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看護師が教える!驚くほど熟睡できる睡眠テクニック10選

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睡眠のコツ

グッスリ眠ることは、翌日の仕事や勉強の効率を上げますし、生活習慣病予防にも役立ちます。グッスリ眠るためには、寝室の環境を整え、食事や飲み物に注意し、就寝前にはしっかり準備をしておくことが重要なのです。グッスリ快適に眠るための10個のコツをご紹介します。

 

グッスリ眠れる環境を整える

睡眠環境を整える

グッスリ眠るためには、まず寝室の環境を整えましょう。グッスリ眠れる環境を作るためには、寝具にこだわり、音や室温にも注意する必要があります。

 

1. 寝具にこだわろう!

寝具にこだわる

グッスリ眠るための1つ目のコツは、寝具です。あなたは枕やマットレス、掛け布団などにこだわっているでしょうか?

特に、枕とマットレスは睡眠に大きな影響を及ぼすものです。枕の高さや材質、柔らかさなどが合っていないと、首や肩に負担がかかり眠りが浅くなってしまいます。

また、マットレスが体に合っていないと、腰痛の原因になります。睡眠中に腰痛を感じていたら、もちろん眠りが浅くなりますよね。

グッスリ快適に眠るためには、あなたに合った枕やマットレスを用意しましょう。新たに買い直すのは、経済的に痛いと思うかもしれませんが、168時間をベッドで寝て過ごすんです。

124時間のうち68時間は寝て過ごす。これを毎日続けますので、一生のうち3分の1から4分の1はベッドにお世話になるのです。これを考えると、自分にピッタリ合った寝具を買い直すのは、無駄な出費ではありませんよね。

 

2. 音にも気をつけて

音に気をつける

グッスリ眠るためのコツ2つ目は、音に気をつけることです。あなたはテレビをつけっぱなしにしたり、洗濯機を回したまま眠りについていないでしょうか?

周囲の音は、睡眠に大きな影響を及ぼします。寝室の音が40デシベルを超えると、睡眠に悪影響を与えると言われているのです。

テレビの音は5570デシベル、洗濯機の音は6570デシベルですから、テレビはきちんと消して、洗濯機も就寝前に終わらせるようにしましょう。

また、自宅が大通りに面していて車の音がうるさい、隣の家の犬の鳴き声が気になるなど、自宅外の音がうるさい場合は、耳栓をつけて寝ると良いですよ!

 

3. 室温を調整して

室温を調整する

3つ目のコツは室温です。寝室の室温は、快適に眠ることができる温度になっているでしょうか?暑すぎても寒すぎても、グッスリ眠ることはできません。

グッスリ眠るための室温は、夏は2527℃、冬は1520℃です。冷房や暖房を使って、就寝前に寝室をこの温度に調整しておきましょう。

また、湿度も体感温度に大きな影響を与えますが、快適な湿度は4060%ですので、湿度にも気を使うとさらに良いでしょう。

 

グッスリ眠るための食事や飲み物

眠るための食事

グッスリ眠るためには、食べ物や飲み物にもこだわらなくてはいけません。快適な睡眠を助ける栄養素を積極的に取り、睡眠を妨げるような栄養素や食事の仕方には注意するようにしましょう。

 

4. 夕食ではトリプトファンを取ろう!

トリプトファンを取る

グッスリ眠るためには、トリプトファンを積極的に取りましょう。トリプトファンはアミノ酸の一種ですが、精神を安定させ、良質な睡眠を促すセロトニンという神経伝達物質の原料となる栄養素なんです。

つまり、トリプトファンを夕食で摂取すると、セロトニンが増えて、グッスリ眠ることができるというわけです。

トリプトファンは肉や魚、乳製品、大豆製品、バナナに多く含まれていますので、夕食はこれらのタンパク質を中心としたメニューにすると良いでしょう。

 

5. 寝る前の飲み物はリラックスできるものを選んで

リラックスできるものを選ぶ

寝る前に何か飲み物を飲むなら、リラックスできて、眠りを促してくれるものを選びましょう。具体的にはカモミールティーやラベンダーティーです。

カモミールにはリラックス効果があり、ラベンダーには精神安定作用がありますので、就寝前にカモミールティーやランベンダーティーを飲むとグッスリ眠ることができるでしょう。

 

6. やってはいけないことはを知ろう

やってはいけないこと

夕食に取りたい栄養素や寝る前に適した飲み物がわかりましたが、食事や飲み物に関する「やってはいけないこと」も知っておきましょう。

まず、食事についてです。就寝中に血糖値が高くなると、インスリンが多量に分泌され、低血糖を起こしやすくなり、眠りが浅くなってしまいます。

また、成長ホルモンの分泌も抑制されるのです。成長ホルモンには血糖値を上昇させる作用がありますので、血糖値が高い状態では分泌されません。成長ホルモンが分泌されないと、疲れが取れずに、翌朝に疲れを引きずることになるのです。

就寝時に血糖値を安定させるために、夕食は就寝3時間前には終わらせるようにしましょう。

また、カフェインには覚醒作用がありますので、コーヒーや紅茶、緑茶、コーラなどは就寝前には飲まないほうが良いでしょう。カフェインの覚醒作用は最低8時間は持続すると言われていますので、夕方以降はカフェインを含んだ飲み物は控えましょう。

そして寝酒は絶対にNGです。アルコールが肝臓で代謝されるとアセトアルデヒドという物質が作られますが、アセトアルデヒドは交感神経を刺激しますので、眠りを浅くしてしまうのです。

 

グッスリ眠るための就寝前の準備

就寝前の準備

グッスリ眠るためには、就寝前の準備が欠かせません。グッスリ眠るための準備をしっかり行っておくことで、快適な睡眠を得ることができるのです。

 

7. リラックスタイムを作る

リラックスタイムを作る

就寝1時間前にはリラックスタイムを作りましょう。就寝前にリラックスしておくことで、副交感神経を優位にし、グッスリ眠ることができるのです、

リラックスするためには、まずパソコンやスマホ、テレビは消しましょう。パソコンやスマホを使ったり、テレビを見ていると脳を働かせることになりますので、リラックスできません。また、液晶画面からはブルーライトという強い光が出ています。

ブルーライトは体内時計を狂わせて、睡眠に悪影響を及ぼすことがわかっていますので、就寝1時間前にはパソコンやスマホ、テレビは消すようにしてください。

次に、照明です。明るい中ではあまり眠れず、室内を暗くしたほうがグッスリ眠ることができますよね。眠る準備をしてリラックスするためには、間接照明などを用いて照明を落とし、室内を暗めにしておきましょう。

また、ゆっくり入浴して体を温めたり、ストレッチをすることでも、副交感神経を優位にすることができます。

パソコンやスマホ、テレビを消し、暗めの照明の中でゆっくりリラックスすれば、寝つきがよくなりますし、質の高い睡眠を得ることができるでしょう。

 

8. 頭を空っぽにする

頭を空っぽにする

ベッドに入ったあとは何も考えず頭を空っぽにするように心がけましょう。考え事をしていると、脳が活発に働いていますので、眠れなくなってしまうのです。

悩み事などが頭に浮かんできたら、その悩み事を消しゴムや黒板消しで消すようなイメージを思い描くと、頭を空っぽにして、眠りにつきやすくなりますよ!

 

グッスリ眠るために事前にやっておくこと

眠るために事前にやること

グッスリ眠るための、寝室の環境を整えるコツ、食事や飲み物のコツ、就寝前の準備のコツをご紹介してきましたが、これだけではまだ不十分なんです。

グッスリ眠るために事前にやっておきたい2つのコツをご紹介します。

 

9. 自分に合った睡眠時間を探す

自分に合った睡眠時間を探す

まずは、自分に合った睡眠時間を探しましょう。人間の最適な睡眠時間は68時間と言われていますが、これはあくまで「平均」です。

5時間睡眠が適した人もいますし、9時間睡眠が適した人もいます。あなた自身がどのくらいの睡眠時間が適しているのかを探しておくと、「睡眠不足」や「寝すぎて疲れた」ということにはならず、快適な睡眠を得ることができるはずです。

 

10. 昼寝の時間に気をつける

昼寝の時間に気をつける

昼寝の時間にも気をつけましょう。昼寝は健康にも良いですし、仕事や勉強の効率を上げる効果もありますので、昼寝をするのは良いことなのですが、昼寝の時間には気をつけましょう。

昼寝は長くても30分にとどめ、また昼寝をするタイミングは午後早めの時間、15時前には昼寝を終わらせましょう。

30分以上、そして15時以降に昼寝をすると、夜の睡眠に影響が出てきて、「なかなか寝付けない」という事態になってしまうのです。

 

まとめ

看護師が教える!睡眠まとめ

グッスリ眠るための10個のコツはいかがでしたか?「ちょっと面倒だな」と感じるものもあったかもしれません。

でも、睡眠は健康を維持する上でとても重要なものですし、グッスリ眠ることで、仕事や勉強への集中力が増し、良い結果を生むことにつながるのです。

グッスリ眠るための10個のコツをできることから実践していきましょう!


肝臓疾患などに対するTAE(動脈塞栓術)の看護と観察のポイント

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TAE

主に肝細胞がんに対する安全かつ効果的な治療法として確立されつつあるTAE。適応する疾患が少なく、多くの適応条件が存在することから、TAEに関してあまり知らないという看護師は多いのではないでしょうか。

今回は、「1、TAEとは」「2、TAEの適応疾患」「3、肝細胞がんに対するTAEの禁忌

」「4、TAEの副作用・合併症」「5、TAEの施行手順(肝臓)」「6、術前・術中・術後の看護と観察事項」の6つの事項をもとに、TAEについて詳しく解説します。

 

1、TAEとは

TAEは「動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ)のことで、肝細胞がんや子宮筋腫といった血流を止めることで改善がみられる疾患に適応される治療法で、カテーテルを動脈の中に入れ、疾患部分の血流を止める薬(塞栓材)を入れたり、抗がん剤を直接流し込んで疾患の改善を図ります。

全身麻酔を必要とせず、治療は約1~2時間で終わることから非常に侵襲が低く、術後の副作用や合併症が少ないことから、安全かつ効果的な治療法として、特に肝細胞がんの治療において今注目を集めています。

血管は栄養を運ぶ役割を持っているため、塞栓することで栄養が各器官に行き届かない危険性が懸念されていますが、TAEが適用となる疾患においては、塞栓を行わない他の血管から栄養が運ばれるため、疾患部位に対する悪影響はほとんどありません。

また、血流を止めるために用いられる動脈塞栓材料は血管の中で、約2週間で溶けて消失し該当血管は正常に戻るため、TAEはリスクの少ない治療法なのです。

 

2、TAEの適応疾患

TAEは「肝動脈塞栓術」とも呼ばれているため、肝細胞がんに対する治療法である認識されていますが、TAEは動脈を塞栓する治療肝細胞がんだけでなく他の多くの疾患にも適応されます。代表的な適応疾患は下表の通りです。

肝細胞がん ①腫瘍径3cm以上2~3個・3cm以下3個以上の肝細胞癌、②手術・経皮的局所療法の適応のない肝細胞癌、③門脈本幹の閉塞がない、④著明な腫瘍内シャントがみられない、これらの状況下において切除不能かつ穿刺局所療法の対象外とされた多血性肝細胞がんに適応となる。
子宮筋腫 ①子宮筋腫による月経・圧迫症状が強い、②薬物療法が無効、③支給温存を希望する患者、④閉経前、これらの基準をもとに施行される。

①無症状、②悪性腫瘍の合併、③活動性の骨盤内の感染症、④ホルモン療養中、⑤妊娠中・閉経後、⑥挙児希望の患者、⑦造影剤に対するアレルギー、これらのいずれかに当てはまる場合には適応外となる。

産科大量出血 分娩時・分娩後における子宮の弛緩不良、頸管裂傷、膣壁外傷、外陰部血腫などの軟産道裂傷、胎盤以上、胎盤遺残などが原因で起こる産科大量出血において、収縮薬の投与や裂傷部の縫合、バルーンによる圧迫などの止血処置が困難な場合に、止血目的としてTAEが行われる。
骨盤骨折 骨盤骨折、特に骨盤輪の破綻を伴う骨折における大量出血(動脈性出血)の止血処置として、①血行動態が不安定、②血行動態が安定しているが貧血が進行、③広範な後腹膜血腫、などの状況下で施行される。

 

つまり、TAEは腫瘍に送られる栄養を絶つため、大量出血時において迅速に止血させるために行われる治療法で、副作用や合併症、致死におけるリスクが低いことから条件に当てはまる場合には優先的に選択されています。

 

3、肝細胞がんに対するTAEの禁忌

TAEは血流を止めることで腫瘍の壊死や止血を目的として行われ、侵襲の少ない治療法として注目されていますが、副作用や合併症の発症リスクはゼロではありません。また、血管に直接施術を行う治療法であることから、血管に何かしらの異常がある場合などにも禁忌となります。ここでは、TAEの主な適応となる肝細胞がんに対する禁忌をご紹介します。

 

①門脈本幹の腫瘍栓による閉塞を有する

肝細胞がんは肝臓の動脈から栄養を受け取ることがほとんどですが、がんではない部分の肝臓は主に「門脈」と呼ばれる血液で栄養を受けています。これにより、動脈を塞栓しても肝機能において障害をきたすことがありません。しかしながら、門脈自体に腫瘍が形成されている場合など閉塞がみられる場合は、動脈が栄養の流れる第一通路となるため、動脈を塞栓するTAEは禁忌となります。

 

②高度の肝機能障害(C)を有する

動脈を塞栓することにより、少なからず一時的な肝障害が起こることがあるため、肝機能度Cに該当する患者に対しては禁忌です。

        肝障害度

項目

A B C
腹水 なし 治療効果あり 治療効果少ない
血清ビリルビン値(mg/dl) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dl) 3.5超 3.0~3.5 3.0未満
ICG R15(%) 15未満 15~40 40超
プロトロンビン活性値(%) 80超 50~80 50未満

 

③肝硬変(非代償性肝硬変)を有する

肝硬変には「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」の2種類あり、代償性肝硬変は黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症、消化管出血などの肝機能低下と門脈圧亢進に基づく明らかな症候のいずれも認められない病態のことです。反対に、非代償性肝硬変はそれらの症候のうち1つ以上認められる病態のことを指し、非代償性肝硬変の場合には肝機能低下に伴い不全をきたすリスクが高いため、TAEは禁忌となります。

ただし、非代償性肝硬変であっても亜区域塞栓であれば、肝硬変重症度C(Child C)でもTAEは可能です。

      肝硬変重症度

項目

1 2 3
肝性脳症 なし 軽度 昏睡あり
腹水 なし 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dl) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dl) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満
  • A・・5~6点、B・・7~9点、C・・10~15点

 

④高齢者またはPerformance Statusが3以上である

TAEは侵襲の少ない治療法ではあるものの、一時的な肝機能の低下や身体症状の副作用、術後合併症のリスクがゼロではありません。それゆえ、75~80歳以上の高齢者、またはPerformance Statusが3以上の患者に対しては施行されません。下表はWHOが定めるPerformance Statusの基準です。

スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす。

WHO PS : World Health Organization Performance Status

 

4、TAEの副作用・合併症

TAEは副作用・合併症の発症率は低いものの、カテーテルの操作や造影剤・塞栓材料・抗がん剤などの薬物による疼痛・発熱・吐き気、穿刺部の感染、腎機能低下に伴う二次的疾患の発症などのリスクがあります。

副作用 身体の痛み(みぞおちなど)、発熱、吐き気、食欲不振、肝機能低下に伴う症状、抗がん剤に伴う症状など
合併症 感染症、薬剤の過敏によるショック、塞栓材料の多臓器への流入による臓器障害、急性胆嚢炎、膵炎、胆嚢・脾・小腸梗塞、麻痺性イレウス、肝膿瘍、胃・十二指腸潰瘍による消化管出血など

 

多くは術中または術後まもなくに起こりますが、遅発性のものもあるため、適宜しっかりと観察を行い、早期発見・早期改善に取り組まなければいけません。

また、副作用の症状が弱い場合でも軽視せず、改善がみられない、または症状の増悪を確認したら二次的疾患の発症を疑い、迅速に対応してください。

 

5、TAEの施行手順

TAEは、血管造影室(IVR室)に入った後に、血圧測定、局所麻酔、カテーテル挿入、血管の塞栓・抗がん剤の投与、止血で、退室まで1~2時間程度で終わります。

 

①患者をIVR室に移動させ、検査台に仰向けに寝かせる。

②血圧を測定する(緊張などにより血圧値が高い場合は下がるまで安静にする)

③穿刺部位(鼠径部など)に局所麻酔をし、穿刺後にカテーテルを挿入(造影剤を注入)する

④目的の部位にカテーテルが達したら抗がん剤の投入、動脈塞栓のための薬を入れる

⑤カテーテル、針の順に抜去し圧迫止血する(10~20分)

⑥止血確認後に消毒をし、穿刺部位を弾力絆創膏などで固定して帰室する

 

TAE実施中は、カテーテルの操作による疼痛、副作用・合併症の発症リスクがあるため、逐一、患者の表情や状態を観察し、異常の早期発見に尽力するとともに、迅速に対応する必要があります。

 

6、術前・術中・術後の看護と観察事項

医療関係者の視点ではTAEは外科的手術ではない簡単な治療法ですが、患者にとっては一つの大きな手術であり、安易に考えることはできません。それゆえ、不安や緊張を軽減させるよう声かけや入念な説明を行うことが非常に大切です。

また、侵襲が少なく副作用・合併症の発症率が低いTAEですが、軽度・重度に関わらず、さまざまな副作用・合併症発症の可能性があるため、しっかりとした観察・早期改善が必要不可欠です。

さらに、入退室が激しい場合は特に、本人確認や同意書の確認を徹底するとともに、移動時に事故防止など、安全面にもしっかりと配慮しなければいけません。

このように、患者が安心・安全・安楽にTAEを受けられるよう、「精神的ケア」「異常の早期発見」「安全管理」の3つの事項を徹底することがより良い看護のポイントとなります。以下に、術前・術中・術後における観察事項や看護師の行うべきことを示します。

 

■術前:事前準備~入室前

術前は主に患者の不安軽減、治療の説明、情報収集などを行い、適切かつ効率的に施行できるよう準備を整えます。

・治療に対する理解や患者の思いを確認する

・家族を含めて治療のオリエンテーションを行う

・術前訪問を行い治療に際する不安や緊張を緩和させる

・前処置(食事制限や薬の服用など)が指示通り守られているか確認する

・必要な書類(治療の同意書、抗がん剤使用に関する書類など)があるか確認する

・スムーズに入室できるよう必要物品(カルテ、持参品など)に不備がないか確認する

・起こりうる合併症に備えて救急カートの点検を行う(IVR室)

 

術中:入室~カテーテル挿入・治療

この過程はやることが多く慌ただしくなるため、特にIVR室に移動時の事故や確認事項の不備が目立ちます。安全に配慮し、また副作用・合併症の早期発見・迅速な対処を心がけ、安楽な看護を実践してください。

・ドレーンや点滴の抜去自己を防ぐために注意して移動の介助を行う

・入室時に本人確認を行い、治療の手順や副作用について再度説明する

・副作用症状が出現した場合に遠慮なく言うよう説明する

・患者の全身状態やバイタルサインを確認する

・検査台に寝た状態で身体的苦痛がないか確認する

・使用する滅菌物品を清潔操作で用意し取りやすい場所に配置する

・必要に応じて医師の介助を行う

・同一体位による身体的苦痛がないか確認する

・造影剤・塞栓材料・抗がん剤などよる副作用発症の有無を確認する

・カテーテル操作による合併症の発症の有無を確認する

・必要に応じて薬物による副作用や疼痛に対する薬物を用意する

 

術後:カテーテル抜去~退室

術後には副作用・合併症の発症による対処、苦痛への介入などやることが多々あります。治療が終わったからと言って気を抜かず献身的な看護を提供してください。

・患者に治療終了の旨を伝え、労いの言葉をかける

・止血または止血時の医師への介助を行う

・止血中の迷走神経反射に注意するとともに穿刺部の観察を行う

・止血処置に際する下肢例冷感・しびれなどの有無を確認する

・全身症状や副作用の有無を確認し、苦痛がある場合には軽減できる対応する

・モニターの抜去・検査着の整理・点滴類の管理など帰室準備を行う

・帰室時(移動時)に転落が起こらないようベッドの固定確認を行う

・家族に労いの言葉をかけ、結果についての説明時の反応を確認する

・安静保持・薬剤投与・飲食制限など注意点を再度説明し、安楽な体位の介助を行う

・全身状態、バイタルサイン、穿刺部、副作用・合併症の有無を確認する

・安静保持・薬剤投与・飲食制限が守られているか確認する

・退院まで継続的な看護を行い、退院時には外来への継続を行う

 

まとめ

このように、TAEは侵襲が少なく副作用・合併症の発症率が低い安全で有効な治療法として活用されていますが、負担がないわけではなく、また軽度の副作用・合併症は多発しています。

それゆえ、術中・術後における綿密な観察は不可欠であり、術前においても不安の軽減など、さまざまな点に配慮しなければいけません。

患者にとって安心・安全・安楽となる質の高い看護を提供するためには、まずTAEに関する知識を深める必要があるため、当記事を一度だけでなく二度三度と熟読し、知識の習得に励んでください。

新たな看護方式「PNS」のメリット・デメリットと今後の課題

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PNS

昨今、PNSという言葉をよく耳にするようになりましたが、詳しく知らない方は多いのではないでしょうか。

そんな方のために、当ページではPNSの概要に加え、メリットやデメリット、今後の課題など包括的に分かりやすくご紹介したいと思います。

PNSは看護方式の1つ!とは知っていてもその詳細をご存知ない方は、この機会にぜひ知識を深めてください。

 

1、PNSとは

従来は、「チームナーシング」「プライマリー・ナーシング」「混合型看護」「機能別看護」などの看護方式がありましたが、すべてに共通するのが1人の看護師が複数の患者を受け持つという自己完結型の看護でした。

チーム

ナーシング

1つの病棟に2つ以上のチームを編成し、各チームリーダーのもとで、チーム単位で一定の患者を受け持ち、看護ケアを提供する看護方式。
プライマリー

ナーシング

1人の看護師が1人の患者を入院から退院まで一貫して担当し、 24時間責任を持って担当患者の看護にあたる看護方式。
混合型看護 チームナーシングとプライマリー・ナーシングとの折衷方式で、1つの病棟に2つ以上のチームを編成し、チーム内の看護師を一定期間固定すると共に、担当患者の入院から退院までの一貫した看護を行う。
機能別看護 検温、注射、投薬、清拭など業務ごとに担当する看護師を選定し、各看護師が複数の患者に対し受け持ちの業務を提供していく看護方式。

 

どの看護方式にも大きなメリットがあるものの、自己完結型の看護では、看護師の力量により看護の質が左右され、医師も看護師も患者も不安・不満・疲労・多忙な状況が生じ、これらが誘因となり看護職員の離職の増加や患者に対する看護の質低下を招くことがしばしばありました。

そこで、これらを改善すべく2009年に福井大学医学部付属病院が新たに2人の看護師が共働して、複数の患者を受け持つ看護方式を開発しました。これがPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)であり、看護師・患者双方にとって大きな益を生み出す看護方式として、すでに多くの病院が採用・実践しています。

しかしながら、従来の看護方式にはなかった新たな問題が浮上するなど、未だ確立段階に至っておらず、導入しているすべての医療機関で課題の改善がなされています。

 

1-1、PNS導入の目的

上記のように、さまざまな看護方式が存在しますが、PNSは従来の看護方式とは異なり2人の看護師が共働することで、多くの益を生み出すとし開発されました。看護師の人員不足が嘆かれている昨今、超過勤務が当たり前となり看護師への負担が増大することで、看護の質低下を招き、離職率が年々上昇するなど悪循環が生じていました。

この状況を改善するため、福井大学医学部付属病院が以下のような目的でPNSに開発に至ったのです。

①超過勤務を削減できる

②1人で患者を担当するストレスを軽減できる

③新人看護師に対してOJTを充実させることができる

④より安心・安全・安楽な看護を提供できる

⑤チームワークや協力体制を構築できる

⑥患者のニーズに対してタイムリーに対応できる

⑦安全な医療の実施と療養環境を保持することができる

 

1-2、互いに必要となるマインド

PNSは従来の看護方式と大きく異なるため、開発元である福井大学医学部付属病院は、PNSを有効活用するためにそれぞれのパートナーが互いに認め合う気持ちや、円滑化に向けた姿勢などが大切であると提唱しています。

①定時に業務が終わるよう協力・補完し合う

②思いやりや謝意を表する

③パートナー間で自立・自立心を持つ

④パートナー間でより良い看護方法・方針を話し合う

⑤看護師一人一人が有する能力や持ち味を認め合う

⑥提供される看護の質を評価する姿勢を持ち続ける

⑦経験や職位を尊重しつつ1人の看護者として対等の意識を持つ

⑧業務の進め方を振り返り、改善・効率化に努める

⑨PNS定着を促進する気持ちを持ち課題に対応する

⑩看護提供上の課題解決を病棟全体で取り組む

⑪現状の勤務体制の妥当性を検討する

⑫命令口調などコミュニケーションを振り返る

 

つまり、PNSを効果的に運用するためには、先輩看護師・後輩看護師という垣根を越えた絶大な信頼関係を有するパートナーであることが絶対条件なのです。

これらを踏まえて、「自立・自助の心」「与える心」「複眼の心」の3つのパートナーシップマインドと、それを支える3つ要素「尊重」「信頼」「慮る」が必要であると言われています。

 

パートナーシップマインド

自立・自助の心 他者依存を捨てセルフヘルプの意識を持ち、自らがエンジンとなるよう先立って行動すること。
与える心 報酬(見返り)の存在を忘れ、give&takeではなくgive&giveの精神を持って価値提供に注力すること。
複眼の心 さまざまな視点から物事を見ることを心掛け、パートナーの立場に視点をおき、価値観や考え方を正しく知ろうとする姿勢を持つこと。

 

マインドを支える3つの要素

尊重 価値あるもの、尊いものとして大切に扱うこと。相手の話を聞き、理解しようとする謙虚な姿勢を示す立場に応じて言葉使いに注意することが尊重につながる。
信頼 信じて頼りにする、頼りになると信じること相手のことをよく知り、自分のこともよく知ってもらうこと。お互いが相手のことを十分に理解し受け入れた時、その相互作用によって信頼関係は気付く事ができる。コミュニケーションがその大切な手段となる。
虚る 周囲の状況をよく考え、思いめぐらすこと。思いやる、気配り、推し量ること。

 

2、PNSのメリット・デメリット

PNSは2009年に開発された新しい看護方式ですが、すでに多くの病院で導入され、その成果が報告されています。従来の看護方式のデメリットを改善すべく開発されたことで、看護職員や患者にとって益となるさまざまなメリットが存在しますが、その反面、従来の看護方式にはなかった新たなデメリットが生じるなど、見直し・修正が必要であるとともに、まだまだ改善の余地があるのも事実です。

 

メリット(看護師)

①患者情報の共有や行動の確認が増加する

②業務の進捗確認と相互補完が増加する

③協力依頼がより容易になる

④互いにスキルアップを図ることができる

⑤ケアに関する相談をより迅速に行える

⑥敬意を示す言葉がけが増加する

⑦看護技術や看護の考え方を学ぶ機会が増加する

⑧新人看護師・異動看護師へのOJTが充実する

⑨超過勤務時間が減少する

⑩コミュニケーションの増加のより全体の雰囲気が改善される

 

メリット(患者)

①患者に苦痛を与えないケアを提供できる

②適切なアセスメントが実施でき、観察漏れが減少する

③患者のニーズに対して迅速に対応できる

④治療・検査など患者からの質問・疑問に対して迅速に対応できる

⑤患者・家族に対する対応困難が減少する

⑥医療事故やヒヤリハットが減少する

⑦医療機器装着患者の安全な歩行をより適切に支援できる

⑧病室を訪室する頻度・時間が増加し患者に安らぎを与えることができる

⑨患者・家族と踏み込んだ会話の機会が増加する

 

デメリット

①通常(チームナーシング)の倍の人員が必要となる

②看護師間の力量・経験の差によりストレスが生じる

③ベテラン看護師の業務負担が大きくなる

③パートナーに気を遣ってしまい業務に支障をきたす可能性がある

④看護記録が後回しになってしまう

⑤パートナーの組み方が難しい(離職後の補充を含む)

⑥ケアの方法や方針における意見の相違によりPNS崩壊の可能性がある

⑦適切な管理体制が必要となる(休日・休暇の調整、PNSのコントロール)

 

3、今後の課題

PNSは看護職員・患者にとって大いなる益を生む看護方式として注目されていますが、上記のようにさまざまなデメリットが存在するなど、改善の余地が大いにあります。

中でも「看護師間のストレス」「補完管理困難」が大きな課題であり、これをいかに改善していくかがPNSの運用において非常に重要となります。

 

看護師間のストレス

先輩看護師に対して気を遣う、先輩看護師との力量差にストレスを感じるなど、常にパートナーシップをとることで特に後輩看護師が大きなストレスを感じることが多いという課題が残ります。

また、PNSを効果的に運用するポイントである“相手の意見や考えを受け入れる”という行為においても自分の意志通りにケアできないストレスがのしかかります。

これを改善するためにはパートナーの選定が重要となりますが、仲の良し悪しを基準に選定すれば他のグループへの人員調整が難しくなり、得意分野や持ち味が同じパートナーで編成すれば妥協が生まれるなど、最終的に看護全体の質の低下を招くため、以下に述べる補完管理もまた非常に重要となってくるのです。

 

補完管理困難

補完管理困難

出典:福井大学医学部付属病院 看護部

PNSの運用にあたって、看護師長・副看護師長・コーディネーターのいずれかがパートナー(グループ・チーム)の編成やチームメンバーの監督・教育、PNS全体の実践・成果を行いますが、PNSを効果的に運用するためには非常に優れた管理能力が必要になります。

パートナー編成においては仲の良さ・持ち味や得意分野・人間性・価値観など、さまざまな点を考慮しすべてのグループを平均化させる能力が求められるため、看護職員に対する高度なアセスメント力が要求されます。

また、PNSはまだ新しい看護方式であるため、看護業務や看護手順の見直し・修正を頻繁に行い、よりよい体制を構築しなければいけないことから、多角的な視野をもとにしたマネジメント力も問われます。

 

まとめ

従来の欠点を補い、看護職員への労働環境の改善・患者への看護の質向上などを目的として開発されたPNSは、看護職員・患者に対して益となる多くのメリットが存在する反面、従来の看護方式にはなかったデメリットの浮上など、未だ完全とは言えない看護方式です。

新しい方式ゆえに改善の余地が十分あるため、逐一、各医療機関の報告や論文などに目を通しておきましょう。

 

敗血症の看護、観察するべきポイントと看護計画とは

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敗血症看護

感染症の中でも、全身感染を引き起こす重症症状の一つとして敗血症があります。基本的には、背景として悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、肝・腎疾患、膠原病(こうげんびょう)などの基礎疾患がある場合に発症しやすいです。

または化学療法や放射線治療を受けて白血球数が低下している、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対しての抵抗力が低下している場合も、敗血症を起こしやすいので注意とされています。

3人に1人が死亡すると言われ、他の心筋梗塞や脳卒中よりも死亡率が高いとされるのが敗血症です。

 

当ページでは、敗血症発症後の看護、看護計画について様々な情報を詳しく紹介していきますので、敗血症の患者さんへの看護に自信がない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識を得て日々の看護に活かせるようにしてください。

 

感染症とは

敗血症は感染症のため、感染についてまずは知識をつけましょう。

感染症とは、環境中(大気、水、土壌、動物など)に存在する病原性の微生物が、人の体内に侵入し、引き起こされる疾患です。私たちには通常見えない、多くの微生物(細菌、ウイルス、真菌が存在します。その中で、感染症を引き起こす微生物を病原体といいます。

 

感染は、病原体が人間の体内に侵入、定着し、増殖、この全てが成り立つことで成立します。感染したとしても、症状が現れる場合(顕性感染)と,はっきりとした症状が現れない場合(不顕性感染)があります。まずは、目に見えない病原体や寄生虫が、どこから(感染源)、どのように侵入するのか(感染経路)を知ることが大切となります。

感染源は、病原体に感染した人(感染者)・動物・病原体で汚染された物や食品が感染源となります。

 

1-1.感染経路とは

感染を起こしていたとしても、感染経路を遮断できれば他に病原体が伝播することは防げます。感染においてとても重要となります。接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)の3つが大きく分けてあります。

 

接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触、手、ドアノブ、便座、スイッチなど表面を介しての接触で、病原体が付着していると感染となります。主に汚染された食品や汚物などが口から体内に侵入します。ノロウイルス、0-157、感染性胃腸炎などが代表となります。

飛沫感染とは、咳やくしゃみといった、飛んだ唾やしぶきなどの病原体を吸入することで、引き起こされる感染です。マスクの着用や距離を保つことが有効です。インフルエンザ、風邪などが代表となります。

 

飛沫に含まれる水分が蒸発した粒子を飛沫核といい、空間に浮遊して広範囲に広がります。病原体は埃と一緒に浮遊し、これらを吸入することで感染し、空気感染または飛沫核感染といわれています。ノロウイルスが代表となります。

 

2.敗血症とは

肺炎や腎盂腎炎など、ある部分が感染症を起こしている状態から、血液中に病原菌が入り込み、重篤な全身状態にしてしまう病状をいいます。

血液中に病原体が入りこむ病名としては、腎盂腎炎による尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症、胆管炎、胆のう炎、褥瘡感染などが挙げられます。また、中心静脈カテーテルなど、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に感染するケースもあります。

 

2-1.敗血症の症状と敗血症ショックとは

最近が血液中で増殖し、その毒素によって高熱・悪寒戦慄などを起こします。

血液中の細菌が、二次的に様々な臓器に定着して増殖を始めると、その臓器が障害された際の症状が出現します。

肺が障害される:気管支肺炎や肺梗塞の症状である咳や呼吸困難、胸痛など

心臓が傷害される:心内膜炎や心不全症状など

 

障害される場所によって症状は違いますが、基本的には重篤な症状を引き起こします。重症の敗血症の場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)と言われる皮膚や粘膜に出血斑が見られます。

重症化してしまうと、血圧低下・無尿といった敗血症性ショックを起こして、早いと数時間で死に至る場合もあります。

 

敗血症ショックは、下記の兆候が一つでも当てはまると敗血症ショックと診断され、迅速な対応が必要とされます。

 

  • 皮膚の一部が変色している
  • 排尿量が著しく少ない
  • 混乱
  • 呼吸困難
  • 動悸がするまたは心拍数が速いなど、心臓機能が異常である
  • 体温低下による悪寒
  • 極度の脱力感、ふらつき

 

2-2.敗血症の治療とは

敗血症は、診断と治療が早ければ早いほど、生存確率は高まります。医師は、多くの薬剤を使用します。

 

  • 輸液

組織への酸素供給を改善するため、通常急速かつ十分な輸液療法を行う必要があります。脱水と血圧を保つために、大量の輸液製剤を行います。

 

  • 血管収縮薬・狭心薬

平均血圧が70以下など、明らかに下回る状態が続く場合、昇圧剤の投与を開始します。第1選択薬はノルアドレナリンです。ノルアドレナリンは、血管収縮作用に強力な力を持っています。

 

  • 輸血

造血作用が弱まっていれば、ヘモグロビン濃度も低下します。7.0以下など極端に減少している場合には、輸血を行う必要があります。

 

  • 血糖値のコントロール

極端な高血糖や低血糖にならないように、インスリンやブドウ糖液などを使用し、適正な血糖が保たれるようにします。

 

  • ステロイド投与

高用量のステロイド投与は、易感染状態を作ります。そのため、感染リスクを高めるため推奨はされていません。十分な輸液や昇圧剤、血管作動薬を使用しても、敗血症ショックが落ち着かない場合に限り、低用量のステロイド療法が推奨されています。

 

  • 人工呼吸器管理

全身状態が悪化すると、酸素化が保たれなくなり場合によっては必要になることがあります。

 

  • 腎補助療法

持続的腎補助療法や間欠的腎補助療法が、敗血症に合併した急性腎不全に対して行われます。

  • DIC(播種性血管内凝固症候群)

DICを合併した場合には、深部静脈血栓予防が重要となります。過凝固状態を制御するために、抗凝固療法が必要となります。しかしヘパリンは、出血症状を助長する作用を持っています。その軽減を目的とした低分子量ヘパリン(フラグミン)やトロンビンなどの活性化凝固因子の阻害作用をもつメシル酸ガベキサート(FOY)などを使用し、治療を行います。

 

  • 敗血症を患っている患者様への看護問題

敗血症の患者様のポイントは、基本的には体温、呼吸数、脈拍数などのバイタルサインを的確に捉え、生命に危機に陥っていないか見極めることが極めて重要となります。では、どのような看護問題があがるのでしょう。

 

1)体温が不安定な状態の場合には

「敗血症に関連する発熱(低体温)が原因の身体的苦痛」

と挙げてよいでしょう。

 

2)バイタルサインが安定せず、意識障害も伴う重篤な場合には、

「血圧低下、意識障害による生命の危機リスク状態」

と挙げてよいでしょう。

 

3)低酸素血症で酸素化が保てず、呼吸状態の悪化が見られる場合には

「低酸素血症による呼吸苦出現が原因の身体的苦痛」

と挙げてよいでしょう。

 

4)DICを併発している場合には、出血リスクが高まります。

「DICを併発していることによる、身体損傷リスク状態または易出血リスク状態」

と挙げてよいでしょう。

 

敗血症といっても、様々な症状があります。今、患者様にとって必要なケアは何かをよく観察し、個別性にあった看護問題を立案するようにしましょう。

 

  • 敗血症を患っている患者様の看護過程

敗血症看護のアセスメントを行う際に、必要な観察ポイントや情報は何かを整理しましょう。

 

  • 患者背景(身長、体重、年齢、現病歴、基礎疾患)
  • 全身状態(体温や脈拍、呼吸などのバイタルサイン、皮膚の出血、尿量、意識レベル

など)

  • 活動、休息(ADLの状況、休息がとれているか)

 

これらの情報をまとめ、現在の患者様の状態を把握する材料とします。

 

  • 敗血症を患っている患者様の看護計画

では、先に挙げた各々の看護問題に該当する、看護計画を立案していきましょう。

 

OP

  • 全身状態:発熱、低体温、白血球増加、白血球減少、呼吸数増加、脈拍数増加、CRP

上昇、出血部位、SPO2低下、意識障害

  • 泌尿器症状:血尿、細菌尿、尿混濁
  • 呼吸器症状:咳や喀痰、呼吸困難
  • 消化器症状:悪心、嘔吐、腹痛

 

TP

発熱に関連する内容の場合は、

 

  • 高体温の場合、悪寒が伴っていなければ氷枕や腋窩、そけい部にクーリングを行い解熱する
  • 悪寒がある場合は、温罨法を行いながら掛け物をかけて保温する
  • 医師の指示に基づき、解熱鎮痛剤を使用する。ただし、血圧が低い場合は医師に相談とする
  • 発熱で体内水分が失われていくので、水分補給を十分に行う。できない場合は、輸液製剤で補えるように医師と相談する

 

呼吸に関連する内容の場合は、

  • 医師の指示に基づき、酸素療法を開始する
  • 口呼吸の場合、口内が乾くので、経口摂取が可能であれば水分補給を行う

起坐位など、体位調整を行い本人の呼吸が楽な体位をとる

 

DICを併発し、易出血状態の場合は、

  • 歩行可能の場合には、歩行状態を確認しスリッパから靴へと変更する
  • 床上安静の場合には、ベッド柵には布団など保護できる柔らかい素材を使用する
  • ベッド周りの身体を傷つける可能性のあるものは、除去し環境整備を行う

 

EP)理解力がある患者様や家族から協力が得られる場合に限る

  • 体温上昇や息苦しいなど、身体の不調が合った場合にはナースコールですぐに与物要に伝える
  • 家族が付き添いをしている場合、意識障害など異常を感じた場合にはすぐにナースコールなど看護スタッフを呼ぶように伝える
  • DICを併発している場合には、身体中が出血しやすい状態であることを伝える

 

このように看護計画を立案しましたが、個別性を持って患者様の病状に合わせて立案していってください。

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。重症化しやすい感染症の一つである敗血症になってしまうと、様々な重篤な症状を発症し、生命の危機に直面することが多い病気の一つです。患者様の様子をよく観察し、どのようなケアが今必要なのか正確な判断が必要とされます。

 

当ページで記載した敗血症の症状や治療、観察ポイントなどの基本的な知識をつけて、日々の看護実践の場で活用していただければと思います。

糖尿病の看護、看護の視点とアプローチをする方法とは

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糖尿病

内科を理解していく上で、糖尿病は必須と言ってよいぐらい代表的な疾患です。糖尿病は世界で約4億人に近づく、大変有名な疾患です。

世界ランキングの中で日本は第6位で、約1000万人の方が糖尿病を患っています。10人に1人が糖尿病を発症している計算になります。

 

当ページでは、糖尿病の患者様に関わる際の、看護問題や看護計画、看護過程について様々な情報を詳しく紹介していきますので、糖尿病の患者さんへの看護に自信がない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識を得て日々の看護に活かせるようにしてください。

 

1.糖尿病とは

膵臓から分泌されるインスリン作用の不足により、慢性的に高血糖状態を引き起こす代謝疾患を言います。

通常、空腹時の血糖値は110mgdl以下であり、食事をして血糖値が上昇したとしても、膵臓からインスリンが分泌され、2時間後には空腹時の血糖値に戻ります。しかし、糖尿病を発症すると、食後の血糖値が上昇し、空腹時の血糖値も上昇してきてしまいます。

 

1-1.糖尿病の原因とは

糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。

 

1型糖尿病とは、自己免疫異常でインスリンを合成する膵臓のβ細胞が破壊されてしまい、インスリンが絶対的に足りなくなってしまい、高血糖になります。8~12歳の思春期に発症が多いと言われていますが、幼児や、最近では成人にも発症のケースもあります。日本の発症率は1万人に約1人です。

 

2型糖尿病とは、糖尿病の98%以上を占め、40歳以降に起こりやすいタイプになります。インスリン分泌の低下もしくはインスリン抵抗性が見られ、糖の利用が悪くなった結果、高血糖が起こります。2型糖尿病は多因子遺伝で、家族性に起こります。日本での患者数は急激に増えています。

 

1-2.糖尿病の治療とは

糖尿病は、別名「サイレントキラー」といわれているように、自覚症状がないことが多いです。その結果、なかなか治療がうまくいかないケースはあります。

代表的な治療方法は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つで行います。

 

1)食事療法

体が処理できないような糖分や栄養の過剰摂取は、糖尿病の進行に拍車をかけてしまいます。基本的には、カロリー制限をするように医師から指導されます。通常は、1日の摂取カロリーを1600kcal以下にするように指導します。日本糖尿病学会が出している、食品交換表を利用することが効果的です。

 

しかし、今までの食生活の習慣がありますので、途中で挫折をすることも多いのが原状です。自分一人では難しい部分があるので、家族の協力も必要です。自覚症状が乏しいので、治すという強い気持ちを維持することが大事になります。

 

2)運動療法

運動によって、インスリンの働きが活発になり働きが良くなります。適度な運動は、予防や治療の意味でとても有効的です。

 

しかし、慣れない急激な運動は危険です。激しい運動によって、膝や足腰などを痛めて

しまうことも多いようです。結果、運動をしなくなってしまうと、運動療法を始める前より身体に悪影響を与えてしまいます。

 

基本的には、1日30分~1時間程度のウォーキングをお勧めします。自分の体調にあった方法が良いので、まずはウォーキングを継続して行ってもらい、慣れてくればジョギングなどの負荷をかけてもらうようにしましょう。

 

3)薬物療法

食事療法や運動療法を行っても改善しない、かなりの高血糖の場合には、薬物療法が選択されます。薬の種類には大きく分けて次の3つに分類されます。

 

α―グルコシターゼ阻害薬:食後の血糖値の上昇を抑える

スルフォニル尿素薬:膵臓を刺激してインスリンの分泌を高めようとする

インスリン抵抗性改善薬:インスリンの効きが悪いのを改善する

 

どの治療方法も糖尿病の根本治療ではないので、血糖値の上昇を抑えることが主な目的です。止めてしまうと、また高血糖になってしまうので、継続できるかがポイントとなります。

 

1-3.糖尿病の高血糖・低血糖時の症状

糖尿病の自覚症状は乏しいですが、高血糖や低血糖で著しく変化している場合には、各々で症状の出現があります。

 

高血糖の場合には、

・異常に喉が渇き、よく水を飲む

・夜中に何度もトイレへ行く

・全身倦怠感が常にあり、疲れやすい

・食事をしても体重が減る

 

などが挙げられます。さらにケトアシドーシスになり悪化すると、意識障害を起こし改善が見られない場合は、死に至る場合もあります。

 

低血糖の場合には、

・異常な空腹感がある

・脱力感

・手指のふるえ

・冷汗や動機

・生あくびが出る

 

などが挙げられます。さらに悪化すると、昏睡状態となり対処をしないと死に至る場合もあります。

 

症状が頻繁に続く場合には、早めに医療機関を受診し対処することが大事になっていきます。

 

2.糖尿病を患っている患者様への看護問題

糖尿病の患者様は通常、退院後に自分でコントロールしていくための方法を会得しているかがポイントになります。インスリンの自己注射や血糖自己測定がそれにあたります。在宅に戻ってから自分でできることが目標となります。そのため、入院中の看護問題としては

 

「糖尿病管理に関連した血糖不安定リスク状態」

と挙げることができます。

 

また、低血糖時の対処について知識をつけること、高血糖が続く場合には早めに医療機関に連絡し対処することなど、在宅に退院してから、知識を持って行動できるようにすることも大事になります。そのため、

「知識不足に関連した糖尿病管理」

と挙げる事もできます。

糖尿病を患っている患者様の、個々の理解力に沿って看護問題をあげることが大切になります。

 

3.糖尿病の患者様への看護計画

上記に挙げた、各々の看護問題の看護計画について考えていきましょう。

 

  • 糖尿病に関連した血糖不安定リスク状態

この看護問題の目標は、血糖コントロールがつき高血糖や低血糖が起きず、意識障害である昏睡にならず、日常生活を送ることをできるが目標になります。OPとしては、

  • 血糖コントロール値
  • 食前と食後2時間の血糖値
  • 高血糖と低血糖時の自覚症状の有無

これらが挙げられます。

 

また、個々によって食事療法・運動療法・薬物療法を取り入れていますので、

食事摂取量や運動を取り入れた後の血糖値の推移、薬剤の使用量を観察します。

 

次に、TPとしては

高血糖時にはインスリン投与、症状改善のための輸液管理、食事や運動、薬物療法の援助が挙げられます。

 

自宅に退院される患者様の場合、EPである指導が大事になります。

  • 食事、運動、薬物療法の個々にあった自己管理指導
  • 血糖コントロール不良時の原因について説明し、高血糖・低血糖時の対処について指導
  • 家族や周りのサポートがある場合には、血糖コントロール不良の原因を説明し、客観的に観察してもらうように指導

 

これらが看護計画となります。

 

  • 知識不足に関連した糖尿病管理

この看護問題の目標は、糖尿病に対しての疾患や治療の理解、自己管理に関する正しい知識を持ち、日常生活に取り込むことができるのが目標となります。OPとしては、

  • 症状の理解(口渇・多飲・多尿・体重減少)
  • 食事や運動、薬物療法の方法と留意点の理解
  • 検査データの理解
  • 自己管理への意欲

などが挙げられます。

 

次にTPとしては、自己管理方法取得への援助と各療法の援助となります。

  • パンフレットやビデオなどを用いて、目に見える形でアプローチする
  • 日々の血糖値の記入を促す
  • 食事療法の場合、家族と一緒に指導を行い、管理栄養士と協力する
  • 運動療法の場合、食後30分~1時間の間に声をかけ、運動を促す
  • 薬物療法の場合、インスリン自己注射導入時にはビデオなど目に見える教材を使用する。血糖測定の方法を段階を踏んで、本人ができるように促す

などが挙げられます。

 

EPとしては、患者様の理解度によって指導内容は大きく変わります。

  • 糖尿病の病態、治療方法、合併症についての説明
  • 食事療法の目的、摂取量、食品交換表の活用方法、標準体重とBMIなどの説明
  • 運動療法の目的、運動量、時間、指示された運動療法の内容を説明
  • 薬物療法の目的、インスリン使用時の作用と注意点の説明
  • インスリン自己注射の説明
  • 血糖自己測定の説明
  • 低血糖時の対処方法について説明

などが挙げられます。

 

4.糖尿病に対しての看護過程

看護過程は、基本的には看護アセスメント・看護診断・看護計画・看護介入・看護評価の5つからなります。

 

アセスメントの視点は、

  • 現病歴と既往歴、日常生活習慣、食生活などの患者背景
  • 自覚症状(口渇・多飲・多尿・体重減少・全身倦怠感)などの全身状態
  • 疾患や治療に対しての知識の有無
  • 自己管理意欲の有無
  • 家族の協力体制

これらを一つ一つ考えて不足している点がないかを見ていきます。

看護診断や計画については、上記に記載した内容から個々にあったものを選択し作成していきます。その後、看護介入を行います。具体的には、食事や運動療法についての説明、インスリン自己注射と血糖自己測定などの指導を介入することが多くなると思います。介入後に評価を行い、必要あれば看護計画を修正し、再度介入する形になります。

 

5.日本糖尿病教育看護学会とは

糖尿病の患者様が増えている現状があり、知識を深めたいと思う方も多いことと思います。患者様の教育を質、量ともに向上させる必要があります。

日本糖尿病教育看護学会は、糖尿病教育・看護の専門家として実践に応用できる研究を推進しています。糖尿病教育に関する研究者の発表の場、または実践者の実践報告の場、情報交換の場でもあります。糖尿病教育の向上に貢献することを目的としている団体です。学会に参加し、知識を深めたい方は是非一度調べてみると良いでしょう。

 

6.糖尿病認定看護師の役割とは

糖尿病は放置すると、様々な合併症を引き起こしてしまいます。

糖尿病認定看護師の役割は、糖尿病の発症を事前に予防すること、患者様本人と家族に対して、合併症を防ぎ健康的な生活を遅れるように支援することになります。そのため、糖尿病患者様に対しての幅広い知識と理解が求められます。

 

糖尿病認定看護師には、必要とされる3つの項目があります。

  • 血糖パターンマネジメント

2)フットケア

3)糖尿病ケアシステム立案

一つ一つ具体的に説明していきましょう。

 

血糖パターンマネジメントは、インスリン注射や食事、運動療法といったことだけで決まるわけではありません。心理状態や職種など、日々の生活に全て影響があります。個々の患者様に対してアセスメントし、血糖管理に向けての支援を患者様と一緒に行う能力が求められます。

 

フットケアは、糖尿病足病変予防のための自己管理への指導能力が求められます。単に足をケアするだけではなく、自分自身でケアをできることを支援することが重要となります。

 

糖尿病ケアシステム立案は、施設や地域で必要な糖尿病一次、二次、三次予防を目指し、

糖尿病ケアシステムの構築能力が求められます。特に地域における糖尿病一次予防行動は、あらゆる背景の国民全てを対象とし、糖尿病発症予防に向けての支援を行う能力が求められます。

 

7.まとめ

いかがでしたでしょうか。糖尿病の看護過程を展開していくためには、基本的な患者背景や全身状態などの観察をし、看護問題や看護計画を立案していく必要があります。しかし、個々の患者様によって日常生活習慣や考え方に差がかなりあります。同じような指導をしても、うまく患者様に理解を得てもらえない場合や行動につながらないこともあります。患者様の日常背景を把握し、個別性のあった指導が必要となります。管理栄養士や医師といった他職種との連携や家族の協力が必須となります。

当ページで記載した基本的な知識をつけて、日々の看護実践の場で活用していただければと思います。

【ダブルチェック看護まとめ】方法、意味、医療安全

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ダブルチェック

ダブルチェックとは、その名の通り「二重に確認すること」をいいます。

医療システムが発達して、機械に頼る業務が増えたとしても、結局は以前から実行されてきたアナログ方式での確認業務が、医療事故の防止には欠かせません。

看護師は、医療施設内において、医療行為や与薬業務などを行う最終提供者です。

医療機関で従事する看護師として、常に人の命に影響を及ぼす医療行為や与薬業務を行っている現場であることを認識して取り組まなくてはいけません。

 

私達看護師は、ミスが起きない様に実施直前にダブルチェックを行って、安全性と確実性を確認することが大切です。

 

ダブルチェックの有効性

 

2人で同じものをチェックする事で、確実にミスの回数は減少します。

例えば1人で100回に1回ミスをするとします。

これに同じミスの頻度のもう1人が加わり、ダブルチェックを実施すると、ミスの頻度は100回に1回から、10,000回に1回へと激減するのです。

この、エラーの頻度の低下こそダブルチェックの有効性であり、何故ダブルチェックが必要であるのか、といった理由なのです。

 

ダブルチェック機能が低下する問題点2つ

 

しかし、非常に有効に活用できるはずのダブルチェックにも問題点があります。

 

問題点の1つは、2人で確認作業をすると「ベテランの人がチェックしてくれているから大丈夫だろう」といった相手への依存や思い込みが出てしまうこと。

こうなるとダブルチェックの効果は低下してしまいます。

ダブルチェックを行う2人は、依存心なくお互いに独立して確認をしなければなりません。

 

問題点のもう1つは、ダブルチェックを実施する看護師が、チェックするだけの能力を持ち合わせているか?ということ。

ダブルチェックを行う場合、なぜ、なんのために?とチェック項目やチェックすることの意味を考え、充分に理解して実施しないと、機械的なチェックになってしまい、その有効性は低くなります。

薬剤の知識、効果、副作用といった情報から、投与する患者の病態の知識まで理解して、チェックできる能力を持っていなければ「違っているのでは?」と声に出すことは出来ません。

 

ダブルチェックを実施したけれど、ヒヤリハットになった、インシデントに至ってしまったという場合は、これらの問題点を見なおしてみるのも必要かもしれません。

 

ダブルチェックの方法

 

ダブルチェックの方法にも色々ありますが、2人で同時にチェックを行うドリル式と、2人が時間差でチェックするリチェック式の2つが代表的なものです。

 

どちらの方法で行うにしても、2人で声を出しあって、指先確認をしながら実施します。声に出して確認し、チェックをしたと第3者に伝えることでチェックの意識を高め、責任や行為を明確にします。

 

ダブルチェック定着の為の体制作りが成功のカギ

 

有効性の高いダブルチェックですが問題点もあります。それは、2人で行うため仕事量が増えてしまうということ。

みんな忙しく走り回っている中、輸液の薬剤確認に人を捕まえるのが難しい場合も往々にしてあります。

そういった点を払しょくするために、効率的で有効なダブルチェック体制を作り上げることや、定着させる事が必要になります。

 

例えば、マニュアルを作って方法を統一する。

ダブルチェックを実施するケースや範囲を決める。

ダブルチェックのトレーニングを行い、スタッフの意識改革をしていく。

看護師間だけではなく、患者さんやその家族の方にも名前を確認してもらうなど、参加していただく。といった工夫を積極的に取り入れていきましょう。

 

個人個人の意識がもちろん不可欠なダブルチェックですが、忙しい中であっても、ダブルチェックの為の時間を効率よく取れる環境づくりも重要です。

肝性脳症の看護計画、各段階における看護師の役割とは

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肝性脳症

消化器を理解していく上で、肝臓が影響する肝性脳症は避けては通れない疾患の一つです。肝臓は、腸で吸収された栄養素を、肝臓で代謝をするほか貯蔵もしています。また、胆汁を分泌し解毒や排泄するのも肝臓の役目です。

 

肝臓が機能不全に陥るとさまざまな代謝産物が体内にたまることになり、神経有毒物質あるいは神経機能に必要な物質の欠乏により神経症状が現れます。

 

当ページでは、肝性脳症の原因や治療、アンモニア脳症などの様々な情報に加え、看護計画や看護問題、さらに臨床経験について詳しく紹介していますので、肝性脳症の患者さんへの看護に自信がない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識を得て日々の看護に活かせるようにしてください。

 

1.肝性脳症・アンモニア脳症とは

肝臓は生体のなかで最大の代謝をつかさどる臓器です。肝臓が機能不全に陥るとさまざまな代謝産物が体内にたまることになり、神経有毒物質あるいは神経機能に必要な物質の欠乏により神経症状が現れます。これが肝性脳症、アンモニアが脳に影響した場合にはアンモニア脳症といいます。

 

この病気は重度の肝硬変や劇症肝炎など、血液中のアンモニアが上昇時に脳に影響が出る病気で、精神障害を起こします。肝性脳症で起こる症状には、病気の進行の程度によって様々です。徘徊をしたり尿失禁、便失禁など、認知症の症状と似ています。

 

しかし認知症と大きな違いは、さらに重症化すると眠ることが多くなり、最後には昏睡状態となり死に至ります。

 

1-1 昏睡度分類

肝性脳症の症状である精神障害が看護にとって、とても大事となります。以下に昏睡度分類を記載しますので参考にしてください。

 

昏睡度分類

昏睡度 精神症状 参考事項
睡眠―覚醒リズムの逆転多幸気分、ときに抑うつ状態だらしなく、気にとめない態度 Retrospectiveにしか判定できない場合が多い
指南力(時・場所)障害、ものを取り違える異常行動(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱を捨てるなど)ときに傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し、会話ができる)無礼な言動があったりするが、医師の指示に従う態度を見せる 興奮状態がない尿・便失禁がない羽ばたき振戦あり
 Ⅲ しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度を見せる嗜眠傾向(ほとんど眠っている)外的刺激で開眼しうるが、医師の指示に従わない、または従えない(簡単な命令には応じうる) 羽ばたき振戦あり(患者の協力が得られる場合)指南力は高度に障害
 Ⅳ 昏睡(完全な意識の消失)痛み刺激に反応する 刺激に対して、払いのける動作顔をしかめる等がみられる
 Ⅴ 深昏睡痛み刺激にも全く反応しない

 

意識レベルを判断することができれば、現在の患者さんの全身状態を把握する一つの材料

となりますので、ぜひ頭に入れておきましょう。

 

2.肝性脳症の原因とは

アンモニアやメタンなど腸内で発生した有害物は、肝臓で分解され尿素として排泄されます。しかし肝硬変になると、肝機能が低下してしまうので、アンモニアなどを分解する力が弱まり、血液中のアンモニアが増加していきます。 それに加え門脈の圧迫のため、バイパスから直接心臓に流れ込んだ血液も脳に流入してしまいます。その結果、解毒されないため脳細胞に障害が起きます。

つまり、肝不全因子とアンモニア、この2つが大きな要因となります。

 

3.肝性脳症の患者さんへの看護問題

肝性脳症の看護問題には、大きく2つに分けられ、予防行動がとれることと病状の悪化の早期発見が大事になります。

 

具体的には

1)セルフケア不足による、食事療法や薬物療法を守ることができない

2)認知機能の障害に関連した急性混乱状態

などが挙げられます。その他にも、患者さんの状態によって栄養摂取量低下や、昏睡レベルによっては呼吸に関連した問題を立案することになります。

 

3-1 食事療法

肝硬変の方は、食欲不振があり食が細くなりがちです。入院された方の50%は栄養不良であるというデータもあります。一方、肝不全つまり肝性脳症を起こしているような方は、エネルギー代謝を亢進させます。まずは、十分なカロリーと必要な量の蛋白質はきちんと摂取するのが、食事療法の基本になります。

 

血中アンモニアの濃度を上げない対策としては、便通を整える、そのためには繊維質を十分食べることが大事になります。大豆や青身魚などが豊富だと言われています。しかし、相当な量を毎日食べ続けることは難しいのが現状です。

 

3-2 薬物療法

肝不全用経腸栄養剤には、2種類の薬剤があります。

食欲がある場合は、顆粒状の製剤で比較的飲みやすい方が選択されます。

食欲がない場合は、水に溶かして飲むタイプの方が選択されます。カロリーやビタミン、ミネラルも一緒に添えられているタイプになります。この飲むほうのタイプですが、決しておいしいと言えるものではありません。少しでも緩和できるように、フレーバーで各種の味を調整し、できるだけ摂取できるように配慮をします。臨床経験上で話しをすると、

 

肝不全の状態が悪化する→食が細くなる→水に溶かすタイプの内服も困難になる

 

このような状態になることが多いです。原因としては、

1)水に溶かすタイプはかなりの水分を含むので、内服困難になる

2)肝不全悪化に伴い、肝性脳症の症状が出現し、医療者の指示に従えない

 

ことが考えられます。その場合は、経口摂取→アミノ酸輸液製剤に切り替わります。

 

4.肝性脳症の患者さんへの看護計画

肝不全による意識障害が肝性脳症で、肝硬変を患っていると頻発します。アンモニアを解毒できずに、脳や心臓へと循環してしまうために起こります。なので、アンモニアが体内に残りづらいような看護計画を立案する必要があります。

具体的には

  • 便秘予防
  • 劇症化兆候の早期発見
  • 食事療法への援助

などが挙げられます。

 

4-1 便秘予防

肝硬変と診断された時点、合併症である肝性脳症となっている状態では必須となります。ラクツロースなどの下剤を確実に服用してもらうことが大事です。基本的には毎日排便が望ましく、便秘が続いてしまうと、血中アンモニア濃度が上昇します。

一般的には、アンモニア濃度が上昇したからすぐに肝性脳症になるものではありませんが、高いアンモニア濃度を持続すると発症するので、毎日排便を基本にすることが大事になります。

臨床経験上では、肝予備能力がギリギリな患者さんの場合では、1日排便がないだけでも翌日言動や行動がおかしくなっていた患者さんもおり、浣腸を行った後に意識レベルの改善が見られた事例もあります。なので、基本的には毎日の排便が重要となります。

症状悪化予防には必須の看護であり、患者教育となります。

 

4-2 劇症化兆候の早期発見

ここで、先に述べた昏睡度分類が役に立ちます。意識障害の程度をよくアセスメントし、転倒や転落、誤飲食などの危険行動を観察し、予防策を考えます。

 

転倒や転落、患者が負傷する危険性があるとき

・ベッド柵をタオルケットやスポンジのようなもので保護をする。

・歩行可能でふらつきがある場合は、離床センサーを設置し、行動時には必ず看護師が見守れる体制を作る。

 

誤飲食の危険性があるとき

・化粧品や雑誌など、手の届く範囲に物を置かないように、環境調整を行う。

 

患者さん本人以外にも家族ケアが重要といわれています。肝性脳症はアンモニアの影響で人格が変化しますので、家族は今までにない行動や言動に強いショックを受けます。支持的な対応をするようにします。

 

4-3 食事療法への援助

血中アンモニア濃度が上昇するのを防ぐため、アンモニアの元になるタンパク質を制限します。不足するタンパク質は、アミノ酸製剤で補います。アミノ酸製剤は、安全にタンパク質をとることができます。

便秘を予防するために、食物繊維をとるようにします。入院中は、栄養士と相談し調整できますが、退院後は家族の協力がとても大事になります。本人と家族へ食事についての栄養指導が重要となります。

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。肝性脳症の看護は、

食事療法、薬物療法を守ることができているか

家族などのまわりのサポートが確立されているか

危険行動がなく、安全・安楽に過ごせることができているか

 

などが重要になっていきます。肝性脳症が悪化すると、本人の意識レベルは格段に悪くなり、危険行動が頻発します。患者さんの安全が守られるように、当ページで紹介した各事項を参考にしていただき、日々の看護実践に活かしてください。

口腔ケアの看護手順とケアのポイント

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口腔ケア

口腔ケアは、患者さんのQOLを保つ上でも重要なものです。口腔内に汚れがたまっていると、不快に感じるだけでなく、食欲低下を引き起こしたり、感染症の原因になったりしてしまいます。

また、口腔ケアは、日々の看護ケアの中でも、行う機会の多いものであり、技術に対して「慣れ」が出やすいもののひとつです。

 

基本をしっかり振り返って身につけて、患者さんのQOLの維持・向上を目指していきましょう。

 

 

1、口腔ケアとは

 

口腔ケアは、患者さんの口腔内の清潔を保つために行われる看護ケアです。ただ汚れを取るだけが目的ではありません。きちんとした手技で行われるかどうかで、患者さんの将来の健康や生活にも大きく関わってきます。

 

口腔内の汚れがたまると、食欲低下につながったり、誤嚥性肺炎の原因になるなど、患者さんのQOLを下げてしまう可能性もあります。

 

 

2、口腔ケアを行う目的

 

口腔ケアを行う目的は多岐に渡りますが、主に以下の3つになります。

 

2−1、清潔維持

 

まず目的としてあげられるのは、口腔内の清潔の維持です。自分で歯磨きをすることができない患者さん(上肢に障害のある人や、意識のない人、認知に障害のある人など)は、看護師が介入して、口腔ケアを行っていく必要があります。

 

経管栄養や中心静脈栄養などを行っていて食事を口から摂取することができない人でも、口腔ケアは必要です。食物を咀嚼することがなくなると、唾液の分泌が減るため、かえって汚れやすい状態になるためです。定期的に口腔ケアを行うことで、汚れを取り、清潔な状態を保つことが重要です。

 

2−2、感染予防

 

高齢者や、経口で食事摂取を行えない患者などは、嚥下機能が徐々に弱くなってきます。嚥下機能が弱くなってくると、唾液や食物を誤嚥してしまい、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。誤嚥性肺炎は、気づかないうちに唾液を誤嚥してしまうこと(不顕性誤嚥)でも起こってしまう可能性があります。

 

誤嚥性肺炎を予防するためには、定期的な口腔ケアで細菌の増殖を抑えることが重要になってきます。

 

2−3、口腔内のリハビリ

 

ただ清潔にするだけが、口腔ケアの効用ではありません。口腔ケアを行うことで、口腔内を刺激することによって、嚥下機能を維持・向上するためのリハビリにつながります。

 

歯ブラシで舌の縁や表面などを軽く叩いたり、舌を下方に押さえつけることで、感覚を刺戟したり、筋力アップをしたりすることができます。

 

むせやすい患者や、嚥下機能が弱くなってきている患者は、誤嚥を起こしやすくなります。そのような患者は特に、刺激を与えて嚥下機能の低下を予防していくことが重要です。

 

 

3、口腔ケアに関する看護研究の例

 

口腔ケアは身近な看護ケアであることから、様々な視点や事例で看護研究が行われています。

 

〈タイトル例〉

・誤嚥性肺炎予防における口腔ケアの効果

・特別養護老人ホーム入所者における歯肉炎の改善に関する研究

・脳血管障害後遺症患者を対象に保湿ジェルを用いた口腔ケア介入による気道感染症予防効果の検討

(日本老年医学会雑誌よりタイトルを抜粋)

 

研究事例の多さから、口腔ケアがいかに重要かがわかると思います。口腔ケアの方法に迷ったときや、似た事例に対する口腔ケアのアプローチ方法、口腔ケアによる看護の成果など、参考になる部分も多いでしょう。これらの文献をもとにケア方法を考えることも、ひとつの有用な方法かもしれません。

 

 

4、口腔ケアを行うための看護計画立案のポイント

 

患者に対し、看護師が口腔ケアを行う必要性があるのかどうか、必要性があるならば、どのようなケアが必要かをアセスメントしていきます。

 

〈口腔ケアの対象となる患者〉

 

・自力での口腔ケアが難しい患者

・意識のない患者

 

〈計画立案時に注意するポイント〉

 

・口腔ケア時、上体を起こした姿勢を保てるか

・咳嗽が可能か

・義歯を使用しているか

 

以上の点に注意しながら、使用物品やケア方法を選択します。

 

 

5、患者の特性に応じた口腔ケアのポイント

 

上記で挙げたポイントに基づき計画計画を立案し、ケアを行っていきます。

 

5−1、咳嗽ができる患者の場合

 

自力で咳嗽が行える患者の場合は、こちらで歯ブラシなどを用いてケアを行った後、自分で咳嗽を行ってもらいます。

 

上体を起こした姿勢を保てる場合は洗面台を使っても良いでしょう。上体を起こした姿勢が保てない場合や、洗面台までの移動が難しい場合は、ガーグルベースンを用いて咳嗽を行います。

 

5−2、咳嗽ができない患者の場合

 

咳嗽ができない場合、多量の水を口腔内に流し込むことは危険です。適宜、水分を吸引をしながら行い、水が流れて誤嚥を起こさないように注意をしなければなりません。

吸引を行わない場合は、スポンジブラシやガーゼを使用したりして、あまり多くの水を使わなくても汚れをとれるよう工夫することが必要です。

 

自力で開口できない場合は、バイトブロックを使うことも有効です。口腔内に触れることに抵抗をする患者は、ケアをする看護師の手や歯ブラシなどの道具をを噛まれてしまうこともあるので、バイトブロックを活用して、安全にケアを行いましょう。

 

5−3、義歯のある患者の場合

 

義歯を自分で外せる場合は、患者に外してもらいます。自力で外せない場合は、こちらで外しましょう。

 

義歯を外した後、義歯は汚れをガーゼなどで落として水で流します。ブラシで擦ることは、傷の原因になるため避けましょう。

口腔内は、上記と同じように、患者の特性に応じた口腔ケアを行っていきます。残歯がある場合は、ブラシでしっかりと磨き、残歯がない場合は、歯肉を傷つけないようにガーゼなどを用いると良いでしょう。口腔ケアが終わったら、義歯を元通りに装着して、終了です。

 

夜間に義歯を外しておく場合は、しっかりと汚れを落とした後に、水か義歯洗浄剤に浸けておきましょう。乾いた状態で置いておくと、義歯の破損の原因になりますので、注意が必要です。

 

 

まとめ

 

口腔ケアは、日常的に行われる看護ケアのひとつです。簡単なケアに見えますが、その効用は大きく、患者さんの生活に大きな影響を与えます。

 

また、口腔ケアは看護師が行うだけでなく、自宅で家族が行うことも今後さらに増えてくるでしょう。家族へ指導をする際にも、基本を知っておくことはとても重要です。

 

患者さんの状態に合わせて適切なケアを行えるよう、十分なアセスメントを行って、ケアに臨みましょう。


看護観|例文をもとにした効果的なレポート・論文の書き方

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看護観

就職・転職の面接時や、看護学校の授業、就職後の教育プログラムなどで、「私の看護観」と題して、作文やレポートを制作する機会がたくさんあります。

 

作文やレポートを制作するにあたり、看護観とは何か、どのように書けば良いのか等、初めての方や経験の浅い方は特に、分からないことが多いのではないでしょうか?

 

そんな方のために、当ページでは看護観の意味やレポートを書く上でのお勧めの構成やポイントなど、一挙に紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、看護とは

「看護観とは何か」を知るためには、まず看護の定義を知らなければいけません。イギリスの看護学者、フローレンス・ナイチンゲールは「看護はすべての患者に対して生命力の消耗を最小限度にするよう働きかけることを意味する」と述べ、アメリカの看護理論家、ヴァージニア・ヘンダーソンは「看護とは、さまざまな諸活動において、健康・不健康問わず、患者の健康維持または健康回復に役立つ諸活動である」と述べています。

 

このように、人によって看護の定義は異なり、細かく定義すれば十人十色の看護が存在しますが、病棟においては、おおむね「患者が元の生活レベルにまで戻っていけるように援助する」ということが、看護の包括的な定義になるのではないでしょうか。

 

2、看護観とは

上記で十人十色の看護が存在すると述べましたが、まさにこれが「看護観」です。看護観というのは、「看護に対する考え」であるため、たとえば、「笑顔を絶やさない」、「思いやりの心で接する」、「安心感を与える」、「相手の立場に立って行動する」なども立派な看護観です。ゆえに、看護観に正解も不正解もありません。

 

漠然と「こうしたい」という想いはあっても、「なぜそうしたいのか」、「どのように支援したいのか」など、具体的な想いは意識して考えなければすぐに忘れてしまいます。それゆえ、初心を忘れないように、また、具体的な看護への想いを忘れないようにするために、多くの教育機関・医療機関が、レポートや作文、小論文という形で提出を義務づけているのです。

 

2-1、自分の看護観とは?

自分の中で「こうしたい」という漠然な気持ちを持っていても、レポートなどでは読み手に正確に伝えなければいけないため、具体的な内容でなければいけません。では、どのように具体的な内容にすればよいのでしょうか?

 

まずは一度、自分がなぜ看護師の道を歩もうとしているのか(歩んでいるのか)など、軸となる看護観を思い返し、次にその看護観と関連の深い出来事を振り返ってみましょう。

 

まずは以下のように、看護師の志望動機や目標などを思い返してみてください。

 

・なぜ看護師になろうと思ったのか?

・どんな看護師になりたいのか?

・患者さんに対してどのような気持ちがあるのか?

・患者さんの対してどのような援助がしたいのか?

 

次に、それらの気持ちが芽生えた、または促進させた出来事を振り返ってみましょう。

 

・人間の生死に触れる

・理想と現実のギャップ

・患者家族の苦難や絶望

・患者の支援に貢献できた例

・患者の支援に貢献できなかった例

・同業者の行動をみて感じたこと など

 

3、レポートの構成

看護観に関するレポートは、文字数が多い場合には、段落に分けて書いていきます。構成はさまざまありますが、最も簡単なものとして、①看護観(簡略的)②経験・事例③看護観(具体的)④今後の試み、の4の項目を骨組みがあります。

 

500文字以上の文章の場合、この4つの項目に沿って書いていけば、途中で混乱することなくスムーズに書けるため、書き方が分からない方は、この構成に沿って書いていきましょう。

 

①看護観(簡略的)

まず始めに、たとえば、“その人らしさを生かした看護を行うことが私の看護観である。”というように、自分の看護観を端的に述べましょう。こうすることで、読者にとって分かりやすい内容になり、それ以降の文章に入っていきやすくなります。もちろん、最初に看護観を述べる必要はなく、次の経験・事例から書き始めても問題はありませんが、読みやすくするなら、看護観を先に述べる方が有効です。

 

②経験・事例

次に、自分が実際に経験したことについて書いていきます。ここでの注意点は、前段落で示した看護観、“その人らしさを生かした看護を行うこと”に沿った内容(なぜそうしようと思うようになったのか、など)を、経験を踏まえて書かなければいけません。つまり、看護観の補足的内容が当段落にあたります。また、文字数が長い場合には、一人の患者に絞った事例などを述べることで、充実した内容になります。

 

③看護観(具体的)

次に、冒頭で述べた看護観を具体的に書いていきます。冒頭で述べた看護観、“その人らしさを生かした看護を行うこと”をさらに具体的に説明するために、“患者の心身の状態や病状は一人一人違うため、各患者の特徴や生活背景、ペースやタイミング、その日の体調や天候など実施する環境も考慮した個別性のある看護を行うこと”のように書いていきます。

 

④今後の試み

最後に、自分の看護観を踏まえた上で、今後はどのようにしていきたいか、試みや目標を書いていきます。ここでも“その人らしさを生かした看護を行うこと”に沿った内容でなければいけません。

 

3-1、構成の例

上記で解説した4つの段落は、1000文字程度のレポートでは以下のようになります。

 

 

[①看護観(簡略的)]

私の看護観は、対象がどのような状況であっても、その人らしくいきていられるようにサポートし、その人らしさを生かした看護を行うことである。

[②経験・事例1]

私がこの看護観を抱くようになったのは、実習で受け持ったA氏との関わりからである。A氏は病院に行くことが嫌いで自宅で嘔吐を繰り返していたが、受診もせずに過ごしていた。その後、嘔吐を見られてから20日後に外来を受診し、胃癌と肝転移と診断された。そして、化学療法目的で入院となり、入院翌日から化学療法が開始された。

[②経験・事例2]

私はA氏の状態が終末期にあたるため、受け持ち時はどうA氏と接してよいか分からず、A氏のヘッドサイドに足を運ぶことしか出来なかった。そのため、A氏の思いや特徴、A氏らしさを捉えることが出来ない状態であった。その後、訪室の回数を増やし、コミュニケーションを図るように関わった。すると、A氏の気持ちや思いに少しずつだが気付くことができるようになっていた。

[②経験・事例3]

ある朝、訪室するとA氏はベットに座っていた。「今日は遠くまで洗面に行ったのですか」と聞くと「そうだな、そろそろ行くか、頭でも洗いに」と点滴スタンドを押し洗面所へ行き、固定石鹸で頭を豪快に洗っていた。「夏場はよく公園の水道でこうやって頭を洗っていたよ」と言い、「さっぱりした」という発言が聞かれた。その姿や表情、発言はまさにA氏本来の姿だと感じた。そこで、A氏はベット上での洗髪よりも、A氏らしさを考え、自分で洗髪できるようにサポートする方法を計画した。後日、A氏に洗髪を促すと「こんな寒い日に洗わないよ」ときっぱり言われた。私は、清潔保持とA氏にさっぱりしてもらいたいと考えていた。しかし、その日は朝から曇り空で天候まで考えていなかった。私は援助が単なる自己満足の押し付けになってしまったと気付いた。

[③看護観(具体的)]

援助を行うにしても、対象は一人一人違う。その対象の特徴や生活背景なども把握し、対象のペースやタイミング、その日の体調や天候など実施する環境も考慮した個別性のある看護ができなくてはいけない。また、援助の必要性を説明し、対象が納得してくれることが大事であるとA氏に気付かされた。

[④今後の試み]

今後、看護者としての専門的な能力だけでなく、一社会人としての、学問、知識を広く身につけていきたい。また、芸術・文化に関する教養も高め、豊かな心やたしなみを持った人に成長していく必要性を感じた。そして、今までの学びや体験を最大限に活かし、その人らしい人生を全うできる対象に合った看護を行い、対象を支えていきたいと思う。

 

出展:第1回 全国看護学生作文コンクール 啓明書房賞

 

なお、200文字~400文字程度の短文の場合には、②経験・事例の部分を端的にまとめて書きましょう。そうすることで、短文であっても非常に質の高い文章に仕上がります。

 

4、看護観の書き方のポイント

作文・小論文や課題レポートなどで自身の看護観を書く際、ダラダラと書いてしまっては良い文章に仕上がりません。

 

そこで、「想いを明確にすること」「自分本位にならないこと」「一貫した内容で書くこと」「主観的に書くこと」の4つのポイントを抑えることで、質の高い文章に仕上げることができるため、これらのポイントをしっかりと抑えておきましょう。

 

4-1、想いを明確にすること

看護観を相手に伝える際、最重要となるのが「明確化」です。特に、①なぜ患者を支援したいのか、②どのように患者を支援したいのか、この2つの事柄を具体的かつ明確に示すことが重要で、文字数が多くなればなるほど重要度は増していきます。

 

さらに言えば、①何を、②誰に、③どのようにしたいのか、④(それは)どのようなプラス効果をもたらすのか、⑤なぜそうしようと思ったのか、の5点を具体的に述べると、読み手にとって分かりやすく、自分の看護観を正確に伝えることができるため、必ず具体的に説明してください。

 

4-2、自分本位にならないこと

①なぜ患者を支援したいのか、②どのように患者を支援したいのか、などを考える際、それらは自分のみを軸として考えてはいけません。

 

自分が「こうしたい」と思っていることでも、それは患者にとって迷惑なことかもしれません。迷惑であればいくら頑張っても自己満足にしか過ぎません。それゆえ、必ず対象のことを優先した内容にしてください。

 

4-3、一貫した内容で書くこと

文字数が多くなればなるほど、伝えたい看護観と異なる話を述べてしまうことがあります。そうすると、ただただ話が長いだけで、内容が薄くなってしまいます。文字数が多くなると特に、経験・事例の話が長くなってしまいます。

 

その際に、話が脱線しやすく、そうなってしまっては、肝心の看護観が読み手に伝わりにくくなってしまいます。それゆえ、経験・事例の段落は特に、伝えたい看護観に関連の深い、一貫した内容にしてください。

 

4-4、主観的に書くこと

稀に、“看護師の在り方”のように、客観的に書く人がいますが、看護観とは、「自分にとって看護とは何か」であるため、“看護師とはこうあるべきだ”というような内容は論外です。必ず主観的に書くようにしてください。

 

4-5、独自性を出すこと(応用編)

就職や転職の時には特に、看護観に限らず、「独自性」というものは評価の対象になります。看護観ではよく、「笑顔を絶やさない」「思いやりの心で接する」「安心感を提供する」「相手の立場に立って行動する」といった考えを述べる人がいます。

 

看護観は十人十色であるため、「笑顔」「思いやり」「安心感」「相手の立場」といった看護観がダメだと言っているわけではありません。しかしながら、それらのキーワードを使う人が多いため、独自性を出すのなら、違った言い方をするのが得策です。

 

4-6、言葉の意味を具体的に説明すること(応用編)

たとえば、あなたの看護観が「寄り添う」であった場合、何に寄り添うのか分かりません。それが「気持ち」であった場合でも、どのような気持ちなのか分かりません。

 

500文字以上の長文であれば、経験・事例など文脈から意図が読み取れますが、面接時の口頭や200文字以下の短文の場合には、疑問が残ってしまうことがあるため、聞き手・読み手に正確に伝えられるよう、自分の看護観が「寄り添う」のような曖昧なキーワードの場合には、言葉の意味を具体的に説明しましょう。

 

まとめ

ここまでしっかりと読んだ方は、看護観とは何か、レポートの構成や書き方など、理解できたと思いますが、看護やレポートの“本意”は絶対に忘れないようにしてください。看護師の仕事は自己満足になりがちで、親切の押し売りが多いのが実情です。

 

ですが、看護というのは、患者の事を第一に考え援助していくことであり、レポートは看護観を振り返る目的として行われます。そのため、レポートを通して自分の看護観を再認識し、作成後はしっかりと心に留め、初心を忘れずにケアを行っていってください。

看護研究(論文)のテーマの決定法と効果的な書き方

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看護研究

どのように看護研究を進めたらいいのか、どのように論文を書けば良いのかなど、初めての方は特に試行錯誤を繰り返すことでしょう。特に論文の執筆においては、学術的な形式に沿って読者にとって分かりやすい研究内容を示さなければいけないため、非常に難しく多くの時間を必要とします。

 

ここでは、悩める医療関係者のために、看護研究の論文の形式や書き方のポイントなど、包括的に詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。

 

1、看護研究とは

看護研究は、看護学における研究・発表のための活動であり、調査・実験を経て、科学的根拠に基づいた研究成果を医療関係者ならびに一般人に公表し、より良い看護実践のための知識・理論の習得や、看護全体における質の向上を図るなどの目的で実施されています。

 

看護の分野において多大な功績をあげたイギリスの看護教育学者、フローレンス・ナイチンゲールが中心となって1800年代に看護研究の重要性を説き、現在までさまざまな研究がなされてきましたが、医療技術の発展が著しい昨今、看護研究の重要性はますます高まっています。

 

なお、看護研究の具体的な目的は以下の挙げる4項目です。中でも、実践に際する看護の質の向上が最も期待される目的と言えるでしょう。

 

≪目的≫

・より良い看護実践のための知識や理論を手に入れること。

・研究によって得られた知識や理論を、看護実践に活かし、看護の質を高める。

・専門職としての看護師の資質の向上を図る。

・看護を学問として確立させ、看護学に社会性を持たせる。

 

2、看護研究の構成

研究結果の構成は、投稿する学術誌によって異なることが多いものの、基本的には「テーマ」「序論」「方法」「結果」「考察」「要約」「文献」という骨組みの中で記載していきます。また、以下のように、それぞれの骨組みに対して、多くの項目があり、これらが一体となって論文が完成します。

 

テーマ(タイトル)

・誰にどんな目的で何を明らかにしたのか

序論

・背景:対象者の特徴、現状、社会情勢

・動機:なぜ研究をしようと思ったのか

・意義:研究する理由、研究のメリット

・文献検討:先行研究がどこまで進んで、どこがまだか

・研究目的:研究疑問に合わせて何を明らかにするか

方法

・対象者:対象者の条件、事例紹介

・データ収集:データの収集方法、項目の作成方法

・分析方法:データをまとめた具体的な分析方法

・研究期間:データを収集した期間

・倫理的配慮:対象者の権利擁護、実施した安全確保の対策

結果

・対象者:性別や年齢など基本属性、対象者数

・分析の結果:図や表をもとにした分かりやすい分析結果

考察

・結果までの内容の概略を示す

・結果の解釈や私的・個人的な意見

・先行文献との比較

・結果からみる今後の課題

要約

・研究で明らかになったことを簡潔にまとめる

文献

・本文で引用した文献のリスト

 

3、看護研究の書き方

上記の構成をもとにして、どのように書けばよいのか、項目ごとにポイントや注意点などをご紹介します。看護研究は、医療関係者はもちろん一般の人にも分かるよう、内容を明確にし、特に研究の中心となる「方法」と「結果」は充実した内容でなければいけません。

 

≪全体の注意点≫

・研究が科学的根拠に基づいていること。

内容が薄い、または根拠に欠ける研究は論外です。必ず、根拠に基づいた研究内容でなければいけません。

 

・用語を統一し使用すること。

類似用語、たとえば「看護ケア」とすれば「ケア」「看護援助」「看護支援」など、類似用語を用いず、「看護ケア」と統一して記述してください。

 

・構成が遵守されていること。

独自性を考慮するため、すべてを遵守する必要はありませんが、“ある程度”構成を守って執筆する必要があります。

 

3-1、テーマ(タイトル)

テーマは看護研究における柱であり、読まれるかどうかが、ここで決まると言っても過言ではありません。それゆえ、以下のようなポイントを抑えてテーマを決定する必要があります。

 

・内容を的確に示すこと

・重要なキーワードを含めること

・なるべく簡潔であること

・読者の興味をそそること

 

なお、テーマを決定する際に、「~について」「~に関する研究」という表現は論文においてあまり相応しくありません。それゆえ、「~が心身に及ぼす効果」「~に関連する要因」「~と~との比較」「~の重要性の認識」など、内容に沿った的確かつ具体性を持った末文にし、研究において重要なるキーワードを必ず入れるようにしてください。

 

≪テーマの例≫

・統合失調症患者のセルフスティグマが自尊感情に与える影響

・地域の虚弱高齢者における純音聴力ときこえの自己評価の関係

・精神科における患者・看護師関係形成に向けた介入尺度の開発

・塩を用いた足浴が睡眠脳波および体温・自律神経活動に及ぼす影響

・尿失禁を有する高齢者の尿意の訴えに基づいた排尿援助の効果

・“否認”という無意識の患者心理理解における看護師の思考過程の分析

・使用後紙おむつの臭気に対する発酵資材の消臭効果の検討

・精神看護学実習における「学び」の内容分析と看護過程の有効性

 

3-2、序論

序論では、一般的に「はじめ」と項目立て、研究の背景や動機、意義、目的など、実施した研究の重要性や仮説を示します。序論は、読者が読み進めるかを決定する重要な項目であるため、魅力的な内容になるよう心がけて書いていきましょう。

 

項目 注意点/ポイント
背景 ・文章を論理的に構成すること

・背景となる事項を目標や論点に関連づけること

動機 ・研究者本人の問題意識を明確にすること

・仮説となる事項を明確に示し、目的に関連づけること

意義 ・専門外の者が読んでも研究の意義が伝わる内容であること

・この研究を行うことの重要性を説得的に述べること

・研究する理由やメリットを明確に述べること

文献検討 ・文献検索の方法(データベース名・キーワード・年代など)や結果を簡潔にまとめること

・関連分野の主要な先行文献を引用すること

・先行文献を適切に要約すること

・これまでに何が分かっていて、何が分かっていないのかを明確に述べること

研究目的 ・この研究が、どのような新しい知見を加えるか明確に述べること

・目的・仮説が論理的に飛躍・矛盾なく提示すること

・研究の実行範囲を具体的に絞り込むこと

・誰を対象に、何を、どのように調べれば良いかが読み取れる内容にすること

 

序論を魅力的な内容にするために最も重要となるのが「動機」と「研究目的」です。読者がまず目を通すのが当2項であり、“なぜこの研究が必要なのか”、“どのような効果が期待できるのか”を明確に示すことが大切です。

 

3-3、方法

方法では、対象者、データ収集方法、分析方法、研究機関、倫理的配慮などを記述しますが、科学的根拠に基づいていない場合や、実施した内容が乏しい場合は論外です。必ず、根拠に基づいた十分なデータをとった後に、執筆に移らなければいけません。

 

項目 注意点/ポイント
対象者 ・研究対象となるものを明確に定義すること

・対象者の選定を研究目的に合致させること

・対象者数の算定根拠を明確に示すこと

データ収集方法 ・質的・量的研究などデザインの名称を明記すること

・その研究デザインを研究目的に合致させること

・収集するデータの内容(測定項目など)を明記すること

・そのデータを収集することを研究目的に合致させること

・質問紙の様式など、必要な資料を添付すること

分析方法

 

・収集されたデータの量や性質に即した分析方法を用いること

・分析方法が仮説の可否を検討する上で適切であること

・研究の妥当性(有効度・正確度)や再現性を具体的に評価すること

研究機関

 

・データを誰がどこでどのように収集したかを明記すること

・選定した研究機関を研究目的と合致させること

・データ収集の開始・終了時期、その期間の長さを適切に記述すること

倫理的配慮

 

・どのような倫理的問題が想定されるかを正しく記述すること

・倫理的問題の発生を回避するための適切な方策を述べること

・万が一、倫理的問題が発生した場合に講ずるべき対処法を述べること

・同意書の様式など、必要な資料を添付すること

 

方法で最も重要となるのが「データ収集方法」と「分析方法」です。当項目を執筆する際、研究者本人は具体的なデータを収集し分析しているため、まとまりが悪く読解が困難であっても理解できますが、読者は初見であるため、必ず読者にとって分かりやすくなくてはいけません。

 

なお、「データ収集方法」には、質問紙法、面接法、観察法、実験法などがあり、「分析方法」には、量的分析、質的分析などがあります。

 

≪データ収集方法≫

・質問紙法

対象者の心の状態や変化を、アンケートによって直接捉える方法。費用が安価で容易に実践できるものの、調査時における対象者の心の問題や考え方が反映されるため、時として“本音”を聞き出せないというデメリットが存在します。また、的確なデータ収集のためには膨大な数の対象者が必要になります。

 

・面接法

質問を通して対象者の心の内面を調べる方法。回収率が高く回答漏れが少ないため質の高いデータを収集できるものの、時間や費用コストがかかったり、対象者の確認ができるため、対象者にとってマイナスとなる質問に対して“本音”を聞き出せないといったデメリットがあります。

 

・観察法

対象者の行動(発言、態度・表情・姿勢、目に見える動作など)を観察・記録する方法。対象者に負荷がかからず、コストが安い割に膨大なデータを収集することができますが、観察内容の解釈に個人差があるため、正確性に欠ける可能性があります。

 

・実験法

AはBにどのような効果をもたらすのか、AによってBが起こるのではないか、といった因果関係の仮説を検証するための方法。正確性が高く、先行研究の蓄積を促進できるため、実験法は多くの研究で実施されています。ただし、検証の状況設定が明確でなければ、正確性に欠ける、または実践に応用できないデータになってしまうため、入念な準備が必要です。それに伴い時間や費用コストがかかります。

 

≪分析方法≫

・量的分析

数字で表した統計データを分析する方法。量的分析には、名義尺度(男女・血液型など)、順序尺度(悪化・不変・改善などの判定)、間隔尺度(温度、湿度、知能指数などの数値差)、比例尺度(身長・体重、血圧などの数値差、数値比)があります。

 

・質的分析

書き言葉、話し言葉、写真、絵、ビデオ、音楽など数量によって客観的に評価することが難しいデータを分析する方法。通常、仮説の検証ではなく仮説の生成を目的として行われ、主観的な意味内容に焦点を当てて分析します。

 

3-4、結果

項目 注意点/ポイント
研究結果 ・対象者の基本属性(性別や年齢)、対象者数を明記すること

・データ分析の結果を図や表を用いて(あれば)分かりやすく記述すること

・実際に回収できたデータ数とデータとして使用できる数(有効回答数)を示すこと

・統計解析結果(検定値、統計的確率など)を細かく明示すること

 

結果は論文での柱となる項目であるため、研究から分かったことを具体的に示さなければいけません。図や表などを用いる場合は、それらのみで構成するのではなく、文章でしっかりと示し、また、主観的ではなく客観的なデータを提示してください。

 

3-5、考察

項目 注意点/ポイント
研究の考察 ・仮説の立証や論点にどう決着をつけたかを議論すること

・研究目的に対する結果と仮説を踏まえ、効果や今後の対策を記述すること

・先行研究の成果もふまえて結果を解釈すること

 

論文の上で最もミスを犯してしまいがちなのが「考察」です。「結果」と「考察」の区別がつかず、結果で示さなければいけない内容が「考察」にも記述されているというのがミスの一例です。たとえば、「結果」に量的な集計結果が図表で載せてあり、「考察」に図表にのりきれなかった自由回答を紹介している場合です。

 

「考察」は、“考えて察る(しる・みる)”というように、結果から分かったことを(結果の範囲内で)、“主観的”な視点で論じ、結果から生じた問題点をもとに今後の課題を提示します。なお、「考察」で重要となる事項は以下の3つです。

 

・結果の解釈

仮説(予想)どおりの結果になったか、なぜそのような結果になったと考えられるか、などを記述します。過度な推測や断言は推奨されず、また、結果で記述していないことを当項で触れてはいけません。

 

・結果がもたらす貢献度

当項では、結果が理論や実践の改善にどのように役立つのか、または研究の限界を記述します。単に「~は~に有効である」というように薄い内容にならないよう、臨床現場において“実践的”かつ“具体的”な内容を心掛けてください。

 

・結果から生じた問題点と今後の課題

仮説(予想)と同様の結果とならなかった理由は何か、欠点は何か、といった問題点や、それらを踏まえた今後の課題を提示します。なお、研究方法の限界についても述べておきましょう。

 

3-6、要約

項目 注意点/ポイント
研究の要約 ・研究内容を包括的かつ端的に述べること

・研究目的と目標を簡潔に説明すること

・方法、結果(箇条書き)、結論、意義を簡潔に記述すること

 

読者にとって「要約」は「序論」の次に目を通すところであり、ここで読む価値があるか判断します。それゆえ、報告の全編を滞りなく端的かつ分かりやすく記述することが大切です。

 

理想的な「要約」は、「序論」で提起した問題を一言で解決することです。長々と記述せず、端的にまとめましょう。

 

3-7、文献

項目 注意点/ポイント
参照文献 ・第三者が文献にあたるのに必要な情報を漏れなく記述すること

・(学術雑誌を特定する場合)投稿規程に定められた形式に合致させること

 

当項での注意点は、参照した文献をすべて示すことのみです。それゆえ、記述に際してそれほど心配することはないでしょう。先行研究などを参照して、形式に沿った形で記述してください。

 

4、執筆に際するポイント

執筆にあたって特に重要となるポイントは3つあります。これら3つのポイントは必ず抑えておきましょう。

 

①魅力的な内容に

執筆に際して、特に気をつけなければいけないのが、“魅力的な”内容であるかということです。確かに、論文の構成を守ることも大切ですが、それよりも、読者にとって読みやすく、臨床において“実践的な”内容であることが重要視されます。

 

②読む順番を理解する

読者の多くは、「序論」→「要約」→「方法または結果」→「結果または方法」→「考察」→「文献」という順番であり、必ずしも上から下に読み進めるというわけではない、ということを覚えておきましょう。それゆえ、まずは「序論」と「要約」の項目を具体的かつ明確に記述することを心掛けてください。

 

③さまざまな論文を多読する

参照する先行研究はもちろん、領域外の論文も数多く目を通しておきましょう。そうすることで、適切な構成が分かったり、魅力的な文の書き方が分かってきます。多読なくして質の高い論文を書くことは不可能と言っても過言ではないため、行き詰っている方は時間を割いてでも、さまざまな論文を読んで、書き方を学びましょう。

 

5、先行研究の文献検索

文献を検索せずに研究に着手するのは「研究倫理」に反すると言われています。というのも、すでに同様の研究が実施されている可能性があり、同様の研究を行うことで研究対象者に無用な負担をかけてしまうことになりかねないからです。

 

それゆえ、研究に着手する前に、かならず同様の研究がなされていないか文献を検索する必要があります。

 

なお、先行研究の検索には、

 

①日本看護研究学会(http://www.jsnr.jp/search/)

②日本看護協会(https://www.nurse.or.jp/nursing/education/library/sakuin.html)」

③CiNii(http://ci.nii.ac.jp/)

④MedicalFinder(http://medicalfinder.jp/)

などを活用しましょう。

 

6、日本看護研究学会

最後に、論文と関わりの深い日本看護研究学会を簡単にご紹介します。日本看護研究学会は、看護学の教育、研究および進歩発展に寄与することを目的に設立され、具体的には以下に挙げる様々な事業の目的を達成するために運営されています。

 

≪目的≫

①学術集会の開催

②学会誌の発行

③学術講演会の開催

④奨学会事業

⑤学会賞・奨励賞事業

⑥研究倫理に関する啓発事業

⑦国際活動推進事業

⑧公開講座等の社会貢献事業

⑨関係学術団体との連絡、提携

⑩その他本法人の目的を達成するために必要な事業

 

≪会費≫

・入会金:3000円

・年会費:8000円

 

≪入会するメリット≫

・学術集会の参加費用が割安になる

・研究発表や論文投稿が可能

・学術の動向がわかる

・メール配信により本会の情報を受け取れる

 

入会に際して、評議会の推薦が必要です。それゆえ、誰でも入会できるわけではありませんが、入会することにより、上記のような様々なメリットがあるため、看護研究者はもちろん、学術に関して興味のある方や、さらなる知識の習得を望んでいる方は、入会することをお勧めします。

 

まとめ

看護研究の論文制作は、初めての方にとっては非常に困難なものです。しかしながら、多くの論文を読むことで、自然と書き方やポイントなどが分かってきます。論文を読む時間が長ければ長いほど、質の高い論文を制作することができ、さらに自身の知識習得にも繋がります。

 

看護研究は、今後の医療技術の発展を担う、重要な役割を持っており、多くの医療関係者が参考にするものであるため、質の高い論文を制作するために、まずは時間を費やし、書き方のポイントや注意点を完璧に理解した上で、完成へ向けて取り組んでください。また、見直しや校正も入念に行いましょう。

大腿骨頚部骨折の看護計画|症状、手術、看護問題・過程

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大腿骨頚部骨折

老化によって骨がもろくなってしまった高齢者に多く発症する、大腿骨頸部骨折。整形外科で多く見られる症例のひとつです。毎年、10万件以上発症していると言われており、高齢化によって増加の一途を辿っています。

 

この骨折をきっかけに筋力が低下し、寝たきりになってしまうこともあり、高齢者のADLを大きく下げる要因ともなっています。

大腿骨頸部骨折は、受傷部の治癒だけでなく、治癒後の患者の生活を守るための看護が必要となります。

1. 大腿骨頚部骨折とは

大腿骨頸部骨折は、大きく2つに分けられます。大腿骨頸部内側骨折と、大腿骨頸部外側骨折です。

 

大腿骨頸部内側骨折

大腿骨頸部内側骨折は、関節の中で骨折が起こる場合のことを言います。内側骨折は、血液循環が悪いため、骨癒合が得られにくいとされます。しかし、関節内で骨折が起きているため、骨折部周囲のスペースが少なく、出血が少ないのが特長です。

 

大腿骨頸部外側骨折

大腿骨頸部外側骨折は、関節外で骨折が起こる場合のことを言います。外側骨折は、内側骨折に比べ骨癒合が得やすいとされます。しかし、内出血が多く、受傷した患者の全身状態に影響を与えてしまう可能性があります。

 

2. 大腿骨頚部骨折の症状

大腿骨頚部骨折を起こすと、股関節周囲に痛みが出てきます。ほとんどの場合、立位をとることや歩行することができなくなりますが、軽度の場合だと歩行ができることもあります。

 

また、自分で足を動かすことができず、受傷した側の脚の長さが短くなり、外向きになったような形になります。

外則骨折の場合だと、内出血を起こしている場合もあり、腫張や皮膚色の変化が見られることもあります。

 

3. 大腿骨頚部骨折の手術方法

大腿骨頸部骨折の治療は、手術や麻酔などがリスクになる患者を除けば、多くの場合手術療法が選択されます。手術方法は、大きく分けて、骨接合術と人工骨頭置換術の2つです。

 

骨接合術

骨接合術は、金属でできたプレートなどの器具を用いて骨折部を固定する方法です。この手術方法は、骨折部が大きくずれている場合には、あまり向きません。骨折部のずれが大きいと、大腿骨頭に血液が回らず、骨頭壊死などの合併症を引き起こす可能性があります。

骨折部のずれが小さい場合に選択されるのが、骨接合術です。

 

人工骨頭置換術

骨折部のずれが大きい場合、上記に書いた合併症の発症を避けるため、人工骨頭置換術が選択されます。

人工骨頭置換術は、骨折した部分(頸部〜骨頭)を切除して、金属やセラミックスなどで人工的に作られた股関節に置き換える手術方法のことです。骨接合術のような合併症が起きることは避けられますが、侵襲は大きくなり、手術時間が長くなってしまいます。

また、術後に脱臼の可能性があったり、長期使用時は人工股関節の耐久性も考える必要があります。

 

4. 大腿骨頚部骨折患者の看護計画

大腿骨頚部骨折を発症する患者の多くは、高齢者です。加齢に伴う身体の変化や、術後のADLの維持も見据えて、看護計画を立てていかなければなりません。特に、寝たきりになってしまうことを予防するため、早期にリハビリが開始されます。リハビリに対する意欲や、継続できるような精神面へのサポートも重要です。

 

アセスメント・観察ポイント

以下のポイントに沿ってアセスメントを行います。

・患者背景(既往歴や患者の疾患・治療に対する認識など)

・全身状態(手術前後におけるバイタルサインや栄養状態など)

・局所状態(骨折による症状の有無)

・患者の認知、生活状況、周囲のサポートなど

骨折に伴う身体症状の変化だけではなく、受傷したことに対する受け入れ状況やリハビリへの意欲を把握しておく必要があります。患者が受傷し入院・治療していることをなかなか受け入れられなかったり、リハビリへの意欲が低下した状態だと、回復が遅くなってしまい、結果的に患者のADLを大きく低下させてしまう原因になってしまいます。

また、退院後は家族などキーパーソンのサポートが必要になってきます。自宅での生活状況や、現時点で必要な支援の種類、また支援を受けられる状態であるか(自宅近くにキーパーソンがいるかなど)を早期に把握し、生活環境を整えられるよう調整をしていくことも必要です。

 

看護目標

看護目標としてあげられるものは、主に以下の内容の通りです。

 

・疼痛により安楽が保てない

・手術に対する不安

・環境の変化によるせん妄などの認知の変化のおそれ

・疼痛や安静の保持のために日常生活行動が取れない

・同一体位による廃用症候群のおそれ

受傷直後〜手術後にかけて、疼痛による影響は大きく出てきます。疼痛の程度により患者の不安の程度も変化し、術後のリハビリにも影響してきますので、痛みへのケアと同時に、精神面へのアプローチも必要です。

また、高齢者は環境の変化に対する適応力が低く、入院という環境の変化によって、せん妄や認知症のような状態を呈してしまう可能性が考えられます。環境調整やコミュニケーションにも配慮しましょう。

 

まとめ

大腿骨頚部骨折は、治療に手術という侵襲を伴います。また、歩行するのに重要な部分の受傷であることから、患者は思うように動けないことへの苛立ちや不安を抱きます。身体面へのアプローチだけでなく、精神面へのアプローチも同時に行うことで、より元の形に近い状態で日常生活へ戻れるよう、支援していくことが大切です。

看護師のアプローチ次第で、患者が寝たきりになることを予防し、ADLの大幅な低下を防ぐことができます。より広く、多角的な視点で、患者を捉えて看護に活かしていきましょう。

脳梗塞の看護|急性期と慢性期における看護計画とは

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脳梗塞

脳疾患には、脳血管疾患、脳腫瘍・頭部外傷・炎症・変性疾患・奇形などさまざまなものがあります。脳神経外科を理解していく上で、脳梗塞は代表的な疾患の一つです。

 

脳を大きく分けると、大脳・間脳・小脳・脳幹に分けられます。大脳をさらに分けると、前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉となります。

 

各々が障害されると、一例としては

 

前頭葉障害→人格が変わる

頭頂葉障害→体が動かなくなる

後頭葉障害→目が見えなくなる

側頭葉障害→記憶ができなくなる

 

などの障害を抱えることになります。

 

当ページでは、脳梗塞を発症してしまった患者さんに対して、どのような看護計画を立案し、看護過程を展開していくのかを詳しく紹介していきます。脳神経外科の経験がない、または経験が浅く自信がない方は特に、しっかりお読み頂き、確かな知識を得て日々の看護ケアに活かしてください。

 

1.脳梗塞とは

脳の血管が詰まり、何らかの原因で脳の血のめぐりが、正常の5分の1から10分の1くらいに低下し、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥ることを言います。

この状態がある程度の時間続くと、血液が流れないのでその部位の組織が壊死してしまいます。

 

脳梗塞と言っても、様々な病態がありここでは大きく分けて3つに分類します。

 

1-1.アテローム血栓性脳梗塞

脳や頸部の比較的太い血管の動脈硬化が原因で引き起こされます。動脈硬化は、加齢・高血圧・糖尿病・脂質異常症、いわゆる生活習慣病と言われているものが原因としています。その部位の血管が詰まる、血流が悪くなる、またはそこにできた血栓がはがれて流れていき、脳の血管に詰まってしまう状態をいいます。

 

1-2.心原性脳塞栓症

心房細動や心臓弁膜症、心筋梗塞などのために心臓のなかに血栓ができて、それが脳に流れてしまい、詰まってしまう状態をいいます。

 

1-3.ラクナ梗塞

加齢や高血圧が原因で、脳の深部にある直径が1mmの、半分~1/3の細い血管が詰まり、その結果直径15mm以下の小さな脳梗塞ができた状態をいいます。

 

脳卒中の3/4は脳梗塞で、現在の日本ではアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症の増加が見られています。

 

2.脳梗塞の症状とは

具体的な初期症状は、体の一部が麻痺する・重いめまい・手足に力が入らない・強い頭痛がする・言葉がもつれる、言葉が出てこないなどがあります。このような一時的な症状をまとめて、一過性虚血発作といいます。

 

このような初期症状を見逃してしまうと、意識障害・片麻痺・四肢麻痺・片側の手足や顔面の感覚障害、言語障害、失語症などが発症してしまいます。

病状によっては、健忘症・同名性半盲・複視・ふらつき・嚥下障害などだけの場合もあります。

 

3.脳梗塞の検査方法

検査は、血液検査などの臨床検査、心電図、内科的な神経学的な診察を行いますが、脳梗塞の診断においては、頭部のCT・MRIの撮影、胸部のX線撮影などの画像検査が重要となります。特にCTとMRIは非常に有用です。

 

3-1 脳疾患におけるCTとは

CTの画像検査では、骨は白く、水は黒く、脳はその中間の色々な濃さの灰色に見えます。この検査が最も威力を発揮するのは、脳出血、くも膜下出血などの出血がある場合です。新しい出血はCTでは白く見えるため、はっきりとわかりやすいのが特徴です。

 

脳梗塞の場合は、血管が詰まり、その先の脳細胞が死んでしまう状態なので、脳組織は黒く見えます。CTでわかるようになるまでには、少なくとも数時間はかかります。

具体的な例を挙げると、半身の麻痺が起こり1時間後に、病院でCT検査をして何もなければ、臨床症状からも脳梗塞の可能性が高いという診断になります。

 

脳出血や脳梗塞はどちらも、起こって数時間後から、頭の周りが次第に脳浮腫となり、CTでは黒く見えます。脳梗塞の場合は、どちらも黒く見えるので、病巣全体が大きくなって見えます。そのため、経過を見るために入院中に度々CT検査をしていくことになります。

 

3-2 脳疾患におけるMRIとは

CTと同じように頭の中の構造を見る検査ですが、X線の変わりに磁場を使います。強い磁力をあてると、人間の体の細胞を作っている分子に、微妙な変化が起きるので、その変化を断層写真にします。

 

MRIのデメリットは、磁場を利用しているので金属を身につけることができない、ペースメーカーを埋め込んでいる場合は絶対に使用できないことがあります。また検査自体の時間が長いため、患者の負担感が強いことが挙げられます。

 

MRIのメリットは、骨の影響を受けないことがあります。小脳や脳幹は、厚い骨に囲まれているので、X線の乱れが起こりCTでははっきりしないことが、MRIでは病変がよくわかります。

CTでは古い脳出血や脳梗塞は同じように黒くなりますが、MRIでは脳梗塞をより強調してとることができるので、はっきり区別することができるようになります。

 

4.脳梗塞の食事とは

脳梗塞後の食事療法は、生活習慣病予防・メタボリックシンドローム症候群予防・動脈硬化を防ぐことが大事となります。そのためには、血液を綺麗にする食品をすることが重要となります。

 

具体的には

  • 高血圧の原因になる塩分を控えること
  • 動脈硬化の原因である、脂っこい料理、コレステロール、糖分などを過剰に摂取しすぎないようにすること
  • 喫煙を絶対にしないこと。20~30%再発の危険が高まると言われています
  • 適度な水分補給を行うこと。睡眠中も汗をかき血液が固まりやすくなるので、寝る前にコップ1杯飲むのが良い

 

脳梗塞の食事といっても基本的には、規則正しい食生活、ストレスを溜めない、十分な休息、水分をしっかり摂ることが大事です。

 

5.脳梗塞の看護計画とは

看護計画を立案する前に、急性期看護と慢性期看護は各々を別の視点で考えなければいけません。治療や観察ポイントで各々見てみましょう。

 

急性期は全身状態が不安定です。発症からどの程度の時間が経過しているかが非常に重要です。

 

発症から6時間以内では、血流の再開によって脳の機能が回復する可能性があるので、内科的外科的な血行再建が試みられます。さらに3時間以内では、血栓の溶解をはかる方法が有効的なため、治療が行われる場合もあります。

発症6時間後の血行再開は、著名な脳浮腫や出血性脳梗塞の原因となります。この時期は、側副血行の改善・脳浮腫の軽減・全身状態の安定を図ることが大事です。

 

一方慢性期は、再発予防・基礎疾患の治療(高血圧・糖尿病・高脂血症・不整脈)・リハビリテーションが大事になります。再発予防としては、抗凝固剤(ワーファリンなど)や抗血小板剤(塩酸チクロビシンなど)、脳循環改善剤などが投与されます。

 

5-1.脳梗塞の急性期における看護計画

広範な脳梗塞や自然再開例では、脳浮腫や出血性梗塞によって、頭蓋内圧の亢進を認めます。その結果、意識障害を伴うことが多いです。そのため、呼吸・循環などのバイタルサインを観察および看護が重要となります。病期・病態によって、治療方法は異なりますが、急性期の基本は虚血脳に関する血行の改善と脳浮腫に対して、頭蓋内圧亢進の治療です。したがって、命の危険がある状態なので、異常の早期発見をできることが看護師にとって大変重要となります。

 

看護問題としては、

・脳浮腫や出血性梗塞による生命に危険が生じる状態

とあげることができるでしょう。

 

5-2.脳梗塞の慢性期における看護計画

リハビリテーションが中心となる時期になります。急性期を脱したので、早期ADL自立と早期社会復帰を目指します。

 

最も多い看護問題としては、

  • 運動障害に関連したADL自立の困難、転倒リスク状態

とあげることが多いでしょう。

その他に、病状によって認知機能に関連した問題、言語障害、嚥下困難などがあげられます。

 

5-3.脳梗塞における観察ポイント

観察する項目は色々ありますが、大事なのは正常な状態を正しく把握することです。ここが抜けてしまうと、異常の早期発見はできません。一つ一つみていきましょう。

 

1)意識障害の有無

状態が悪化すると、意識消失や意識障害、混迷状態、認知症様の言動や行動が見られるようになります。意識レベルの評価としては、JCSやGCSを使用します。入院中の意識レベルから現在がどのような状態に変化したのかを的確に捉えることが大事です。

 

JCS指標

 Ⅰ.覚醒している(1桁の点数で表現)
0 意識清明

1 見当識は保たれているが意識清明ではない

2 見当識障害がある

3 自分の名前・生年月日が言えない

Ⅱ.刺激に応じて一時的に覚醒する(2桁の点数で表現)
10 普通の呼びかけで開眼する

20 大声で呼びかけたり、強く揺するなどで開眼する

30 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼する

Ⅲ.刺激しても覚醒しない(3桁の点数で表現)

100 痛みに対して払いのけるなどの動作をする

200 痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめたりする

300 痛み刺激に対し全く反応しない

 

GCS指標

開眼機能(Eye opening)「E」
4点:自発的に、またはふつうの呼びかけで開眼

3点:強く呼びかけると開眼

2点:痛み刺激で開眼

1点:痛み刺激でも開眼しない

言語機能(Verbal response)「V」
5点:見当識が保たれている

4点:会話は成立するが見当識が混乱

3点:発語はみられるが会話は成立しない

2点:意味のない発声

1点:発語みられず

運動機能(Motor response)「M」
6点:命令に従って四肢を動かす

5点:痛み刺激に対して手で払いのける

4点:指への痛み刺激に対して四肢を引っ込める

3点:痛み刺激に対して緩徐な屈曲運動(除皮質姿勢)

2点:痛み刺激に対して緩徐な伸展運動(除脳姿勢)

1点:運動みられず

 

2)瞳孔の評価

正常の瞳孔径は2.5mm~4.0mm、左右の大きさは同じ、丸い形をしている、瞳孔の位置は中央となります。

脳に異常が起きた場合は、

  • 瞳孔の大きさが著しく大小で異なる
  • 瞳孔の左右の大きさが異なる
  • 瞳孔の形がいびつになる
  • 瞳孔の位置が内側、外側、左右に離れている、内側に寄る、どちらかの対交反射が弱い

などの症状が見られます。

 

3)四肢麻痺の程度、麻痺の場所

四肢の動きを観察し、完全麻痺か不完全麻痺かを判断します。

 

4)血圧管理

脳梗塞に関しては、脳に血液や酸素を送らなければならないため、血圧を高く保たれます。基本は下げないと覚えておきましょう。

 

5)体温管理

38度以上の高熱を出す場合があります。クーリングや解熱剤を使用し、体温を下げるようにします。

 

6)呼吸管理

呼吸回数、リズム、性状、四肢や末端の色、チアノーゼの有無等の観察を行い、異常があり酸素飽和度が低下すると、医師に確認し酸素投与が必要となります。

 

6.ヘンダーソンについて

看護師としてアセスメントをする上で、指標を参考にすることは大変有用です。情報を整理し、正しく看護過程ができるように、今回はヘンダーソンを例にあげていきます。

 

 ヘンダーソンの14の基本的欲求とは
・正常に呼吸する。
・適切に飲食する。
・身体の老廃物を排泄する。
・移動する、好ましい肢位を保持する。
・眠る、休息する。
・適当な衣類を選び、着たり脱いだりする。
・衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に保持する。
・身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する。
・環境の危険因子を避け、また、他者を傷害しない。
・他者とのコミュニケーションを持ち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する。
・自分の信仰に従って礼拝する。
・達成感のあるような形で仕事をする。
・遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する。
・“正常”発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる。

となります。脳梗塞が発症し、どこが異常になるかによって援助方法は様々になります。

 

6-1.脳梗塞における看護ケア・看護ポイント・関連図について

上記に記載したヘンダーソンを元に看護ケアや観察ポイントをまとめてみたので、参考にしてください。

  • 呼吸困難があれば、必要時に気道浄化をし、酸素投与を検討しなければなりません。
  • 嚥下困難があれば、誤嚥をしないように食事介助を行い適切に飲食できるようにします。
  • 体動困難で、排泄に介助を要する場合も多いので介助を行います。
  • 車椅子トイレに軽介助で移動できる場合は、移動の介助を行います。
  • 睡眠障害があれば、環境調整や睡眠導入剤などを検討し休息がとれるようにします。
  • 体温が正常に保たれるように、更衣の介助や環境調整をします。
  • 身体を清潔に保てるように、全身清拭や介助浴を行います。
  • 周りの危険物を除去し、傷害をしないように配慮する。

 

脳梗塞の場合、上記のように症状が見られます。どこが障害され、看護を必要としているかは様々になります。そこで病態関連図を記載することで、問題がどこにあるかを把握しやすくなります。最初は大変かもしれませんが、ヘンダーソンを例にあげると一つ一つの呼吸や飲食などの項目に対して、正常なのか異常なのかを見極めていくことで、書いていくことができます。

 

7.まとめ

いかがでしたでしょうか。脳梗塞の看護については、急性期と慢性期に時期によって、看護計画や目標は大きく変わります。急性期は命に関わるため全身状態の管理が必要です。慢性期はリハビリテーションが主となり、早期ADL回復を目指します。

 

どちらの時期にも共通することは、異常の早期発見ができることです。早期発見ができるように、知識を深めて、日々の看護ケアに活かし実践していってください。

認知症|種類別にみる症状と看護計画・看護ケアのポイント

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認知症_看護

看護ケアの中で最も難しいとされる認知症。看護学生や臨床経験の少ない看護師は特に、ケアに関して悩むことが多いのではないでしょうか?

 

認知症患者に対して適切なケアを行うために、また、ケアによるストレスを蓄積させないために、患者の生活史や思考はもちろん、認知症に関する深い知識と理解が必要不可欠です。

 

ここでは、認知症の概要だけでなく、看護ケアについても詳しく記載していますので、認知症について詳しく知らない人、認知症ケアに不安がある人、多大なストレスを感じている人は、ぜひ最後までしっかりとお読みいただき、認知症に関する深い知識を習得してください

 

1、認知症とは

認知症とは、脳の働きが悪くなったり、細胞が壊れることで、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害、実行力障害など、生活において障害をきたした状態のことです。

 

脳機能の低下や細胞の壊死によって、生活に支障をきたし、多くの場合には永続的に症状が進行していきます。厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者のうち、約15%が認知症を発症しており、高齢化社会に伴い、10年後には日本における認知症患者が現在の1.5倍に膨れ上がると推測されています。

 

認知症は非常に身近な障害であるものの、解明されていないことが多く、未だ完治させる治療法は存在していないため、QOLの向上など、看護ケアの重要性がますます高まっています。

 

1-1、認知症の種類

認知症には大きく分けて、アルツハイマー型認知症(55%)、血管性認知症(19%)、レビー小体型認知症(18%)、その他の認知症(8%)の4つの種類があります。

 

・アルツハイマー型認知症

何らかの影響でβアミロイドと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、脳内の神経細胞を変化・脱落することで脳の働きが低下。それに伴い脳萎縮を起こし発症します。なお、脳の神経細胞の減少、脳の萎縮、脳への老人斑・神経原線維変化などの出現がアルツハイマー型認知症の特徴となっています。

 

・血管性認知症

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害を起こした後に、脳の血管がダメージを受けることで、細胞に酸素が送られなくなり、神経細胞が死んでしまうことで発症します。典型的な認知症の症状に加え、怒る・泣くなど、感情コントロールができない感情失禁が特徴的な症状です。

 

・レビー小体型認知症

何らかの影響で脳幹や大脳皮質に異常なたんぱく質が蓄積することで神経伝達に障害が起こり発症します。通常、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の場合は、初期症状として物忘れがありますが、レビー小体型認知症の場合は幻視が多いのが特徴です。また、パーキンソン病と同様の症状が発現することが多いため、誤認されやすいのが実情です。

 

・その他の認知症

他にはアルコールによって神経細胞が死滅したり、肝硬変など身体の内臓疾患によって脳の機能が低下、または神経細胞が壊れることによって発症することがあります。その他、肺疾患、心疾患、貧血など、原因はさまざまで、これらが原因となる認知症はすべて“その他”として分類されています。

 

1-2、認知症の診断基準

認知症の診断基準には、世界保健機関(WHO)による「ICD-10」、米国精神学会による「DSM-III-R」・「DSM-IV-TR」の3つが世界的に有名です。

 

ICD-10

A、以下の各項目を示す証拠が存在する

①記憶力の低下

新しい事象に関する著しい記憶力の減退、重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され、記憶力の低下は客観的に確認されるべきである。

②認知能力の低下

判断と思考に関する能力の低下や情報処理全般の悪化であり、従来の遂行能力水準からの低下を確認する。

①・②により、日常生活動作や遂行能力に支障をきたす。

 

B、周囲に対する認識(意識混濁がないこと)が、基準Aの症状を証明するのに十分な期間、保たれていること。せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留。

 

C、次の 1項目以上を認める

①情緒易変性

②易刺激性

③無感情

④社会的行動の粗雑化

 

D、基準 Aの症状が明らかに 6 か月以上存在していて確定診断される。

 

DSM-III-R

A、記憶(短期・長期)の障害

 

B、次のうち少なくとも 1項目以上

①抽象的思考の障害

②判断の障害

③高次皮質機能の障害(失語・失行・失認・構成障害)

④性格変化

 

C、A・B の障害により仕事・社会生活・人間関係が損なわれる。

 

D、意識障害のときには診断しない(せん妄の除外)。

 

E、病歴や検査から脳の器質的疾患の存在が推測できる

 

DSM-IV-TR

A、多彩な認知障害の発現。以下の 2 項目がある。

①記憶障害(新しい情報や昔の情報を想起する能力の障害)

②次の認知機能の障害が 1つ以上ある:

—a.失語(言語の障害)

—b.失行(運動機能は障害されていないのに,運動行為が障害される)

—c.失認(感覚機能が障害されていないのに,対象を認識または同定できない)

—d.実行機能(計画を立てる,組織化する,順序立てる,抽象化すること)の障害

 

B、上記の認知障害は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、また、病前の機能水準からの著しい低下を示す。

 

C、その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。

 

なお、上記3つの基準の中で、最も参照されているのが最後のDSM-IV-TR。いわゆる、記憶障害に加え、失語・失行・失認・実行機能障害のいずれかが該当する場合に認知症と判断します。

 

アルツハイマー型認知症や血管性認知症など、実際は各種の認知症疾患ごとに細かく基準が定められていますが、非常に細かく難しいため、検査や発現症状によって種類が判別されます。

 

1-3、認知症とせん妄の違い

上記の診断基準をみて分かるように、認知症の判別において、せん妄との誤診が多いため、各々の違いをしっかりと把握しておいてください。

 

認知症 せん妄
発症速度 緩やか 急激
初期症状 記憶力の低下 幻覚、錯覚、妄想、興奮
日内変動 変化に乏しい 夕方や夜間に悪化
持続 永続的 数日~数週間
身体疾患 場合によってはアリ 合併していることが多い
薬剤の関与 なし しばしばあり
環境の関与 なし 関与することが多い

 

1-4、認知症と物忘れの違い

また、加齢に伴う物忘れとの誤診もあります。ゆえに、記憶障害のみで認知症と判断するのではなく、包括的に行わなければいけません。以下に認知症と物忘れの違いを記載します。

 

認知症 物忘れ
原因 脳の神経細胞の死滅など 加齢によるもの
進行 進行する すぐには進行しない
記憶 体験記億の忘却、新しい事象における記憶力の減退 体験記憶の一部忘却
見当識 場所や時間など見当がつかない 場所や時間など見当がつく
忘却自覚 忘却における自覚が乏しい 忘却における自覚がある
その他の精神症状 他の精神症状を伴うことが多い 他の精神症状は伴わない
日常生活への支障 支障をきたす 支障はない

 

2、認知症の症状

認知症の症状は主に「中核症状」と「行動・心理症状」に分類されます。また、これら各症状には性格や素質、環境や心理状態など、さまざまな要因が絡み合って発現します。

 

■中核症状

①記憶障害

脳内の神経細胞が死滅することにより、情報の伝達機能が低下し、過去の出来事を思い出せなかったり、新たな事象における記憶が蓄積されない、いわゆる痴呆の症状がこれに当たります。軽度であれば断片的な記憶は残っている、または蓄積されますが、重度になれば、ほとんどの記憶を失ってしまいます。

 

②見当識障害

時間や場所など、日常的な状況を把握する、見当識が著しく低下することで、自分がどこにいるのか、今日は何日・何曜日で、今は何時なのか、分からなくなります。また、進行すれば、家族や友人など人間関係の把握ができなくなります。

 

③理解・判断力の障害

思考スピードが遅くなる、複数の情報を一度に処理できないといった理解力や、具体的な事柄への判断力が著しく低下します。これは、加齢に伴い、高齢者の多くが経験する症状ですが、認知症の人はその程度がさらに大きいと言えます。

 

④実行力障害

実行力障害というのは、行動に対する計画が立てられない障害のことを言います。献立や日常のあらゆる事柄において、うまく計画が立てられないことで、同じ行動を繰り返すことがあり、日常生活が上手く進まなくなります。

 

■行動・心理症状

①不安・抑うつ

認知症を発症している人は、これまで出来ていたことが上手くいかないなど、頭の中で収拾がつかなくなり自信を喪失してしまいます。この自信消失から不安や焦燥という気持ちが強く表れ、進行すると、すべてが面倒くさくなり、抑うつ症状が出現します。

 

②妄想・幻覚

時に、妄想や幻覚といった症状が出現することがありますが、これは記憶障害と大きく関わっています。記憶の忘却、または断片的な記憶により、「財布を引出しに入れた」→「入れた場所を忘れた」→「なくなった」→「誰かが盗った」というように被害妄想が働きます。また、知らない人・子供・虫・蛇がいるなど、幻覚をみることや、誰もいないのに話す声が聞こえるなど幻聴症状を訴えることもあります。これは、レビー小体型認知症で多くみられる症状です。

 

③興奮・暴力

脳の機能低下により、感情が抑えられなくなり極度に興奮したり、暴言や暴力といった行動を起こすことがあります。特に自尊心の強い人に多くみられ、些細なことをキッカケに歯止めが利かなくなることもしばしばあります。

 

④徘徊

認知症の症状として広く取り上げられている徘徊は、自分の居場所や現在の時間が分からない見当識障害が大きく関係しています。自分の周囲の情報が把握できないため、行動を起こすも迷子になったり、自分のしようとしていることが分からなくなり、訳もなくフラフラ歩いていると客観的に認知しますが、実際は無計画で奇怪な行動ではなく、見当識障害の影響を強く受けているのです。

 

2-1、種類別にみる症状の違い

以下に、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症の3つの疾患別における症状などの違いを記載します。

 

アルツハイマー型 脳血管性 レビー小体型
好発年齢 70歳前後 50歳~ 70歳前後(若年層にも多い)
性差 女性に多い 男性に多い 男性に多い
発症

症状の進行

緩やかに発症

症状はゆっくり単調に進行する

急激に発症

症状は不均一に段階的に進行する

緩やかに発症

症状は不均一に段階的に進行する

特徴的症状 やる気の消失、落ち着きがなくなる 感情の起伏(感情失禁)が激しくなる 幻視・幻覚、妄想、パーキンソン病と似た症状が出現する
神経症状 初期には少ない 初期に手足が痺れることが多い 初期には少ない
認知自覚 ないことが多い 初期にはある 初期には自覚していることが多い
人格変化 人格が変わることがある ある程度保たれる ある程度保たれる
持病の影響 影響は少ない 糖尿病や高血圧などの持病の影響が強い 影響は少ない
画像診断 脳萎縮を認める 梗塞巣などを認める 脳萎縮を認める

(海馬の委縮はアルツハイマー型より軽度)

 

このように、それぞれに異なる特徴や症状がありますが、人によって程度や発現症状など大きく異なることがあるため、参考程度に考えておきましょう。

 

3、認知症の看護計画

認知症は薬物治療などで症状の緩和、進行の減退を図ることができるものの、根本的な治療法はありません。それゆえ、永続的な看護ケアが必要です。また、人によって症状が異なるため、各人に合った看護ケアを行うことが大切ですが、一般的にはQOL向上のための環境作りを行い、多岐に渡る観察により症状を適切に把握し、実行に移ります。

 

≪看護目標≫

①環境の変化に適応でき、落ち着いた入院生活が送れる

②安全・安楽な日常生活が送れ、高い水準を維持できる

③身体症状の悪化を防ぎ、全身状態を良好に保つ

④人間関係のトラブルや転倒など事故が防止できる

⑤治療、検査をスムーズに受けられる

 

≪観察項目≫

態度 普段と態度が変わっていないか
表情 暗い顔、沈んだ表情、冴えない表情など、普段と変化はないか
服装 服装がだらしなくなる、不潔状態を好むなど、変化はないか
行動 徘徊など行動に変化はないか
言語の理解力 言葉でしっかりとコミュニケーションがとれているか
構音障害 言葉を正しく発音できているか
記憶障害 経験記憶はあるか、新たな事象に対して記憶力が減退していないか
見当識 場所、時間、季節など、正しく把握できているか
思考 注意力はあるか、思考に変化はみられるか
計算 簡単な計算は可能か
判断 物事に対して適切な判断ができるか
感情 不安や恐怖、イライラなど、感情における変化はないか
意欲 娯楽や食事に対する意欲はあるか

 

4、認知症の看護ケア

認知症には根本的な治療が存在しないため、多くの場合、症状が進行していきます。それゆえ、永続的にQOLが保たれるよう、支援的なケアが必要です。認知症の看護ケアには、大きく分けて「健康管理」、「環境作り」、「関わり」、「精神的援助」、「家族支援」、「尊厳の保持」の6項目があり、1つとして欠けることなく包括的に行わなければいけません。

 

ただし、以下に述べる6項目は認知症ケアの全体像であり、患者によって症状や心身状態、思考など異なるため、各項目は基盤とし、多角的な視野をもって、各患者に合ったケアを行ってください。

 

4-1、健康管理

・患者の病態を正しく理解する

・病状・バイタルサインの変化を観察する

・態度や表情など外見的変化を観察する

 

認知症の看護には、患者の病態を正しく理解することが必要不可欠です。また、体調の変化を感じにくく、自主的に人に伝えることが困難です。それゆえ、バイタルサインや外観的変化に加え、①検査データ、②既往歴、③飲食の摂取状況、④排泄状況などをもとに、体調・健康の変化を素早く察知し、対処していく必要があります。

 

4-2、環境作り

・自宅のように安心して暮らせる環境を作る

・日常生活における環境の変化を少なくする

・病室やリネン類、衣類など清潔保持を徹底する

・ケガ・事故防止のため患者の身体機能に合わせた環境を整える

 

患者が安楽・安心な生活を送れるよう、落ち着いた療養環境を整えることも大事な看護ケアの1つです。また、認知症の多くは高齢者であるため、身体能力低下に伴うケガ防止、徘徊などによる事故防止のための環境作りも徹底してください。

 

4-3、関わり

・自尊心を傷つけない言葉遣いをする

・話しやすい雰囲気を作り、ゆっくりと傾聴する

・患者と接する時は受容的な態度で接する

・記憶障害や過ちに対して強い叱責をしない

・話しかける際には、はっきりとした口調で話す

・積極的に記憶のある過去の話をする

・現在の能力を把握し、自立支援を行う

 

認知症の看護で最も難しいのがコミュニケーションです。無言や暴言、繰り返し同じ話をするなど上手にコミュニケーションがとれず、看護師に多大な精神的負担がかかります。しかしながら、コミュニケーションは患者の精神的安楽や感情の安定化に好影響があり、さらに会話の中で多くの情報を収集することができます。

 

認知症患者にとって、信頼できる、安心できる介護者は必要不可欠であり、病院においてはそれが看護師であるべきです。精神的負担が大きい場合には、少しずつゆっくりとコミュニケーションを図っていきましょう。

 

4-4、精神的援助

・感情の安楽のために気分転換をする

・興味・関心のある事にチャレンジする

・五感を刺激し、QOLの向上を図る

 

認知症患者は記憶障害などにより、頭の中で上手く情報を整理できないことで、多くの場合、ストレスの増大や不安・やる気喪失など、精神状態が悪化します。

 

精神的援助を行うために、気分転換や興味・関心のある事に率先して介入し、さらに、視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚を刺激し、生活水準の向上を図っていきましょう。

 

4-5、家族支援

・認知症について正しく理解できるよう援助する

・ケア方法や問題行動への対処について指導する

・悩みを聞くことでストレスの軽減を図る

 

患者のことを最も熟知しているのはその家族ですが、認知症という病気に関しては、いわば素人です。それゆえ、どのように接するべきか、どのようにケアを行うのかなど、患者の安楽な生活のために、専門である看護師が家族に対してしっかりと援助・指導する必要があります。

 

また、家族への心のケアも非常に大切です。悩みや不安を取り除くべく、積極的に話しを聞き、ストレスの緩和に努めてください。

 

4-6、尊厳の保持

認知症の人に対する身体拘束や虐待は後を絶ちません。暴言や暴力、問題行動などによる精神的負担から患者の行動を制限し、あげくの果てには虐待や人権を否定するなど、尊厳を侵害する事件が毎年報道されています。

 

これらの多くは認知症に対する浅い理解と介護・看護によるストレスが要因となっており、

尊厳の侵害行動における自覚症状がないことが多いのが実情ですが、理由はどうあれ、患者自身、好きで認知症になっているわけではありません。さらに患者自身、頭が上手く働かないことにより、精神的な負担が大きくのしかかっています。

 

そのことを正しく理解し、患者のQOLの向上を図ってください。介護において「人としての尊厳を守る」というのは、非常に重要であるということ絶対に忘れないでください。

 

まとめ

認知症に関して未だ解明されていないことが多く、さらに完治に向けた治療法は存在していないため、看護師など介護従事者による質の高いサポートが重要で、いかにQOLを向上させられるかがポイントとなります。

 

患者の安心・安全・安楽な生活のために、認知症という疾患に関する深い知識を持って、病態や思考、生活史など患者のことを正しく理解し、多角的な視野をもって各人に合ったケアを行っていきましょう。

環境整備|目標設定・観察をもとにした看護ケアの実践と手順

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環境整備_看護

環境整備は看護の初歩中の初歩であり、適切な環境整備が出来ない人は、いくら経験を積んで多くの手技が出来たとしても、良い看護師とは言えません。それほど環境整備は重要な看護ケアなのです。

 

ここでは、環境整備の概要はもちろん、問題点や手順例、看護計画、観察項目など、適切な環境整備のための情報を包括的かつ詳しく紹介していますので、どのように環境整備を行えば良いのか分からない方は、最後までしっかりお読み頂き、理解した上で実践していってください。

 

1、環境整備とは

環境整備とは、簡潔に言えば、“安心・安全・安楽のための環境を作る”ということであり、患者のケガ・事故・感染症の防止や、居心地のよい入院生活のために、さらに早期治療のために、徹底した環境整備が必要です。

 

イギリスの有名な看護教育学者、フロレンス・ナイチンゲールは、看護の基本となる考えとして、自然が病人に対して最も働きかけやすい状態にすること、つまり、自然治癒力を高める手段の一つとして、環境を整えることが看護実践において重要である、と述べているように、環境整備は看護ケアにおいて非常に大きな役割を持っているのです。

 

1-1、環境整備の目的

環境整備は、患者の安心・安全・安楽のための非常に重要な看護ケアの一つです。また、患者だけでなく、医師や看護師など病院で働く人にとって、働きやすい環境を作るという目的もあります。

 

・患者に快適で安全な療養環境を提供する

・治療と看護がより効果的に行われ、質の高い医療の提供の一環を担う

・感染症やケガ・事故、二次的障害を防ぐ

・医療従事者や病院関係者に安全で良好な労働環境を保障する

・建物の維持保全をする

 

1-2、環境整備の問題点

多くの病院では環境整備を徹底しているものの、大きな病院ほど実施内容や成果に“ムラ”が生じてしまいます。これは、医療における体制・連携や看護師(または看護助手)の意識が問題となっており、良質な環境を提供するためには、下記のような問題点を1つ1つ解決していかなければいけません。

 

・手順書がない

多くの病院では環境整備に関する手順書がないため、どのように行えばよいのか分からない。

 

・看護師と看護助手の連携が不足している

環境整備は主に看護師の業務であるものの、労働状況や病院によっては看護助手が代わりに行うことがあるが、この際、看護師と助手との間で連携がとれていないことで、清掃状態にバラつきが生じる。

 

・質に個人差がある

手順書がなく、さらに一斉に行うのではなく、個人の業務スケジュールに基づいて空いた時間の中で行うことが多いため、環境整備における実施内容や質に個人差があり、日によって清潔状態にバラつきが生じる。

 

・個人的な満足で終わっている

環境整備における満足度は看護師と患者では異なり、看護師の主観的な満足で終わっていることで、質の高い環境を患者に提供できていない可能性がある。

 

・後回しにする

看護師不足が顕著な病院は特に、業務の忙しさから、環境整備を後回しにすることが多く、質の高い環境を提供できていない。

 

・看護としての認識がない

看護師の中には、環境整備は看護業務の中に位置付けておらず、疎かにすることがある。

 

2、環境整備の一般的な手順例

病院によって環境整備の手順は異なりますが、基本的には大差はありません。以下に、病室における環境整備の一般的な手順例を紹介しますので、手順書がない病院に勤務している看護師は、ぜひ参考にしてください。

 

①環境整備を行う旨を患者に説明し了承を得る

まずは、患者やご家族に、環境整備の目的や必要性を分かりやすい言葉で説明し、同意を得ます。

 

②窓を開け空気の循環・換気を行う

窓を開けることで自然換気を行いますが、患者に外気を直接当てない、その日の気温や風量を考慮する、排泄後すぐに開けないなど、様々な配慮を持って行う必要があります。

 

③照明の点灯確認と、ほこりを除去する

室内照明やベッドランプがつくかどうか確認し、ほこりがついていれば除去します。この際、ベッド上にほこりが落ちないように注意しながら除去するようにしてください。

 

④ベッド上・シーツを整える

ベッド上に衣類やタオルなど必要のない物があれば片付け、シーツのしわを直す、または汚染されていたら取り替えてベッドメイキングを行います。

 

⑤ベッド周辺の整備・整頓を行う

床頭台やオーバーテーブル上を整理し、必要最小限の物だけを置くようにします。また、引き出しや衣類棚も同時に確認し、必要あれば整理整頓を行います。なお、床には物が一切ない状態が望ましく、ベッド下に靴とスリッパ以外の物は置かないようにします。

 

⑥ベッドの設置機材や周辺器機の清拭を行う

ベッド棚、床頭台、オーバーテーブル、面会用の椅子など、ベッドの設置機材や周辺器機を水道水またはアルコールで清拭します。

 

⑦ベッドの設置機材などの正常作動を確認する

ベッド棚の歪み、床頭台、オーバーテーブルなどの車輪・調節部位が故障していないか確認します。

 

⑧カーテンの状態を確認・交換を行う

カーテンの破れ、ほつれ、汚れなどを確認し、必要あれば交換します。

 

⑨カーテンフック・レールの状態を確認する

カーテンの状況を確認すると同時に、フックやレールの外れがなく、スムーズにスライドするか確認します。

 

⑩ギャッヂハンドの収納などを確認する

ケガや事故防止のため、ギャッヂハンドが収納されているか、車輪のストッパーがかかっているか、外側に向いていないか確認します。

 

⑪プライバシーに配慮する

尿器やポータブルトイレ内の排泄物の処理や、カバーをかけるなど同室者や面会者の目に触れないようにします。また、面会者がいる時にはカーテンを閉めるなど、プライバシーに配慮するようにしてください。

 

⑫通路や廊下の整備を行う

車椅子やストレッチャーなどが通路や廊下に置いたままになっていないか確認し、あれば適切な場所に移動させます。また、床が濡れているなど、歩行における安全性が保たれているか確認します。

 

3、環境整備の看護計画

環境整備は看護の初歩中の初歩であり、きちんとした環境整備を行えるということは、“できる看護師”の指標となります。基本的に、環境整備はすべての患者が対象となりますが、患者の症状や体調、病室の構造など、幅広い視点で実施する必要があるため、看護の中でも最も難しい実践内容と言っても過言ではありません。

 

以下に、一般的な看護目標と観察項目を記載しますので、1つの指針として、参考にしてください。

 

3-1、看護目標

環境整備における看護目標は、大きく分けて「安心」「安全」「安楽」「コミュニケーション」の4つの項目を基準に計画を立てます。

 

・肉体的・精神的な安らぎを与える

・感染症や転倒・転落インシデントを未然に防止する

・居心地の良い室内空間と安楽な入院生活を提供する

・コミュニケーションにより意欲向上・情報収集の促進を図る

 

上記4つの計画のうち、注目すべきは「コミュニケーション」であり、環境整備の時間には、患者と話す機会が多く、コミュニケーションを図ることで、患者の意欲向上など精神的な好影響を与えるだけでなく、さまざまな情報を収集することができます。

 

これにより、患者の症状はもちろん、入院生活や治療における“想い”や“考え”なども知ることができるため、より良い看護ケアを行うことが出来ます。

 

3-2、観察項目

環境整備の観察項目は多岐に渡ります。一般的に、「環境調節」、「清潔管理」、「事故防止」、「整理整頓」、「医療機器・物品の管理」、「プライバシー管理」の6つが大まかな観察項目であり、細分化すると計32もの項目があります。

 

これら全ての項目を考えることなく実践できるまで、しっかりと把握しておきましょう。

 

環境調節

・騒音が防止できているか ドアやカーテンの開閉、ワゴンや足音、看護師の会話など、強い騒音が発生していないか確認する。
・臭気管理ができているか 尿器やポータブルトイレ、オムツなどにより病室内に悪臭がただよっていないか確認する。
・湿気は適正値に保たれているか 居心地の良い湿度(夏季は45%~65%、冬季は40%~60%)が保たれているか確認する。
・室内温度は適正値に保たれているか 居心地の良い温度(夏季は20℃~24℃、冬季は17℃~21%)が保たれているか確認する。
・室内明度は適正値に保たれているか 居心地の良い明度(昼は50~200ルクス、夜は1~2ルクス)が保たれているか確認する。ただし、主観的な範囲で良い。

 

清潔管理

・シーツや寝衣が汚れていないか 交換時に限らず、シーツ・寝衣に血液や尿・便、飲食物による汚れがないか確認する。
・食器類が汚れていないか 箸やスプーン、湯呑み茶碗など、患者用食器が汚れていないか確認する。
・ベッド周辺が汚染していないか オーバーテーブルや床頭台などが汚れていないか確認する。
・ベッド周囲にゴミは落ちていないか 患者または面会者の飲食物などのゴミがベッド周囲に散乱していないか確認する。
・ゴミ箱のゴミは定期的に捨てられているか ゴミ箱のゴミの量が多いなど、高い頻度で廃棄されているか確認する。
・尿排泄物が滞留していないか 尿器や便器、ポータブルトイレなどに排泄物が適切に処理・消毒されているか確認する。

 

事故防止

・ライン類は安全に管理されているか ライン類がしっかり固定されているか、適切に配置されているか確認する。
・コード類が整理されているか 電気コード類がまとめられているか確認する。
・ベッドは適切な高さに保たれているか ベッドの傾きや高さが、患者各人に合っているか、適切な状態を維持できているか確認する。
・ベッド柵は固定されているか ベッド柵(落下防止)がしっかりと固定されているか、破損箇所がないか確認する。
・針や刃物など危険物はないか ベッド上またはベッド周辺に、針や刃物、火気類など、ケガや事故の元となる物品がないか確認する。
・床に水がこぼれていないか 病室や廊下の床が濡れていないか、ベッドサイドに水がこぼれていないか確認する。
・ギャッチアップのレバーがしっかり収納されているか 電動式ベッドに装着されているギャッチアップのレバーが収納されているか確認する。

 

整理整頓

・ベッドサイドの履物が整理されているか ベッドサイドの履物が揃っていて邪魔になっていないか、散乱していないか確認する。
・患者の私物が整理されているか 床頭台やオーバーテーブル、ベッド周囲の患者の私物が整理されているか確認する。
・患者の使用済み品が散乱していないか タオル類、リネン類、オムツ、T字帯など、患者が使用した物がそのままになっていないか確認する。
・使用後の器機が放置されていないか 歩行器や車椅子など、使用後の器機がそのままに置かれていないか確認する。
・ナースコールが適切な位置に配置されているか 緊急時に備え、ナースコールが押しやすい位置に配置されているか確認する。
・ベッド周囲のスペースが患者のADLに適しているか 日常生活動作において、ベッド周囲のスペースがしっかりと確保されているか確認する。

 

医療機器・物品の管理

・医療機器が適切に設置されているか 病室備え付けの心電図モニターや人工呼吸器などの医療機器が適切な位置に配置されているか確認する。
・医療機器が正常に作動しているか 心電図モニターや人工呼吸器などの医療機器が正常に動作しているか確認する。
・ベッド周囲の医療物品が業務しやすい位置に配置されているか ベッド周囲の医療物品が不足・散乱していないか、作業・業務を迅速に行える位置に配置されているか確認する。

 

プライバシー管理

・ドアの開閉によってプライバシーが保たれているか 適切な時間に病室のドアが開閉されているか確認する。
・カーテンの開閉におけるプライバシーが保たれているか 適切な時間にカーテンが開閉されているか確認する。
・ブラインドの開閉におけるプライバシーが保たれているか 適切な時間にブラインドが開閉されているか確認する。
・会話の筒抜けにおけるプライバシーが保たれているか 同室患者間で会話の筒抜けが無く、プライバシーが保たれているか確認する。
・同室患者間に対人トラブルはないか 大声、不穏など、同室患者間における対人関係に問題はないか確認する。

 

まとめ

看護師にとって環境整備は最も大切な看護ケアと言っても過言ではありません。環境整備の質=看護の質と言えるほど環境整備は大切なケアであるため、毎日のルーティーン業務だからと言って疎かにしてはいけません。

 

看護師1人1人が高い意識を持って、細かなところにも配慮しながら徹底した環境整備を行うことで、すべての患者が安心・安全・安楽な療養生活を送ることができます。当ページで記載した各項を参考にして、患者のためにぜひ徹底した環境整備を実施してください。

救急の看護に必要な役割と資格|認定看護師とは

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救急看護師

救急医療は、一次救急・二次救急・三次救急に大きく分類されます。

一次救急:入院の必要がなく、外来診療のみで対応できる軽傷な方

二次救急:入院診療を必要とする中等症な方

三次救急:二次救急では対応できない重篤で生命の危険がある方

 

この三次救急の救急医療が、迅速に対応しなければいけない、特に大事と言われている分類になります。

 

当ページでは、救急医療の看護師がどのような役割を担っているのか、救急の看護師に必要なスキルや資格、救急看護認定看護師についてご紹介します。特に、救急医療に興味があり、これから救急看護についてスキルをつけていきたいと考えている方には、是非参考にしていただき、活かしていただければと思います。

 

1.救急医療とは

救命救急センターには、様々な疾患を抱えた患者様が運ばれてきます。急性心筋梗塞や脳卒中はもちろん、交通事故による多発外傷や全身熱傷など、生命の危機がすぐそばまで来ているような疾患が多発しています。

 

他の一般病棟や外来と救急外来が大きく違うのは、疾患名が無い状態で来ること、これが多いです。一般的な入院患者は、医師が救急外来や各外来で診断名をつけ、入院の必要があると判断され、入院となります。外来にしても、各専門外来に来るのである程度、疾患の分野が絞られます。

 

多くの患者様が意識不明であり、全身管理が必要な状態であるため、治療の甲斐なく亡くなってしまう患者様も多いのが、他の一般病棟との大きな違いです。しかし、医療スタッフとの連携により、生命の危機にあった患者様が元気な姿で退院していく姿を見て、充実感を感じられることもあり、救命救急センターでしか味わえない感覚もあります。

 

1-1.救急医療の看護とは

救急看護とは、突発的な外傷、急性疾患、慢性疾患の急性増悪などのさまざまな状況によって、救急処置が必要な対象に実施される看護活動をいいます。

救急処置を中心に、初期段階での看護実践で、場所や疾患、診療科、重症度など制限はありません。主な活動は、救急外来や救命救急センターなどの救急医療施設での看護をいいます。

 

1-2.救急看護師の役割とは

重要な救急看護師の役割は、救急処置の実施になります。心臓な呼吸が止まっている患者様への心配蘇生法、出血を止める止血や包帯法、骨折時の応急処置などがあります。また医師が行う様々な救急治療処置で、処置の介助を行うことも多いです。原因不明の意識障害や心肺停止状態の方が来ることも多いので、医師はもちろん看護師も超急性期看護に対応できるスキル、スピード、判断能力が要求されます。高い知識と判断能力があれば、医師が何を考えているか察知し、迅速に対応できるようになります。

 

救急の活動以外にも、体を清潔に保つ、体位調整を行う、トイレ介助など日常生活の援助を行うことも、重要な役割としてあります。また患者様本人と家族への心のケア、一般の人達への救命・救急処置の指導など多岐にわたります。

 

1-3.救急看護師になるには

まず、看護師になるためには国家試験を取得しなければなりません。准看護学校を卒業して、知事試験に合格すれば准看護師になることはできますが、救急看護師には高い知識が要求されますので、看護師資格は必須となってきています。

 

卒業後は、すぐに救急医療施設に就職し、救急看護師になる場合もあれば、救急以外の内科など一般的な看護経験を積んでから、救急医療施設へ移動する場合もあります。

一人前の救急看護師になるためには、多くの救急看護経験を積むことも大事になりますが、向上心や目的意識を持って自己研鑽に励むことが大切になります。医療は、常に成長しており最新の知識を得ることは非常に有用となります。一つ一つのステップを踏み、エキスパートな救急看護師へ成長することになります。

 

 

2.救急救命看護師に必要なスキルとは

上記で記載したように、様々な診療科の患者様が搬送されてきます。通常の看護師であれば、内科としての処置、外科としての処置、小児科としての処置など、各々配属された科のスキルを身につければ対応できます。

 

救急外来の場合には、内科、外科、小児科など様々な診療科に関わるため、幅広く広い知識とスキルが必要になります。

 

2-1.コミュニケーション能力

救急外来において、医師と看護師の連携は一般病棟や外来以上に、非常に重要となります。救急外来は、常に生命の危機と隣り合わせなので、コミュニケーション能力がなければ助けられる命も救うことができないことも、十分にありえます。医師の指示をすぐに理解して、行動できるには経験は必須でしょう。医師と連携してコミュニケーションをとろうとする行動が、成長の第一歩となります。

医師と看護師で連携をして迅速な対応をした結果、全身状態が安定し、後日元気に退院したと言う話しを聞くと、とても達成感がいっぱいになることを体験できます。

 

2-2.救急医療における家族へのケア

本人のケアは最重要となる前提で、家族へのケアも重要となります。超急性期のため、家族のケアがおろそかになりがちになってしまいますが、突然の発症で動揺している場合が多いです。今後の患者様の治療方針を決めるためや現状を理解してもらうために、家族への精神的ケアは大切な看護師の役割となります。

 

2-3.患者様の状態をすばやく見抜くスキルとは

重篤な患者様が1人とは限りません。場合によっては、看護師が緊急度を判断する時もあり、患者様への問診や全身状態の様子を見て、状態を素早く判断することも現状としてあります。

下記に状態を判定しやすいように、トリアージを導入している医療機関も存在しています。レベルⅠがもっとも危険な状態で、すぐに処置が必要な状態となります。

 

レベルⅠ 蘇生レベル 心肺停止、ショック、けいれん持続
レベルⅡ 緊急(高) 心原性胸痛、激しい頭痛、急性腹症
レベルⅢ 緊急(中) 中等度の外傷、高血圧、重い下痢
レベルⅣ 緊急(低) 軽い外傷、尿路感染、便秘
レベルⅤ 非緊急 アレルギー性鼻炎、皮膚発赤

 

 

3.救急看護師において必要な資格とは

救命処置は、救急看護師において身近な処置の一つです。緊急時には正しい判断をし、迅速に処置を開始しなければいけません。経験を積んでいくとわかる部分もありますが、判断に困ることもあると思います。BLS・ICLS・JNTEC・JPTECといった、手助けになるような様々なコースがあるので、自分が不足していると思う部分に対しては、積極的に受講していった方がよいでしょう。

 

3-1.BLSとは

一次救命処置の略称です。急にその場で人が倒れた、窒息を起こした人に対して、その場に居合わせた人が、救急隊や医師に引継ぐまでの間に行う応急手当のことをいいます。
専門的な器具や、薬品などを使う必要がないので、正しい知識と適切な処置のやり方さえ知っていれば、誰でも行うことができます。

救急看護師にとっては、身近に行わなければ処置の一つになりますので、自信がない場合や復習という意味では、受けた方がよいでしょう。

 

3-2.ICLSとは

医療従事者のための蘇生トレーニングコースになります。突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生をメインに行います。基本的には講義はなく、実技を中心に行うコースです。1日かけて、蘇生のために必要な技術や蘇生現場でのチーム医療を身に着けます。

ICLSコースは一次救命処置から二次救命処置を行い、実際に人形を使用し、心電図波形や薬剤投与を行います。自分が医師という存在になり、他のスタッフに指示を出していきます。

コース終了後に、実際に同じような心停止の患者様が搬送されてきた時に、大変有用です。ICLSコースを受けたスタッフ間では、医師の指示が手に取るようにわかるようになり、チーム医療の精度があがります。

 

3-3.JNTEC・JPTECとは

JNTECとは、傷患者の特殊な病態を理解し、外傷初期診療に必要なアセスメントとその看護実践能力を育成するコースをいいます。

JPTECとは、外傷病院前救護プログラムといいます。本来は看護師向けではなく、救急救命士や救急隊員向けなのですが、どのように対処をして病院に運ばれてくるのかを理解することは、大変有用です。

どちらのプログラムも外傷に関してなので、外傷に対して理解を深めたい方には必要となります。

 

4.救急看護協会とは

国民の保健・医療・福祉に寄与し、救急看護の進歩、発展、普及を図ることを目的として設立されました。救急看護が発展するために、救急看護セミナーやファーストエイド、トリアージナース育成研修会、外傷初期看護セミナー(JNTEC)、災害看護初期対応セミナーなど、様々な活動をしています。

 

5.救急認定看護師とは

急病、事故、災害医療など様々な場面において、緊急的に行われる初期医療に携わります。超急性期において、スピードと適切な判断が重要となるので、初期段階での医療がスムーズに進むように調整することは、重要な役割となります。

 

具体的な役割としては、救急医療現場において、迅速で的確なトリアージを行い、病態の緊急レベルに応じて適切なケアを行います。救急救命の現場では、医師だけではなく医療チームの連携が必須です。救急認定看護師は、現場の連携がスムーズにいくような役割を担うことも行います。

 

現場以外でも、他の看護師に救急看護についての指導・相談、地域住民へ救命技術の普及など、多岐にわたります。

 

5-1.救急認定看護師になるためには

救急看護認定看護師教育機関において、救急看護に関する専門科目、演習、実習など6ヶ月の期間で615時間以上の教育を受けることが条件となっています。全国では6ヶ所あり、青森、東京、愛知、大阪、香川、福岡に教育機関があります。

 

看護師免許を取得後、実務経験が5年以上必要であり、そのうち救急看護の分野で3年以上の実務経験が必要となります。

 

教育課程を修了し、日本看護協会が実施する筆記試験に合格することで、救急看護認定看護師として、認定され登録されます。認定後は5年毎に更新され、日々の看護実践と自己研鑽についての書類審査が行われます。

 

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。救急看護師には、国家試験を合格すれば誰でもなることはできますが、要求されることは他の一般病棟と違い多岐にわたります。向上心と自己研鑽を忘れずに常に行い、自己のレベルアップを図ることが大事になります。その結果、エキスパートナースとなり患者様への救命率アップにつながるのです。

当ページで紹介した各事項を参考にしていただき、救急看護師として活躍できるようにしてください。


看護記録の構成・SOAP / DARの書き方、法に基づく保存期間

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看護記録

看護師など看護職の業務の一つである看護記録。患者の現状や経過を把握するために必要なものであることから、直接的なケア以上に重要度が高いと考える専門家も多いのが現状です。

それゆえ、すべての看護職員が看護記録について適切な知識・理解を持っておかなければいけません。ここでは、看護記録の種類ごとの構成や、事例を踏まえた書き方など詳しく解説していますので、看護記録に関して不安があるという方は、ぜひ最後までしっかりとお読みください。

 

1、看護記録とは

看護記録は、患者の病状や健康状態の現状・経過に加え、看護職員の看護実践の内容などを表したものであり、質の高いケアを患者に提供するために、また、患者の状態を素早く情報収集し把握するために必要不可欠であるため、ほぼ全ての医療機関で実施されています。

なお、看護記録は、患者の全情報を記述した診療録の中の“経過記録”に位置付けられ、経過記録には一般的に、POS(Problem-Oriented System)と呼ばれる問題志向型システムと、フォーカス・チャーチィングの2種類の書式があります。

下記にて、看護記録の中で非常に重要となる、POSとフォーカス・チャーチィング(FC)について詳しくご説明します。

 

2、POSとは

POS(Problem-Oriented System)とは、患者の持っている医療上の問題に焦点を合わせ、それを解決しようとする一連の作業システムや考え方のことを言います。

POSは患者の視点に立って患者の問題を解決するための全体的な記録(システム)であり、「基礎データ」、「問題リスト」、「初期計画」、「経過記録」、「要約記録」の5項目構成を精査し、それを実施するために、経過記録ではSOAP形式を用いて記述していきます。

 

2-1、基礎データ

基礎データには大きく分けて「病歴」、「診断所見」、「検査データ」、「統計別レビュー」の4つの要素が存在します。

病歴 ①患者の生活像、②主訴、③既往歴、④現病歴、⑤家族歴、など患者のプロフィールや健康状態に関する情報を収集し記録する
診断所見 ①視診(顔つき・発育・栄養・皮膚の色・発疹など)、②聴診(心音・呼吸音・血管音・腹部のグル音など)、③触診(甲状腺・リンパ節・皮下浮腫・腹部臓器など)、④打診(心臓・胸部・肺・腹水膜部など)に関する情報を収集し記録する
検査データ 血液や尿の含有成分値など、入院時、外来時、または他院による診察前の全ての検査データを記録する
統計別レビュー 既往歴などの確認を行う際、患者のうっかり忘れによる情報収集の脱落を防ぐために行う、呼吸器系・循環器系・消化器系・皮膚系統・内分泌系統・泌尿器系・伝染病系統運動器系統・血液系統などのチェックデータを記録する

 

2-2、問題リスト

問題リストには、大きく分けて「医学的領域の問題」、「生活環境の問題」、「嗜好・習慣の問題」、「社会的問題」、「心理的問題」、「経済的問題」、「不具・身体障害的問題」の7項目があり、上記の基礎データをもとにして問題を取り上げ、計画・実施・評価を行います。

医学的領域の問題 病名、症状、診察所見、検査所見、手術名など
生活環境の問題 片麻痺の患者が1人で階段の昇降ができない、など
嗜好・習慣の問題 肝臓病:アルコール過剰飲酒、気管支喘息:ヘビースモーカー、など
社会的問題 失業、離婚など
心理的問題 病気に対する不安など
経済的問題 治療費が払えないなど
不具・身体障害的問題 患者1人での着脱が難しい、など

 

2-3、初期計画

問題リストを取り上げた後、「診断」、「治療」、「教育」に分けて計画を立てていきます。

診断計画 診断計画とは疾患の種類、程度、段階や、観察のポイントを記述し、医療情報を得るための計画をたてる
治療計画 治療目的と内容を具体的に記述し、ケア・治療における計画をたてる
教育計画 患者・家族に対して、疾患の種類、特徴、治療・ケア方法、効果、特定の薬剤、個人的な節制の仕方や、それらの効果の見直しなど、円滑に治療が行えるよう説明するための事項を取り上げ、それに際する計画をたてる

 

2-4、経過記録

経過記録は、一般的にSOAP方式が用いられます。SOAPは、問題ごとにS:主観的データ」、「O:客観的データ」、「A:アセスメント」、「P:プラン」の4項目に分けて記述していきます。

S:主観的データ

(Subjective Date)

患者が直接提供する主観的情報、患者の訴え、自覚症状などを記述する
O:客観的データ

(Objective Data)

医師や看護師など医療関係者が、観察、測定値、検査結果などから得た情報(一般状態・診察所見・バイタルサイン・検査)などを記述する
A:アセスメント

(Assessment)

SとOの情報をもとに分析・統合、判断・評価し、病態や予後などに関する意見・印象などを記述する
P:プラン・計画

(Plan)

S、O、Aの情報をもとに、観察計画(OP)、ケア計画(CP)、教育計画(EP)など、問題解決のための計画を記述する

なお、S・O・A・Pのほかに、I:介入」、「E:評価」、「R:修正」の3項目が加わることがあります。

I:介入

(Intervention)

実施・介入した具体的内容についての記録を記述する。
E:評価

(Evaluation)

Iの結果の評価記録を記述する。
R:修正

(Revision)

Eを考慮し、P(プラン)やIの修正記録を記述する。

2-5、要約記録

要約記録には、「中間要約」「退院時要約」があり、患者の問題を解決するために行った実施内容やその成果などを分かりやすく箇条書きで記述します。

中間要約 ①目標、②方策の実施内容、③成果の有無・内容、④達成の程度、⑤残存する問題、などを簡潔に記述する
退院時要約

 

3、フォーカス・チャーティング(FC)

POSの経過記録にはSOAP形式が採用されていますが、SOAPの代替えとして、フォーカス・チャーティングがあります。

フォーカス・チャーティングとは、コラム形式の患者・利用者に焦点を当て、系統的に記述する経過記録であり、“問題”に焦点を当てるSOAPに対し、フォーカス・チャーティングは“出来事”に焦点を当てるところに違いがあります。

なお、フォーカス・チャーティングにはFocus(フォーカス)」、「Data(データ)」、「Action(アクション)」、「Response(レスポンス)の4つの構成要素をもとに展開していきますが、「Focus(フォーカス)」の部分は独立して記載するため、一般的にはFを除いて、DARと呼ばれています。

F:フォーカス

(Focus)

患者が抱える問題、それに対するケア内容、目標などに焦点を当て情報を収集し、患者の関心、注意すべき行動、重要な出来事、懸念点などを記述する。(本文とは独立したフォーカス欄に記載)
D:データ

(Data)

Focus(フォーカス)を支持するとともに、検査・バイタルサインなどの主観的・客観的データを記録し、介入が必要な状況を詳細に記述する。
A:アクション

(Action)

医療従事者が、Focus(フォーカス)に対して行った行為(処置・治療・指導など)と、今度の計画などを記述する。
R:レスポンス

(Response)

Action(アクション)に対する患者の反応や結果を記述する。

 

4、SOAPとフォーカス・チャーティングの違い

SOAPとフォーカス・チャーティングは実は類似点が多く、お互いに関係し合っており、質の高い看護を行うために必要な「情報収集」、「アセスメント」、「計画」は、SOAP、フォーカス・チャーティングともに必須です。それゆえ、概略的な考え方としては、どちらも同じと捉えて構いません。

SOAP フォーカス・チャーティング
S:主観的データ(Subjective Date) D:データ(Data)
O:客観的データ(Objective Data)
A:アセスメント(Assessment) F:フォーカス(Focus)
P:プラン(Plan) A:アクション(Action)
I:介入(Intervention)
E:評価(Evaluation)
R:修正(Revision) R:レスポンス(Response)

しかしながら、双方には決定的な違いがあり、それは上で軽く触れましたが、SOAPは「問題」に焦点を当てるのに対し、フォーカス・チャーティングは「出来事(トピックス)に焦点を当てます。

つまり、SOAPは“全体的な視点”から総合的にケア・治療を行うための記録形式であり、フォーカス・チャーティングは1つ1つの事柄”に焦点を当ててケア・治療していく記録形式と考えれば分かりやすいのではないでしょうか。

フォーカス・チャーティングの誕生はSOAPよりも13年後のことであり、フォーカス・チャーティングは読み手にとって患者の現状を素早く把握できるという点で、昨今ではSOAPよりもフォーカス・チャーティング(DAR)を採用する病院が増えてきています。

 

4-1、SOAPとDARの記録例

以下の事例をもとに、SOAPとDAR(フォーカス・チャーティング)の各形式がどのように展開されるのか、双方の違いをみていきましょう。

■事例説明

山下和哉さん(仮名)、85歳、男性、

右後頭葉脳梗塞、左同名半盲、視野障害

入院時から視界がなくなり見えなくなったことに対して強い不安を訴えている。入院5日後、10時00分、「まったく見えない、いつ治るんだ」「見えないと不安でしょうがない、幸子(患者の妻)はいつ来てくれるんだ」と興奮気味に訴えていた。

 

■経過記録

5/21 10:00 訪室すると、「まったく見えない、いつ治るんだ」と興奮気味に訴えている。奥様がもうすぐ面会に来ることを伝えた。指や花は認識できるが、人の顔の輪郭がぼやけて認識が難しいようだ。視野の障害に対する不安感を強めている。車椅子の乗車許可がおりた。

 

■SOAP

5/21 日勤

#1右後頭葉脳梗塞による突然の視野障害(左同名半盲)や、入院に伴う環境変化による心理的動揺

S:主観的データ 「まったく見えない、いつ治るんだ」
O:客観的データ 訪室すると、興奮気味に訴えている。対光反射(+)、瞳孔不同(-)、指や花は認識できるが人の顔の輪郭はぼやけて識別が難しいようだ。
A:アセスメント 意識レベル変化なし、視野の障害に対する心理的動揺がみられる。傾聴が必要。患者は妻を頼りにしているため、妻のサポートが必要。妻の心理面も考慮する。
P:プラン 患者の訴えを傾聴する。妻の思いや考えも傾聴し、妻に患者の心理状態や病状を説明し、患者のサポートを依頼する。車椅子の乗車許可がおりたため、気分転換も兼ね、妻と一緒の散歩を計画する。

 

■DAR

5/21 10:00 突然の視野障害(左同名半盲)に対する心理的動揺
D:データ 「まったく見えない、いつ治るんだ」、訪室すると興奮気味に訴えている。対光反射(+)、瞳孔不同(-)。指や花は認識できるが人の顔の輪郭はぼやけて識別が難しいようだ。視野の障害に対して、動揺や不安感が強くみられる。妻は10:30に面会予定。
A:アクション 患者の訴えを傾聴するとともに病状の説明を行う。妻が10:30に面会に来ることを伝える。妻に患者の心理状態や病状について説明し、患者のサポートを依頼する。妻の思いや考えも傾聴する。
R:レスポンス 奥様はもうじき面会に来ることを伝えると、「うん、うん」と頷き、落ち着きを取り戻した。

 

4-2、SOAPとDARのメリット・デメリット

続いて、SOAPとDAR、それぞれのメリット・デメリットを列挙します。DARはSOAPの欠点を補うために考案された記録形式であるため、必然とDARの方がメリットが多く、デメリットが少なくなっています。

 

■SOAP

≪メリット≫

①内容の整理が容易で、問題点に焦点をあてた記録や情報収集が可能

②計画を実施の結果より評価し、科学的・系統的に記録する事が出来る

≪デメリット≫

①A:アセスメントが難しい

②S:主観的データとO:客観的データの区分に迷う

③記録からは実施内容が見えにくい傾向にある

④一時的で突発的な問題に対しては記録上、対処しづらい

⑤問題点に沿って、業務がルーチン化してしまう傾向がある

 

■DAR

≪メリット≫

①経過記録の書き方に統一性で理解が容易

②医療過程にそった経過を書くことができる

③一時的で突発的な問題や事実のケアとその効果・評価が書ける

④フォーカス欄の情報(経過・状態・結果)が明瞭

⑤ケア・処置・治療の有効性がわかる

⑥患者の経過や現状を素早く把握できるため、情報の伝達が容易になる

⑦記録時間が短くすむ。

⑧業務記録として診療の補助業務も書ける。

≪デメリット≫

①アセスメントが書かれていないため、問題分析、診断が不十分

②問題点の評価が不十分

③重症者や急性状況にある患者の場合で、刻々と変化する場合は、フォーカスが多く記録が多くなり困難

 

5、看護記録の保存期間

看護記録における保存義務は2年間です。看護記録以外にも、処方箋や手術記録、検査所見記録なども2年間保存することが義務づけられています。ただし、診療録(カルテ)に関しては医師法により5年間の保存が義務づけられています。

ただし、同一疾病が発症した際に情報収集を迅速かつ適切に行うため、また医療ミスの疑いに際する病院側の正当性の主張のために、2年以上の保存期間を設けている病院が多く存在します。

 

まとめ

看護記録は診療録の中でも最も重要な要素であり、患者に質の高いケアを提供するために必要不可欠なものです。SOAPとDAR両方採用している病院や、SOAPのみ採用、DARのみ採用と、すべては病院の体制や方針によって決定されるため、どちらの形式にも精通しておく必要があります。

看護記録が苦手!という方も多いでしょうが、実際、それほど難しいものではなく、書けば書くほど上手く書けるようになるため、どうしても分からない場合には、先輩に聞くなどして、書き方の基礎を学んでいきましょう。

看護師が教える!疲れた胃をいたわる食べもの9つと避けるべきもの6つ

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胃が疲れているときは、胃に良い物を食べて、胃を労わってあげなければいけません。胃が疲れているときにおすすめの飲み物や食べ物、また避けたほうが良い飲み物、食べ物をご紹介します。

 

胃に良い飲み物や食べ物で、疲れている胃を労わって、早く回復させるようにしましょう。

 

1 胃を良い飲み物

胃を良い飲み物

胃が本当に疲れていると、食事が喉を通らないこともありますよね。でも、水分はきちんと取らないと、脱水症状になって、さらに体調が悪化することになります。

 

ですから、胃が疲れていても水分は必ず取らなくてはいけません。胃が疲れているときにおすすめの飲み物4つをご紹介します。

 

1-1 経口補水液

経口補水液

胃が疲れていて食欲がない時は、経口補水液を飲みましょう。経口補水液は、体内に必要なナトリウムやカリウムなどの電解質を摂取できるだけでなく、体内の水分の組成と非常に近いので、水分の吸収効率が良いんです。

 

電解質と水分を摂取するだけなら、スポーツドリンクでも良いのですが、スポーツドリンクは糖分が多く含まれていて、経口補水液よりも胃への負担が大きくなりますので、本当に胃が限界まで疲れているという人は、まずは経口補水液で水分を摂取するようにしましょう。

 

1-2 水

水

胃が疲れているときにおすすめの飲み物、2つ目は水です。水は胃に負担をかけず、胃に良い飲み物なんです。

 

ただ、冷たい水を飲んでしまうと、胃に刺激を与えることになりますので、温かい白湯を飲むと良いでしょう。白湯は50~60℃に温めた水です。白湯だと胃の負担がさらに少なくなります。

 

また、白湯は冷たい水よりも体内に吸収されやすいというメリットもあります。一度沸騰させてから冷ました白湯は、不純物が少なくなりますのでおすすめです。

 

1-3 牛乳

牛乳

牛乳は胃酸のPHを下げる働きがありますので、胃壁を保護することができます。また、牛乳のタンパク質が、長時間胃の粘膜に張り付いて膜を作ってくれるので、胃を守ってくれるのです。

 

牛乳も水同様に冷たいものだと胃に負担をかけますので、温めたホットミルクを飲むと良いでしょう。

 

1-4 リンゴジュース

リンゴジュース

リンゴは消化を助ける働きがあります。そのため、胃が疲れたときは、そのまま食べても良いのですが、さらに消化を良くするためには、ジューサーでリンゴジュースにして飲むと良いでしょう。

 

また、ジューサーがない時は、すりおろしたリンゴを食べてもOKです。

 

2 胃に悪い飲み物

胃に悪い飲み物

胃に負担をかける飲み物、胃が疲れているときは避けるべき飲み物も知っておきましょう。

 

2-1 コーヒー

コーヒー

コーヒーは食後に飲むと、胃酸の分泌を促進しますので、消化を助けてくれる飲み物です。

 

でも、胃が弱って食欲がなく、胃に何も入っていないときにコーヒーを飲むと、消化するものがないのに胃酸だけがどんどん分泌されてしまいますので、胃の粘膜を荒らし、さらに胃に負担をかけることになります。

 

コーヒーが胃酸の分泌を促進するのは、コーヒーに含まれるカフェインが原因ですので、カフェインが含まれる緑茶や紅茶も空腹時は避けたほうが良いでしょう。

 

2-2 アルコール類

アルコール類

胃が疲れているときは、アルコール類は絶対にNGです。アルコールは胃から吸収されますので、アルコールを飲むと胃に負担をかけます。

 

また、アルコールは胃の粘膜を荒らしますので、さらに胃を疲れさせることになるんです。特に、アルコール度数の強いものを飲むと、胃の粘膜を直撃し、胃潰瘍の原因にもなりますので、胃が疲れているときはアルコールは絶対に止めましょう。

 

3.胃をいたわる食べ物

胃を労わる食べ物

次に、胃をいたわる食べ物をご紹介します。胃が疲れているときは、消化が良く、胃に負担の少ない食品を中心に食べるようにしましょう。

 

また、よく噛んで食べるだけでも、消化酵素が分泌されますので、消化を助け、胃の負担を減らすことができます。

 

3-1 卵

卵

卵は消化がよく、栄養価が高いので、胃が疲れた時にはおすすめの食材になります。ただ、火を通しすぎると、胃に留まる時間が長くなって胃に負担をかけますので、半熟の状態で食べると良いでしょう。

 

卵スープや卵豆腐などは、特に消化に良い卵料理になりますのでおすすめです。

 

3-2 豆腐や納豆

豆腐や納豆

大豆製品は消化に良いですし、良質な植物性タンパク質を含んでいますので、胃が疲れている時にはおすすめです。豆腐や納豆などを食べると良いでしょう。

 

ただ、煎り大豆や大豆の水煮は硬いですし、食物繊維が豊富に含まれていますのでNGです。また、油揚げも脂分が多く胃に負担をかけますので避けるようにしましょう。

 

3-3 ヨーグルト

ヨーグルト

ヨーグルトは乳製品ですから、牛乳と同じような効果を得られます。つまり、胃酸の分泌を抑えて、胃の粘膜を保護する効果ですね。善玉菌を摂取して、腸内環境を整えられるのも嬉しいポイントです。

 

3-4 うどんやおかゆ、雑炊

うどんやおかゆ、雑炊

三大栄養素の中で炭水化物はもっとも消化が早いですので、胃に負担をかけずに食べることができます。柔らかく煮込んだものは、それだけ消化が早くなりますのでおすすめです。

 

3-5 柔らかく煮込んだ野菜

柔らかく煮込んだ野菜

体調を整えるためには、野菜からの栄養素が欠かせませんが、生野菜は消化に良くありませんので、できるだけ柔らかく煮込んだ野菜を食べるようにしましょう。

 

ポトフやミネストローネなどは食べやすいと思います。それでも食べにくいという場合は、ペースト状に潰して食べてもOKです。

 

赤ちゃんの離乳食は、柔らかく煮込んだ野菜をすりつぶしたり、細かく刻んだものを用意しますが、あれは赤ちゃんが食べやすいからだけでなく、消化に良いからなんです。

 

胃が疲れているときは、赤ちゃんの離乳食をイメージした食事を用意すると良いでしょう。

 

4 胃に悪い食べ物

胃に悪い食べ物

最後に胃に悪い食べ物、胃に負担をかける食べ物をご紹介します。食物繊維が多いもの、脂っこいもの、香辛料や柑橘類は、胃が疲れている時には避けるようにしましょう。

 

4-1 食物繊維が多いもの

食物繊維が多いもの

食物繊維は腸の調子を整え、腸内環境を正常化させる働きがありますが、食物繊維は消化に時間がかかり、胃に長く留まりますので、胃に負担をかけてしまうのです。

 

そのため、ゴボウやタケノコなど繊維質が多い野菜、海藻類、きのこ類、玄米などは胃が疲れているときは避けましょう。

 

4-2 脂っこいもの

食物繊維が多いもの

揚げ物や脂身の多い肉類、また脂の乗った魚(サンマやブリなど)は、胃に負担をかける食べ物です。

 

三大栄養素の中で脂質はもっとも消化に時間がかかる食べ物ですので、胃の中に留まる時間が長く、胃が疲れて機能が低下してしまうのです。

 

また、ソーセージやベーコンなどの加工食品も避けた方が良いでしょう。これらの加工食品は脂質が多いことに加えて、胃の粘膜を荒らす塩分が多く含まれていますので、胃が疲れているときは避けるべき食品です。

 

胃が疲れているときに肉や魚を食べるなら、脂分の少ない鶏肉のささみや白身魚を食べるようにしてください。

 

4-3 香辛料

香辛料

唐辛子やわさびなどの香辛料は、胃を刺激して、胃酸の分泌を促進しますので、胃の粘膜を荒らす原因になります。胃が疲れているときは、刺激が少なく薄味のものを食べるようにしましょう。

 

 

4-4 柑橘類

柑橘類

柑橘類は、その酸味が胃酸の分泌を促進します。元気なときは、胃酸が分泌されることで、食欲増進につながるのですが、胃が疲れているときは、食欲は出ませんし、ただ単に胃を荒らすだけになりますので、みかんやグレープフルーツは避けて下さい。

 

ついつい食べ過ぎて胃が疲れてしまう。風邪を引いてしまい、胃の調子が悪いという場合は、胃に悪い飲み物や食べ物は避けて、胃に良い飲み物や食べ物を中心に食べて、胃を労わりましょう。

 

胃の調子が悪いときは、それほど栄養のバランスにこだわる必要はありません。まずは、胃を労わって、胃の調子を回復させることが先決です。お大事になさってくださいね。

事例を踏まえた分かりやすい看護師の倫理綱領・倫理原則 

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看護論理

質の高い看護を行う上で重要となる「倫理」。それゆえ、看護学校ではもちろん、臨床においても度々その言葉を耳にしますが、「倫理」とは何か、なぜ重要なのかを、完璧に理解できていますでしょうか?

倫理の存在なくして、また、倫理に従わなくして、質の高い看護を提供することは出来ないと言われているほど、看護倫理は非常に重要なものなので、「倫理」とは何かを、まだハッキリとは分からないという方は、当記事を参考に理解に努めてください。

 

1、看護倫理

看護倫理とは、いわば看護師が業務を行う上で守るべき「道徳」「規範」のことで、簡単に言うと、質の高い看護を提供するための「考え」「行動」の指針のことです。

指針が定まっていなければ、各看護師・病院が行うケアに大きな差異が生じてしまい、患者が適切な看護・治療を受けることができなくなってしまうため、看護倫理の存在やそれに準ずることは非常に大切なのです。

看護倫理の始まりは今から約65年前の1953年で、すべての患者が質の高いケアが受けられるよう、適切な看護を行う上でのガイドラインとして、国際看護師協会(ICN)が、世界で初めて国際的な倫理綱領(行動指針)を策定しました。

日本においては日本看護協会が1988年に初めて、看護師の基本的責任と人間性の尊重、ケアの質の向上への努力、差別のない看護の提供、プライバシーの保護など、10項目を策定。

目まぐるしい医療技術の発展や社会情勢の変化に伴い、日本看護協会は従来の倫理綱領の見直し・改定に取り組み、2003年に新たな行動指針を提示し、それが現在の看護倫理として、日本の看護ケアの指針となっているのです。

 

2、看護者の倫理綱領

2003年に日本看護協会によって提示された倫理綱領は15項目あり、すべての看護師がこれらの行動指針をもとにケアを実施していかなければいけません。以下に日本看護協会が掲げる倫理項目を、事例を踏まえて分かりやすく要約し列挙します。

 

①人間としての尊厳及び権利を尊重する

いかなる場面においても、生命・人格・尊厳が守られることを判断・行動の基本として、患者の自己決定を尊重し、 そのための情報提供と決定の機会の保障に努めるとともに、常に温かな人間的配慮をもって対応すること。

事例 排尿困難の患者が排尿の意思を示した際、排尿の可否に関わらず、誠意を持って対応する

 

②対象者に平等なケアを提供する

年齢、性別、国籍、人種・民族、宗教、信条、経済的状態、健康問題の性質にかかわらず、すべての対象者に平等な看護ケアを提供すること。

事例 病院として利益となりうる経済的に裕福な患者の入院を優先して受け入れるのではなく、すべての患者に対して平等に対応する

 

③対象者との信頼関係を築いた上で看護を行う

効果的な看護援助が行えるよう、患者との信頼関係を築くと共に、築かれた関係によって生まれる看護者への信頼感や依存心に誠実に応えるように努めること。

事例 採血時に、目的や注意点など細かく説明し、患者にとって安心感のある看護実践を行う

 

④知る権利・自己決定の権利を尊重する

看護・治療などに関して十分な情報を得た上で、その方針を選択する権利、自己決定に際する権利を尊重し、さらに診療録や看護記録などの求めに対しては、施設内の指針に則り、誠意を持って応じること。

事例 患者の家族が患者に対して病気の通知拒否を懇願した場合でも、患者本人が通知を望むなら、それを叶え、患者・家族・医療関係者が一丸となって治療を行える体制を整える

 

⑤守秘義務・個人情報の保護に努める

個人情報の利用目的を説明し、職務上で知り得た個人情報について守秘義務を尊重するとともに、情報の漏出を防止すること。

事例 勤務時だけでなく、プライベートにおいても患者の名前や年齢、病名や病状などの情報を口外しない

 

⑥看護阻害時には保護し安全を確保する

保健医療福祉関係者によって看護・治療が阻害されている時や、適切に実施されていない場合、さらに家庭内暴力など身体・精神的に危険にさらされている場合には、患者を保護するために働きかけるなど、適切な看護を受けられるようにすること。

事例 頭部損傷で来院した小児患者が、頭部だけでなく胸部、腹部、背部、四肢などに多くの外傷がみられる場合には、虐待の可能性を考慮し、児童相談所に報告するとともに、話し合いの場を設ける

 

⑦看護実践において個人としての責任を持つ

自己の能力や看護に対する責任を認識した上で、看護実践を行うこと。また、自己の能力を超える看護が求められる際、他の看護者に委譲する場合には、自己および相手の能力を正しく判断した上で、看護実践を行うこと。

事例 未知の薬剤を使用する際には、薬効や投与量、注意点などをしっかりと確認した上で、投与を行う

 

⑧継続的な学習により能力の維持・向上に努める

質の高い看護を提供するために、研修や学会・研究会、そのほか自主学習など、専門職業人としての自己研鑽に努めること。

事例 病院の基準的な看護方針だけに準じてケアを行うのではなく、個人の能力向上において高い意識を持ち続け、より有効な早期治療法・ケア法の習得に邁進する

 

⑨他の医療関係者と協働して看護を提供する

患者に関する知識・理解の交換や、看護・治療における工夫の提案など、他の看護者や保健医療福祉者との協力関係を構築・維持することによって、より質の高い看護を提供すること。

事例 認知症患者が退院し在宅療養に移行する際、患者が安心・安全・安楽な生活を送ることができるよう、ケースワーカーや在宅看護師と連携して、在宅移行支援を行う

 

⑩看護において望ましい規定を設定し、実施する

自らの職務に対して、質の高い看護を行うために重要となる行動基準(自主規制)を設定すること。また、これを遵守し実施すること。

事例 カンファレンスにおいて症例ごとにジレンマが生じ、方針が定まらないことで患者に適切なケアを実施できない場合には、グループ・病院単位で基準を設ける

 

⑪研究や実践を通して、看護学の発展に寄与する

日本または世界中で行われている最新の研究を活用して、看護を実践すること。また、自らが率先して専門的知識・技術の創造と開発を行い、看護学の発展に寄与すること。

事例 看護研究を行う際、また、看護研究論文を提出する際には、多忙を理由に研究への参加を拒否せず、積極的に協力する

 

⑫自身の心身の健康の保持増進に努める

地照射により良い看護を提供できるよう、自身の健康管理をしっかりと行うこと。特に援助専門職が陥りやすいストレスや燃え尽きを予防・緩和するために、職場における活動と私生活における休息のバランスを保ち、ストレスマネジメントをうまく機能させること。

事例 看護を提供する者として、心身ともに健康な状態を維持し、ウイルスなどの感染防止や医療ミスを防ぐためにも、病気発症時には出勤せず、自宅で療養する

 

⑬個人としての品行を常に高く維持する

社会または看護を必要とする人々からの信頼を得るよう、誠実さ、礼節、品性、清潔さ、謙虚さなど、社会的常識を十分に養い、看護を提供する専門職としての品行を高く維持するよう努めること。

事例 患者が安心して治療を受けられるよう、倫理的配慮を持って看護を行うとともに、看護提供者としてボランティアなどを通して地域社会に貢献する

 

⑭環境整備の問題の解決に努める

対象者の健康を保持増進するために、施設内における環境整備だけでなく、自然環境の破壊や社会環境の悪化に関する問題について、積極的に介入し解決に努めること。

事例 禁煙が必要な患者の喫煙現場を目撃した際には、禁煙を促す。(これには、患者の健康維持と、環境破壊の防止の効果がある)

 

⑮よりよい社会づくりに貢献する

看護の質を高めるために、保健医療福祉および看護に関する、社会の変化と人々のニーズに対応できる制度の確立に積極的に携わるとともに、専門職能団体などの組織が行う活動を通して、よりよい社会づくりに貢献すること。

事例 研究会への参加、研究の発表など、専門職業団体の一員として活動を行い、看護全体の質の向上に貢献する。

 

3、看護の倫理原則

臨床現場において、看護職員と看護ケアや治療の方針を決定する際に、釈然としない思い、いわゆるジレンマを抱くことがあります。これは、看護を提供する人それぞれに異なった思考が存在するために起こります。

さまざまな思考が存在することで、看護実施における困惑が生じ、患者に適切な看護・医療を提供できなくなってしまうため、看護を提供する者すべてに共通する概念として、日本看護協会によって「倫理原則」が作られました。

なお、看護の倫理原則には、医療倫理学に基づいた「自律尊重原則」「善行原則」「無危害原則」「正義原則」の4つの原則に加え、医療専門職に課せられた義務や規則の基礎となる「誠実の原則」「忠誠の原則」(以下、統合)の2つの原則があります。

 

自律尊重原則

自律とは、「自由かつ独立して考え、決定する能力」のことを指し、臨床現場において、情報の提供や疑問の解決を通して、患者の意思決定を尊重すること。

事例 胸部大動脈瘤の手術で、破裂のリスクと対麻酔になるリスクをインフォームドコンセント(正しい情報を得た上での合意)した上で、治療に際しては患者が選択した治療法を尊重する

 

善行原則

病院や医療関係者に利益のある決定を下すのではなく、患者にとって利益となる行動をとること。

事例 術後、除脈のために体外式のテンポラリーペースメーカーを外せない患者に対して、体内留置型のペースメーカーを植え込む処置を行う

 

無危害原則

転倒・転落の予防など、患者が危害を及ぶことを避けるために十分な注意を払い、リスクを最小限に抑えること。

事例 歩行が不安定で転倒歴のある術後のせん妄患者は、歩行する際にナースコールをするように説明・指導しても、一人でトイレまで歩行することがあるため、患者本人と家族の同意を得て、夜間のみ離床センサーを使用する

 

正義原則

集中治療室のベッドや災害医療用機器などの医療資源を提供できる人数の範囲内で、平等かつ公平に提供すること。

事例 病棟業務が多忙な状況であったとしても、緊急入院の患者を受け入れ、他の患者と同様に質の高い看護・医療を提供する

 

誠実・忠誠の原則

虚言や欺瞞など、信頼を損なう行動をとらないこと(誠実)。また、秘密や約束を守ること(忠誠)。

事例 患者から「信頼しているから言うけど、他の人には話さないでね」と秘密話をされた際、その内容を看護や治療の目的以外で他者に口外しない

 

4、臨床倫理の4分割法

臨床現場では、カンファレンスを通して患者や家族に対しする看護・治療方針を決定しますが、その際に看護師や医師など医療関係者のさまざまな意向が交錯し、患者・家族・医療関係者が足並みを揃えて治療を進められない事態に陥ってしまいがちです。

そこで、臨床倫理学・臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ法として、「臨床理論の4分割法」が提案されました。これはカンファレンスに際する円滑な方針決定のための一つの考え方であり、「倫理綱領」や「倫理原則」にも準じています。

医学的適応

(Medical Indication)

・診断と予後

・治療目標の確認

・医学の効用とリスク

・無益性

患者の動向

(Patient Preferences)

・患者さんの判断能力

・インフォームドコンセント

・治療の拒否

・事前の意思表示

・代理決定 (代行判断、最善利益

幸福追求:QOL

(Quality of life)

・QOLの定義と評価

・誰がどのような基準で決めるか

・偏見の危険

・何が患者にとって最善か

・QOLに影響を及ぼす因子

周囲の状況

(Contextual Features)

・家族や利害関係者

・守秘義務

・経済的側面、公共の利益

・施設の方針、診療形態、研究教育

・法律、慣習 、宗教

・その他 (診療情報開示、医療事故)

 

4-1、臨床倫理の考え方

カンファレンスにおいて、上記の各項目に準じた、以下のチェックポイントをもとに、各患者に即した看護・治療方針を決定していきます。

医学的適応 ・患者の医学的な問題点、病歴、診断、予後はどうか?
・急性の問題か慢性の問題か?重篤か?救急か?回復可能か?
・治療の目標は?
・成功の可能性は?
・治療に失敗した時の対応は?
・医学治療と看護ケアでこの患者は恩恵を受け、害を避けられるか?
患者の意向 ・患者がどのような治療をしたいと述べたか?
・患者は利益とリスクについて情報を与えられ、理解し、同意したか?
・患者の精禅的対応能力、法的判断能力は?判断能力がないという根拠は?
・事前の意思表示があったか?
・判断能力がないとしたら、代理決定は誰が?適切な基準を用いているか?
・患者は治療に協力しようとしないのかできないのか?もしそうならなぜ?
・総じて、倫理的法的に許される限り患者の選ぶ権利が尊重されているか?
QOL ・治療した場合としなかった場合の患者がもとの生活にもどる可能性は?
・備見を持った評価者が患者のQOLにバイアスをかけてみることはないか?
・治療が続けば、患者がどのような身体的、精禅的、社会的不利益を被るか?
・患者の現在や将来の状態は、患者が耐えがたいと判断するようなものか?
・治療を中止する考えやその理由づけはあるのか?
・患者を楽にする緩和的ケアの予定は?
周囲の状況 ・治療の決定に影響を与える家族の問題があるか?
・治療の決定に影響を与える医療提供者(医師看譲師)側の問題があるか?
・財政的、経済的な問題があるか?
・宗教的、文化的な問題があるか?
・守秘義務を破る正当性があるか?
・資涯の不足の問題があるか?
・治療決定の法的な意味合いは?
・臨床研究や教育の問題があるか?
・医療提供者や施設間の利益上の葛藤があるか?

 

5、倫理の必要性

「倫理綱領」「倫理原則」「臨床倫理」など、倫理における様々なガイドラインが提唱されていますが、はたして倫理というのは本当に必要なものなのでしょうか?

そもそも倫理というのは、「道徳」や「規範」といった、人として守り行うべき道であり、これは看護という枠組みの中だけに存在するのではなく、様々な職業においても存在します。

また、私たちの生活の中でも、たとえば「妊婦や高齢者に席を譲る」「落し物を交番に届ける」など、これも一種の倫理に当てはまります。

このように、秩序が保たれることで、社会全体が良い方向に進み、反対に指針となるものが存在しなければ、このような善行が一般的に行われることがないため、社会の秩序が乱れてしまいます。

看護においては、急速な医療技術の発展や社会情勢の変化に伴い、各人の価値観が多様化したことで、患者に最適なケアを提供することがますます難しくなってきています。それゆえ、すべての患者が最適なケアを受けることができるよう、行動指針となる看護倫理の存在や、それに準ずる精神は非常に大切なのです。

 

まとめ

優秀な看護師とは、豊富な知識と高い技術を有している者に限りません。いくら知識と技術を有していても、倫理で提唱されている事項、つまり患者を優先した看護の考えに則して行動していなければ、優秀とは言えないのです。

看護倫理は、すべての患者に質の高い看護を提供するための“指針”であり、自分本位ではなく患者を優先にした、看護における理想的な考えであるため、看護学生はもちろん、臨床経験豊富な方も、初心に戻って再度理解に努め、質の高い看護実践を行っていってください。

看護師のイメージが変わるかも?!ナースのガチなホンネ8選

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ICUで働くナースであるSonja MitrevskaさんがWeb記事で語った、他人が知らない「ナースのガチなホンネ」が、世界中のナースの間で話題になっています。これを読んだら、ナースは共感でき、その他の人たちは、ナースを見る目が変わるかもしれません。

 

1. 仕事の大変さは誰も理解してくれない

仕事の大変さ

多くの人は、ナースの仕事の範囲について知らないでしょう。普通の人は、「難しい仕事だ」ということしか分からないのです(でも、人々は、私たちがどれだけむくんで重い脚や背中の痛みそして心の痛みと戦っているということは知ることはないでしょう)。

ある人は、「ナースになりたいけど、勤まる気がしない」といいます。私たちは、「厳しい仕事だけど、やりがいはあるよ」と、「私たちが毎日直面している厳しい状況に、ほとんどの人は耐えられないだろうな~」と思いながら答えています。ある人は、「本当に週3シフトだけなの?毎年、残業したり、ボーナスはないの?」と尋ねます。現実は、もっとたいへんです。

 

2. 患者さんの病気が治っても、存在に気付かれない

看護師に気づいてくれない

もし患者さんの体に、本当に何かありえない、奇跡のようなことが起こったら、「奇跡だ!」と患者さんの家族は言うだろうし、「近代医学の力だ!」と外科医は言うでしょう。

奇跡ではなく、その裏には、ナースのとても献身的な世話もあるのです。私たちナースは、「ナースは、より多くの命を救いたい」と思っているのです。

 

3. 口が悪い

看護師は口が悪い

看護の仕事は、しばしば地味なものと思われがちでが、ナースは悲しい秘密があります。それは、私たちの「口」です。ナースのブラックユーモアや、皮肉な感性、不機嫌で生意気な口です。ナースのいじわるで、お下劣です。ナースは人々がえがいた絵のように完璧ではありません。むしろ、遠くかけ離れた存在です。

 

4. 毎日イライラしている

看護師はイライラ

私は、同僚がお互いにイライラして、でもすぐにジョークで笑い飛ばせるような職業は、ほとんどないと思います。私たちナースがやっていることは、人間の健康にとってのネイビー・シールズのような仕事なのです。非常に緊張するストレスフルな環境でナースは仕事をしています。

 

5. 世間のナースの固定観念はデタラメすぎる

看護師の固定観念

ナースが行っているのは、いつも、「愛の労働」です。でも、ナースは、命を救う、空飛ぶ天使じゃありません。歴史の教科書のような、白いキャップと、ピカピカに磨かれた靴の天使じゃありません。黒い網タイツでいけないランデブーをする人間でもありません。ナースはこれまで美化され、フェティシズムの対象となり、他の職業と違う土台におかれてきました。「ナースが何者であるか」は、いつも、「私たちナースじゃないもの」の情報の羅列で定義づけされているのです。

 

6. お酒飲み過ぎ、たばこ吸い過ぎ

看護師はお酒飲み過ぎ

ナースは、人間です。失敗もします。喧嘩もします。感情的にもなるし、ならないといけないのです。だって、毎日、現場の編成と、病気と、生死の分かれ目と、同僚と、家族と、そして自分自身と戦っているから。

私たちナースは、人間です。完璧ではありません。お酒も飲みすぎます。タバコも吸いすぎます。夜ご飯にキャンディーバーだけということだってあります。殴りたくても殴れる人がいないから、ごみいっぱいの袋を殴ったりもします。

 

7. ちょっとノイローゼになりがち

看護師はノイローゼ

こんな精神状態は、もはやクレイジーすれすれです。ナースはほぼノイローゼぎりぎりで、ちょっとA型っぽい行動をします。

 

8. それでもやっぱり、仕事が好き

看護師は仕事好き

私は、ふつうの、9時~5時定時の会社生活をいつのまにか捨てていました。それに気づかないふりをしようとしたけれども、それと戦おうともしたけれども、ナースという仕事は私の中に深く根付いていました。

今はどうでしょうか。私は、絶対に、以前のようには思わないでしょう。私はクレイジーすれすれだし、完全にノイローゼです。

私たちナースの欠点について、謝りたいと思います。もっと同情にみちあふれて、寛容な人間になりたいと思っています。でも、ナースになったことには、何も謝ることはないと思っています。

でも全部ひっくるめて、私は、ナースなのです。ごめんなさいね。

reference:HUFFINGTONPOST

ICUの冠疾患専門治療室「CCU」|看護師の役割と看護業務の実際

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CCU

ICUの専門的治療室に位置付けられるCCU。重篤な患者を収容するCCUでの看護業務は非常にシビアであり、多忙を極めることが少なくありません。しかしながら、その分、一般病棟よりやりがいが多いのも事実です。

ここでは、①集中治療室の種類、②CCU病棟で行う検査・治療、③CCU内に設置(常備)されている機器、④CCU内における医療従事者の配置・役割、⑤CCU内における看護師の役割、⑥CCU看護師の一日の主な流れ、の6つの項目をもとにCCUに関して詳しくご説明しますので、CCUでの勤務を考えている看護師の方は最後までしっかりお読みください。

 

1、集中治療室の種類

重篤な患者を収容し、24時間監視体制で治療を行う集中治療室は、細分化すると非常に多く、その中でも代表的なのが「ICU」「SCU」「CCU」の3つです。それぞれがどのような役割を果たしているのかみていきましょう。

 

ICU

ICUは「Intensive Care Unit(集中治療室)」の略で、内科・外科系問わず、呼吸器や循環器、その他の重篤な急性機能不全の患者を集中的に治療・看護を行う病棟です。一般的に集中治療部と言えばICUの事を指し、下に挙げるHCUやCCUなどの“専門的集中治療室”が存在しない医療施設においては、ICUで全てを担い、重篤患者に対して集中的に治療・看護を行います。

≪入院対象となる疾患≫

弁疾患、冠動脈疾患、大動脈疾患(解離性大動脈瘤・腹部大動脈瘤・腹部大動脈瘤)、食道癌、肺癌、膵癌、肝癌、脳腫瘍、脳動脈瘤、頸椎疾患、腎移植、肺炎、敗血症など

 

SCU

SCUは「Stroke Care Unit(脳卒中治療室)」の略で、脳梗塞などの脳血管疾患を有する患者の治療・看護を行う病棟です。ICUが集中治療の主体となることから、HCUが完備されている病院ではICUより軽度な患者(脳血管疾患以外も)を収容することが多いのが現状です。つまり、ICUと一般病棟の中間的存在として活用されています。

≪入院対象となる疾患≫

脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、痙攣、てんかんなど

 

CCU

CCUは「Cardiac Care Unit(冠疾患治療室)」の略で、虚血性心疾患を中心とした心臓疾患の有する患者の治療・看護を行う病棟です。心疾患は死因の2位であり、CCUに収容される患者の多くは、急変を行うことがよくあることから、患者に対する適切な観察・モニタリング、急変時の迅速な対応が求められ、とりわけ困難な集中治療室に属します。

≪入院対象となる疾患≫

急性冠症候群、心筋症、心不全、重症不整脈、徐脈、弁疾患、大動脈疾患(大動脈解離)、感染性心内膜炎、肺動脈塞栓症など

 

集中治療室と言えば一般的にICUの事を指しますが、大規模病院にはSICU(外科系集中治療室)、NCU(脳神経外科治療室)、KICU(腎疾患集中治療室)、RCU(呼吸器疾患治療室)、NICU(新生児集中治療室)、PICU(小児集中治療室)、MFICU(母体胎児集中治療室)、PICU(精神病集中治療室)などがあり、病状・疾患別に細分化されています。

なお、この医療施設の設備によってはこれら複数を統合する場合や、ICUしかない病院であればICUに全て統合するなど、医療施設によって集中治療の形態は異なります。

 

2、CCU病棟で行う検査・治療

CCUは重篤な心疾患(循環器疾患)を集中的に治療するところであり、CCU内で行う検査・治療は多岐に渡ります。中でも代表的なのがCAG」「PCI」「IABP」「PCPS」「低体温療法」の5つであり、これらがどのような検査・治療法なのか確実に熟知しておかなければいけません。以下にそれぞれの概要をご説明します。

 

CAG

CAGとは「Coronary Angiography」の略で、心臓カテーテル検査のことを言い、カテーテルを心臓まで挿入し、心機能の測定や血管造影などを行い、心臓の状態を検査します。なお、CAGには「右心カテーテル法」と「左心カテーテル法」の2種類あります。

「右心カテーテル法」では、①心内圧測定、②心拍出量の測定、③各部位の採血と酸素緩和度の測定、④血管造影などにより心機能の評価を行います。

「左心カテーテル法」では、①心血管造影検査(冠動脈・左心室・大動脈)、②生体検査などにより形態・運動機能評価を行います。

 

PCI

PCIとは「Percutaneous Coronary Intervention」の略で、経皮的冠動脈形成術のことを言い、風船やステントなどを用いて狭窄した冠動脈を広げて血流を改善する治療法です。

レントゲンによる透視装置を見ながら治療を行い、上腕動脈・大腿動脈・橈骨動脈などからシースと呼ばれる管を挿入し、ワイヤーや風船(バルーン)、ステントを冠動脈に挿入して冠動脈を内側から拡げ血流を確保します。

 

IABP

IABPは「Intra Aortic Balloon Pumping」の略で、大動脈内バルーンパンピング術のことを言います。急性心筋梗塞などの重症冠動脈疾患や心不全などを有する患者に対して、心臓に近い大動脈に風船(バルーン)のついたカテーテルを留置し、心臓の動きに合わせて風船を拡張・収縮させることで、心臓の代替として補助的に心臓の働きを助けます。

 

PCPS

PCPSは「Percutaneous Cardiopulmonary Support」の略で、経皮的心肺補助法のことを言い、重症心不全や急性心筋梗塞などの患者に対して、また心肺停止患者に対する心肺蘇生措置として行われます。

遠心式人口心臓、ポンプコントロールユニット、膜型人工肺、酸素供給源、ヘバリンコーティング血液回路、ヘバリンコーティングカテーテルから成る装置を用い、心肺ならびに脳を迅速に蘇生・回復させます。PCRSは一時的な心肺脳蘇生法であることから、その後はPCIなど適切な治療を行います。

 

低体温療法

低体温療法とは、主に心肺蘇生後の処置として行われ、①再灌流障害を防ぐ、②脳代謝を抑制し酸素消費量を減らす、③脳内Ca2+の恒常性改善による脳神経障害を軽減する、この3つを目的として施行されます。

 

3、CCU内に設置(常備)されている機器

続いて、CCUに設置されている各機器・器具についてご説明します。CCUは特殊な治療室であることから生命維持に関わりの深い特殊な機器・器具が設置されています。いずれも使用頻度が高く、操作や管理を間違えれば大事に至るため、各機器・器具に関して熟知しておかなければいけません。

 

①救急蘇生装置・人工呼吸器

気管挿管器具、気管切開器具、用手人工呼吸バッグなど、蘇生法に用いる装置・器具ならびに、適切な換気量の維持、酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減などを図るための人工呼吸器(人口呼吸装置)。

 

②除細動器

ICD(植え込み型除細動器)やAED(自動体外除細動器)など、心室頻脈や心室細動などの致死的不整脈を止め、心臓の働きを回復させる装置。

 

③ペースメーカー

洞不全症候群や伝導障害などに対して心臓の調律を図るための機器。洞不全症候群かつ刺激伝導のない患者に適応となるAAIペースメーカー、徐脈が稀に起こる又は心房細動に合併した徐脈に対して適応となるVVIペースメーカー、洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者に適応となるVDDペースメーカー、幅広い症例に適応となるDDDペースメーカーなど、各モードを搭載したペースメーカー。

 

④輸血ポンプ・シリンジポンプ

点滴静脈注射を施行する際の体内への注入速度・輸液量を調節する機器。輸血ポンプだけでなく、微量に輸液できる(正確な輸注が可能)シリンジポンプも適宜用いる。

 

⑤心電計

血液循環に際する心臓の拡張・収縮時の微弱な活動電流の波形を記録し、視覚的に読み取ることができる装置。看護師は必ず心電図の読み方を熟知しておかなければならない。

 

⑥ポータブルX線撮影装置

X線発生器、制御ユニット、接続電源ケーブルから成るCCU内で簡易的にX線撮影ができる小型装置。組立式保持装置または移動式保持装置が設備されている病院も多い。

 

⑦生体情報連続モニター・心拍出力計

心電図・心拍数・血圧・体温など患者のバイタルサインを継続的に測定・記録(モニタリング)できる装置。

 

⑧混合静脈血酸素飽和度モニター

酸素消費量の増大、発熱・感染などの代謝亢進、呼吸の低下、ヘモグロビンの低下など、混合静脈血酸素緩和度をモニタリングできるカテーテル器具。

 

⑨超音波診断装置

超音波により頸部・胸部・腹部・泌尿器などの内臓・組織をリアルタイムに映し出す装置CCUでは循環器に特化した超音波診断装置が設置されていることが多い。

 

このように、CCUには蘇生装置、輸血機器、モニタリング機器など、特殊な装置・機器が設備されています。これらは患者の病態を観察できるだけでなく、急変時の早期発見のために無くてはならない非常に重要なものであるため、設備されている全ての装置・機器に関してしっかり熟知しておきましょう。

 

4、CCU内における医療従事者の配置・役割

当項では、CCU内で勤務する各医療従事者の役割についてご説明します。CCUでは概ね、統括を担う「医師」、各医療機器の操作・管理に特化した「臨床工学技士」、看護全般を担う「看護師」、造影などを行う「放射線技師」、リハビリテーションの執り行う「理学療法士」、薬剤の調整・管理を行う「薬剤師」など、さまざまな医療従事者がそれぞれの専門的な業務を行っています。

 

医師

CCU全体を統括する役割を担い、急変時の治療を行う。日本集中医療学会認定の集中治療専門医、もしくは日本循環器学会認定の循環器専門医など、CCUでの治療または指導的立場にある医師が1名以上従事していることが望ましい。

 

臨床工学技士

医療機器、特に生命維持装置の操作を担当するとともに、医療機器の保守・点検を行う。CCU内にCCUでの業務に関与できる臨床工学技士またはCCUに専従する臨床工学技士が1名以上従事していることが望ましい。

 

看護師

医師や臨床工学技士と連携を図り、患者の容態の観察、治療における医師の介助、患者の日常生活の援助、精神的苦痛の緩和など、看護全体の役割を担う。常時、患者2名に対して1名以上、必要時には患者3名に対して2名以上の看護師が従事していることが望ましい。

 

放射線技師

血管造影に際する造影剤の投与などを行う。CCUでは緊急造影が必要となることが多いことから、放射線技師が施設に常時勤務していることが望ましい。

 

理学療法士

心疾患から回復した患者に対する心臓リハビリテーション業務を行う。CCU病棟内に1名以上の理学療法士が勤務していることが望ましい。

 

薬剤師

CCUでの薬剤管理や薬剤調整を行い、DDI(薬物間相互作用)の発生数の減少を目的として、昨今ではCCUにおける薬剤師の必要性が高まっている。

 

5、CCU内における看護師の役割

CCUは一般病棟とは異なり、急変の可能性が高い患者が収容されていることから、観察(異常の早期発見)、診察補助、医療機器の操作などが看護師の主な役割を担います。

それゆえ、患者の生活援助の機会はそれほど多くはありませんが、一般病棟のようにQOL向上のために献身的に援助することも忘れてはいけません。また、患者家族の対応も重要な役割を担います。

このように、看護師は臨床工学技士や放射線技師など専門職員が通常行わない業務を幅広く実施し、看護全体の役割を担っているため、多角的な視点を常に持ち状況に応じて柔軟かつ迅速に行動する能力が求められます。

 

観察(モニタリング)

心電図や生体情報連続モニターなどの装置により患者の状態を視覚的にモニタリングすることができますが、患者の“違和感”や疼痛などの“生理的反応”は見ることができません。

それゆえ、装置を介したモニタリングだけでなく、直に患者の状態を観察することが非常に重要です。特にCCUに収容される患者は急変を来すことが多いため、病態の変化を早期に発見できるよう常時適切な観察が必要不可欠です。

 

診察補助、治療介助

X線撮影、混合静脈血酸素飽和度モニター、超音波診断など、医療機器を用いた診察の補助や、治療時の医師の介助などが看護師の主な業務内容と言えるでしょう。

それゆえ、CCUに設置されている装置や器具に精通しておく必要があります。また、患者への直接的な問診(コミュニケーション)も大切な業務の1つです。重篤な循環器疾患を有する患者の中には上手く喋れない場合があるため、積極的にコミュニケーションを図るとともに、患者の状態を適宜確認しなければいけません。

 

QOL向上のための環境整備

多くの疾病、循環器系の重篤な疾病においても精神状態が生存率の向上や既有疾患の早期回復、早期離床に深く関係しています。また、精神状態は生活環境に大きく起因しています。それゆえ、看護師は患者のQOLを向上させ、早期回復・早期離床を図るために、環境整備が必要不可欠です。

上述のように、上手く意思疎通ができない患者が多々いるため、適切に観察した上で、患者のニードを満たすべく、清潔保持はもちろん、カテーテル・チューブなどの管や各医療機器のコードなどの場所の把握・着脱防止への工夫など、患者自身または患者の身の回りの環境整備を徹底しなければいけません。

 

患者の日常生活の援助

CCUでは、診察や治療に際する補助が看護師の役割の大半を占め、一般病棟よりも頻度は少ないものの、清拭や食事介助などの日常生活の援助も看護師の役割です。また、苦痛や不安の緩和、倫理的葛藤・意思決定などにおける援助など、包括的な視点から患者の日常生活の援助を離床まで一貫して行います。

 

患者家族への精神的ケア

重篤な循環器疾患を有する患者は急変の可能性が高く、医療機器に囲まれた状況や面会時間が制限されていることで、患者の今後起こりうる問題への不安、葛藤・混乱・心的不安、抑うつ・フラストレーションなど、患者家族の精神状態は不良と言えます。それゆえ、家族の不安の軽減に努めるともに、可能な限りにニードを満たせるよう支援していくことが必要です。

 

 

6、CCU看護師の一日の主な流れ

CCUでは基本的に「①情報収集」→「②患者カンファレンス」→「③KY活動」→「④備品確認」→「⑤処置」→「⑥患者へのケア」→「⑦夜勤専従者への引き継ぎ」という流れがルーティーンとなります。

 

①情報収集

電子カルテなどで今ある患者の情報を収集することから一日が始まります。

 

②患者カンファレンス

情報収集が終わった後、各医療従事者が集まり、夜間における患者の変化や当日の検査の内容・治療方針などの情報を共有します。

 

③KY活動

KY活動とは危険予知訓練のことで、患者や医療従事者における安心衛生の確保を目的として、事故や労働災害について話し合い、危険箇所を見極めた上で、対策立案・目標設定を行います。

 

④備品確認

CCUで使用する全ての備品を確認・補充など、必要な時に迅速に使用できるよう準備します。

 

⑤処置

患者の病態に合わせた処置を行います。この時、看護師は医師の介助を行うと共に、処置後の片づけを行います。

 

⑥患者へのケア

清拭や痛みに対する緩和ケアを行い、術前訪問、問題点や看護におけるカンファレンスなど、看護業務全般を行います。

 

⑦引き継ぎ

文書などを通して医師や夜勤従事者へ患者情報を引き継ぎ、一日が終了します。

 

基本的にCCU看護師の一日の流れはこのようになっており、主に⑤処置、⑥患者へのケアが一日の大半を占めています。急変時に迅速に対応できるよう常に神経を張り巡らせ、一日は慌ただしく流れます。それゆえ、看護師は事故防止や患者ケアだけでなく、自己管理も重要な業務の1つです。

 

まとめ

CCUでは主に重篤な循環器疾患(心疾患)の患者を収容するため、急変時の早期発見ならびに迅速に対応できるよう、観察力・集中力といった能力はもちろん、各機器の操作・管理に精通しておく必要があります。

多忙を極めることが多いものの、その分やりがいも多く、CCUで勤務し続ける看護師は非常に多いのが現状です。新人の頃は覚えることが多く、常に神経を張り巡らせた緊張感のある状況から、投げ出したくなる時も多々あるでしょうが、1つの壁を乗り越えると苦労は喜びへと変わるはずです。

上述のように新人の頃は覚えること(勉強すること)が非常に多いため、当ページを参考に就業前にある程度の知識を深め、今後の看護に役立てて頂ければ幸いです。

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