あります。それゆえ、疾患の進行度を把握するために、また他疾患・合併症の早期発見ができるよう定期検診を受けることが重要となります。

患者自身が有する疾患に対して確かな理解を持つことで、症状の増悪を防ぐことができ、そのほか感染防止(感染予防策の実施、感染地帯からの避難)など、これら保健指導をしっかり行うこともヘルスプロモーション推進の役割を担っています。

 

3-2、具体例:患者全体(広域)

次に、広域でのヘルスプロモーションの実践例についてです。広域とは、いわゆる組織・集団としての関わりのことを指し、広域でのヘルスプロモーションの推進には、「①看護の質向上」「②地域活動への参加」「③健康に関する支援的環境の創造」などがあります。

医療機関または集団としての看護師が視点となり、患者全体や地域に住む多くの人々が対象となることから、ヘルスプロモーション推進に向けた取り組みは非常に大きな役割を担います。

 

①看護の質向上

看護の質向上には看護師1人1人の看護技術の向上も大きく関係していますが、組織単位では人員の確保や充足した看護の必要量(看護必要度)が重視されます。

看護師1人1人の看護量には限界があるため、組織単位での看護の質向上はヘルスプロモーションの推進において大きな役割を担っていると言え、反対に看護の質低下はヘルスプロモーションを大きく抑制させてしまいます。

 

②地域活動への参加

近隣住民の健康・医療に対する知識の習得や、健康づくりに取り組むための技術を身につけられるような働きがけを行うのもヘルスプロモーション推進のための1つの役割です。また、地域ボランティアとして地域住民へ検診を行うのもこれに当てはまります。

 

③健康に関する支援的環境の創造

近隣地域に住む人々が健康的に過ごせるよう、健康的な公共政策作り・環境作りも大きな役割を担っています。これを可能にするためには地域で活動を行う医療機関、行政、教育機関、企業、ボランティアグループなどとの連携が必要不可欠であり、それぞれが役割を持って協力して安心・安全・安楽な環境を構築することが重要となります。

 

3-3、具体例:看護師個人

最後に、看護師個人が行うヘルスプロモーションの推進についてお話します。上述のように、看護1人1人が患者に対して行う実践例、集団・組織として患者全体ならびに地域社会に対して行う実践例のほか、看護師個人のレベルアップもヘルスプロモーションの推進に不可欠な要素と言えます。

また、看護師1人1人のレベルアップにより、受け持つ患者だけでなく、看護師が交友関係を持つ者、たとえば家族や友人などのヘルスプロモーションをも推進でき、さらに看護技術や知識を共有することで他の医療従事者のレベルアップ、ならびにそれら医療従事者の患者・家族・友人へ、広範にヘルスプロモーションを普及させることができます。

 

①看護技術の習得

看護師1人1人が高い看護技術を有することで、患者の身体的・精神的負担は少なくなり、QOLの維持・向上を支援することができます。ひとえに看護技術といってもそのレベルは各個人から見えづらく不明瞭。そこで「クリニカルラダー」が役に立ち、これにより自身のレベルを主観的・客観的に把握することが可能です。なお、経験と技術の相関関係はなく、必ずしも経験があれば技術が高いとは言えません。

 

②先端知識の習得

近年の医療技術の進歩は著しく、毎日、世界中でさまざまな研究が行われており、進歩が著しいことで、これまでの看護実践が否定され、新たな看護法が確立されることも珍しくはありません。

セミナーや研究会など情報提供の場に積極的に参加する、論文に目を通すなどで先端知識を習得することができ、先端知識を習得しそれを自身の看護に生かすことで患者のヘルスプロモーションを促すことができます。

また、看護に限らずヘルスプロモーションに特化したセミナー・研究会も多く実施されていますので、知識習得のために積極的に参加しましょう。そのほか、書籍を参考にするのもよいでしょう。

 

③看護技術・知識の共有

看護技術の習得・知識の習得をふまえ、これらを他の医療従事者に共有することでも、ヘルスプロモーションを促すことができます。それを可能にするために、熟練の技術と豊富な知識が必要であるということは言うまでもないでしょう。

看護技術・知識を共有する場は、書籍、セミナー、研究会、論文とさまざまな形式がありますので、高い看護技術・豊富な知識を有する看護師は積極的に情報提供を行い、ヘルスプロモーションの推進を支援してください。

 

まとめ

ヘルスプロモーションを推進させるための実践内容は数多く存在しますが、これらすべてを網羅的に実践する必要はありません。また、あくまで当ページで示したものは一部であり、その他にも多くの実践内容があるでしょう。

何をどのようにすればヘルスプロモーションの推進に役立つのかを、自身自身で考え提案することも立派な取り組みですので、この機会にぜひ考えてみてください。

 

参照・引用文献

※1) WHO constitution, WHO, 1948

※2) Ottawa Charter for Health Promotion, WHO, 1986

※3) Stokes,J., et al: Definition of terms and concepts applicable to clinical preventive medicine. J. Commun. Health, 8,33-41,1982

※4) Last J.M : A Dictionary of Epidemiology, 4th ed. Oxford Univ. Press, 2001

※5) Pender, N. J., Murdaugh, C., & Parsons, M.A.:  Health Promotion in Nursing Practice, 5th edition. Upper Saddle River, NJ, Prentice-Hall Health, Inc., 2006

※6) Green L.W., Kreuter N.W. : Health Promotion Planning; An Educational and Ecological Approach, 3rd.ed. Mayfield Publishing Company, Mountain View, 1999

※7) http://www.icn.ch/who-we-are/icn-definition-of-nursing/

※8) Nursing: Scope and Standards of Practice, American Nurses Association, 2004

※9) 日本看護協会:看護制度改善にあたっての基本的考え方. 看護、25,52・60,1973

※10) Nightmgale F. : Notes on Nursing, 1860, 湯槙ます、他訳、看護覚え書、p14-15, 現代社、東京、1968

※11) Virginia Henderson: Principles and Practice of Nursing、Macmillan Pub Co, 1978


硬膜外麻酔(エピドラ)の看護|副作用・合併症における観察

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硬膜外麻酔の看護

局所麻酔法の1つである硬膜外麻酔。英語では「Epidural Anesthesia」と言うことから、医療現場では「エピドラ」または「エピ」略称されています。

適応症例が多く効果的に無痛・鎮痛操作ができ、さらに術中の出血量の減少、術後合併症の発症頻度の減少など、硬膜外麻酔を実施することのメリットが多大に存在するため、今や多くの手術で全身麻酔と併用して利用されています。

しかしながら、硬膜外麻酔は比較的安全な麻酔法ではあるものの、副作用や合併症の発症は常に懸念されていますので、硬膜外麻酔を行った患者の術中・術後の観察や看護は非常に大切です。

安心・安全・安楽な看護を実施すべく、硬膜外の副作用や合併症、禁忌、術後看護など包括的かつ詳細に熟知しておいてください。

 

1、硬膜外麻酔について

硬膜外麻酔は、椎管内面の骨膜および靭帯と硬膜との間にある骨膜外腔に麻酔を注入し、知覚神経ならびに交感神経を直接的に遮断することで、クラシカルな神経・内分泌系反応を抑制する麻酔法のこと。

持続的かつ効果的に神経・内分泌系反応を抑制できることから、顔面や頭部以外の手術すべてに用いることができます。また、日本ではまだ普及していないものの、アメリカをはじめ海外では分娩に際しても多用されています。

硬膜外麻酔を単独で行う場合には使用する薬剤量が必然と多くなってしまうため、単独で行うことは稀であり、基本的に全身麻酔と併用して実施されます。全身麻酔を単独で行うことも多いのが現状ですが、これまでに検証された多くの研究では全身麻酔を単独で行うよりも、硬膜外麻酔と併用することで術中の管理がしやすく、さらに術後鎮痛にも応用することで多くのメリットがあるとして、近年では全身麻酔と硬膜外麻酔を併用する麻酔法が主流となりつつあります。

しかしながら、硬膜外麻酔には頭痛、血圧低下、徐脈、吐き気・嘔吐、呼吸抑制などの副作用に加え、血腫、膿瘍、神経損傷といった重篤な合併症のリスクもあり、これによる死亡例もいくつか報告されていることから、100%安全な麻酔法とは言えません。

これはすべての麻酔法に言えることですが、数ある麻酔法の中でも硬膜外麻酔の難易度は高く、重篤な合併症の発症の多くは不適切な手技が原因となっているため、難易度という観点からリスクを避けることが難しいのが現状です。

 

2、麻酔法の種類

麻酔法は硬膜外麻酔だけでなく、麻酔部位や方法によってさまざまな種類があります。大別すると「全身麻酔法」・「局所麻酔法」があり、細分化すると、全身麻酔法には「吸入麻酔」・「静脈麻酔」、局所麻酔には「硬膜外麻酔」のほかに「表面麻酔」・「浸潤麻酔」・「伝達麻酔」・「脊髄麻酔」などがあります。

 

全身麻酔法

吸入麻酔 全身麻酔では静脈麻酔が主ですが、幼児など静脈麻酔に抵抗のある患者に対しては吸入麻酔が積極的に行われます。刺入しない分、侵襲性が低いというメリットがある反面、効果が現れるまでの時間が長いというデメリットがあります。
静脈麻酔 静脈麻酔は点滴により静脈に直接的に麻酔薬を投与する方法です。昨今では、静脈麻酔と吸入麻酔を併用することが多く、その場合には酸素投与をしつつ静脈麻酔を行い、意識消失後に吸入麻酔に切り替えます。

 

局所麻酔法

表面麻酔 皮膚や粘膜の表面に直接的に麻酔薬を塗布し、皮下へ浸透させて神経終末に作用させる方法が表面麻酔です。口腔内(喉頭)・鼻腔内へのスプレーや眼球など目の手術にも用いられています。
浸潤麻酔 皮内または皮下に麻酔薬を注射し、麻酔薬の及ぶ範囲の神経を遮断します。副作用が比較的少なく、簡便に実施できることから手術よりも簡易的な治療に広く使用され、特に歯科治療においては第一選択となっています。
伝達麻酔 末梢神経の中枢側付近に麻酔薬を注入し、神経の支配領域を無痛にする方法が伝達麻酔です。これも簡易的な治療に広く使用されており、主に歯科領域では下顎神経ブロックに、全身的には四肢の骨折の手術時など、広範囲に使用されています。
脊髄麻酔 くも膜下腔に麻酔薬を注入し、下半身の神経を抑制させるために行われます。脊髄損傷を防ぐために穿刺部位は第2腰椎以下を原則とし、また適切な刺入を促すために基本的には側臥位で行います。

 

なお、硬膜外麻酔・脊髄麻酔はいずれも脊椎周辺に穿刺しますが、それぞれは異なる麻酔法です。穿刺部位が異なるのはもちろん、麻酔薬の効能範囲や効能発現時間、持続時間、持続注入の可否など、さまざまな相違点があります。

 

硬膜外麻酔と脊髄麻酔の違い

  硬膜外麻酔 脊髄麻酔(くも膜下)
麻酔注入部位 硬膜外腔 くも膜下腔
穿刺部位 腰椎~仙骨部まで 通常、第2腰椎以下
手術部位 頸部以下 下腹部以下
血圧の低下速度 緩やか 速い
持続時間 長時間の鎮痛可能

(カテーテル使用により)

おおむね3時間

(使用する薬剤に依存)

麻酔薬使用量 多い 少ない
ブロックの程度 調節可能 強い
効果の発現速度 緩やか 速い
持続注入 一般的 一般的でない
術後鎮痛への利用 一般的 一般的でない
局所麻酔中毒 起こりうる ほとんど起こらない
手技の困難度 やや困難 容易

 

特に大きな違いが上表の“手術部位”です。硬膜外麻酔では頭部・顔面を除く頸部以下が麻酔薬の効能範囲であり、広範囲にわたって作用しますが、脊髄麻酔では下腹部以下が効能範囲であり、下腹部以下の手術のみが適応となります。

 

3、硬膜外麻酔の適応と禁忌

硬膜外麻酔は頭部・顔面を除くすべての部位の手術に適応となりますが、術中の鎮痛を目的とした麻酔法というより、術後の鎮痛を考慮した麻酔法であるため、特に開胸手術や開腹手術など術後の強力な鎮痛を必要とする手術の際に実施されます。また、血液改善を期待して血管外科の手術にも多く実施されています。

しかしながら、すべての症例に適応となるわけではありません。意識のない患者、ショック状態で低血圧の患者、脳圧亢進をきたしている患者、抗凝固薬を常服している患者(出血が止まりにくいため)、循環血液量が極度に減少している患者、穿刺部位付近に感染巣がある患者、局所麻酔薬(リドカイン、メピバカイン、ブピバカインなど)にアレルギーのある患者、これらには硬膜外麻酔は禁忌となります。

 

適応 ・  頭部・顔面を除くすべての部位の手術に実施可能

・  術後の強力な鎮痛を必要とする手術(開胸・開腹手術など)

・  血液改善を期待した血管外科の手術

禁忌 ・  意識のない患者

・  ショック状態で低血圧の患者

・  脳圧亢進をきたしている患者

・  出血がとまりにくい患者

・  循環血液量が極度に減少している患者

・  穿刺部位付近に感染巣がある患者

・  局所麻酔薬にアレルギーのある患者

・  硬膜外麻酔に対して同意を得られない患者

 

禁忌は多岐に渡り、中でも抗凝固薬を常服している患者や出血が止まりにくい患者は、重篤な合併症の1つである硬膜外血腫を引き起こす可能性があり、そのリスクが懸念されています。

 

4、硬膜外麻酔の副作用と合併症

硬膜外麻酔は、頭部・顔面を除くすべての部位の手術に適応となる万能な麻酔法であり、近年では一般手術から心臓手術や小児手術まで幅広く行われ、全身麻酔との併用がスタンダードな時代になっています。しかし、実施頻度の増加に伴い副作用や合併症の発症も増加傾向にあり、そのリスクが懸念されています。

硬膜外麻酔の副作用には、頭痛、血圧低下、吐き気・嘔吐などの軽度なものだけでなく、徐脈・不整脈や呼吸抑制など中程度の副作用も報告されています。

また、合併症には不適切な手技に伴う脊髄液の漏出、くも膜下腔への誤注、血管内への誤注、神経損傷などがあり、ほかにも硬膜外血腫や硬膜外膿腫といった重篤な合併症も存在します。

 

副作用 頭痛、血圧低下、吐き気・嘔吐、徐脈・不整脈、呼吸抑制など
合併症 脊髄液の漏出、くも膜下腔への誤注、血管内への誤注、神経損傷、硬膜外血腫、硬膜外膿腫、硬膜下ブロック、局所麻酔アレルギー、局所麻酔中毒など

 

発症頻度は極めて少ないものの、永久的な髄神経麻痺の可能性がある神経損傷、硬膜外血腫、硬膜外膿腫の3つの重篤な合併症は特に問題視されています。

論文で報告された硬膜外血腫の頻度は、Tryba(※1)の報告によると150,000例に1例、Wulf(※2)の報告によると信頼区間では96,949~406,342 例中に1例であり、平均して190,000例中に1例と算出しています。

また、2004年に行われた日本麻酔科学会の調査によると、詳細は不明であるものの、硬膜外麻酔(脊髄麻酔含む)を実施した症例548,819例のうち、脊髄損傷が7例(約1/78,000症例)、末梢神経損傷が20例(約1/27,000例)という数値が報告されています。

発症例のほとんどは、不適切な手技や禁忌が深く関わっており、特に硬膜外血腫をきたす多くの例では抗凝固薬を常服している、血液凝固因子に異常があるなど、出血が止まりにくい場合に発症していることから、実施に際して患者の発症因子を正確かつ詳細に把握しておくことが求められます。

 

5、硬膜外麻酔を行うメリット

硬膜外麻酔による副作用や合併症を完全に防ぐことは不可能ですが、多大な利点が存在するのも事実であるため、副作用・合併症を懸念して適応症例で実施しないという考え方は適当ではありません。

硬膜外麻酔を実施することの利点は、①術中の出血量の減少、②術中のストレス抑制・免疫保持、③術後疼痛管理への利用、④術後合併症発生率の低下、などがあります。

 

①術中の出血量の減少

単独の全身麻酔と比べて硬膜外麻酔を併用することで、輸血に関するさまざまな合併症のリスク減少の観点から術中の出血量が少ないという報告が多々あります。

 

②術中のストレス抑制・免疫保持

下肢や下腹部の手術に際して全身麻酔と硬膜外麻酔を併用することで、全身麻酔単独と比べて術中のストレス反応を抑制し、さらに免疫能を保持することがいくつもの論文で証明されています。ただし、上腹部の大手術における作用は明らかにされていません。

 

③術後疼痛管理への利用

硬膜外麻酔の最も大きな利点が術後の疼痛管理です。静脈路からのPCAを含めた他経路からの鎮痛薬のよりも術後鎮痛の点で優れており、鎮痛薬の使用量減少はもちろん、麻酔の質の面でも優れた鎮痛効果を発揮します。

 

④術後合併症発生率の低下

術中での使用に加え、術後の疼痛管理にも利用することで術後に起こりうる心血管合併症や呼吸器合併症、術後イレウスなどの合併症の発症頻度が減少するというデータが報告されています。

 

6、硬膜外鎮痛法の利用

上で述べたように硬膜外麻酔による術後の疼痛管理は非常に大きな利点であり、効果的に鎮痛できることから多くの医療視閲で積極的に実施されています。

また、術後の起こりうる血管合併症、呼吸器合併症、術後イレウスの発症頻度が減少するほか、術後の消化管機能の早期回復といった利点も報告されています。

ただし、術中の実施と同様に、副作用や合併症発症の可能性もあるため、医師・看護師による十分な管理と観察が必要不可欠です。

 

管理と観察

管理 ・  注入前、注入直後、5分後、10分後、15分後、30分後、60分後に血圧を測定する

・  注入後は患者に安静臥床を続けてもらう。必要あれば安静臥床しているか観察を行う

・  注入後しばらくして血圧が回復しない場合、あるいは極端な血圧低下がみられる場合には補欠が必要となることがあるため、医師に相談する

副作用・観察 ・  血圧低下、嘔気・嘔吐、顔面蒼白、生あくび

・  排尿困難

・  徐脈・不整脈

・  発熱、頭痛、注入時痛、挿入局所の圧痛

・  呼吸困難、呼吸停止、意識消失

・  刺入部周辺の感染、皮膚トラブル

・  知覚異常、麻痺

看護 ・  バイタルサイン、副作用の有無を継続観察し、異常があれば継続の可否を医師と相談する

・  決められた流量通りに注入されているか、流量と残量を確認する

・  カテーテルが途中でクランプ(遮断)されていないか確認する

・  カテーテルと接続との緩み、外れ、漏れがないか確認する

・  カテーテルが途中で抜けないようにテープでしっかり固定し管理する

・  持続注入ポンプ、ルート、カテーテルの破損の有無を確認する

 

硬膜外鎮痛法ではカテーテルを留置して継続的に麻酔薬を注入するため、カテーテルの管理はしっかり行ってください。また、バイタルサインはもちろん、起こりうるさまざまな副作用・合併症を念頭に置き、少しでも異常があれば速やかに看護師長ならびに担当医師に報告し、指示を仰いでください。

 

まとめ

硬膜外麻酔には患者に対して多大なメリットがあることから、近年では全身麻酔とともに硬膜外麻酔を行う麻酔法が主流となりつつあります。ただし、軽度・中程度の副作用のほか、発症頻度は極めて少ないものの硬膜外血腫、硬膜外膿腫、神経損傷といった重篤な合併症の発症例もこれまでにいくつか報告されています。

軽度・中程度の副作用は術後にも残存し、場合によっては継続的に発症することもありますので、術後の観察は入念に行い、早期改善を図れるように努めてください。

また、術後における硬膜外鎮痛法では、バイタルサインや副作用・合併症の観察に加え、カテーテルの管理も重要になります。適切な量が注入されているか、カテーテルの遮断や損傷、抜去などがないかをしっかり確認し、患者が安心・安全・安楽に治療に臨めるよう綿密な観察を行っていってください。

 

参考文献

※1) Tryba M : Epidural regional anesthesia and low molecular heparin : Pro. Anasthesiol Intensivmed Notfallmed Schmerzther 28 : 179-181, 1993

※2) Wulf H : Epidural anaesthesia and spinal haematoma. Can J Anaesth 43 : 1260-1271, 1996

ナースの仕事術!7つのステップで驚くほど仕事が効率化させる方法

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バインダーは、看護学校や職場では大切なアイテムの1つ。パワーポイントの資料や大切な書類をきちんとキープすることができます。この記事では、もっとバインダーを有効活用するための7ステップをご紹介します。

 

ステップ1:正しいサイズを選ぶ

正しいサイズを選ぶ

1-2インチのバインダーか3-4インチのバインダーがおすすめ。看護学校で、もし各授業でファイルを持ちたいなら1-2インチ、すべての授業の資料をまとめたいなら3-4インチがおすすめですが、基本的にバインダーは持ち歩くことが多いので、自宅には大きいサイズのバインダーにまとめ、持ち歩く際は小さいバインダーに移して使うのもよいでしょう。

 

ステップ2:表紙・背表紙がカスタマイズできるものを選ぶ

表紙・裏表紙をカスタマイズ

スキルアップを目指すためには、表紙・バックカバーがカスタマイズできるものが好ましいです。たとえば、表紙に授業のスケジュール・シラバスやシフトスケジュールを入れることで、常にスケジュールを意識しながら行動することができます。背表紙をカスタマイズできるファイルも多いので、適切なタイトルをつけて整理しましょう。自分の好きな色やイラストでデコレーションするのもかわいいですね。

 

ステップ3:バインダーを分類分けする

バインダーを分類

整理整頓力がためされる作業です。バインダーの中は、授業の内容や仕事の内容で最低3つのセクションに分けるのが理想的。1つめはウィークリーのスケジュール、2つめは授業や仕事の資料をまとめます。3つめには、ルーズリーフを入れ、メモ等に利用します。以降、授業数などに応じてセクションを追加していきます。画像のように、色つき付箋で目印をつけておくとよいでしょう。

 

ステップ4:フォルダ紙を活用する

フォルダ紙を活用

ほとんどのバインダーには、バインダーの中に画像のようなフォルダ紙(しおり紙)があります。このフォルダ紙を利用します。学生であれば、暗記術のコツや、仕事では常に忘れてはいけない注意原則などをプリントしてはることで、バインダーをあけるたび、常に記憶に刷りこまれていきます。

 

ステップ5:フォルダ紙に目次をつける

フォルダ紙に目次

特に看護学生だと、気づけばバインダーいっぱいに資料がたまってしまい、資料を探すのに時間がかかってしまうことも。各フォルダに、まとめている資料の目次を作っておけば、誰が見ても資料を探しやすくすることができます。

 

ステップ6:バインダーポーチを使う

バインダーポーチを使う

バインダーの中に入れるバインダーポーチを使うと、鉛筆や付箋などの小道具をすべて収納することができるので、バラバラにならず整理整頓ができます。ペン、傾向ペン、付箋やミニ計算機などを入れると便利です。

 

最後のステップ:色を使い分けてメモをとろう!

色を使い分けてメモをとることで、情報がより整理されます。たとえば、先生の発言や先輩のアドバイスなどは青色、自分の意見や反省点などは黒色で書く…など、色をわけることでメモがぐっと見やすく、整理されます。

バインダーはお仕事の命。自分が使いやすいよう、自分好みにどんどんカスタマイズしてみてくださいね!

reference:collective-evolution

静脈麻酔の看護|術中・術後の観察と副作用・合併症

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静脈麻酔

手術の際の意識消失・鎮痛を目的として行われる静脈麻酔。手術が円滑になる、患者の負担が大きく軽減するなど多くのメリットがある反面、副作用・合併症のリスクは常につきまとい、重篤化することも珍しくはありません。

重篤化を防ぐためには術中・術後における綿密な観察が必要不可欠であり、同時に患者のQOLの低下を防ぐために、また向上させるためには寄り添う看護が重要となってきます。

オペ室看護師、看護麻酔師(CRNA)、病棟看護師など、静脈麻酔に関わりを持つ医療従事者は、当記事を参考に起こりうる副作用・合併症、術中・術後における観察項目・看護などについて習熟し、患者が安心・安全・安楽に手術が行えるよう、また安心・安全・安楽に術後生活が送れるようサポートしていってください。

 

1、静脈麻酔とは

静脈麻酔とは、静脈に直接的に麻酔薬を注入し、意識や全身の痛みの消失を促す全身麻酔法のことです。術中に痛みが伴うと円滑に治療を遂行することができず、また激しい痛みにより患者に多大な負担がかかってしまいますが、麻酔薬を用いることで痛みから患者を守ることができ、さらに手術がスムーズに行える環境を整えてくれるのです。

全身麻酔法には静脈麻酔のほかに吸入麻酔もありますが、静脈麻酔は麻酔薬が血液を通って速やかに脳に届くことから意識の消失・鎮痛が早く、また鎮痛の効果が高いために、吸入麻酔よりも積極的に行われています。ただし、近年では静脈麻酔と吸入麻酔を併用することも多々あります。

素早く意識の消失・鎮痛できる非常に便利な静脈麻酔ですが、麻酔時には意識の消失に伴って自発呼吸が弱くなり、また舌根沈下などにより気道の閉塞の危険があります。ゆえに、気管挿管などによる人工呼吸措置が不可欠となります。

また、術中に意識が急に覚醒する、ショック症状が発現するなど、緊急処置を要する事態も多々起こっていますので、オペ室看護師・看護麻酔師(CRNA)は術中の患者のバイタルサインや全身状態を入念に観察することが求められます。

麻酔薬の副作用・合併症は術後に起こることが多く、中には重篤な症状が発現することもあります。病棟看護師は可能な限り訪室し、術後患者のバイタルサインや全身状態を入念に観察し、重篤化を未然に防ぐことが求められます。

 

2、静脈麻酔の利点・欠点

上で軽く述べたように、静脈麻酔は吸入麻酔と比べて即効性や鎮痛効果に優れています。また、全身麻酔一般においては無痛(Analgesia)、健忘(Amnesia)、無意識(Anesthesia)、不動(Akinesia)の“4つA”を達成することができ、痛みを感じることなく、また出血など手術に際する嫌な記憶が残ることなく、円滑かつ安楽に手術を遂行することができるのです。

その反面、脳内での麻酔薬の濃度の推定が不確実であり、未だ麻酔薬の脳内濃度を体外から確実にモニターする方法が確立されていません。それに伴い、術中に覚醒してしまうことが稀にあり、痛みやショックなどにより対応困難となる例も多々報告されています。

そのため、近年では意識消失・鎮痛の導入として静脈麻酔を行い、麻酔薬の濃度(肺へ出入りするガス濃度)の測定が容易な吸入麻酔に切り替える医療機関が増えてきています。

 

3、静脈麻酔の適応・禁忌

静脈麻酔は非常に有効な全身麻酔法であり、その適応は広範囲に渡ります。脳外科、心臓外科、呼吸器外科をはじめ、整形外科、婦人科、泌尿器科、形成外科など、ほぼすべての分野において実施されており、静脈麻酔単独、局所麻酔単独、静脈麻酔と硬膜外麻酔(脊髄麻酔)との併用など、手術の部位により使い分けられています。

 

適応分野

  全身麻酔 局所麻酔 併用
脳外科 ×
心臓外科 × ×
呼吸器外科 ×

(硬膜外麻酔)

外科

(硬膜外麻酔or脊髄くも膜下麻酔)

整形外科

(硬膜外麻酔or脊髄くも膜下麻酔)

婦人科

(硬膜外麻酔or脊髄くも膜下麻酔)

耳鼻咽喉科

×

泌尿器科

(硬膜外麻酔or脊髄くも膜下麻酔)

形成外科

(硬膜外麻酔or脊髄くも膜下麻酔)

眼科

×

※全身麻酔は静脈麻酔に加え吸入麻酔も含む。

 

静脈麻酔の禁忌は、基本的に使用する薬剤に準じます。使用する薬剤の種類によって作用が異なり、たとえばバルビツール系のチオペンタールは呼吸抑制に加え交感神経の抑制が強いため喘息には禁忌、ケタミンは頭蓋内圧亢進作用があるため頭蓋内圧亢進症には禁忌など、禁忌となる症例は薬剤に依存します。

 

4、静脈麻酔薬

静脈麻酔で用いられる主な薬剤は、「バルビツール系」、「ベンゾジアゼピン系」、「ケタミン」、「プロポフォール」などがあります。

それぞれが持つ作用によって適応となる症例、禁忌となる症例があるため、患者が有する疾患や常服薬、生活習慣など、さまざまな観点から使用する薬剤を選択しなければいけません。

 

バルビツール系

概要 バルビツール系麻酔薬には、主にチオペンタール、チアミラールが用いられています。溶解性に富んでいるため、中枢神経系に速く到達しますが、同時に再分布も早いことで持続時間は短め。脳圧を下げる作用があるため、主に脳外科で使用され、小児にも成人にも使用可能です。鎮痛作用はありません。
副作用 疼痛の増強、呼吸抑制・交感神経の刺激(しゃっくり・喉頭痙攣・気管支痙攣など)、頻脈、心筋収縮力の減弱、ポルフィリン代謝の阻害など
禁忌 気管支喘息、ポルフィリン症、腎障害(副作用増強のため)、ショック患者、呼吸困難を伴う心不全、筋緊張性ジストロフィー、収縮性心膜炎、バルビツール系麻酔薬に対して過敏症のある患者など

 

ベンゾジアゼピン系

概要 ベンゾジアゼピン系には、主にジアゼパム・ミダゾラムが用いられています。抗不安作用・睡眠作用・抗痙攣作用・筋弛緩作用があり、鎮静・麻酔作用が強いのが特徴。呼吸器系や循環器系への抑制作用も強いため、高齢者に対してはあまり使用されていません。
副作用 呼吸抑制、循環抑制、健忘、運動機能・強調運動障害、神経過敏など
禁忌 重症筋無力症、急性狭隅角緑内障、ショック患者、帝王切開、ベンゾジアゼピン系に対して過敏症のある患者など

 

ケタミン

概要 体性痛に対して強力な鎮痛作用を有している解離性麻酔薬。大脳皮質を抑制し、大脳辺緑系や網様体賦活系を活性化する作用があり、バルビツール系麻酔薬が禁忌となる患者に対して使用されます。筋緊張が保たれ、呼吸抑制が少ないという長所がある反面、覚醒時には悪夢・幻覚・興奮といった他の静脈麻酔薬にはない副作用が存在します。また、アルコール中毒者には効果が薄くなるため注意が必要です。
副作用 呼吸抑制、循環抑制、不随意運動、筋緊張亢進、痙攣、悪夢・幻覚・興奮、唾液分泌量亢進など
禁忌 てんかん、頭蓋内圧亢進症、緑内障、虚血性疾患、脳血管疾患、ケタミンに対して過敏症のある患者など

 

プロポフォール

概要 円滑かつ迅速に導入でき、麻酔深度の調整が容易な静脈麻酔薬。アナフィラキシーを引き起こさないなど副作用を考慮して開発されたこともあり、他の静脈麻酔薬と比べて副作用が少ないのが最大の特徴。ただし、重篤化しやすいという欠点があります。作用発現が速く蓄積しないという長所を持っているものの、持続時間が短いことで継続投与ならびに周到なモニターが必要不可欠。また、小児に対する安全性は未だ確立されていません。
副作用 血管痛、徐脈、呼吸抑制、循環抑制、てんかん様体動、不全収縮、心室頻拍、肺水腫、悪性高熱類似症状など
禁忌 小児・妊婦・授乳婦、プロポフォールに対して過敏症のある患者など

 

そのほか、麻酔薬全般にみられる副作用には、発熱、頭痛、めまい、悪心・嘔吐、痙攣、などがあります。これら軽度の副作用の発生頻度は高いものの、通常は術後3日以内に収まります。ただし、症状の程度は患者によって異なり、さらに重篤化するケースもあるため、術後には綿密な観察が必要不可欠です。

 

5、術中・術後の看護・観察

上述のように、静脈麻酔に用いられる薬剤には多くの副作用・合併症が存在します。このうち1つ以上は必ず発現するといっても過言ではなく、重篤化するケースも珍しくはありません。

重篤化を防ぐためには何より早期発見・早期対処が大切であるため、起こりうる副作用・合併症を念頭に置きながらの綿密な観察が必要不可欠です。

術中においては「呼吸器系の異常」「循環器系の異常」「急激な体温の上昇」「アナフィラキシーショック」「術中の覚醒」、術後においては「呼吸器系の異常」「循環器系の異常」「副作用」「ストレスケア」などが特に重要となる観察項目・看護であるため、これらについては習熟しておいてください。

 

5-1、術中合併症における観察・看護

呼吸器系の異常

静脈麻酔に用いる薬剤のほとんどが合併症に呼吸抑制があります。注入中は人工呼吸器による呼吸管理を行いますが、呼吸抑制や呼吸筋の筋力低下により、舌根沈下や喉頭痙攣により気道閉塞・呼吸停止が起こることがあります。多くは呼吸が浅く呼吸数が減少するため、気道閉塞などが疑われる場合、または発現している場合には体位や呼吸管理を見直します。

 

循環器系の異常

麻酔薬による循環器系への合併症には、血圧下降・上昇や脈拍数の減少・上昇、不整脈などがあります。多くは経過観察で問題ありませんが、急激な変化がみられる場合には麻酔薬の注入速度を遅くするなど慎重投与を行います。

また、循環器系の変化は起こりうるさまざまな合併症と起因しているため、患者の全身状態を注意深く観察しなければいけません。急激な血圧の下降がみられる場合には患者の頭部を下げる、血漿増量剤・昇圧剤を投与するなど、循環器系の各合併症に対して迅速かつ適切な処置が求められます。

 

急激な体温の上昇

急劇な体温の上昇がみられる場合には悪性高熱症が疑われます。40℃以上の高熱に加え、頻脈、チアノーゼ、アシドーシスなどの症状が発現すれば悪性高熱症の可能性が高いと言えます。

悪性高熱症は重篤化しやすく死亡例も報告されているため注意が必要。疑われる場合には直ちに麻酔薬の投与を中止し、ダントロレンの静注と全身冷却により対処します。

 

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックは麻酔薬に起因する最も重篤な合併症の1つです。呼吸困難や気管支痙攣などの呼吸器系症状、血圧の低下、失神、全身的な蕁麻疹、口唇・舌の浮腫、痙攣など、発現する症状は多岐に渡り、使用薬剤によって、また患者によって異なります。約90%は麻酔薬の導入後すぐに発現し、対処が遅れれば命に関わることもあるため、迅速かつ適切な処置が必要不可欠。

一般的には、気道の確保、呼吸・循環管理を行い、アドレナリン・ステロイド・抗ヒスタミンなど状況に応じて適切な薬剤の投与とともに補液を行い改善を図ります。すべての麻酔薬がアナフィラキシーショックを起こす可能性を持っており、時には初期症状が弱い場合もあるため、導入後まもなくは特に患者の全身状態を綿密に観察しなければいけません。

 

術中の覚醒

術中に覚醒する患者は約0.2%と統計されています。覚醒する因子には術前のタバコやアルコール摂取などの生活習慣、術前のコンプライアンス不良(絶飲食など)が関与していることが多く、また麻酔薬の投与量・投与速度も深く関わっています。

全身麻酔すべてにおいて鎮痛するため、術中に覚醒しても痛みは感じませんが、多大なストレスや不安を感じ高率で術後にPTSDを発症します。術中に覚醒すると血圧の上昇や脈拍の増加、頻脈などがみられるため、モニターをしっかり確認し、麻酔薬の投与量を増加するなど、状況に応じて対処します。

 

5-2、術後合併症における観察・看護

呼吸器系の異常

術後には麻酔薬の合併症として呼吸抑制が残ることがあります。また、気管挿管に伴う粘膜の刺激や損傷による喉頭部の痛みや嗄声が現れることもあります。その他、痰の排出障害、痰を含む分泌物による気道閉塞など、呼吸器系のさまざまな合併症が出現します。

麻酔薬による呼吸抑制の影響は呼吸数(8回/分)を目安とし、8/分以下であれば必要に応じて酸素の投与を行ってください。喉頭部の痛みや嗄声においては、時間とともに消失するため経過観察で構いません。気休め程度ですが、継続的な水分補給(少量ずつ)、トローチ等の服用により改善を図ることができます。

術後の分泌物による気道閉塞は呼吸停止など重篤になりやすい傾向があります。特に舌根沈下は睡眠時に起こることが多いため、定期的に巡回を行っても気づきにくく、発見が遅れることで重篤化するケースが多々あります。患者に痰の自力排出を促し、痰出力が落ちていれば吸引またはスクイージングを行ってください。

 

循環器系の異常

麻酔薬の術後合併症には、循環抑制や循環刺激に伴う血圧の上昇・低下、不整脈・頻脈・徐脈、心機能の低下・心室細動、術後イレウスなどがあります。麻酔薬が原因となっている他、出血や疼痛、ストレスなど原因はさまざまであるため、原則として経過観察を行い、必要に応じて症状に応じた薬物の投与を行います。

低血圧に対しては毛布などで保温を行うなど、看護師ができることも多いため、症状に応じて積極的に対策をとってください。また、急に変動することも多々あるため、綿密に観察を行うとともに傾聴し、異常があれば速やかに看護師長ならびに担当医に報告してください。

 

副作用

発熱、頭痛、めまい、悪心・嘔吐、痙攣、蕁麻疹・かゆみ、喉の渇き、歯の損傷・口唇の傷など、術後に起こりうる麻酔薬の副作用は多岐に渡ります。通常、時間の経過とともに改善されていくため経過観察で問題ありませんが、症状の程度によっては薬物の投与などの対処の行い早期改善を図ってください。

 

ストレスケア

特に術中に覚醒した患者のストレスケアは非常に重要。術中覚醒を経験した患者の多くがPTSDを発症しています。また、誰しもが大なり小なりストレスを感じるため、術後のストレスケアは積極的に行ってください。励ましの一言だけでも患者は安心します。できることから実施していってください。

 

まとめ

静脈麻酔は手術の円滑化、患者の負担軽減において非常に有益である反面、常に副作用・合併症のリスクがつきまといます。

術中は主に麻酔科医が静脈麻酔における患者管理を行いますが、1人で完璧に管理できるわけではありません。ゆえに、看護師も大きな役割を担っています。

術後における患者管理の看護師の役割はさらに大きく、早期発見・早期対処ができるかは看護師にかかっていると言っても過言ではありません。

起こりうる副作用・合併症を念頭に置き、患者が安心・安全・安楽に術後生活を送れるよう、観察はもちろん寄り添う看護でしっかりサポートしていってください。

局所麻酔の看護|術中・術後の観察と副作用・合併症

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局所麻酔

緊急処置や手術など、幅広い治療に行われる局所麻酔。治療に伴う局部の痛みを消失させ、治療がスムーズに行えるという利点がある反面、副作用・合併症の発症率は高く、重篤化するケースも珍しくはありません。

特に中毒症状やショック症状は重篤化しやすく、また軽度症状から瞬時に重篤化することもあるため、綿密な観察による早期発見・早期対処が必要不可欠です。

局所麻酔に関わりのある看護師は、患者が安心・安全・安楽に治療に専念できるよう、局所麻酔に用いられる薬剤の種類や起こりうる副作用・合併症、早期に発見するための観察・看護などにおける知識を深めておいてください。

 

1、局所麻酔とは

局所麻酔とは、手術部位の痛みの原因となる神経の伝達を遮断するために行われる麻酔法のことを言います。

麻酔には大きく分けて全身麻酔と局所麻酔がありますが、全身麻酔は脳内の神経を麻痺させ、さらに意識を消失させる作用を持っていますが、局所麻酔は局部の鎮痛作用のみで、一般的に意識を消失させる作用は持っていません。ゆえに、全身麻酔と局所麻酔の作用機序は全く異なります。

局所麻酔には、「表面麻酔」「浸潤麻酔」「伝達麻酔」「硬膜外麻酔」「脊髄麻酔(くも膜下)」など実に多くの種類が存在し、それぞれは手術部位や方法によって使い分けられています。

また、近年では医療技術の進歩に伴い、安全性や術後の疼痛管理を考慮して「硬膜外麻酔」「脊髄麻酔(くも膜下)」と全身麻酔の併用が増加しています。

局所麻酔には鎮痛作用があることで手術を円滑に行える、患者の負担を大きく軽減できるという利点が存在する反面、副作用や合併症の発症率は低くなく、重篤化するケースも珍しくはありません。

重篤化を防ぐためには早期発見・早期対処が非常に大切であるため、オペ室看護師・看護麻酔師(CRNA)は術中、病棟看護師は術後に起こりうる副作用・合併症を常に念頭に置き、綿密に観察を行うことが求められます。

 

2、局所麻酔の利点・欠点

局所麻酔には、呼吸抑制がないなど全身麻酔と比べて副作用・合併症が少なく、侵襲性が低いことが最大の利点と言えます。

全身麻酔に用いられる薬剤には呼吸を抑制する作用があるため、術中には気管挿管ならびに人工呼吸器による呼吸管理が必要不可欠です。また、術後にも呼吸抑制は残るため、より綿密な観察が必要となりますが、局所麻酔薬の使用量は少量で済み、呼吸抑制が生じないことから患者にとって安全であり、より容易に患者の管理を行うことができます。

また、術後の疼痛管理に優れている点も利点に挙げられます。医療技術の発展に伴い、硬膜外麻酔は全身麻酔と併用されることが多くなっており、術後の鎮痛にも利用することができます。さらに、薬剤の使用量が少ないことで術後の回復が早いという利点も存在します。

その反面、全身麻酔よりも手技が困難であるという欠点もあります。特に硬膜外麻酔の手技は容易なものではなく、不適切な手技による骨髄液への漏出、くも膜下腔への誤注、神経損傷、それに伴う永久的な髄神経麻痺もこれまでにいくつか報告されています。

その他、覚醒した状態で手術を行うため、患者が不安やストレスを感じ手術が困難となる場合がある、術中の記憶がトラウマになるなどの欠点も存在します。

 

利点 欠点
・  侵襲性が低い

・  副作用・合併症が少ない

・  術後の回復が早い

・  術後の鎮痛管理に利用できる

・  費用負担が少ない

・  手技が困難

・  覚醒による不安・ストレス

・  麻酔の効果が不確実

・  幼児には使用が困難

 

3、局所麻酔の種類

続いて、局所麻酔の種類についてご説明します。局所麻酔には「表面麻酔」「浸潤麻酔」「伝達麻酔」「硬膜外麻酔」「脊髄麻酔(くも膜下)」と多くの種類が存在します。

作用機序や手技、適応症例は麻酔法によって大きく異なりますので、それぞれがどのような麻酔法なのか知っておきましょう。

 

局所麻酔法

表面麻酔 皮膚や粘膜の表面に直接的に麻酔薬を塗布し、皮下へ浸透させて神経終末に作用させる方法が表面麻酔です。口腔内(喉頭)・鼻腔内へのスプレーや眼球の手術、外傷、火傷、潰瘍の疼痛除去などに用いられています。
浸潤麻酔 皮内または皮下に麻酔薬を注射し、麻酔薬の及ぶ範囲の神経を遮断します。副作用が比較的少なく、簡便に実施できることから手術よりも簡易的な治療に広く使用され、特に歯科治療においては第一選択となっています。
伝達麻酔 末梢神経の中枢側付近に麻酔薬を注入し、神経の支配領域を無痛にする方法が伝達麻酔です。これも簡易的な治療に広く使用されており、主に歯科領域では下顎神経ブロックに、全身的には四肢の骨折の手術時など、広範囲に使用されています。
硬膜外麻酔 椎管内面の骨膜および靭帯と硬膜との間にある骨膜外腔に麻酔を注入し、知覚神経ならびに交感神経を直接的に遮断する麻酔法。頭部・顔面以外のすべての部位が適応となり、開腹手術や胸部などの中・大規模な手術の際には全身麻酔と併用して使用されています。また、術後の疼痛管理にも多く利用されています。
脊髄麻酔 くも膜下腔に麻酔薬を注入し、下半身の神経を抑制させるために行われます。脊髄損傷を防ぐために穿刺部位は第2腰椎以下を原則とし、また適切な刺入を促すために基本的には側臥位で行います。

 

基本的には、「表面麻酔」「浸潤麻酔」「伝達麻酔」の3つの麻酔法は手術部位が狭範または容易な手術の際に実施され、「硬膜外麻酔」「脊髄麻酔」は比較的規模の大きな手術に実施されています。

 

4、局所麻酔の使用薬剤

局所麻酔に使用される薬剤は多岐に渡り、主にエステル型の「コカイン」「プロカイン」「テトラカイン」、アミド型の「ジブカイン」「リドカイン」「ブピバカイン」が使用されています。

これらは手術部位や麻酔法などによって使い分けられ、各薬剤によって作用機序や作用持続時間、毒性、適応は異なります。

副作用・合併症においては、一般的にアミド型は麻酔薬中毒に陥りやすく、エステル型はアナフィラキシーショックの発症率が高いなど、使用する薬剤によって術中・術後の患者に対する観察・看護も異なります。

 

エステル型

  コカイン プロカイン テトラカイン
効力 弱い 弱い 強い
作用発現 <1min 2-5min 2-5min
持続時間 1h 1h 2-3h
毒性 中程度 弱い 強い
適応 表面麻酔 浸潤、伝達、硬膜外、脊髄麻酔 すべて

 

アミド型

  ジブカイン リドカイン ブピバカイン
効力 非常に強い 弱い 強い
作用発現 10min 2-3min 3-5min
持続時間 2.5-3h 1-1.5h 3-5h
毒性 非常に強い 弱い 強い
適応 すべて すべて 浸潤、伝達、硬膜外、脊髄麻酔

 

4-1、エステル型

コカイン

概要 最初期のエステル型局所麻酔薬であり、組織浸透性が高いことで表面麻酔の際に用いられています。比較的高い鎮痛効果をもたらし、作用発現は1分以内と即効性に優れている反面、覚醒レベルが高い、疲労感を忘れ去せる、多幸感をもたらす、精神的な持久力を増強させるなどの作用により、依存性が高く中毒に陥る患者も少なくありません。そのため、これら精神的・依存的副作用を懸念して現在では使用頻度は少なくなってきています。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心、嘔吐、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)、角膜障害、依存性・中毒性
禁忌 緑内障の患者(眼科用として用いる場合)、コカインに対して過敏症のある患者

 

プロカイン(ノボカイン)

概要 中毒性の少ない最も安全な局所麻酔薬。組織浸透性が弱いため、表面麻酔には用いることができません。心臓に対する作用(心筋の興奮性・刺激伝導系の抑制)があるため、局所麻酔薬としてだけでなく不整脈の治療薬としても用いられています。血管拡張作用によりアドレナリンの併用が不可欠。毒性は極めて低いものの、アミド型よりもアナフィラキシーショックを起こしやすいという欠点も存在します。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・悪寒、蕁麻疹・浮腫、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)
禁忌 重篤な出血・ショック状態の患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、注射部位またはその周辺に炎症のある患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、敗血症の患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、メトヘモグロビン血症の患者(脊髄麻酔除く)、プロカインに対して過敏症のある患者

 

テトラカイン

概要 エステル型の中で最も高い効力と毒性を有する局所麻酔薬。適応範囲は広範であるものの、毒性が強いため、主に表面麻酔と脊髄麻酔に使用されています。毒性が強いために通常は他の局所麻酔薬が使用されますが、同時に効力も強く太い神経幹にも長く作用するため、激しい痛みを伴う手術の際に多用されています。ただし、作用発現時間が遅いことで使用量が多くなり、さらに他のエステル型と比べて分解速度が遅いため、中毒症の発症率が高い傾向にあります。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・悪寒、蕁麻疹・浮腫、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)
禁忌 重篤な出血・ショック状態の患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、注射部位またはその周辺に炎症のある患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、敗血症の患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、髄膜炎・脊髄癆・灰白脊髄炎などの患者(硬膜外・脊髄麻酔時)、テトラカインに対して過敏症のある患者

 

4-2、アミド型

ジブカイン(ヌペルカイン)

概要 アミド型で最も古い局所麻酔薬。数ある局所麻酔の中でも効力・毒性ともに非常に強く、その強力な毒性を利用して神経破壊薬のブロックの代わりとしても使用されています。なお、適応範囲は広範ですが、強力な毒性により基本的には脊髄麻酔の際にのみ使用されています。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・悪寒、蕁麻疹・浮腫、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)、馬尾症候群
禁忌 重篤な出血・ショック状態の患者、注射部位またはその周辺に炎症のある患者、敗血症の患者、髄膜炎・脊髄癆・灰白脊髄炎などの患者、ジブカインに対して過敏症のある患者

 

リドカイン(キシロカイン)

概要 数ある局所麻酔薬の中でも安全性が高く広範に使用可能。局所麻酔作用としてだけでなく、不整脈の治療や全身投与によるガン性疼痛・神経障害性疼痛の鎮痛薬としても使用されています。また、静脈注用に加え、スプレー・ゼリー(表面麻酔)、テープ一般(静脈留置針穿刺時の疼痛緩和)、ペンレステープ(伝染性軟属腫摘除時・皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和)など、さまざま形態で用いられています。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・悪寒、蕁麻疹・浮腫、せん妄、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)、刺激伝導系抑制、悪性高熱
禁忌 重篤な刺激伝導障害(完全房室ブロックなど)のある患者、リドカインに対して過敏症のある患者

 

ブピバカイン(マーカイン)

概要 最も長い作用持続時間を有する局所麻酔薬。リドカインと比較して神経ブロックでは2~5倍、硬膜外ブロックでは1.5~5倍程度の持続時間を有しています。麻酔範囲の広がりが緩徐であり、作用発現時間が短く作用持続時間が長いことで、特に下肢の麻酔(脊髄麻酔)に適しています。
副作用・合併症 頭痛、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・悪寒、蕁麻疹・浮腫、せん妄、ショック症状(初期症状:血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)、中毒症状(振戦・痙攣など)
禁忌 重篤な出血・ショック状態の患者、注射部位またはその周辺に炎症のある患者、敗血症の患者、髄膜炎・脊髄癆・灰白脊髄炎などの患者、脊椎に結核・脊椎炎・転移性腫瘍などの活動性疾患のある患者(脊髄麻酔)、ブピバカインに対して過敏症のある患者

 

5、術中・術後の観察・看護

上記のように、局所麻酔で用いられる薬剤は数多く存在し、手術部位や麻酔法によって使い分けられています。すべての麻酔薬に共通する副作用には、頭痛、眠気・不安・興奮・霧視・眩暈・悪心・悪寒・蕁麻疹・浮腫などがありますが、ほとんどが一過性であるため、通常は経過観察で構いません。

合併症には、ショック症状・中毒症状があり、上述した副作用やショックの初期症状(血圧低下・顔面蒼白・脈拍の異常・呼吸抑制など)から重度のショック・中毒症状に移行することもあります。ゆえに、術中・術後ともに患者のバイタルサインや全身状態の綿密な観察が非常に重要であり、特に術後の早期発見・早期対処の能否は看護師にかかっていると言っても過言ではありません。

 

5-1、術中合併症における観察・看護

中毒症状

典型的には、血中の麻酔薬の濃度が高まることで、眩暈や耳鳴り、口周辺のしびれなどの軽度な症状から始まり、さらに濃度が高まると多弁や興奮状態、その後には振戦、痙攣、意識消失、昏睡、呼吸停止のほか、急激な血圧の低下、徐脈・頻脈、心室性不整脈、心停止など重篤な症状へと移行します。

重篤化を防ぐためには何より早期発見・早期対処が重要であるため、患者のバイタルサインや全身状態の入念な観察が非常に大切です。血中濃度を体外からモニターすることが困難であるため、初期症状の段階で対処できるよう入念に観察してください。

上記の症状が現れた際には直ちに使用薬剤の投与を中止し、酸素投与や気道確保の後、ジアゼパムまたは超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウムなど)の投与を行い、症状の消失を図ります。

 

ショック症状

麻酔薬によるショック症状は、一般的にまず眩暈や浮動感、平衡感覚の異常、聴覚の異常、発汗などがみられ、進行すると顔面蒼白、目の痒み、結膜の腫脹、皮膚症状(紅斑・発赤・掻痒・血管浮腫・蕁麻疹)、鼻症状(鼻の掻痒・鼻閉・鼻水)、口唇および舌の腫脹、顔面浮腫が発現します。

さらに進行すると、消化器症状(悪心・嘔吐・腹痛・下痢)、循環器症状(血圧低下・頻脈または徐脈・不整脈・循環虚脱)、呼吸器症状(上気道浮腫・嗄声・喉頭絞扼感・喘鳴・呼吸困難・胸部絞扼感・気管支痙攣・ラ音聴取・呼吸停止)、中枢神経症状(昏迷・意識喪失・痙攣)などの症状がみられます。

一般的な出現時間は注入後5分~30分程度と幅があるため、30分はバイタルサインや患者の全身状態を綿密に観察しなければいけません。また、数時間後に発症することも珍しくはないため、特に手術時間が短いケースでは術後にも綿密な観察が不可欠です。

ショック症状発現時には、直ちに麻酔薬の注入を中止し、酸素投与や気道確保、仰臥位での下肢挙上、輸液とともにアドレナリン、H1ブロッカー・H2ブロッカー、コルチコステロイドなどを投与し症状の消失を図ります。

 

副作用

術中においては、軽度な副作用だからと言って軽視すべきではありません。副作用からショックや中毒症状に移行するケースも珍しくはなく、急激に症状が進行する場合もあります。特に麻酔薬の注入から30分程度は、症状の増悪の程度、新出現の症状を綿密に観察してください。

術後においても、低頻度ではあるものの軽度な副作用からショックや中毒症状に移行することがあります。麻酔の持続時間が終わっても観察を続けてください。また、しっかり傾聴し、疼痛があれば鎮痛薬(経口)の処方、体位指導、飲食指導などを行い、精神的なサポートも同時進行で行ってください。

 

まとめ

局所麻酔における重篤な合併症の発症率はおおむね1%以下ですが、軽度な副作用は頻発しており、術後に副作用で悩む患者は少なくありません。

通常は時間とともに消失していきますが、症状の程度が大きい場合には患者のQOLは著しく低下します。訴えの少ない患者もいますので、視覚的な観察はもちろん、しっかり傾聴し患者のニードを最大限満たせるよう努めてください。

術後患者に対する看護師の役割は非常に大きいため、精神的安楽への援助も忘れずに、包括的に寄り添う看護を提供していってください。

エアウェイを用いた気道確保術|禁忌・注意点と正しい使い方

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気道確保のために用いられるエアウェイ。速やかに気道確保を行うことができる優れた医療器具ですが、使い方を間違えればかえって気道の閉塞を促してしまうことがあるため、適切な方法で慎重に行わなければいけません。また、禁忌となる場合も多々あります。

臨床経験がない看護学生はもちろん、エアウェイを使用したことがある看護師の方も、この機会にしっかりエアウェイについて学び、適切な方法で気道確保が行えるようにしておいてください。

 

1、エアウェイとは

エアウェイとは、舌根沈下や気道確保の時に用いられる筒状の医療器具で、ほとんどの医療施設では救急カートに常備されています。

エアウェイには口腔から挿入するもの(経口エアウェイ)と、鼻腔から挿入するもの(経鼻エアウェイ)の2種類があり、経口エアウェイは舌根沈下に対して、経鼻エアウェイは咽頭下部に気道を確保するために使用します。また、心肺蘇生に際する補助器具としても使用されています。

 

経口エアウェイ

経口エアウェイ

出典:Smiths Medical

 

経鼻エアウェイ

経鼻エアウェイ

出典:Smiths Medical

 

エアウェイを用いた手技は医師が行うのが通常ですが、看護師が行うことができる手技でもあり、緊急時の場合は看護師が行うことが多いため、エアウェイを用いた気道確保術はしっかり熟知しておきましょう。

 

2、エアウェイの禁忌と注意点

エアウェイは舌根沈下や気道確保において非常に有用な器具ですが、患者の状態によっては禁忌となる場合があります。また、エアウェイ挿入に伴う悪影響についても考えなければいけません。

 

禁忌

経口エアウェイ 経鼻エアウェイ
・  咽頭反射による嘔吐の可能性がある場合

・  開口できない、口周辺の外傷がある場合

・  項部硬直や脳出血が疑われる場合

・  頭蓋底骨折や顔面骨骨折などの傷病者

・  鼻出血を呈している場合

 

経口エアウェイにおいては、挿入に際して嘔吐や咽頭痙攣が誘発されることがあるため、咽頭反射が消失していない状態では経口エアウェイを行うことができません。挿入時に咽頭反射が消失している深昏睡患者でも意識回復時に咽頭反射が再出現するため、意識回復時には速やかに抜去してください。

また、開口できない場合や口周辺に外傷がある場合も挿入困難となるため禁忌となります。このような状態化にある患者には経鼻エアウェイを実施してください。

経鼻エアウェイにおいては、挿入に際して苦痛により血圧の上昇がみられるため、項部硬直や脳出血が疑われる所見では実施できません。また、頭蓋内の損傷を引き起こす可能性もあるため、髄液漏れがみられる頭蓋底骨折や顔面骨骨折の患者にも実施できません。さらに、鼻出血を伴う患者に対してもさらなる出血を助長させてしまう可能性があるため禁忌となります。

経口・経鼻エアウェイともに禁忌となり実施できない場合や、十分に気道が確保されない場合には気管挿管を行ってください。

 

注意点

経口エアウェイ 経鼻エアウェイ
・  咽頭反射の再出現時は速やかに抜去する

・  気道閉塞の危険性を考慮する

・  適切なサイズのものを使用する

・  咽頭反射が強い場合は抜去を考慮する

・  気道閉塞の危険性を考慮する

・  出血の危険性を考慮する

 

経口エアウェイは、咽頭反射が消失している深昏睡患者が適応となりますが、意識回復時に咽頭反射が再出現するため速やかに抜去してください。また、不適切なサイズのものを使用したり不適切な場所に挿入すると、気道閉塞の恐れがあるため、適切なサイズのものを使用し適切な手技で挿入するようにしてください。

経鼻エアウェイは、咽頭反射がある場合でも実施可能ですが、咽頭反射が強い場合には中止し、気管挿管を行ってください。また、挿入に際して鼻出血を伴うことがあります。これは鼻腔内の粘膜や皮膚の損傷に伴って起こり、不適切なサイズのものを用いると気道閉塞の危険もあるため、適切なサイズのものを使用し適切な操作で挿入するようにしてください。

 

3、エアウェイの手技

エアウェイ挿入の手技は、経口・経鼻ともに難しいものでありません。ただし、咽頭反射が再出現することや不適切な挿入により出血を伴うということを考慮し、慎重に行う必要があります。

また、不適切なサイズのエアウェイを用いると閉塞を起こす可能性があります。必ず適切なサイズを確認した後に実施するようにしてください。

 

経口エアウェイ

経口エアウェイ

出典:メディカ出版

①下顎引き上げ法を実施し、下顎を前方へ引き出す

②舌を奥に押し込まないように注意しながら、経口エアウェイを90°または180°反転させたままで挿入を開始する

③軟口蓋まで挿入できたら正しい向きに回転させる

④挿入が終了したら気道が開通されたか確認・評価する

 

経鼻エアウェイ

経鼻エアウェイ

出典:メディカ出版

①経口エアウェイにキシロカインゼリーなどの潤滑剤を塗布する

②鼻先を上方に押し上げて挿入時の体勢を確保する

③経口エアウェイ先端の斜めの切断面を鼻中隔側に合わせて鼻孔に挿入する(通常は右の鼻孔)

④挿入が終了したら気道が開通されたか確認・評価する

(左の鼻孔から挿入する場合は、180°回転させた状態で挿入し、咽頭後壁で回転させて舌根を超える位置まで挿入する)

 

経鼻エアウェイにおいて、利き手が右の人が多いことから通常は操作のしやすい右の鼻孔に挿入しますが、左の鼻孔に挿入することも可能です。ただし、操作がやや異なるため注意してください。

 

まとめ

エアウェイは舌根沈下や気道確保に非常に有用な医療器具で、手技自体もそれほど難しいものではなく、看護師でも速やかに行うことができます。

しかしながら、禁忌となる患者に対して実施したり、操作を間違うとかえって気道閉塞など症状の悪化を招いてしまいます。

使用頻度が多いだけに、当ページで記述した禁忌や操作方法は必ずしっかり覚えておき、臨床で安全かつ迅速に行えるようにしておいてください。

看護師は身だしなみが命!ナース服をきれい&清潔にする10の裏技

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ナース服はきれいに保管するのがとてもたいへんで、すぐに汚くなってしまいますよね。ナース服はふつうの服と同じように洗ってはいけません。汚れ落としだけでなく、形をキープするためのひと手間が必要なのです。今回は、ナース服をきれいに保つための10の裏技をご紹介します。

 

1. おろしたてのナース服を「下洗いする」

おろしたてのナース服を「下洗いする」

新しいナース服を着る前には、下準備をすることがとても大切。下洗いをすることで、色あせを防いでくれます。ナース服が浸る冷水に、カップ半分の酢(※色がないもの)を入れて洗うとよいです。

 

2. 他の洋服と一緒に洗わない!

他の洋服と一緒に洗わない

他の洗濯ものといっしょにナース服を洗ってしまうのはご法度。必ず別に洗いましょう。

 

3.洗濯前にステインリムーバーを使う!

洗濯前にステインリムーバーを使う

洗濯する前に、ステインリムーバーで目立つ汚れを落としましょう。こうすることで、選択中に汚れが色移りしなくなります。

 

4.一回目の洗いは冷水と「普通洗剤」を使う

一回目の洗いは冷水と「普通洗剤」を使う

ステインリムーバーで目立つ汚れを落とした後は、普通洗剤と冷水で洗濯機に掛けましょう。ナース服は裏返しにして洗濯機に入れましょう。その後、可能ならば一度洗濯機をとめ、汚れがしっかり落ちているかを確認したうえで次のステップに進みます。

 

5.二回目の洗いでは「温水」と「色落ち防止洗剤」を使う

一度洗濯機を回したあとは、温水と色落ち防止洗剤で再度洗濯機にかけることで、ステイン汚れをより確実に落とすことができます。色落ち防止洗剤はカップの3/4の分量がベストです。

 

6. 乾燥は 30分・高温で

乾燥は 30分・高温で

洗濯が終わったあとは、ナース服を乾かす必要があります。乾燥機は、30分回しましょう。そうすることで、残っていたばい菌を死滅させることができます。

 

7.アイロンは必ずかける!

アイロンは必ずかける

ストレッチ素材などでぴっちりすでにのびていても、必ずアイロンはかけましょう。清潔感が増すだけでなく、残ったばい菌を死滅させることができます。

 

8.たたむ前に、ナース服をチェック!

たたむ前に、ナース服をチェック

たたむ前に、ナース服に穴が開いていないか、ステイン汚れ残りがないかなどしっかりチェックしましょう。穴が開いていたら、はやめに縫うなどして対処しましょう。

 

9.ナース服は仕事場以外では着ないこと!

ナース服は仕事場以外では着ないこと

仕事場に行く前からナース服を着ているナースもいますが、更衣室に着くまでは着用しないことをお勧めします。シフトの後は、汚れたナース服はビニール袋に入れて持ち帰りましょう。

 

10.ナース服に直接香水をつけないこと

ナース服に直接香水をつけないこと

ナース服に香水をつけるナースもいますが、直接香水をつけるとステイン汚れの原因になるので、肌もしくは下着につけるようにしましょう。

 reference:collective-evolution

転職活動中のナース必見!履歴書で上手に自己PRするテクニック8選

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就職活動で内定がもらえるかどうかは、看護師履歴書(以下履歴書)の書き方ひとつで大きく変わってきます。ナースとしてのキャリアを明確に、わかりやすく、詳しく伝え、さらに自分をアピールする必要があります。内定をもらえる履歴書を書くための8つのコツをご紹介します。

 

1.短く簡潔に書く 短く簡潔に書く

採用担当者は山のような履歴書に目を通すことになるので、一回短時間で読んで内容が理解できる履歴書でないといけません。新人採用のナースなら1ページ、数年以上のキャリアがある場合は2~3ページのボリュームが適当でしょう。一文は2~3センテンスでまとめ、難しい単語や接続詞を多用しないほうがよいでしょう。

 

2.「志望職種」よりも、「職歴・職務経験」欄を注力して作る

「職歴」とは、今までのナースとしてのキャリアを抜粋したものになります。志望職種等も大切ですが、最近の採用担当者はより職歴や職務経験欄を重点的に見る傾向にあります。

 

3.採用担当が検索する「キーワード」を使う

採用エージェントや人材会社では、履歴書チェックをシステム化するため、キーワード検索を行っている会社もあります。(特にWeb応募が可能な場合)看護師の採用業務では、「正看護師」「准看護師」といったキーワードが多く検索されるため、文中に盛り込みましょう。

 

 4.ITスキルをアピールする

ITスキルをアピールする

病院やヘルスケアセンターでは、EMR(電子診療記録システム)が導入されている場合が多いです。ですので、ITスキルはナースの業務おいてもとても重要なスキルになります。ITスキルは、エッジのきいたアッピールポイントになり得ます。医療システムのソフトウェアを使った経験や、Microsoft Office、Excelなどのスキルはどんどんアピールしていきましょう。

 

5.職歴は、「逆・時系列」で記述する

職歴は採用においても重要なポイントです。ほとんどの採用担当は、実は最も直近の職歴を最も知りたがっています。ですので、直近の職歴を重点的に書き、職歴についての設問に対して回答するときには逆の時系列で記述してみましょう。

 

6.業務以外の「仕事での成功」を書く

 

履歴書には、業務以外で成し遂げたことの詳細も書ければ、採用担当者の印象に残りやすくなります。たとえば、外部に発表した記事やブログについて、ナース組織での自分の役回りについて、講演経験や教育指導の経験など、日常のナース業務以外で達成できたことを書くこと、「いろいろな仕事を任せられそう」「ポテンシャルが高そう」という良い印象を採用担当者に持ってもらえます。

 

7.ウェブ履歴書では、判別しやすいファイル名にする

ウェブ履歴書では、ファイル名を設定する必要があります。ファイル名には、「名前」と「提出日」を明記しましょう。そうすることで、採用担当者はすぐに検索をしてあなたの履歴書を見ることができます。

例えば、

山田花子 2016-05-11

山田花子_履歴書 2016-05-11

などの書き方ができます。

 

8.必ず読み直し・推敲すること

必ず読み直し・推敲すること

履歴書を提出する前に、できるならば複数回読み直し、推敲しましょう。誤字脱字があるだけで、採用される確率がぐっと低くなります。ウェブ履歴書の場合は、フォントサイズ10~12が最も適切です。

自分の中でOKが出たら、他人に読んでもらい、アドバイスをもらうのもよいでしょう。

 

その他の注意事項

①もし海外で就職活動をしている人は、必ずカバーレター(cover letter)を送付しましょう。カバーレーターとは、英文履歴書に添付する書類のこと。志望動機や自己PRなど、職歴以外のアピールポイント、自己PRを書きます。採用担当者が一番に目を通すものなので、「履歴書を読んでみよう」と思ってもらうためにも、心をこめて書きましょう。

国内で就職活動をする方は、送付状を同封することを忘れずに。

②海外・国内とも、電子履歴書をLinkedInなどで公開することで、より多くの採用担当者の目にとまることができます。

 reference:collective-evolution


アナフィラキシーの看護|症状と原因、発症患者への治療・対応

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アナフィラキシーの看護

アナフィラキシーの発症者は10万人当たり5~50人(0.005%~0.05)と推計されており、死亡者数は年間で約50~60人にのぼっています。

アナフィラキシーの早期症状の断定は困難でありながら、症状の進行が急速であるため、重篤化を防ぐためにはアナフィラキシーに関する深い知識が必要不可欠です。

早期発見・早期改善を図れるよう、症状、診断基準、原因、治療・対処法、看護などについて熟知しておきましょう。

 

1、アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックとは、食物や医薬品、ハチによる刺傷の際に、アレルゲンなどが体内に侵入し、複数の臓器に全身性のアレルギー反応を引き起こす、アレルゲンの過敏反応のことを言います。

アナフィラキシーの主な抗原曝露の経路には、食物など経口摂取による曝露、医薬品など皮膚粘膜を介した非侵襲的曝露、ハチに刺される侵襲的曝露などがあります。

アナフィラキシーを引き起こす発生機序にはIgE抗体」が深く関係しており、IgE抗体は末梢血液中の好塩基球や組織に存在するマスト細胞の表面に結合していますが、食物・医薬品・ハチなどの原因物質が入ると、IgE抗体に結合します。

その結果、好塩基球やマスト細胞が活性化され、ブラジキニン、ロイコトリエン、ヒスタミンといったケミカルメディエーターが一気に放出されます。これにより、さまざまなアレルギー反応が引き起こされます。

このように、通常、IgE抗体と結合することにより発症するアナフィラキシーですが、その発症機序は未だ完全には解明されておらず、IgE抗体と関与せずに発症する場合も多々あります。この場合には、アナフィラキシーショックではなく、「アナフィラキシー様反応」と分類されています。

また、食物摂取後に運動することで同様の症状を発症する、食餌依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれる症例も報告されており、さらに原因不明の症例も多々報告されています。

原因不明による死亡例も多く、さらに原因不明の場合にはアナフィラキシーの治療薬の投与により、症状悪化を招くこともあるため、迅速かつ適切な原因・病状の特定に加え、患者状態の綿密な観察が非常に重要となります。

 

発生因子の死亡者数(人/年)

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
総数 66 48 51 51 71 55 77
食物 5 4 4 4 5 2 2
ハチ刺傷 19 15 13 20 16 22 24
医薬品 29 19 26 21 32 22 37
血清 1 0 1 0 0 0 1
原因不明 12 10 7 6 18 9 13

厚生労働省 人口動態統計「死亡数、性・死因(死亡基本分類)別」より作表

 

2、アナフィラキシーショックの症状と診断

アナフィラキシーが引き起こされると、まず発疹・痛痒・紅潮などの「皮膚症状」が発現し、その後まもなく、または数時間以内に、呼吸困難・気道狭窄・喘息・低酸素血症などの「呼吸器症状」、血圧低下・意識障害などの「循環器症状」、腹部疝痛・嘔吐などの「消化器症状」などがみられます。

特に呼吸困難と血圧低下の発症率が高く、死亡例の多くは気道閉塞・血圧の急激な低下に伴う呼吸停止・心停止によるものです。

 

発現症状

皮膚・粘膜 紅潮、痛痒感、蕁麻疹、血管浮腫、麻疹様発疹、立毛、眼結膜充血、流涙、口腔内腫脹
呼吸器系 鼻痛痒感、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛痒感、咽喉絞扼感、発生障害、嗄声、上気道性喘鳴、断続的な乾性咳嗽、激しい咳嗽、呼吸数増加、息切れ、胸部絞扼感、喘鳴、気管支痙攣、チアノーゼ、呼吸停止
消化器系 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、嚥下障害
心血管系 胸痛、頻脈、徐脈(まれ)、その他の不整脈、動悸、血圧低下、失神、失禁、ショック、心停止
中枢神経系 切迫した破滅感、不安、拍動性頭痛、不穏状態、浮動性めまい、トンネル状視野

Simons FER, et al. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 13-37に引用改変

 

アナフィラキシーが発症する臓器は多種であることから、発現する症状は人によって、また原因によって異なります。おおむね、皮膚粘膜・呼吸器系・消化器系・心血管系・中枢神経系のうち2つ以上の器官系に生じることが多く、WAO(世界アレルギー機構)の調査によると、皮膚粘膜が80~90%、呼吸器系が70%、消化器系が45%、心血管系が45%、中枢神経系が15%の割合で発現すると統計しています。

発現する症状だけでなく、進行速度も人によって原因によって異なり、症状発現から数分で死に至ることもあります。その原因となるのが呼吸停止または心停止であり、死亡例でみると、食物が30分、ハチが15分、医薬品が5分との報告があります。

なお、アナフィラキシーの診断基準は未だ曖昧ではあるものの、現時点で3つの診断基準が用いられています。ただし、所見での正確な鑑別が難しいことが多々あり、さらに初期診療における有用な検査は現時点で存在していません。

 

診断基準

診断基準① 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、皮膚粘膜の異常に加え、急性の呼吸器症状(呼吸困難・気道狭窄・喘鳴・低酸素血症)、循環器症状(血圧低下・意識障害)のいずれかを伴う
診断基準② 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、皮膚粘膜症状(全身の発疹・痛痒・紅潮・浮腫)、呼吸器症状(呼吸困難・気道狭窄・喘鳴・低酸素血症)、循環器症状(血圧低下・意識障害)、消化器症状(腹部疝痛・嘔吐)のうち、2つ以上を伴う
診断基準③ 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、血圧低下(平常時血圧の70%未満)、または生後1~11か月で70mmHg以下、1~10歳で70mmHg+(2×年齢)以下、11歳~成人で90mmHg以下の場合

 

また、日本小児アレルギー学会より、以下のように重症度における評価基準が示されています。ただし、軽症の場合は特に類似する疾患が多いため、軽症段階での鑑別が困難なのが実情です。

 

重症度評価

グレード1

(軽症)

グレード2

(中等度)

グレード3

(重症)

皮膚粘膜 紅斑、蕁麻疹、膨疹 部分的 全身性
痛痒 軽い痛痒

(自制内)

強い痛痒い

(自制外)

口唇、眼瞼腫脹 部分的 顔全体の腫れ
消化器系 口腔内・咽頭の違和感 口・喉の痒み、違和感 咽頭痛
腹痛 弱い腹痛 強い腹痛

(自制内)

強い腹痛

(自制外)

嘔吐、下痢 嘔気、単回の嘔吐・下痢 複数回の嘔吐・下痢 繰り返す嘔吐・便失禁
呼吸器系 咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 間欠的な咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 断続的な咳嗽 持続する強い咳き込み、犬吠様咳嗽
喘鳴、呼吸困難 聴診上の喘鳴、軽い息苦しさ 明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、呼吸停止、SpO2≦92%、嗄声、嚥下困難
循環器系 脈拍、血圧 頻脈(+15/分)、血圧軽度低下、蒼白 不整脈、血圧低下、重度徐脈、心停止
中枢神経系 意識状態 元気がない 眠気、軽度頭痛、恐怖感 ぐったり、不穏、失禁、意識消失

日本小児アレルギー学会誌2014 : 28 : 201-10より引用、一部改変

 

3、アナフィラキシーショックの原因

第1項で述べたように、アナフィラキシーの原因の多くは、食物、ハチ刺傷、医薬品によるものです。また、血清や原因不明のものもあります。

食物やハチ刺傷は、医療従事者が直接関係のない日常生活の中で起こるものですが、医薬品や血清においては医療施設内で起こります。特に、全身麻酔や局所麻酔時に起こることが多いのが実情です。

医療施設内で起こるアナフィラキシーは、迅速に対応できるために重篤化はしにくく死亡例が少ないものの、頻発するため、看護師は原因となる医薬品において精通しておかなければいけません。

 

発生機序と誘因

IgEが関与する免疫学的機序 食物 小児 鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマ、大豆、魚、果物など
成人 小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、魚、アニサキス、スパイスなど
昆虫 刺咬昆虫(ハチ、蟻)など
医薬品 βラクタム系抗菌薬、NSAIDs、生物学的製剤、造影剤、ニューキノロン系抗菌薬、麻酔薬など
その他 天然ゴムラテックス、職業性アレルゲン、環境アレルゲン、食物+運動、精液など
IgEが関与しない免疫学的機序 医薬品 NSAIDs、生物学的製剤、造影剤、デキストランなど
非免疫学的機序(マスト細胞の活性化) 身体的要因 運動、低温、高温、日光など
アルコール
薬剤 オピオイドなど
特発性アナフィラキシー(明らかな誘因が存在しない) これまで認識されていないアレルゲンの可能性
マスト細胞症 クローン性マスト細胞異常の可能性

Simons FER, et al. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 13-37に引用改変

 

3-1、原因①(食物)

欧米においてはピーナッツやナッツ類、日本においては鶏卵、小麦、ソバが多く、食物による発症のほとんどが特異的IgE抗体が関与しており、多くは摂取後まもなく(数分後)に発症します。

同じ食物に対してアナフィラキシーを起こす場合でも個人差が大きく、加工品を少量摂取しただけでもショックを起こす人もいれば、多量摂取したときだけに起こす人もいます。

食物によるアナフィラキシーの多くが家庭内で発症しますが、レストラン、学校、職場など外出先で発症する人も多くいます。これを避けるためには、自身や家族のみが原因となる食物に熟知するだけでなく、たとえば学校であれば担任、栄養士、クラスの同級生などに知ってもらうことが大切です。

このように、関わりを持つ人に認知してもらうことで、食物によるアナフィラキシーの発症率は大きく下げることができます。また、発症した場合に備えて、アドレナリン自己注射液などを携帯しておくことで、重症化を防ぐことができます。

 

3-2、原因②(ハチ毒)

ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックは、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多く、短期間のうち2回の刺傷で発症しやすい傾向にあります。

ハチ毒はIgE抗体とマスト細胞とに結合し、これによりマスト細胞が活性化され、ヒスタミンなどの有害な化学伝達物質が体内で多量に放出されることで、さまざまな臓器に作用してアナフィラキシーを引き起こします。

 

ハチ毒成分

分類 原因物質 症状
痛みを起こす

毒成分

ヒスタミン 痛み、痒み、発赤
セロトニン、アセチルコリン ヒスタミンより強い痛み
アレルギーを起こす

毒成分

ホスホリバーゼAなどの酵素類 血圧低下、呼吸困難などのアナフィラキシー症状
その他の毒成分 メリチン、アパミン 溶血作用、神経毒
ハチ毒キニン 不明

林業・木材製造業労働災害防止協会 : 蜂刺されの予防と治療. 1996より作表

 

発現症状は人それぞれですが、多くは刺傷から数分~10分以内に全身性の蕁麻疹、咽頭浮腫・気道収縮に伴う呼吸困難、急激な血圧の低下、頻脈、顔面蒼白、嘔気などの症状が現れます。

小児の場合には軽症で済むことが多いものの、成人では早期のうちに重症化するケースが多く、少なくても1時間以内に緊急処置を行わないと死に至ります。

 

3-3、原因③(医薬品)

アナフィラキシーと関与する医薬品には、抗菌薬、解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)、抗腫瘍剤、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤と多岐に渡り、また輸血時の血小板製剤・血漿製剤。赤血球製剤により発症することもあります。

 

抗菌薬

ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系のβラクタム系抗菌薬による発症が多く、ニューキノロン系抗菌薬による発症率もわずかながら報告されています。抗菌薬による発症を防ぐためには何より徹底した問診が必要不可欠。また、投与後の綿密な観察のほか、万一に備えて治療薬(後述)を用意しておくことが大切です。

 

解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)

アスピリンなどのNSAIDsは、リノール酸を分解するアラキドン酸代謝経路に作用して、アナフィラキシーを引き起こす可能性があると考えられています。また、プロノプロフェンなどの鎮痛剤を服用後、運動や食事によって発症することもあります。ただし、これらの発生機序は未だ完全には解明されていません。

 

抗腫瘍薬

抗腫瘍薬によるアナフィラキシーは、タキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)や白金製剤(オキサリプラチン・シスプラチン・カルボプラチン)が主に関与しています。そのほか、L-アスパラギナーゼやリツキシマブによる発症も多々報告されています。

 

局所麻酔薬

局所麻酔薬によるアレルギー反応の多くは遅延型アレルギー性皮膚炎であり、アナフィラキシーの発症は1%程度です。ただし、局所麻酔薬そのものの関与による発症例は稀であり、ほとんどが保存薬や血管収縮薬、ラテックスなどが抗原となって発症します。

 

筋弛緩薬

主に全身麻酔時に起こることが多く、周術期のアナフィラキシーの50~70%は筋弛緩薬によるものです。意識消失時には主訴・意思表示ができないため、発見が遅れ重症化することも少なくありません。ゆえに、全身麻酔時においては特に注意し綿密に観察することが求められます。

 

造影剤

造影剤によるアナフィラキシーの発症は、数千件に1件と言われています。現時点では未だ発生機序は解明されておらず、症状が急速に進行することによる死亡例がいくつか報告されています。ただし、最近の研究で気管支喘息が重症化に起因していることが分かったため、現在では気管支喘息を有する患者に対しては慎重投与で行うことが原則となっています。

 

輸血など

輸血によるアレルギー反応は、患者血液中のIgEと輸血製剤中の抗原との反応の結果と考えられています。アナフィラキシーは、血小板製剤・血漿製剤・赤血球製剤のいずれにも起こりうるもので、発症率は0.01%~0.07%と報告されています。

 

4、アナフィラキシーショックの治療

アナフィラキシーの治療は、アドレナリン(エピネフリン)の筋注(または静注)が第一選択であり、アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合には、アドレナリンを大腿部に筋注し、同時に輸液と酸素投与を行い改善を図ります。

アナフィラキシー発症で特に問題となるのが血圧の低下と呼吸停止です。アドレナリンには、血圧の上昇、血管収縮作用の強化、気道の粘膜浮腫の抑制、気管支拡張の促進、心収縮力増大などの作用があり、アナフィラキシーの重篤化に起因する症状緩和に大きな効能を有しています。

アドレナリンには数多くの副作用が存在するため、原則として前出した重症度評価のグレード3(重症)が適応となります。また、症状の進行が激烈な場合にはグレード2(中等度)でも投与することがあります。

呼吸困難や血圧低下などの重篤化に繋がる症状がないグレード1(軽症)においては、第二選択薬である抗ヒスタミン薬β2アドレナリン受容体刺激薬などを投与し、軽度症状の緩和を図ります。

 

治療薬の概要

  アドレナリン

(第一選択薬)

抗ヒスタミン薬

(第二選択薬)

β2刺激薬

(第二選択薬)

投与時期

(原則)

グレード2or3 グレード1or2 グレード1or2
薬理 血圧の上昇、血管収縮作用の強化、気道の粘膜浮腫の抑制、気管支拡張の促進、心収縮力増大など 痛痒痛、紅潮、蕁麻疹、くしゃみ、鼻漏の軽減に効果はあるが、気道閉塞や血圧低下には効果はない 喘鳴、咳嗽、息切れの軽減に効果はあるが、上気道閉塞や血圧低下には効果はない
副作用 ≪常用量≫

蒼白、振戦、不安、動悸、浮動性めまい、頭痛

≪過剰投与≫

心身性不整脈、高血圧、肺水腫

≪常用量≫

眠気、煩眠、認知機能障害

 

 

≪過剰投与≫

錯乱、昏睡、呼吸抑制、神経系刺激

≪常用量≫

振戦、頻脈、浮動性めまい、びくつき

 

≪過剰投与≫

頭痛、低カリウム血症、血管拡張

 

アドレナリンの経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い重症時においては必要ですが、それ以外では高血圧や不整脈の有害作用を起こす可能性があるため、原則として筋注で1:1000(1mg/ml)を投与し、必要あれば追加投与(最大量:成人0.5mg、小児0.3g)を行います。なお、皮下注射は効果が期待できません。

 

■輸液の投与

血圧の低下がみられる場合には、乳酸リンゲル液または生理食塩水による輸液を行い、血圧の維持または上昇を図ります。ただし、輸液のみでは血圧の維持が困難であるため、アドレナリンとの併用が原則。

初期輸液としては5~10分の間に成人なら5~10ml/kg、小児なら10ml/kg投与し、血圧・心拍数・心機能・尿量などに応じて輸液量を増減します。

 

気道確保・酸素投与

気道の狭窄・閉塞に伴う呼吸困難が生じた際には、直ちに気道を確保し、フェイスマスクまたは経口エアウェイによる流量6~8L/の酸素投与を行います。アドレナリンの投与、酸素投与を行っても気道狭窄・閉塞が改善されない場合には気管内挿管、さらに気管切開が必要なこともあるため、万一に備え、アナフィラキシーの発見段階で救命医療チームや麻酔・蘇生専門チームの人員を招集しておく必要があります。

 

5、アナフィラキシーショックの対処と看護

アナフィラキシーの初期症状には、医薬品の副作用などに類似しているものが多く、初期段階での特定は容易ではありません。しかしながら、アナフィラキシーの症状進行を急速であるため、早期における迅速な対処が不可欠です。

ゆえに、症状が類似する場合でもアナフィラキシーの発症を念頭に置き、バイタルサインや全身状態を綿密に観察し、迅速な人員の招集に加え、気道の確保や下肢拳上を早期のうちに行ってください。

 

バイタル・全身状態の確認

医薬品の副作用においては投与後30分~3時間のうちに発現します。それに対して、アナフィラキシーではアレルゲン被爆後5分~30分に発現することが多いため、症状の発現時間や速度によってある程度推測することができます。起こりうるアナフィラキシーのすべての症状を念頭に置き、患者のバイタルサインや全身状態を綿密に観察しておきましょう。

 

人員の招集

グレード1またはグレード2における症状が発現した時点で、それが医薬品の副作用などに類似する場合でもあっても迅速に人員を招集してください。アナフィラキシーの症状進行速度は非常に速く、対処が遅れれば呼吸停止・心停止を招きます。早期に対処することで重篤化を防ぐことができるため、すぐにコールをかけてください。

 

気道確保・下肢拳上

グレード1またはグレード2の症状が発現した場合には、アナフィラキシーと特定できない場合であっても、万一に備えて、まずは「頭部後屈顎先挙上法」や「下顎拳上法」などによる気道確保を行ってください。

また、下肢拳上を行うことで血圧の低下を抑えることができます。仰向けの状態で下肢を15~30cm挙上させ、安静保持を行いながら人員の到着を待っておいてください。

 

まとめ

アナフィラキシーの進行速度は非常に速く、対処・治療が遅れれば命にかかります。蘇生に成功しても後遺症が残る例は多く、さらに毎年50~60もの死亡例がでていることから、今後ますますの早期対処・早期治療が求められます。

アナフィラキシーの初期症状は、さまざまな疾患や医薬品の副作用に類似するものが多いため、初期における診断は困難ですが、綿密な観察を行えば早期発見ができ、迅速な対応・治療により、重篤化を防ぐことができます。

重篤化を防ぐために、また死亡者数の減少のために、アナフィラキシーの症状や診断基準、対処に精通し、細やかな観察の上で、早期対処に努めてください。

帝王切開(カイザー)の手技・麻酔リスクと術前~術後の看護

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帝王切開(カイザー)の看護

経膣分娩が困難な場合の代替処置として行われる帝王切開。医療技術の進歩に伴い、帝王切開による死亡率は一昔前と比べて格段に下がったことで、現在では約20%、実に5人に1人が帝王切開により出産しています。

しかしながら、帝王切開は経膣分娩よりも母児ともにリスクが高く、決して安全な手術とは言えません。また、身体的なリスクに加え、妊婦においては多大な精神的負担がのしかかります。

帝王切開に直接的に関わるのは医師ですが、助産師や看護師も非常に大きな役割を担っており、母児の安全は助産師・看護師にかかっているといっても過言ではありませんので、母児ともに安心・安全・安楽に分娩を終えることができるよう、また予後良好となるよう、まずは帝王切開に関する知識を深めておいてください。

 

1、帝王切開とは

帝王切開とは、難産などの際に妊婦の腹壁・子宮壁を切り開いて胎児を取り出す手術のことで、医療現場では「カイザー」という用語が用いられています。

通常は、経膣分娩と呼ばれる産道・膣を介して分娩する方法がとられますが、胎児が正常に産道・膣を介して出られない場合には、腹壁・子宮壁から胎児を体外に取り出す帝王切開が行われます。

帝王切開には、妊娠中の健診であらかじめ経膣分娩が難しいと判断された場合に計画的に行う「予定帝王切開」と、妊娠中や分娩時に緊急に行う「緊急帝王切開」があります。

予定帝王切開においては、手術に際して妊婦が比較的安定した精神状態で臨めるのに対し、緊急帝王切開においては、心の準備が整っていない状態で臨むことになるため、より積極的な精神的ケアが必要となります。

また、手技・麻酔におけるリスクは避けられず、合併症による妊婦ならびに胎児の死亡例は経膣分娩の約4~10倍、死亡率は母体で約0.5~1%、胎児では2~5%と統計されています。

 

2、帝王切開の適応

帝王切開の適応は原則として、経膣分娩が不可能な時に行われます。しかしながら、緊急を要しない場合(予定帝王切開)と、緊急を要する場合(緊急帝王切開)とで、適応となる症例は変わってきます。また、母体側、胎児側それぞれの症例によっても適応は異なります。

予定帝王切開においては、母体側では「前回帝王切開」、「子宮筋腫」、「児頭骨盤不均衡(CPD)」、「合併症・感染症」、胎児側では「逆子(骨盤位)」、「前置胎盤」、「多胎妊娠」などがあります。

緊急帝王切開においては、母体側では「重症妊娠高血圧症候群」、「遷延分娩」、「軟産道強靭」、「子宮破裂」、「微弱陣痛」、胎児側では「胎児機能不全」、「臍帯脱出」、「常位胎盤早期剥離」、「胎児仮死」などの場合に適応となります。

 

2-1、予定帝王切開

母体適応

前回帝王切開 前回、帝王切開がなされた場合には、切開部分が裂けるなどのリスク回避のために、2回目以降も帝王切開することが通常です。しかし、綿密な産前チェックや分娩管理により、経膣分娩ができる場合もあります。
子宮筋腫 子宮筋腫があっても問題なく経膣分娩は可能ですが、筋腫が大きい場合や産道を塞ぐような位置にある場合には、帝王切開が実施されます。
児頭骨盤不均衡

(CPD)

妊婦の身長が150cm未満の場合や、胎児の大横径が大きく安全に産道を通ることができないと判断した場合には、妊娠37~38週を目安に帝王切開を行います。
合併症・感染症 心臓疾患、肺疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、血液疾患、精神神経疾患、感染症などを有し、重篤化が予想される場合には、安全を最優先して帝王切開を実施します。

 

胎児適応

逆子(骨盤位) 骨盤位のほか、不全足位、膝位、横位など、正常な体位ではなく、胎児が産道・膣を介して安全に出ることができないと判断される場合に帝王切開を行います。ただし、骨盤位でも単殿位、骨盤児頭不均衡がない、臍帯下垂・脱出がないなど、条件が揃えば経膣分娩な可能な場合もあります。
前置胎盤 通常、子宮上部にあるはずの胎盤が子宮口付近にあり、子宮口のすべてを塞いでいる場合には、胎児が外に出られないため、経膣分娩を行うことができません。
多胎妊娠 双子や三つ子など、2児以上の胎児が子宮にいる場合、分娩に際する母体の負担が大きく、前期破水や切迫早産、妊娠高血圧症候群などの発症リスクが懸念されるため、母子の安全を考慮して帝王切開になることがほとんどです。

 

2-2、緊急帝王切開

母体適応

重症妊娠高血圧症候群 妊娠高血圧症候群のすべての症例で帝王切開が実施されるわけではありませんが、重症の場合には弛緩出血や子癇発作、胎盤早期剥離、さらには血液を通して胎児に酸素や栄養が行き届くなることで、胎児の発育不全や仮死などの危険があるため、緊急に帝王切開を行う必要があります。
遷延分娩 陣痛開始から初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上続く場合には、母体疲労に加え胎児機能不全に陥るリスクが高まります。多くは、母体の状態をみて誘発や吸引による経膣分娩を行いますが、それでも難しい場合には帝王切開を実施します。
軟産道強靭 陣痛が来ているのにもかかわらず、子宮頸管が未だ硬く子宮口が開かない場合、子宮の軟化を図ったり、開かせる処置が行われますが、それでも難しいと判断した場合には帝王切開が行われます。
微弱陣痛 陣痛が弱く分娩が長引くことで母体が著しく疲労します。場合によっては、胎児の健康状態の悪化を招くため、陣痛促進剤や吸引分娩などを行いますが、それでも経膣分娩が困難な場合には帝王切開となります。

 

胎児適応

胎児機能不全 母体側の疾患や子宮などの状態により、胎児の心拍数の乱れ(増加または減少)が起き、衰弱している状態を胎児機能不全と言います。原因に対する処置のほか、まずは鉗子分娩や吸引分娩を行いますが、それでも難しい場合には緊急に帝王切開を行います。
臍帯脱出 破水後に胎児の頭より先に臍帯が外に出てしてしまうと、臍帯が産道と胎児の頭や体の一部で挟まれ、臍帯の血行障害、胎児への酸素供給量の減少など危険な状態に陥るため、緊急に帝王切開を行う必要があります。
常位胎盤早期剥離 分娩前または分娩中に何らかの原因で胎盤が子宮壁から急に剥がれてしまうことがあります。こうなると激しい腹痛や膣出血に伴いショック状態を起こすことがあり、母子ともに危険な状態に陥るため、緊急に帝王切開を行う必要があります。
胎児仮死 分娩中の子宮収縮に伴う子宮血液量の減少、臍帯巻絡、臍帯圧迫などにより、胎児への酸素供給量が減少すると低酸素状態になります。進行すると非常に危険な状態に陥るため、帝王切開が適応となります。

 

そのほか、母体側では「子宮破裂」、「感染症」、胎児側では「切迫早産」、「回旋異常」、「子宮内胎児発育遅延(IUGR)」、「前期破水(pPROM)」などの場合に帝王切開が選択されます。

 

3、使用する麻酔薬と手技

帝王切開では、腹壁・子宮壁を切り開くことにより激痛を伴うため、必ず麻酔薬の投与が必要になります。麻酔法には「局所麻酔」と「全身麻酔」があり、通常、予定帝王切開においては「局所麻酔」、緊急帝王切開においては「全身麻酔」が用いられます。

使用する麻酔薬には母児ともにさまざまな副作用・合併症の発症リスクがあるため、術中・術後の綿密な観察と管理が必要不可欠。特に胎児への観察・管理は入念に行う必要があります。

 

3-1、局所麻酔①(脊髄麻酔)

くも膜下腔に麻酔薬を注入し、神経の伝達を一時的に遮断します。手技が簡便で導入が速いなどの利点がある反面、低血圧や嘔気・嘔吐、頭痛など副作用の発症率が高いなどの欠点があります。

 

利点と欠点

利点 欠点
・  手技が簡便

・  導入が速い

・  妊婦が覚醒している

・  胎児の薬剤に対する曝露が少ない

・  誤嚥の危険が少ない

・  低血圧の頻度が高い

・  分娩時の嘔気・嘔吐

・  硬膜穿刺後の頭痛

・  作用持続時間が限定的

 

禁忌

①重度の母体出血、②重度の母体低血圧、③凝固系異常、④神経疾患・心疾患、⑤低身長・病的肥満患者、⑥刺入部の感染・全身性の敗血症

 

使用する薬剤は、主に「ブピバカイン」と「ジブカイン」が用いられます。これら局所麻酔薬における胎児への影響はほとんどありません。また、母体への副作用も低頻度であり、起こりうる副作用・合併症のほとんどは手技によるものです。

 

使用薬

局所麻酔薬 作用発現時間(分) 持続時間(分)
ブピバカイン0.5%(マーカイン) 2~4 75~120
ジブカイン0.3%(ペルカミン) 3~5 120~180

 

副作用・合併症

低血圧 麻酔薬を注入することで、注入部ならびに下肢の血管が拡張し、これに伴い全身の血液が下肢に移動し血圧が低下します。血圧が低ければ低いほど子宮胎盤血流が減少し、胎児アシドーシスや胎児徐脈を引き起こし、また母体にも危険を及ぼします。これを防ぐために、あらかじめ乳酸リンゲル液1000~1500mlやヒドロキシエチルデンプン製剤500~1000mlの急速な容量負荷を行います。また、臀部の下に枕を入れ、子宮を左方に転位するなどの対処を行います。
嘔気・嘔吐 くも膜下腔への穿刺に対して、また低血圧による脳血流の減少、脳の低酸素症などが原因で起こると考えられています。ゆえに、血圧の低下を防ぐこと、早期に治療することが嘔気・嘔吐の予防に繋がります。
頭痛 頭痛の発生機序は、硬膜の穿刺孔から髄液漏出により脳圧の低下とそれによる脳支持組織の牽引が原因と考えられています。ほとんどは時間の経過とともに軽快しますが、程度が重い場合には輸液を行い改善を図ります。
ショック 稀に麻酔薬によりアナフィラキシーショックが起こることがあります。また、血圧低下や嘔気・嘔吐などの副作用からショックへ移行することがあるため、全身状態の入念な観察が必要。ショックを起こした場合には、アドレナリン(エピネフリン)などの投与により改善を図ります。

 

3-2、局所麻酔②(硬膜外麻酔)

椎管内面の骨膜および靭帯と硬膜との間にある骨膜外腔に麻酔を注入し、知覚神経ならびに交感神経を直接的に遮断します。脊髄くも膜下麻酔で懸念される低血圧の発生頻度・程度が低く、術後の疼痛管理に使用できるなどの利点が存在します。その反面、手技がやや複雑であり、手技に伴う合併症の発症のリスクがつきまといます。

 

利点と欠点

利点 欠点
・  低血圧の頻度が低く程度が軽い

・  頭痛の発生頻度が少ない

・  長時間の手術が可能(カテーテル法)

・  術後の疼痛管理に使用できる

・  手技がやや困難

・  麻酔の作用発現時間が遅い

(緊急帝王切開で用いることができない)

・  多量の麻酔薬を使用する必要がある

 

禁忌

①凝固系異常、②神経疾患・心疾患、③刺入部の感染・全身性の敗血症

 

使用する薬剤は、主に「リドカイン」、「ブピバカイン」、「メピバカイン」が用いられます。硬膜外麻酔においては、神経の遮断に多量の麻酔薬が必要となり、血中濃度が高くなることで、胎児へ悪影響をもたらすことがあります。また、手技がやや困難であるため、誤注や神経損傷などのリスクも存在します。

 

使用薬

局所麻酔薬 作用発現時間(分) 持続時間(分)
リドカイン2%(キシロカイン) 10~20 45~75
ブピバカイン0.5%(マーカイン) 15~30 75~120
メピバカイン1.5~2%(カルボカイン) 10~20 45~75

 

副作用・合併症

嘔気・嘔吐、頭痛、ショック 脊髄くも膜下麻酔と同じ
誤注 くも膜下腔への誤注による徐脈・嘔心・低血圧・呼吸停止、血管内への誤注による局麻薬中毒を引き起こすことがあります。
神経損傷 穿刺時に脊髄の損傷、末梢神経の損傷を伴うことがあり、場合によって永久的な神経麻痺となることがあります。

 

そのほかの副作用、合併症については、「硬膜外麻酔(エピドラ)の看護|副作用・合併症における観察」をご覧ください。

 

3-3、全身麻酔

胎児機能不全や大量出血など、緊急に帝王切開を行う必要がある場合に全身麻酔(吸引→静脈)が実施されます。全身麻酔は導入が速く、緊急帝王切開時において非常に有効ではあるものの、薬物を含むさまざまな要素が胎児に影響を与える可能性が高いという大きな欠点が存在します。

 

利点と欠点

利点 欠点
・  導入が非常に速い

・  信頼性・再現性が高い

・  調節性に優れている

・  低血圧が避けられる

・  胎児への薬物曝露

・  母体の誤嚥の可能性が高い

・  挿管困難の頻度が高い

・  全身麻酔中の母体の覚醒

 

禁忌

脊髄麻酔・硬膜外麻酔が適応となる症例

 

使用する薬剤は、主に静注用として「チオペンタール」、「プロポフォール」、「ケタミン」が使用されています。いずれも作用発現時間が速い反面、持続時間が短いため、多くの場合、継続投与が必要となります。

 

使用薬

局所麻酔薬 作用発現時間(分) 持続時間(分)
チオペンタール 即時 10~20
プロポフォール 即時 5~15
ケタミン 即時 5~10

 

副作用・合併症

ショック 局所麻酔と同じ
誤嚥 全身麻酔下における帝王切開では、下食道括約筋圧低下、消化管運動性低下、胃内容の酸性度上昇、子宮による胃内圧の上昇など、胃内容物の気管内誤嚥が生じることがあり、これによる母体の死亡例がいくつか報告されています。
呼吸抑制(胎児) 吸入麻酔薬が胎盤を通って胎児へ移行するため、胎児が呼吸困難となる場合があります。また、これによる娩出後の死亡例も報告されています。
大量出血 吸入麻酔薬による子宮筋の弛緩作用により、娩出後に大量出血を呈することがあります。
低酸素血症 妊娠時は非妊時と比べて血液中の酸素飽和度が低下しやすい傾向にあり、麻酔導入により低酸素血症に陥ることがあります。また、酸素供給量の不足に伴い、胎児も同様に低酸素血症に陥る場合があります。

 

そのほかの副作用、合併症については、「静脈麻酔の看護|術中・術後の観察と副作用・合併症」をご覧ください。

 

4、術前・術中・術後の看護

経膣分娩と比べて帝王切開は侵襲性が高く、また経膣分娩に対する希望や胎児に対する心配から妊婦の精神状態が不安定になることがほとんどです。

よって、帝王切開における看護は、侵襲面を考慮したバイタルサイン・全身状態の確認だけでなく、精神的ケアも同時に行う必要があります。

 

 

4-1、術前の看護

インフォームドコンセプト

予定帝王切開の場合は、医師から適応理由やリスク、予後などについての説明がなされます。手術までの時間があるものの、受け入れるのが困難な妊婦は多く、術前に急に精神不安定となることも珍しくはありません。看護師からも詳細に説明し、妊婦が帝王切開に対して前向きに受け入れられるよう援助してください。

 

準備に関する確認

予定帝王切開においては通常、分娩前に入院期間を設けます。血圧や体重、問診による母体側の健康チェック、超音波などによる胎児の健康チェックに加え、手術部位の剃毛、臍の掃除、絶飲絶食、浣腸や下剤による胃内容の空虚などの準備を滞りなく行い、すべてを確実に行ったのかを確認し、安全に臨めるよう体制を整えておきましょう。

 

精神的ケア

帝王切開を予定する妊婦のほとんどが精神的に不安定になります。精神不安になる原因はさまざまですが、特に胎児への心配からくる不安が強い傾向にあります。頻回に訪室し、共感の心を持って励ますことでも不安の軽減を図ることができますので、積極的に寄り添う看護を実施していきましょう。

 

4-2、術中の看護

バイタル・全身状態の確認

術中には、常に麻酔薬や手技に伴うさまざまな副作用・合併症のリスクがつきまといます。また、帝王切開が適応となるさまざまな疾患・状態に起因する合併症の発症リスクも忘れてなりません。常時、母児双方のモニタリングを行い、予想される副作用・合併症を念頭に置き、緊急時に迅速に対処できる体制を整えておきましょう。

 

精神的ケア

局所麻酔においては覚醒した状態にあるため、術中の精神的ケアは重要です。医師や助産師、看護師が慌ただしく動いている、焦っている、不安な表情をしている場合、それは妊婦の精神状態に悪影響を与えるため、可能な限り落ち着いた状態で手術に臨むようにしてください。また、都度、声をかけるなど妊婦の不安に配慮した寄り添う看護が大切です。

 

4-3、術後の看護

バイタル・全身状態

麻酔薬によるもの、手技によるもの、分娩によるものなど、母児ともに実にさまざまな術後合併症が存在します。また、激しい痛みにより苦しむ患者も珍しくはありません。早期発見・早期対処ができるよう、母児ともにバイタルサインや全身状態、帝王切開に付随する副作用・合併症の発症の有無を入念に確認・経過観察を行ってください。

 

精神的ケア

精神不安になるのは術前・術後だけでなく、術後まもなく~数日にも起こります。原因としては、自分の力で分娩できなかったことに対する失望感、自分または児死亡の恐怖による術中のトラウマ、出生後の後遺症の心配など、さまざまな要因が考えられます。特に心身ともに準備が整っていない緊急帝王切開後の患者の不安の度合いはさらに大きく、児の健康状態が悪い場合はさらに大きな不安を呈します。

悩みや葛藤を傾聴するだけでも患者の心は和らぎますので、どのように接していいのか分からない場合には、共感の心を持って傾聴してあげてください。

 

まとめ

帝王切開にはさまざまなリスクがつきまとい、術前の母児の状態(疾患など)や麻酔薬、手技、分娩などにおける副作用・合併症による死亡例が多々報告されています。また、術前・術中・術後のすべての期間において多大な精神的ストレスがのしかかります。それゆえ、全身的な観察に加え、精神的ケアも必要不可欠です。

母児ともに安心・安全・安楽に分娩でき、さらに予後良好となるよう、心身両面においてさまざまな観点から包括的にサポートしていってください。

もっと稼ぎたい!ナースにおすすめの副業10選

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今のお給料のほかにも、「もっと稼ぎたいな~」と考えたことはありませんか?ナースは専門職なので、ナースにしかできない副業が、実はたくさんあるんです。今回は、ナースにおすすめな副業・バイト・お小遣い稼ぎ方法10選をご紹介します。

 

1.深夜シフトにはいる!

深夜シフトに入る

最も手っ取り早いのが、夜勤シフトに入ることです。病院によっては、Web検索することで追加シフトを入れることができる病院もあります。

 

2.「日雇い」に登録する

「日雇い」に登録する

病院によっては、緊急で日雇いのナースを募集することもあります。派遣エージェンシーに登録するだけでなく、別病院に勤務するナース仲間のコミュニティを広げることで、空いた日に別の病院でシフトを入れるチャンスもあります。

 

3.予防接種のバイト

予防接種のバイト

学校や会社では、4月と9月さらにはインフルエンザ等が流行る冬前に大規模な予防接種の機会があることがあります。ナースの資格を持っていれば、バイトとして参加することも可能な場合があります。新聞の求人やWeb求人を定期的にチェックしましょう

 

4. 緊急電話対応(メディカルコールセンター)

緊急電話対応

今は、電話で119番する前に緊急の問い合わせ・アドバイスをするシステムがあります。そのコールセンターの職員のパートを募集していることがあります。場合によっては、脈拍やテレビ電話で患者さんの様子を観察し、適切なアドバイスをする必要があります。

 

5.医学記録転写士(※海外在住、海外で稼ぎたいナース向け)

医学記録転写士の求人は多く、稼ぐには一つの手。(ただし、資格をとるために短期でコースを受講する必要があります。)資格があれば、在宅でもインターネットとパソコンがあるところならいつでもすることができます。アメリカやアジアで需要がある仕事なので、海外でチャレンジしたいナースや、資格を持っていて海外に移住している方などにおすすめです。

 

6.老人ホーム・ホスピスでの勤務

老人ホーム・ホスピスでの勤務

老人ホームやホスピスでは、看護師の資格を持つ人のパートタイマーの需要があります。

 

7.臨床コーディング

臨床コーディング

保険金請求・支払においては、病状の医学的診断が必要になる場合があり、看護師・医師の資格を持つ人の求人がある場合があります。在宅で仕事をすることができる可能性も高いのがポイント。

 

8.在宅看護

在宅看護

家から出ることができない人のために、在宅で看護や、血圧測定など基本的な処置をする「在宅看護」の求人がある場合があります。専門のエージェンシーに登録すると求人を検索することができます。

 

9. 緊急処置インストラクター

緊急処置インストラクター

ナースは、緊急処置のインストラクターの資格があります。学校の先生・障がいのある子どもをもつ親・事務インストラクターなどに心肺蘇生法をレクチャーすることができます。

 

10.メディカルライター

メディカルライター

もし物を書くことが得意ならば、フリーランスのメディカルライターとして活躍できる場がたくさんあります。医学・健康系のWebメディアには求人が定期的に募集されます。また、ブログで看護師ノウハウを共有したりすれば、読者数に応じてアフィリエイトで稼ぐことも可能です。

 

いかがでしたか?

「今のお仕事以外にも稼ぎたい!」というナースの皆さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 reference:collective-evolution

看護学生の就活で役立つ!履歴書でやって良いこと9選、悪いこと10選

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<img class=”alignleft size-full wp-image-2711″ src=”https://j-depo.com/news/wp-content/uploads/2016/05/新しい画像-14-1.png” alt=”就活に役立つ!履歴書でやっていいこといけないこと” width=”942″ height=”473″ />

看護学生の就活において、履歴書はとても大切です。ですが、履歴書を書くのはとても難しいですよね。そこで今回は、そんな履歴書がもっと書きやすくなるコツをご紹介します。

 

履歴書に取り入れたい「やっていい」ポイント

1-1.フォントや文字のサイズは統一する

採用担当者は、バラバラのサイズの文字を読むのは大変です。Web履歴書なら、明朝体のフォントサイズ12がスタンダートです。手書きの場合も、文字のサイズがバラバラにならないよう気をつけましょう。

 

1-2.資格や経歴欄は「短く簡潔に」

履歴書において、資格や経歴欄はいわばあなたの「プロフィール」。短く簡潔にまとめましょう。曖昧な表現はNGです。

 

1-3.関連した「キーワード」を使う

Web応募の場合は特に、履歴書情報はデータベース化され、採用担当者は興味があるワードで検索してヒットしたものだけを見ている場合があります。紙でも同様、面接官が気になるキーワードが入っている履歴書は良い印象を持たれやすいです。求職先の特徴に合わせたキーワードや、自分が求職している職位のキーワードを使ってみるとよいでしょう。

 

1-4.経歴や経験は「新しい情報」から書く

経歴や経験は「新しい情報」から書く

採用担当者は、直近のあなたの情報を知りたがっています。経歴や経験は直近の情報から書くようにした方が、採用担当者にとっては親切です。

 

1-5.看護学校での医療経験を書くべし

今までキャリアが全くない人は、看護学生時代の医療経験の詳細を書いてみましょう。(就職先に関連のある分野のものがいいでしょう)ただし、一定上のキャリアがある人は、看護学校での経験は飛ばして問題ありません。

 

1-6.フォーマルな言葉使いをすること

誤字脱字はもちろん、語法に問題がないか必ず確認してから履歴書を提出するようにしましょう。

 

1-7.書き終わったら第三者にチェックしてもらう

第三者にチェック

履歴書を書き終わったら、第三者に見てもらいアドバイスをもらうことで、あなたの履歴書はますますレベルの高いものに洗練されていきます。ぜひチェックしてもらいましょう。

 

1-8.経歴・経験は「盛らない!」

今までキャリアがない新卒は、経歴や経験を「盛り」がちですが、これはやってはいけないこと。正直に答えましょう。ある程度選抜された後は、採用担当者はより注意深く新卒のスキルをチェックするので、盛りすぎるとすぐにバレてしまいます。

 

1-9.ミスは誰かにダブルチェックしてもらう

どんなに注意深く書いても、必ずミスがある可能性があります。必ず他の誰かにチェックをしてもらい、ミスがないか確認しましょう。

 

1-10.出来る限り「シンプル」に伝える

ミスは誰かにダブルチェックしてもらう

採用担当者にとって、一文が長すぎる文章やムダな情報ばかりの履歴書を読むのはとても大変です。できる限り短く、簡潔に書きましょう。

 

履歴書では避けたい「やってはいけないこと」

1-1.下線や影、図などは使わない

(前職の上司の紹介)は書かない

読みにくいフォントや下線、図などは使わないようにしましょう。

 

1-2.(前職の上司の紹介)は書かない

欧米におけるナースの就活では、「References available upon request(前職の上司の紹介)」を書く場合がありますが、新卒は書かないようにしましょう。

 

1-3.見開き2ページ以上の履歴書は書かない。

見開き1ページが履歴書の最適な長さ。それより長くなってしまう場合は、情報過多の可能性が。

 

1-4.趣味については詳細を書きすぎない

趣味についてたくさん書きすぎると、プロ意識が欠けているように受け取られる場合があるため、あまり長く書きすぎないようにしましょう。

 

1-5.個人情報は必要以上に書かない

求められている以上の個人情報は書かないようにしましょう。法律にも抵触する場合があります。

 

1-6.看護に関係のない経歴はなるべく書かない

基本的に採用担当者は、看護に関係のある職歴に興味があるので、他の経歴は長く書きすぎないほうが無難です。どうしても書きたい場合は、「職歴」ではなく、個人的な経験・経歴の欄に書いた方がよいでしょう。

 

1-7.クリエイティブになりすぎない

様式を問わない履歴書であったとしても、ファンシーにデコったり、アレンジしすぎるのはもちろんNG。

 

1-8.しゃべり言葉は使わない

しゃべり言葉は使わず、丁寧に、かつ書き言葉で書きましょう。

 

1-9.可愛すぎるフォントは使わない

可愛すぎるフォントは使わない

Web応募の場合、明朝体以外は基本的に使わないほうがよいでしょう。

 

1-10. 協会やコミュニティについて書きすぎない

新卒の学生が、少しでもスキルや知見をアピールするために、何かしらの協会やコミュニティに入り、それについて書く人も少なくありません。しかし、求職している分野に関係のないものについてはあまり書きすぎないほうがよいでしょう。

 

履歴書の例をチェック!

 

○田花子

プロフィール:小児科医療において、責任感とモチベーションを持って業務に貢献します。

資格・経歴:患者ケアに携わった経験があります。ヘルスケアの研究チームとともに、患者さんに高品質なケアを提供する活動をしていました。PICUでの研修も行いました。患者さんの満足度の向上、基礎的な小児のライフサポート、チームビルディングなどを学びました。

 

職歴:○○年○月~○月 ○○県○○市○○小児科 見習い

予防接種や予防医療さらには健康教育などに携わりました。
小児の、慢性的な病気や持病の悪化の予防を行いました。アシスタントとともに、ベッドまわりのケアも行いました。班のミーティングにも参加し、デモンストレーションにも参加しました。
その他の活動

○○年~○○年 ○○協会 メンバー

 

いかがでしたか?これらの情報も参考にして、就職活動がんばってくださいね。

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「ナースは給料いいんでしょ」はNG!看護師に好感を持たれるフレーズとは

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看護師の合コン

どの職場でも合コンはよくあるはずだ。ナースとなれば出会いも限られ出会いの場を求めて合コンの話があれば夜勤じゃなければみんなしょっちゅう行っている。男性陣も女性陣がナースだと知ると気持ちが盛り上がるらしい。良く耳にする話だ。

 

しかし、合コンも当たりとハズレがある。世間的に給料が高いとされるナース、なので相手側の職場もすごく気になるところ。明らかに給料が良ければそれほどかっこよくなくても気にならない!と思うのは本音の本音。これはナースだけに限らないはずだ。しかし、自分より明らかに給料が低いだろうと思われる男性に当たった時は本当に気まずい。気まずいだけで終わればいいのだが、そういうわけにはいかないのが世の常なのだろうか。つまらない合コンは多々ある。

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看護師の給料は低くくはないが、それが何か?

 

ここで一番嫌な合コンのパターンをあげてみよう。女性陣はナースで同じ病院、病棟勤務。相手男性陣の職場は同じだったり、違うなら友達同士。職種も様々ではあるが、給料がどれくらいなのかは仕事によって想像はつく。

 

そして明らかに自分より稼いでないだろうな、という男性にも多々会う。なぜだかわからないが、そういう男性に限って、「ナースって給料いいんでしょ?」と言ってくる。一回だけではない。別の合コンでもこんなパターンはよくある話だ。一瞬、この男は何を言っているのか?と耳を疑いたくなるしそう言われてニコニコと平常心保つのにも体力がいる。本当に疲れる。この男はひがんでいるのか、うらやましがっているのか、初対面の合コンでこんなこと言うなんて非常識にもほどがあるし呆れてものが言えない。

 

とりあえず、「そんなことないよー。」と言ってみるが心の中ではブチ切れである。なぜにそんなふうに一瞬で嫌われるようなことを言ってしまうのか、むしろ聞きたいくらいだが、呆れてものが言えない。その時点でこの男性との会話は終了だし帰りたくなる。次の日の日勤に備えて家に帰って寝たくなる。割り勘の合コンなら今日もお金の無駄だったなと思う。本当に心底がっかりする出来事である。

 

 

「ブス」よりも言ってはいけないフレーズとは

世の中の、「ナースは給料いいんでしょ?」と言ってしまったことのある男性に言いたい。絶対に言うな!!と・・。デブやブスと言われる方がまだましのような気がする。ムカついてもきれいになってやる!と思えても給料はどうしようもない。それでも重労働のわりにはもらえてないと、多くのナースたちが思っている。もちろん、そんな愚痴は「ナースは給料いいんでしょ?」と言ってくる男性には言えないが・・。

 

年収まで聞いている男=帰ってください!

更に、「ナースは給料いいんでしょ?」と言われたうえに、年収まで聞いてくる身の程知らずもいる。これは本当に失礼極まりない。もうここまでくると、合コンの意味がさっぱり分からない。帰ってください!と言いたくなるくらい腹立たしいことだ。冗談交じりで聞いたとしても許せる範囲ではない。だったら、「そっちはいくらもらっているの?えー、少なーい!」とでも言ってほしいのだろうか?と心底思うときがある。そんなことを言う男性に限り、合コンのメンバーの中では間違いなく人気はない。何が理由なのか教えてあげたいところだ。

 

看護師と付き合いたいなら「ナースは重労働で大変だね」が正解

逆に、給料が自分より低いだろうと思われる男性から、「ナースは重労働で大変だね」と言ってもらえると、好感が持てる。それだけの器があれば給料の差があっても付き合っていけると大部分が思っているはずである。実際に自分より給料が低い人と付き合っている場合、初対面で「ナースは給料いいんでしょ?」なんて言うような人ではないのは断言できる。間違いなく。

 

この場をかり、世の中の男性へ言いたい。絶対に「ナースなら給料いいでしょ?」なんてこと言わないでほしい!!

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