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ALS(筋萎縮性側索硬化症)|看護ケアのポイントと看護計画

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ALS

1、ALSとは

ALSとは「筋萎縮性側索硬化症」のことで、運動を司る神経(運動ニューロン)に障害が及び、手足・喉・舌などの筋肉が徐々に痩せていく難病です。

原因は未だ完全に解明されていませんが、神経系の老化や遺伝子の異常などが原因であるという見方が強く、徐々に原因が明らかになってきています。

また、ALSの根治治療は存在しておらず、症状の緩和や進行の遅延を主として治療を行っていくため、発症から死亡までの期間は概ね2~5年で、多くは呼吸不全で死亡します。

よって、ALSを患う患者に対する看護師のケアは、QOLを向上させることが第一であり、献身的な“寄り添う看護”が非常に重要となります。

 

2、ALSの基礎的看護ケア

ALSを患う患者は手足・喉・舌などの筋力低下により、「運動障害」「嚥下・呼吸障害」「コミュニケーション障害」を発症します。また、精神的苦痛や合併症の併発、生活活動範囲の縮小など、さまざまな問題がでてきます。さらに、患者家族にも多くの問題が出てきます。

これら障害や問題に対するニードを充足させること、つまりQOLを向上させることが看護師の役割であり、患者・家族に対して多角的な視点からケアを実施することが求められます。

 

  • 運動障害

手足の筋力の低下や麻痺に伴う運動障害の症状改善は難しく、現状ではリハビリテーションによる症状進行の遅延や装具による運動補助などを実施するほかありません。特にリハビリテーションにおいては、時として脱臼や靭帯損傷などの危険があるため、患者の筋力量や筋肉の可動域を正しく見極めた上で、患者のペースに合わせた無理のない援助が不可欠です。

 

  • 嚥下・呼吸障害

嚥下・呼吸障害は生死に関わるものであり、障害が深刻化するとQOLを著しく疎外します。嚥下障害が深刻化し十分な栄養摂取が不能となればPEG(経皮内視鏡的胃瘻増設術)の導入の検討、呼吸障害が深刻化すれば人工呼吸器の装着や気管切開を検討しなければなりません。よって、事前なインフォームドコンセプトが何より重要になります。嚥下・呼吸障害ともに筋力の低下により症状が進行していくため、胸郭可動訓練・吸気筋訓練などのリハビリテーションも有効ですが、加重負荷を考慮し、患者の同意のもと無理なく実施してください。

 

  • コミュニケーション障害

コミュニケーションに障害が及び意思伝達手段がないと孤独感やさまざまな葛藤が起こり、QOLは著しく低下します。コミュニケーション障害の発症は嚥下・呼吸障害に随伴し、障害が深刻化すると言語でのコミュニケーションが困難となるため、機能が残存している早い段階でコンピュータなどを用いた言語療法(コミュニケーション手段)を開始することが重要です。ただし決して無理強いはせず、可能な範囲で、またやる気の範囲でゆっくり進めてください。

 

  • 精神的苦痛の軽減

症状の進行に伴い、また死に近づくにつれて患者の精神的苦痛は増大していきます。多くは看護師―患者間で信頼関係が築かれれば患者はより安心でき、精神的苦痛が軽減します。コミュニケーションを通して都度、献身的な姿勢で接するとともに、ニードを最大限に充足できるよう援助を行ってください。

 

  • 合併症の予防・緩和

ALSの合併症は、滲出性中耳炎、流涎過多、肺炎・無気肺、腸管麻痺、眩暈、浮腫褥瘡などの他、痛み・かゆみ・めまい・不眠などの症状が発現することがあります。これら全てを確実に予防することが困難ですが、特に皮膚トラブル(浮腫・褥瘡・かゆみ)は負荷圧力の分散により予防できる、または進行を遅らせることができます。1つ1つ起こりうる合併症を確認し、発症の危険性が高いものを優先的に予防・緩和に努めてください。

 

  • 環境整備

寝室・浴室・台所など移動や活動に際して不便とならない環境を工夫することも大切です。特に自立歩行ができるなど生活活動範囲が広い早期においては、安心・安全・安楽に活動できる環境の整備に努めてください。これを行うためには、まず患者の生活活動範囲や筋力量・筋肉の可動範囲、転倒・転落など危険性の有無をしっかりアセスメントすることが不可欠です。

 

  • 家族に対するケア

患者だけが身体的・精神的に負担を感じているのではなく、患者家族も同様です。また、患者家族は身体的・精神的負担に加え、社会的負担(財政面など)も大きくのしかかります。患者家族の心理や社会的背景を十分把握した上で、患者家族の負担軽減に努め、社会資源の情報提供・ケア方法・療養環境などについて十分な指導を行ってください。

 

3、ALSの看護計画

ALSを患う患者の看護問題ならびに看護計画は、症状や症状の進行度、身体的・精神的・社会的負担の程度により多岐に渡ります。

概ね、身体の問題(運動障害・嚥下・呼吸障害・コミュニケーション障害)、精神の問題(不安・死への葛藤)、生活上の問題、適切な看護・診療の提供の問題、家族の生活保障の問題などがあります。

まずは現状において抱える患者の看護上の問題(看護問題)や家族の問題を抽出し、短期・長期の両方の目標を適切に設定することが非常に大切です。

①症状の進行状況・障害の程度、それに伴い阻害されているニードは何か

②発病による患者―家族の生活の変化、改善すべき点はあるか

③患者と家族の生活背景の中に原疾患の増悪因子は存在するか

 

まとめ

ADLは根治治療が存在しない難病であるため、QOLを向上させることが最も重要な看護ケアです。

症状の程度や進行度、負担因子、ニードなどを正しく見極め、献身的な看護を通して患者・家族双方のQOLの向上を図ってください。


看護におけるQOLの意味とQOL向上に向けた取り組み

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QOL

1、QOLとは

QOLは「Quality Of Life」の略で、“生活の質”を意味します。看護とは、各患者がその人なりの最も健康的で質の高い生活を支援することであり、“生活の質(QOL)の向上”が看護の軸と言っても過言ではありません。

患者は、有する疾患や入院という環境の変化により、精神的な不安を抱え、また疾患の種類によってはそれまでの通常の生活を送ることができません。

これら患者が有する身体的・精神的苦痛を緩和させ、質の高い生活、つまりQOLを向上させることが看護師の役割なのです。

 

2、看護の現状

しかしながら、看護師という職業は多忙を極め、自身の業務に精一杯という方が多いのが現状です。この背景には就業者数が深く関係しており、今も昔も医療施設に従事する看護師の人数は全く足りておらず、看護師1人あたり多くの患者を受け持たなければいけません。

人材不足は看護師の業務の圧迫を助長するだけでなく、看護師1人あたり多くの患者を受け持つことにより、患者1人1人が援助されるべき看護量ならびに看護時間が少ないのです。

しかし、このような厳しい状況においても、疾患を有する患者の身体的・精神的苦痛を緩和させられるのは看護師だけであり、看護師という職業に携わっている以上、患者のことを第一に考え、献身的に患者のQOLの向上に努めならければいけません。

 

3、QOLを向上させるために

患者のQOLを向上させる看護は多岐に渡ります。というのも、患者が抱える疾患や症状は1人1人異なり、さらに何を思い何を考えているのか、いわゆる人間性も異なるからです。よって、QOLを向上させるためには、まずは綿密な「アセスメント」を実施し、患者について深く知る必要があります。

なお、一般的には「苦痛の軽減」「コミュニケーション」「合併症の予防」「環境の整備」の4つの事項を献身的な姿勢で実施することで、患者のQOLを向上させることができます。

 

  • 苦痛の軽減

疾患による頭痛・腹痛・背部痛・吐き気・悪寒、体動制限・体動困難による疼痛など、さまざまな苦痛が伴います。苦痛を呈する際には、原因を特定した上で最良となる対処を施すことで、患者の苦痛が軽減されQOLの向上に繋がります。ただし、中には苦痛を訴えない患者もいるため、バイタルサインや表情など多角的な情報をもとに苦痛を察知しなければいけません。

 

  • コミュニケーション

患者は入院という環境の変化や孤独による不安、疾患に対する不安など、さまざまな精神的苦痛が伴います。また、入院生活において、看護師は患者にとって最も頼れる(頼るしかない)存在です。コミュニケーションにより、患者の不安が軽減され安心かつ集中的に治療に専念でき、結果的にQOLの向上に繋がります。

 

  • 合併症の予防

疾患の中には合併症の発症率が高いものがあります。特に感染症は多くの疾患に関与しています。現病に加え合併症を発症すると患者の身体的・精神的負担は増大し、QOLが著しく低下するため、清潔保持・栄養コントロール・転倒(転落)の防止など、各疾患・各患者に合わせた合併症の予防は非常に重要です。また、合併症の増悪を防ぐために、日々の入念な観察による早期発見、迅速な対処が不可欠です。

 

  • 環境の整備

病室はいわゆる患者にとっての生活スペースです。環境に何かしらの問題があると安らぎを獲得することができず、QOLの低下を招くだけでなく精神的不安の増大や睡眠不足などによる身体的負担の増大など悪影響が及びます。騒音・臭気・室内温度の調整、シーツ・ベッド周辺・ゴミ箱の清潔管理、ラインやコード類の整理・転落や転倒の防止策、ベッド周辺の整理整頓など、安心・安全・安楽な環境の整備を行い、患者に安心できる生活スペースを提供してください。

 

また、これら4つの事項以外にも、患者の状態によって、いわゆる「看護問題」が多々出てきます。アセスメントや看護診断により抽出した看護問題を1つ1つ解決していくことでもQOLは大きく向上するため、患者に合った看護ケアを行うことが大切です。

 

まとめ

看護師の役割は、各患者がその人なりの最も健康的で質の高い生活を支援することであり、医師の役割とは異なります。また、入院生活において患者が最も信頼できるのは医師ではなく看護師です。つまり、患者のQOLを向上させることができるのは看護師だけなのです。

何に対して苦痛を感じているのか、何を思い何を感じているのかは患者によって異なるため、まずは基本となる「苦痛の軽減」「コミュニケーション」「合併症の予防」「環境の整備」を徹底した上で、各患者に合った看護ケアを実施し、QOLを最大限に向上できるよう献身的な姿勢で看護を提供してください。

大腸ポリペクトミーの看護(手術後の観察項目と食事制限)

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ポリペクトミーの看護

消化器(胃・大腸・直腸など)のポリープを切除する際に行われるポリペクトミー。安全度の高い手技であるものの、偶発症・合併症を完全に防ぐことはできず、場合によっては重症化して緊急手術が必要となる場合があります。

それゆえ、看護師はポリペクトミーを行った患者の術後管理を徹底し、異常の早期発見・早期対処に努める必要があります。

ここでは、ポリペクトミーの概要や適応症例、偶発症・合併症、術後管理などについてご説明しますので、ポリペクトミーの看護について不明瞭な方は参考にして頂き、業務に生かして頂ければ幸いです。

 

1、ポリペクトミーとは

ポリペクトミーは、胃・大腸・直腸など消化器にできたポリープ(腺種・早期がん)を内視鏡的に切除する手技のことで、肛門から内視鏡を挿入し、内視鏡から金属のワイヤーを輪にした電気メス(スネア)をポリープにかけ、熱で焼切る方法です。

現在ではポリープの切除に際して広く実施されており、根治治療という観点だけでなく、摘出することによるポリープの良性・悪性の判断や悪性度の判断(病理検査)にも実施されています。

ポリペクトミーは比較的安全な手技ですが、稀に出血や穿孔などの偶発症が伴い、また術後の安静保持や食事制限など遵守すべきことが多々あるため、看護師にはポリペクトミーを行った患者に対して、バイタルサインや全身状態など細やかな観察が求められます。

 

2、適応となる症例

ポリペクトミーは消化器に形成されたポリープの切除に際する手技ですが、すべてのポリープに適応となるのではなく、ポリープの大きさや形状によっては適応外となります。

 

  • ポリープの大きさが2cm未満

ポリペクトミーではスネアを用いますが、スネア先端の輪はそれほど大きくなく、大きなポリープでは電気で完全に焼切ることができないため、ポリープの大きさが2cm未満の場合に適応となります。なお、ポリープの大きさが2cm以上の場合には「ESD」が実施されます。

 

  • ポリープの形状が隆起している場合

ポリペクトミーは隆起したポリープを輪にかけて電気で焼切る手技であるため、ポリープが隆起している状態でないと確実に焼切ることができません。ポリープが平べったく完全に輪に掛けることができない場合には「EMR」が適応となります。

 

  • ポリープが粘膜下層の浅い部分に留まっている場合

リンパ節転移の可能性のない粘膜内のポリープ、粘膜下層の浅い部分に留まっているポリープに対して適応となり、粘膜下層の深い部分や筋層に達している場合にはポリペクトミーは実施されず、外科的手術が必要となります。

 

3、内視鏡的ポリープ切除術の種類

内視鏡を用いた消化器系ポリープの切除術はポリペクトミーだけでなく、上述のようにポリープの大きさや形状によって「EMR」や「ESD」という手技が実施されます。術式や適応となる症例は異なりますので、これら内視鏡的ポリープ切除術の種類をしっかり把握しておきましょう。

 

  • ポリペクトミー

ポリペクトミーは、“キノコ状”のポリープの切除に際して実施され、スネアと呼ばれる金属の輪に掛けて締め、高周波電流を流して焼く手技のことです。スネアの輪の形状や大きさは多く存在するため、さまざまなポリープの切除、採取することでの良性・悪性の判断(病理検査)に実施されます。

 

  • EMR

“平べったい”形をしたポリープに対して行われるのがEMR。ポリペクトミーと同様にスネアを用いますが、EMRではポリープのある場所の粘膜下層に生理食塩水などを注入し、切除しやすいように持ち上げてから(盛り上がった状態で)スネアを掛け、高周波電流を流して焼き切ります。

 

  • ESD

ポリペクトミーやEMRではスネアの大きさにより、大きなポリープにおいては数回に分けて切除する必要があります。そこで専用のナイフで病変の周辺を切開した後に粘膜下層をめくるように剥していくESDが実施されます。まだ確立されておらず技術的に難しいため、限られた医療施設でのみ実施されています。

 

このように、ポリープの大きさや形状によって各手技が使い分けられ、「ポリペクトミー」←「EMR」←「ESD」という順で頻回に行われます。つまり、つまり、ポリペクトミーでは難しい場合にEMR、EMRで難しい場合にESDというように使い分けられています。

なお、いずれの手技もポリープまたは粘膜下層に留まっている早期がんに対して適応となり、粘膜下層の深い部分や筋層に達している場合やリンパ節転移の可能性のある場合には外科的手術が行われます。

 

4、起こりうる偶発症・合併症

ポリペクトミーは安全な手技であるものの、病変を焼きすぎることで「穿孔」や「出血」、腸内への多量の空気の流入による「腹痛」などの偶発症・合併症が起こることがあります。

これらは術中または術後1週間以内に起こることが多く、「腹痛」であれば安静にすることで次第に改善しますが、「穿孔」は「出血」の場合には保存的治療または外科的手術・止血などによる早急な治療が必要となります。

 

  • 穿孔

ポリペクトミーでは、スネアを用いてポリープを焼切ることで、病変周辺に一定程度の損傷を伴い、スネアをかける位置が腸壁粘膜に近すぎる場合やスネアが深くかかりすぎて正常粘膜を巻き込んだ場合に、術中や術後まもなく~1週間(特に術後24時間以内)に穿孔が起こることがあります。

穿孔が起こると激しい腹痛・全身痛、心拍数・発汗の増加、腹部の圧痛などが現れ、軽度の場合には絶食や抗生物質の投与による保存的治療を行いますが、重症の場合には腹膜炎をきたす恐れがあるため、緊急手術を行います。

 

  • 出血

ポリープ切除時に出血がみられる場合や術後出血を防ぐためにクリップを用いて止血処置を行いますが、病変周辺の血管の有無を正確に把握することはできないため、術中出血・術後出血を完全に防ぐことはできません。

また、切除部位が治るには1~2週間かかるため、術後出血を予防するために術後の食事(刺激物の摂取制限)や激しい運動を避けるなど安静保持が欠かせません。

術後出血がみられる場合には、腹痛や血便・下血などの症状が現れ、症状が軽度であれば経過観察しますが、改善されなければ内視鏡下で再度、止血処置を行います。

 

  • 腹痛

内視鏡を挿入することで消化器に多量の空気が流入し、術後まもなく腹部膨張による腹痛を呈することがあります。ほとんどはガスを排出させることで改善されるため、特に処置する必要はありませんが、安静保持やガスの排出に関する説明をしっかり行ってください。

 

5、術後の看護・観察項目

上述のように、ポリペクトミーの偶発症・合併症には「穿孔」「出血」「腹痛」などがあり、場合によっては重症化し緊急手術を要することがあります。重症化しないためには、術後の患者の状態をしっかり観察し、異常がみられる場合には迅速に医師に報告することが大切です。

 

  • バイタルサインの確認

まずは「脈拍」「呼吸」「体温」「血圧」「意識レベル」などのバイタルサインを確認しましょう。多くは、偶発症・合併症の症状が発現する前兆としてバイタルサインに変動が起こります。変動が起こった際には注意深く観察を続け、異常の早期発見に努めてください。

 

  • 全身状態(症状の発現)の確認

穿孔であれば「激しい腹痛」「全身痛」「心拍数・発汗の増加」「腹部の圧痛」、出血であれば「腹痛」「血便・下血」などの症状が現れます。腹痛のみの場合には内視鏡の挿入に伴う空気の流入が原因であり、安静保持やガスの排出で改善されますが、腹痛以外の症状がみられれば、症状に応じて穿孔や出血を疑い、症状発現時には独自の判断で経過観察せず、早急に医師に報告してください。

 

  • 便(下血)の確認

下血の色調変化・凝血の程度・出血量など、便を観察することで出血部位や出血の程度を判断することができます。術後に入院療養の場合には看護師が直に確認し、退院後は便の異常がみられる場合に来院する旨をしっかり伝えてください。

 

6、術後の安静保持・飲食制限

偶発症・合併症が起こるのは主に術後まもなく~1週間です。特に術後24時間は安静保持を怠ると偶発症・合併症のリスクが大きく高まります。

また、術後24時間以降も刺激の強い飲食物の摂取を避け、特に、香辛料の多い食べ物、熱水・冷水・炭酸飲料・アルコール、スナック菓子・アイスクリーム、タバコなどは避け、腸に優しいものを摂取するよう患者に対して指導を行ってください。

なお、ポリペクトミーでは、ポリープの大きさ・個数・場所などによって当日~4日程度で退院できますが、看護師は退院後の患者を観察することができません。

それゆえ、偶発症・合併症の発症リスクを減らすために、安静保持(運動・仕事・日常動作)や飲食制限の指導をしっかり行い、腹痛や下血などの症状が現れた際には来院する旨を伝えてください。

 

退院後の指導項目

退院後1~3日目 退院後4~10
飲酒 ・  アルコールの摂取は禁止

・  タバコも出来るだけ控える

便 ・  排便時はいきまないようにする

・  便の観察を行う(血便、黒い便がでたら病院に連絡する)

食事 ・  消化のよいものを食べる(お粥、うどん、豆腐など)

・  油分、香辛料を含んだ食べ物を避ける

・  熱いもの、冷たいものを避け、炭酸飲料を控える

・  油分、香辛料を含んだ食べ物を避ける
入浴 ・  湯船には浸からずシャワーで済ます ・  入浴可能(ただし、ぬるま湯にし長湯は避ける)
仕事 ・  デスクワークなどの仕事は問題なし ・  体調に合わせて開始する(重い物を持つなど腹圧のかかることは避ける)
運動 ・  自転車、バイクの運転を避ける

・  お腹に力の入るスポーツは禁止

・お腹に力の入るスポーツは禁止

 

まとめ

ポリペクトミーは安全な手技であるものの、偶発症・合併症は完全に防ぐことができません。また、術後の管理を怠ると発症リスクを高めてしまいます。それゆえ、入院時の観察や指導、術後における療養指導をしっかり行ってください。

看護コンサルテーションの相談事例とプロセス(依頼の仕方)

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コンサルテーション看護

悩み解決のために欠かせないコンサルテーション。現在では多くの職業で実施され、看護領域でも広く実施されています。

コンサルテーションとは何か、看護師が受けることができる領域、コンサルテーションの効果や依頼の手順などについて、当ページでご説明しますので、コンサルテーションに興味のある方はぜひ最後までしっかりお読みください。

 

1、コンサルテーションとは

コンサルテーションとは、「内外の資源を活用して問題を解決したり、変化を起こすことができるよう、当事者やグループを手助けしていくプロセス」のことで、「相談」と言い換えてもいいでしょう。

コンサルタント(コンサルテーションを行う者)は、コンサルタンティ(他の専門知識を有する者、たとえばスタッフナース)に対して、ある専門分野における相談を受けるわけですが、コンサルタントは専門看護師や認定看護師である場合が多いのが実情です。

というのも、専門看護師や認定看護師は1つの分野に特化しており、より具体的かつ実践的な看護ケアの方法を情報提供できるからです。

専門看護師や認定看護師が従事していない病院・病棟においては、従事する者だけでより効果的な看護ケアの方法を研究しなくてはなりません。それに伴い、研究評価の妥当性を図るのが困難であり、さらに実践に際しても導入が困難であるため、コンサルテーション(相談)を行うことにより、それまで不明瞭だった問題を解決でき、知識の取得や実践への導入をスムーズに行うことができるのです。

 

2、コンサルテーションの相談事例

コンサルテーションでは、看護ケアの方法、臨床の現場で体験する出来事(倫理的問題を含む)によるストレスや葛藤、対人関係、自己のキャリアアップなど、さまざまな問題についての支援が行われています。

どのような専門分野に関するコンサルテーションが行われているのか、以下にてその一例をご紹介します。

 

救急看護 ・救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術

・患者の重症度に基づく治療の優先順位の決定(トリアージ)

・災害時における急性期の医療ニーズに対するケア

皮膚・排泄ケア ・マットレスの選択、脆弱皮膚の患者への褥瘡予防

・長期ステロイド使用患者、浮腫のある患者へのスキンケア

・テープによる皮膚トラブルの予防と対処

・失禁による肛門周辺の皮膚トラブルのケア

・装具交換、装具選択、合併症などストーマのケア

・胃瘻チューブの管理、瘻孔の創部周辺のスキンケア

集中ケア ・人工呼吸器を装着した患者への看護ケア方法

・呼吸、循環不安定な患者の体位管理・変換方法

・呼吸不全患者のアセスメントと呼吸理学療法について

・周手術期患者の早期離床への取り組み

緩和ケア ・病状説明後の患者、家族に対する精神的支援

・看取りにおける患者家族への精神的支援

・痛み、全身倦怠感、呼吸困難など症状の緩和

・エンゼルケアやメイクの対応

・抑うつ症状を呈する患者へのコミュニケーション方法

・死を間近に迎える患者の発言(死にたい等)への対応

がん化学療法 ・抗がん剤の血管外漏出に際する対応

・患者、家族、医療従事者への抗がん剤の曝露(ばくろ)予防

・悪寒、嘔吐、脱毛などの症状マネジメント

がん性疼痛 ・鎮痛補助剤の副作用症状の緩和

・がん性疼痛のコントロール

・予後についての患者からの質問に対する対応

訪問看護 ・援助関係者とのパートナーシップの構築

・苦情発生時の対応

・在宅療養者の主体性を尊重したセルフケア支援の方法

感染管理 ・耐性菌などに関する基礎知識

・洗浄、消毒、滅菌の方法

・感染経路別(血液、尿路など)にみる感染予防対策

・針刺しによる医療従事者の職業感染、患者への院内感染の対策

糖尿病看護 ・自己管理(食事療法、運動療法、薬物療法)についての患者への指導方法

・フットケアなど疾病管理、療養生活支援の方法

※認定看護師、専門領域の一例

 

このほか、「不妊症看護」「新生児集中ケア」「透析看護」「手術看護」「乳がん看護」「摂食・嚥下障害看護」「小児救急看護」「認知症看護」「脳卒中リハビリテーション看護」「がん放射線療法看護」「慢性呼吸器疾患看護」「慢性心不全看護」など、専門分野の知識を有するコンサルタントがコンサルテーションを行っています。

また、看護師へのコンサルテーションだけでなく、患者や家族にも行われることも多々あります。

 

3、コンサルテーションの効果

「1、コンサルテーションとは」で述べたように、コンサルティはコンサルテーションを受けることにより、それまで疑問に抱えていた問題を解決することができ、迅速に自身の看護に生かすことができます。

これまで、コンサルテーションに関する効果の検証・研究はあまり行われていなかったものの、ここ10年で多くの検証・研究が行われ、コンサルテーションの効果が実証されています。以下に、実証されたコンサルテーションの効果の一例をご紹介します。

 

  • 不明瞭な問題を解決できる

病棟内で統一して実施されているケア方法すべてが正しいとは限らず、本当にそれは患者のためになるのかなど、業務の遂行にあたって円滑化が図れているのかなど、各ケアが適切であるか否かを常に感じながら業務を行っている方は多いことでしょう。

このような状態ではケアに対して不信感が募るばかりか、技術の向上も望めません。しかしながら、コンサルテーションを受けることで疑問に感じている問題を迅速に解決することができ、またケアに対する自信や技術の向上を図ることができるのです。

 

  • 知識習得に伴う自己洞察力・視野の拡大

知識量が増えれば増えるほど物事を見る目が養われ、また患者への理解が深まり、状況に応じた対処を迅速に行うことができます。また、豊富な知識をもとにケアの応用法を編み出すことができるなど、独自の視点から研究に着手する能力も養われます。

 

  • ストレスの緩和

コミュニケーションに関する不安や状況に応じた対処など、業務の中で多大なストレスを感じることが多い看護師ですが、コンサルテーションを通して同じ境遇に立つ者との語り合いにより共感を得ることができます。また、不安や心配事に関する対処法を教授してもらうことで、今後の業務での精神的負担が軽減され、ストレスの緩和ならびにストレスの溜まらない業務運びを行うことができます。

 

  • 周囲への関心・キャリアアップ思考の拡大

コンサルテーションを一度経験すると、疑問に対する迅速な解決、自己洞察力・視野の拡大、ストレスの緩和などコンサルテーションの利点や、相談・教育・指導の有効性に気づき、周囲(他の看護師が行うケア)への関心が高まります。これにより、自身の看護ケアの振り返りや技術向上への姿勢が前向きになり、キャリアアップ思考が拡大されていきます。

 

このように、コンサルテーションは何も疑問の解決だけでなく、自身のストレスが緩和できたり、業務に対する姿勢が前向きになったりと、さまざまな効果があり、これらはここ10年の検証・研究で実証されたものです。

特に精神看護領域の効果は凄まじく、専門看護師であれば「精神看護」、認定看護師であれば「緩和ケア」や「認知症看護」と、現在では多くの専門看護師・認定看護師がコンサルテーションを実施しています。

 

4、コンサルテーションの道のり

コンサルテーションは1人でもグループ(病棟)単位でも受けることができます。自身で応募することもできますが、どこで誰が何の領域のコンサルテーションを行っているのか分からないと思いますので、看護師長または院長を通して応募すると良いでしょう。

 

①自部署の所属長へ報告する

まずは、自部署の所属長(看護師長や院長)にどのような領域のどのような問題について相談したいのか、その旨を報告しましょう。院外のコンサルテーションに関しては、内外ネットワークを通して情報が共有されていますので、まずは報告することから始めましょう。

 

②依頼書を記入・提出する

報告すると、所属長よりコンサルテーションの依頼書が手渡されます。依頼書には、氏名・電話番号・Email・所属部署・相談内容などの記載項目がありますので、すべて埋めて所属長に提出してください。

 

③所属長が依頼書を送付する

依頼書の提出後、所属長が記載項目を確認し、依頼したい専門看護師・認定看護師(主に事業所)へ依頼書を送付します。

 

④依頼者が直接連絡をとる

依頼した専門看護師・認定看護師より返事が返ってきます。それが依頼書を通した返信(再送付)なのか、記載した電話番号・Email・FAX経由なのか分かりませんが、基本的には電話番号・Email・FAXを通して連絡をとります。また、多くは依頼者と専門看護師・認定看護師の間で直接連絡を取り合い、相談内容の確認や相談日の決定など行います。

 

⑤相談を受ける

人によって、また事業所によってコンサルテーションの実施内容は異なります。一対一の面談の場合や、グループでの面談の場合などさまざまです。グループの場合は特に、あなた以外にも相談したい看護師がいますので、相談内容を事前にしっかりとまとめておきましょう。

 

基本的にはこのような流れでコンサルテーションを受けることができます。所属病院内に専門看護師や認定看護師がいる場合には時間を割いてもらって直接相談に乗ってもらうのが効率的ですが、いない場合にはぜひコンサルテーション行っている事業所を活用し、疑問を解決へと導いてください。

 

まとめ

コンサルテーションは、疑問を解決できるだけでなく、自身の看護の振り返りや今後の看護への意欲向上など、受けるメリットは多大にあります。

また、自身が専門看護師や認定看護師の資格を取得して、コンサルタント(コンサルテーションを行う者)として活動する日が来るやもしれません。

それゆえ、専門看護師や認定看護師の資格取得を考えている方は、コンサルティ(コンサルテーションを受ける者)の気持ちを理解するという意味でも、一度受けておくと良いでしょう。

看護におけるエンパワメントの定義(意味)と向上のポイント

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エンパワメント看護

1、エンパワメントとは

エンパワメントとは、人々に夢や希望、勇気を与え、その人が本来持っている力を湧き出させることを言います。

看護におけるエンパワメントは、患者が持つ力(生きる力や健康促進への力)を看護師が湧き出させるよう援助することを言います。

従来では、看護師が主導権を握った援助が一般的でしたが、今では患者自身が自己の力で問題を解決していくという、いわゆる患者も医療に参加する立場にあるという考え方が主流となっています。

特に退院後の服薬や食事・運動制限などは患者本人に自主的に行うものであり、治療や健康増進におけるセルフマネジメントができない状態では、意欲の低下がみられると継続的に実施することができません。

そこで、看護師の目が離れた場合でも患者自身が自主的に、そして積極的に治療や健康増進を行っていけるよう、環境の整備や知識・技術の提供を通して患者が設定した目標を達成できるよう援助する、つまり患者が持つ本来の力を発揮できるよう、セルフマネジメント力が高まるよう援助していくことが、看護師が行うべきエンパワメント向上に向けた取り組みなのです。

 

2、エンパワメントの原則

患者のエンパワメント向上を支援するためには、まず原則を知っておく必要があります。これはエンパワメント実現に向けた過程で必ず不可欠な事項ですので、しっかり把握しておきましょう。

 

エンパワメントの原則

①目標を患者が選択すること

②行動の主導権・決定権は患者が持つこと

③問題点・解決策は患者自身で考えること

④新たな学びと、より力をつける機会として患者自身が失敗や成功を分析すること

⑤行動変容(※1)のために内的な強化因子を患者と看護師の両者で発見し増強すること

⑥問題解決の過程に患者の参加を促し、個人の責任を高めること

⑦問題解決の過程を支えるネットワークと資源を充実させること

⑧患者の幸福(身体的・精神的・社会的に良好な状態)に対する意欲を高めること

※1 行動変容とは、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」から成る行動過程のこと。

 

このように、患者が主体となって実行できるよう、看護師は補佐的に援助を行います。看護におけるエンパワメントは、患者本人が看護師に頼らず自分自身の力だけで健康促進・治療過程を実行していけるよう援助することが目的であるため、あくまで看護師は傾聴や共感、信頼関係を築くことで、患者自身が問題点・解決策の考案、目標設定、継続的な実施に対する意欲向上などを補佐的に援助する必要があります。

 

3、エンパワメントの支援設計

上記の原則をもとに、患者が自主的かつ意欲的に行動できるよう、「問題の特定」「感情の明確化」「目標の設定」「計画の立案」「結果の評価」という5つの過程を遂行するための支援を行うことで、患者のエンパワメントの向上を図ることができます。

 

問題の特定 行動を実施する上で、また継続的に行動する上での問題点を特定する。看護師は「傾聴」や「共感」の姿勢で良い聞き手となって、患者が抱える(抱えるであろう)問題を導き出し特定していく。
感情の明確化 行動を実施する上で必要となるセルフマネジメント力を高めるために、何に対して否定的か感情を持っているか、何に対して肯定的な感情を持っているのかを、患者自身が自己認識できるようコミュニケーションを通して導き出す。
目標の設定 問題解決に向けた行動を円滑かつ継続的に行うためには目標の設定が重要である。目標は可能な範囲で設定し、容易なものから段階的に最終目標へと繋がるよう、短期目標・長期目標を設定する。看護師はあくまで患者自身の目標設定を補佐的に援助し、最終決定は患者に委ねること。
計画の立案 行動の実施・問題解決のために、どのような過程を踏むのかアクションプランを立てる。看護師はあくまで補佐的に援助し、計画の立案を勧めず、患者自身が計画の実施可能性や正当性を判断し立案できるよう援助すること。
結果の評価 結果を評価することで次点の目標達成に向けた意欲向上を図ることができる。何が出来て何が出来なかったかを正しく自己評価できるよう、看護師が評価法を教授し、実践するよう促すこと。

 

4、信頼関係の構築

支援設計の過程を遂行するにあたり、最も重要となるのが患者と看護師間の信頼関係の構築です。信頼関係が築かれれば患者の意欲が高まり、看護師の目が離れた場合においても自主的に継続的に行動を実施することができます。いわゆる、“支援者が常に背後にいる”という状況化に置くことが大切なのです。

そのためには、患者が医療従事者の指示に対して意欲的に遵守する「アドヒアランス」の向上を図ることがポイントで、患者が抱える身体的・精神的・社会的問題における疑心や不信感などを払拭するために、患者自身が行うべき服薬・食事・運動・休養などについて正確かつ詳細に説明することが不可欠です。

また、患者のアセスメントをしっかり行い、心理的状況などを正しく把握した上で、問題解決に向けた継続的な行動を補佐的に援助することが求められます。

これらを達成するためには、患者が看護師を信用・信頼しているかがポイントとなるため、まずはコミュニケーションや知識の提供などを通して信頼の獲得を図ってください。

 

まとめ

従来では、看護師が主導権を握り、患者の問題解決に関わるという関係性が一般的でしたが、今では患者自身が自己の力(潜在能力)を最大限に発揮できるよう補佐的に援助する、エンパワメントの考え方が主流となっており、自己の状況をコントロールできないことで起こる“無力感”が健康や病気からの回復に悪影響を及ぼすという研究結果が示され、これによりエンパワメントの考え方が広まりました。

エンパワメントは患者の治療や健康促進において非常に有効な考え方ですが、実際には向上させるのは容易ではありません。

しかしながら、信頼関係を構築できればより容易に向上させることができるため、まずはしっかりアセスメントを行うとともに、コミュニケーションや知識の提供を通して信頼獲得を図り、原則に従った上で、支援設計の5つの過程を患者が1つ1つ実施できるよう献身的な態度でゆっくり支援していきましょう。

看護師になる前に知っておきたかった!ナースへの憧れと現実14選

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ナースあるある

1.シフト表は一見ゆとり…でも現実はもっと超ハード

「ナースはゆとり」という人は少なくありません。たしかに、「週3日・12時間勤務」という求人も少なくありません。早朝からはじまるシフトも少なくありません。オフの日の朝5時に緊急の応援要請の電話が入ることも。

 

2.医療ケアだけでなく、ナースは便利屋

ナースのしごとは、ドクターと患者さん・患者さんの家族のあいだにたつ仲裁者。しかも、医療テクノロジーの通訳もできないといけないし、ウェイトレスやハウスキーパーのような雑務も担当しないといけません。レンジの使い方やWi-Fiのパスワードまで教えてあげないといけないのが、ナースのおしごとなのです。

 

3.肉体だけでなく記憶力も大事

ドクターは、すべての患者さんの病状や病歴、処方についてもすべて覚えているとアテにしています。もし覚えられないなら、メモに書いて覚えないとしごとにならないんです。

 

4.医療ミスは絶対に起きてしまう

ミスをすぐに修正するか開き直らないかぎり、ナースはいつもハラハラしないとならない現場にいます。医療ミスはもっとも重大なもの。ナースは知らない場所でひとりで泣いているのです。

 

5.人の死を見続けなければならない

ナースを続けているかぎり、数えられないほどの「死」に向き合います。ひん死の子どもを目の当たりにしているお母さんに対して、何と言葉をかけてあげればいいか。天寿を全うしようとしている80歳すぎのおじいさんに対して、なんといえばいいか。どちらの「死」も、ナースの心に深く爪あとを残すものになるでしょう。

 

6.ユーモアセンスがないと生き残れない!

ナースはよく仕事場でおきたことを笑い話にします。部外者の人がきくとビビってしまうような場合も少なくありませんが、つらいことも笑い飛ばす力が何よりも大切なのです。ストレスフルな現場でも、しっかり患者さんを支える明るい心が必要なのです。

 

7.仕事中はずっと電話しっぱなし!

仕事中は、ずっと電話で話すことも多いのが、ナースのお仕事。たとえば、薬局やラボ、中央材料室との折衝だけでなく、ケースマネジメントの場合など、さまざまな調整のためにナースはずっと電話しています。もしナースになりたいのなら、電話で聞き取りやすい「美声」を鍛えると役に立つでしょう。

 

8.腰痛対策「あったかパッド」をして勤務

ナースはほぼ100%腰痛や背中の痛みを抱えています。いつも採血器具や何十キロもの患者さんを運ぶのですから、当然ですよね。ですから、ほとんどのナースはあったかパッドをしのばせながら働いています。

 

9.知人から健康相談のメールがくる

知人から毎日のように、健康相談がくるのが「ナースあるある」。正直めんどうですが、ナースは根がお人よしの人が多いので、ついつい答えてあげてしまいます。

 

10.ナースは「割に合わない」けれども「稼げる」

ナースのしごとの重さを考えれば、もっとお給料がよくてもいいと思われます。しかし、もし稼ぎたいのなら、夜勤や週末シフトに入るだけですぐに稼げるのも、ナースのいいところ

 

11.周囲と時間が合わなくてチャンスを逃してしまう

何回も家族や知人に説明しても、ナースが週末や休みの日に仕事をしていることを理解してくれる人は少数派。誕生パーティやバーのハッピーアワー、さらには様々なイベントにいくチャンスを逃してしまうことは覚悟しておかなければなりません。

 

12.同僚を家族のように愛したり、嫌ったり

ふつうの友人に比べても、一緒の現場で働く同僚との距離がすぐに縮まるのがナース。まるでほんものの「家族」のように、同僚を愛したり、嫌ったりします。同僚は、ナースならではのストレスそして仕事への愛情を誰よりも理解してくれるのです。

 

13.朝ごはんは通勤中に2分で食べる

患者さんの症状と場合によっては、何時間も休憩がとれません。お昼を食べられないのは日常茶飯事。ナースは2分でご飯が食べられます。

 

14.いつも原点を見失ってはいけない

ナースの仕事は、縁の下の力もちで、感謝されることはほとんどありません。自分のキャリアに愛憎がいりまじった気持ちを持つこともあるでしょう。親しくしていた患者さんの死に涙する帰り道もあるでしょう。でも違う日は、誰かの命を助けたことに誇りをもてる日もあるでしょう。つらいときは、どちらか楽しくてうれしい思い出を思い出してみてください。その積み重ねが、あなたをすばらしいナースにしてくれるでしょう。

ワシントンのナース・アリソン

Reference:cosmopolitan

看護におけるアドヒアランスの意味と向上に向けた取り組み

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アドヒアランスの看護

1、アドヒアランスとは

アドヒアランスとは、服薬や行動制限などにおいて患者が“自らの意思で遵守する”という概念のことです。服薬の遵守は疾患の治療において非常に大切で、遵守されなければ治療が円滑に行われず、時として症状の悪化を招くことがあります。

また、行動制限においても同様に、遵守されなければ症状の悪化はもちろん、転倒や転落などの二次的事故の発生を助長することになります。

それゆえ、患者のアドヒアランスを向上させるために、薬剤の効能や副作用、服用する時間、服用しなかった場合に起こりうること、行動制限の意味、行動可能範囲の理解など、詳細に説明し患者の同意を得た上で、患者が自ら率先して実施するよう援助することが大切なのです。

 

2、コンプライアンスからアドヒアランスへ

今ではアドヒアランスが主流となっていますが、以前は「コンプライアンス」という言葉が使われていました。コンプライアンスとは、服薬や行動制限を“遵守する”という意味を持ち、アドヒアランスと類似した意味合いで用いられていますが、類似していながらこれら二つには大きな違いが存在します。

 

コンプライアンス 患者が服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に“従っているか”を評価すること。従っていない場合をノンコンプライアンスと言う。
アドヒアランス 患者が服薬や行動制限などにおいて医療従事者の指示に“自らの意思で実施しているか”を評価すること。自らの意思で実施していない場合をノンアドヒアランスと言う。

 

このように、コンプライアンスは“遵守する”ことのみを評価するのに対し、アドヒアランスは“意欲的に遵守する”ことを評価するという一歩進んだ考え方なのです。

これまでノンコンプライアンスの問題は患者側にあると強調されてきたことで、現場ではコンプライアンスを向上する取り組みがあまり行われていませんでした。

そこで、患者側に問題があるという概念を脱却し、患者側・医療従事者側、患者・医療従事者の相互関係という3つの因子から、いかに患者が自らの意思で積極的に治療に参加するかを評価するアドヒアランスの概念が生まれたのです。

 

3、アドヒアランス向上に向けた取り組み

アドヒアランスを向上させるためには、①患者側の問題、②医療従事者側の問題、③患者・医療従事者の相互関係、の3つの因子を解決する必要があります。なお、アドヒアランスの項目には服薬・行動制限・食事・運動・休養・受診などがありますが、以下には服薬に関するノンアドヒアランスの問題とアドヒアランス向上への取り組みについてご説明します。

 

患者側の問題

患者側の問題には、「無関心」「懸念(副作用・依存性など)」「疾患の重要性の否定」「経済的懸念」「指示に対する誤解」「効能・効果への不信」「物理的困難(嚥下困難・遠方による薬剤の受け取り困難など)」「症状の軽減・変化・消失」「指示忘れ」「頻回投薬への嫌悪」「不快な味・臭い」などがあります。

これらを解決するためには、現病、薬剤の効能・副作用、服薬を中止した場合に起こりうること、服用時間の重要性、継続的な服薬による症状の変化過程など、患者が正確かつ詳細に把握することが不可欠です。

また、経済的負担の軽減のための薬剤変更、嚥下困難を軽減するための薬剤の変更(小さな薬剤へ)などの工夫も必要です。

 

医療従事者側の問題

医療従事者側の問題は主に患者に対するアセスメント不足が原因です。なぜ服薬を中止したのか、その問題(上記の患者側の問題)が何かをしっかりアセスメントしなければ、問題解決には至りません。

医療従事者側の責任として正確かつ詳細な指示説明がありますが、それに加え、患者を綿密にアセスメントすることで、ノンアドヒアランスの予防・向上を図ることができます。

 

患者・医療従事者の相互関係

患者が服薬に関して正確かつ詳細に把握していても、医療従事者に対して信用がなければ、服薬の情報に対する不信感を持つようになります。また、心理的観点から医療従事者と患者の間に信頼関係が築かれていなければ意欲が低下し、継続的に服薬指示を遵守することができません。

しかしながら、信頼関係を築かれれば、患者は医療従事者からの情報の正当性や信憑性が増し、意欲向上に伴って継続的に服薬指示を遵守することができます。

 

まとめ

アメリカではノンアドヒアランスにより毎年12万5000人もの患者が心血管系疾患のため死亡していると推定されており、日本においても重症疾患患者のノンアドヒアランスによる死亡例は多数にのぼっています。

アドヒアランスを向上させることは容易ではありませんが、アドヒアランスを向上させることができれば患者の症状の増悪を防ぎ、死亡率も大きく減少させることができます。

看護師自身が豊富な知識を持っていなければ、アドヒアランスの向上を図ることがより困難となるため、まずは服薬(薬剤)・行動制限・食事・運動・休養などについての知識を深めることから始めてください。

看護における「プロセスレコード」の目的と書き方・記入例

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プロセスレコード看護

患者との会話や出来事を振り返り考察し、それを記録に留める「プロセスレコード」。患者理解やコミュニケーション力の向上を図ることができ、昨今では看護学校や新人看護師の教育の一環として広く活用されています。

ここでは、看護におけるプロセスレコードの目的と書き方・記入例をご説明しますので、ぜひプロセスレコードの知識習得にお役立てください。

 

1、プロセスレコードとは

プロセスレコードとは、1952年にヒルデガルド・ペプロウが提唱した、看護師と患者間の相互関係における文章記録のことで、看護の振り返りとして行われる「リフレクション」の過程の中での記録にも用いられています。

患者の身の回りのお世話や手技による看護実践はもちろん、言語・非言語による「コミュニケーション」も看護の1つであり、多くの場合、傾聴することで患者の精神的安楽を図ることができます。

しかしながら、日々の関わり合いの中では、患者が何を考えているのか、何を感じているのかという気持ちを瞬時に理解することは難しいのが実情です。

そこで、患者との関わり合いの中で気になった会話や行動を振り返り、患者の言動は何を意味していたのか、自分の言動が患者にどのような影響を与えたのか、状況に応じて適切な回答ができたのかなどを具体的に文章に記す「プロセスレコード」が重要になってくるのです。

 

2、プロセスレコードの目的

プロセスレコードを用いて看護師と患者の会話を振り返り、それを記録として残すことで、明確に会話を抽出することができます。

また、抽出した会話文を見ながら、患者が何を思ってそのように発言したのか、自分が話したことやとった行動が正しかったのかなど、1つ1つの会話を考察することができます。

これらを文章に記さず頭の中だけで行うと、適切かつ詳細に振り返ることができず、1つ1つの会話を考察することができないため、プロセスレコードの用紙に記入することが大切なのです。

また、プロレスレコードを実施することで、患者の気持ちをより理解できるようになる、患者と良好な関係を築けるようになるなど、コミュニケーション力の向上を図ることができます。

 

コミュニケーションによる学び

非言語コミュニケーションについての学び 患者の表情・仕草・行動などを通して、患者が何を考え何を思い何を伝えたいのかを知ることができる。
コミュニケーションは援助的な関わりである 看護実践だけが患者に対する看護行為なのではなく、患者の考えや思いが分かれば、患者は落ち着き、精神的安楽を図ることができる。
患者のペースや待つことが大切 会話の中で間を取ること、患者の話すスピードに合わせること、沈黙することで、患者が訴えを伝えやすい雰囲気を作ることができる。
受容・傾斜・共感の行動が大切 患者が抱える不安や恐れは、話すことで多少なりとも緩和され、患者が話すことをしっかり傾斜した上で、受容・共感の態度を示せば、患者の不安や恐れを取り除くことができる。
患者理解の重要性 全ての患者がよく話すとは限らず、話すのが恥ずかしい、日によっては話す気分ではないなど、患者によって異なるということを理解することが大切だと分かる。
信頼関係形成の基盤 患者のことを一番に考え寄り添うよう対応することで、患者から率先的に話しかけてくれたり、本当の思いを話してくれるなど、良い関係を築くことができる。
意図的に関わることが大切 自分が間違った対応をしたのではないか、本心ではどう思っているのかを自分なりに解釈し伝えることで、患者は自分のことを気にかけてくれていると感じ、寄り添う看護を実現できる。
注意深い観察が大切 無口で訴えの少ない患者に対しては、表情・視線・話し方などこれまでの変化がないか注意深く観察し接することで、気分や感情が次第に分かるようになる。
共にいる、患者の気持ちに寄り添う 患者の訴えに耳を傾け気持ちを理解し、一緒に考え一緒に悩む、それだけでも十分看護になり得る。

 

このように、コミュニケーションは患者理解や良好な関係構築のために非常に重要なものであり、プロセスレコードを通して1つ1つ会話を考察することで、何がダメだったのか、何が良かったのか、どのようなことを改善すれば良いのかなど、自身のコミュニケーション力を高めることができるのです。

 

3、プロセスレコードの書き方・記入例

プロセスレコードで用いられる様式は医療施設や教育機関によってさまざまですが、日本で用いられる様式の多くは、「患者情報」「患者の言動(行動)」「私(看護師)が感じたこと」「私(看護師)の言動(行動)」「分析・考察」の項目が記載されています。

なお、プロセスレコードの要となる「患者の言動(行動)」「私(看護師)が感じたこと」「私(看護師)の言動(行動)」は、それぞれ時系列で記入していきます。

 

プロセスレコードの事例

≪患者情報≫

C氏 58歳 男性 統合失調症 入院期間:10年

幻覚(幻聴)が活発な状態である

≪この場面をとった動機≫

幻聴によって言動が左右されているC氏に、どう対応したらよいのかわからなかった。もう少し、C氏の気持ちを汲んだ対応を考えたかったから

患者の言動 私が感じたこと考えたこと 私の言動
①「先生が退院はダメだけど、学生さんと相談して学生さんがいいよって言うんだったら、退院していいよって」 ②えっ、本当にそうおっしゃったのかな? ③「先生が本当にそうおっしゃいましたか?」
④「うん、そう言ったよ」 ⑤どうしよう、何て言おうかなあ ⑥「先生のほうが私よりえらいので、私は勝手に判断できないんです」
⑦「けど、先生がそう言ってたし頼むよ、何でもするし・・・」 ⑧どうしよう、どうしたらいいのだろう ⑨「私、学生なので勝手に決められないんです」
≪分析・考察≫

C氏が退院の希望を強く持っていることが分かった。また、その希望の強さから幻覚の内容はできあがっているのではないだろうか。

はじめ、私はC氏の言葉に混乱してしまい⑥⑨のように曖昧な対応を続けてしまっている。

≪私がこの場面で学んだこと≫

幻聴に左右されているC氏も混乱しているし、私も同じように混乱していたのでは、判断がお互いにつかなくなる。落ち着いて、じっくりC氏の言葉を聴いていくことが大切であると思う。(以下略)

長谷川雅美・白波瀬裕美『自己理解・対象理解を深めるプロセスレコード』39項より抜粋、一部改変

 

  • 患者情報

患者の氏名(特定できないように)、年齢、性別、現病名、入院期間、症状など、患者の情報を記入します。どの患者との会話・行動の記録なのかを明瞭にするために、簡潔かつ可能な限り詳しく書いてください。

 

  • 患者の言動(行動)

患者がどのような言動を発したのか、どのような行動をとったのかを記入します。ここでは患者の発言や行動をそのまま書いてください。

 

  • (看護師)が感じたこと

患者の言動(行動)に対して、患者がなぜそのような言動を発したのか、なぜそのような行動をとったのかについて、あなたなりに感じたことを記入します。ここでも堅い文章を使う必要はなく、あなたが感じたことをそのまま書いて構いません。

 

  • (看護師)の言動(行動)

患者の言動(行動)に対して、あなたが発した言葉やとった行動を記入します。ここでも堅い文章を使う必要はなく、あなたの発言や行動をそのまま書いて構いません。

 

  • 分析・考察

患者の発言や行動は病気によるものなのか、性格によるものなのか、真意は何だと思うのか、あなたの発言や行動は回答として相応しかったのかなど、会話を振り返って思うこと、気づいたこと、分かったことを記入します。

 

このように1つ1つの発言や行動を抽出し、それに関する考察を行うことで、患者の真意やあなたの発言・行動の正誤を確かめることができます。

 

4、プロセスレコードに関する研究

プロセスレコードは、コミュニケーション力の向上や看護実践に役立つことから、これまでに数多くの研究で活用されています。

最後に、プロセスレコードの事例集(記入例)、文献・雑誌をいくつかご紹介しますので、プロセスレコードについて深く学びたいという方は閲読の上、参考にしましょう。

なお、当ページから移動できないものに関しては、医中誌など教育機関や医療施設付属のパソコンで閲読することができます。

 

プロセスレコードの事例集

論題 著者
プロセスレコードの分析からみた患者への対応に関する考察 丸橋 佐和子、山本 裕子、柳井 勉
プロセスレコード(見本例) 社会福祉法人 福岡県社会福祉協議会 ふくふくネット
プロセスレコード 記入例 一般社団法人 鹿児島県介護福祉士会
成人看護学実習における教師の実践的力量の検討 芥川清香、奥祥子、安酸史子
平成8年度 山口県実習指導者養成講習会集録「ふれあい」 山口県看護協会

 

プロセスレコードの文献・雑誌

学生が困った場面を振り返ることの学習効果-精神看護学実習におけるプロセスレコードの分析より-

名古屋市立大学看護学部紀要, 第1巻

三原 亜矢巳、夛喜田 恵子
臨地実習における患者-学生間のコミュニケーションの分析-テクストとしてのプロセスレコードの内容分析を通して-

沖縄県立看護大学紀要, (6): 10-24.

伊礼 優、岡村 純、栗栖 瑛子
精神看護学実習においてプロセスレコードに取り上げられたテーマと学習内容(報告)

滋賀医科大学看護学ジャーナル,  1(1): 56-66

片岡 三佳、須藤 葵、瀧川 薫
スタッフの対応が認知症患者に与える影響 : プロセスレコードの分析から

日本看護学会論文集. 精神看護45, 107-110,

大野 明子、伊藤 信子、渡邉 美紀、他
看護学生の観察力の変化に関する研究 : プロセスレコードに記載された患者の非言語的表現の分析

青森中央短期大学研究紀要(27), 57-64,

秋庭 由佳、藤澤 珠織、松島 正起、他
看護とコミュニケーション授業『プロセスレコード演習』における教育的効果 : 場面を選んだ理由と学びの分析から

川崎市立看護短期大学紀要19(1), 1-9,

福永 ひとみ、吉村 惠美子
在宅看護論実習におけるプロセスレコード活用の教育的効果の検討

日本看護学会論文集. 地域看護44, 212-215,

内藤 恭子、篠田 晃子、深谷 由美、他
認知症患者家族に対する看護師のコミュニケーションの実際 : プロセスレコードの分析を通して見えてきたもの

日本看護学会論文集. 精神看護44, 82-85,

河野 裕子、大坂 望美、藤田 清美、他
再発婦人科がん患者に対する人間中心的コーチングの実践 : プロセスレコードを用いた効果的なコミュニケーションの探求

看護研究集録 24, 35-40,

廣井 由佳、廣田 良子、藤野 聖子、松永 理子、吉村 久美
在宅看護論実習における療養者と家族の理解を深めるためのコミュニケーション能力支援 : プロセスレコード活用の試み

日本看護学会論文集. 地域看護43, 187-190,

御田村 相模、深谷 由美、篠田 晃子、他
精神科看護師の異和感を抱いた要因とそのサポート〜事例検討会とプロセスレコードでの振り返りを通して〜

看護研究集録 平成21年度, 9-12,

小西 亜侑美、若林 優
看護初学者のプロセスレコードからみるコミュニケーションの特徴

三重看護学誌 14(1), 141-148,

林 智子、井村 香積

 

まとめ

プロセスレコードにより、患者との会話や出来事を振り返ることで、患者の考えや思い、何が大切だったのかなど、さまざまなことを知ることができます。

また、この取り組みを継続的に行うことで、コミュニケーション力の向上を図ることができ、患者によりよい看護を提供できるようになります。

プロセスレコードを用いなくても、日々、患者と接する中で言動・表情・仕草などを観察し続ければ患者理解が深まり、コミュニケーション力は次第に高まっていきますので、日々綿密な観察を続けていってください。

 

【参考文献】

精神看護学実習におけるコミュニケーション技術を通しての学生の学び

自己理解・対象理解を深めるプロセスレコード-プロセスレコードが書ける、読める、評価できる本


看護師のストレス発散・解消のためのコーピングスキル活用術

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コーピング看護

日々、ストレスフルな状況下での業務遂行を強いられる看護師。ストレスを解消し、ストレスを受けにくい体質を作るためには「コーピング」と呼ばれるストレス対処法(思考や行動)を実践することが有効です。

今ではコーピングという言葉が広く用いられており、看護師のコーピングに関する研究は数多く行われていますが、それらはある1つの事柄に特化していることで、看護師が真に知りたいストレス対処法について書かれていない、または論文という形式上、内容が難しくて理解できないということがあるでしょう。

そこで、当ページでは看護師のコーピングスキルを用いたストレス対処法を分かりやすくご説明しますので、日々、ストレスに悩んでいる方はぜひ最後までしっかりお読みください。

 

1、コーピングとは

コーピングとは、「ストレスを発散する」という意味で用いられており、「問題に対処する・切り抜ける」という意味を持つ“Cope”に由来しています。

看護師不足が嘆かれている昨今、看護師1人が受け持つ患者数は増加の一途を辿っており、仕事量の多さに加え、給与や待遇に対する不満、命を預かることへの責任感、人間関係など、実に様々なストレス要因が存在し、看護師の多くは毎日多大なストレスと向き合っているのが現状です。

これら職業性のストレスや看護師自身の健康に悪影響を与えるばかりか、看護の質低下を助長し、患者が適切な看護を受けられない状況を生み出しているため、日本看護協会全国看護師職能集会が「看護職者の労働安全衛生-職場におけるメンタルヘルス」 と題してシンポジウムを開いたり、看護師のストレス要因や対処法に関する数多くの調査・研究が行われています。

特に新人看護師のストレス量が非常に多く、新人看護師←主任看護師←臨床実習指導担当看護師←看護師長という順で、受けるストレス量は多いことが研究で示されており、2014年に日本看護協会が行った「看護職員需給状況調査」によると、看護職員(保健師・助産師など含む)の離職率は、常勤が11.0%、新卒が7.5%と一般企業と比べて高率を誇っています。

コーピング看護

出典:日本看護協会

 

特に夜勤のある病院での離職率が高い傾向にあり、都道府県別の“常勤看護職員”の離職率は、東京都(14.6%)が最も高く、次いで神奈川県(14.0%)、大阪府(13.9%)、兵庫県13.3%と、規模の大きい都道府県で働く看護師が高い離職率を誇っています。

都道府県別の“新卒看護職員”の離職率は、愛媛県(10.9%)が最も高く、次いで栃木県(10.6%)、大阪府(10.2%)、香川県(10.1%)。

これら離職の要因の多くはストレスが関与しており、継続的に就業するためにも、前向きに業務を行うためにも、コーピングが1つの“カギ”となっているのです。

 

2、看護師のストレス要因

看護師の職業性のストレス要因は、主に「勤務構造」、「仕事内容」、「対人関係」の3つに分類でき、これらのストレス要因は、長崎大学が看護師を対象に行った調査・研究で示されています。

 

勤務構造 長時間労働、交代勤務、不規則な勤務時間・夜勤など
仕事内容 患者の症状の再燃・悪化への対応、医療上の判断の困難さ、人命への責任、患者の死亡・自殺・自傷、感染・暴力の危険、転倒・誤薬の事故、技術革新など
対人関係 患者・家族との関係、同僚・上司との関係、医療チーム内の関係

 

このように、細分化するとストレス要因は多岐に渡り、特に長時間労働、不規則な勤務時間・夜勤、人命への責任、同僚・上司との関係が大きなストレスになっているのが実情です。

これらをさらに細分化し、看護師が抱える特に大きなストレス要因を抽出すると、以下のような項目が挙げられます。

 

勤務構造 業務量が多い、看護師数と仕事量のバランスが悪い(身体的・精神的)、

超過勤務が多い、休憩・休息がとれない、役割が多い、時間外勤務が多い

仕事内容 医療事故に対する不安、雑務が多く看護業務に専念できない、能力以上を評価されることへの負担、行った仕事を評価されない
対人関係 医師との関係、上司との関係、患者との関係、同僚との関係、患者家族との関係、コ・メディカルスタッフとの関係

※項目はストレス量の降順(大きい方から少ない方へ)

 

2-1、勤務構造(ストレス要因①)

業務量が多いなどの勤務構造上のストレス要因は、人材不足が大きく関与しています。看護師1人の対する受け持ち患者数は10人以内であることが望ましく、これは看護師の負担や患者が受けられる最適な看護量などをもとに考えられた理想的な人員配置です。

しかしながら、現状では看護師1人あたり10人以上の患者を受け持つ例も少なくなく、そもそも10人以内というのは現状の就業看護師数に基づいて計算された配置であるため、看護師の負担や患者が受けられる最適な看護量を7人以内(7対1)が理想的です。しかしながら、この配置を達成している病院は数少ないでしょう。

また、多くの病院では24時間体制で患者の管理を行うことから、夜勤は免れることができなく、十分な睡眠時間を確保することができない、睡眠習慣のバランスが崩れるなど、これらによるストレス量の増加はもちろん、ストレスを受けやすい体質を助長します。

さらに、新人看護師は覚えることが非常に多く、新規転職者においても病院によって業務の流れや看護内容が異なるため、転職先の病院の方針に沿って一から覚えなおさなければいけません。どの職種でも業務内容を把握しなければならない状況は必然ですが、命を預かる看護職は他業種よりもさらに覚えることが多く、多大なストレスが溜まります。

 

2-2、仕事内容(ストレス要因②)

看護師という職業上、患者の治療や健康促進に大きく関わります。また、薬剤の使用やルート・カテーテル類の管理など、場合によっては生命を脅かす看護業務が多々あり、ヒヤリハットや医療事故に対する不安を常に抱えています。特に重症患者の看護を行う時は、軽症患者よりも多大な不安を感じることでしょう。

また、通常は患者から訴えがないために、いくら頑張って看護業務を行っても評価されず、患者から訴えがあり評価された場合でも、同僚看護師や先輩看護師から妬まれるなどのジレンマがつきまといます。

そのほか、看護業務以外でも雑務、いわゆる雑用をさせられることが多々あり、特に新人看護師は現実と理想の違いに驚くことでしょう。これら仕事内容におけるストレス要因は、看護師ならではと言えますが、自身の看護技術を向上させることで、ストレス量は減少していきます。

 

2-3、対人関係(ストレス要因③)

現在、看護師の男女別内訳は、女性92.7%、男性7.3%となっており、一昔前と比べて男性の割合はやや高くなっているものの、まだまだ女性中心の職場環境です。

これに伴い、女性間の対人的トラブルが後を絶たなく、イジメへと発展する例も少なくありません。また、縦社会が一般化されている看護職において、上司の立場にある先輩看護師などに意見ができず、不満が募ることでストレスが溜まっていきます。

さらに、同僚看護師においても対人関係の不和が生じることが多く、同業種でありながら相談することができないことも多々あります。

男性看護師においては、肩身が狭いことで相談ができないのはもちろん、女性社会の中で働くことだけでストレスは溜まっていき、慣れるまでは常にストレスにさらされた状況下で業務を行わなければなりません。

こうした対人的トラブルは一度起こると改善するのが難しいのが現実で、対人的トラブルを理由に離職(転職)する看護師は実に多く、看護師を続けていく上で避けては通れないトラブルと言えます。

 

3、看護師のストレス対策(自主実践)

これら「勤務構造」「仕事内容」「対人関係」によるストレスを解消しなければ、看護師として継続的に業務に携わるのは難しく、時として離職を余儀なくされてしまいます。また、看護師がストレスを受けると、それは業務に悪影響を及ぼし、患者が最適な看護を受けられないという状態に陥ってしまいます。

そこで重要となるのが、コーピングスキルを用いたストレス解消・緩和法であり、コーピングスキルは仕事上のストレスはもちろん、日常的なストレスも解消できる手段として用いられており、さらにPTSDといった精神障害の治療法としても活用されています。

コーピングスキルは現在までに、さまざまな研究者によって開発されていますが、ここではアメリカの心理学者「リチャード・S・ラザルス」が提唱した対策法である「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型」を基に、一般化されているコーピングスキルについてご説明します。

なお、ストレスを解消・緩和するコーピングスキルには、「問題解決」「認知対処」「ソーシャルサポート」「回避的行動」などがあります。

 

3-1、問題解決(ストレス対策①)

問題解決とは、ストレスの原因となっている問題やそれに対する解決策を抽出し、計画を立てて問題に向き合っていくことです。

問題解決のために状況分析を行う人と、そうでない人を比較した場合、状況分析を行う人の方が同じ出来事を体験してもストレスを受けづらくなるため、ストレス解消はもちろん、ストレスの対処・予防にも効果的です。

 

問題解決のための心構え

・  問題解決に向けて積極的に行動する

・  自分自身の現状を変えて前向きに問題解決のために行動を起こす

・  慌てず自分のペースでゆっくり取り組む

・  良い結果を生むことに対しては全力でその事に集中する

・  ストレスの原因となる出来事の状況を思い浮かべ詳しく調べる

・  経験に照らし合わせて達成可能な解決策を考案する

・  達成可能な計画を立案し行動に移す

・  途中で諦めず、少しでも何か解決のための可能性を見つける

・  1つ1つの物事を確実に処理していく

・  解決するための努力が足りないと感じる場合は、より一層努力する

・  さまざまな解決策を試みる

 

問題解決におけるストレスの解消法で最も大切なことは、「抱えるストレスと向き合うこと」「積極的に行動すること」です。どのような事に対してストレスを感じているのか、それに対してどのような解決策があるのか、解決のためにどのように行動すればよいのか、という手順を踏んで自分のストレスに向き合って積極的に行動を起こすことで、ストレスは解消されていきます。

また、問題解決における思考・行動の習慣が身に着けば、ストレス耐性がつくことでストレスを受けにくくなります。

 

3-2、認知対処(ストレス対策②)

認知対処とは、ストレス要因に対して肯定的な意味を持たせたり、自分自身の感情をコントロールする技法のことです。

PTSDをはじめとしたさまざまな精神障害の治療(認知行動療法)やカウンセリングにおけるアドバイスなどにも用いられています。

 

認知対処における考え方

・  ストレスの原因となっている出来事に肯定的な面を見つける

・  出来事に対して立ち向かうのではなく一歩退いてその出来事を見直す

・  どうにかなると楽観的に考え心配しないようにする

・  妥協した上で出来事の中にも何か自分にプラスになることがあると考える

・  苦労したことにより今後は何か良い事があると考える

・  自分自身を精神的に成長させ逞しくする

・  苦労した経験を良い経験として活かす

・  何も考えず睡眠をとり休養する、心を落ち着かせる

・  買い物・友人との食事・スポーツ・旅行などで気晴らしをする

 

認知対処は否定的な考え方ではなく、ストレスに対して肯定的に捉え、積極的な態度で取り組むことが大切です。全てにおいて“嫌な出来事”として捉えず、その中にも自分にとってプラスになることや、今後の仕事や人生に活かせることがあると捉えることで、気持ちが前向きになり、ストレスに対処していけるようになります。

 

3-3、ソーシャルサポート(ストレス対策③)

ソーシャルサポートとは、いわゆる家族や友人に相談したり愚痴を言ったりと、第三者の力を借りる情緒中心対処における行動的努力です。

最も手軽に実践することができ、効果を実感しやすいことからストレス対処法において第一選択としても良いでしょう。

 

相談-他者の力を借りた対処法-

・  家族や友人など身近な人に相談する

・  ストレスの原因となる出来事について情報を得る

・  誰かに共感や理解を求める

・  問題解決を手助けしてくれる人に相談する

・  信頼できる人にアドバイスをしてもらう

・  話を聞いてもらって気を静めたり冷静さを取り戻す

 

人は想いを内に秘めず外に発散することで気分が晴れます。ただし、職場の中での相談や愚痴は人間関係を悪くすることがあるため、職場とは関係のない人に対して相談したり愚痴を言うことがポイントです。

また、他人から共感や理解を得ることで“自分だけではない”という安堵感を獲得することができるため、看護職に携わる人に対して相談することも非常に効果的です。この場合には、他の医療施設に勤務している人やインターネットやSNSを通して話を聞いてもらうのが良いでしょう。

 

3-4、回避的行動(ストレス対策④)

回避的行動は、ストレスの原因となっている問題ではなく、その他のことに目を向ける否定的行動のことです。

これを行うことで否定的な思考が働くため、必ずしもストレスが緩和させるわけではなく、かえってストレスを増強させてしまう可能性があり注意が必要ですが、「問題解決」「認知対処」「ソーシャルサポート」で対処できない場合や、多大なストレスを感じている時の一時的な対処として有効な手段です。

 

回避的行動・否定的思考による対処法

・  嫌な事を頭に浮かべないようにする

・  嫌なことを考えず、楽しいこと好きなこと考える

・  趣味に没頭し、嫌なことから遠ざかる

・  自分は悪くないと考え言い逃れをする

・  責任を他の人に押し付ける

・  自分では手に負えないと考え放棄または解決を後延ばしにする

 

このような回避の考え方は、これまで否定的に捉えられることが多かったものの、特に人間関係のストレスに対しては有効で、問題解決と共に行うことでさらに高い効果が得られると昨今の研究で明らかになりました。

しかしながら、上述のように否定的な思考はストレスを増大させることもあるため、回避型行動を単独で行うのではなく、問題解決とともに行いましょう。

 

4、“対人関係”におけるストレス対策

上で述べた「問題解決」「認知対処」「ソーシャルサポート」「回避的行動」のコーピングスキルを統合した上で、対人関係にのみ焦点を当てたコーピングとして、「肯定的関係コーピング」「解決先送りコーピング」による考えが、人間関係によるストレスの緩和に効果があると研究で示されました。

 

肯定的関係コーピング

・  相手の良いところを探す

・  積極的に関わり合いを持ち相手を受け入れる

・  相手のことを良く知るために積極的に関わる

・  相手の気持ちになって考える

・  自分が行ったことを見つめ直し反省する

・  この経験によって何かを学んだと考える

・  この経験によって人間として成長したと考える

・  この経験は一種の社会勉強だと捉える

・  自分の存在をアピールし積極的に意見を主張する

・  自分から積極的にあいさつをする

 

このように、前向きな思考で相手との良好な関係構築のために行動したり、相手のことを理解するよう努力したり、自分自身に何かしらの問題や誤解があったと捉え反省的姿勢で行動することで、対人関係におけるストレスの緩和だけでなく、良好な関係構築にも効果が期待できます。

反対に、関わり合いを避ける、無視する、相手を悪者にする、という否定的な行動は職場内において他者から否定的に評価され、その結果、他者から情動的なサポートが得られなかったり、否定的な行動をされたりと、かえってストレスの増加を招いてしまいます。

それゆえ、対人関係のストレスに対しては、自分を強く持ち、肯定的かつ積極的な態度で関わり合いを持つことが重要です。

 

5、コーピングに関する先行研究

現在までに看護師のストレスやコーピングに関する研究が数多く行われています。コーピングに関して深く知る上で、これらの先行研究は非常に有益なものですので、ぜひ一度閲読の上、コーピングに関する知識習得にお役立てください。

なお、以下にてコーピングに関する先行研究のうち、「ネット上で閲覧可能な文献」と「図書館等で閲覧可能な文献・雑誌」をいくつかご紹介します。

 

ネット上で閲覧可能な文献

論題 著者
終末期に携わる看護師の発達段階におけるコーピングの変化 堀内 真知子、小林 絢
看護における「ニード論」「ストレス―コーピング理論」 茶園 美香
新人看護師のストレス軽減を目的とした感情表現ツールの制作 磯川 亮太、中村 悠真、三谷 篤史、井口 久美、武田 美智子、守村 洋
新卒看護師の職場ストレスと対処行動 -就職後6ヶ月間の変化- 小林 知津子、中村美知子
新人看護師における就業3年までの職務ストレッサ―とストレス反応に関する研究 眞鍋 えみ子、小林 光代、岡山寧子
看護学生における対人ストレスコーピングが ストレス反応に及ぼす影響 加藤 司
看護学生用ストレス・コーピング尺度の作成(その1) -因子分析による内的信頼性・妥当性の検討- 竹内 登美子
看護師のストレス要因とコーピングとの関連 -日本版GHQ30とコーピング尺度を用いて- 加藤 麻衣、鈴木 敦子、坪田 恵子、上野 栄一
精神看護学実習における看護学生の対人ストレスコーピング 高橋 ゆかり、本江 朝美、古市清美、香月 毅史
看護臨床実習におけるストレスとコーピングおよび性格との関連 近村 千穂、小林 敏生、石崎 文子、青井 聡美、飯田 忠行、山岸 まなほ、片岡 健
クラスター分析を用いた,看護師のコーピングスタイルの 違いによるストレス反応・QOLの差の検討 角田 純、樋町美華
看護職のストレスマネジメントに関する研究 -ストレス・ストレスコーピング尺度(SSCQ)の看護職への適用- 足立 はるゑ、井上 眞人、井奈波 良一
看護学生の入学前の心的外傷経験とコーピング -自由記述の収集と分類- 新山 悦子、塚原 貴子
組織風土が看護師のストレッサ―, バーンアウト, 離職意図に与える影響の分析 塚本 尚子、野村 明美

 

図書館等で閲覧可能な文献・雑誌

論題 著者
医療事故を背景とする看護婦のストレス調査,Expert Nurse17巻 13号,130-133. 渡部 郁子、須合 美子、菊池 公子、他
看護師のストレスとストレス対処の特徴 -SSCQを用いた年代別調査-,山梨医科大学紀要19 巻,65-70. 梶原 睦子、八尋 華那雄
中堅看護師の職務ストレス認知がうつ傾向に及ぼす要因分析に関する研究 -新人看護師と比較して-,日本看護研究学会雑誌, 26巻4号,21-30. 石井 京子、星和 美、藤原 千惠子
透析スタッフのストレスマネジメント -ストレスチェック表を用いて-, 三菱京都病院医学総合雑誌10 巻,6-9. 井上 小百合、中村 淑子、田中 久美子、他
新人看護師のストレス要因とコーピングについて–1・2年目看護師による面接調査,日本看護学会論文集看護管理34号,142- 144. 榊原 かおり、牧野 有里子、宮島 いづみ、他
看護職における役割期待とストレス -仕事に対する認知のずれがストレス反応に及ぼす影響- ストレス科学18巻4号,187-193. 横山 博司、岩永 誠、坂田 桐子
看護師が患者の死から受けるストレスに対する調査–看護師のストレスマネジメントに向けて,日本看護学会論文集看護管理36 号,193-195. 岩本 幸子、松村 純子、山本 聡子,他
ナースにおけるバーンアウト(Burnout)と職務満足度,臨床看護32巻1号,91-96. 川本 利恵子、川辺 圭子、諸岡 あゆみ、他
新人看護師の職場適応に向けた支援に関する研究 -職務-ストレスの職位別傾向に関する実態調査-,弘前学院大学看護紀要,第1巻,41-50. 中村 令子、村田 千代、高橋 幸子
救急病棟における看護師のストレスコーピングの分析,日本看護学会論文集看護総合37号,342-344. 新見 寿子、西村 裕子、栗飯原 朋子
看護師長を対象としたメンタルヘルス研修の効果,日本看護学会論文集看護管理37号,493- 495. 三木明子
看護師が抱える職場ストレスとその対応,保健学研究,20巻1号,67-74. 一瀬 久美子、堀江 令子、牟田 典子、他
ストレスコーピング 主任のストレス度調査からコーピングを考える,全国自治体病院協議会雑誌,46巻3号,374-380. 畠中 真由美、日高 さゆり、小園 眞奈美、他

 

まとめ

看護師の多くは毎日の業務の中で多大なストレスを感じています。「勤務構造」、「仕事内容」、「対人関係」などストレス要因は多岐に渡り、ストレスにより離職(転職)を余儀なくされる看護師も少なくありません。

看護師として仕事を続けていく上で、自身のストレスマネジメントは非常に大切であり、自主的にコーピングスキルを活用してストレスに対処していなかければ解消されることは難しいと言えます。

ぜひ当記事で記載したコーピングスキルを用いて、ストレス解消だけでなく、ストレスを受けにくい体質作りに取り組んでください。

 

【参考文献】

看護師が抱える職場ストレスとその対応,保健学研究,20巻1号, 67-74.

看護学生における対人ストレスコーピングがストレス反応に及ぼす影響 東洋大学人間学総合研究所紀要, 第7号(2007), 265-275

看護学生における対人ストレスコーピングと精神的健康の関連性 日本応用心理学会 70回大会. 発表論文集, 97.

EMR(内視鏡的粘膜切除術)の目的と術後における看護・観察

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EMR

1、EMRとは

EMRとは「Endoscopic Mucosal Resection」の略で、内視鏡的粘膜切除術のことを言います。消化器官(食道・胃・大腸など)の悪性腫瘍やポリープを切除するために行われる手技の1つで、内視鏡を用いた切除術には「ポリペクトミー」や「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」などがあります。

これらの手技は、悪性腫瘍・ポリープの「形状」「進行の程度」「切除範囲」などによって使い分けられ、基本的にはポリペクトミー→EMR→ESDの順で頻回に実施されます。つまり、ポリペクトミーでは難しい場合にEMR、EMRで難しい場合にESDというように、悪性腫瘍の状態によって使い分けられます。

 

ポリペクトミー

ポリペクトミーは、“キノコ状”の悪性腫瘍やポリープの切除に際して実施され、スネアと呼ばれる金属の輪に掛けて締め、高周波電流を流して焼く手技のことです。スネアの輪の形状や大きさは多く存在するため、さまざまな悪性腫瘍・ポリープの切除に実施されます。

 

EMR

平べったい形をした悪性腫瘍・ポリープに対して行われるのがEMR。ポリペクトミーと同様にスネアを用いますが、EMRでは悪性腫瘍・ポリープのある場所の粘膜下層に生理食塩水などを注入し、切除しやすいように持ち上げてから(盛り上がった状態で)スネアを掛け、高周波電流を流して焼き切ります。

 

ESD

EMRではスネアの大きさにより、大きな悪性腫瘍・ポリープにおいては数回に分けて切除する必要があります。そこで専用のナイフで病変の周辺を切開した後に粘膜下層をめくるように剥していくESDが実施されます。まだ確立されておらず技術的に難しいため、限られた医療施設でのみ実施されています。

 

2、EMRの目的

EMRにおける偶発症の発症率は0.01%と非常に低いため、安全かつ安楽に悪性腫瘍・ポリープを切除することができ、さらに患者は術後まもなく(1泊2日の入院経過観察は必要)、通常の生活に戻れます。

また、開腹や全身麻酔の必要がなく、手術時間は1時間程度であることから、患者の侵襲は低く、悪性腫瘍・ポリープ切除における根治性も損なわれないため、EMRは患者のQOLを考えた根治治療と言えるでしょう。

 

3、EMRの術後看護

EMRで切除した部分は人工的な胃潰瘍ができることで、稀に出血や穿孔になる場合があります。その際には、腹痛・嘔気・嘔吐などの腹部症状や血便などの症状が現れますので、特に術後・病棟帰室後1~2時間後のバイタルサインをしっかり確認し、絶対安静・絶飲食が守られているか監視してください。

また、床上安静が原則であるため、歩行はトイレ・洗面時にのみ可能とし、それ以外は許可しないようしっかり説明してください。

 

留意点

●出血・穿孔など偶発症の症状は術後2~3日以内に現れることが多い。

●術後2~3日以内(特に術後まもなく)に腹痛・嘔気・嘔吐・悪心の有無に注意を払う。

●退院までバイタルサインや全身状態を注意深く観察する。

●術後まもなくは絶対安静、24時間は絶食・水分摂取のみ可能。

●術後24時間は床上安静を原則とし、歩行はトイレ・洗面時のみ可能。

 

まとめ

EMRは侵襲の低い手技ですが、出血や穿孔の危険性はあります。それゆえ、術後には偶発症の発症リスクを下げるために床上安静や飲食・歩行制限などについてしっかりと説明し、バイタルサインや全身状態を都度観察することが大切です。

また、コミュニケーションを通して、がん告知に対する精神的ストレスの緩和を図り、患者のQOLを最大限に向上できるよう努めてください。

看護師の腰痛対策|ボディメカニクスを取り入れた介護・介助法

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ボディメカニクスの看護

患者への介助など肉体労働により、介護者(看護師)の多くは腰痛を呈しており、中には腰痛にせいで離職を余儀なくされる介護者もいるほど。

ボディメカニクスの理論を活用することで、介助時の負担軽減はもちろん、患者への安心・安楽な移動を支援することができるため、ボディメカニクスを取り入れた介助法を学び、今後の介助に生かしていきましょう。

 

1、ボディメカニクスとは

ボディメカニクスとは、患者の体位変換などの際に、解剖学・生理学・力学などの基礎知識を活用して、無理なく介助するための手法のことです。

さまざまな疾患や症状により、自力で体勢を変えることのできない患者に対して、看護師は介助を行いますが、介助時には看護師に大きな負担がのしかかります。また、不適切な介助法では患者にも負担がかかってしまいます。

そこで解剖学・生理学・力学などを利用して、安定した姿勢で介助ができる手法、「ボディメカニクス」が開発され、現在では看護師はもちろん介護福祉士や理学療法士など、さまざまな医療従事者がこの手法を取り入れ、日々の介助を行っています。

なお、ボディメカニクスは、以下の6つの原則に従い実施することで、小さな負担で大きな力を生み出すことができ、介護者の負担を大きく減らすことができます。

 

①患者側の重心を中心にまとめる

力が分散すると負担が大きくなるため、患者の手足などを出来る限り小さくまとめることで、力が中心に集中し、より容易に介助できるようになる。

 

②患者の身体に出来るだけ近づく

看護師と患者の身体(重心)を近づけることで、移動の方向性がぶれにくく、一方向に対してより大きな力が働き、少しの力で介助ができるようになる。

 

③両足を開いて支持面を広くとる

立位に際して、看護師の足幅を前後左右に広くとる(支持基面積を広くとる)ことで安定するとともに、足や腰の力が伝わりやすくなる。

 

④重心を移動させやすい姿勢をとる

支持基面積を広くとるとともに、膝を曲げて腰を落とすことで、姿勢が安定し、足や腰の力が伝わりやすくなる。また、負荷位置が下がり、腰への負荷が小さくなる。

 

⑤大きな筋群を使う

腕や指先だけで介助するのではなく、肩や腰、足などの大きな筋肉群を同時に使用することで、1箇所の筋肉にかかる負荷が小さくなり、大きな力で容易に介助することができる。

 

⑥重力に逆らわないように水平に引く

患者を持ち上げるのではなく、水平に滑らせるよう移動させることで看護師の負担が少なくなる。また、上下(垂直)に動かさざるを得ない場合に限っては、前傾姿勢ではなく、上体(腰)に加えて、膝の屈伸を利用することで、腰への負荷を小さくできる。

 

また、これら6つの原則に従い、「テコの原理」「慣性の法則」「ベクトルの法則」など、力学的相互関係を取り入れて実施します。

 

2、腰痛を呈する看護師の実態

看護師は起立の時間が多いだけでなく、長時間勤務の中で患者の介助を必要とする場面が多々あり、いわゆる職業的な要因により、程度に関わらず大半の看護師が腰痛を呈しているのが現状です。

 

職業的要因

作業負荷 前屈・背屈、中腰、捻り、上肢の伸展に伴う腰部の伸展、上肢を肩幅以上に広げて行う作業、限度以上の重量患者の持ち上げ、患者の近方・遠方への移動など
労働環境 必要物品が取りにくい場所に保管されている、機器の設置場所がない、作業空間が狭く足場が悪い、休憩施設が不十分、金無料の頻繁な変化、人員不足、超過・長時間勤務、休憩のとれない状況での勤務、緊張を伴う業務内容など

 

このように、看護師の腰痛の職業的要因は多岐に渡り、特に作業負荷が看護師の腰痛を助長しています。

1994年には「職業における腰痛予防対策指針」が示され、法令化されたものの明確に義務付けされておらず、医療施設など組織単位での対策が難しいのが実情です。

それに伴い、組織単位で研修・実施を行っている医療施設はそれほど多くはないため、各個人が自身のために、また患者の安楽のために取り組まなければいけないのです。

 

3、実施時の注意点

ボディメカニクスは腰痛など主に介護者の負担軽減のために開発された手法ですが、介助を行う目的は介助を必要とする者(患者)の円滑な移動にあります。そのため、介護者の負担軽減ばかり考慮して、患者の負担に対する配慮をないがしろにしてはいけません。また、安全に最大限配慮しなければいけません。

「声掛けを行う」「移動速度を遅くする」「患者の身体的能力を見定める」「ルートやカテーテル類を巻き込まない」の4つ事項に注意しながら介助を行うよう心掛けてください。

 

  • 声掛けを行う

ボディメカニクスを取り入れた介助法の有無に関わらず、介助する時には必ず最初に声掛けを行ってください。声掛けがないと、動作時に不必要な筋肉が稼働したり、驚くことで強い力が働き、転倒・転落を招いてしまいます。看護師―患者間の動作における同意のもと介助できるよう、声掛けは必要不可欠です。

 

  • 移動速度を遅くする

ボディメカニクスを取り入れた介助法は、通常よりも少しの力で介助を行うことができます。それゆえ、看護師の中には自身の負担ばかり考慮し、勢いに任せて介助する傾向がみられ、時として患者に多大な負担がかかる場合があります。特に首は前後の動きに対して弱く、勢いよく動くと前方または後方に引っ張られ、首周辺の筋肉や腱を痛める可能性があります。また、場合によって脳に障害が及ぶこともあります。介助の際は、必ず患者の負担を優先的に考え、ゆっくりとした動作で行ってください。

 

  • 患者の身体的能力を見定める

患者の病気や身体的障害の程度・部位、安定した座位・立位をとれるかなど、患者の状態を的確にアセスメントした後、介助しなければいけません。すべての動作に対して介助を行うと、移動・移乗の安楽性により、ADLに対する自立意識が薄れてしまいます。ボディメカニクスは通常の介助法よりも患者に対する負担が少ないことから、さらに自立意識が薄れ、すべての動作に対して介助を要求をするということもあるため、身体的能力をしっかり見定めた後、困難な動作に対してのみ介助を行ってください。

 

  • ルートやカテーテル類を巻き込まない

患者によっては、ルートやカテーテル、ドレーンなど、いわゆる管が留置されている場合があります。ボディメカニクスの原理の1つに「患者の身体に出来るだけ近づく」があり、時には密着して介助を行うため、看護師がそれらを巻き込まないよう、しっかりと位置を把握して行わなければいけません。

 

4、ボディメカニクス実施の一例

では、ボディメカニクスを取り入れた介助法の一例をご紹介します。ボディメカニクスを実施する際には、上記の注意点をしっかり踏まえて、患者の安全・安楽に考慮しながら介助を行ってください。

 

背臥位から側臥位への回旋

背臥位から側臥位への回旋

出典:建帛社 姿勢保持,移動・移乗の支援技術

 

背臥位の患者を側臥位に回転させる際には、看護師の方向へ回転させるのが原則です。ベッド上では、看護師と反対方向へ回転させると転落の危険性があるため、看護師の方向へ向けて回転させ、その際には体の軸となる肩と腰(臀部)を持って回転させます。

布団やマットレスの上であれば、図のように膝立ちになることで、より安定して回転させることができます。

 

臥位での水平移動

臥位での水平移動

出典:建帛社 姿勢保持,移動・移乗の支援技術

 

看護師の上肢がベッドの位置と水平になるように下肢を屈曲させ、膝をベッドサイドにつけ、まずは両手を患者の腰と太腿に滑り込ませます。そして、肘を伸ばした状態で、ゆっくり自分側(看護師側)に引き寄せます。

膝をベッドサイドにつけること、肘を伸ばすことにより、より小さな力で安定して介助を行うことができます。

 

臥位から座位の全面介助

臥位から座位の全面介助

出典:建帛社 姿勢保持,移動・移乗の支援技術

 

・その①

患者の健側(病気のない正常な側)の肘に重心がのるように、反対側の肩を持ち、頭部(後頭部)を腕で支えながら自分側(看護師側)に少し引き寄せ、ゆっくりと上半身を起こします。

 

・その②

背臥位から座位(ベッドサイド)への介助時には、まず背臥位から側臥位にし、患者と向き合った状態で上肢を近づけ、片方の手は肩に、もう片方の手は臀部を支えて回転させるように介助します。動作に伴い、患者の頭部が後ろへ引っ張られるため、肩と一緒に頭部も支えるよう介助を行います。

 

5、参考となる書籍

最後に、ボディメカニクスにおいて参考となる書籍をご紹介します。ボディメカニクスについて深く理解するためには、人間の体の仕組み(重心や筋肉の使い方など)や1つ1つの動作の流れを視覚的に学ぶ必要があるため、その2つについて詳細かつ分かりやすく書かれている3つの書籍をご紹介しますので、ボディメカニクスを取り入れたいという方は、閲読することをお勧めします。

 

介助にいかすバイオメカニクス

介助にいかすバイオメカニクス(医学書院)

重心・床反力・床反力作用点・関節モーメント・エネルギーなど生体力学の基本事項、立位/歩き始め・立ち上がり/座り・歩行・階段昇降動作・持ち上げ/移乗動作など各動作における介助の注意点やポイントについて詳しく解説されている。力学的な介助の方法論を深く理解したい方にお勧めの一冊。

 

介護職のための正しい介護術

介護職のための正しい介護術(成美堂出版)

①楽に介護をするためのボディメカニクス、②移動介助、③ベッドまたは布団の上での介助、④食事の介助、⑤排泄の介助、⑥入浴の介助、の6つの章をもとに、ボディメカニクスを取り入れた介助法のコツを、イラスト図解を用いて詳しく解説されている。実践的なボディメカニクスの手法について学びたい方にお勧めの一冊。

 

腰痛のない身体介助術

腰痛のない身体介助術(医学書院)

体位変換、ベッド上での平行移動、ベッド上方への移動、起きる・寝る、立つ・座る・歩く、車椅子の介助、床上での介助など、各シーンにおいて介護者の腰痛軽減のための55のポイントについて、300点以上のカラー写真と図解を用いて詳しく解説されている。

 

まとめ

ボディメカニクスは古い手法であると言われており、新たな手法として「キネステティク」が主流となりつつありますが、キネステティクの考え方は“介助を受ける者が気持ちよく介助する手法”であり、ボディメカニクスの理論を応用したものです。

それゆえ、キネステティクを学ぶ前にボディメカニクスにおける力学的な基礎知識と介助法をしっかり理解することが必要です。

自身の腰痛対策のために、患者の安心・安楽のために、ぜひボディメカニクスについての知識を深め、日常の介助に取り入れていってくださいね。

CAG(冠動脈造影)の看護|検査手順と術中・術後の観察項目

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CAG(冠動脈造影)の看護

虚血性心疾患の検査(最終的な診断)として行われるCAG。今では最も精度の高い検査法として広く実施されていますが、その反面、侵襲性が高く、さらに偶発症・合併症の発症率も高い傾向にあります。

現段階ではCAGによる偶発症・合併症のすべてを確実に予防することは不可能ですが、看護師の綿密な観察により症状の増悪は防ぐことができます。CAGの看護で最も大切なのは患者のバイタルサインや一般症状の観察なので、観察を怠らず、異常発生時にはすぐに対処できるよう体制を整えておいてください。

 

1、CAGとは

CAGとは、「Coronary Angiography」の略で、日本語では「冠動脈造影」のことを言い、心筋梗塞や狭心症などの“虚血性心疾患”に対して、手首・肘・鼠径部のどれかの動脈からカテーテルを冠動脈に挿入し、造影剤を使用して冠動脈の狭窄・閉塞がどの部分にあるのか確認する検査のことです。

虚血性心疾患の診断には心電図や血液検査などが行われますが、それだけでは確実な診断ができません。そこで、CAGを行い直接的に血管の状態をみて診断を行います。また、CAGはカテーテルを用いることから、検査を行った後にそのまま経皮的冠動脈形成術(PTCA)や冠動脈バイパス術の治療へ迅速に移行できるというメリットがあります。

また、現在では虚血性心疾患の診断において、ここ数年で精度が格段に高まったことで「冠動脈CT検査」が積極的に行われていますが、冠動脈CT検査では冠動脈の石灰化を確認することができません。それに対して、CAGは石灰化の評価ができるため、精密かつ最終的な診断はCAGにより行います。

なお、1955年にソーンズ博士(Dr. Mason Sones)が初めて行い、現在まで画像の鮮明化や円滑な手技実施における発展・改良がなされ、現在まで虚血性心疾患の診断や治療の主体となっていますが、侵襲性においては未だ大きく、偶発症や合併症の危険性は低くありません。それゆえ、検査後(以下、術後)の綿密な観察は欠かせず、術後管理における看護師の役割は非常に大きいと言えます。

 

2、CAGの検査

CAGの検査時間はおおむね30分~1時間程度と短時間で終了します。しかしながら、麻酔の使用やカテーテルの挿入など侵襲性が高く、また偶発症・合併症も出現しやすいため、検査中(以下、術中)は患者のバイタルサインや全身状態を綿密に観察することが非常に大切です。

以下に、CAGの検査手順と起こりうる偶発症・合併症における看護のポイント(観察ポイント)についてご説明します。

 

①穿刺部位に局所麻酔をする

まず、冠動脈にカテーテルを挿入するために穿刺を行います。CAGにおける穿刺箇所は手首(橈骨動脈)・肘(上腕動脈)・鼠径部(大腿動脈)の3箇所あり、術後の体動制限などを考慮して通常は手首または肘に穿刺し、解剖学的問題などにより上肢の穿刺が難しい場合に鼠径部が選択されます。

穿刺する周辺にイソジン消毒液などで消毒した後に局所麻酔を行いますが、麻酔によるアレルギー反応が起こることが稀にあるため、患者のバイタルサインや状態をしっかり観察してください。

 

②カテーテルを挿入する

穿刺後、「シースイントロデューサー」→「ガイドワイヤー」→「カテーテル」の順にX線下で挿入していきます。この過程で通常はあまり痛みを感じることはありませんが、ガイドワイヤーが動脈の細かい枝に迷入した場合や動脈の損傷した場合などには強い痛みを感じることがあるため、患者の表情や訴えを見逃さないよう観察してください。また、穿刺部位からの出血や血腫もしっかり確認してください。

 

③造影剤を注入し形態を確認する

カテーテルが冠動脈に到達した後、カテーテルを通して造影剤を流し込み、血管撮影を行います。造影剤によるアレルギー症状(蕁麻疹や吐き気など)が起こることがあり、時に重篤な症状(失神・意識消失・呼吸困難など)が発現することがあるため、注入後は患者の全身状態を綿密に観察してください。また、造影剤は腎機能の低下をもたらすこともあります。

 

3、CAGの治療

CAGは検査だけでなく、虚血性心疾患の治療の過程として、主に「経皮的冠動脈形成術(PTCA)」と「冠動脈バイパス術」の際に実施されています。

通常、治療には患者の同意が必要であるため、検査の流れで治療を行うことはなく、検査と治療は分けて実施されますが、緊急の場合にはそのまま治療に移ることもあります。

 

経皮的冠動脈形成術とは

狭窄や閉塞がみられる冠動脈を人為的に拡張する手技のことです。主に、バルーン(風船)のついたカテーテルを使用して病変部でバルーンを膨らませる方法、ステントを冠動脈内に留置する方法、このいずれかが選択されます。

 

冠動脈バイパス術とは

狭窄や閉塞がみられる冠動脈の先に別の血管を繋ぐ(移植する)手技のことです。心臓に流れる新しい路(バイパス)を形成することで、血液が閉塞動脈を迂回して心臓に行き届くようになります。

 

これら治療の際にはCAGが実施されますが、実施過程は検査を同様で、観察項目においても治療に移るまでは同様です。

 

4、CAG実施患者への術後看護

CAGは比較的侵襲の高い検査であるため、偶発症・合併症に気をつけなければいけません。また、時には心不全が起こる(増悪する)ことがあり、小児においては重篤な合併症(脳障害・脳塞栓・脳血栓・重篤な不整脈・多量の出血など)の発症率は約1%、死亡確率は0.1~0.3%と言われています。

これら合併症は術中が多いものの、術後にも発症することがあります。しかしながら、多くは早期対処により改善(予後良好)されるため、綿密な観察は非常に重要です。

 

安静保持・体動制限の指導

CAG後は出血の危険があるため、安静保持が原則です。手首・肘に穿刺した場合には術後1時間(右腕安静は丸一日)、鼠径部に穿刺した場合には丸一日ベッド上での絶対安静が必要です。安静保持・体動制限の指導を行うとともに、トイレ・食事・体位変換など介助が必要な場合には穿刺部に注意しながら介助を行ってください。

 

水分摂取と食事の指導

CAGでは造影剤を使用するため、造影剤の排出を促すために水分の摂取が必要です。術後3時間以内に500ml、吐き気などにより摂取が難しい場合には点滴を増やすなどして対応してください。また、安静保持が原則であり、術後は血圧が低下していることがあるため、食事は術後1時間後から摂取するよう指導・観察してください。

 

合併症の観察

観察するのは主に「穿刺部位」「バイタルサイン」「一般状態」です。穿刺部位は出血・血腫・感染兆候などを確認しましょう。また、脈拍・呼吸・体温・血圧・意識レベル・水分出納とともに、頭痛・胸痛・吐き気・動悸・チアノーゼなど各症状の観察を行ってください。

 

まとめ

CAGは虚血性心疾患の診断に欠かすことができない手技でありながら、侵襲性が高く、死亡例も多々報告されています。

すべての合併症を防ぐことは現段階では不可能ですが、症状の増悪を防ぐことは可能ですので、患者のバイタルサインや一般状態をしっかり観察し、少しでも違和感がみられる場合には気に留め、異常発生時にすぐに対処できるよう体制を整えておきましょう。

CNS(専門看護師)とは|資格・領域の種類と実際の業務内容

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CNS(専門看護師)

今や医療業界の間で注目されているCNS(専門看護師)。医療施設内の看護の質向上のための即戦力となる人材として、多くの医療機関が積極的に採用しているなど、今後はさらに大きな役割を果たすこと間違いなしです。

ここでは、CNSの概要や領域、業務内容についてご説明しますので、CNSについてよく分からないという方は、ぜひ最後までしっかりお読みください。

 

1、CNSとは

CNSとは、「Certified Nurse Specialist」の略で、日本語では「専門看護師」のことです。CNSは、水準の高い看護ケアを提供するために、特定の看護領域(後述)の知識や技術を有する者のことを指し、日本看護協会により認められた者しかなることができませんが、

卓越した知識と技術を有していることで、看護実践において頼りになる存在として多くの医療施設で積極的に採用を行うなど、今やCNSは医療施設にとっても患者にとっても非常に重要な存在なのです。

 

2、資格の種類における違い

看護師の資格にはCNS(専門看護師)だけでなく、CN(認定看護師)やNP(特定看護師)といった資格もあります。どれも“専門性に特化した”認定資格ですが、それぞれの“専門性”は異なりますので、各資格の種類における違いを知っておきましょう。

 

  • CNS(専門看護師)

特定の領域において”幅広いケア”をマネジメントしていくのが専門看護師。円滑に治療を行うために率先して指示を与える業務が主となります。

 

特定の領域に特化した知識・経験をもって”集中的なケア”を行うのが認定看護師。つまり、各領域における看護のスペシャリストのことを指します。

 

「診療の補助」の範囲をさらに拡大し、特定の領域における医療行為を実施できる看護師のことを指し、看護師でありながら医師に近い仕事をすることが出来ます。

 

このように、CNSは看護業務の実践よりも業務が円滑に行われるようマネジメントするのが主な役割であり、それに反してCNは看護実践に重点を置いた役割を担っています。また、NPはCNの上級職であり、危険度の高い看護行為を行うことができるため、看護実践におけるスペシャリストと言えます。

 

3、CNSの領域

CNSの認定が開始された1995年には「がん看護」「精神看護」の2つの領域しかありませんでしたが、1997年に「地域看護」、2002年に「小児看護」「老人看護」、2003年に「母性看護」、2004年に「慢性疾患看護」、2005年に「急性・重症患者看護」2006年に「感染症看護」、2008年に「家族看護」、2009年に「在宅看護」の認定が開始され、現在では計11つの領域が存在します。

また、1996年にはCNS認定者は6人だけであったものの、2016年3月時点においては1678人(全領域)が認定を受けています。それぞれの領域がどのような役割を果たしているのか、みていきましょう。

 

※認定者数は2016年3月現在のもの

領域

(※認定者数)

領域の特徴
がん看護

(656人)

がん患者の身体的、精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOLの視点に立った水準の高い看護を提供する。
精神看護

(231人)

精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも、心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。
地域看護

(25人)

産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
老人看護

(93人)

高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。
小児看護

(166人)

子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。
母性看護

(61人)

女性と母子に対する専門看護を行う。主たる役割は、周産期母子援助、女性の健康への援助、地域母子保健援助に分けられる。
慢性疾患看護

(130人)

生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。
急性・重症患者看護

(210人)

緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。
感染症看護

(36人)

施設や地域における個人や集団の感染予防と、発生時の適切な対策に従事するとともに、感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。
家族支援

(44人)

患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。
在宅看護

(26人)

在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。

参照:資格認定制度 | 日本看護協会 » 専門看護師

 

11ある領域の認定者数に大きな差が生じていますが、重症疾患やニーズの高い領域ほど認定者数が多い傾向にあります。

 

4、CNSが行う業務

CNSは、1つの領域に関する豊富な知識を有していることにより、通常の看護業務はもちろん、コンサルテーションやコーディネーション、倫理調整、教育、看護研究など、さまざまな業務を並行して行っていきます。

特にコンサルテーションとコーディネーションは、部署やチームの看護の技術向上において非常に大きな役割を担っているため、CNSに欠かせない業務と言っても過言ではありません。

 

  • 看護業務

合併症の予防や予後の観察、コミュニケーションによる患者・家族の精神的負担の緩和など、卓越した看護技術やと豊富な知識をもって看護を実践します。また、患者・家族だけでなく、看護実践におけるリーダーとして集団単位で看護を提供します。

 

要請に応じて、看護職員個人・チーム・部署を対象にカンファレンスや個人面接などを通して患者への対応・ケアに対する悩み・仕事に関するストレスなどの相談にのります。また、各専門領域の知識と経験を生かして、患者個人に対しても相談業務を行います。

 

  • コーディネーション

部署やチームが円滑に機能するよう、人員の配置や対人関係のトラブルなどの解決を図り、他職種間・病棟間・部門間の関係調整を行います。

 

  • 倫理調整

全ての活動において、医療ユーザー・スタッフの人権・倫理に関する問題の発見に努め、看護部管理者と協働して問題解決を図ります

 

  • 教育

院内で行われる研修の企画・運営、評価の支援を行うとともに、看護職員個人に対して実際に教育活動を行います。また、要請に応じて研究活動の助言・指導など病院外の教育・研究活動の支援も並行して行います。

 

各専門領域の知識と経験を生かして、看護技術の発展・ケアの円滑化など、病院内外の研究活動に参画し、看護の質向上を図ります。

 

このように、CNSはさまざまな役割を担っており、直接的な看護実践はもちろん、部署・チームなど団体単位のマネジメント業務を行います。看護師のキャリアには、看護部長・副看護部長・看護長・副看護長・主任などがありますが、各キャリアで院内の全てのマネジメントを行うのは容易ではありません。

そこで、CNSが代役として、コンサルテーション・コーディネーション・倫理調整・教育などを通して専門領域におけるマネジメント業務を行い、院内の看護の質向上に寄与していくのです。

 

まとめ

認定開始から約20年経った今、CNSは医療施設において、また患者にとって重要な役割を担っており、多くの医療施設がCNSの受け入れを強化しています。

CNSは非常に重宝される存在ですので、専門領域の資格取得を考えている方は前向きに検討しましょう。なお、CNSになる過程や条件は「専門看護師になるには?大学院や給料なども合わせて紹介!」にて説明しています。

看護師の教育制度「クリニカルラダー」の評価基準と評価項目

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クリニカルラダー

教育システムの1つとして、現在、多くの医療施設で実施されているクリニカルラダー。「ラダー教育」、「キャリアラダー」とも呼ばれており、看護師の能力向上のために、また人事評価の判断基準として活用されています。

クリニカルラダーとは何か、評価基準は何か、今一つ分からないという方は、最後までしっかりお読みいただき、クリニカルラダーに関する知識を深めてください。

 

1、クリニカルラダーとは

クリニカルラダーとは、キャリア(経験年数や能力)に応じた教育システムで、各看護師の看護の質向上や自己研鑽への意識向上などを目的として開発されました。

以前は、新人~中堅看護師の研修として、「新人研修」「役割研修」「フォローアップ研修」「テーマ別研修」「看護研究」といった人材育成のための多種多様な研修を実施する医療施設が多かったものの、中堅以降の看護師の学習は個人の自覚や責任に任されることが多く、能力開発における指針は不明瞭でした。

そこで、キャリア開発の支援という観点から、キャリアに応じた個々の能力向上・評価の取り組みとしてクリニカルラダーが開発されたのです。

クリニカルラダーの内容は医療施設によって異なりますが、一般的にはまず院内での集合研修を行い、キャリア別(レベルⅠ~Ⅳなど)における「ラダー評価」「目標管理」「課題レポート」などを通して、各個人の看護への取り組みを評価します。

以下に、クリニカルラダーを実施する上で必要となる「ラダー評価」「目標管理」「課題レポート」の3つの評価項目について詳しくご説明します。

なお、クリニカルラダーの段階は医療施設によって異なるため、ここでは「レベルⅠ(新人)」「レベルⅡ(一人前)」「レベルⅢ(中堅)」「レベルⅣ(達人)とします。

 

2、ラダー評価

ラダー評価は、各段階(レベルⅠ~Ⅳ)において必要とされる能力を有しているかを判断するための基準です。

主に「到達目標」「看護実践能力」「組織的役割・遂行能力」「自己研鑽」の4つのカテゴリーにおいて、各段階で必要とされる能力を判断することが目的であり、細分化した各項目をもとに能力の有無を評価します。

 

2-1、ラダー評価の基本概念

レベルⅠ(新人)

到達目標 先輩看護師から指導・教育を受けながら、基礎的な看護ケアを実践できる
看護実践能力 先輩看護師から指導・教育を受けながら、基礎的な看護技術が実践でき、看護過程の展開ができる
組織的役割・遂行能力 組織の一員としての自覚を持ち、チームメンバーとしての役割を認識し、責任ある行動がとれる
自己研鑽 指導を受けて、自己の教育的課題を発見することができる

 

レベルⅡ(一人前)

到達目標 さまざまな看護実践の場面において指導を受けず単独で判断・実践でき、チームリーダーとしての役割や責務を認識し遂行できる
看護実践能力 指導を受けずに基礎的な看護実践を行うことができる
組織的役割・遂行能力 自部署内における組織的役割を遂行できる
自己研鑽 研究活動を通して、自己の能力向上に向けた取り組みを積極的に行い、その結果を業務に反映することができる

 

■レベルⅢ(中堅)

到達目標 根拠のある看護実践に加え、組織的な役割が遂行できる
看護実践能力 根拠のある看護実践が行い、他者の役割モデルをとることができる
組織的役割・遂行能力 専門的な能力を発揮し、指導的役割を遂行できる
自己研鑽 自己の能力向上に向けた取り組みを積極的に行い、主体的に研究活動・指導的役割を実践することができる

 

■レベルⅣ(達人)

到達目標 論理的かつ実践的知識を統合した看護実践を行い、所属を超えてリーダーシップを発揮できる
看護実践能力 豊富な知識・経験に基づいた質の高い看護実践を提供できる
組織的役割・遂行能力 看護局の目標達成のために、建設的な意見を提示することができ、活動を遂行できる
自己研鑽 専門領域や質の高い看護における自己教育活動・組織的研究活動を単独で実践できる

 

2-2、各段階における到達目標

レベルⅠ(新人)

到達目標 ・  指導を受けながら基本的看護技術をマニュアルに沿って実践できる

・  指導を受けることにより自己の学習課題を見つけることができる

看護実践能力 看護実践 ・  患者を理解し患者・家族と良好な人間関係を築くことができる

・  看護過程の展開を習得する

看護過程の展開 ・  指導を受けながらフィジカルアセスメントができる

・  指導を受けながら看護診断・計画を立案できる

・  実施したケアの評価ができる

組織的役割・遂行能力 管理 ・  各病棟および他部署の役割、業務内容を理解できる

・  医療安全、感染についての自己の役割を理解し、指導を受け行動できる

倫理 ・  日本看護協会の「看護者の倫理網領」にある患者の権利の内容が理解できる
社会性 ・  患者・同僚・上司の考えや意見をよく聞き、尊重できる

・  部署の人と人間関係を築くためのコミュニケーションができる

・  自分の意見を他者に伝えることができる

安全・危機管理 ・  院内の事故防止マニュアルに沿って実践できる

・  インシデントが起きた際に正しくレポートを報告できる

・  安全上の異変において報告相談ができる

・  防災設備の取り扱いができ、災害発生時には指示に従って行動できる

感染 ・  感染予防対策マニュアルの感染対策を確認できる

・  標準予防策が実施できる

・  無菌操作ならびに針刺し防止のための対策が実施できる

自己研鑽 教育 ・  自己の看護観を表現できる

・  主体的な自己学習の必要性が理解できる

研究 ・  看護研究に関心をもつことができる

 

レベルⅡ(一人前)

到達目標 ・  自立して看護実践を安全、確実に提供できる

・  チームメンバーとしての役割を果たし、業務が実践できる

看護実践能力 看護実践 ・  カンファレンスでの患者情報を共有し、看護実践に活用できる

・  意思決定し、問題解決できる

・  患者家族の反応を見ながら援助できる

看護過程の展開 ・  意図的な情報収集、自立したフィジカルアセスメントができる

・  看護診断の立案、個別性のある看護計画を立案できる

・  看護過程における目標の達成を評価できる

組織的役割・遂行能力 管理 ・  チームナースとしての役割を理解し、患者受け持ちができる

・  リーダーシップについての理解を深めることができる

倫理 ・  倫理要綱を理解し、行動できる

・  日常ケアで自分自身の倫理的問題に気づき、改善できる

社会性 ・  自分自身の感情、思考、行動の傾向を知ることができる

・  チーム内で良好な人間関係を築くことができる

・  関連他部門、他職種のそれぞれの役割が理解できる

安全・危機管理 ・  事故防止マニュアルに基づく安全行為を常に実践できる

・  ヒヤリハット事項の情報提供ができる

・  緊急事態の判断ができ、迅速に対応できる

・  災害発生時にマニュアルに沿った行動ができる

感染 ・  患者の状態に合わせた感染対策が実施できる

・  標準予防策や経路別予防策など、基本となる感染対策を新人に指導できる

自己研鑽 教育 ・  自己の看護観から看護に対する課題を見つけることができる

・  院内教育プログラムに参加する

・  実施指導者の役割がとれる

研究 ・  看護研究メンバーの一員として参加できる

・  ケーススタディに取り組み発表できる

 

レベルⅢ(中堅)

到達目標 ・  各受け持ちナース、チームリーダーとしての役割を理解し、実践できる

・  各単位における看護実践の役割モデルとなれる

看護実践能力 看護実践 ・  個別性を考慮した看護ケアの実践ができる

・  自分の行った看護を評価し、意識的にフィードバックできる

・  人・物・システム・制度など資源を活用して、ケアに生かすことができる

・  看護技術を他のメンバーに指導・共有できる

看護過程の展開 ・  自部署内の他者に看護過程を指導できる

・  カンファレンスを開き、問題解決ができる

・  自部署内で記録の指導ができる

組織的役割・遂行能力 管理 ・  患者管理、環境物品管理を行うことができる

・  看護業務活動における経済的側面を意識し、行動できる

倫理 ・  倫理要綱を理解し行動・指導ができる

・  自立して患者を擁護し、代弁者として行動を起こすことができる

社会性 ・  患者、同僚、上司の立場を尊重し、相互に気持ちよい人間関係を築くことができる

・  他の医療チームとの信頼関係を保ち、調節ができる

安全・危機管理 ・  緊急事態への迅速な対応・指示ができる

・  危機を察知し、事前に防止策を実施することができる

・  災害発生時にはマニュアルに沿った迅速な行動、他者への指導ができる

感染 ・  患者の状態に合わせた感染対策の実施・指導ができる

・  自部署における感染対策上の問題点を抽出できる

自己研鑽 教育 ・  能力開発、キャリア開発を主体的に実践できる

・  学習の成果を後輩育成に活かし、教育的活動を実践できる

研究 ・  自己の研究テーマを明らかにし、臨床に直結した看護研究を進めることができる

・  看護研究メンバーの中心として参画できる

 

レベルⅣ(達人)

到達目標 ・  看護部内の問題を理解し、組織の目標達成のために行動できる

・  看護実践者としての役割モデルになり、指導・研究的能力を有し、看護部内でリーダーシップがとれる

看護実践能力 看護実践 ・  独自の意思決定基準を持ち、予測困難な場面にも臨機応変に対応できる

・  専門領域における教育的役割がとれる

看護過程の展開 ・  看護過程を指導できる

・  看護過程を監査できる

組織的役割・遂行能力 管理 ・  各病棟および他部署の連携および調整を円滑に推進する

・  医療安全、感染について防止策を考え、指導および実践ができる

倫理 ・  倫理的視点で日常ケアを後輩に指導できる
社会性 ・  職場風土の向上に向けて働きかけができ積極的に実践できる

・  リーダーシップを発揮し、関係調整に努めることができる

安全・危機管理 ・  予測できる問題や危険に対して防止策を検討し、実施できる

・  事故事例の原因分析を行い、対策を実施できる

・  災害発生時にリーダーシップがとれる

感染 ・  感染発生の状況や感染対策の実態を綿密に把握し、改善に向けた対策がとれる

・  自部署内での感染対策をルール化できる

自己研鑽 教育 ・  専門領域において、能力開発を積極的かつ継続的に行い、その結果を有効的に活用できる

・  人材育成の視点で院内の教育活動を実践できる

研究 ・  看護研究を推進し、メンバーの調節を行うことができる

・  看護研究を臨床で応用できる

 

これら各項目において、自己評価・他者評価(S・A・B・C・Dなど)を行います。

 

3、目標管理

目標管理は、PLAN(目標設定)→DO(パフォーマンス管理)→CHECK(成果評価)→ACTION(改善)という“PDCA”の過程の中で、目標に向けた取り組みの結果を測るのが目的です。

実施に際しては、「年間目標」「行動計画」「目標値」「年間スケジュール(達成期間)」「自己評価達成度」などの項目が記載されているシートに記述し、自己評価ならびに他者評価を行います。

自身の目標に対する達成度を測るためのものですが、達成度だけが評価されるのではなく、的確な目標の設定とそれに対する行動が評価されます。というのも、困難な達成目標に対しては自ずと達成度が低くなり、容易な達成目標に対しては自ずと達成度が高くなるからです。

それゆえ、達成できる目標計画をしっかり行えているか、それに対して献身的に行動できたかが評価のポイントとなります。

一般的には、4月に目標設定を行い、9月に一度目の振り返り、2月に二度目の振り返りを行い、それまでの目標達成度を評価します。

 

4、課題レポート

課題レポートでは、看護過程の展開における理解度などを測るために実施されます。各段階において、また医療施設によってテーマは異なりますが、一般的には800~2000文字以内で以下のようなテーマが出題されます。

 

レベルⅠ(新人) ・  看護観について

・  病棟での役割、自分の取り組みについて

レベルⅡ(一人前) ・  役割を通しての実践レポート

・  ケーススタディ(事例研究)

レベルⅢ(中堅) ・  リーダーシップを発揮した取り組み

・  病棟での役割や委員会での役割を通しての問題解決過程

・  看護研究(個人での実施)

レベルⅣ(達人) ・看護局の役割を見据えた問題解決過程

・看護研究(個人または指導的立場での共同実施)

 

このように、「ラダー評価」「目標管理」「課題レポート」などにより、各看護師の現状の能力を判断し、各段階において必要とされる能力を超えた場合には、より高度の段階へと進むことができます。

なお、医療施設の中にはクリニカルラダーの段階に応じた昇給制度を取り入れているところもあるため、“やらされている”という気持ちではなく、積極的な姿勢で取り組みましょう。

 

5、最後に(評価の重要性)

クリニカルラダーは、各看護師の看護師の質向上や自己研鑽への意識向上などを目的として開発されましたが、その本質となるのは“評価”です。看護師は多忙な毎日を過ごし、身体的・精神的な負荷が非常に大きい職業です。また、患者に対する一方的なケアの提供では、看護師の精神的負担は増すばかりです。

クリニカルラダーを通して他者から評価されることにより、自身の看護における能力の開発や、業務に対するモチベーションが向上し、結果として各看護師の看護の質が向上するのです。

人材育成のために“評価”は欠かすことのできないものであり、評価なくして能力向上は不可能と言っても過言ではないのです。

 

評価制度

評価軸 評価制度 内容
仕事 職務評価・役割評価 各医療従事者が従事する職務の価値や職責を評価するとともに、各職務における役割価値の大きさを評価する
能力評価 職務を遂行するために必要な能力レベルを評価する
クリニカルラダー評価 ラダー(経験年数)に応じて求められる看護臨床実践能力を段階別に評価する
執務態度・情意評価 積極性、協調性、規律性、責任感などの職務に対する姿勢を評価する
行動評価 顕在化した能力の評価 医療施設が期待する医療従事者の行動レベルを示して、その行動レベルがどの位置に相当するのかを評価する
コンピテンシー評価 成果に直結する能力の有無を具体的に表現したものを基準として評価する
成果

業績

個人業務評価 個人があげた業績を定量的・定性的に評価する
組織業績評価 個人業績に加え、病院業績・所属組織業績を複合して評価する
目標達成度評価 組織目標に基づいて設定された個人目標または所属組織目標の達成度を評価する
バランススコアカード 財政・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点をもとに、経営戦略を日常業務の具体策へ落とし込み、その実績を評価する

 

上表のように、評価制度は実にさまざまで、クリニカルラダーは数ある評価制度のうちの1つに過ぎません。クリニカルラダーは人材育成のために非常に有効な教育システムですが、評価項目は多岐に渡るため、看護部長や看護師長などの管理者は特に、多角的な視点で看護師を評価する必要があるのではないでしょうか。

 

まとめ

現在、多くの医療施設でクリニカルラダーを取り入れています。大きな施設では、研修が充実しており、院内研修だけでなく院外研修など、人材育成において積極的な取り組みが行われています。

また、クリニカルラダーにより、自身の看護の質や業務に対する意欲の向上を図ることができ、これらは患者にも好影響をもたらします。

就業施設のクリニカルラダーを知ることで、看護師に何を求めているか、どのように看護を行えばよいのかなど、さまざまなことが見えてくるため、就業施設のクリニカルラダー、特に「ラダー評価」を今一度、確認してください。そして、各段階で必要とされる項目を念頭に置き、積極的な姿勢で看護を実践していきましょう。

春から就職する新人ナースに知ってほしい!ナースに必要な101のこと(前編)

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新人看護師に贈る

今年からナースになる皆さん、ナースの仕事を覚えるだけでも、1~2年もしくはそれ以上の年数を要するでしょう。ですが皆さんはそこにたどり着かなければなりません。そんな皆さんに、先輩ナースから「ナースに必要な101」のことを教えます。

 

1.質問することを怖がってはだめ。常に学ぶことがあります。

 

2.失敗やミスはすぐに認め、報告すること。放置すると、取り返しのつかないことになることがあります。同僚は、そのミスをフォローしてくれます。

 

3.分からないことは、必ず分かるまで解決すること。分からないことを聞くことを恥ずかしがってはいけません。

 

4.「答える前に考える」こと。患者や医者が何かを訪ねてきたら、まず安全な道を答えること。答えが分からないときは、それが最も安全な方法です。

 

5.最悪の事態を考えながら、楽観的でいること。最悪の事態を予想しながら行動してください。

 

6.タスクを整理してから行動すること。後回しにすると、タスクを完了できません。ナースは本当に忙しいものです。

 

7.自分に厳しくしすぎてはいけません。もしトイレに行きたければ、我慢しないこと。我慢のしすぎは、仕事にも悪影響を及ぼします。

 

8.ネガティブな人は近づかないこと。ナースは常にポジティブでないといけません。

 

9.仕事の合間にご飯を食べること。ご飯を手早く済ませられるのも、ナースの重要なスキルです。

 

10.医者に電話をする前に、確認したいことをリスト化しておくこと。医者も急いでいますし、電話口では記憶は長持ちしません。

 

11.靴には投資すること。長時間立ちっぱなしですので、適した靴を履きましょう。

 

12.つねに時間を守ること。遅刻癖のある人は、すぐに直しましょう。

 

13.不安なときも、自分に自信をもつこと。自信のないナースに患者はついていきたいとは思いません。

 

14.職場のゴシップには首を突っ込まないこと。あなたのキャリアに何もいいことはありません。

 

15.できるときには仮眠をとること。睡眠不足だと医療ミスも起きやすくなります。

 

16.「すぐ戻ります」と言って部屋を出ないこと。忙しすぎて、「すぐ戻る」ことはできないからです。

 

17.患者に服用してもらう薬について詳しくないときは、時間をかけても調べること。患者には、投与される薬について詳しく知る権利があります。

 

18.「楽しい会話は、どんな薬よりも効果がある」ということを覚えておいてください。

 

19.「自分は使えない」と思う必要はありません。20年以上のベテランであって、新人のあなたを無能使いする権利はありません。

 

20.夜勤中、医者に電話するときは、手短に話しましょう。

 

21.同僚が困っているときは、助けてあげましょう。いずれ、助け合いの大切さを知る古都になるでしょう。

 

22.注入ポンプを信じすぎないこと。きちんとチェックしましょう。

 

23.新しい班・チームに配属されたときには、緊急薬と緊急用品の場所を確認しましょう。

 

24.薬品や医療道具を複雑に混ぜたりする場合は、経験のある先輩に見てもらいながらやること。

 

25.ナースとしての勉強に投資すること。新しい知識はスキルを深化させてくれます。

 

26.夜勤のときは、ペンライトを常備しましょう。

 

27.常に落ち着いていること。

 

28.自分が行った処置は常に記録すること。「記録されていないものは、なかったことと同じ」です。万が一医療訴訟になったときに重要な情報になります。

 

29.制服や手術衣は2着以上持つこと。万が一のときにも対応できます。

 

30.暗いところで光る腕時計をしましょう。 暗いところでも脈をとる必要があるときがあります。

 

31.患者やその家族に、健康ケアについて色々教えてあげましょう。

 

32.いつもぴったりサイズの手袋をつけること。

 

33.いつも仕事の振り返りをすること。

 

34.もし、「病院勤務のナースに向いていないな」と思ったときは、別の道も探ってみましょう。学校など、病院以外でもナースが求められている場所はあります。

 

35.国の医療に関する規制や法律についてもきちんと学び、最新の情報を集めましょう。

 

36.ナースの行動はいつも注目されています。気を付けてください。

 

37.ナースを志した初心を忘れないでください。疲れたときも、あなたを支えてくれるでしょう。

 

38.夜勤中、甘いものやコーヒーを飲むと、疲れやすくなります。

 

39.常に、患者さんの「痛み」を気にかけること。

 

40.パニックになっても、落ち着いて、平静心をたもつこと。

 

41.絆創膏用のハサミ、テープ、止血管子、アルコール綿棒、綿球、生理食塩水は出来る限り持ち歩きましょう。ベッドサイドを整えるのに役に立ちます。

 

42.病歴記録には、10分以上かけないよう、丁寧かつ急いでやること。

 

43.シフトの最後のほうは、自分をいたわること。次の日にひびきます。

 

44.着圧ストッキングをはくこと。むくみに効きます。

 

45.昼ごはんには、パックになったごはんやサンドイッチを選ぶこと。

 

46.先輩からのアドバイスを受けたら、いったん試してみるといいでしょう。

患者を診るときは、全身を見ましょう。

 

48.教育係と一緒に仕事をしているときは、思ったことは全て聞いてみましょう。教育係のやり方があなたに合っているとは限りません。

 

49.やるタスクは紙に書いて、忘れないようにしましょう。

 

50.タスクをグループ化しましょう。例えばある患者に薬を投与するときには、一緒に脈をとったり、観察をするようにしましょう。

References: nursebuff


春から就職する新人看護師に知ってほしい!ナースに必要な101のこと(後編)

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新人看護師に贈る

51.班のメンバー全員を知ろうとして、気を配ること。仕事外の飲み会でのコミュニケーションよりもずっと関係性をよくしてくれます。

52.体力命。忍耐命。

53.悪口は言わないこと。自分の心の中にとどめましょう。

54.忙しくても、練習時間を作ること。

55.タスクが多すぎるときは、適切に、かつ丁寧に他のメンバーに依頼すること。

56.反省点やルーチンは、自分の中で体系化すること。

57.常にゴール意識をもつこと。5年後の姿を思い浮かべながら仕事をすること。

58.仕事以外の趣味をもつこと。

59.研修中のときは、他の人の作業手順などを観察し、吸収すること。

60.「できません」という勇気をもつこと。

61.プライベートなことは、シフト中に持ち込まないこと。

62.ファーストキャリアは、「本当に好きな仕事」「好きな職場」を選ぶこと。

63.ワークライフバランスを保つこと。

64.職場で、自分が見習いたいと思う「メンター」を作ること。

65.職務記述書に責任をもって行動すること。

66.いつも柔軟性を忘れないこと。

67.ナースの仕事をしていてつらいときがあっても、おそれないこと。

68.医者と電話で話すときは、内容をすべてかきとめること。

69.ミスをしたときは、くよくよしないこと。ミスから学ぶことが大切です。

70.研修期間中にミスをしたもの勝ち。

71.イライラしたときには、こっそり歌を歌うこと。リラックスできます。

72.医者が必要なときは、すぐに電話をかけること。

73.心臓医をよぶときは、先に患者の脈をはかっておくこと。

74.小児患者の症状には、保護者の発言を注意深く聞くこと。

75.患者に質問するときは、簡潔に。

76.どんなに疲れていても、患者には笑顔で接すること。

77.専門家組織に参画すること。

78.評価は常にチャート化すること。

79.アシスタントときちんとコミュニケーションをとること。

80.スタッフミーティングにはかならず出ること。

81.やるべきことが分からなくなったら、必ず基礎に立ち戻ること。

82.行事などにも積極的に参加すること。

83.医療の最新動向についても、常に情報を吸収すること。

84.「心の声」に耳をかたむけること。

85.聴診器にはしっかり投資すること。

86.仕事のことは、家には持ち帰らないこと。

87.隠し事はしないこと。何かあったら必ず即報告すること。

88.先輩に指摘をされたときは、ふてくされずに受け入れること。

89.確認せずに、後ろに歩いたり止まったりしないこと。背後にもいつも注意して。

90.お年を召した患者に止血帯として、血圧測定用カフを使うといいでしょう。

91.処置を行うときには、必ずダブルチェックをすること。正しい処方か、正しい患者か、正しい時間か、服用量があっているか、ただしい手順かを確認すること。

92.わからないことがあったら、3人の人にきいてみること。

93.自分のペンと聴診器には記名をすること。

94.患者には嘘をつかないこと。

95.身体測定は客観的に行うこと。

96.器具はつねに正しく扱うこと。

97.聴診器は、使ったら必ず消毒すること。

98.シフトの初めには、必ず静脈ラインの状態を調べること。

99.手洗いを心がけること。

100.同僚に対して、「物知り顔」をしないこと。

101.諦めそうになったら、「ナースを志した理由」を思い出して。先輩ナースがきっといいアドバイスをくれます。

References:nursebuff

気管支鏡検査(ブロンコ)|合併症など検査後の観察・看護

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気管支鏡検査(ブランコ)

1、気管支鏡検査とは

気管支鏡検査(ブランコ)とは、咽頭・喉頭、声帯、気管支の病気を診断するための検査のことであり、口や鼻からファイバースコープを挿入して病変のある(または可能性のある)部分を直視下で観察したり、鉗子を用いて組織の採取やブラシを用いての細胞診などを行います。

気管支鏡検査が適応となるのは、気管支から肺にかけて何かしらの疾患を有する兆候がある場合で、主に以下のような症状がある時に施行されます。

 

気管支鏡検査の適応症状

①痰に血液が混じった場合

②喀痰検査で癌細胞を疑う所見がみられる場合

③原因不明の咳が続く場合

④呼吸困難感・喘鳴がある場合

⑤胸部レントゲン写真・CT写真で肺に異常陰影がみられ、肺癌・感染症・炎症などが疑われる場合

⑥その他、気管支・肺に異常が疑われる場合

 

また、以下のように、「気道異物」「吸引・洗浄」「癌治療」「気道出血時」「難治性気胸・気管支婁」などの治療にも施行されることがあります。

 

気管支鏡検査の治療

①気管内に滞留した異物の吸引

②肺がんの術後や肺炎など喀痰排出困難例、肺胞蛋白症における生理食塩水を用いた肺胞洗浄

③上気道の狭窄や閉塞における気道ステント術

④内視鏡的に発見された早期肺がんの気管支腔内照射

⑤血痰や喀血時の止血(止血剤の注入・バルーンによる圧迫止血)

 

2、気管支鏡検査の合併症

気管支鏡検査は手技だけで10分程度、前後の麻酔・安静を含めると30分程度で終わる容易な検査ですが、「出血」「気胸」「発熱・肺炎」「アレルギーショック」などの合併症が起こることもあり、全体的には約0.2%~0.5%の確率で発生します。

 

①気管支・肺からの出血

細胞や組織の採取時には少なからず出血が伴いますが、稀に出血量が多く、止血剤の注入バルーンによる圧迫止血が必要となることがあります。

 

②気胸

組織採取時に肺を包む胸膜に傷がつき、そこから空気が漏れることがあります。気胸が発生しても通常は2~3日の安静のみで軽快しますが、肺気腫が合併している場合には空気の漏れが多いことがあり、胸腔ドレナージが必要となることがあります。

 

③発熱・肺炎

検査後に稀に発熱・肺炎を起こすことがあります。ほとんどは一時的なものですが、状況に応じて抗菌薬の投与を行うことがあります。

 

④麻酔によるアレルギーショック

局所麻酔に使用するリドカインに対するアレルギーショックや、過量による中毒症状(不安・興奮・不整脈など)を呈することがあります。アレルギーショックに対しては検査の中止と薬物の投与を行い、中毒症状に対しては概ね経過観察を行います。

 

⑤その他

頻度は少ないものの、喘息・呼吸不全・心筋梗塞・気管支閉塞・気管支穿孔などの合併症が起こることがあり、予期しない偶発症の発生による死亡例も報告されています。

 

3、気管支鏡検査後の看護

気管支鏡検査は簡易な手技ですが、上述のように合併症の発症率は比較的高いため、術後の綿密な観察は必要不可欠です。また、安静保持や飲食制限を怠ると、それに伴う二次的合併症を発症することがあるため、指導・管理を行ってください。

 

①バイタルサイン測定

バイタルサインを測定、一般状態を観察します。検査前と比べて何かしらの異常がある際には注意深く観察を行ってください。

 

②合併症の有無の確認

検査中に出血・気胸・麻酔によるアレルギーショックなどの合併症が発生していれば、血痰の有無や呼吸音などを注意深く観察し、症状が増悪するようなら担当医に報告してください。また、検査後に発熱・肺炎徴候・咽頭痛・呼吸困難などの症状を呈していれば同様に注意深く観察し、症状が増悪するようなら担当に報告してください。

 

③安静保持

局所麻酔は検査後も効いており、体が正常に動かない(フラフラするなど)ことによる転倒の危険性があります。麻酔が完全に抜けるまで安静にする旨を指導してください。

 

④飲食物の摂取制限

飲食物の刺激による炎症や出血、麻酔による咳やむせなどが起こることがあるため、検査後2時間程度は飲食物の摂取を控えるよう指導してください。また、処方される抗生剤や止血剤の服薬指導も同時に行ってください。

 

まとめ

気管支鏡検査は内視鏡検査などその他の検査と比べて患者の侵襲は決して軽微なものではありません。また、気管支や肺の粘膜は薄く弱く、合併症の発症率もそれほど低いわけではありません。

起こりうる全ての合併症は経過観察で軽快しますが、場合によっては重篤化し死亡するケースもあるため、術後は注意深く患者の状態を観察し、少しでも違和感や異常がある場合には医師に報告し指示を仰いでください。

骨髄穿刺(マルク)|検査後の看護と観察のポイント

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骨髄穿刺(マルク)

1、骨髄穿刺(マルク)とは

骨盤穿刺とは骨髄を穿刺し、骨髄内の血液を採取する検査のことです。骨髄では赤血球・白血球・血小板などを生成する場所であるため、骨髄内の血液を検査することで血球の異常に伴うさまざまな疾患を特定することができます。

白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などの血液疾患に対しては診断のためだけでなく、治療効果や病気の広がりを確認する目的でも骨髄穿刺が行われます。

 

2、骨髄穿刺の合併症

起こりうる軽度な合併症としては、「検査部位の出血・疼痛の持続」「血腫の形成」「麻酔薬によるアレルギー反応」などがありますが、どれも迅速に対処すれば重篤化には至りません。

しかしながら、「神経の損傷」「感染症」など重篤化しやすい合併症も存在します。神経の損傷は全身あるいは下肢の麻痺をきたし、しびれや感覚の麻痺、歩行障害などが一時的に発生することがあり、程度によっては長期化することもあります。

また、感染症においては穿刺部位周辺の皮膚感染や、穿刺部位からの細菌の侵入による体内感染などが起こることがあり、この場合には発熱や局部の疼痛などを呈します。

さらに、血液・体液喪失に伴うショック症状、抹消冷感、チアノーゼなどの症状が発現することもあるため、検査後の注意深い観察は必要不可欠です。

 

3、検査後の観察項目・看護

骨髄穿刺における重篤な合併症の発症率は限りなく低いものの、検査のストレス・疼痛に伴う発熱や倦怠感といった軽度なものは多発します。

また、検査後には体動制限や飲食制限などさまざまな制限があるため、患者の状態を綿密に観察するとともに、制限に対する指導・管理も忘れてはいけません。

 

①バイタルサイン

バイタルサインを測定、一般状態を観察します。検査前と比べて何かしらの異常がある際には注意深く観察を行ってください。

 

②合併症の有無

骨髄穿刺の合併症には、「検査部位の出血・疼痛の持続」「血腫の形成」「麻酔薬によるアレルギー反応」「神経の損傷」「感染症」「血液・体液損失に伴うショック症状」「抹消冷感」「チアノーゼ」などがあります。検査後すぐに発現する場合や数時間後に発現する場合など、合併症の種類や患者の体調・疾患などによって異なりますので、何かしらの症状が発現した際には注意深く観察を行い、増悪するようなら担当医に報告してください。

 

③安静保持・活動制限

検査後は安静保持が原則です。体を動かすことで(特に穿刺部位)、出血したり体液が体外へ流れ出ることがあるため、検査後1時間は仰向けで安静を保持し、止血のために穿刺部位を圧迫するよう指導してください。

トイレに行きたい場合には患者1人で行かないよう指導し、トイレへは車椅子を用いて看護師が移動の介助を行ってください。また、検査当日は出血や感染症の発症が懸念されるため、シャワー浴・入浴を控えるよう指導してください。

 

④飲食制限

出血の可能性があるため、検査当日は飲酒や刺激物の強い食べ物を摂取しないよう指導してください。

 

⑤消毒の実施

入院時には看護師が穿刺部の消毒を行いますが、検査当日に退院する場合は患者本人が消毒を行わなければいけません。それゆえ、検査後~2日程度は消毒し、絆創膏などを貼付するようしっかり指導してください。また、出血が止まらない場合や発赤・腫脹・疼痛がある場合には、連絡または来院する旨を伝えてください。

 

まとめ

骨髄穿刺は、骨髄内の血液や組織の正常の観察・測定、検体採取による原因疾患の病理学的・組織学的診断のために行われ、約30分程度で終わる簡易な検査ですが、軽度な合併症の発症率はそれほど低くはありません。しかしながら、穿刺に伴う骨折や出血・感染症などによる死亡例も報告されています。

また、軽度なものでも重篤化することも稀にあるため、検査後は必ず綿密な観察・指導を行い、症状の早期発見や二次的合併症の予防に努めてください。

NPPVの適応・観察項目、BiPAP Visionにおける操作・設定

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BiPAP

人工呼吸法の1つである「NPPV」。侵襲性は低いものの、合併症の発症率が高いことで看護量は多い傾向にあります。ゆえに、さまざまな項目について綿密な観察を行わなければいけません。

また、機器関連トラブルも多く、早急な対処が行われなければ場合によっては重篤化することもあるため、機器の操作やアラーム発生時の対処についてもしっかり把握しておく必要があります。

 

1、NPPV

NPPV(非侵襲的陽圧呼吸法)は、気管挿管や気管切開などの侵襲的処置を行わず、マスク装着だけで一定の圧力や空気量を肺に送る人工呼吸法のことです。

人工呼吸法には他にも気管挿管や気管切開を行うIPPV(侵襲的陽圧呼吸法)がありますが、IPPVは主に自発的に呼吸ができない患者に対して適応となり、NPPVは自発呼吸ができる患者に対して適応となります。また、それぞれの相違点は以下のように多岐に渡ります。

 

NPPVとIPPVの相違点

  NPPV IPPV
気管内挿管 不要 必要
気管内吸引の難度 困難 容易
気道・食道の分離(気道確保) 確保されない 確保される
回路のリークの有無 あり なし
O2濃度 BiPAP Visionのみ設定可能 設定可能
発声・食事の可否 可能 基本的には不可能
鎮痛剤など薬剤の使用 なし 必要になることが多い
意識レベル 維持 鎮静することが多い
患者からの訴え 判断が容易 判断が困難
合併症の発生(VAPなど) 少ない 多い
口腔内の清潔保持 保持が容易 保持が困難
離脱の難度 比較的容易 慎重
看護ケアの必要性 多い 安定すれば比較的少ない

 

NPPVとIPPVの長所

NPPV IPPV
・  侵襲性が低い(気管内挿管・気管切開の必要がない)

・  食事や会話が可能である

・  VAP(人工呼吸器関連肺炎)などの感染症の発症率が低い

・  鎮静剤を軽減できる

・  咳反射の温存、気道クリアランスの保持

・  血行動態や頻脈が改善できる

・  酸素化が改善できる(Pa02/Fi02上昇)

・  換気の補助が可能である

・  入院期間の短縮、死亡率が改善できる

 

・  自発呼吸ができない患者に有効である

 

・  確実に気道確保ができる

 

・  気道内吸引が容易である

 

・  誤嚥の可能性が少ない

 

・  呼吸や循環管理が容易である

 

NPPVとIPPVの短所

NPPV IPPV
・  呑気や誤嚥の可能性がある(気道と食道を同時に送気することにより)

・  患者の協力が不可欠である

・  意思疎通のできる患者のみに使用可能

・  自発呼吸がある患者のみに使用可能

・  高気道内圧をかけることができない

・  血圧低下や尿量減少がみられる

・  マスクによる顔面圧迫に伴う皮膚障害が形成されやすい

 

・  気管内チューブや吸引による苦痛が伴う

・  鎮静剤などの薬剤が必要となる

・  VAP(人工呼吸器関連肺炎)などの感染症の発症率が高い

・  コミュニケーションや活動が制限される

 

NPPVは自発呼吸ができる患者に対して、簡便に開始できる反面、患者の協力が不可欠であり、看護量も多いのが特徴です。それゆえ、看護師はNPPVを行う患者に対して、適切かつ綿密な観察とより良い看護を行わなければいけません。

 

2、NPPVの適応・禁忌

NPPVが開始される条件として自発呼吸が可能であることが第一であり、その他にもさまざまな条件が存在します。また反対に、禁忌となる症例も数多くあり、NPPVが実施できない場合にはIPPVの実施が検討されます。

 

NPPVの適応

・  意識が良好で患者が協力的である

・  自発呼吸が可能、循環動態が安定している

・  気道が確保できており喀痰の排出ができる

・  消化管が活動している(閉塞などがない)

・  気道分泌物がコントロールできる

・  顔面の外傷がなくマスク着用が可能である

 

NPPVの禁忌

・ 非協力的で不穏な状態にある

・  気道が確保されておらず喀痰の排出が困難である

・  呼吸停止、昏睡、意識状態が悪い

・  自発状態のない状態での換気が必要である

・  顔面に外傷、火傷などがありマスク着用が困難である

・  咳反射がない、または乏しい

・  ドレナージされていない気胸がある

・  嘔吐、腸管の閉塞、アクティブな消化管出血がある

・  気道分泌物がコントロールできない

・  誤嚥の危険性が高い

 

なお、NPPV実施時に、病態・意識レベルの悪化、症状が軽減されない、新たな合併症の発現などがみられると、IPPVに移行することもあります。

 

3、NPPVに伴う合併症

NPPVは、常時マスクを着用し口と鼻の同時送気により、「皮膚トラブル」「口腔・鼻腔内の乾燥」「結膜の乾燥」「呑気・腹部膨張」「圧迫感・不快感」などの合併症が起こることがあります。

これら1つ1つは重大な合併症ではないものの、改善が困難であることから、患者の著しいQOL低下を助長します。それゆえ、合併症を起こさないために、まずは患者の全身状態を細かく観察し、機器側の綿密な管理を行っていくことが大切です。

 

皮膚トラブル

常時、マスクを着用していることで、特に鼻根部や前額部が圧迫され、皮膚損傷や褥瘡などの皮膚トラブルが起こり得ます。マスク着用によるスキントラブルの発症率は約30%にのぼり、リーク漏れを防ぐためにキツく固定することが主な原因です。

キツく固定することは非常に重要ですが、30L/min以内であれば、多少のリーク漏れは許容できる範囲内ですので、30L/minを目安にゆるめるのもよいでしょう。また、褥瘡を防ぐために、呼吸が安定している場合には2時間に1回ほどの頻度でマスクを外し、圧迫解除を行う工夫も大切です。

予防的対策
・  前額部、鼻根部、頬部など好発部位に皮膚保護剤(ディオアクティブET・CGF)を貼用する

・  許容の範囲内でマスクの固定を緩める

・  2時間に1回程度の頻度でマスクを外し、皮膚の観察・圧迫解除を行う

・  清拭や洗顔などを定期的に行い、皮膚を清潔に保つ

・  マスクのサイズまたは種類の変更を検討する

 

口腔・鼻腔内の乾燥

NPPVは口や鼻を介して多量の空気を出し入れするため、口腔や鼻腔内が常に乾燥した状態になります。程度に差はあるものの避けることが不可能であり、うがいや口腔ケアの施行、加湿器の使用が必要不可欠です。また、口腔内用の保湿剤の塗布も有効であるため、積極的に実施していきましょう。

予防的対策
・  加温加湿器を使用する

・  口腔ケア、含嗽の施行する

・  保湿ケア、保湿剤を使用する(オーラルバランスやホウ砂グリセリン)

 

結膜の乾燥

結膜の乾燥は、フルフェイスマスクやトータルフェイスマスクの着用で発生しやすく、鼻根部や尾翼部からのリークにより、気流が目に当たることで起こります。急性期において点眼薬や眼洗浄などにより対応しますが、急性期を脱したらマスクの変更を検討するなどの工夫が必要です。

また、大量のエアリークがある場合にはマスクの再固定が必要ですが、キツく固定しすぎると皮膚トラブルを助長させるため、固定の圧加減には注意しなければいけません。

予防的対処
・  加温加湿器の使用、加温加湿レベルを検討する

・  大量のリークがある場合には、マスクの再固定を行う

・  マスクのサイズや種類の変更を検討する

・  点眼薬や眼洗浄を検討する

 

呑気・腹部膨張

NPPVでは、マスクによって口と鼻を同時に送気するため、胃に空気が入り込んでしまい呑気や腹部膨張が起こることがあります。呑気・腹部膨張には胃管の挿入・留置による脱気が最も有効ですが、そのほか、設定圧の変更や排便コントロールも有効な手段です。

予防的対処
・  胃管の挿入による脱気を行う

・  排便コントロールを行う

・  設定圧が高いことで腹痛、腹部膨張が強い場合は設定変更を検討する

 

圧迫感・不快感

覚醒下でマスクを使用して換気を行うため、実施早期においてはマスクによる圧迫感や不快感が必ずあります。マスクによる圧迫感・不快感は、マスクの固定を緩めたり、サイズや種類の変更が有効ですが、固定を緩める場合にはリーク漏れを考慮してください。

予防的対処
・  マスクの固定を緩める

・  マスクのサイズや種類の変更を検討する

・  設定圧が高いことで圧迫感、不快感が強い場合は設定変更を検討する

 

これらはNPPVを実施している以上、完全に避けることはできず、1つ1つは軽度な合併症であるものの、長期化することでQOLは著しく低下します。特に皮膚トラブルは発症すると改善するのに時間がかかるため、マスク装着部や患者の全身状態を綿密に観察した上で、予防のための対処を積極的に行っていってください。

 

4、NPPV施行中の観察項目

NPPV施行中の観察項目は主に、患者の「呼吸状態」「循環状態」「意識レベル」「消化器症状」などです。何かしらの異常があれば機器側(BiPAP Vision(後述))でアラームが発せられますが、その兆候を瞬時に察知するためにも、以下のように患者の観察が不可欠です。

呼吸音 血液ガスデータ
呼吸回数 1回換気量・分時換気量
呼吸パターン 気道内圧
呼吸困難感 リーク量
補助呼吸筋の動き 安全弁(呼気ポート)の開閉
胸郭の動き 意識レベル
NPPVと患者の同調性 ECGや血圧などの循環動態
気道分泌物の量・喀痰状況 グラフィックモニター
SPO2 NPPVの合併症の有無

 

これら観察項目はNPPVのものですが、原疾患に関する観察も忘れないよう注意してください。また、NPPV使用中に高い圧をかけている場合には、肺の圧損傷(緊張性気胸)や腹部膨張などの合併症を引き起こすことがあるため、高圧時には特に注意しておきましょう。

 

5、BiPAPの操作・設定

BiPAP(BiPAP Vision)とは、NPPVに使用される機器(フジ・レスピロニクス社)のことで、その高い品質と性能により、現在では多くの医療施設に設備されています。

呼吸器関連の医療用語の中にBIPAP(Iの文字が大きい)がありますが、これは高相と低相の二相のPEEPを一定時間交互に繰り返す“換気モード”のことであり、BiPAPとBIPAPは根本的に異なります。

ここでは、多くの医療施設に設備されているフジ・レスピロニクス社の製品「BiPAP」の操作・設定についてご説明します。

 

BiPAPの外観

BiPAPの外観

出典:特定非営利活動法人 日本集中治療教育研究会

 

モニタリング項目

表示の種類 単位 表示内容
Vt MI 一回換気量(計算された予測値)
MinVent L/min 分時換気量(計算された予測値)
PIP cmH2O 最高気道内圧
Ti/Ttot % 吸気の割合
Pt.Leak L/min マスクからのリーク量(呼気ポートを行わないと表示されない)
Tot.Leak L/min 呼気ポートやマスクからの全てのリーク量
Pt.Trig % 過去30分の自発呼吸の割合

 

アラーム項目

内容と画面表示 LED アラーム音 原因・対処
電源消失

(画面表示なし)

点滅 ピッ ピッ 機器の接続不良や電源の供給不良などが原因です。他のAC電源に接続してください。
作動停止

Ventilator

Inoperative

点灯 ピー 機器関連トラブルが原因です。直ちに患者からマスクを外し、手動蘇生器または別の人工呼吸器に切替えてください。
圧下限

Low Pressure

点滅 ピピピッピピッ 呼吸回路の破損または接続外れが原因です。インレットフィルタの汚れや空気取入口の閉塞、リーク漏れを確認してください。
圧上限

High Pressure

点滅 ピピピッピピッ 患者の容態の変化(ファイティングなどの可能性)や回路の閉塞が原因です。まずは患者の状態を確認し、異常がなければ閉塞箇所・閉塞原因を特定・改善してください。
分時換気量下限

Low Minute Vent

点滅 ピピピッピピッ 呼吸回数・1回換気量の低下/呼吸回路からのリーク漏れが原因です。患者の状態を確認し、患者の呼吸に問題があれば、処置とともに1回換気量や呼吸数などの設定変更を行ってください。
回路外れ

Patient Disconnect

点滅 ピピピッピピッ 回路の接続不良または接続外れが原因です。回路を接続し直すか、リークを修正してください。
無呼吸

Apnea

点滅 ピピピッピピッ 患者の容態の変化(無呼吸や呼吸間隔の延長などの可能性)が原因です。直ちに蘇生などの治療・処置を行ってください。

 

まとめ

自発呼吸の可能な患者に対して実施されるNPPVは、IPPVと比べて侵襲が低いものの、看護量が多いのが特徴です。また、皮膚トラブルや各部乾燥などの合併症が起きやすいため、患者の全身状態をよく観察しておく必要があります。

NPPVにはBiPAPが広く使用されているため、操作・設定変更方法やアラームの内容・対処は必ず覚えておきましょう。なお、患者の年齢や状態に応じてV60やCarinaなど他の機器も広く使用されていますので、所属する医療施設に設置してあるすべての機器の使い方は必ず把握しておいてください。

食道静脈瘤の予防的看護・治療後(EIS・EVL)の看護実践

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食道静脈瘤(バリックス)

食道粘膜下層にある静脈が突如として破裂し、吐血や下血を伴い、多くは緊急治療を要する危険性の高い食道静脈瘤。予防するためには看護師の観察・指導だけでは不十分で、患者の積極的な協力が必要不可欠です。また、再発率が高いため、治療後も綿密な観察とともに予防策を積極的に実施する必要があります。

ここでは、食道静脈瘤の概要や予防するための看護実践、治療後の観察・指導などについて詳しくご説明しますので、食道静脈瘤の可能性のある患者または発症した患者の看護方法を学び、実践にお役立てください。

 

1、食道静脈瘤とは

食道静脈瘤(Esophageal Varix)とは、食道の粘膜下層にある静脈が破裂する疾患のことで、バリックスとも呼ばれています。(ただし、バリックスは静脈瘤のことを指しているため、一般的には食道静脈瘤ではなく、下肢静脈瘤の洋語として用いられています。)

 

食道静脈瘤は肝硬変や慢性肝炎、門脈・肝静脈の狭窄・閉塞に伴う門脈圧の上昇(門脈圧亢進)が原因で起こり、特に肝硬変の合併症としてよく知られており、食道静脈瘤の90%以上が肝硬変の合併症です。

通常、胃や腸の血液は肝臓を通る必要がありますが、肝硬変などにより血液の流れが悪くなると、血液は別の道を通って心臓に戻ろうとします。その道の1つが食道であり、食道の粘膜下層にある静脈に必要以上の血液が流れることで、次第に静脈が太くなります。

 

食道は飲食物が通る道であるため、飲食物が通ることによる圧迫で太くなった静脈が耐えられなくなり、ある日突然、破裂して吐血・下血(タール便)の症状をきたします。

食道静脈瘤の自覚症状はほとんどなく、突然吐血して初めて気づくことが非常に多いため、医療従事者でも食道静脈瘤の兆候を見抜ける者は非常に少ないのが実情です。

 

食道静脈瘤における予防的観察・看護は未だ充実していないものの、飲食物の制限や食事方法、排便管理、服薬管理などを行うことで、予防または遅延させることができます。

また、内視鏡的硬化療法(EIS)や内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)などの予防的治療を行い、静脈瘤を閉塞または壊死・脱落させることで、症状発現の遅延または改善を図ります。

 

これらの治療法は予防的にだけでなく、症状発現後(吐血・下血後)の治療としても行われており、症状発現後はまず輸液・輸血を行い、必要に応じてバルーンによる圧迫止血を行った後にEISやEVLを実施します。

症状が発現しEISやEVLを実施した術後患者の看護は、EIS・EVLの偶発症やバイタルサインの観察、再発防止のための飲食物・排便・服薬などの管理・指導が主となります。

 

2、食道静脈瘤の症状と進行過程

上述のように、食道静脈瘤の症状は吐血・下血であり、前触れもなく突如として発現します。しかしながら、食道静脈瘤は肝硬変などの原疾患に起因しているため、肝硬変であれば疲労感・倦怠感・黄疸・胸部の血管が浮き出る・手のひらが赤くなるなど、原疾患の症状が顕著に表れるにつれて、食道静脈瘤の悪化と捉えることができます。

つまり、原疾患の症状を観察することで、食道静脈瘤の発現を予測することが可能です。しかしながら、発現の時期を正確に予測するのは看護師など医療従事者が綿密な観察を行っていても、非常に困難なのが実情です。

吐血量は静脈の膨張や破裂の程度によって増減しますが、大量吐血になるとショック状態に陥って死亡することもあり、肝硬変の場合は出血による肝臓の血流低下により肝不全に陥ることも少なくありません。

 

3、食道静脈瘤の予防

静脈の破裂を防ぐためには原因となる原疾患の治療が第一ですが、時として原疾患が改善されても破裂することがあります。というのも、食道は飲食物が通る道であり、飲食物による圧迫や刺激は静脈にダメージを与えるためです。

また、排便管理や服薬管理を徹底し、定期的に内視鏡検査を行い、静脈の状態(色調、傷の有無、瘤の形態・発赤など)を確認するなど、さまざまな予防策を並行して実施する必要があります。

 

食事制限・食事管理

血流量が多くなった静脈は弱化しているため、内的な圧迫に加え、外的な刺激・圧迫が破裂を助長します。硬い食べ物、骨、香辛料など刺激の強い食べ物、熱湯(熱いお茶など)、アルコール、タバコなどが破裂を引き起こします。

また、柔らかい食べ物であっても、摂取量(食道に通る飲食物の量)が多い場合には、それが静脈を圧迫して破裂を引き起こします。ゆえに、堅い食べ物は柔らかくする工夫や刺激物を摂取しない食事管理を徹底することが食道静脈瘤の予防の第一となります。

 

活動制限

静脈の破裂は血圧上昇によっても起こります。重い物を持ったり過度に運動すると血圧が上昇するため、活動制限を設けることも食道静脈瘤の予防に繋がります。

 

排便管理

便秘や排便困難な状態になると、1回の排便に大きく力を要し、いきむことにより血圧が上昇します。そのため、生活上における活動制限に加え、排便管理も徹底しなければいけません。下剤を使用してでも1日1回の排便が必要です。看護師は患者の排便を促すとともに、いきまないことへの指導、便の色を観察してください。

 

服薬管理

食道静脈瘤は肝硬変などの原疾患に起因しているため、原疾患が悪化するにつれて破裂の可能性が高くなります。入院時には比較的容易に患者の服薬管理を行うことができますが、退院後の服薬は患者本人の実施に委ねられます。それゆえ、入院時の徹底した「コンプライアンス」や「アドヒアランス」が非常に大切です。

 

内視鏡検査

食道静脈瘤の進行度は、超音波検査・CT・血液検査などでもある程度把握できますが、内視鏡検査が第一選択となります。内視鏡により直視下で静脈の状態(色調、傷の有無、瘤の形態・発赤など)をみることができ、進行度を正確に把握することができます。内視鏡検査が最も有効な検査であることから、食道静脈瘤をきたす可能性のある疾患を有する患者に対しては、内視鏡検査の定期的な実施を促進・指導してください。

 

予防的治療

内視鏡検査などにより、食道静脈瘤をきたす可能性が高いと判断される場合には、予防的治療として内視鏡的硬化療法(EIS)や内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が行われます。これらは内視鏡的に静脈瘤を閉塞または壊死・脱落させるため、予防としては最も効果的です。ただし、原疾患が改善されなければ再発することが予想されるため、再発に関しては留意しておく必要があります。

 

また、咳が静脈破裂を促すことが多いため、咳をしている時は静脈破裂の可能性を十分に考慮し、早期発見できるよう体制を整えておきましょう。

 

4、食道静脈瘤の治療

食道静脈瘤の治療は、①内視鏡的治療(EIS・EVL・EISL)、②IVR(カテーテルなど)を応用した治療、③外科的手術、④薬物治療(発癌抑制、肝線維化改善のためのIFN治療・門脈圧低下、ARB投与など)、⑤保存的治療の5つがあり、患者の状態に応じて選択します。

ただし、外科的手術は侵襲性が高く、薬物治療は緊急時には適応とならないため、食道静脈瘤の治療(症状出現時または可能性が高い症例)には簡易的に行え侵襲性の低い「EIS」「EVL」「EISL」などの内視鏡的治療が主として実施されます。

 

内視鏡的硬化療法(EIS)

EISは瘤のある静脈に内視鏡下に穿刺し硬化剤を注入し、静脈瘤を塞栓する治療法です。EISにはオレイン酸モノエタノールアミン(EO)の血管内注入法と、エトキシスクレロール(AS)の血管外注入法の2種類ありますが、基本的には血管内注入法が選択され、血管内注入が困難な場合に血管外注入法が選択されます。

 

内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)

EVLはゴムバンドを用いて食道静脈瘤を結紮し、人為的に血栓性閉塞を引き起こす治療法です。手技が簡易であることから積極的に実施されますが、EISよりも再発率が高いことが欠点として挙げられます。なお、肝機能の低下した場合(高度黄疸、低アルブミン、血小板減少、脳症、腹水)や、緊急時の一時止血にEVLが有効です。

 

EIS とEVLの同時併用療法(EISL)

EISによる高い治療効果と再発予防効果、EVLによる機械的で確実な止血効果を併用した治療法がEISLです。2つのメリットを融合した革新的な治療法であるものの、手技がより困難になる、入院期間が長期化する、緊急時の止血には適さないなどのデメリットも存在するため、吐血後の治療ではなく、主に予防的治療として実施されています。

 

5、予防的治療後・静脈破裂後の看護

内視鏡治療後(止血・塞栓・閉塞後)は主に、内視鏡治療に伴う合併症に留意した看護が主体となります。内視鏡治療に伴う合併症には、胸痛、発熱、食道潰瘍、食道狭窄、腎機能障害などがあり、ほとんどは自然経過または内服加療で回復しますが、高度の食道狭窄を起こした場合には食道をバルーンで拡張する必要があるなど、迅速な処置が必要となることも多々あります。

また、脳梗塞が引き起こされることもあり、さらに食道静脈瘤は原疾患に起因していることで、再発の可能性があります。概ね、再発率は2年以内に50%以上であるため、合併症の早期発見や症状緩和に努めるとともに、再発を防ぐための指導・管理が必要不可欠です。

 

合併症の早期発見

上述のように内視鏡治療に伴う合併症は多岐に渡ります。局所的なものとして出血・食道潰瘍・食道狭窄、全身的なものとして発熱・胸痛・ショック・腎機能障害・肝機能障害・門脈血栓などがあります。看護師がこれらの合併症を予防することは不可能ですが、症状の増悪を防ぐことは可能であるため、治療後には患者の全身状態やバイタルサインを綿密に観察してください。

なお、単なる発熱・胸痛と思っていても、発熱は誤嚥性肺炎や縦隔炎が起因していることも考えられ、また強い胸痛がみられる場合には食道穿孔なども考えられるため、発熱・胸痛には起因となる合併症を考慮した上で観察していくことが大切です。

 

合併症の症状緩和

発熱・胸痛の多くは経過観察で消失します。しかしながら、内視鏡的治療により患者は体力が低下している状態であるため、単なる発熱・胸痛でも患者にとっては大きな苦痛です。これらを緩和させるためには、①安静な体位、②心身の安静、③温湿布などが効果的です。積極的に苦痛緩和に取り組んでください。

 

食道静脈瘤の再発防止

「3、食道静脈瘤の予防」で詳しく述べましたが、静脈の破裂は食道を通る飲食物が大きく関係しています。また、血圧上昇や原疾患の進行も要因となっているため、①食事制限・食事管理、②活動制限、③排便管理、④服薬管理を徹底し、退院後は患者自身でしっかり管理できるよう、指導・教育を行うことが大切です。

また、食道静脈瘤は吐血による発見が多いものの、下血(タール便)で発見できることもあります。ゆえに、入院時には看護師が便の状態を観察し、退院後には観察するよう指導し、下血がみられる場合には来院する旨をしっかり伝えてください。また、内視鏡検査を定期的に受けるよう指導してください。

 

精神的苦痛の緩和

吐血や内視鏡治療(患者視点では手術)は、患者に大きな精神的苦痛を与えます。特に「吐血=死の可能性」という考えが一般化していることで、死への恐怖や人生に対する不安など、治療後の精神的苦痛は大きいものです。それゆえ、看護師はコミュニケーションや寄り添う看護を通して精神的苦痛の緩和を図り、患者のQOL向上に努めなければいけません。

 

まとめ

食道静脈瘤は原疾患に伴う二次的合併症であるため、再発率は2年以内に50%以上と非常に高く、食道静脈瘤による死亡例も少なくありません。

静脈の破裂は突如として起こり、発症の時期予測は非常に難しいため、まずは予防的対策を講じることが大切です。また、治療後には治療に伴う合併症の早期発見・症状緩和、予防的対策、精神的苦痛の緩和を図り、患者のQOLを最大限に向上できるよう綿密な観察・指導、寄り添う看護を実施していってください。

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