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看護師・患者間において“輪”となるケアリングの理論・倫理

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ケアリング看護

看護論を学ぶ過程で、「ケアリング」という言葉が出てきますが、ケアリングというのは看護実践の中核となる概念であり、看護者と対象との関係の在り方を示す重要な概念のことです。

 

理論や倫理というのは小難しくとっつきにくいものですが、ケアリングは看護実践において無くてはならない概念であるため、この機会にケアリングについてしっかりと学んでください。

 

当ページでは、ケアとケアリングの違いや、さまざまな人物が提唱したケアリングの概念、ケアリングの本質などについて分かりやすく解説します。

 

1、ケアリングとは

看護において、看護ケア、緩和ケア、ターミナルケアというように、「~ケア」という言葉がよく使われます。そもそもケアというのは英語で「Care(援助)」のことであり、キュア「Cure(治療)」と異なり看護そのものの事を指します。

 

では、ケアリングとは何のことなのでしょうか?

 

ケアリングは英語で「Caring(優しさ、援助する)」と言い、Careの名詞・形容詞ですが、看護におけるケアリングは単なる言葉の延長に止まらず、さまざまな意味合いを持っています。

 

ケア・ケアリングの違い

ケア 従来、身体的な世話を言い表す用語として主に使われてきた。身体的な世話により対象者との相互作用が促進されたり、対象者の心身が安楽になったりすることから、「療養上の世話」もしくは「生活の支援」としてのケアに看護の独自性を見出そうとしてきた歴史も長く、看護職にとって重要なキーワードである。また、医療の中では、キュアに対して看護の特徴を際立たせるために、キュア対ケアという構図で用いられる場合もある。
ケアリング 1.対象者との相互的な関係性、関わり合い、2.対象者の尊厳を守り大切にしようとする看護職の理想、理念、倫理的態度、3.気づかいや配慮、が看護職の援助行動に示され、対象者に伝わり、それが対象者にとって何らかの意味(安らかさ、癒し、内省の促し、成長発達、危険の回避、健康状態の改善等)をもつという意味合いを含む。 また、ケアされる人とケアする人の双方の人間的成長をもたらすことが強調されている用語である。

出典:日本看護協会 看護にかかわる主要な用語の解説

 

つまり、極論で言えば、ケアは「看護師→患者」というように看護師が患者に対して一方的に援助を行うこと、それに対してケアリングは「看護師⇔患者」というように、患者に対して援助を行うことで看護師自身がケアされる(成長する)と考えると分かりやすいのではないでしょうか。

 

よって、ケアリングは単なるCareが派生した意味合いに止まらず、「Care + Ring(輪)」のように、患者にケアを行うことでその行為が“輪”のように看護師自身に利となって帰ってくるという概念が存在するのです。

 

なお、これまでに「ミルトン・メイヤロフ」、「マドレイン・M・レイニンガー」、「ジーン・ワトソン」、「パトリシア・ベナー」などによって、ケアリング論が提唱されています。各人によるケアリング論に相違はあるものの、「看護師⇔患者」の関係性における本質に変わりはありません。

 

2、メイヤロフのケアリング論

メイヤロフは、著書「ケアの本質」の中で、「一人の人格をケアすることは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することを助けることである。」と述べているように、「他者にケアを行うことで自分自身の成長に繋がる」というケアリングの基本概念を確立した人物です。

 

また、彼女は同書の中で、ケアリングが行われる一連の過程を以下のように説明しています。

私は他者を自分自身の延長と感じ考える。また、独立したものとして、成長する欲求を持っているものとして感じ考える。さらに私は、他者の発展が自分の幸福感と結びついていると感じつつ考える。そして、私自身が他者の成長のために必要とされていることを感じとる。私は他者の成長が持つ方向に導かれて、肯定的に、そして他者の必要に応じて専心的に応答する。

つまり、メイヤロフが考えるケアリングとは、看護師が患者を尊厳のあるかけがえのない存在として認識し、その上で、看護師が患者のニーズに応えることで患者が成長し、看護師自身もケアを提供することで自身に欠けているものに気づく(成長する)という、他者志向的かつ自己志向的行動で、互いの利における関係性を重視したものなのです。

 

メイヤロフが論じるケアの要素

①知識 誰かをケアするためには、その人がどんな人であるか、その人の力や限界はどの程度か、その人が求めている事は何かなどについて知ること。
②リズムを変えること 単に習慣的に行うのではなく、自分の行動のもたらす結果に照らし、次の行動を修正すること。
③忍耐 相手の状況やペースに応じて相手の成長を助けること。
④正直 自分自身に正直に向き合うこと。
⑤信頼 相手の成長と自分自身を信頼すること。信頼が欠如するとケアの成果を求めたり、ケアしすぎてしまう。
⑥謙遜 他者について学び続けること、他者に対してケアすることがまだあることを理解すること。
⑦希望 自分の行うケアを通して相手が成長していくという希望のこと。
⑧勇気 相手がどう成長するのかわからないとき、相手の成長の可能性を信頼すること。

 

これは看護師の側に立ったものですが、これら8つの要素から成る姿勢・態度でケアを行うことで、患者との関係性に相互性をもたらすと論じています。

 

ケアの概念の備える特徴

①ケアは過程 (プロセス)である 他者と関わり合うのは 「現在」であるものの、「過去 」 「現在 」 「未来」 という時間の一連の流れ (過程)の中で 「現在」を捉えていくことが重要である。
②ケアは患者との関わり方(相互関係)である 人間と人間が出会ったその瞬間から相互交流が始まり、 どのような出会いをするかによって両者の関係は変わっていく。
③ケアは患者と自己成長を促す ものである 他者に対するケアを通してその人を成長 ・発展させ自己実現を図るようにすることであり、同時に看護師もまた成長し自己実現を図ることができる。
④ケアは対象者や場面が変わってもパターンは共通である ケアには対象や場面がいかに変わろうとも相手の成長 ・発達を助けるという共通のパターンが存在する。

 

3、レイニンガーのケアリング論

レイニンガーはメイヤロフなど先駆者が提唱したケアリング論に、文化人物学の手法を取り入れ、独自のケアリング論(文化ケア論)を提唱し、“ヒューマンケアリングこそが看護の本質である”と述べた最初の人物です。

 

レイニンガーが提唱するケアとケアリングの定義

ケア

=現象

人間の状態や生活の仕方を改良、改善するために、明らかにニードのある、またはニードがあると予想される他者に働きかけ、または他者のために経験と行動を助け支援し、できるようにすることに関係した、抽象的なそして具体的な現象を指す。
ケアリング

=行為・活動

人の状態や生活の仕方を改良、改善したり、死と立ち向かわせるために、明らかにニードのある、またはニードがあると予想される他の個人や集団を助け、支援し、それができるようにすることに向けられた行為や活動を指す。

 

ヒューマンケアリングの概念

看護を必要としている人々を慈しみ、かけがえのない人間として世話をし、気遣い、理解し、支えること。それは温かな関係作りから始まり、その過程において対象者も看護者も共に成長すること。

 

レイニンガーはヒューマンケアリングの概念(癒し・安寧)が看護の本質であると捉え、メイヤロフが提唱したケアリングの基本概念である「他者にケアを行うことで自分自身の成長に繋がる」という概念に文化的要素を取り入れ、文化的価値・信条・慣習に矛盾しないケアを提供することが第一であると説いています。

 

4、ワトソンのケアリング論

ワトソンはレイニンガーの理論(文化ケア論)を拡大させ、人間的で哲学的な価値観と科学的な知識を統合し、人間の尊厳や人間性を護ることこそが看護の中心であると考え、独自のケアリング論を提唱しました。

 

要するに、レイニンガーが考えるヒューマンケアリングを基盤に、「健康」と「癒し」に焦点を当て、人を「尊重する」という概念を重視したケアが、ワトソンが提唱するケアリング論です。

 

看護の際のヒューマンケアという価値観に関連した前提

①ケアと愛は、最も普遍的・神秘的かつ膨大な規模の宇宙の力である。

②ケアと愛は、見過ごされることがあるが、人間らしさの存続に不可欠である。これらのニードを充足することによって人間性の維持・回復を実現することができる。

③ケアの哲学と信念を看護の実践場面で生かすことによって、人間発達の文化に影響を与え、また社会に貢献することができる。

④自分自身をケアし尊重することによって、相手のことを心からケアし気遣うことができる。

⑤看護は人々の健康一不健康という現象に絶えず関心をはらい、常にヒューマンケアというスタンスをとってきている。

⑥ケアリングは、看護の本質であり実践の場面においては扇の要のような位置にある。

⑦ケアリングは、近代医療のシステムの中で重要視されなくなってきている。

⑧ケアリングの基盤は、バイオテクノロジーの進歩や官僚機構、官僚的制度などによって束縛され脅かされている。

⑨学問的にも臨床的にも、ヒューマンケアリングの維持・恒常は、今日および将来の看護にとって重要な課題である。

⑲ヒューマンケアリングは、人と人との「間主観的」なかかわりによって磨かれ実践に生かされる。

⑪看護は、ヒューマンケアリングの哲学を理論・実践・研究に活用することを通して、人類や社会に対して道徳的・科学的に貢献できる。

 

5、ベナーのケアリング論

ベナーはまず、気遣いや関心を持って接することから始まり、看護を提供する課程で他者と関与し、他者に看護を提供することで自身の意欲向上に繋がり自己研鑽に繋がるという一連の過程がケアリングであると説いています。

 

つまり、「気遣う看護」をケアリングの実践と捉え、感情や情動といった目に見えない感覚的なものだけでなく、患者の安心・安全・安楽の向上を目的とした治癒過程の促進を目指す看護行為そのものがケアリングであると考えているのです。

 

ベナーが考える看護の援助役割

①癒しの関係。

②痛みやひどい衰弱に直面した際、安楽にし、その人らしさを保つ。

③存在する。

④患者が自分自身の回復の過程に参加し、コントロールすることを最大にする。

⑤痛みの種類を見極め、適切な対処方法を選んで、痛みの管理やコントロールを行う。

⑥触れることを通して安楽をもたらし、コミュニケーションを図る。

⑦患者の家族に情緒的なサポートと情報提供的サポートを行う。

⑧情緒的・発達的なサポートを通じて患者を導く。

 

これらの役割を果たすことで、看護師自身がさまざまな状況に対応できる援助法を得ようという意欲、失敗を恐れず挑戦しようという意欲、援助役割を自分のものにしようという意欲がかき立てられ、看護師の自己研鑽に繋がるというのがベナーが説くケアリング論です。

 

6、各人のケアリング論の共通性

ここまで、「メイヤロフ」、「レイニンガー」、「ワトソン」、「ベナー」の4人のケアリング論をご紹介しましたが、それぞれに独自の概念が存在するものの、ケアリングの根本となる4人の共通概念が存在します。この共通概念は、“ケアリングとは何か”を厳密に示したもので、ケアリングの本質がここに見えてきます。

 

①ケアリングは看護師―患者間に存在する。

②ケアリングは看護において重要であり、 なくてはならないものである。

③ケアリングは、患者の目的達成を目指す過程で発揮される。そこでは看護師の成長も達成される。

④ケアリングは、その過程や発揮された場面が非常に見えづらく、わかりにくいものである。

 

このように、看護師と患者との関係性の中で生まれ、患者にケアを提供することで看護師自身が成長できるという概念がケアリングなのです。

 

7、引用文献

1)ミルトン・メイヤロフ.(1993).ケアの本質;生きることの意味,田村真・向野宣之訳.ゆみる出版.

2)マデリン M. レイニンガ-著、稲岡文昭監訳、「レイニンガ-看護論~文化ケアの多様性と普遍性」 、医学書院.

3)Watoson J (1988) 稲岡文昭監訳 (1992):ワトソン看護論一人間科学とヒューマンケア,医学書院,束京,109-110.

4)Patricia Benner, 井部俊子他訳:ベナー看護論:達人ナースの卓越性とパワー, 医学書院, 1998.

 

まとめ

ケアリングは、“輪”のように看護師・患者の双方が関係を成し、ケアする者とケアされる者が互いに成長できる理論であるため、たとえば、医療現場では「看護師⇔患者」だけでなく「看護師長⇔看護師(スタッフナース)」や、「教師⇔生徒」といった教育現場においても当てはまります。

 

患者のQOL向上のため、予防や早期治療のために何ができるかを常に考えることで、一方的なケアに止まらず自身の成長にも繋がります。

 

この機会に一方的なケアから双方が利となるケアリングの概念を心に留め、患者によりよい看護ケアを提供すると共に、自己研鑽に励んでいってくださいね。


災害看護の役割と災害支援ナースが提供する看護ケアの実際

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災害看護

災害の多い日本において、被災地での看護活動の必要性はますます高まっています。しかしながら、災害が発生した直後の被災地は特に混乱した状況下であるため、単に“被災者のために看護活動をしたい!”という気持ちだけでは成り立たないのが現状です。

 

それゆえ、災害現場において迅速かつ適切に看護活動を行えるよう、災害看護に関する深い知識を身につけてください。ここでは、災害看護の基礎情報や看護のポイントなど詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、災害看護とは

災害看護とは、「自然災害」「人為的災害」「特殊災害」など、短時間に局所的に発生した被災地域に赴き、被災者の手当や二次災害の防止など、被災地域・被災者に必要な医療処置および看護を提供することを指します。

 

自然災害・・・地震、津波、火山爆発、疫病など

人為災害・・・テロ、内乱、事故、大型交通事故など

特殊災害・・・政治的要因による騒動、人道的緊急事態など

 

テロや内乱などは国内でほとんど発生していないものの、日本は自然災害の多い国であり、さらに経済は発展に伴って、都市化や人口の過密化など、災害が起こる要因は昔以上に増加しているため、近年は特に、災害看護の必要性が高まっています。

 

2、災害における看護師の役割

被災地において救助・看護活動を行う看護師を「災害支援ナース」と言いますが、単に医療手当を行うだけでなく、下表のようにさまざまな支援活動も同時に行います。

 

なお、活動には大きく分けて「急性期」「亜急性期」「慢性期」「静穏期」の4つの過程があり、それぞれで活動内容が異なります。災害支援ナースは長期的に被災者の援助を行うという点で、救命救急士などとは活動内容が異なります。

 

急性期

(発生~3日)

・被災者の受け入れ態勢の準備

・中等度~重症患者に対する気道確保・血管確保などの初期治療

・軽症者に対する創部・骨折部の処置

・継続的な被災者の身体面・精神面における観察

・患者・家族に対する身体的・精神的な支援

・被災状況の調査、2次災害の防止

・一般市民への健康・病気の状態の確認

・死亡者へのかかわりと遺体安置所への移送、遺体の管理

・医療品、衛生材料、食料の確保と管理

亜急性期

(1~6か月)

・高齢者、障害者、子供などに対する精神的な健康配慮

・巡回診療による心身の健康状態の確認

・環境・保健衛生の調査・指導、感染症の調査

慢性期

(2~3年)

・慢性疾患、高血圧症、感染症などに対する看護

・トラウマやPTSDなど精神的疾患のケア

静穏期

(3年以降)

・今後の 課題・対応策の検討による減災に向けた行動化

 

3、災害看護の7つのポイント

被災地というのは、人が入り乱れることが多く、二次災害や二次被害が懸念されるため、迅速かつ適切に行動しなければいけません。そこで、混乱した状況の中でより多くの被災者・傷病者を救済するための災害マニュアル(初動手順)が存在します。

 

これをCSCATTT(スキャット)と言い、被災地域はもちろん、病院など医療施設での勤務中に地震など災害が起こった場合にも活用できるため、すべての看護師が知っておくべきマニュアルです。

 

組織体制 Command&Control

(指揮命令・統制)

混乱した状況下で、警察・消防・自衛隊・医療関係者の組織間の連携が円滑に行えるよう、指揮命令系統を確立する。
Safety

(安全)

Self(自分自身)、Scene(現場)、Survivor(スタッフ・患者・面会者)の安全を確保する。

医療従事者が安全に活動できないと判断される場合には、責任者への通達、現場からの退避、安全が確保されるまでの避難の原則に従う。

Communication

(意思疎通・情報収集/伝達)

TV、ラジオ、優先携帯電話、衛星電話などで現状を把握するとともに、医療組織内や警察・消防などと情報の交換を行う。

その際には、「発信者」「災害の内容」「場所」「災害の種類」「障害」「到達経路」「死者数」などの情報を伝えること。

Assessment

(評価・判断)

病院の状況(施設・負傷者・危険箇所・崩壊箇所など)や、被災地の状況(負傷者・危険地域など)、患者の受け入れの可否を判断する。
医療支援 Triage

(トリアージ)

災害現場、病院来院時、広域搬送時における被災者のトリアージを行い、治療の優先度や搬送の順番を決定する。
Treatment

(治療)

トリアージで緊急度の高い被災者から傷病に見合った適切な治療を行う。
Transport

(搬送)

人材・器具の在庫・ライフラインの状況など、病院の状況を考慮し、後方搬送・広域搬送を行う。

 

4、トリアージの必要性

CSCATTTの中で、Triage(トリアージ)という言葉が出てきましたが、トリアージというのは生存者をいかに優先的に救出・救助するか、つまり混乱の状況下で効率的かつ効果的に救済するためのシステムのことです。

 

混乱した状況下では、一刻の猶予も許されず、迅速かつ的確な判断を強いられるため、CWAPと呼ばれる原則に従い、子供(Children)、女性(Women)、Aged(高齢者)、Patient(病人・障害者、)を優先して救出・救助・搬送を行います。

 

なお、トリアージを行う際、「赤色」「黄色」「緑色」「黒色」の4色のタグを用い、被災者の重症度を視覚的に判断します。

 

赤色 第一優先群(即時) 直ちに救命処置が必要な傷病者

例:ショック・気胸など

黄色 第二優先群(緊急) 2~4時間以内に治療を要する傷病者

例:バイタルサインの安定した外傷

緑色 第三優先群(猶予) 保留、救急搬送が不要な傷病者

例:局所の損傷

黒色 第四優先群(待機) 死亡している者、または救命不能な絶望的状態にある傷病者

 

このように、トリアージは救助の優先順位をつけることで、迅速に多くの被災者・傷病者を救助することが可能となります。トリアージは人命救助において必要不可欠なシステムであるため、常に頭に留めておきましょう。

 

5、主な支援活動の内容

災害支援ナースは主に、避難所・救護所にて、医療の提供はもちろん、精神的ケアや生活支援など、実にさまざまな看護活動を行います。以下に、避難所・救護所における主な支援活動の内容を列挙します。

 

避難所

①生活環境への援助 ・冷暖房などの温度調節や換気、照明、騒音の配慮

・分煙への配慮(喫煙コーナーの設置など)

・ペットなどの動物の扱い

・靴を脱いで生活できる空間づくり

②食生活への援助 ・年齢・体調・疾患により食事への配慮が必要な人に対する食事メニューの調節

・充分な水分補給への援助

・食事を自力摂取できない人に対する食事介助

③保清・排泄への援助 ・新生児、高齢者、寝たきりの人に対する清拭・洗髪など

・排泄介助(おむつ交換も含む)

④睡眠・プライバシーの確保に対する援助 ・スペースの確保

・仕切りをつくるための物資の確保

・着替えの場や静養室、授乳室の確保

⑤活動に対する援助 ・生活リズムを整えるキッカケづくり

・運動不足解消のための朝のラジオ体操

・気分転換を図る活動の推進

・子供たちの遊び場づくり

⑥精神面への援助 ・災害後のストレス反応への理解を促す

・やり場のない怒りへの対応

・親身になって傾聴する

・定期的な巡回相談、声かけ

・交流の場づくり

⑦健康管理 ・被災者の健康チェック

・肺炎・エコノミー症候群など、災害関連疾患への対応

・インフルエンザ・感染性胃腸炎など、感染症の予防

⑧他職種、現地スタッフとの連携した活動 ・物資の整理整頓

・避難所運営への協力

・福祉避難所の活用

⑨二次災害への対応 ・避難ルート、安全場所(集合場所)の確認

・二次災害発生時の誘導、被災者の安否確認

 

救護所

①環境整備 ・救護所内の掃除(机・黒板・診察室 )

・物品の整理整頓(薬剤・食料品・不用品整理 )

・冷中保存容 器の保冷剤の交換

②医療の提供 ・診療の介助、投薬の介助
③伝達・記録 ・他の医療チームとの申し送り、情報の交換

・記録用紙の整理

④調査 ・各避難所の情報収集、環境調査、継続支援必要者の掘り起こし

 

 

6、PTSDの看護

PTSDは「心的外傷ストレス障害」とも呼ばれ、災害や人質、家庭内暴力など、さまざまな要因により発症する障害です。災害による要因の場合の多くは、災害直後(急性期)に「生命危機ストレス」が大きくのしかかり、亜急性期に「生活危機ストレス」「復興格差ストレス」というように、主に急性期~亜急性期にかけて発症し、時間の経過とともにストレスの種類が変化していきます。

 

PTSDに陥ると、完治が困難で、「認知療法」、「薬物療法」、「EMDR療法」などを用いて長期的な治療を必要とするため、急性期~亜急性期にかけては特に、PTSDに陥らないよう、献身的に被災者の心の救済に取り組まなければいけません。

 

6-1、PTSDの定義

被災者のほとんどは災害におけるストレスにより、抑うつや情緒不安など、何かしらの精神症状が現れますが、これらは数日~数週間程度で治まります(急性ストレス障害)。それに対して、生活に支障を及ぼすほどの重い精神症状が1か月以上続く場合にPTSDと診断されます。

 

なお、PTSDは以下の3つの症状により判別します。

 

①過覚醒症状・不安状態

災害を経験したトラウマにより、急に怒る、情緒不安定になる、集中力が欠けるなどの症状に加え、不安による不眠状態が継続します。また、持続的に興奮状態が続き、恐怖から常にびくびく怯えるようになることがあります。

 

②トラウマ関連の回避行動

人間の脳は、強い恐怖や不安を感じると、脳機能の一部を麻痺させることで、一時的に現状に適応させようと働きます。これにより、感情が麻痺し、幸福感や興味・関心が減退します。特に子供の場合は、脳機能の働きが弱く、トラウマの感覚や映像が心に取り込まれやすいため、喜怒哀楽など感情が表に出なくなります。

 

③トラウマに関するフラッシュバック

自分の気持ちの中で災害におけるトラウマ体験の整理がつかず、自分の意思に反して災害の状況や映像が頭の中に浮かび上がり、再度トラウマが起こっているような追体験をします。これにより、交感神経が過剰に活動し、悪夢を見る、身体が反応して動悸が起こる、吐き気がする、呼吸が苦しくなど、筋肉が硬直するなどの症状が出現します。

 

6-2、PTSDに対する心のケア

PTSDは主に急性期~亜急性期にかけて起こる精神障害ですが、人によっては亜急性期や慢性期に急に発症することがあります。それゆえ、長期的な予防的ケアが必要になります。

 

・急性期(災害発生~3日)

急性期は災害のショック度が非常に大きく、緊張状態が続くことで心身の状態が不安定になっています。それに伴い、安らかなに休息することができず、身体的・精神的な疲労が蓄積することで、PTSDをより発症しやすくなります。ゆえに、まずは心身ともに十分に休息できる環境を提供し、すでに危機回避ができている旨を優しく伝えるなど、精神的な安心を与えてあげることが大切です。

 

・亜急性期(1~6か月)以降

亜急性期に入っても精神状態が不安定な場合には、突如としてPTSDを発症することがあります。また、時の経過に伴い、被災地の外では災害に対する関心が薄くなり、被災者は孤立しているような錯覚を覚え、それに対してイライラや悲しみといった感情が出現します。この時期には、寄り添ってくれる存在が必要不可欠であるため、被災者の立場に立って献身的に、親身になって傾聴してあげることが何より大切です。

 

7、災害看護における必要な能力

被災地において、傷病者を救助するためには迅速かつ適切に看護を行えるだけの技術、豊富な臨床経験を有していることは当然として、「体力・精神力」「判断力」「コミュニケーション力」「安全に対する自己管理力」など、さまざまな能力を必要とします。

 

ゆえに、特に災害発生直後においては、“被災者の役に立ちたい!”という気持ちだけでは、かえって足手まといになってしまう可能性があります。災害支援ナースとして被災者に適切な看護を提供できるよう、自己研鑽していきましょう。

 

①体力・精神力

被災地には時に多くの傷病者がおり、短時間の間に多くの人命を救助しなければいけません。それゆえ、機敏に動けるだけの体力はもちろんのこと、死に向き合う精神力、どのような状況下でも折れることない気持ちを常に持っておかなければいけません。

 

②判断力

混乱が生じた際、適切な判断ができなければ、多くの人命を救助することができません。トリアージのような原則に準ずるのはもちろん、混乱した状況下では、マニュアルが通用しない場合も多いため、その場その場に適した行動を決定する判断力が必要不可欠です。

 

③コミュニケーション力

被災者の多くはパニック状態に陥ることがあり、また、トラウマが原因でストレスが大きくのしかかり、PTSDなどの精神障害に発展することがあります。看護師は、災害直後から長期的に被災者のケアにあたるため、被災者を心に安らぎを与えるような、安心に導くコミュニケーション力も不可欠です。

 

④安全に対する自己管理力

災害の中でも特に自然災害においては、2次災害の発生を常に頭に入れておかなければいけません。傷病者を救助するのが災害看護の第一目的ですが、救助する本人が危険に晒されてしまえば元も子もありません。混乱の状況下でも危険をすぐに察知し、少しでも危険を感じればその場からすぐに退避できる対応力に加え、傷病者の救済を延期する“覚悟”も持っておく必要があります。

 

8、災害支援ナースになるには

被災地において被災者の看護を行う災害支援ナースになるためには、以下に挙げる3つの登録要件を満たしておかなければいけません。

 

≪登録要件≫

・看護師の臨床経験が5年以上あること

・日本看護協会(各都道府県看護協会)の会員であること

・勤務先の所属長に災害支援ナースに登録する許可を得ていること

 

また、帰還後には都道府県看護協会が主催する報告会・交流会に参加することが義務づけられています。なお、災害支援ナースの登録は都道府県看護協会で行うため、登録要件の詳細は各看護協会に準じてください。

 

8-1、研修の受講

上記の登録要件をクリアしていれば、次に災害支援ナースの養成研修の基礎編と実務編をそれぞれ1日または2日間、受講する必要があります。

 

研修の内容や受講料などは、各都道府県の看護協会によって若干の差異はありますが、おおむね以下のようになっています。

 

目的 内容 受講料
基礎編 「災害医療と看護」の基礎編と位置づけ、災害支援活動に必要な災害医療と看護の基礎知識および災害発生時から長期的支援について学ぶ 災害医療の基礎知識、災害サイクルに応じた看護、災害支援活動に必要なこころのケア、災害支援活動における各看護協会の取り組み 会員6000円

非会員9000円

実務編 災害医療及び看護に必要な基礎的事項を理解するとともに、災害看護に必要な知識・技術を習得し実践できる能力を養う 災害支援ナースの役割・機能、活動の実際、医療救護、災害救護に必要な業務、演習 会員3000円

非会員6000円

 

8-2、必要書類を郵送する

登録要件をクリアし、指定の研修を受講した後、必要書類(登録票など)を居住地または職場のある都道府県の看護協会に郵送します。受理されると、晴れて災害支援ナースとして働くことができます。

 

なお、主要4都道府県(東京都・愛知県・大阪府・福岡県)の各看護協会の登録票は以下のページからダウンロードできます。

東京都看護協会

愛知県看護協会

大阪府看護協会

福岡県看護協会

 

まとめ

混乱した災害現場において、迅速かつ適切に看護活動を行うためには、CSCATTTやトリアージなどの原則に準じ、さらに状況に応じた臨機応変な行動が必要です。

 

日本は災害の多い国であり、近年では特に自然災害が多発しているため、災害支援ナースの必要性はますます高まっています。しかしながら、半端な覚悟では足手まといになってしまいます。そうならないためにも、強い気持ちと確かな知識を持って、看護を提供していってください。

NICUの看護|看護研究とその役割とは

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NICUの看護

NICUとは

NICUは特殊な場所なので、看護師でも入ったことのある人とない人がいます。

ICUはよく知られていますが、NICUはあまり知られていません。

特にNICUに入ったことのない人はあまりどのような場所なのかわからないのではないでしょうか。

NICUは必ずあるわけではありません。総合病院であったり、産婦人科がある病院ではNICUがあります。このように、病院によっても、NICUがある場所とない場所があります。

今回は、NICUとはどのようなところなのかを紹介します。

 

NICUとはneonatal intensive care unitの略です。日本語で言うと、新生児集中治療室です。

早産や小さく生まれた新生児、出生週数や体重は問題ないが、心疾患や染色体異常など何らかの疾患や障害を持った新生児が必要な時に過ごす病棟です。

ICUと同じように、生死に関わる部署です。

機械としては、呼吸器やモニターやDiVなどがあります。

更に、対象が新生児のため、保育器など新生児のためのモノが揃えられています。また、成人とは違い小さい新生児はシーネや挿管用の物品など使う医療機器も新生児用です。

そして、新生児のためすぐに状態がみれたり何かあった時にすぐに駆けつけられるようにワンフロアになっています。

 

NICUの役割

先ほども言ったように、対象は新生児です。成人のように気持ちを伝えることや移動や沐浴など自分で何でもすることが出来ません。

なので、児の全身状態を観察し必要なケアをしていきます。ですが、ただ児の病態だけを看護するだけではなく、新生児が過ごしやすいように環境を整えたり、新生児の成長発達をサポートしたりします。

また、新生児の場合必ず家族がいます。

新生児だけではなく新生児に関わる家族のサポートもしなくてはいけません。

何故ならば、NICUにいると家族は面会時間内しか児に合うことが出来ません。

産科であれば新生児と過ごし育児技術を身に付けていくことが出来、同室をしています。

ですが、NICUに入院してしまうとその普通のことが出来ません。

このように家族、特に母親と離れている時間が長いこともあり、愛着形成がつきにくいことや育児について何もできないことから技術がなかなか習得できなかったりすることがあります。また、離れていることから児の状態を知ることが出来ず、今の状態が分からず不安な思いをしている家族に対してのケアも必要となります。

このように、新生児と家族との愛着形成をサポートしたり、育児技術の習得、心理的なことなどをサポートする役割も持っています。

 

NICUの看護研究

看護師にとって看護研究は、切っても切り離せないことです。

どのようなことを研究テーマにしたらいいのかわからなくなります。

では、どのような研究テーマにするといいのでしょうか。

 

NICUの看護研究としては、次のようなテーマを取り組むことが多いです。

・看護師と家族との関り

・新生児と家族の愛着形成

・心疾患や障害を持った児の家族の精神的サポート

・新生児の退院後の支援

・新生児の入院中のケア

・新生児の採血やDiVの痛みケア

・ディベロップメントケアの効果

・新生児の落ち着く体位

・カンガルーケアの効果

・新生児の感染防止方法

・NICU入院中の母乳

・NICU入院中の家族への育児指導

このように、色々な看護研究があります。

研究内容としては、自分が看護師としてどのように家族や新生児と関わったのか、NICUに入院したことで愛着形成はどのようになったのか、採血やDiVなどのケアをすることによってどれほどストレスがかかるのかなど、NICUに新生児が入院することで新生児や家族にはどのような影響があるのか、感染防止にはどのような対策をしているのか、NICUに入院している新生児がいる家族に対しての関わり方などを研究していることが多いです。

紹介したのはごく一部です。この他にも細かく言えばあります。

 

NICUとストレス

看護師のストレスとしては、ワンフロアというどこにいても人の目に見られているということが大きいのではないでしょうか。

どのようなケアをしていても色々な人に見られているという感覚になります。

見られていても気にしない人もいると思いますが、毎日見られて自分には聞こえない声で話をしているのを見ると自分のことを話しているのではないかというような思い込みまで出てきてしまいます。

またその他にも、家族が面会時間中はほとんど来ることもあるので、疾患の軽い児は家族の都合に合わせてケアをしなくてはいけないこともあります。

そのため、家族が来る時間が遅くなってしまうとその分自分たちの仕事もずれてしまい、なかなか仕事が終わらないということもあります。

一日の計画を何度も立て直しながらケアをしていきます。

そして、新生児の状態も常に観察しなくてはいけません。モニターや全身状態、泣きすぎやミルク量の調節など、新生児の1つ1つを気にしなくてはいけないので、神経質になりすぎてしまいストレスになります。

 

まとめ

NICUのことが分かったでしょうか。

NICUは、新生児という新しい命の誕生をした場所に関わっています。

そして命の誕生とともに、状態によっては死を見なければいけない場所です。

嬉しさと悲しさの混じった部署ですが、新生児の全身管理や家族のサポートなど幅広い知識が必要となります。

その分やりがいがあり、退院する時の喜びや家族からの言葉でやる気が出る部署です。

褥瘡(じょくそう)|予防、処置・治療における看護ケア

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褥瘡(じょくそう)の看護

褥瘡(じょくそう)は、高齢者や寝たきりの患者に常につきまとう疾患であり、一度発症してしまうと完治に時間がかかるため、病院または医療関係者としては、発症を未然に防ぐのはもちろん、早期改善のために尽力を尽くさなければいけません。

 

褥瘡の発症を未然に防ぐため、完治に向けた適切な看護ケアを行うためには、まず褥瘡に関する知識を深めておく必要があります。当ページでは、褥瘡の概要や予防法・治療法、看護計画・アセスメントについて詳しく記載していますので、適切な看護ケアを行えるよう、最後までしっかり読んで、ぜひ参考にしてください。

 

1、褥瘡とは

褥瘡(じょくそう)とは、いわゆる“床ずれ”のことで、寝たきりなどによって、接地部位の血流が悪くなることで発症します。通常、人間の体は、苦痛に対して非常に敏感で、苦痛を避けるために脳から体の各部位に信号が送られ、苦痛を感じる部位を無意識的に動かそうとします。

 

しかしながら、寝たきりや身体に障害があり上手く体を動かせない(体位変換ができない)人は、脳から信号が送られているにも関わらず、それを体で対処することができません。その結果、体と各部位が床などに接地し続けることで、その部分の皮膚がただれたり、傷がついてしまい、この状態が進行することにより、褥瘡が発症します。

 

褥瘡は、圧迫性壊疽(えそ)の1つであるため、単なる皮膚炎とは異なります。皮膚炎の場合は、皮膚表面のみに炎症がみられるものですが、褥瘡の場合は、体組織の腐敗によって該当部位が壊死している状態であり、進行すれば皮下深くの組織が壊死するため、単なる皮膚炎よりさらに深刻な疾患なのです。

 

2、褥瘡の原因

褥瘡は体位変換ができず、寝たきり状態が続くことによって発症しますが、すべての人が同じような過程(時間・程度など)を踏んで、発症・進行するわけではありません。健康的な若年者よりも免疫力が低下している高齢者の方が発症しやすく、また、皮膚の状態や栄養状態によっても人それぞれ発症・進行の過程が異なります。

 

これらは主に「生理的要因」ですが、褥瘡発生の危険因子となる疾患、つまり寝たきりを誘引する「病的要因」も数多く存在するため、合わせて下記に列挙します。

 

生理的要因 ①高齢者、②栄養状態が悪い、③皮膚が弱くなっている、④むくみが強い・浮腫がある、⑤免疫力が低下している
病的要因 ①骨盤骨折、②糖尿病、③脳血管疾患、④脊髄損傷、⑤悪性腫瘍、⑥アルツハイマー病、⑦うっ血性心不全、⑧関節リウマチ、⑨骨粗鬆症、⑩深部静脈血栓症、⑪パーキンソン病、⑫慢性閉塞性肺疾患、⑬末梢血管疾患、⑭尿路感染症、など

 

3、褥瘡の好発部位

褥瘡を起こしやすい部位は、仰臥位や側臥位、座位において接地する皮膚面であり、中でも体重が乗りやすい部分(仰臥位:仙骨部、側臥位:腸骨、座位:尾骨)が好発部位と言えます。

出典:一般社団法人 日本褥瘡学会

 

なお、後頭部や耳など、意外な部分にも褥瘡が発症する可能性はあるため、患者の状態を観察する際には、体全体をくまなくチェックする必要があります。

 

4、褥瘡の予防

褥瘡が発症してしまうと完治までに時間がかかり、心身ともに患者に大きな負担がかかってしまいます。それゆえ、看護師は患者の入院時には適切にケアを行うのはもちろん、在宅療養においても予防ができるよう、患者や家族に適切な予防法を指導する必要があります。

 

褥瘡の予防法には大きく分けて、「体位変換」「栄養管理」「スキンケア」の3つがあり、これらを総合的に行うことで初めて褥瘡の予防に効果があります。以下に各予防法の概要や注意点をご説明します。

 

4-1、体位変換

褥瘡は主に、継続的な圧迫による皮膚表面または皮下細胞の壊死によるものであるため、体位変換が最も重要な、最も直接的な予防法と言えるでしょう。

 

・可能な限り体圧分散寝具を使用する

エアマットレスやクッションなどの体圧分散寝具をベッド上またはベッド間に敷くことによって、体重が一点ではなく、さまざまな部位に均等に分散されるようになります。褥瘡は、ある特定の部位に体重がのり続けることにより発症するため、体圧分散寝具を使用することで、褥瘡のリスクを抑えることができます。特に褥瘡の発症率が高い高齢者には、早期からの体圧分散寝具の使用が推奨されています。

 

・2時間を目安に体位変換を行う

仰臥位→側臥位、側臥位→仰臥位のように、特定の部位にかかる体圧を分散させるために、2時間おきに体位変換を行いましょう。ただし、2時間というのはあくまで目安です。患者の健康状態や体位変換に伴う苦痛の有無・居心地など個人差があり、さらに介護者が2時間おきに患者の体位変換を行うのは困難であるため、必ずしも2時間間隔で行わなければいけないというわけではありません。

 

なお、体圧分散寝具を使用している場合には、人体科学においては4時間おきでも問題ありません。ただし、個人差があるということはしっかりと心に留めておきましょう。

 

・体位変換は30°側臥位が望ましい

仰臥位の場合は仙骨(尾骨)、側臥位の場合は腸骨周辺が褥瘡の発生リスクが高い部位になります。30°左側臥位または30°右側臥位にすることで、褥瘡の発生リスクが高い仙骨部や腸骨部の周辺筋肉に体圧が分散され、さらに30°側臥位は体位維持における負担が少ないため、患者にとって優しい体勢を言えます。なお、30°側臥位には、お尻に左または右側にクッションなどを敷いて体位を維持します。

 

※注意点

体位変換時には、患者を引きずらず持ち上げて行ってください。また、チューブやドレーンなどの医療器具を留置している場合には、それらの上に直接患者が乗る体位をとらないよう注意してください。

 

4-2、栄養管理

褥瘡の発生は、栄養状態に強く起因し、特に高齢者の場合は、栄養不良により褥瘡だけでなく、さまざまな合併症を発症する危険性があるため、栄養管理は徹底して行わなければいけません。

 

・朝、昼、夜の1日3食が理想

高齢者は消化機能の低下により、摂取した栄養素をうまく体内に取り込むことができず、また、一回に食べられる量はそれほど多くありません。それゆえ、食事の回数は非常に重要です。朝・昼・夜の3回の食事は、栄養管理上、有効なのはもちろん、不眠や過眠、ストレスの改善など、生活リズムを整える上でも有効です。発熱時や食欲がない場合には、スープやアイスクリームなど、食べやすいものを補食して、低栄養にならないように注意してください。

 

・バランスの良い食事を心がける

エネルギー(摂取カロリー)が不足することで、体内の蛋白質量が減少するため、年齢や健康状態に応じたエネルギー摂取量はしっかりと確保しておくのはもちろん、蛋白質や水分、鉄分、亜鉛、カルシウムなど、各栄養素をまんべんなくバランス良く摂取するよう心掛けましょう。褥瘡が継続化すると、栄養不良に陥りやすく、また、各栄養素はどれも皮膚の再生に必要不可欠なものであるため、褥瘡の予防だけでなく治療においても栄養管理は非常に重要です。

 

・必要に応じてサプリメントを使用する

褥瘡予防には1日3回、バランス良く食べることが必要不可欠ですが、十分な栄養素を確実に摂取するのは困難であるため、必要に応じてサプリメントの使用を検討します。ただし、常用薬との相互作用に注意する必要があるため、医師や栄養士と相談し、サプリメントの種類や使用の可否を決定してください。

 

4-3、スキンケア

褥瘡は、皮膚の摩擦、便失禁による湿潤などにより、発症のリスクが高まります。それゆえ、日常的なスキンケアは非常に重要です。

 

・体位変換時の皮膚の摩擦を防ぐ

体位変換時に、寝衣のシワなどにより皮膚が摩擦を起こし、皮膚表面が硬化または軟化し、徐々に皮膚状態が悪くなっていきます。皮膚の摩擦を防ぐためには、可能な限り、1人ではなく2人で介助し、体の部分を少しずつ移動させましょう。また、スライディングシートの使用も検討してください。

 

・ドレッシング材を用いる

ドレッシング材とは、創傷治療で用いられる保護テープのことで、褥瘡の予防にも効果的です。「フィルムドレッシング」、「ハイドロコロイド」、「ポリウレタンフォーム」、「ハイドロジェル」、「アルギン酸ドレッシング」、「ハイドロポリマー」など、さまざまなドレッシング材がありますが、褥瘡の予防には摩擦に強くスベリ止め機能がついている「フィルムドレッシング」が特に効果的です。

 

・排泄物による皮膚の湿潤・汚染を防ぐ

高齢者や排泄機能に障害がある患者は、尿や便の排泄自体を防止することは困難であるため、肛門や陰部周辺にクリームなどを塗布し、排泄物による皮膚トラブルの防止に努めましょう。また、排泄後は優しく洗浄し、肛門・陰部周辺の清潔保持に努めてください。

 

・保湿クリームを塗布する

乾燥により皮膚は容易に損傷してしまいます。少しでも乾燥しているようであれば、積極的に保湿クリームを使用しましょう。また、乾燥自体を防ぐために、ビタミンなどの栄養素や水分の摂取を心掛けてください。

 

※注意点

褥瘡予防のためのマッサージは推奨されていません。特に、急性炎症や血管損傷、または皮膚が脆弱になっている可能性がある場合には、褥瘡部位のマッサージは禁忌になります。

また、褥瘡発生の可能性がある皮膚を強くこすってはいけません。特に高齢者の場合は、若年者と比べて皮膚が脆弱になっているため、疼痛が生じるだけでなく、軽度の組織損傷が生じたり、炎症反応を引き起こす可能性があります。

 

5、褥瘡の治療

褥瘡の治療は主に、「洗浄・消毒」「外用剤」「手術」を実施します。また、“4、褥瘡の予防”で挙げた「体位変換」、「栄養管理」「スキンケア」の各項目も同時進行で行っていきます。

 

褥瘡は、損傷深度の深さや発生原因などにより、完全に治るまでに時間がかかることが多いのが現状です。それゆえ、“日々のケア”が重要となります。まずは、「体位変換」や「栄養管理」、「スキンケア」を徹底し、褥瘡が悪化すれば洗浄や消毒、外用剤の使用、手術の実施など、保存的・外科的治療を行い、さらなる悪化を防いでいきます。

 

・洗浄・消毒の実施

1日1回、褥瘡の発生箇所を洗浄・消毒し、清潔状態を保持することで細菌の繁殖を抑え、褥瘡の早期改善を促します。

 

・外用剤の使用

外用剤は褥瘡の直接的な治療法であるため、褥瘡の程度や損傷深度に関わらず、褥瘡の発生箇所に塗布します。褥瘡治療に効果がある外用剤は数多く存在しますが、褥瘡の程度や損傷深度などによって効果が異なるため、状態に応じて使用する外用剤を決定します。

 

・手術の実施

細胞組織の死がい(壊死組織)が傷口に付着していると、治りが悪くなる(または治らない)ため、「外科的デブリードマン」などの手術を行い、これら細胞組織の死がいを取り除きます。

 

5-1、洗浄・消毒の実施

褥瘡を進行させる主な原因に、創部の細菌の繁殖が挙げられます。細菌は皮膚表面だけでなく、深部にまで繁殖し、この場合には褥瘡だけでなく、その他さまざまな感染症を招くため、創部の洗浄や消毒は必要不可欠です。

 

また、外用剤の効果を高めるためにも、創部の清潔を維持することが大切であるため、最低1日1回、傷の状況次第ではそれ以上の頻度で、洗浄・消毒を行ってください。

 

方法としては、注射器(針なし)に生理的食塩水または水道水を入れ、創部を洗い流し、ガーゼや綿棒などで拭き取ります。消毒剤には細胞に対する毒性を持っているため、基本的には洗浄のみで消毒の必要はありませんが、感染のある場合やポケット形成がある場合のみ消毒を行うようにしてください。

 

5-2、外用剤の使用

外用剤には、殺菌効果の高いもの、肉芽形成を促すもの、保湿により創部を保護するものなど、さまざまな種類が存在しますが、褥瘡の状態をもとに使い分けなければ、早期改善が困難です。それゆえ、状態に応じた適切な外用剤が確実に決定できるよう、よく用いられる外用剤の種類とその効能をしっかり把握しておきましょう。

 

  一般名 商品名 効能
水溶性 ユーパスタコーワ軟膏 ポビドンヨード・シュガー ・殺菌作用

・肉芽の形成

・吸水性

イソジンⓇシュガー パスタ軟膏
イソジンⓇゲル10% ポビドンヨード ・殺菌作用

・吸水性

アクトシンⓇ軟膏3% ブクラデシンナトリウム ・局所の血液改善作用

・肉芽・表皮形成

・吸水性

ブロメライン軟膏 5万単位/g ブロメライン ・創傷面の壊死組織の除去

・痂皮除去効果

カデックス軟膏0.9% カデキソマー・ヨウ素 ・殺菌作用

・創面の洗浄化

・滲出液吸収作用

油脂性 プロペトⓇ 白色ワセリン ・皮膚保護作用
亜鉛華単軟膏 10% 酸化亜鉛 ・創面の保護作用

・局所収斂作用

・痂皮の軟化

・上皮の形成作用

アズノールⓇ軟膏 0.033% ジメチルイソプロピルアズレン ・創面の保護作用

・抗炎症作用

・ヒスタミン遊離抑制作用

プロスタンディンⓇ軟膏 0.003% アルプロスタジル アルファデクス ・表皮形成促進作用

・皮膚血液増加作用

乳剤性 ゲーベンⓇクリーム 1% スルファジアジン銀 ・抗菌作用

・創面の清浄化

リフラップⓇ軟膏 5% リゾチーム塩酸塩 ・線維芽細胞の増殖促進

・表皮細胞の増殖促進

噴霧剤 フィブラストⓇスプレー 500 トラフェルミン ・血液新生作用

・肉芽形成

 

各症状に適した外用剤

深部損傷褥瘡(DTI)が疑われる場合 毎日の局所観察を怠らないようにし、白色ワセリン、酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレンなどの油脂性基剤を用いる。
発赤・紫斑がみられる場合 創面を保護するために、白色ワセリン、ジメチルイソプロピルアズレンを用いる。
水疱がみられる場合 創の保護を目的に、白色ワセリン、酸化亜鉛を用いる
びらん・浅い潰瘍の場合 一般的には、酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレンを用いるが、上皮形成の促進を期待して、ブクラデシンナトリウム、リゾチーム塩酸塩、アルプロスタジル アルファデクスを用いる場合もある。
滲出液が多い場合 滲出液吸収作用を有するポビドンヨード・シュガー、カデキソマー・ヨウ素を用いる。
滲出液が少ない場合 スルファジアジン銀などの乳剤性基剤を用いる。
褥瘡に感染・炎症を伴う場合 感染制御作用を有するポビドンヨード・シュガー、カデキソマー・ヨウ素、スルファジアン銀を用いる。
肉芽形成が不十分な場合 肉芽形成促進作用を有するポビドンヨード・シュガー、ブクラデシンナトリウム、トラフェルミンなどを用いる。
壊死組織がある場合 痂皮・壊死組織の除去効果のあるポビドンヨード・シュガー、ブロメライン、スルファジアジン銀を用いる。

 

創部の状態は時間と共に変化していくため、状態に応じて外用剤を変更しましょう。治癒効果がみられないのに同一の外用剤を使用し続けていては早期改善は難しく、場合によっては悪化する可能性があります。創部の状態をしっかりと観察し、状態に応じて最適な外用剤を選択し、使用してください。

 

5-3、手術の実施

創に壊死組織や感染がみられる場合、壊死組織や感染組織を除去し清浄化する必要があります。各組織の除去には「外科的デブリードマン」と呼ばれる手技が用いられ、鋏、鉗子、メスなどの器具を用いて外科的に壊死組織や感染組織を切除・除去します。

 

褥瘡が重症化し、壊死細胞や感染細胞が滞留・残留している場合、傷の自然治癒は困難であり、各予防法を実践しつつ外用剤を使用し続けても改善することなく、悪化する可能性があります。壊死細胞や感染細胞は外用剤である程度除去することはできますが、それだけでは除去しきれない細胞が付着し続けている場合には、患者や家族との相談のもと、外科的デブリードマンを検討・実施します。

 

6、褥瘡の看護計画

褥瘡の看護計画は、発生要因や褥瘡の状態、健康状態などを適宜しっかりと観察し、予防・治療においてスケールなどをもとに評価した上で、適切に立案しなければいけません。

 

褥瘡予防の看護目標

①適切な時間・頻度で体位変換(体圧分散)が行われる

②必要な栄養を摂ることが出来る。

③スキンケア・清潔保持が適切に行われる

 

褥瘡治療の看護目標

①発生原因を判別し迅速な対処が為される。

②必要な栄養を摂ることが出来る。

③感染症を悪化させずに適切な処置が為される。

 

6-1、アセスメント

褥瘡をアセスメントには主にスケールと呼ばれる評価シートにより、点数ごとに重症度を判別し、重症度や患者の健康状態などから実施する看護ケアを決定していきます。

 

褥瘡のリスクアセスメント

リスクアセスメントには以下のOHスケールなどを用いて発生のリスクを評価し、結果に応じて予防ケアを実施します。

危険要因 可否・重症度 点数
自力体位変換 できる 0点
どちらでもない 1.5点
できない 3点
病的骨突出

(仙骨部)

なし 0点
軽度・中等度 1.5点
高度 3点
浮腫 なし 0点
あり 3点
関節拘縮 なし 0点
あり 3点

※褥瘡リスク|軽度(0~3点)、中等度(4~6点)、高度(7~10点)

 

褥瘡の有無のアセスメント

・圧迫部位の発赤、水泡、表皮剥離、潰瘍の真皮までに止まる皮膚変化がある

・発赤を透明な板または指で圧迫しても白く退色しない

・発生部位を観察し、原因を推測している(体位、骨突出、排泄物による汚染など)

 

褥瘡発生時のアセスメント

褥瘡をアセスメントする場合、次の項目についてDESIGN-Rを用いて評価します。

出典:日本褥瘡学会 DESIGN-R® 褥瘡経過評価用

 

・圧迫部位の皮膚の変化、損傷の深さ・大きさ

・滲出液の有無、量・性状

・炎症・感染の兆候

・肉芽組織の有無、創面積における割合

・壊死組織の有無、創面積における割合

・ポケットを伴っている場合、その部位と大きさ

 

緊急対応を要する褥瘡のアセスメント

・褥瘡の周囲皮膚の発赤の範囲が大きい

・褥瘡の周囲皮膚の一部に明らかな熱感や腫脹がみられる

・褥瘡意外の感染は明らかでないのに全身の発熱がある

・褥瘡の周囲皮膚の一部に膿の貯留を思わせる感触がある

 

 

まとめ

褥瘡のリスクは高齢者や寝たきりの患者に常につきまとい、主に二次的に発症するため、発症してしまえば患者の負担は非常に大きいものです。それゆえ、入院時の褥瘡の発生は出来る限り防止しなければいけません。

 

外来においては、早期改善が図れるよう、日々の観察はもちろん、献身的な態度で看護を行い、患者の心と体の両方の負担を減らせるよう努めていきましょう。

クリティカルシンキングを用いた看護過程の展開・問題の解決

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クリティカル・シンキングの看護

昨今、医療現場においてクリティカルシンキングという言葉が多用されるようになりました。クリティカルシンキングは、患者に最適な看護を提供するために必要不可欠な考え方であり、その重要性はますます高まっているため、クリティカルシンキングとはどのような考え方で、どのように活用すれば良いのか、しっかりと理解しておかなければいけません。

 

以下にて、看護過程ならびに看護実践におけるクリティカルシンキングの考え方や、思考形成のためのポイントなどを分かりやすくご説明しますので、最後までしっかりお読みください。

 

1、クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは、目標達成のために“論理的”かつ“批判的”に物事を解釈し問題を追及する考え方のことです。患者に最適な看護を提供するためには、「アセスメント」、「看護診断」、「看護計画」、「看護介入」、「看護評価」という一連の過程を踏みますが、この過程の中で、①なぜそうなるのか②どうすれば良いのか③何がいけないのか、といった思考が生まれます。

 

この疑問的思考を事実に基づいて、“それは本当に正しいのか”という批判的な思考を持って問題を追及する思考過程がクリティカルシンキングであり、各患者にとって最適となる看護を提供するために必要不可欠な考え方です。

 

患者が抱える問題はそれぞれ異なり、真に求める解決策を見出すのは容易ではありません。しかしながら、論理的かつ批判的思考を持って看護過程を展開することで、さまざまな問題点を抽出することができ、患者が真に求める解決策を見出すことができるのです。

 

2、論理的・批判的とは何か

上項で“論理的”という言葉が出てきましたが、論理的思考というのは、「前提」→「証拠」→「結論」という流れを持った考え方のことです。

 

たとえば会話の中で、「状況説明」→「フリ」→「オチ」という一連の流れがありますが、このように話されると非常に分かりやすく引き込まれるはずです。この流れは漫才などでも活用されているため、私たちの生活の中にありふれている思考過程です。

 

また、音楽においても、「イントロ」→「Aメロ・Bメロ」→「サビ」という一連の流れがあり、これも論理的思考に基づいて構成されています。

 

論理的思考は、一般的に「ロジカルシンキング」と呼ばれており、“前提が正しい”という判断のもと展開していきますが、クリティカルシンキングは、“前提は本当に正しいのか”という批判的解釈を踏まえて展開していくため、ロジカルシンキングよりさらに高度な思考法なのです。

 

3、ビジネスにおけるクリティカルシンキング

医療現場において、患者に最適な看護を提供するためにクリティカルシンキングが必要不可欠ですが、これはビジネスにおいても非常に重要な思考法です。

 

ビジネスにおいて、目標達成のために“問題の提起”や“解決のための手法”などを考えていきますが、このさまざまな過程の中で批判的態度を持って考えることで、よりより解決を導くことができます。

 

クリティカルシンキングのステップ

①問題を取り巻く状況を分析・整理する

②生じる可能性のある問題の原因を定義・特定する

③その問題を分類分け(細分化)する

④その問題の解決法を導き出す

⑤最適となる問題解決法を選択・実施する

⑥実施結果の評価と生じた問題に対して調整を行う

 

この6つの過程の中で取得した情報について、常に“正しい”“正しくない”かを考えることで、より質の高い結果を得ることができます。なお、ビジネスにおけるクリティカルシンキングの考え方は、「①②-アセスメント」、「②③④―看護診断」、「⑤看護計画」、「⑤看護介入」、「⑥看護評価」というように、看護過程に通じています。

 

4、看護におけるクリティカルシンキング

クリティカルシンキングは、看護過程において非常に重要なアプローチであり、クリティカルシンキングなくして、患者によりよい看護を提供することはできないと言っても過言ではありません。

 

自分の思考過程を批判的・論理的に看護過程を展開するためには、「①情報の明確化」「②推論の検討」「③行動の決定と問題解決」の3つの批判的思考と構成要素について知っておく必要があります。

 

①情報の明確化

アセスメントを行う目的は、情報を取得・明確化することにあります。診断や計画の立案に先立って、患者の客観的・主観的データやニーズ・心配事などの情報を、観察や対話において取得しますが、取得した情報を明確にすることで、患者が抱える問題点も明確になってきます。

そして、問題提起のための仮説・前提・危険性に焦点を当て、取得した情報が正確性の高いものなのかという批判的な視点で追求することがアセスメントにおけるクリティカルシンキングであり、取得した情報が正確性に乏しければ、真に解決すべき問題が異なるため、取得した情報の明確化・正確性の追求が求められます。

 

②推論の検討

看護診断では、アセスメントによって得た正確な情報をもとに、患者が真に抱える問題を見出すとともに、それらの問題が解決可能であるかどうか吟味した上で決定します。

まず、得た情報に不確実性が伴っているかを、観察・データ・患者との対話・家族との対話・報告書など分析・評価し、多角的な情報から一致・不一致を判別します。そして、一致した正当性の高い情報をもとに、推論を立てていきます。

推論とは、根拠から結論を導くプロセスのことで、看護計画を立案する際に重要な要素です。正当性の高い情報から導き出した看護における患者の問題を解決するために、リスクはないか、利益はあるか、効率的か、バランスよく実施できるか、などを考慮・吟味した上で、実施する内容が真に患者にとって適切な行為なのかを判断・決定します。

看護過程におけるクリティカルシンキングで、最も重要となるのが「推論の検討」であるため、“なぜ”、“どのように”という疑問を常に持ち、効果的かつ効率的な解決策を見出す必要があります。

 

③行動の決定と問題解決

最後に、「情報の明確化」、「推論の検討」のプロセスに基づいて結論を導き出し、行動決定や問題解決を行います。看護介入を行う際には、患者の反応をアセスメントし、決定した行動が真に患者にとってより良いものなのかを考え、否または改善の余地があれば再実施に向けて、“なぜ”適切ではなかったのか、“どのように”改善すれば良いのかを検討・判断します。

 

このように、正確性・根拠のある情報から問題点を導き出し、その問題を解決するために最適となる看護ケアを決定し、実践・評価するというプロセスを踏む看護過程において、“なぜ”や“どのように”という疑問を投げかけ、批判的視点を持って展開していくアプローチ(クリティカルシンキング)は、患者の真に抱える問題解決のために必要不可欠な思考能力なのです。

 

なお、「アセスメント」、「看護診断」、「看護目標」、「看護介入」、「看護評価」の看護過程における5つのプロセスすべてにクリティカルシンキングが対応しているわけではなく、おおむね、「アセスメント」、「看護診断」、「看護目標」の3つのプロセスに対応していると認識しておきましょう。

 

3、批判的に物事を考えるための思考・態度

クリティカルシンキングは、根拠を明確にするために、情報や証拠が“正しいか”という批判的思考を持って追求することですが、この批判的思考の有無によって、提供する看護の質が大きく変わってきます。

 

批判的に物事を考えるためには、“意識改革”が何より大切であるため、以下に挙げる思考・態度をしっかり抑えておきましょう。

 

①言われた事、書かれた事、伝えられた内容の意味・意図を明確に理解する

②十分に情報を得ようとする態度でアセスメントを行う

③多角的な情報網から情報を取得し、正確性を追求する

④全体的な状況を理解し、根拠の正確性を追求する

⑤情報が不明瞭、または証拠・理由が不十分であるときには判断を差し控える

⑥結論や問題的を確定し、これに焦点をおく

⑦自己の基礎的な信念を反省的に意識しようとする

⑧偏見を排除するために自分の意見よりも他人の意見を真剣に考慮する

 

クリティカルシンキングを習得するためには、“考えること”が大前提であり、さらに“積極的な態度”を持って思考回路の形成に努めなければいけません。

 

4、参考となる書籍

クリティカルシンキングの考え方は非常に奥が深く、包括的かつ具体的に理解するまでには多大な時間と努力を要します。

 

また、ひとえにクリティカルシンキングと言っても、“合理的(論理的)かつ反省的(批判的)な思考”という定義については共通の理解があるものの、教育的視点・心理的視点・社会的視点など、人によって考え方が異なります。

 

それゆえ、多角的にクリティカルシンキングを理解したいという方は、現在までに出版されている書籍をぜひ活用しましょう。

看護にいかす クリティカル・シンキング

看護にいかすクリティカルシンキング

批判的思考について多角的な視点から論じた、基礎・臨床領域とコミュニティー・ヘルスの領域における論理的・批判的思考に基づいた考え方を綴っている。看護師として、自らの思考過程を検証し、よりよい看護のための思考スキルの開拓に役立つ、看護師など医療関係者に向けた専門教材。

 

看護学生のためのクリティカルシンキングと書き方―基本的な考え方と活用

看護学生のためのクリティカルシンキングと書き方―基本的な考え方と活用

クリティカルシンキングの基礎を学ぶために、具体的事例を踏まえて分かりやすく解説されている。学習課題にも役立つ、看護学生向けの一冊。

 

楽しく学ぶクリティカルシンキング

楽しく学ぶクリティカルシンキング―根拠に基づく看護実践のために

クリティカルシンキングの概要や思考様式、クリティカルシンキングを用いた看護過程の展開など、看護ケアにおいて実践的な考え方について詳細かつ分かりやすく述べられている。

 

クリティカルシンキング (入門篇)

クリティカルシンキング (入門篇)

現代社会において、より良く生きるために必須となる「思考」と「態度」について、実用的な視点で書かれている。社会におけるクリティカルシンキングに関する書籍ではあるが、心理的側面から物の考え方や判断を知ることができ、看護においても応用可能であるため、一読しておきたい一冊。

 

まとめ

クリティカルシンキングの根本となる考え方は誰しもが有しているものです。たとえば、日常生活において、他人の言葉を100%信じる人はいないでしょう。この疑うという思考がクリティカルシンキングそのものであるため、誰もが日常的にクリティカルシンキングの考え方を活用しています。

 

しかしながら、追求すれば実に奥が深く、追求すればするほど、①物事が明確になる、②根拠に基づいた正しい判断を行うことができる、③的確な問題点を見出すことができる、というように問題解決能力が向上し、患者にとって最適な看護を提供することができるようになります。

 

まずは、1つ1つの情報や問題点に対して“それは本当に正しいのか”“それは本当に患者のためになるのか”という疑問を意識的に持ち、看護過程を展開していきましょう。常に批判的態度で考えることで、自ずとクリティカルシンキングの姿勢が確立されていくでしょう。

専門医が教える!幸せホルモン「オキシトシン」にあふれる生活の過ごし方

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オキシトシン

 1 一人暮らしが寿命を縮める理由

「他人に関心を持つ」ということは、人類が生き延びていくために 最も重要なもののひとつです。他人と交わり生活していくことは私たちの健康に甚大な影響を与えるからです。質の高い良好な人間関係を築けている人々は死のリスクが低くなっていますが、独り暮らしの人々では死のリスクは高くなっています。

 

自分を支えてくれる家族を持ち親密な交流網を持つことが、健康を増進させてくれます 。長年連れ添った伴侶からの心の支えは心臓血管系や死亡率の高い疾患のリスクを引き下げる効果があります。心の支えがどのような形象として現れるかというと、それは会話時の「表情」「身体の動き」「言葉使い」「声のトーン」といった複数のデリケートな伝達様式によって表現されます。

 

夫婦間での情緒面での支えや思いやりの心は、「手を握る」「抱擁する」「寄り添って座る・寄り添って寝る」といった身体的接触行為によっても相手に伝わります。女性の例ですが、夫との抱擁の頻度と血圧値に相関関係があることが報告されています。

 

動物実験においても幾つかの哺乳動物については、仲間との接触が心理的・生理学的安定に必要不可欠であることが解っています。ネズミの実験では、ツガイにしていたネズミは仲間への敵対行動が減少し、仲間との適応障害に通常みられる心臓血管系・神経内分泌系の不調も抑制され仲間にみせる態度も穏やかになっています。幾つかの種においては「仲間と睦ぶ」行動は心理面の平穏のためにも生理機能の安定のためにも欠くべからざるものであることが示されています。一方で「仲間からの離脱」という状況は一つの強烈なストレス因子であることが知られています。

 

2 「オキシトシン」が注目される理由

オキシトシンは脳下垂体で産生される神経伝達物質(神経ホルモン)です。オキシトシンには既に良く知られた「授乳」「分娩の促進」のような哺乳動物としての繁殖機能を助ける働きの他に、抗ストレス作用や抗不安作用を持っています。オキシトシンは ストレスが誘起した視床下部—下垂体—副腎系の活性化を抑制します。

 

ラットで急性ストレスを負荷後にオキシトシン投与を行うとACTH、コルチゾールの放出が大幅に抑制されると共に、視床下部のストレス因子(CRF) の増加が抑制されます 。オキシトシンの外部からの投与はストレス性反応(不安行動)を減少させる効果があります。神経を損傷し鬱に似た行動を示す単独飼育されているマウスにオキシトシンを 投与するとその行動が改善されます。これとは逆に、ペアで共同飼育している動物に「オキシトシン受容体拮抗剤」を投与すると鬱に似た行動が表れます。

 

オキシトシンには社会行動や積極的な仲間付き合いを調整する重要な働きもあります。ハタネズミの実験では、外部から中枢神経にオキシトシンを投与するとパートナーを求めはじめオス・メス共に群れ合う行動が促進されます。人にオキシトシンを経鼻投与 (噴霧)すると他人を信用する度合いが上昇します。前向きに生きる姿勢は勿論ですが、日常生活の中で人と交わることで得られる相互作用が男女共にオキシトシンシステムを継続的に活性させています。ラットの実験では、世話をしてくれるものとの身体の接触が視床下部のオキシトシン放出を促していることが確認されています 。こうした結果は、日常的な人や仲間との交流(接触)がオキシトシン発現を増加させ、それに因って心理行動や日常活動を調節していることを示すものです。

 

オキシトシンはPTSD(心的外傷後ストレス症候群)の患者の治療に有力な候補だと言えます。その理由はオキシトシンには不安を和らげ意欲的な社会的活動を促す働きがあるからです。ストレスが機能性胃腸症を進行させる主な悪玉であることは広く知られています。機能性胃腸症を患う患者はしばしば生活面で消極的になる傾向があります。人に関心を持ち積極的に交友すると、中枢神経でオキシトシンの発現が増加しそれに因ってストレスの多い日常生活が乗り切れ胃腸障害が改善されます。オキシトシンの生理作用は、社会的愛着を持ち良好な人間関係を築く有用性の科学的/医学的な根拠を提供しています。

 

3 オキシトシンを増やす方法

積極的に人間関係を築くことは私たちのオキシトシンシステムを持続的に活性化させてくれます。積極的な人間交流は共感や思いやりの心情や行動を与えたり受けたりする双方向性の感情を受け渡しする行為といえます。人への共感は血漿中オキシトシン濃度を高めます。人の実験では共感の気持ちの高まりが見知らぬ人へ予想以上のお金を提供させていました。

 

このことから分かるように、オキシトシンは共感を感じたときに現れる生理学的特徴の一つであり、寛大さを調節しています。人と付き合うことは、お互いが共感・気遣いを授受しあうことで自分の身体の中に内因性のオキシトシン発現を増加させ、日常経験するストレスの克服に重要な役割を果たすことになるのです。助けを必要とする人々のことを考え彼らに同情を寄せるだけで視床下部のオキシトシン発現が増加します。そしてそのオキシトシンが我々の心と身体の健康を促進させるのです。

 

仏教では昔から「慈愛の瞑想」などの瞑想法の修行により人との交友を進んで行い、人を慈しむことを強調してきました。欧米の心理学者は、この「慈愛の瞑想」を応用し、最近Loving kindness meditation (LKM)という瞑想法を確立しました 。その研究結果は LKMの実践により慢性腰痛、心理的苦痛、怒りの感情が和らぐことを報告しています。私たちの身体の健康と心の平穏を保つためには他人との人間関係を自発的に構築し、人への思いやりの心を育むことを教える仏教の伝統を再評価することが大切になっているのです。

もし他人を幸せにしたいと望むなら、他人のことを想いやりなさい。もし自分が幸せになりたいと望むなら、他人のことを想いやりなさい』(ダライラマ14世)。

他人を想いやることが、自他ともに幸せになれる鍵なのです。仏性とは天上の仏様から授かるものではなく、仏に手を合わせ他人のことを思い世の平和を願う時、内からおのずと湧き上がってくるものなのです。そして、その瞬間にこそオキシトシンが放出されています。その結果、我が子を抱く時の母親が体験する幸福感や安堵感を万人が感ずるのです。『慈悲』とはオキシトシンで媒介される感情の発露なのです。

 

4 ボランティア活動で寿命がのびる!

慈善活動は人にしか見られない、社会に積極的に関わろうとする社会的行動の一つです。寄付行為というのはそれを行う人に直接見返りがあるものではありませんが、それが慈善的な寄付であれば、社会的評価を得られるとか、善行をしているとき心に感じる満足感などを得ることができるでしょう。困っている人の心によりそい、共感することが慈善事業に寄付をする大きな誘引になっていると思われます。オキシトシンは人を信頼する心を高め、感情を豊かにし、進んで他人を助けてあげようとする心を育みます。

 

長期のボランティア活動および様々な種類のボランテア活動に参加することは共に、個人の幸福感並びに健康感と直結しています。他の人の役に立っている仕事をすることは気分を高揚させ、社会に溶け込んでいく度合いを促進し、健康を増進するばかりでなく寿命をのばす効果さえあるということが報告されています。「死を遠ざける」には何らかの社交クラブに属したりボランテア活動に参加することがとても大切です。諸活動(PTA活動、青少年のスカウト活動、既読本配布活動など)に共通しているのは、いずれも所属する地域のコミュニテとの関連が深く地域に貢献する活動であるということです。

 

この新しい着想・発見の心理・神経科学的証拠は一体どこにあるのでしょうか?最新の研究は、他の人の気持ちに寄り添い情けや愛情をかけることが視床下部でオキシトシン発現を増加させる重要な要因になっていることを挙げています。オキシトシンは心臓血管系を強くし、新陳代謝を円滑に保ち、痛みを和らげ、炎症を抑え、抗ストレス性を高くする等の作用に関連しているのですから、増量されたオキシトシンの発現は私たちの心と身体の健康維持に役立つことになるのです。

 

5 オキシトシンと他の脳内ホルモンとの関係

愛とは私たちが信頼や信念を想念したとき励起される感情ですが、そのとき脳内ではオキシトシン、ドーパミン、エンドルフィン、セロトニンなどが分泌され,神経生理的には複雑な現象が起こっています。 視床下部のオキシトシン神経は脳内の様々な部位にその神経の分枝を投射しており、その結果、多彩な生理作用を発揮します。例えば、側坐核ではセロトニンやドーパミンの放出を刺激し、中脳水道周囲灰白質では、エンドルフィンなどのオピオイド(脳内麻薬)を刺激します。

 

扁桃体ではgamma-aminobutyric acid (GABA;ガンマ-アミノ酪酸)を刺激します。一方、青斑核や弧束核ではノルアドレナリンの分泌を抑制します。側坐核からのセロトニン/ドーパミンの増加、扁桃体でのGABAの増加、青斑核や弧束核からのノルアドレナリンの減少などは、ストレス反応の軽減に関与しています。

脳の構造

縫線核は 脳幹にある神経核の一つで、睡眠覚醒・歩行・呼吸などのパターン的な運動や注意・報酬などの情動や認知機能にも関与しています。生化学的にはセロトニンを含む細胞が多数存在するのが大きな特徴です。セロトニンには、不安を減らして気分をよくする効果があります。うつ病患者ではセロトニンの低下が指摘されています。

 

報酬系とは、ヒトや動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快感を与える神経系のことです。ドーパミン神経で、とくに前頭葉に分布するものがこの報酬系に関与し、意欲、動機、学習などの適応において重要な役割を果たしています。ドーパミンによって、生物は報酬が得られることを求めるように動機づけられ、報酬のための行動を続けることが快感になるのです。うつ病患者にみられる興味または喜びの喪失は、報酬系が報酬として機能しなくなる状態であることが指摘されています。つまり、うつ病患者にみられる興味または喜びの喪失は、報酬系が十分に機能しなくなった状態である可能性があります。

 

良好な社会的刺激によってオキシトシン分泌が刺激されると、このオキシトシンによって、快感を生じさせる他の二つの神経伝達物質(ドーパミンとセロトニン)が誘発されます。このように、オキシトシンはセロトニンやドーパミンと相俟まって相手が感謝の笑みを見せるような他人に優しい行動を強化し、気分を高揚させてくれるのです。

 

この回路があるからこそ、私たちは道徳的な行動を快感を感じながら繰り返すことができます。オキシトシンは共感を生み出し、それが原動力となって私たちは道徳的な行動をとり、道徳的行動が信頼を招き、信頼がさらにオキシトシンの分泌を促し、オキシトシンが一層の共感を生み出します。これこそが「善循環」と呼ばれる愛のループなのです。

 

ところが、ストレス、心的外傷、怒り、不安 などの負の要因がをこの回路(オキシトシン、ドーパミン、セロトニン)を押さえ込みかねないのも事実です。これらの影響に惑わされない様にオキシトシン神経を鍛え、強化していく必要があります。私たち人類は過去数千年の間に、オキシトシン神経を鍛える方法を試行錯誤しながら開発してきたのです。それが様々な宗教の修行形態なのです。

 

6 オキシトシンに溢れる生活とは

オキシトシンは、その発見以来「母子の絆」、「性愛行動」、「人の付き合い方」、そして「心の安定」、「身体の健康」に関係していると考えられています。幸福感・健康感というのは心理的・身体的に病気から解放されている状態であり気持ちが全てに前向きで充足した状態をいいます。オキシトシンは、ホルモン分泌の活発化や 健康の増進は勿論のこと、対人関係の向上、信頼獲得の強化、不安・心配の軽減を叶えてくれるのですから幸福への誘引剤といえます。オキシトシンは身体的接触や精神的な触れ合いよってその分泌が増えるので、人と人との相互作用が始まる切っ掛けに関わっています。そして、その相互作用から得られる恩恵にも関わっています。

 

オキシトシンは私たちが幸福になれるよう広範囲な効果を持っていますが、それ故に、逆にこの分泌機能が働かなくなった場合、私たちは病的な状態になり生活の質が落ち込む原因にもなります。そして自閉症、統合失調症、 外傷後ストレス障害、抑鬱症などの精神疾患が引き起こされるのです。

 

オキシトシンを治療に使えば対人関係を良好にし個人の幸福感を高めることができるかもしれません。更には「恒常的不安」「反復行動」「信頼性の低下」「引きこもり」などに特徴づけられる神経精神性疾患への治療に応用が利くかもしれません。このようにオキシトシンは能動的な対人関係を上手くやれるかどうか、つまりそのことによって、心理的・精神的幸福感を得られるかどうかの鍵を握っています。幸いにも、オキシトシンが人と人との繋がりを促進し一体感を高めているという現象については既に幾つもの例証が挙げられています 。

 

近い将来、オキシトシンの鼻腔噴霧は私たちの日常生活上のストレス克服に効果があるとされる日が来るかも知れませんが、オキシトシン経鼻投与の効果には疑問が残ります。オキシトシンを毎日投与しているとオキシトシン受容体が鈍感になったり内因性のオキシトシン合成が減弱するとか、或いはその両方が共に起きる恐れがあるからです。こうした理由から、外部から投与する外因性オキシトシンに頼るよりも私たちの体内(視床下部)の内因性オキシトシンのシステムを活性化させることが強く推奨されます。

 

愛する家族と団らんのときを持つことや、仲間と交流のときを持つことが視床下部のオキシトシン発現を増加させ、その結果日常生活上のストレス克服や胃腸障害の抑制につながります。意欲的・積極的な人との交流を続け、それにより共感の授受を行うことで、私たちの脳内でオキシトシンのシステムが活性化するのです。

参考文献;高橋徳著『人は愛することで健康になれる』(知道出版)

ウロストミー(尿路ストーマ)の看護と管理における注意点

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ウロストミーの看護

ウロストミー保有者に、よりよい看護を提供するためには、まずウロストミーとは何かを正しく理解した上で、包括的かつ多角的な視点を持って“寄り添う看護”について考えなければいけません。

 

当ページでは、ウロストミーの概要や看護の在り方について詳しくご説明していますので、看護学生や業務経験の少ない看護師の方は特に、最後までしっかりお読みいただき、理解を深めてください。

 

1、ウロストミーとは

ウロストミーとは、腎臓で造られた尿を体外に出すために作られる人工膀胱のことであり、「尿路ストーマ」とも呼ばれています。ストーマには、尿路ストーマの他に便を排出するために作られる「消化管ストーマ」も存在するため、まずはこの2つの違いを知っておきましょう。

 

尿路ストーマ

上述のように、尿路ストーマは「ウロストミー」と呼ばれており、膀胱を切除した患者に対して、尿路変更術(尿管や回腸の一部を腸壁に固定する手術)を行い、ストーマ(尿の排泄口)の造設やカテーテルを留置し、“尿”を体外に排出するための人工膀胱を作ります。

 

消化管ストーマ

消化管ストーマは、部位によって名称が異なり、結腸に造設する「コロストミー(結腸ストーマ)」と、回腸に造設する「イレオストミー(回腸ストーマ)」があります。消化管ストーマは、便が形成される(排出される)大腸・直腸・肛門などを切除した患者に対して、人工肛門を造設し、“便”を体外に排出するのを助けます。

 

2、尿路変更術の種類

一般的に、ウロストミーには「回腸導管」、「尿管皮膚瘻」、「腎瘻」、「膀胱瘻」、「自然排尿型代用膀胱」の5つの手術方法があり、ウロストミーを必要とする疾患の種類や症状によって使い分けられます。ストーマは尿の排泄口という意味だけでなく、“人工膀胱”の意味も持ち合わせているため、ストーマの造設を必要としない場合(カテーテル留置など)もウロストミーとして統一されています。

 

回腸導管 小腸は、十二指腸・空調・回腸によって構成されていますが、このうちの回腸の一部を切除し、その切除した部分(導管)に尿管をつなぎ、尿の排泄口となるストーマを腹部に造設し、パウチと呼ばれるストーマに尿を貯める袋を固定します。
尿管皮膚瘻 尿路変更術の中で最も簡易的なのが尿管皮膚瘻であり、手術の方法によってはストーマを1つまたは2つ(腹部両側)造設します。回腸導管と同様、ストーマにパウチを固定します。
腎瘻・膀胱瘻 腎瘻はカテーテルを腎盂(じんう)に挿入し、膀胱瘻は恥骨上部から膀胱内にかけてカテーテルを挿入し、尿の排泄を助けます。カテーテルの狭窄・閉塞の危険性があるため、多くは回腸導管または尿管皮膚瘻が適応となります。
自然排尿型

代用膀胱

腸を使って膀胱の代用となる袋をつくり、そこに尿管・尿道をつなぎ合わせます。ストーマの造設やカテーテルの留置を必要としないことから見た目は術前と変わりませんが、自排尿困難・尿失禁・超粘膜による尿道の閉塞などトラブルが起こりやすいため、一般的には尿の排泄障害が軽~中度で外見を強く懸念する患者に対してのみ適応になります。

 

3、ウロストミーの適応疾患

ウロストミーは人工膀胱を作成することから、腎臓・膀胱・生殖器など排尿に関係する疾患が適応となります。以下に代表的な適応疾患を列挙します。

 

悪性腫瘍 膀胱がん

尿道がん

膀胱がんは「表在性がん」と「表在性がん」があり、膀胱の一部または全摘出を行う場合や、尿道がんにおいても膀胱がんの根治手術に準ずるため、尿路変更が適応となります。
腎盂尿管がん 腎尿管全摘と膀胱部分切除が行われるものの、通常では膀胱は温存されますが、腎尿管全摘とともに膀胱を全摘出する場合に、人工膀胱をつくる必要があります。
前立腺がん 一般的に前立腺がんの標準的手術は前立腺の全摘除が必須ですが、下部尿路の再建と膀胱機能も温存されるためストーマは必要ないものの、進行性前立腺がんで尿路の閉塞がみられる場合には、尿路変更を必要とします。
直腸がん

結腸がん

根治治療が不可能な進行性のがんで、水腎症をきたしている場合に適応または考慮されます。
子宮がん 膀胱浸潤をきたし、尿路閉塞や水腎症を呈する場合に尿管ステント挿入を第一に試みられますが、それでも改善されない場合に、尿路変更が考慮されます。
尿路結核・膀胱結核 尿結核では尿管閉塞、膀胱結核では委縮膀胱をきたすため、尿路再建術または膀胱拡大術が行われますが、それでも改善されない場合に尿路変更が適応となります。
神経因性膀胱 膀胱から大脳の神経に異常をきたし排尿障害をきたす神経因性膀胱はさまざまな要因によって起こりますが、症状が悪化すると排出障害だけでなく蓄尿障害をきたすため、尿路変更が考慮されます。
先天性疾患 膀胱・下部尿路形成異常など、生まれつき持つ尿の蓄積・排出をつかさどる器官の異常がみられる場合、根治治療における待機的処置としてストーマを一時的に造設し、尿の排泄を助けます。
外傷・術後合併症 交通事故など強い外傷によって尿道が断裂した際や、がんの摘出手術・放射線治療などで委縮膀胱・膀胱出血をきたした場合に、尿路変更を行います。

 

4、ウロストミーの看護目標

ウロストミーにおいて包括的に看護を提供する際、特に重要となるのは「安楽」と「指導」です。合併症予防のための観察や適切な手技(パウチの交換)は当たり前とし、患者の精神的・社会的サポートと、退院後の適切なセルフケア実施に向けた指導に重点を置き、自立援助を行いましょう。

 

①ストーマ造設・カテーテル留置に伴う精神的ストレスを取り除ける。

ストーマ増設・カテーテル留置に伴い、特に術後まもなくの患者は身体的・精神的なストレスが大きくのしかかるため、早期に受容できるよう、声掛けを行い共感的態度で接してください。

 

②入院時・退院後におけるセルフケアの必要性を理解し、正しく実践することができる。

ストーマ保持者のほとんどは退院後にセルフケアを行う必要があることから、合併症の防止のために、入院時にストーマの交換方法や清潔保持の必要性など指導を行い、意欲が低下している場合には、達成した事に対して激励するなど意欲向上に努めてください。

 

③ストーマに付随する合併症について理解し、異常の有無を判別できる

ストーマの色や形状の正常・異常の違いや皮膚炎症・腎盂腎炎などの合併症に対する理解、さらには、異常発生の種類ごとの対処法(装具の変更・皮膚保護剤の使用など)について理解し実践できるよう指導・援助を行ってください。

 

④社会復帰や退院後の生活について具体的にイメージすることができる

ストーマによる生活上の障害は、「失禁」、「皮膚のただれ」、「臭い」、「外出」、「性機能障害」、「入浴」、「性生活」、「食事」、「経済的問題」など多岐に渡ります。また、職業復帰も懸念されます。退院後の社会復帰を円滑に行えるよう、生活上の注意点や緊急時の対処法など、社会的なサポートを行ってください。

 

5、合併症予防・QOL向上のための看護ケア

ウロストミーにおいても最も注意すべきことは「スキンケア」です。尿路変更を行った患者は、尿意を感じず尿は垂れ流しになり、常に尿がストーマ装具周辺の皮膚が汚染されやすい状態にあります。また、ストーマ装具によって皮膚の損傷や炎症が起こることもあり、これはカテーテルを留置している場合にも当てはまります。

 

また、汚染により細菌が腎盂に達する「腎盂腎炎」の発症もしばしばみられるため、創部およびストーマ・カテーテルの管理をしっかり行わなければいけません。さらに、特に術後においては生活の変化や外観の変化による「精神的ストレス」のケアも非常に重要です。

 

5-1、スキンケア

ウロストミーによるスキントラブルは非常に多く、尿の漏れによる皮膚の炎症や、装具による皮膚の損傷・血液循環の悪化など多岐に渡ります。これらの症状が進行すると継続的な治療を必要とし、患者に多大な負担をかけることになるため、入院時は皮膚の状態を入念に観察し、退院後に患者自身でセルフケアを行うことができるよう、しっかりと説明しておきましょう。

 

ストーマのトラブル事例

接地部の皮膚炎症 排泄される尿はパウチで受け取りますが、尿の出口となるストーマとパウチは、フランジと呼ばれる面板によって接着されます。このフランジは皮膚と接着する部分であることから、フランジの接着剤によって術後早期に皮膚の炎症や発疹がみられることがあります。
尿の漏出 ストーマの大きさは人によって異なりますが、ストーマの高さが低下している、陥没・くぼみがある、ストーマとフランジのサイズが合っていない、などによって尿が漏出する場合があります。尿が漏出すると皮膚の炎症や感染症を招くため、漏出の有無を観察しておきましょう。
ストーマの異常 フランジ固定による刺激・尿の漏出による刺激・血液循環の悪化などさまざまな原因により、ストーマに異常をきたす場合があります。ストーマの異常は、周辺に白く盛り上がる、変色する(黒化・色素沈着)、硬くなる(硬化)など多岐に渡り、多くの場合は術後早期にみられます。

 

このようにウロストミーには、さまざまなトラブル発症の可能性があるため、皮膚やストーマの状態を入念に観察する必要があるのです。

 

皮膚の損傷・炎症・感染におけるケア

ストーマによるスキントラブルの中で最も多いのが皮膚の炎症や感染です。多くの場合、尿の漏出により発症しますが、これは尿が皮膚に付着し続けることで尿の成分による刺激が主な原因であるため、清潔保持が必要不可欠です。

 

また、接着剤(粘着剤)や皮膚保護剤の化学的な刺激によっても炎症反応がみられることがあります。さらに、装具が固定されることによる皮膚への継続刺激が皮膚の損傷を招くため、①状態に合わせて装具の補正を行う、②適切な方法で装具を交換する、③日常的に清潔を保持する、の3つの項目により予防・改善を図っていきます。

 

①状態に合わせて装具の補正を行う

尿の漏出により、ストーマ周辺の皮膚に炎症がみられる場合には、面板ストーマ孔サイズの不一致、ストーマ高の低下、陥没・ひきつれ・くぼみ、などさまざまな原因が考えられます。このような状態では、隙間から容易に尿が漏出してしまうため、ストーマ孔サイズの変更、固定ベルト使用によるストーマ周辺への面板の密着度の強化、凸面のある面板への変更、などストーマの状態に合わせて補正を行います。また、化学的な刺激により皮膚炎症をおこす場合には、接着剤や皮膚保護剤を変更してください。

 

②適切な方法で装具を交換する

ストーマ装具の交換時期は、装着している面板の皮膚保護剤の種類、季節(夏の暑い時期は交換頻度を早める)、皮膚の状態、などによって異なりますが、おおむね2日~5日と早い頻度での交換を必要とします。交換時(剥離・装着時)に皮膚に刺激を与えることから、損傷させないよう優しく交換するよう心掛けましょう。なお、剥離後には皮膚に付着している尿を拭き取り、よく泡立てた石鹸(刺激の少ないもの)で優しく洗い流します。洗浄の不足または過剰洗浄、乾燥時のドライヤー使用など、皮膚損傷を損傷させないよう適切な方法で行ってください。

 

③日常的に清潔を保持する

ストーマ装具の交換時に皮膚の洗浄を行いますが、日常的にストーマ周辺皮膚やパウチ外部に付着した尿を拭き取り、清潔を保持することも忘れてはいけません。なお、皮膚に付着した尿が乾燥してこびりついている場合には、摩擦を防ぐために、ティッシュなどを水に濡らして尿を拭き取ってください。

 

5-2、腎盂腎炎

腎盂腎炎とは、腎臓内にある尿の蓄積場所(腎盂)で細菌が繁殖し、腎臓にまで炎症が及んだ病気のことで、寒気や震えを伴う38~40°の高熱、背中や腰の痛み、倦怠感などさまざまな症状が発現し、進行すると慢性腎盂腎炎に移行したり、敗血症を引き起こします。

 

ウロストミーにおいては、吻合部の狭窄による尿の貯留、ストーマからの細菌の侵入によって腎盂腎炎を発症することがあり、特に尿管皮膚瘻は尿管を直接腹壁に吻合するため、腎盂腎炎の発症率が高い傾向にあります。

 

無菌状態を保つことは不可能であるため完全に予防することは出来ませんが、早期発見・早期治療のために患者の状態を入念に観察し、高熱や背中・腰の痛みがみられる場合には、軽視せずに腎盂腎炎の発症を疑って速やかに検査・治療を行ってください。

 

5-3、精神的ストレス

患者は、体の一部としての受け入れ拒否、不自由な日常生活、尿臭による周りへの気遣い、外観的容姿、羞恥心、などにより多大な精神的ストレスがのしかかります。看護師として業務歴が長くなればなるほどルーティーンワークになりがちですが、特に術後すぐの患者は皆、大小関わらず何かしらのストレスを抱えています。

 

治療を行う医師に対して、看護師は患者のQOL向上のために、治療の補助や生活の援助だけでなく、ストレスケアも大切な業務の1つです。ストレスの蓄積はQOLの低下を招くだけでなく、場合によっては鬱などの精神疾患を引き起こすため、患者の気持ちに寄り添った看護を実践していってください。

 

6、日常生活における注意点

ストーマ造設に伴い、患者の多くは生活における障害を感じますが、「食事」、「入浴」、「睡眠」、「外出(旅行)」など、基本的には術前と変わりなく生活することができます。ただし、合併症の発症を未然に防ぐために、注意しておくべき事項がいくつかあるため、下記に挙げる3つの注意点を患者にしっかり説明しておきましょう。

 

①水分補給

通常、ウロストミーにおける食事制限はありませんが、体内の水分が不足すると、腎機能の低下や、尿路内の細菌数の増加に伴う尿感染症の発症、結石の形成など、さまざまな合併症を引き起こします。また、尿の臭いを増強させてしまうため、一日1.5~2リットル程度の水分を摂取することが大切です。

 

②運動・スポーツ

軽い運動なら問題ありませんが、激しい運動の場合には衝撃や振動によりストーマが傷つく可能性があります。特にストーマへの直接的な衝撃は皮膚の損傷やストーマの形状変化などが起こりうるため、サッカーやバスケットボールなどの球技は極力控えるようにします。また、軽い運動の場合でも多量の汗により皮膚保護剤がとれたり、蒸れによる皮膚トラブルを起こす可能性があるため注意する必要があります。

 

③装具の確保

昨今、自然災害が多発しています。災害発生時に、ストーマ保有者にとって何より大切なストーマ装具の確保であり、地震や豪雪などにより交通網が遮断されるなど、万一に備えて、「パウチ」、「ガーゼ」、「皮膚保護剤・剥離剤」など必要な用具をすべて準備しておく必要があります。

 

まとめ

ストーマは一時的なもの永久的なものがあり、永久的に保有しなければいけない患者は特に、身体的・精神的・社会的な負担が大きく、また、合併症の発症率は高い傾向にあります。

 

それゆえ、入院中だけでなく退院後に迅速に社会復帰できるよう、包括的かつ多角的な視点を持って、“寄り添う看護”を提供し、患者のQOL向上に努めてください。

「急変時の対応」に必要な看護師の知識や観察力とは

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看護師の緊急時の対応

急変は、臨床看護師のほとんどが遭遇するといわれている病院内最大のアクシデントになります。急変といっても様々な定義がありますが、突然の意識障害や呼吸停止、さらに心停止となり、何らかの原因によって患者様が、突然に生命の危機的状況に陥った状況を指しています。また、痙攣発作や喘息発作、アナフィラキシー症状のように、患者様の病態に変化があり、早急な治療が求められている状況は急変に相当します。

急変発生時に一番の問題となるのが、対応ができずに躊躇してしまい、生命に関わる重篤な状況に陥ってしまうことにあります。このため看護師は、患者の急変を

  • 既に生命維持が厳しい状態の緊急事態
  • この病態を放置していると、生命の危機的状況に陥る状態

この2点について、理解しておく必要があります。患者の急変は、重症度と緊急度レベルがあるので、状況を理解し判断する力が求められることになります。

 

当ページでは、急変時の対応について、急変を見抜く力について、急変時の事例などを交えながら、ご紹介していきます。看護師という仕事をする上で、ほとんどの方が直面することなので、是非参考にしていただき、急変時の対応できるスキルを身につけられたらと思います。

 

1. 生命維持が厳しい状態での一次救命処置とは

患者様に声をかけて、生命兆候の有無を確認するところから始まります。患者様の応答がなく、意識障害があるなどの危機的状況の場合には、まず応援を呼ぶ必要があります。心停止を疑う状況の場合には、できるだけすみやかに胸骨圧迫を行うことが望ましいです。生命の兆候を確認するためには、呼吸の観察と同時に頸動脈を触知し、脈が触れるかどうかを確認することが非常に重要となります。

大事になってくるのは、判断がつかない呼吸状態や頸動脈の触知が不能な状態のときに、対応を躊躇してしまうことがないようにすることです。最悪の状態を想定し、胸骨圧迫を1分間に100回の速さで開始してください。人工呼吸はその後に2回行いますが、重要なのは絶え間ない胸骨圧迫が非常に予後を左右します。

AEDが到着したら胸骨圧迫を継続しながらAEDを装着します。適応があれば、音声案内に従いショックを与えます。これらを、蘇生チームが到着し二次救命処置を行うまで継続するようにします。

 

1-1.生命維持が厳しい状態での二次救命処置とは

二次救命処置は、医師や十分な経験と知識を兼ね備えた看護師が、医師の指示で医療器具を用いた蘇生を行う行為です。一次救命処置で回復が見込めない場合には、早急に二次救命処置に移行することが重要となります。一次救命処置と同様に、胸骨圧迫を継続し中断時間は10秒以内にします。呼吸管理や循環管理に必要な処置を行い、同時に原因は何かを検討しながら治療を進めていきます。

呼吸管理では、気道確保が不十分な場合には気管挿管を行い、人工呼吸を実施します。場合によっては呼吸器を装着することもありえます。

循環管理では、抹消静脈ラインを確保し、輸液投与と同時に血管収縮薬や抗不整脈薬などの治療薬が使用されます。心停止をしている場合に良く使われる第一選択薬は、アドレナリンです。

致死的不整脈が見られる場合には、除細動を行います。

 

このように、患者様の全身状態に合わせて動脈血の採取やレントゲン写真、CT画像などの検査が随時行われます。その結果で、医師からは次の治療方針が次々に提案されていきます。看護師も医師同様に患者様の容態を把握し、次を想定していなければ迅速に行動ができないので、豊富な経験と知識が要求されます。

 

2.全身状態を観察し、急変を見つけるポイントとは

急変をする患者様を見つけるポイントには、以下の4つのサインに分けてみました。

  • 誰が見ても、異常な状態
  • 注意深く観察しても、サインや症状がないもの
  • 注意深く観察すれば、サインや症状があるもの
  • 意図的に観察すれば、容易にわかるもの

 

注意深く観察してもわからないものは、突発的に出現するものなので、防ぐことは難しいでしょう。しかし、後の3つに関して看護師の力量によっては、未然に防ぐことができるのです。ちなみに私は、よくこの急変を見つけては忙しくなっている日々です。

急変状態やその前駆症状の早期発見には、意図的に出会うことから始まります。つまり患者様が発信している異常なサインや症状は、医療者が異常だと感じなければ、ただのデータとなってしまいます。したがって、急変を見つけるポイントは、常に異常な状態を想定した行動が必要であり、異常と正常を見極める知識力が必要となります。

 

2-1.急変を見逃さない呼吸器の観察ポイントとは

最も大切なポイントは、呼吸の速さ・深さを把握することになります。その後、発声できるか、胸部の動きや胸鎖乳突筋に異常がないのか、呼吸パターンが不規則ではないのか、さらに重篤な症状である舌根沈下やいびき様の症状がないかを確認していくことが大切です。したがって、聴診はもちろん大切ですが、目で確かめる視診が非常な重要なポイントとなります。

 

  • 発声ができれば、完全な気道閉塞を否定できます
  • 胸鎖乳突筋が発達し、胸部の動きに異常があれば、いずれ疲労し十分な換気量が得られなくなる可能性が高く、呼吸補助が必要になる場合があります
  • 呼吸パターンに異常があれば、何らかの息が吐きにくい異常があると判断できます
  • 舌根沈下などが見られる場合には、生命の危機に直面していることが判断できます

 

2-2.急変を見逃さない脳外科の観察ポイントとは

意識障害は、急激に出現するものと徐々に進行するものに大きく分かれます。急激な意識障害は、緊急度・重症度いずれも高い場合が多く、呼吸・循環異常を併発するため、救命処置が必要になります。

 

軽度の意識障害は、一見して異常が感じられない場合があります。その場合、患者様へ様々な質問をしていき、何かおかしいと感じることができれば、神経学的な異常はないか、アセスメントを進めていきます。もし、家族が付き添っている場合には情報収集をするのも良いでしょう。

刺激に対して反応がない、かろうじて開眼するなどの重度の意識障害では、生命の危機的状況に陥っていないかの判断を迅速に行います。呼吸・循環を安定化することを優先します。特に、頭蓋内圧亢進症状に注意をしながら観察していきます。

 

2-3.急変を見逃さない循環器の観察ポイントとは

急変サインは、胸痛、呼吸困難、失神、チアノーゼ、浮腫などがあります。特に、胸痛と呼吸困難が急激に出現した場合には、緊急性が高いため迅速な対応が必要です。

 

胸痛で重要なのは、生命の危機につながるものか否かを判断することです。突然の激しい胸痛の場合には、緊急処置を要する場合が多く、病状把握が大変重要となります。激しい胸痛の場合に疑わなくてはいけない病態は、急性心筋梗塞と急性大動脈解離の2つになります。

呼吸困難も胸痛と同様に、様々な疾患から発症します。酸素不足状態で、呼吸運動を活発にしても補いきれない時に症状として出現します。ショック症状が見られないかどうかを観察しながら、同時に酸素投与などの処置も必要となります。

 

2-4.急変を見逃さない消化器の観察ポイントとは

発熱や下痢を伴う激しい腹痛が急激に発症した場合、腹部症状が持続または増強している場合、ショックを引き起こす誘因となる吐血、下血は、急変をする可能性が高く、注意が必要となります。

腹部症状は、健常者の日常生活の中でも発生しやすい症状の一つです。しかし、入院中の患者様が腹痛を訴えた場合には、原疾患によるものなのか、突発的に出現した別な症状であるのかを判断しなければいけません。そのため、患者様の主訴をしっかり確認し、緊急度や重症度を考えることが大切になります。

特に急性腹症には注意が必要です。突然発症した激しい腹痛に、発熱や下痢などの症状を伴い、ショックになってしまうことをいいます。急性腹症の場合には、緊急手術を行うケースもあるため、的確な観察・アセスメントが求められます。急変時の大事なポイントは、重症度と緊急度の判断ができ、その後の的確な対応ができることが重要です。

重症度を判断するには、侵襲が少ない順番で、

問診→視診→聴診→触診→打診の順でフィジカルアセスメントを行うようにしてください。ショックを伴っているか否かで対応は大きく変わりますので、特にバイタルサインには気をつけるようにしましょう。医師に指示を仰ぎ、適切な処置が素早く施されるような配慮が予後を左右します。

 

2-5.急変を見逃さない代謝・内分泌の観察ポイントとは

急変で最も多い症状は、意識障害と呼吸パターンの変調になります。この症状が出現した時に、入眠状態と間違えないように判断することが大変重要となります。最も緊急度が高いのは低血糖といわれています。低血糖時には、交感神経緊張と中枢神経障害が出現します。特に中枢神経障害が起きると、致死的となってしまうので早期に発することが大切です。リスクがある患者様には、食事摂取や投薬状況を頭に入れておくことが、異常の発見につながります。

 

3.急変時の事例と対応について

では、実際に事例を交えながら対応について記載していきます。

 

ベッドから転落した数時間後、患者様の意識が消失した事例

2日前からめまいがあり、検査目的で入院していた66歳の男性。「トイレへ行こうと起き上がったら、ベッドから落ちた」と本人からナースコールがあった。訪室時には、意識レベルクリア。左後頭部に挫創はあったが、他に外傷はなく、明らかな四肢の運動障害もない。瞳孔3mmで左右差なし。血圧140代、SPO2=98% 呼吸・脈拍共に正常値。症状を確認すると「頭が少し痛い」と話していた。主治医へ報告し、頭部CTを撮影した。出血所見はないため、経過観察となった。約4時間後、訪室した時にはいびきをかいて入眠していたため、声をかけなかった。翌朝、声をかけたが反応しないため、意識がないことに気づき、主治医へコールした。

 

まず何が起こっているのでしょうか。頭部CTでは、受傷直後の超急性期の場合、明らかにならない場合があります。その場合、数時間~数日かけて頭蓋内血腫として症状が出る場合があります。この場合少なくとも24時間は、意識レベルや神経学的所見を注意深く観察する必要があったと考えられます。いびきをかいて入眠していたというのが、今回の重要なサインです。これを見逃してしまったのが、最大の観察不足であり迅速な対応が遅れてしまったことになります。脳卒中では、治療開始が早ければ早いほど損傷部位を拡大させず、予後も良好であるとされています。いびき様の呼吸時に早期発見ができていた場合には、生命の危機的状況を脱するために呼吸・循環管理を行うことになるでしょう。

 

このように、異常時の対応が適切にできないと、対応が遅れてしまい、結果として患者様の予後に大きく影響が出てしまいます。常に異常な場合を想定して行動することが、異常発見の一つの手段として考えてよいでしょう。そのためには、十分な異常時の知識が必要となります。

 

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。急変時の対応は、十分な経験と知識がないと最初は判断に困る部分はあるでしょう。経験は事前に得ることはできませんが、知識は各看護師の努力次第で付ける事は十分に可能です。ポイントは、正常な状態と異常な状態を見極める知識と観察力です。とにかく、異常な状態を見極めることができれば、その後の対応は経験豊富な看護師に相談し、早期対応ができるようになります。

早期に異常発見し対応することが、患者様一人一人の生命予後や後遺症に大きく影響します。常にこの患者様が、一番重篤な症状が出た時どのような症状が出現するか、これを想定することができれば、急変している患者様をいち早く発見することができるでしょう。是非、知識と観察力をつけていただき、一人でも多くの患者様を助けられるようにしましょう。


医師が教えるキケンな薬の飲み合わせ17選

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Med

「お薬は水かぬるま湯で飲んでください」医師から言われるこの決まり文句には、ちゃんとした理由がありました。今回は、医師から聞いた食べ物と薬の危険な組み合わせをお伝えします。

【飲み物編】炭酸を含む栄養ドリンクと風邪薬を一緒に飲むと危険!薬と飲み物のアブナイ関係

1. コーヒー×頭痛薬=頭痛がひどくなる

Coff

眠気覚ましにカフェインとはよく聞きますが、これは交感神経を活発にして脳を緊張させる「覚醒作用」がはたらくからです。つまりずっとマラソンを走っているときと同じ状態。脳にも負担がかかり、もっと頭痛が強くなってしまうことも……

2. 炭酸飲料×胃薬=薬が効かない

Tansan

胃がキリキリする!のは、胃酸が多く出ているサイン。胃薬には胃酸を中和させるはたらきがあります。ところが炭酸飲料と胃薬を一緒に飲んでしまうと、先に炭酸が中和して胃酸の中和をジャマしてしまいます。胃薬を飲む前後2時間には注意しましょう。

3. 栄養ドリンク×風邪薬・鎮痛剤(アスピリン)=薬の効果減少

Eiyo

オロナミンCやファイブミニなどの炭酸を含む栄養ドリンクは、風邪薬・アスピリンと一緒に飲まないようにしましょう。炭酸のせいで体内が酸性に傾き、アスピリンの解熱・鎮痛効果を弱めてしまいます。

4. 硬水ミネラルウォーター×骨粗しょう症の薬=薬を邪魔する

Water

美肌効果があり、ダイエットにもいいといわれる硬水ですが薬との相性はよくありません。硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムが薬のはたらきを妨げてしまうのです。薬を飲むときは水道水などの軟水、というように飲み分けましょう。

5. 牛乳×便秘薬=胃で溶けて腸で効かない

Milk

「胃で溶けずに腸で効く」タイプの便秘薬は腸内で溶けるようにつくられています。ところが牛乳といっしょに飲むと、化学変化が起きて胃の中で溶けてしまうのです。
薬の種類によっては気分を悪くしてしまうものもあります。

6. アルコール×睡眠薬=中毒症状をおこす

Wine

薬を飲んでいるならアルコールは極力避けたいところ。 特に睡眠薬は、強く効きすぎて中毒性が高く危険です。場合によっては死に至るケースも。2014年に起きた集団昏睡事件アルコールと薬の飲み合わせがきっかけです。

飲み物は水かお茶で飲もう

どのお薬も水かお茶で飲むのがベスト。なかでも白湯は胃の温度を下げないのでオススメですよ。また水なしで飲むのもタブーです。薬の効きが遅くなるほか、食道に薬がはりついて食道炎を起こす原因にもなります。

コラム・お茶で飲んでもいいの?

以前はお茶に含まれるタンニンが鉄剤を溶かすといわれていました。しかし現在では、錠剤が改良されたり、お茶のタンニン含有量は少なく薬剤に影響しないと研究・発表されています。薬はお水かお茶で飲んでくださいとお伝えしていますが、濃いお茶には注意しましょう。

【食べ物編】あんこ食べた2時間後に風邪薬を飲んでも効果なし!薬と食べ物のキケンな関係

7. チーズ×鼻炎薬=動悸、頭痛

Cheese

風邪のひきはじめに避けたいのがチーズ。風邪薬が、チーズに含まれるチラミンの分解を遅らせます。このチラミンには血圧を上げるはたらきがあり、動悸が激しくなって、頭痛がすることも。ワインもチラミンが豊富ですので晩酌は避けたいところです。

8. キャベツ×解熱薬=薬の効果減少

Cab

解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを弱めるキャベツ。薬の効果で熱が下がりキャベツたっぷりの野菜サラダが食べたくても、服用から2時間はひかえておきましよう。

9. 納豆×抗血栓薬=薬の効果なし

Natto

血液をサラサラにする薬と、納豆の組み合わせはNG?という質問をよく受けます。これは半分正解・半分間違いです。納豆と相性が悪いのは抗凝固薬の「ワルファリン」。納豆に含まれるビタミンKがワルファリンの効果をなくしてしまいます。ビタミンKは緑黄色野菜にも多く含まれるので、気をつけましょう。

10. あんこ×風邪薬=薬の吸収遅れる

Ohagi

総合感冒薬の天敵は糖とでんぷん。この2つは薬の吸収を遅らせてしまいます。あんこ以外にも、糖分がたっぷりのあま〜い食べ物はNG。とはいえ弱っていると、甘いものが恋しくなる……そんなときは1時間以上あけてから食べてくださいね。

11. アボカド×抗うつ薬=血圧上昇、頭痛

Abo

抗うつ薬のなかでも、MAO阻害薬(エフピーなど)には注意。アボカドに多く含まれるチラミンが体内でうまく分解できず、血圧上昇や頭痛を引き起こしてしまいます。

12. グレープフルーツ×高血圧の薬=血圧急降下

Grape

グレープフルーツに含まれるフラボノイドが、薬を分解する酵素のはたらきをブロック。薬が効きすぎて、血圧が下がりすぎてしまいます。ですのでグレープフルーツジュースはもちろん、果肉を食べるのも避けましょう。夏みかん、いよかん、文旦なども高血圧の薬と一緒に食べてはいけない果物です。オレンジやみかん、レモンは薬に影響しません。

13. 炭焼き肉×ぜんそく薬=薬の効果弱まる

Niku

焦げた肉、特に炭焼き肉に含まれる多環炭化水素が薬の効果を弱めます。薬に含まれる治療成分・テオフィリンの血中濃度を早く下げてしまうのです。肉ばかりを食べる高タンパク食を長く続けていると、同様にテオフィリンが減少します。

14. マグロ×葛根湯=頭痛、吐き気

Maguro

カゼ薬としても親しみ深い、葛根湯。 マグロやブリ、アジ、サンマを食べたあとに飲むと発汗、嘔吐、頭痛など食中毒のような症状が出るケースがあります。キーワードはヒスタミン。葛根湯にはヒスタミンをため込む性質があるので、中毒症状が出てしまうのです。

15. カレー×糖尿病治療薬=低血糖、意識障害

Curry

たくさんの香辛料で、薬が強く効き過ぎることがあります。低血糖やイライラ感、意識障害を引き起こすこともあるので注意。

16. セントジョーンズワート×ピル=薬が効かなかったり、効き過ぎたりする

Stjones

癒やしのハーブともいわれるセントジョーンズワート。サプリメントとしても販売されています。しかしピルや抗うつ薬など相性が悪い薬が多いので気をつけましょう。薬の効果が弱まったり、逆に効き過ぎたりもします。

17. レバニラ×抗生物質=激しい頭痛

Nira

皮膚の感染症予防に効果が高い抗生物質、塩酸テトラサイクリン。ニラなどのビタミンAが豊富な食べ物といっしょにとると、激しい頭痛を起こしやすく危険です。特にレバーは要注意。鉄分も多いので薬の吸収力が低下してしまいます。

まとめ

処方薬はもちろん、市販薬もりっぱな薬。効果があれば副作用もあります。もし心配ならかかりつけの医師や薬剤師、看護師に聞いてみましょう。あなたの不安を解消してくれます。

転職活動中の看護師必見!ハローワークの「再就職手当」の徹底活用術

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ハローワークの再就職手当

失業すると収入がなくなってしまうため、雇用保険の被保険者に対して、国から生活補助として基本手当(失業保険)を受け取ることができ、さらに再就職先が決まった際には、お祝い金として再就職手当が給付されます。

 

再就職手当の給付には、さまざまな条件があり、やや複雑な過程を踏まなければいけないため、難しく感じるかもしれませんが、意外にも支給される金額は大きいため、もらえるものはもらっておきましょう。

 

1、再就職手当の受給条件

再就職手当を受け取るためには、以下に挙げる8つ全ての条件を満たしている必要があります。まずは、ご自身が条件を満たしているかご確認ください。

 

①雇用保険に加入する労働条件で働いていること

すべての事業主(病院など)が労働者(看護師など)に対して雇用保険の加入を義務づけているため、アルバイト・パート・非常勤・常勤に関わらず、通常すべての方が当条件に当てはまっています。

 

②求職者登録(受給手続き)が完了していること

再就職手当を受け取るためには、ハローワークにて求職者登録を済ませておかなければいけません。まずは、最寄りのハローワークの窓口で登録を済ませておきましょう。

 

③待機期間(登録後7日間)経過した後に就業すること

ハローワークでは、求職者登録日から7日間の待機期間が設けられています。この期間に再就職が決定すると、再就職手当を受け取ることができないため、待機期間が満了した後に、再就職する必要があります。

 

④支給残日数が3分の1以上残っていること

失業時に受給できる基本手当(雇用保険)は前雇用先での就業年数や年齢によって異なりますが、再就職時にこの支給日数が3分の1以上残った状態であることが条件です。なお、基本手当の残日数によって、以下のように再就職手当の受給額が変わります。

3分の1以上・・・支給残日数×基本手当(日額)×50%

3分の2以上・・・支給残日数×基本手当(日額)×60%

 

⑤再就職先が離職前の会社や関連事業主に雇用されたものでないこと

離職前の就業先に再就職した場合や、密接な関わり合いを持つ就業先で再就職する場合には、再就職手当を受け取ることができません。

 

⑥1年を超えて勤務することが確実であること

6か月契約の派遣社員で更新の予定がない場合や、条件付き雇用(ノルマ達成の有無で雇用の継続が左右されるなど)の場合は、条件に当てはまりません。

 

⑦過去3年以内に、以下の手当を受けていないこと

再就職日の前3年以内に、1,再就職手当、2,常用就職支度手当、3,早期就職者支援金、の3つの手当の受給歴があれば、今回分の再就職手当を受け取ることができません。

 

⑧再就職手当の支給申請をして、その後すぐに離職していないこと

再就職手当の不正受給を防ぐために、再就職後すぐに離職した方は、再就職手当の受給資格がなくなります。

 

※自己都合で離職された方

ハローワークでは、倒産や解雇などの理由により離職を余儀なくされた方に対しては、就職の経路問わず、再就職に対して手当を支給していますが、自己都合など自主的に離職した方に対しては、待機期間(③を参照)終了後1か月以内は、ハローワークまたは厚生労働省に認可されている職業紹介事業者から再就職しなければ、再就職手当を受け取ることができません。ただし、この期間(1か月)が過ぎれば、知人の紹介や新聞広告の応募などから再就職した場合も受け取ることができます。

 

2、再就職手当の支給額

上記の8つのすべての条件に満たしていれば、受給資格者として再就職手当を受け取ることができますが、受け取ることができる金額は人それぞれです。受給条件④で軽く触れましたが、再就職手当の支給額は下表のように、基本手当(雇用保険)の所定給付日数・支給残日数・基本手当日額が大きく関わっていますので、下表の計算式を一度頭に入れておいてください。

 

所定給付

日数

支給残日数 再就職手当の額
支給率

50%の場合

支給率

60%の場合

90日 30日以上 60日以上 基本手当日額

×

支給残日数

×

50%または60%

120日 40日以上 80日以上
150日 50日以上 100日以上
180日 60日以上 120日以上
210日 70日以上 140日以上
240日 80日以上 160日以上
270日 90日以上 180日以上
300日 100日以上 200日以上
330日 110日以上 220日以上
360日 120日以上 240日以上

 

このように、再就職手当の金額を導き出すためには、基本手当(雇用保険)について知っておく必要がありますので、下記にて基本手当の所定給付日数と基本手当日額についてご説明します。

 

なお、基本手当とは、失業者に対して支給される生活支援金のことであり、「失業保険」とも呼ばれています。基本手当には離職の理由ごとに以下のような資格条件があります。

1,自己理由・・・離職の日以前2年間に12か月以上の被保険者期間がある

2,そのほか・・・離職の日以前1年間に6か月以上の被保険者期間がある

(倒産・解雇、傷病・障害、妊娠・出産など、やむを得ない理由による離職)

 

2-1、基本手当の所定給付日数

所定給付日数は、離職の理由や就業年数によって以下のように決定されます。

 

自己都合退職した場合の所定給付日数

自己都合により退職した場合には、年齢に関わらず雇用保険の加入期間のみで決定されます。なお、雇用保険の加入期間は、1か月ごとに区切り、それぞれの期間の中に労働した日数が11日以上ある期間を1か月とします。よって、前雇用先で1か月に11日以上働いていた方は、単純にこれまでの労働年数を雇用保険の加入期間として解釈して結構です。

雇用保険の

加入期間

10年未満 10年以上

20年未満

20年以上
所定給付日数 90日 120日 150日

 

会社都合で離職した場合の所定給付日数

倒産や解雇といった会社都合での離職を余儀なくされた方は、年齢と雇用保険の加入期間によって基本手当の所定給付日数が決定されます。

退職時の

年齢

雇用保険の加入期間
1年未満 1年以上

5年未満

5年以上

10年未満

10年以上

20年未満

20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上

35歳未満

90日 90日 180日 210日 240日
35歳以上

45歳未満

90日 90日 180日 240日 270日
45歳以上

60歳未満

90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上 90日 150日 180日 210日 240日

 

障害者など就職困難な方の給付日数

身体的・知的・精神的な障害を持っている方、刑法などの規定により保護観察をつけられている方、社会的事情により著しく就職が阻害されている方など、就職困難な方は以下のように長期的な所定給付日数が定められています。

退職時の年齢 雇用保険の加入期間
1年未満 1年以上
45歳未満 150日 300日
45歳以上

65歳未満

150日 360日

 

2-2、基本手当日額の算出方法

基本手当における基本手当日額は、「過去6か月間にもらった賃金の総額を180で割った金額」から下表の所定の計算式を用いて算出します。まずは、お持ちの離職票や給与明細から近6か月の総支給額の合計を求め180で割り、賃金日額を出した上で、下表と照らし合わせてください。なお、実際の求め方は非常に複雑ですので、下表は簡易的に“目安”にしてあります。

 

賃金日額(円) 給付率 基本手当日額(円)
2,300 80% 1,840
3,000 2,400
4,000 3,200
4,600 50%~80% 3,680
5,000 3,915
6,000 4,443
7,000 4,886
8,000 5,244
9,000 5,517
10,000 5,705
11,000 5,808
11,660 5,830
12,000(※1) 50% 6,000
12,790(※1) 6,395
13,000(※2) 6,500
14,000(※2) 7,000
14,210(※2) 7,105
15,000(※3) 7,500
15,620(※3) 7,810
※1「30歳未満の上限」、※2「30歳以上45歳未満の上限」、※3「45歳以上60歳未満の上限」

 

2-3、基本手当の算出例

「2-1、基本手当の所定給付日数」、「2-2、基本手当日額の算出方法」でそれぞれ日数と日額を算出しますが、ここで計算の一例を挙げたいと思います。

 

【条件】

①年齢(28歳)、②就業期間(4年)、③離職理由(自己都合)、④給与(6か月総額1,08,000)

 

【算出結果】

年齢(28歳)・就業期間(4年)・離職理由(自己都合)で所定給付日数は90

給与(6か月総額1,08,000)÷180=賃金日額(6,000)×給付率(80%)で、基本手当日額は4,443

 

このように、再就職手当の算出に必要な“所定給付日数”と“基本手当日額”を導くことができます。

 

2-4、再就職手当の算出方法

ここから本番となりますが、上記で算出した“所定給付日数”と“基本手当日数”を用いて、再就職手当の金額を求めていきます。再就職手当は、所定給付日数が3分の1以上残っている場合のみ受け取ることができ、残日数が3分の1以上あれば「残日数×基本手当(日額)×50%、残日数が3分の2以上あれば「残日数×基本手当×60%となり、再就職が早ければ早いほど支給額が多くなります。

 

所定給付

日数

支給残日数
支給率

50%の場合

支給率

60%の場合

90日 30日以上 60日以上
120日 40日以上 80日以上
150日 50日以上 100日以上
180日 60日以上 120日以上
210日 70日以上 140日以上
240日 80日以上 160日以上
270日 90日以上 180日以上
300日 100日以上 200日以上
330日 110日以上 220日以上
360日 120日以上 240日以上

 

また、再就職手当の金額は下表のように、「基本手当日額」×「支給日数」×50%または60%という計算式で求めることができます。

 

所定給付

日数

支給残日数 再就職手当の額
支給率

50%の場合

支給率

60%の場合

90日 30日以上 60日以上 基本手当日額

×

支給残日数

×

50%または60%

120日 40日以上 80日以上
150日 50日以上 100日以上
180日 60日以上 120日以上
210日 70日以上 140日以上
240日 80日以上 160日以上
270日 90日以上 180日以上
300日 100日以上 200日以上
330日 110日以上 220日以上
360日 120日以上 240日以上

 

よって、「2-3、基本手当の算出例」で挙げた例(所定給付日数90日、基本手当日額4,443円)により、支給残日数が45日であれば、

基本日額4,443円×支給残日数45日×50%=99,967

となり、99,967円の再就職手当を受け取ることができます。

 

3、再就職手当の支給時期

再就職手当は、すぐに支給されるわけではなく、再就職が決定し、さらにハローワークが在職の有無を確認し、手続きを済ませた後に支給されるため、おおむね再就職した日から5週~8週間程度で支給されます。

 

再就職決定→(約1か月)→在職確認→(約1週間~1か月)→支給

という流れになり、ハローワークが在職の確認をする時期、手続きにかかる時間などによって、支給日が異なります。

 

知らないと損!お祝い金と失業保険の各種手当を”両方”受け取る方法

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再就職手当とお祝い金

ハローワークの再就職手当とジョブデポ独自で進呈しているお祝い金について両方受け取れることについてあまり知られていないため、今回は、これらの制度を正しく理解して両方のゲットする方法について解説します。

 

1. 再就職手当はハローワークの紹介でもなくてもOK!

ハローワークを通さなくても、再就職手当を受け取る方法が存在します。看護師として再就職を希望されている方のために、以下にて、再就職手当について網羅的に分かりやすくご説明します。

 

2、お祝い金と再就職手当、両方受け取れる!

再就職手当を受けるにあたって、知っておくべき事がいくつかあります。まず、再就職手当はハローワークだけでなく当サイト(ジョブデポ)のような厚生労働省から認可を受けている民間の職業紹介の免許事業者から再就職した際にも受け取ることができるということ。

 

そして、支給条件を満たさない方やでも、他の就職促進手当を受け取れる可能性があります。また、ジョブデポ独自のお祝い金は、再就職手当とは異なる制度であるため、両方受け取ることができます。

 

看護師として再就職を希望されている方は、この2つのことを考慮して、少しでも多くのお金を受け取りましょう!

 

2-1、民間の職業紹介事業者でもOK

再就職手当は、ハローワークから支給される手当ですが、ジョブデポのような厚生労働省から認可を受けている職業紹介事業者を経由して、再就職先が決まった場合にも受け取ることができます。

 

ただし、離職理由や再就職する時期によって、再就職手当を受給できるか否かが決定されるため、必ず知っておきましょう。

 

■自主都合による離職の場合

自主都合により離職した方は、求職者登録をした日から7日間の待機期間を経た後の1か月の間は、ハローワークまたは職業紹介事業者と通して再就職する必要があります。ただし、1か月以降は知人の紹介や新聞の広告などからでも問題ありません。

 

■会社都合による離職の場合

倒産や解雇といった会社都合で離職を余儀なくされた方は、待機期間が満了した後の1か月の間に、いかなる経路を利用した場合も再就職手当を受け取ることできます。ただし、所定給付日数が3分の1以上残っている必要があります。

 

このように、少し複雑になっていますが、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者を通せば、所定給付日数が3分の1以上残っている限り、いつでも受け取ることができますので、可能な限りハローワークもしくは民間の職業紹介事業者を通して就職活動を行いましょう。

 

なお、ジョブデポでは看護師の求人に特化しており、ハローワークよりも好条件な求人が多数ありますので、初めての方はぜひこの機会に登録をご検討ください。

 

4-2、条件を満たさない方でも手当を受け取れる

再就職した際に受け取れる助成金は再就職手当だけでなく、条件が満たない場合でも他の助成金を受け取ることができ、この助成金を「就業手当」と言います。また、障害のある方や45歳以上で再就職の長期化が見込まれる方に対して設けられている「常用就職支度手当」などもあります。

 

就業手当

就業手当の支給条件は、再就職手当とほぼ同様ですが、所定給付日数が3分の1以上かつ“45日以上“残っており、再就職先で1年以上の雇用が見込めない場合に支給されます。また、①雇用契約が7日以上、②週の労働時間が20時間、③勤務日が1週間に4日以上、という条件が追加され、さらに支給額は「基本手当日額×支給残日数×30%」と少なくなりますが、1年以上の雇用が見込めない方は、ぜひ申請しておきましょう。

 

常用就職支度手当

常用就職支度手当は、基本手当などの受給資格がある方のうち、障害のある方など就職が困難な方や、45歳以上で早期に再就職するのが困難な方が対象です。これも再就職手当の支給条件とほぼ同様ですが、就職日前日の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満(または45日未満)の方のみ受け取ることができます。支給額については、支給残日数によって異なりますが、おおむね「基本手当日額×支給残日数×30%」です。

 

4-3、独自のお祝い金も一緒にもらおう

看護師の求人を扱う職業紹介事業者はいくつかありますが、ほとんどが独自のお祝い金を用意しています。お祝い金とは、該当の職業紹介事業者を通して就職した際に、同事業者から送られるもので、これはハローワークの再就職手当とは異なる制度であるため、再就職手当と共に受け取ることができます。

 

ジョブデポでは、広告費を最小限に抑えることで、最大40万円のお祝い金を用意しており、これは数ある職業紹介事業者の中でも随一の金額です。さらに就職希望者と雇用先との懸け橋として、面接日の調整や給与交渉など、仲介に入ってご案内させて頂いていますので、この機会にぜひジョブデポをご利用ください。

 

まとめ

再就職手当の条件や金額の算出方法はやや複雑ですが、多くの方が受け取ることができますので、条件を満たしているか分からなくても、まずはハローワークにて求職者登録を済ませておきましょう。

 

ジョブデポでは、全国トップクラスの看護師求人を掲載しており、その多くが給与が高く労働条件の良い求人です。また、ジョブデポ経由で就職先が決まった際には、最大40万円ものお祝い金を進呈していますので、ぜひ受け取ってください。

クリティカルパスの看護計画や看護研究とその目的とは

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クリティカルパス

クリティカル・パスとは

クリティカルパスって何か聞いた事があるけど、実際にどのような物で何のために使用しているのかご存じで無い方もいらっしゃると思います。

クリティカルパスとはどのようなものなのかについてお話ししていきます。

 

まずクリティカルパスの一般的な意味はプロジェクトの完成を遅らせないようにするためにスケジューリングする事です。

では、医療現場ではどのようなクリティカルパスを利用しているのか?

病気や怪我の治療や検査、今後の日常生活をスケジュールを表にまとめたものです。

 

正直、全ての医療機関がクリティカルパスを利用しているわけではありません。

クリティカルパスを利用するのは、手術や検査などを行う病院で多く利用されます。

 

例えば、産婦人科で出産する場合です。

出産の場合、一般的に3種類のクリティカルパスを使用しています。

1つは、初産。

2つは、経産婦。

3つは、帝王切開です。

 

出産の際に異常がない限り、このクリティカルパスに沿って援助します。

入院しているお母さんも、入院から退院日までの一連した流れを始めに把握している事で不安も少なく入院生活を送る事ができます。

入院している患者さんの多くが、入院生活に対する不安を抱えていると思います。

「いつご飯がたべれるのか?」

「お風呂はいつ入れるのか?」

「いつ退院できるのか?」

「子供への授乳はいつすればいいのか?」

と疑問に思う事が沢山あるけど、いちいち看護師に聞けないし、看護師自身も毎回同じ質問に答えている余裕はありません。

そのため、始めからスケジューリングする事で、入院しているお母さんがたも聞かなくても把握する事ができますし、看護師の業務を効率化する事ができます。

 

地域連携クリティカルパス

地域連携クリティカルパスとは、言葉通り地域と連携したクリティカルパスです。

クリティカルパスとは、院内だけで使うものではなく、在宅に帰ってからも他の病院と連携を図りながら患者さんをフォローしていくために使用できる物もあります。

それが、地域連携クリティカルパスです。

よく、地域連携クリティカルパスを使用するのが、癌患者です。

総合病院などで、手術や抗がん剤の治療を行い、その後のフォローをクリニックなどのかかりつけ医でフォローをします。

このような方法をとるには理由があり、退院後のフォローまで総合病院が行っていると患者は溢れかえり、業務をこなす事ができなくなるからです。

また、治療が完治するまで入院し続ける事が困難だからです。

ですが、クリティカルパスがなければ、スケジューリングが上手くいかず他の医療機関と連携も取りにくくなります。

医療機関が変わっていても患者さんに対して一連した説明や援助、フォローを行えますし、総合病院で長い待ち時間を待たずにクリニックで診察してもらえる事で患者さんの負担が少なくて済む事が、地域連携クリティカルパスのメリットです。

患者さんに対して一貫した援助を行うために地域連携クリティカルパスは重要な役割を持っています。

 

クリティカルパスの目的

クリティカルパスを使用するには幾つかの目的があります。

・医療の質の向上

・業務の効率化

・医療安全対策

・インフォームドコンセント

 

医師や看護師によって処置や援助に偏りがあったものを標準化し、医療従事者全ての者がクリティカルパスを使用する事で質の高い医療を患者さんに提供する事ができます。

クリティカルパスが、ある場合とない場合では、業務の効率化が全く違います。

その理由として、医師によって指示の内容が異なってくるからです。

そのため、毎回指示内容を確認しなけばいけないため業務が増えていきます。

 

クリティカルパスの看護計画、看護研究

一般的にクリティカルパスは、各医療機関で作成したものを使用します。

そのため、看護研究の際にクリティカルパスを使用し、実際に使用してみてどうだったのかを試しています。

その結果、そのパスがよければ病院で使用するという事もあります。

 

クリティカルパスがある事で、看護業務の統一と業務を効率化する事ができます。

それは、看護師の経験のある診療科や年数によって技術や知識にばらつきがあります。

ですが、クリティカルパスを使用して看護計画を立てる事で誰が立てても同じレベルの計画を立てる事ができますし、業務を効率よくこなすことができます。

 

まとめ

クリティカルパスを使用する事で、患者さん個々の個別性がなくなるのではないか?と言われている時がありました。

ですが、クリティカルパスを基本に援助する事で、医療の質を向上し、業務を効率化するメリットがあります。

また、個別性を出す事は無理ではありません。

基本的なクリティカルパスに個々の患者さんが必要である事を書き加え修正していけば良いのです。

 

患者さん自身も、入院生活や今後の予定gスケジューリングされ把握できるは、治療や入院生活を送るにあたって安心材料の一つになります。

クリティカルパスを利用する事は、医療従事者だけではなく患者さんにとっても、とても便利な物です。

看護師あるある|研修医は、ベテランナースに突っ込まれる!?

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研修医と看護師

研修医によって仕事も左右される

わたしの病院には研修医が派遣されてきます。

 

ある年の、外科の研修医は、かっこいいのですが、とっても慎重なタイプの男性医師でした。

(研修医がかっこいいと一年頑張ろうと思えるので、来るならかっこいい研修医をナースは望んでいます!そして欲を言えば人間離れしていない人がいい!!だってたいがいお坊ちゃん育ちだと、私たち一般庶民ナースの話が通じないことが多いんですよね・・・)

 

ある時の夜勤時、高齢でイレウス入院のほぼ、寝たきりのおばあさんが夜中に小刻みな痙攣を始めました。

 

指示確認をしても痙攣時の指示は出ていなかったので、当直医師へ連絡すると、研修医の○木先生が電話に出ました。そして病棟へ来てもらい診察してもらいました。

その後、抗痙攣薬を打つことになったのですが、静脈注射が今までにみたことないくらいに、とっても慎重なんです!!

 

2CCくらいしかない抗痙攣剤の静脈注射をゆっくりゆっくり三方活栓から注入していきます。

(隣で見ている私は、「かなり慎重だな~~。」他の仕事がしたくてうずうず・・・)

 

普通のベテラン医師なら「これやっといて」くらいの感じで指示を出したら行ってしまいますが、研修医だけあって自分で慎重になんでもやってくれるんですよね~。

 

慎重に抗痙攣薬を注射してからも、しばらく患者さんの傍にいて様子を見ていてくれました。

 

研修医君、手術担当に!!

その後数か月が経ち、○木先生も何回か手術に入ってお手伝いをするようになりました。

そして、盲腸の手術はもうすでにしていたのですが、半年くらいしてようやく大きなオペ担当医となりました。

 

その手術は、S状結腸がん摘出術でした。

いつもの手術は、何時出床の何時帰室という手術表が出るのですが。

この日は予定通り行かないだろうな・・・とみんなが感じていました。

 

だいたいは10時出床、3時半帰室とかです。これは、日勤さんが帰室担当してある程度バイタル測定や、術後の状態などを把握しておいて、夜勤者さんへ申し送る為です。

 

また、医師も手術後ある程度は、病院に居て術直後の患者さんの把握もしやすくなります。

 

そして、○木先生のオペが11時から始まりました。

やはり、3時になってもお迎えの連絡電話はきません。

 

4時になっても連絡が来ないので、病棟からオペ室に電話をかけていつごろ終わるか聞きました。

そうしたらオペ室の看護師さん曰く「まだ閉じているところだから、麻酔さまして5時くらいかな~」との事でした。

 

おばちゃんナースは怖いものなしよ

その日の夜勤はベテランのおばさん看護師さんでした。

 

そして、5時半にオペ室より「お迎えお願いします!」との電話連絡が来ました。

そして、○木先生も少しして病棟に戻ってきました。

 

ICU担当のおばちゃん看護師さんは、開口一番「せんせーい、私の仕事増やしたな~~!!。」と言っていました。

 

何でかというと、日勤さん達はもう帰ってしまっていたのでした・・・

 

手術が終わるのが遅れて、夜勤時にオペ室から「オペ終了しましたので、お迎えお願いします。」との連絡が来ると大変忙しくなり、バッタバタになるのです・・・

 

このような夜勤スタートだと今後辛くなるのですよね・・・

 

それをズバッと言ってしまう!おばさんは、どこでも強いんです!!

怖いものなしなのが、おばさんナースです。

看護師が教える!内臓脂肪を減少させる食べもの13選

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内臓脂肪

内臓脂肪が蓄積すると、メタボリックシンドロームになり、動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなりますので、内臓脂肪を減らすことは健康維持・増進のためには欠かすことができません。

内臓脂肪を減少させるための方法は運動だけではありません。食事からでも内臓脂肪を減少させることができるのです。内臓脂肪を減らせる食品をご紹介します!

 

肉や魚で内臓脂肪を減少!

内臓脂肪を減少させるための食品、まずは肉や魚類の中から、内臓脂肪を減少させることができる食品をご紹介します。

肉類や魚類はカロリーが高そうだし、脂質も多めだから、内臓脂肪を減少させるどころか内臓脂肪が蓄積しそうだと思うかもしれませんが、肉類や魚類の中には内臓脂肪を減少させる効果を期待できる食品があるのです。

 

1. 豚肉

豚肉

内臓脂肪を減少させる肉類は、豚肉です。豚肉にはポークペプチドやカルニチン、ビタミンB群が含まれています。

ポークペプチドは血中のコレステロールを低下させ、脂肪酸を燃焼させる効果がありますので、内臓脂肪が蓄積しにくくなり、さらに既に蓄積している内臓脂肪を減少させてくれるのです。

カルニチンにも内臓脂肪を燃焼させて減らす作用がありますので、ダイエットに向いている栄養素と言われています。

そして、ビタミンB群は糖質、脂質、タンパク質をエネルギーに変えて、代謝を促進するビタミンですから、内臓脂肪を減少させることができるんです。

 

2. 青魚

魚

イワシやサンマ、サバなどの青魚にはEPAという成分が含まれています。EPAは痩せホルモンと言われるGLP-1の分泌を促すことで、内臓脂肪を燃焼させることに役立っているんです。

 

野菜や果物などで内臓脂肪を減少!

肉や魚に続いて、内臓脂肪を減少させる野菜や果物をご紹介します。野菜や果物は、基本的に低カロリーですので、内臓脂肪を減少させるのに向いている食品が多いのですが、その中でもより減少させやすい食品を知っておきましょう。

 

3. トマト

トマト

内臓脂肪を減少させるには、トマトを食べましょう。トマトにはリコピンという抗酸化物質が豊富に含まれています。

このリコピンは悪玉コレステロールを減少させることで、内臓脂肪を蓄積しにくくする働きがあります。

 

4. キャベツ

キャベツ

キャベツには100gあたり1.8gと食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は脂肪分を吸着させ、排泄する働きがありますので、内臓脂肪が溜まりにくくなるのです。

また、食物繊維は水分を含んで膨張し、満腹感を得やすくするという効果がありますので、食べすぎを防止してカロリーを控えめにできますから、内臓脂肪を減少させることができます。

 

5. オレンジ

オレンジ

オレンジには、イノシトールというビタミン様物質が豊富に含まれています。イノシトールは別名『抗脂肪肝ビタミン』と呼ばれていて、肝臓への脂肪の蓄積を抑制し、血中のコレステロールを減少させる効果がありますので、内臓脂肪がつきにくくなるんです。

 

6. 大豆

大豆

大豆にも内臓脂肪を減少させる作用があります。大豆には、βコングリシニンというタンパク質が含まれています。

このβコングリシニンは血液中の中性脂肪を減らすことで、内臓脂肪の減少させる効果があるのです。

 

飲み物やデザートで内臓脂肪を減少!

内臓脂肪は飲み物やデザートでも減少させることができます。内臓脂肪を減少させる飲み物を5つご紹介します!

 

7. 寒天

寒天

寒天は天草という海藻からできていますが、カロリーは100gあたりたったの3.1kcalと非常に低く、さらに成分のほとんどが食物繊維なんです。

そのため、どんなに食べても脂肪として蓄積する心配はありませんし、一緒に食べた脂肪分を吸着して排泄するので、血中のコレステロールを低下させ、内臓脂肪を減少させるのです。寒天はゼリーにして食べると良いでしょう!

 

8. ヨーグルト

ヨーグルト

ヨーグルトも内臓脂肪を減少させるにはオススメのデザート類になります。ただ、内臓脂肪を減少させるためにヨーグルトを食べるなら、その種類に気をつける必要があります。

内臓脂肪を燃焼させるためのヨーグルトは、「ガセリ菌SP株」という乳酸菌が入っているものを選びましょう。ガセリ菌SP株が入ったヨーグルトは、内臓脂肪を減少させるという研究結果があるんです。

ただ、「ガセリ菌SP株」が入っていないヨーグルトでも、腸内環境を整えて代謝をアップさせる効果はありますので、間接的に内臓脂肪を減少させることはできるでしょう。

 

9. 低脂肪乳

低脂肪乳

まずは低脂肪乳です。低脂肪乳にはカルシウムがたっぷり含まれていますので、低脂肪乳を飲むと血中のカルシウム濃度が上昇します。

カルシウム濃度が上昇すると、脂肪の分解を抑制する副甲状腺ホルモンの働きが弱くなりますので、内臓脂肪が燃焼しやすくなるのです。

 

10. ローズヒップティー

ローズヒップティー

ローズヒップティーには、ハーブティーの代表とも言える飲み物ですよね。ローズヒップティーには、ティリロサイドというポリフェノールが含まれています。

このティリロサイドは、内臓脂肪を燃焼させる作用がありますので、ローズヒップティーを飲めば、内臓脂肪を減少させることができるんです。

 

11. コーヒー

コーヒー

コーヒーにはカフェインとポリフェノールであるクロロゲン酸が含まれていますが、カフェインとクロロゲン酸は脂肪細胞の代謝を促進しますので、内臓脂肪を減少させることができます。

 

12. 杜仲茶

杜仲茶

杜仲茶はダイエットに向いているお茶として有名ですよね。杜仲茶には、ゲニポシド酸という成分が含まれています。ゲニポシド酸は、血液中の脂質や内臓脂肪を分解し、燃焼させる効果がありますので、内臓脂肪を減少させることができます。

脂肪分が多い食事をする時は、杜仲茶を飲みながら食事をすると、内臓脂肪の蓄積を防ぐことができますよ!

 

13. お酢

きび酢

お酢に含まれる酢酸には内臓脂肪を燃焼させる効果があります。そして、お酢の中でもきび酢にはオクタコサノールという成分が含まれているんです。

このオクタコサノールにも内臓脂肪を燃焼させる効果がありますので、きび酢はダブルの効果で内臓脂肪を減少させることができるんです。

きび酢はソーダ割りにしたり、水やお湯で割ってサワードリンクとして飲むと良いでしょう。

 

まとめ

いかがでしたか?内臓脂肪を減少させる方法といえば、有酸素運動が真っ先に思い浮かびますが、特定の食品を食べることでも内臓脂肪を減少させることができるのです。

運動が苦手という人や忙しくて運動する時間が取れないという人は、ご紹介した食品を積極的に食べて、内臓脂肪を減少させ、健康増進に励みましょう!

看護研究(看護論文)の文献を効果的に検索する方法とコツ

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看護研究(看護論文)

看護研究は、多くの医療関係者の参考資料となり、看護全体の質の向上を図る上で非常に役に立ちます。現在では、さまざまなテーマが取り上げられており、各領域において何か分からないことがある際に先行研究を参考にすれば、疑問を払拭することが出来ます。

また、看護研究実施者として、研究内容を濃いものにするために、先行研究の内容を把握しておく必要があります。ただし、先行研究を探すのはインターネットに慣れていない方にとって少し難しいかもしれません。

ここでは、先行研究を検索するコツなどについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、先行研究を知る必要性

まず、冒頭で述べたように、これまでに実施されてきた先行研究を読むことで、早期に疑問を解決することができます。看護研究で取り上げられているテーマは、実施者が疑問に感じること、つまり多くの看護師ならびに医療従事者が疑問に感じていることであり、それまでに確実な“根拠”がなかった事柄なのです。

要するに、「解決への新たな糸口」がその研究で明確にされているため、看護研究実施者だけでなく、すべての医療従事者にとって有益となる情報なのです。

患者に対してケアを行うに当たって、「この状況化でどのように行動したらいいか」、「これは本当に患者のためになるのか」、など疑問に感じることがあれば、その疑問点について書かれている文献を読むことで疑問点を取り除くことができる(解決の糸口を見つけられる)ため、文献の必要性は非常に高いと言えます。

また、看護研究実施者にとって文献は必要不可欠な資料と言えます。看護研究では、「①テーマ」「②序論」「③方法」「④結果」「⑤考察」「⑥要約」「⑦文献」の構成が一般的であり、「⑦文献」が無ければ根拠のない研究になってしまいます。

テーマ(タイトル)

・誰にどんな目的で何を明らかにしたのか

序論

・背景:対象者の特徴、現状、社会情勢

・動機:なぜ研究をしようと思ったのか

・意義:研究する理由、研究のメリット

・文献検討:先行研究がどこまで進んで、どこがまだか

・研究目的:研究疑問に合わせて何を明らかにするか

方法

・対象者:対象者の条件、事例紹介

・データ収集:データの収集方法、項目の作成方法

・分析方法:データをまとめた具体的な分析方法

・研究期間:データを収集した期間

・倫理的配慮:対象者の権利擁護、実施した安全確保の対策

結果

・対象者:性別や年齢など基本属性、対象者数

・分析の結果:図や表をもとにした分かりやすい分析結果

考察

・結果までの内容の概略を示す

・結果の解釈や私的・個人的な意見

・先行文献との比較

・結果からみる今後の課題

要約

・研究で明らかになったことを簡潔にまとめる

文献

・本文で引用した文献のリスト

 

看護研究を行う上で、先行研究を参考にすることは、「①用語の定義を明確にする」「②先行研究の内容を知る」「③研究テーマの知識を深める」などの役割があり、必ず読んでおく必要があるのです。

 

①用語の定義を明確にする

看護研究において、読み手にとって疑問を感じさせないよう、普段なにげなく使っている用語においても、意味や範囲をしっかりと明確にしなければいけません。たとえば、「口腔ケア」という用語に対して、“狭義の口腔内清掃と口腔機能維持・回復のための技術およびそれらを目的とした口腔内アセスメントのこと”というように定義づけます。同じ領域またはテーマの先行研究には、これから書こうとしている研究内容に含まれる用語が多数出てきますので、この用語の定義づけにおいて非常に役に立つのです。

 

②先行研究の内容を知る

先行研究の内容を知ることで、重複を避けることができます。既に行われた研究をそのまま再度行うのは無意味であり、同様の場合は違う角度から実施する必要があります。また、似たような内容であれば、先行研究を参考にすることで時間と労力を割くことができ、研究に注力することができます。余計な時間と労力を費やしてしまうと、実施している研究の内容が稀薄になってしまうため、同じ領域・分野の先行研究の内容を把握し、反映させる必要があります。

 

③研究テーマの知識を深める

研究に精通している専門家は当然、同じ分野の先行研究を熟知しています。同じ分野の先行研究を「どこまで正確に把握しているか」、「第一人者は誰なのか」、「起源はいつなのか」など、深い知識を有しておかなければ、根拠がなく正確性に欠ける研究であると受け止められてしまいます。ゆえに、同じ分野の先行研究はもちろん、他分野でも関係の深い先行研究があれば必ず目を通しておかなければいけません。

 

2、先行研究をどのくらい熟知しておくべきか

まず、同じ分野または関係の深い分野の先行研究に対する知識量が多ければ多いほど、実施する研究の質は高くなります。それゆえ、時間が許す限り、多くの先行研究に熟知しておくことを強くお勧めします。

 

同分野の先行研究が少ない場合

同じ分野の先行研究が少ない場合には、存在する論文をすべて読破すると共に内容を完全に把握することが必須です。また、関係の深い先行研究(または類似用語が多発している研究)においても、ある程度熟知しておきましょう。

 

同分野の先行研究が多い場合

同じ分野の先行研究が大量にある場合には、質の高いものを“精選”することが大切です。質の高い論文は何度も引用されているため、先行研究を読む際には必ず“文献”・“引用文献”と書かれている項目に注目し、必要あれば書き留めておきましょう。

 

また、「考察」の項目もしっかりと読んでおきましょう。「考察」は“解決のための課題”、すなわち“研究によって明るみになった問題点”であり、参考にする上で最も有益な情報ですので、どの項目よりも時間をかけて熟読することをお勧めします。

 

3、文献の種類と信頼度

看護研究の文献の種類には、大別すると「会議録・レター論文」「原著論文」「総説」「大系書・教科書」があります。これらはインターネットで無料閲覧できるものから、有料でしか見られないもの、書籍として購入または図書館でしか読めないものなどさまざまです。

 

会議録・レター論文

学会や研究会で発表された内容が要約されているもので、研究内容や方法、結果、考察などが書かれていますが、主に口頭で述べられた要約文書であり、1ページにも満たない場合が多く、文献の中で最も信憑性が低いため、看護研究の参考文献としては不適切とされています。

 

原著論文

原著論文とは、一般的に認識されている論文のことであり、方法や結果、考察など、研究実施者がまとめ上げた最終の研究結果が細かく記述されています。多くはインターネット上で無料閲覧が可能で、主に雑誌に掲載されています。研究結果のすべてが記述されているため、信憑性は会議録・レター論文より高いものの、データが不十分など内容に不備のあるものも多く、参考にする際には精選する必要があります。

 

総説

総説とは、各分野・領域における権威者が、先行研究を批判的視点で多角的に内外の知見を集めた上で、総合的に学問的状況を概説・考察したものであるため、会議録・レター論文や原著論文よりさらに信憑性が高く、精選しなくても参考文献として選択できます。総説はインターネットで有料閲覧または雑誌(購買)で読むことができます。

 

大系書・教科書

大系書・教科書は知見としてすでに定着しているものであるため、文献の中では最も信憑性が高く、同分野・領域の研究において欠かせない情報源です。ただし、原著論文や総説に比べて最新の情報を得にくいため、大系書・教科書のみを参考にせず、各文献を包括的に読む必要があります。なお、大系書・教科書は基本的にインターネット上で無料・有料閲覧が不可能で、大学や医療機関等の図書館、または書籍を購入しなければ読むことができません。

 

このように、看護研究の文献の種類はさまざまあり、下にいくほど信憑性が高いため、参考または引用する際には、総説や大系書・教科書など信憑性が高い文献を選んでください。原著論文は最新の研究結果が多く、知識を増やす上で非常に役に立ちますが、内容に不備があるものもあります。参考・引用する際には他で多く引用されている質の高い文献を率先して選びましょう。

 

4、文献検索のコツ

先行研究の文献を検索する際、インターネットが主な媒体になると思いますが、インターネットに慣れていない方は、目当ての文献に辿り着かないことがあるでしょう。この問題のほとんどは、“検索にかけるキーワード”に不備があるためです。

キーワード検索のコツを知れば、どなたでもお目当ての文献に辿りつくことができますので、以下に解説する「検索アルゴリズムを理解する」「シソーラスを活用する」Google・Yahooで検索する際の裏ワザ」の3つのポイントをしっかりお読みください。

 

4-1、検索アルゴリズムを理解する

GoogleやYahoo、医中誌などのwebサイトでは、検索アルゴリズムが使用されています。アルゴリズムというのは、いわゆるコンピュータが計算を行う時に「計算方法」のことを言いますが、検索をかける際に使用するキーワードと同様、または類似のキーワードが記述されている情報のみがピックアップされるシステムが構築されています。

たとえば、GoogleやYahooで「医療事故」というキーワードを検索すれば、「医療事故」について書かれているページがすべてピックアップされます。主にサイトのタイトルに書かれているキーワードが対象となり、「医療事故」の場合、”約1,540,000件”もの「医療事故」について書かれている(タイトルに使われている)ページがピックアップされるのです。

google

「医療事故」というキーワードは非常に大きいため、「医療事故に関する看護研究」をなかなか見つけることができません。それゆえ、たとえば「医療事故 看護研究」というように、スペースを用いて2つ以上の連続したキーワード使用して絞り込むことで、検索結果が”479,000件”にまで減り、より容易に目当ての情報を探し出すことができます。

google

4-2、シソーラスを活用する

検索アルゴリズムを踏まえた上で、シソーラスを活用することで、さらに容易にお目当ての情報を探し出すことができます。シソーラスとは、いわゆる「同類語」のことであり、検索にかけたキーワードと同様または類似の意味を持つ言葉群のことを指します。

GoogleやYahooには数多のサイトが掲載されていますが、医中誌などの文献検索WEBサイト(以下、データベース)に掲載されている看護研究の文献数は少ないため、“適切なキーワード”で検索をかけなければ、目当ての文献を見つけることができません。

ここで役に立つのがシソーラスであり、「医療事故」についての文献を調べたい場合に、「医療事故」と検索しても見つからない場合には、同義語または類似語である「事故」「アクシデント」「看護事故」「医療過誤」「看護過誤」というキーワードを使うことで、見つかることが多々あります。

看護研究が掲載されている医中誌などのデータベース上では、論文や雑誌など“タイトルに使われているキーワード”が主な検索対象であることから、1つのキーワードだけでなく、関連するキーワードを駆使し検索する必要があるのです。

 

4-3、Google・Yahooで検索する際の裏ワザ

看護研究を探す際の主な媒体は医中誌などのデータベースを主体として活用しますが、学会を通していない、たとえば病院独自の研究文献が多々存在します。これらの文献は、看護研究の引用・参考資料としては不足な部分もありますが、多角的に知識を増やす上で非常に役に立ちます。

これらの文献を探す際には、GoogleやYahooを使用することになりますが、医療に従事していない者が執筆したもの(ブログ)なども検索に引っかかるため、必ず精選しなければいけません。

精選の方法として最も有効なのは、「目当てのキーワード」+「ac.jpまたはor.jpで検索することです。「ac.jp」は「Academic Japan」の略で日本の教育機関にのみ取得が許されたURLのことで、「or.jp」は「Organization Japan」の略で日本の法人組織にのみ取得が許されたURLです。

大学や病院などの教育・医療関係機関の多くは、ac.jpまたはor.jpがサイトのURLとなっているため、目当てのキーワードにac.jpまたはor.jpを加えることで、教育・医療関係機関のみが検索結果としてピックアップされます。それゆえ、質の高い文献をより簡単に見つけ出すことができるのです。

例:「医療事故 ac.jp」、「医療事故 or.jp」、「医療事故 事例 ac.jp」、「医療 事例 or.jp」

google

看護研究の参考文献としてだけでなく、日々の業務で感じた疑問点などがあれば、上述のような方法で検索してみてはいかがでしょうか。

 

5、文献検索のデータベース

看護研究の文献を検索できるデータベースは「医中誌」CINAHLCiNii ArticlesPubMedなど数多く存在します。特に、「医中誌」・「CINAHL」は多くの大学・医療機関が組織単位で契約しており、各機関の図書館に設置してあるパソコンから無料で検索・閲覧することができるため、多くの医療従事者にとって身近なデータベースと言えます。

その他、日本看護研究学会や日本看護協会など独自に発行している論文・学会誌も各サイトから閲覧することができます。網羅的に調べたいという場合には、複数のデータベースを活用しましょう。

ただし、個人利用においては、基本的に有料(登録制・従量制など)であるため、無料で全文閲覧したい場合には、各大学・各病院の図書館を利用するのが良いでしょう。

 

5-1、医中誌

医中誌(NPO医学中央雑誌刊行会)は、日本で最も権威のある文献検索データベースと言っても過言ではなく、多くの大学・医療機関の図書館に設置してあるパソコンに導入されています。

個人で利用する場合には登録が必須で月額がかかるものの、図書館などのパソコンからは無料で利用することができます。医中誌から閲覧できる全ての文献は日本のもので、日本語で書かれているため、文献検索において第一選択となるデータベースです。

対象分野 医学、薬学、歯学、看護学、獣医学などの関連分野
対象資料 日本で発行される学研究会誌、業界誌、商業誌、大学や病院などの紀要・研究報告
対象文献 会議録、学会抄録、原著論文、総説、症例報告など(約5000誌)
収録期間 月2回(毎月1日・16日)

 

医中誌パーソナルWeb (個人で利用する場合)

 

5-2、CINAHL(シナール)

CINAHLは、Cinahl Information Systemsが運営する、全世界の看護・保健・医療分野の文献情報を網羅的に収載したデータベースです。通常のCINAHLの収録誌数3000誌以上ですが、上位版のCINAHL Plusは5000誌以上、最上位版のCINAHL Completeは5200誌以上の雑誌論文を収録しています。

医中誌と同様、多くの大学・医療機関に設置してあるパソコンから無料で利用することができます。すべての文献は英語で書かれており、日本語に翻訳されていませんが、英語を理解できる方は医中誌以上に役立つデータベースになるかもしれません。

対象分野 看護・保健・医療
対象資料 全世界
対象文献 論文の書誌情報・抄録、健康管理に関する書籍情報、看護学系学位論文情報など(約3000誌以上)
収録期間 毎週

 

5-3、その他

医中誌やCINAHLのほかにも、文献を検索できるデータベースは多々あるため、実施するテーマに関係の深い先行研究が少ない場合や、多角的に情報を取得したい場合には、ぜひ以下のデータベースを利用してみましょう。

料金形態 概要
CiNii Articles 有料

一部無料

国立情報学研究所が運営する学術論文や雑誌・図書など、約1800万件の学術情報を検索できるデータベースで、看護・医療関係の論文も数多く収録している。
メディカルオンライン 有料 株式会社メテオが運営する、医師や看護師など医療関係者に向けた医療情報の総合WEBサイト。医療情報に加え、文献・論文などを検索・閲覧することができる。
日本看護研究学会 基本無料 日本看護研究学会が開催する年1回の学術集会、年間5号の学会誌、5つの地方会での研究活動報告などを閲覧することができる。
日本看護協会 有料 日本看護協会図書館に所蔵されている国内発行の看護の実践・研究・教育に関する文献や雑誌を数多く検索・閲覧することができる。ただし、会員登録が必須。
MedicalFinder 有料 医学書院ならびに提携するその他の出版社・学会が発行する医学・看護領域の学術雑誌を掲載している。全文閲覧には個人購読契約またはPPVでの購入が必要。
PubMed(MEDLINE) 基本無料 米国国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する学術文献検索データベース。世界中の主要医学系雑誌に掲載された記事・論文を検索・閲覧できる。すべて英語表記。

 

まとめ

このように、文献を参考にする意義は非常に大きく、日常業務を行う看護師など医療従事者ならびに看護研究実施者にとって有益な情報です。

検索にはややコツがいりますが、当ページで解説した方法を駆使し、効率的に目当ての文献を見つけてください。検索方法やデータベースの種類など分からなくなったら、ぜひまた当ページにお越しくださいね。


感染症認定看護師の役割と入学・資格取得に際する試験対策

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感染管理認定看護師

感染症の予防や蔓延時に適切に対処できる能力を有する感染管理認定看護師は、すべてに医療機関にとって必要不可欠な存在であり、年々その需要は増加しています。

感染管理認定看護師になるためには、指定の教育機関で課程を修了し試験に合格しなければいけないため、中には高い壁を感じる人も多いのではないでしょうか。

当ページでは、教育機関への入学試験・課程修了後の認定審査(筆記試験)の対策について詳しく解説していますので、感染管理認定看護師を目指している方は、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

 

1、感染管理認定看護師とは

感染管理認定看護師は、1998年より日本看護協会によって認定され、感染管理において熟練した看護技術および知識を有する者(教育課程を経て)にのみ与えられる資格のことです。

認定が開始された当時、院内感染の発生率は非常に高く、感染の拡大が問題視されていました。

感染の予防対策や継続的な管理、再発予防における発生状況の検査・集計(サーベイランス)などの知識・技術は、看護経験の積み重ねだけでは習得し難く、それゆえ医療施設において感染管理におけるキーパーソンとなる人材の育成を目的として、他の領域に先駆けて早々に制定されたのです。

感染管理認定看護師は、「疫学」、「感染管理学」、「感染症学」、「微生物学」、「統計学」、「医療関連感染サーベイランス」、「医療管理学」、「職業感染管理」、「感染防止技術」、「感染管理指導・相談」、「洗浄・消毒・滅菌技術」、「ファシリティマネジメント」など、感染に関するさまざまな知識・技術を包括的に習得した上でなることができる感染管理のスペシャリストであり、院内感染が後を絶たない昨今、各医療機関における感染看護認定看護師の必要性はますます高まっています。

 

2、役割・活動内容

院内における感染リスクを低減するために、「実践」・「指導」・「相談」の3つの内容に則って、「①予防・対策」「②医療関連感染の発生の監視」「③職業感染対策」「④すべての職員への感染対策指導」「⑤病院環境のファシリテーター」「⑥感染管理システムの構築」、の6つの業務を包括的かつ実践的に行うのが感染管理認定看護師の主な役割です。

 

①予防・対策

すべての人の血液・体液・汗を除く分泌液・粘膜・排泄物・損傷のある皮膚は感染性があると捉え、手技時や術前・術後のみならず日常生活においても感染症の発症・蔓延に努め、感染時には迅速に標準予防策ならびに感染経路別予防策を実施するとともに、職員に対して適切な実施を促す。

 

②医療関連感染の発生の監視

全体的な院内感染の発生状況のみならず、中心静脈カテーテル関連血液感染、手術部位感染、人工呼吸器関連など、多方面から包括的にサーベイランスを行い、得たデータをもとに日常的な対策案を具体化・実施する。

 

③職業感染対策

針刺しによる医療従事者などへの感染を防止するために、リキャップの禁止や注射針専用の破棄容器の適切な配置、安全器材の活用など、感染予防対策を講じると共に、指導と監察を行う。

 

④すべての職員への感染対策指導

全病棟のラウンド・点検を行い、感染対策が適切に行われているか確認し、不備がある場合には院内感染予防の観点から指摘・改善指導・教育を行う。また、院内感染の重大性を周知させるために啓発活動や感染対策教育における企画・運営を行う。

 

⑤病院環境のファシリテーター

病院の衛生管理におけるファシリテーターとして、日常的な感染リスクの低減のために、集団による問題解決・知識創造活動など、率先して病院全体の環境改善を行う。

 

⑥感染管理システムの構築

各種マニュアルの作成、サーベイランスの方法、アウトブレイク時の対応など、院内感染対策における体制を整備し、問題発生時には迅速かつ適切な改変を行うとともに、すべての職員への周知を促す。

 

3、認定取得へ向けた取り組み

感染管理認定看護師になるためには、看護師としての経験・技術を有した上で、日本看護協会が認める教育機関での課程を修了し、認定審査(筆記試験)に合格する必要があります。

第一段階として、6か月(615時間以上)に及ぶ教育課程を修了することが必須となりますが、各教育機関への入学に際して以下のような入学要件が定められているため、誰でも入学・履修できるわけではありません。

 

教育課程の入学要件

①免許取得後、通算5年以上の実務実績を有すること。

②上記の実務期間のうち、通算3年以上、感染管理に関わる下記のような活動実績を有すること。

最新知見や自施設のサーベイラインスデータ等に基づいて、自身が中心となって実施したケアの改善実績を1事例以上有すること。医療施設において、医療関連感染サーベイランス(血流感染、尿路感染、肺炎、手術部位感染)について計画から実施・評価まで担当した実績を一つ以上有することが望ましい。

③現在、医療施設などにおいて、専任または兼任として感染管理に関わる活動に携わっていることが望ましい。

 

カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目 看護管理 15 105時間

(+30時間)

情報管理 15
看護倫理 15
リーダーシップ 15
文献検索・講読 15
指導 15
相談 15
対人関係(選択) 15
臨床薬理学(選択) 15
専門基礎科目 感染管理学 30 140時間
疫学・統計学 35
微生物・感染症学 60
医療管理学 15
専門科目 医療関連感染サーベイランス 45 120時間
感染防止技術 30
職業感染管理 15
感染管理指導・相談 15
洗浄・消毒・減菌と

ファシリティマネジメント

15
学内演習 総合実習 90 90時間
実習 臨地実習 180 180時間

※単位は教育機関によって異なる

 

教育機関

都道府県 教育機関名
北海道 北海道医療大学 認定看護師研修センター
東京都 国立看護大学校 研修部
日本看護協会看護研修学校
神奈川県 神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター
北里大学 看護キャリア開発・研究センター 認定看護師教育課程
石川県 石川県立看護大学付属看護キャリア支援センター
長野県 長野県看護大学 看護実践国際研究センター
愛知県 愛知医科大学 看護実践国際研究センター 認定看護師教育課程
三重県 三重県立看護大学 地域交流センター
兵庫県 日本看護協会神戸研修センター
山口県 山口県立大学 看護研修センター
福岡県 国際医療福祉大学 九州地区生涯教育センター
宮崎県 宮崎県立看護大学 看護研究・研修センター
沖縄県 沖縄県看護協会

 

3-1、教育機関への入学試験対策

教育機関にて課程を受けるためにはまず、各教育機関が実施する入試に合格しなければいけず、これは多くの看護師にとっての悩みの種と言えます。というのも、課程修了後に行われる認定審査(筆記試験)では、課程の中で勉強した問題が大半を占めるため、範囲を特定しやすいため、すべての領域において90%以上の合格率を誇っています。

しかしながら、教育機関への入学試験では範囲が非常に広く、年度ごとに大きく変更されることがあるため、合格率はおおよそ20%~50%程度(未公表)と低いのが実情です。

入学試験には主に「①学科試験(筆記)」「②小論文(800~1200文字程度)」「③面接」で構成されており、中でも難しく配点割合が高いのが「学科試験(筆記)」です。各教育機関によって出題範囲・問題は異なるため、入学を希望する教育機関の出題傾向をしっかりとリサーチしておく必要があります。

 

①学科試験(筆記)

学科試験で好成績を残すためには、まず感染に関連した看護師国家試験出題基準を再確認するとともに、各教育機関の過去問を入手することが第一となります。

看護師国家試験出題基準(感染関連)
必須問題 感染に関する問題
薬理学 おもな抗生物質の概要
微生物学 微生物に関する知識全般
公衆衛生学 保健活動、感染対策に関する法規(感染症法・予防接種法・学校保健衛生法)
関係法規 労働安全衛生法(伝染病患者における就業禁止関連)
基礎看護学

基礎看護技術

感染予防技術、看護の管理(安全管理)
成人看護学総論

成人看護学

人口静態・動態と成人の疫病(感染症関連)、血液(成人T細胞白血病・輸血)、呼吸器(肺炎・結核)、消化器(肝炎)、アレルギー・膠原病(抗原と抗体)、皮膚(感染症・皮膚の整理とスキンケア・帯状疱疹患者の看護)、目・耳鼻咽喉・歯(炎症性の疾患・口腔清掃)、女性生殖器(外陰炎・クラミジア感染症・真菌性膣炎・トリコモナス膣炎)など
小児看護学 感染症の小児の看護、小児の生理(免疫)、幼児の看護(予防接種)

※年次により改変

 

過去問に関しては、前年度分の過去問を一般公開している場合や入学説明会に参加することで閲覧できる場合など、各教育機関によって入手方法が異なります。おおむね、入学説明会に参加すれば入手できるため、入学を希望する教育機関の説明会には必ず参加しておきましょう。

 

②小論文

小論文では、テーマに対して自分なりに問題を提起し、その根拠を示すとともに読み手を納得させることが求められます。テーマは毎年、各教育機関で異なるため、とにかく書く練習をするしかありません。また、都度、小論文に精通した専門家に校正してもらう必要があります。

 

小論文で高得点をとるためのポイントは、

①テーマに込められた“意図”を読み取る

②自分の意見や考えを“論理的”かつ分かりやすく書く

③制限時間内にできるかぎり指定の“文字数”に近づける

④作文に求められるような感性豊かな“言い回し”を使わない

など、たくさんあります。

 

ただし、小論文で高得点をとるには多大な時間を費やすくことになり、さらに教育機関によって異なりますが、小論文の配点割合は全体の3割程度なので、時間がない場合には小論文はほどほどにし、配点割合が5割の学科試験に注力するのが効率的かつ効果的な勉強法と言えるでしょう。ただし、言うまでもありませんが、配点割合が3割だからと言って小論文を疎かにしすぎるのは論外です。

 

③面接

面接では、主に事前に提出した書類(志望理由など)をもとに質疑応答が行われるため、提出書類に書いたことは何を聞かれても矛盾なく的確に応えられるように準備してください。

面接では、感染管理における経験や知識ではなく“人間性”がみられます。経験はともかく、知識は教育課程を履修すること解決されるため、いかに自分が感染管理において豊富な経験・知識を有しているかを話しても効果は薄いと言えます。

それよりも、「なぜ認定看護師になりたいのか」、「認定看護師になって何がしたいのか」、「教育課程で何を学び、どのように活用していくのか」など、将来に対する姿勢・展望を具体的に伝えることが重要です。

また、社会人としての適切なマナーを身につけているかも見られるため、面接試験の対応やマナーの基礎もしっかりと復習しておきましょう。

 

3-2、認定審査対策

教育課程を修了した後に行われる認定審査(筆記試験)では、四肢択一・マークシート方式で行われ、計40の問題が出題されます(制限時間100分)。

出題方式 問題数 配点
問題1:客観式一般問題 20問 50点
問題2:客観式状況設定 20問 100点
40問 150点

また、合否の基準は、A評価:120点以上、B評価:120~105点、C評価:105点未満となり、A評価・B評価、つまり105点以上が合格となります。合格率は例年90%であるため、そこまで心配する必要はありません。

認定審査では、教育課程の範囲(感染管理カリキュラム)が出題されるため、教育課程でしっかり学び、復習をすれば容易に基準点を超えることができます。ただし、認定看護師を目指す方の多くは、教育課程修了後に職場復帰をし、学んだ内容を忘れがちなので、認定審査を受ける際は、しっかりと勉強しておきましょう。

なお、認定審査の過去問(前年度分のみ)は、課程を修了した後に受講した教育機関で閲覧することができます。

 

4、感染管理認定看護師の求人・転職について

認定看護師の数ある領域の中で最も需要が高いのが「感染管理」領域です。感染症は私たちにとって身近な疾患であり、さらに感染経路は多岐に渡り、一度院内感染が発生すると瞬く間に広がり収集がつかなくなる非常に厄介な疾患であることから、予防法や蔓延の対処法に精通した感染管理認定看護師は、すべての病院にとって無くてはならない存在なのです。

認定看護師制度は広く周知されるようになりましたが、それでも優遇面においては未だ確立されていなく、感染管理認定看護師になったとしても給料が大きく増加することはありませんが、転職に困ることはまずないと言っても過言ではありません。また、同一医療機関で長期的に働く場合にも優遇処置がとられることが多いため、安定的に仕事をすることができます。

 

まとめ

感染管理認定看護師の人数は2015年時点で1053人で、21領域中、最も多くの看護師が認定を受けています。しかしながら、それでもまだ不足状態にあるのが実情です。

感染管理認定看護師になるためには、6か月以上にもおよぶ教育課程を修了し、試験に合格する必要があり、また費用もかかりますが、必ず役に立つ資格ですので、患者や医療関係者のため、ご自身のために、ぜひ資格取得に向けて勉学に励んでくださいね。

認知症認定看護師の役割と入学・資格取得に際する試験対策

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認知症認定看護師

認知症を発症している高齢者は2012年時点で約462万人、これは65歳以上の高齢者のうちの約15%で、さらに認知症の前段階である軽度認知障害を持つ高齢者は約400万人にのぼると厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。

また、2015年1月に厚生労働省より発表された推計によれば、2025年には認知症患者が700万人にのぼると言われています。このように、認知症は高齢者にとって非常に身近な障害であり、医療機関における認知症認定看護師の必要性はますます高まっています。

認知症認定看護師になるためには、教育機関への入学試験に合格し、課程を修了した後に、認定試験に合格しなければならず、その道は長く険しいのが実情です。

ここでは、試験対策を中心に認知症認定看護師に関して詳しくご説明しますので、認定看護師を目指している方はぜひ最後までしっかりお読みください。

 

1、認知症認定看護師とは

認知症認定看護師は、日本看護協会によって2006年に認定が開始された資格のことで、

①認知症患者の権利擁護として意思表出能力を補完

②認知症の周辺症状を悪化させる要因への働きかけによる行動障害の予防や緩和

③認知症患者の状態把握を含む心身状態の総合的なアセスメント及びケアサポートシステムの立案

など、専門的な知識・裏付けのもとケアを行う認知症の看護におけるスペシャリストです。

認知症認定看護師は、豊富な知識と高い技術を有し、患者に対する直接的なケアのみならず、看護職員への指導や相談などを包括的に行うリーダーとしての役割を担っており、2015年時点では全国で472人が認定を受けていますが、認知症患者の急増に伴い、看護師の人数は深刻なほど不足状態にあります。それゆえ、認知症認定看護師の必要性はここ数年で軒並み高まっています。

 

認知症のメカニズムは未だ解明されておらず、また効果的な治療法も確立されていないため、他疾患との鑑別、重症度の評価など誤診が多発しているのが現状で、さらに徘徊や暴言といった認知症の症状に対する対処法は非常に難しいため、多くの看護師が対処にストレスを感じ、結果的に病院全体の看護の質・成果の低下を招いてしまいます。

ゆえに、全体の看護の質・成果を向上させるために、各医療機関における認知症認定看護師の存在は不可欠であり、特別養護老人ホーム、訪問看護ステーションなど、活躍の場は多岐に渡ります。

 

2、役割・活動内容

認定看護師は、医療従事者の間で看護のスペシャリストとして認知され、さらに現状においては病棟・病院の看護の質を高めることが出来る唯一の存在であるため、認知症認定看護師に期待される能力は多岐に渡り、患者のQOL向上に向けてさまざまな視点から包括的に看護を実践することが求められます。

 

認知症認定看護師に期待される能力

①認知症患者の意思を尊重し、権利を擁護することができる。

②発症レベルに関わらず、すべての段階において患者の状態像を統合的かつ適切にアセスメントし、各期に応じたケアの実践・体制づくり、家族のサポートを行うことができる。

③認知症の行動心理症状を悪化させる要因や誘因に働きかけ、予防・緩和することができる。

④患者にとって安心・安全・安楽な生活環境・療養環境を調節することができる。

⑤他疾患合併による影響をアセスメントし、健康管理(治療的援助を含む)を行うことができる。

⑥認知症に関わる保健・医療・福祉制度を正しく理解した上で、地域にある社会資源の活用・開発に寄与できる。

⑦認知症看護における専門的知識の習得ならびに技術向上のための自己研鑽に取り組み、柔軟にケアニーズの変化に対応できる。

⑧認知症看護の実践を通して役割モデルを示し、看護職に対して具体的かつ的確な指導が出来る。

⑨認知症看護に関する看護職の具体的な相談、認知症治療に関する患者・家族の相談に対応することができる。

⑩他職種と積極的に共働し、ケアサービス推進のための役割をとることができる。

 

このように、「実践」だけでなく、「指導」「相談」など、認知症における病棟・病院全体の看護の質向上を図ることが認知症認定看護師の役割です。

それに応じて、「各期に応じた療養環境の調節・ケア体制の構築」「行動心理症状の緩和・予防」「看護職員に対する認知症看護の指導」「患者・家族・看護職員へのコンサルテーション」など、活動内容も多岐に渡ります。

 

・各期に応じた療養環境の調節・ケア体制の構築

患者のADL(日常生活動作)を考慮し、安心・安全・安楽な生活環境を提供することが第一の役割です。規則正しい生活リズムが整えられるよう働きかけたり、自宅のような親しみのある環境に近づけたり、季節感を取り入れる工夫をし、居心地の良い環境を作るとともに、患者の症状に応じてケガや事故が起きないよう配慮します。

 

・行動心理症状の緩和・予防

認知症症状の1つである徘徊や暴言・暴力といった“行動”には、各患者の心理的側面が大きく関係しています。ゆえに、各患者の心理をアセスメントした上で、各患者に見合ったケアを見出し、症状の緩和や事故の予防を行います。

 

・看護職員に対する認知症看護の指導

安心・安全・安楽のための環境づくり、アセスメント・ケアの方法など、認知症看護に必要となる技術を看護職員に指導し、病院全体の看護の質の向上を図ります。また、各看護職員によってケア手順や内容に相違が生じないよう、マニュアルの作成・改変を行うのも認定看護師の大きな役割です。

 

・患者・家族・看護職員へのコンサルテーション

認知症の症状発現に関する身体的・精神的・社会的な影響に不安を抱える患者や家族に対して、不安の軽減・治療の細やかな説明など相談業務を行います。また、看護チームからのコンサルテーション業務など、アドバイザーとしての役割を担い、病院全体の看護の質向上に努めます。

 

3、認定取得へ向けた取り組み

認知症認定看護師になるためには、まず日本看護協会が指定する教育機関にて6か月615時間以上に及ぶ課程を修了し、その後に受けることができる認定審査に合格する必要があります。

教育機関への入学にはさまざまな要件があり、さらに入学試験に合格しなければならないため、誰でも簡単に入学できるというわけではなく、豊富な知識と経験が必要不可欠です。

認知症認定看護師を目指している方は、教育課程の入学要件やカリキュラム、近隣の教育機関をしっかりと把握しておきましょう。

 

教育課程の入学要件

①日本国の看護師免許を有すること。

②看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修(臨床経験)を有すること。

③そのうち3年以上、認知症者の多い医療・福祉施設(在宅ケア領域を含む)等での看護実績を有すること。

④認知症者の看護を5例以上担当した実績を有すること。

⑤現在、認知症者の多い医療・福祉施設(在宅ケア領域を含む)等で認知症者の看護実績に携わっていることが望ましい。

 

カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目 看護管理 15 135時間

(+15時間)

情報管理 15
看護倫理 15
臨床薬理学 15
リーダーシップ 15
文献検索・講読 15
指導 15
相談 15
医療安全管理 15
対人関係(選択) 15
専門基礎科目 認知症看護原論 15 90時間
認知症基礎病態論 15
認知症病態論

(認知症の原因疾患と治療)

45
認知症に関わる保健・医療・福祉制度 15
専門科目 認知症看護倫理 15 150時間
認知症者とのコミュニケーション 15
認知症看護援助方法論Ⅰ

(アセスメントとケア)

45
認知症看護援助方法論II

(生活・療養 環境づくり)

30
認知症看護援助方法論III

(ケアマネジメント)

30
認知症者の家族への支援・家族関係調整 15
演習/実習 学内演習 90 270時間
臨地実習 180

※単位は教育機関によって異なる

 

教育機関

都道府県 教育機関名
北海道 北海道医療大学 認定看護師研修センター
秋田県 日本赤十字秋田看護大学 教育研究開発センター

認定看護師教育課程認知症看護認定看護師コース

千葉県 地域医療機能推進機構本部研修センター
東京都 聖路加国際大学 教育センター
日本看護協会看護研修学校
神奈川県 神奈川県看護協会 認定看護師教育課程
山梨県 山梨県立大学 看護実践開発研究センター
長野県 長野県看護大学 看護実践国際研究センター
兵庫県 公益社団法人 兵庫県看護協会 認定看護師教育課程

 

3-1、教育機関への入学試験対策

上記の9つの教育機関で課程を履修するためには、まず入学試験に合格しなければいけません。入学試験は「学科試験」「小論文」「面接」で構成されており、配点割合は順に5:3:2となっています。

入学試験の合格率は例年20%~50%と低いため、合格するためには入念なリサーチと勉強が必要不可欠です。しかしながら、多くの方は業務に追われ、勉強に時間を割くことができないのが実情です。

それゆえ、「学科試験」・「小論文」・「面接」の内容とポイントを抑え、限られた時間と労力で取り組むことが重要となります。

 

学科試験

学科試験は、一般的に“専門科目Ⅰ(択一式)”と“専門科目Ⅱ(記述式)”で構成されており、主に「看護師国家試験出題基準」の中の認知症看護に関連した問題が出題されます。

専門科目Ⅰは認知症看護において正しい回答を選ぶ正誤問題で、専門科目Ⅱは状況設定問題と小論文です。

専門科目Ⅰ 「認知症の概念」「認知症看護の原理原則と倫理」「認知症の病態と治療」「認知症患者とのコミュニケーション」「認知症患者と家族に対する保健・医療・福祉制度」「認知症患者のケアマネジメント」「認知症患者の生活・療養環境づくり」など、認知症看護の実践に必要となる基礎知識が問われる。
専門科目Ⅱ 認知症患者と家族について当事者の視点からアセスメントを行い、適切な看護実践を展開する上で必要となる知識と記述能力が問われる。

 

学科試験の問題は教育機関によって異なるため、「看護師国家試験出題基準」だけでなく、入学を希望する教育機関の過去問題(前年度分)をしっかりリサーチする必要があります。

過去問題は主に、各教育機関が実施する“入試説明会”に参加することで閲覧または入手することができますので、必ず参加しておきましょう。

なお、「日本看護協会」の会員であれば、看護研究学校と神戸研修センターの過去問題(前年度分)をホームページより閲覧することができます。入学を希望する教育機関の出題傾向と異なる部分はあるものの、基礎となる傾向を知ることができるため、まだ会員ではない方は、この機会に会員登録するのも良いでしょう。

 

小論文

小論文では、出題されるテーマに対して、経験や実践をもとに自分なりに問題提起し、それに基づく根拠や今後の課題・展望などを論理的に示すことが求められます。

評価項目 評価基準
内容 ・経験や実践をもとに論理的に述べられている。

・今後の課題や展望について述べられている。

文章構成 ・論旨が明確で簡潔明瞭である

・誤字・脱字がない

・段落・改行が適切である

・文字数800文字以上、1200文字以内

 

小論文のテーマは教育機関ごとに異なり、さらに年度によっても変更されます。抽象的なものから具体的なものまでさまざまですが、認知症看護に関する一般的なテーマが出題されます。

制限時間60分間に800文字以上埋めることが推奨されているため、過去問題や認知症に関連した最近のニュースなどを題材に、自分の中で効率的に書くことが出来るテンプレートを作っておきましょう。

 

面接

面接では、主に事前に提出した書類(志望理由など)をもとに質問されます。他にも、「認定看護師の必要性」「理想の認定看護師像」「資格取得後のビジョン」など質問されることがあります。

基本的には、事前に提出した書類をもとに質問されるため、書類に書いたことは何を聞かれても矛盾なく答えられるように準備しておきましょう。なお、書いていることをそのまま述べるのではなく、さらに深く詳細を伝えられるよう、+αの答えを用意しておきましょう。

また、社会人としての姿勢や振る舞いなども評価の対象となるため、面接のマナーも事前にしっかりと心得ておきましょう。

 

3-2、認定審査対策

日本看護協会が指定する教育機関での課程を修了した後に行われる認定審査は、資格取得に際する直接的な試験であり、これに合格することで晴れて認定看護師になることができます。

認定審査は、客観式一般問題と客観式状況設定問題で構成されています。合格基準は105点以上であり、合格率は例年90%を超えているため、勉強を怠らなければ合格は難しくありません。

出題方式 問題数 配点
問題1:客観式一般問題 20問 50点
問題2:客観式状況設定問題 20問 100点
40問 150点

 

認定審査で出題される問題は主に、各教育機関で履修した「認定看護師教育基準カリキュラム」であり、合格率は全領域で90%以上、認知症領域では95%(年次によって99%以上)と非常に高いため、学んだことを復習すれば難なく合格できます。

しかしながら、勉強を怠れば不合格になる可能性は十分ありますし、履修カリキュラムの知識は認定看護師の技術力に直結するため、認定審査の事だけでなく、今後の業務も視野に入れ、しっかりと勉強しておきましょう。

なお、認定審査の過去問題は前年度分のみ、課程を履修した教育機関にて修了後に閲覧することができます。出題範囲や傾向を知ることができますので、事前に把握しておきましょう。過去問題の閲覧方法は各教育機関によって異なるため、閲覧を希望される方は履修した教育機関に問い合わせてください。

 

4、認知症認定看護師の求人・転職

2015年時点の認知症認定看護師数は472人で、高齢化が進んでいる昨今、需要がますます高まっています。

領域 人数(人) 領域 人数(人)
救急看護 921 透析看護 182
皮膚・排泄ケア 2,040 手術看護 314
集中ケア 939 乳がん看護 244
緩和ケア 1,641 摂食・嚥下障害看護 521
がん化学療法看護 1,282 小児救急看護 208
かん性疼痛看護 741 認知症看護 472
訪問看護 438 脳卒中リハビリテーション看護 494
感染管理 2,053 がん放射線療法看護 177
糖尿病看護 672 慢性呼吸器疾患看護 171
不妊症看護 137 慢性心不全看護 184
新生児集中ケア 341 14,172

 

また、認知症認定看護師472人の都道府県別内訳は以下の通りです。

  都道府県別、認定看護師数(人)
北海道東北 北海道(18)、青森(3)、岩手(1)、宮城(7)、秋田(13)、山形(1)、福島(5)
関東甲信越 茨城(3)、栃木(13)、群馬(5)、埼玉(19)、千葉(21)、東京(67)、神奈川(23)
東海北陸 新潟(8)、富山(6)、石川(9)、福井(6)、山梨(6)、長野(24)、岐阜(11)、静岡(9)、愛知(29)
近畿 三重(3)、滋賀(11)、京都(8)、大阪(32)、兵庫(37)、奈良(8)、和歌山(2)
中国四国 鳥取(6)、島根(4)、岡山(4)、広島(9)、山口(4)、徳島(0)、香川(3)、愛媛(4)、高知(4)
九州沖縄 福岡(9)、佐賀(1)、長崎(5)、熊本(7)、大分(3)、宮崎(0)、鹿児島(1)、沖縄(0)

 

認知症は高齢者の多くが発症する障害であり、病気の合併症として発現するケースも多々あります。非常に身近な障害であることから、認知症の予防や看護に精通した認知症認定看護師が存在する必要性はますます高まっています。

認知症認定看護師の活動の場は、病院、クリニック、介護・養護施設など多岐に渡り、今や各領域の認定看護師は各医療施設に一人以上就業していることが推奨されており、すべての医療施設で非常に高い需要があるため、求人・転職に困ることはまずありません。

 

まとめ

認知症認定看護師は、さまざまな業務の中で認知症患者のQOL向上を援助する看護のスペシャリストであり、多くの医療施設が求める人材です。また、認知症は高齢者と深く関わりを持つ障害であることから、多くの場で活躍することができます。

認定看護師の資格取得への道は長く、多大な費用がかかりますが、それを補って余りあるほどの便益(利益)が将来に渡って継続するため、認定看護師を目指している方や目指そうと考えている方は、ぜひ資格取得へ向けて頑張ってください。

緩和ケア認定看護師の役割と入学・資格取得に際する試験対策

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緩和ケア認定看護師

患者の苦痛軽減・QOLの向上におけるスペシャリストである緩和ケア認定看護師。医療・看護技術の進歩により、緩和ケア分野における知識は非常に注目され、今や多くの病院が緩和ケア認定看護師を欲している状態です。

認定看護師になるためには、教育機関への入学試験に合格し、6か月615時間以上におよぶ課程を履修した後に、日本看護協会が実施する認定審査に合格する必要があり、容易に資格取得できるものではありません。

特に入学試験と認定審査に高い壁を感じる人は少なくないため、当ページで試験対策について詳しく解説いたします。

 

1、緩和ケア認定看護師とは

緩和ケアは、主にがん患者とその家族を対象に、QOLを維持・向上させるために、身体的・精神的・社会的・霊的な痛みを緩和、または予防するケアのことを指します。

緩和ケア認定看護師は、緩和ケアにおける深い知識と技術を有し、患者やその家族に益となる看護を提供するとともに、現場の看護師の指導や相談を受ける、いわゆる緩和ケアのプロとしての役割を担っています。

緩和ケアは直接的な治療・看護のアプローチではなく、患者やその家族に寄り添って

全人的かつ多角的に行うケアであることから、非常に難しく、さらにがん患者だけに止まらず、さまざまな疾患を有する全ての患者に対してもケアの概念(苦痛の軽減・QOL向上)は通じているため、医療機関における緩和ケア認定看護師の必要性は年々増加しています。

 

2、役割・活動内容

緩和ケア認定看護師の役割は多岐に渡ります。通常の看護師の主な業務は「実践」のみですが、認定看護師になると、「実践」に加え「指導」「相談」など、チームを支える存在として、また、病院全体のケアの質の向上を推進する人物として、以下のように包括的かつ多角的に業務を行います。

①患者を全人的に理解し、QOLの維持・向上のために専門性の高い看護を実践する

②コミュニケーションスキルを用いて、患者・家族の価値観を理解し、価値観を尊重したケアを実践する

③患者・家族の喪失・悲嘆に対する適切な支援を行う

④患者・家族の権利を擁護し、自己決定を尊重した看護を実践する

⑤他職種と共働し、チームの一員またはリーダーとして、医療の質向上を推進する

⑥患者家族への看護実践を通して、看護職員への指導・相談を行う。

 

このように、「実践」「指導」「相談」の3項目を包括的に行い、患者や家族だけでなく、病院全体の技術促進を図るのも緩和ケア認定看護師の大きな役割です。

 

実践

全国ホスピス・緩和ケア連絡協議会が掲げる、

①人が生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れる「死への過程」に敬意を払う

②死を早めることも死を遅らせることもしない

③痛みやその他の不快な身体症状を緩和する

④精神的・社会的な援助を行い、死が訪れるまで生きていることに意味を見出せるケアを行う

⑤患者の療養中から死別した後まで家族を支える

 

上記の5つのケア要件に準じ、患者とその家族に対して献身的にさまざまな苦痛を軽減させるのが緩和ケアの目的ですが、緩和ケアは心理や症状マネジメントを正しく理解することが必要不可欠です。

緩和ケア認定看護師は、資格取得に際して教育機関にて習得した知識と臨床における経験をもとに、高い水準でケアを行い、率先して患者やその家族のQOLの維持・向上を図ります。

 

指導

通常の看護職員は、経験で得た知識をもとにケアを行い、さらに看護職員によって価値観が異なるため、技術力や統一性が乏しく、早期にさらなる向上を図るのは至極困難です。認定看護師の資格取得のために教育機関にて習得する「症状マネジメント」、「スピリチュアルケア」などは非常に有益で、通常業務のみでは習得が難しい知識です。これらの知識を看護職員に共有し、全体の看護の質を向上させるため、各人への指導だけでなく、院内において学習会などを開催・運営を行います。

 

相談

緩和ケア認定看護師は、患者や家族、看護職員から相談を受け、適切にアドバイスすることも大切な役割の1つです。現在では、患者や家族に対して、緩和ケア認定看護師による定期的な相談窓口を開設している病院が増えてきています。看護職員に対しては、ラウンドを行いカンファレンスの中で相談業務を行うなど、習慣化している病院も数多く存在します。また、率先して医師や薬剤師など他業種間の連携を図り、業務を円滑に進めるのも認定看護師の大きな役割です。

 

3、認定取得へ向けた取り組み

緩和ケア認定看護師になるためには、まず日本看護協会が指定する教育機関に入学し、6か月615時間以上の教育課程を修了した後に認定審査(筆記試験)に合格しなければいけません。

緩和ケア分野における課程を履修できる教育機関は全国に10校(10都道府県)ありますが、入学するにはいくつかの要件があり、さらに各教育機関が実施する入学試験に合格する必要があります。

入学試験の合格率は20%~50%(未公表)であることから、認定看護師を目指す方にとってこの段階が最も困難で、2回・3回と試験を受ける人も多くいるのが実情です。

 

教育課程の入学要件

①日本国の看護師免許を有する者。

②看護師免許取得後、通算5年以上の実務研修を行った者(実務経験を有する者)。

③そのうち通算3年以上緩和ケアを受ける患者の多い病棟、または在宅ケア領域での看護実績を有すること。

④緩和ケアを受ける患者を5例以上担当した実績を有すること。

⑤現在、緩和ケアを受ける患者の多い病院、または在宅ケア領域で勤務していることが望ましい。

 

カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目 看護管理 15 120時間

(+30時間)

情報管理 15
看護倫理 15
臨床薬理学 15
リーダーシップ 15
文献検索・講読 15
指導 15
相談 15
対人関係(選択) 15
医療安全管理(選択) 15
専門基礎科目 緩和ケア総論 15 75時間
がんとがんの集学的治療 15
症状マネジメント総論 15
喪失・悲嘆・死別 15
がんの医療サービスと社会的資源 15
専門科目 症状マネジメントと援助技術Ⅰ-Ⅶ 105 195時間
緩和ケアを受ける患者の心理社会的ニーズとケア 15
スピリチュアルケア 15
緩和ケアにおけるチームアプローチ 15
緩和ケアを受ける患者の家族・遺族ケア 15
臨死期のケア 15
緩和ケアにおける倫理的問題 15
総合実習 コミュニケーション 30 60時間
ケースセミナー 事例研究 30
臨地実習 ホスピス・緩和ケア病棟

訪問看護ステーション

180 180時間

※単位は教育機関によって異なる

 

教育機関

都道府県 教育機関名
北海道 北海道医療大学 認定看護師研修センター
岩手県 岩手医科大学付属病院 高度看護研修センター
埼玉県 埼玉県立大学 地域産学連携センター
千葉県 国立がん研究センター東病院 認定看護師課程
神奈川県 神奈川県看護協会 認定看護師教育課程
山梨県 山梨県立大学 看護実践開発研究センター
富山県 公益社団法人 富山県看護協会 認定看護師教育センター
静岡県 静岡県立静岡がんセンター 認定看護師教育課程
兵庫県 日本看護協会神戸研修センター
福岡県 久留米大学認定看護師教育センター

 

3-1、教育機関への入学試験対策

上記の10つの教育機関で課程を履修するためには、まず入学試験に合格しなければいけません。入学試験は「学科試験(筆記)「小論文」「面接」で構成されており、配点割合は順に5:3:2となっています。

入学試験の合格率は20%~50%と低いことから、入念な対策が必要不可欠で、準備がままならない状態で万が一不合格になると、翌年まで待たなければいけないため、しっかりとリサーチ・勉強し、準備周到な状態で挑まなければいけません。

 

①学科試験

学科試験では、主に「看護師国家試験出題基準」の中の“緩和ケア”または“緩和ケアに関係の深い”範囲が出題されます。年度によって、また教育機関によって出題される問題は異なりますが、まずは看護師国家試験の参考書などを活用しましょう。

なお、学科試験は“専門科目Ⅰ(択一式)”と“専門科目Ⅱ(記述式)”の2つで構成されています。

専門科目Ⅰ・・・緩和ケアに必要な病態生理、症状緩和、緩和医療に関する問題

専門科目Ⅱ・・・緩和ケアの実践に必要な看護に関する問題

 

学科試験の過去問題(前年度分)は、各教育機関で入手することができます。基本的には、説明会に参加することで過去問題を閲覧できるため、必ず説明会に参加し、入学を希望する教育機関の出題傾向をしっかりとリサーチしておきましょう。

また、「日本看護協会」の会員ダイレクトに登録すると、看護研究学校と神戸研修センターで実施する入学試験問題(前年度分)を閲覧することができます。他の教育機関への入学を希望される方も必ず参考になりますので、この機会に会員登録することをお勧めします。

 

②小論文

小論文では、与えられるテーマに対して自分なりの問題提起をし、それに基づく根拠を示し、読み手を納得させる文章であることが高得点をとるポイントです。

認定看護師として説明する力やアセスメント力、さらにはコミュニケーション力を図る意図があることから、作文のように自分の想いを書き綴るのではなく、しっかりとした構成を立てて論理的に書く必要があります。

小論文のテーマは「リーダーシップとは?」といった抽象的なものから、「ジレンマとその対応」といった具体的なものまでさまざまで、60分間に800文字以上が推奨されています。800文字以下でも大きく点数を下げられることはありませんが、可能な限り800文字以上書くようにしましょう。

また、これは認定看護師になるための試験であるため、現状ではなく認定看護師としての在り方を書くようにしましょう。

 

③面接

面接は、緩和ケアに関する経験や知識ではなく、“人間性”がみられます。つまり、認定看護師として適切な業務の実践能力の有無が問われ、さらに配点割合は全体の3割と比重が大きいため、しっかりと対策しておく必要があります。

面接では、主に事前に提出した書類(志望理由など)をもとに質問されるため、書類に書いた事は何を聞かれても矛盾なく応えられるように準備しておきましょう。

また、認定看護師は教育や指導を行う立場、いわゆるリーダーとしての業務が増えてくるため、社会人としての姿勢や振る舞いもみられます。それゆえ、面接のマナーもしっかりと心得ておきましょう。

 

3-2、認定審査対策

各教育機関で6か月615時間以上におよぶ課程を修了した後に受けることができる認定審査では、四肢択一・マークシート方式で筆記試験が行われます。制限時間100分・40問で、150点満点中105点以上が合格となります。

出題方式 問題数 配点
問題1:客観式一般問題 20問 50点
問題2:客観式状況設定問題 20問 100点
40問 150点

 

認定審査では、各教育機関で履修した「緩和ケアカリキュラム」が出題範囲で特定しやすく、さらに合格率は例年90%以上であるため、教育機関で学んだことをしっかりと復習すれば、難なく合格できると言っても過言ではないでしょう。

認定審査の過去問は前年度分のみ、課程を修了した後に受講した教育機関で閲覧することができます。各教育機関によって閲覧方法が異なりますので、希望される方は修了した教育機関に問い合わせてください。

 

4、緩和ケア認定看護師の求人・転職

2015年時点の緩和ケア認定看護師の人数は1,641人で、感染管理(2,053)、皮膚排泄ケア(2,040)に次いで3番目に多く、全体の約12%を占めています。

領域 人数(人) 領域 人数(人)
救急看護 921 透析看護 182
皮膚・排泄ケア 2,040 手術看護 314
集中ケア 939 乳がん看護 244
緩和ケア 1,641 摂食・嚥下障害看護 521
がん化学療法看護 1,282 小児救急看護 208
かん性疼痛看護 741 認知症看護 472
訪問看護 438 脳卒中リハビリテーション看護 494
感染管理 2,053 がん放射線療法看護 177
糖尿病看護 672 慢性呼吸器疾患看護 171
不妊症看護 137 慢性心不全看護 184
新生児集中ケア 341 14,172

 

また、緩和ケア認定看護師1,641人の都道府県別内訳は以下の通りです。

  都道府県別、認定看護師数(人)
北海道東北 北海道(111)、青森(19)、岩手(28)、宮城(20)、秋田(20)、山形(17)、福島(16)
関東甲信越 茨城(33)、栃木(14)、群馬(27)、埼玉(76)、千葉(40)、東京(170)、神奈川(149)
東海北陸 新潟(17)、富山(19)、石川(12)、福井(10)、山梨(47)、長野(40)、岐阜(17)、静岡(35)、愛知(46)
近畿 三重(13)、滋賀(21)、京都(35)、大阪(98)、兵庫(64)、奈良(21)、和歌山(8)
中国四国 鳥取(11)、島根(11)、岡山(23)、広島(61)、山口(18)、徳島(10)、香川(17)、愛媛(17)、高知(7)
九州沖縄 福岡(82)、佐賀(11)、長崎(35)、熊本(27)、大分(18)、宮崎(9)、鹿児島(28)、沖縄(13)

 

日本ホスピス緩和ケア協会によると、緩和ケア病棟を有する医療施設は、1990年時点では5棟しかなかったものの、2015年には339棟にまで増幅しており、緩和ケアの必要性はますます高まっています。

緩和ケアの概念である“苦痛の軽減”または“症状マネジメント”は、がんだけでなく全ての疾患が対象であるため、緩和ケア病棟を開設していない医療施設でも非常に高い需要があり、さらに開設予定の病院数も多いことから、今後、緩和ケア認定看護師の需要はますます高まってくることが容易に予想できます。

就業における認定看護師の優遇処置は未だ確立されていないものの、需要の増加により今後必ず多く病院が資格手当などの見直しを行うため、教育機関への受講などに多大な費用はかかりますが、給与面においても資格取得の意義は十分に出てくるでしょう。

また、転職においても非常に有利で長期的に安定して職に就くことができ、活躍の場が広がります。ただし、認定資格は5年おきの更新が必要ですので、その点は注意しておいてください。

 

まとめ

患者のさまざまな苦痛の軽減・QOLの向上に貢献するスペシャリストである緩和ケア認定看護師は、今や多くの病院が欲している人材であり、取得者人数以上に求人数が多い、いわゆる需要過多状態にあります。

認定看護師になるためには、多くの時間・労力・費用を必要としますが、患者のために、または自分自信のために、必ず役に立つ資格ですので、緩和ケア認定看護師を目指している方は、苦労は多いと思いますが、信念を曲げず資格取得に向けて頑張ってください。

看護師が悩む発熱時のクーリングの効果と実施の可否について

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クーリング看護

発熱時における患者への看護技術の1つであるクーリング。解熱を目的とし、多くの医療機関が実施していますが、クーリングの効果や程度、必要性においては未だ実証されていません。

 

しかしながら、クーリングは絶大な“安楽効果”をもたらすため、発熱時の患者に対する重要な看護技術と言えます。ただし、クーリングを正しく実施するためには、発熱のメカニズムや原因、注意点など包括的に把握しておく必要があります。

 

1、クーリングとは

クーリングとは、発熱・高熱時に体温を下げるために、後頭部、鼠径部、腋窩、頸部、背部といった体幹付近または表在性に大きな動脈のある部位を冷却する看護技術のことです。

 

クーリングは、解熱だけでなく患者の安楽のためにも有効ですが、効果のほどは未だ根拠がなく、今でも議論が起こっており、病院によって(または人によって)、実施の可否が検討されています。それゆえ、どのような状況になればクーリングを行うべきか、そもそもクーリングはすべきではないのか、など看護師の多くが悩みを抱えているはずです。

 

未だ効果の有無に関する議論の渦中にあるクーリングですが、患者の安楽のための看護を提供するのなら、効果の有無に目を向けるのではなく、弊害事項(逆効果)について考慮しなければいけません。まずは、さまざまな状況における発熱のメカニズムを正しく理解しましょう。

 

2、発熱のメカニズム

ヒトの体は、常に一定の体温(37℃)を調節する機能が備わっています。この働きのことをセットポイントと言い、ウイルスなどの微生物の侵入により防衛機能が反応すると、侵入した微生物の増殖を抑えるため、また、免疫系の活性化を促すために、セットポイントが引き上げられます。

 

セットポイントが引き上げられると、体内の熱が外に逃げないよう血管収縮が起こり、血流量が減少し、時には骨格筋を収縮することで震えを起こし、熱の産生を促します。こうした過程を経て体温が上昇し、侵入した微生物の増殖抑制・死滅へと導きます。

 

そして、発熱の原因が取り除かれると、セットポイントが通常の37℃まで引き下げられ、血管の膨張とともに血流量の増加・皮膚表面温度の上昇が起こり、発汗によって体温が低下(元に戻る)していきます。

 

つまり、①セットポイントの上昇→②発熱→③原因の除去→④セットポイントの低下→⑤体温の低下、という流れにより体温が変化します。

 

体温が上昇するのは、細菌などの侵入により体を守るための体の防衛機能であるため、クーリングなどにより人為的に体温の低下を図ることで、体の防衛機能の低下を招いてしまい、治癒を遅らせるだけでなく、熱の産出量増加に伴い、余計な体力を消耗させてしまうのです。

 

なお、発熱の原因は細菌といった感染症だけでなく、炎症、アレルギー反応、心理ストレスなどさまざまあり、こうした原因特定の難しさもクーリングの必要性に議論が巻き起こっているのです。

 

3、発熱の種類

上述したようなウイルスなど病的要因による発熱のほか、「うつ熱」と呼ばれる外的環境要因による発熱も存在します。うつ熱は、高温・多湿・無風といった体外環境により起こる体内の滞熱状態のことで、熱射病が代表に挙げられます。

 

通常、外気温が上昇すると、血流量の増加・皮膚表面温度の上昇に伴う発汗により、体内の熱を外へ排出するよう働きますが、高温・多湿・無風といった環境下では、この放熱機能が追い付かず、滞熱していきます。特に放熱機能が低い幼児や高齢者はうつ熱に罹りやすく、低栄養など免疫力が低下している時には、外気温が高温でなくても放熱機能が上手く働かないことで、うつ熱を発症することがあります。

 

また、感染症以外の「病的要因」、心理ストレスによる「ストレス要因」、手術に伴う炎症による「侵襲要因」によっても発熱をきたすことがあります。

 

このように、発熱の原因は主に「感染要因」、「外的環境要因」、「病的要因」、「ストレス要因」、「侵襲要因」の5種類あり、それぞれ体の変化に違いが存在します。

 

中枢

深部

体温

抹消

深部

体温

手足の

温度

発汗の

有無

セット

ポイント

の上昇

クーリング

実施の可否

感染要因

(感染症)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

外的環境要因

(うつ熱)

病的要因

(脳梗塞など)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

ストレス要因

(心理的負担)

(※)

(※)

(※)

(※)

侵襲要因

(術後)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

※ストレスによる発熱(心因性発熱)のメカニズムは未だ解明されていない。

 

4、状況別にみるクーリングの実施の可否

発熱の原因は上図のように、主に「感染要因」、「外的環境要因」、「病的要因」、「ストレス要因」、「侵襲要因」の5つに分類されますが、現状でクーリングの有効性が実証されているのは、「外的環境要因」と「ストレス要因」のみであり、「感染要因」・「病的要因」・「侵襲要因」においては未だクーリングの有効性が疑問視されています。

 

当項では、発熱の5つの原因のメカニズムとクーリングの有効性・弊害についてご説明します。

 

4-1、感染要因(感染症)

ウイルスといった細菌が体内に侵入すると免疫システムが反応して、侵入した細菌を特定して、キラーT細胞といった攻撃する能力を持つ物質や因子を生成します。また、抗体を生成することもあり、抗体は細菌に結合することで増殖を抑え、細菌を死滅へと追いやります。

 

こうした物質・因子・抗体は体内温度が高いほど活発化するため、体温を調節している脳内の視床下部が血管の収縮・血液量を減少させ、セットポイントを引き上げます。

 

クーリングなどにより体温の下げるよう働きかけると、細菌を攻撃する物質・因子・抗体の活発化を妨げ、治癒を遅らせてしまいます。また、体温上昇時において生じるシバリング(悪寒戦慄)の悪化を招きます。

 

よって、クーリングを行う際は、目的を“安楽”に定め、頭部または頸部にのみ短期的に行うのが効果的と言えます。

 

4-2、外的環境要因(うつ熱)

外気温が高温になることで発症するうつ熱は、セットポイントが上がらず、体内温度のみが上昇します。これは、高温環境に晒され続けることで、体の放熱機能が追い付かず、熱が体内に停滞し、時には40℃を超える高熱をきたします。

 

また、免疫力や放熱機能が低い幼児・高齢者は、高温環境化にいなくてもうつ熱をきたすことがあります。うつ熱を発症した際には、セットポイントが上昇しないことから、クーリングが最も有効な解熱法であるため、体温が37℃前後になるまで頭部・頸部・腋窩などを積極的に冷却してください。

 

4-3、病的要因(脳梗塞など)

疾患の症状としても発熱をきたすことがあり、原因となる疾患は下表のように多岐に渡ります。

中枢神経系 脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血
循環器系 心筋梗塞、心外脳炎
呼吸器系 肺梗塞、無気肺、急性呼吸促迫症候群
消化器系 虚血性腸炎、消化管出血、膵炎、肝炎、肝硬変、副腎不全
血管系 深部静脈血栓
その他 悪性腫瘍、薬剤アレルギーなど

 

疾患の種類によって発熱のメカニズムはさまざまですが、たとえば脳梗塞においては、視床下部がダメージを受けることで体温調節に異常をきたし発熱する場合や、肺炎などの感染症(合併症)により発熱をきたします。

 

また、薬剤アレルギーによる発熱(薬剤熱)も忘れてはいけません。薬剤熱は投与後1~2週間で発症することが多く、一般的には38~40℃程度で原因薬剤の投与中止後2~3日程度で治まります。これは、薬剤による敏感反応(アレルギー反応)のほか、体温調節中枢への作用、薬物に含まれる壊死物質や毒素などにより起こるとされていますが、発現機序は不明な点が多いのが実情です。

 

疾患または治療における発熱の原因はさまざまであり、原因の特定が難しいため、病的要因による発熱時に冷却を目的としてクーリングを行うのは適切でないとされています。よって、クーリングを行う際は“安楽”を目的とし、短時間に補佐的に冷却してください。

 

4-4、ストレス要因(心理的負担)

入院においては、生活環境の変化や手術に対する不安など緊張状態が続くことでストレスが蓄積し、発熱をきたすことがあります。これを心因性発熱と言い、ストレスにより脳神経が異常な刺激を受け、セットポイントが高く設定され、交感神経の働きが活発になることで体温が上昇します。

 

心因性発熱は、原因となるストレス要因を特定・排除するのが第一目標となりますが、心の問題であるため早期の改善は困難です。ゆえに、心をリラックスさせ安眠・精神安定を図るために、クーリングが非常に高い効果を示します。

 

クーリングによる直接的な解熱効果はあまり期待できないものの、安楽効果により解熱を促すことができます。心因性発熱をきたしている状態では、主に頭部に熱を感じることが多いため、頭部または頸部の冷却が有効です。

 

4-5、侵襲要因(術後)

手術の侵襲による局所の炎症、ストレス、創痛、創感染、細胞の損傷、細胞内の出血、壊死組織の分解産物の吸収などにより、術後に発熱をきたすことがあります。これを生体防衛反応と言ったり術後合併症と言ったりさまざまですが、疾患によって原因は異なります。

 

多くの場合、術後早期に発症し1~2日で自然治癒するため軽視されがちです。ストレスによる発熱の場合には安楽を目的としたクーリングは非常に有効ですが、術後発熱の原因は多岐に渡り、特定が困難であることから、クーリング実施の可否が検討されています。

 

おおむね、細胞の修復・細菌への攻撃などのためにセットポイントが引き上げられるため、解熱を目的としたクーリングは治癒を遅らせ、シバリングの増悪を促すとし、逆効果であるという見解が多いのが現状です。

 

それゆえ、安楽を目的としてクーリングを行う際には、体温の上昇時ではなく解熱時に行い、短期的に冷却してください。なお、創部に直接クーリングを行うのは疼痛・腫脹の軽減、炎症の抑制に効果があると言われていますが、創感染を招くこともあるため、必ず創部の清潔管理を徹底してください。

 

5、クーリングの実施に際する注意点

最後に、クーリング実施における注意点をご説明します。上記の通り、発熱の原因によってクーリング実施の可否が検討されますが、多くの場合、解熱することで自然治癒力の低下を招き、シバリングを増悪させてしまいます。

 

それゆえ、解熱を図るのではなく「安楽」を目的とし、基本的には「解熱時」に行います。また、脳疾患患者に対する「頭部クーリング」は、症状の増悪に繋がる“可能性”があるため、禁忌であると考えておきましょう。

 

①安楽を目的とすること

発熱の多くはセットポイント上昇に伴い深部体温が上昇し、表面の皮膚温度においてはそれほど上昇がみられません。クーリングを行うことで皮膚温度の低下を図ることはできますが、深部体温の低下はあまり期待できないといった見解が多数あり、解熱効果の程度は不明のままです。しかしながら、少なくとも確実にクーリングによる解熱効果はあります。ただし、多くの場合、治癒力の低下・シバリングの増悪を招くため、解熱を目的とするのではなく、安楽を目的にクーリングを行うことを心掛け、常に患者の状態変化を観察しておかなければいけません。

 

②体温上昇時は避け解熱時に行うこと

セットポイント上昇に伴う体温上昇時の多くはシバリングを発生します。シバリングは熱を産生するための生理現象であり、セットポイントが下がり解熱期に入ると、シバリングはなくなります。クーリングを行うことでシバリングの増悪を招き、さらに自然治癒力の低下を招くことから、体温上昇時には反対に保温に努めることが大切です。基本、解熱時に行うこととし、体温上昇時に行う際には体全体を保温しながら局所的に安楽を目的として頭部・頸部など冷却しましょう。

 

③頭部クーリングの実施は疾患別に考えること

脳梗塞や脳出血といった脳疾患を患っている患者、または既往歴のある患者に対して、頭部クーリングを行うのは禁忌とされています。頭部クーリングを行うと、脳血管が収縮し血流阻害の危険性があるため、症状を増悪させる恐れがあります。頭部を冷却しても血管収縮が起こらないという見解もありますが、症状増悪の“可能性”を完全に否定することはできないため、特に急性期における脳疾患患者に対する頭部クーリングは避けた方が良いでしょう。安楽を目的として行う際には、鼠径部や腋窩を冷却しましょう。

 

まとめ

クーリングは冷却により解熱を促しますが、解熱効果や程度など詳細は未だ実証されていません。また、クーリングを行うことで症状を増悪させる危険性があるため、医療機関によってはクーリングを一切禁止しているところもあるほどです。

 

確かに、クーリングを解熱目的として実施する際には、自然治癒力の低下やシバリングの増悪など、看護という観点から逆効果を生む危険性が存在するため、行わない方が良いという見解も理解できます。

 

しかしながら、クーリングは“安楽効果”に優れており、倦怠感の除去や安眠促進に役立ちます。それゆえ、クーリングは必要な看護技術と言え、積極的に行うべきです。ただし、クーリングによる“副作用”が多々存在するため、患者の状態変化を見逃さないよう頻回に観察を行ってください。

病院や看護師など医療従事者に求められるコンプライアンス

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コンプライアンス看護

ここ数年の間に急激に、日常や企業、医療現場などさまざまな場面で「コンプライアンス」という言葉が飛び交うようになり、特に医療現場におけるコンプライアンスの必要性はますます高まっています。

 

コンプライアンスは、患者に最適な医療・看護を提供するために必要不可欠な“倫理”であるため、すべての医療従事者が高い意識と理解力を有しておかなければいけません。コンプライアンスの概要や必要性がよく分からないという方は、当ページを最後までしっかりお読みいただき、理解を深めてください。

 

1、コンプライアンスとは

2、コンプライアンスの概要と違反例

3、患者に対するコンプライアンスの推進

 

の3項をもとに、詳しく解説します。

 

1、コンプライアンスとは

コンプライアンスは「法令厳守」と訳され、法律を厳守するという意味を持ちますが、倫理や規則を厳しく守るという意味合いで使われることが多いのが実情です。

 

医療の現場において用いられるコンプライアンスという言葉は、一般的に患者が医師や看護師など医療関係者が指示する薬物の服用(回数や時間など)や行動制限などを遵守するという意味で使われることが多いものの、病院組織・医療従事者側の患者データの改ざんや個人情報の漏えい、不正行為・不祥事といったことも当てはまります。

 

コンプライアンスを徹底することで、病院・医療従事者・患者の3者すべてに益となり、反対にコンプライアンスに違反(ノンコンプライアンス)していれば3者すべてに不益となります。それゆえ、患者が医療従事者の指示に従うかというコンプライアンス概念だけでなく、病院・医療従事者もさまざまな事項において留意しなければいけません。

 

2、コンプライアンスの概要と違反例

上述のように、コンプライアンスの概念は患者だけでなく病院や医療従事者に対しても当てはまります。病院は医療従事者に働きやすい環境を提供するために、また患者により良い医療を提供するためにコンプライアンスを徹底しなければいけません。

 

また、看護師など医療従事者は病院の利益のため、患者により良い医療・看護ケアを提供するために倫理規範のもと行動しなければいけません。以下に「病院」・「医療従事者」・「患者」の3者における、コンプライアンスの概念をご説明します。

 

2-1、病院組織におけるコンプライアンス

病院などすべての医療組織が遵守すべき事項として倫理規範を定めていますが、これはコンプライアンスの概念そのものです。病院など組織におけるコンプライアンスは、医療従事者(職員)や患者だけでなく、地域や取り引き先の他病院との連携など多岐に渡ります。

 

病院組織の倫理規範

・病状だけでなく患者の心理的・経済的・社会的側面を理解し、最適となる医療を提供する

・患者の人権とプライバシーを尊重するとともにインフォームドコンセントを徹底する

・法令その他の社会的規範を遵守し公正かつ健全な医療活動を行う

・医療従事者(職員)の個性・人格を尊重し、働きやすい職場環境を実現する

・ステークホルダー(自治体・職員・患者・取引業者・地域住民など)の立場を尊重する

 

以上に挙げたものは一例であり、病院によって異なりますが、①患者、②職員、③地域への包括的な倫理規範が定められています。

 

また、中でも“法令”におけるコンプライアンスは最も目を向けるべき事項です。ここで言う法令とは職員に対する労働基準法や、患者のデータ改ざんなど不祥事、医療事故における隠ぺい、個人情報の漏えいなどのことです。以下に特に注視すべきコンプライアンス違反事項について解説します。

 

①労働基準法

労働基準法は厚生労働省より細かく定められており、病院組織は職員に安心・快適な職場環境を提供するために遵守しなければいけません。看護師において特に問題視されているのが労働時間、超過勤務・時間外労働、超過勤務・時間外勤務の未払い、有給休暇における労働基準法の違反です。これら所定の基準に違反していれば、職員の労働環境の崩壊により患者に対する医療の質の低下を招きます。それゆえ、病院組織は必ず労働基準法を遵守しなければいけません。

 

②各種データの改ざん

個人情報やカルテ、臨床検査データなど各種データはより良い医療を提供するための情報であり、故意に改ざんしたものでなくても過失による記載ミスもコンプライアンス違反になります。また、過失によるカルテの改ざん(遅延など)は、医師法第24条1項「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」に抵触するため、これもコンプライアンス違反となります。

 

③医療事故の隠ぺい

昨今、医療事故の隠ぺいが後を絶ちません。医療事故とは、手術や薬物投与などによる医療ミスのことを指しますが、医療を提供するのは人間であり100%適切な医療を実現するのは不可能です。しかしながら、これら医療事故の実態が公になれば、利益や社会的評価の下落を招くため、多くの病院組織が隠ぺいという処置をとっているのが実情です。

 

④個人情報の漏えい

病院組織としての個人情報の管理は患者だけでなく職員や取引先にも当てはまり、個人情報の漏えいは個人情報保護法に抵触し、コンプライアンス違反となります。組織単位で個人情報の管理を徹底し、漏えい防止に努めるとともに、情報の取り扱いにも細心の注意を払わなければいけません。

 

2-2、医療従事者におけるコンプライアンス

上述したデータの改ざん、医療事故の隠ぺい、個人情報の漏えいなどのコンプライアンス違反は看護師など医療従事者においても当てはまります。最終的には病院組織が責任を問われますが、これらの不祥事はそもそも各人が行うものであるため、医療従事者は健全な態度で業務を行わなければいけません。

 

看護師においては、日本看護協会が定める「倫理綱領」や就業病院が定める「行動基準」を遵守し、医療従事者として自覚を持つとともに各患者にとって最良の看護ケアを提供しなければいけません。

 

日本看護協会の倫理綱領

①人間としての尊厳及び権利を尊重する

②対象者に平等なケアを提供する

③対象者との信頼関係を築いた上で看護を行う

④知る権利・自己決定の権利を尊重する

⑤守秘義務・個人情報の保護に努める

⑥看護阻害時には保護し安全を確保する

⑦看護実践において個人としての責任を持つ

⑧継続的な学習により能力の維持・向上に努める

⑨他の医療関係者と協働して看護を提供する

⑩看護において望ましい規定を設定し、実施する

⑪研究や実践を通して、看護学の発展に寄与する

⑫自身の心身の健康の保持増進に努める

⑬個人としての品行を常に高く維持する

⑭環境整備の問題の解決に努める

⑮よりよい社会づくりに貢献する

 

このように、患者にとって不利益とならないよう、また、患者に最良の看護ケアを提供できるよう自己研鑽に励むとともに、安心・安全・安楽をコンセプトに業務に励むことが看護師にとってのコンプライアンスの重要要件となります。

 

2-3、患者におけるコンプライアンス

患者に対して“コンプライアンスが良い”または“コンプライアンスが悪い”と言った言葉が使われていますが、これは服薬や行動制限など医療従事者が指示した内容を遵守しているかという意味合いで用いられています。

 

服薬指示の遵守

多くの疾病では、薬物を用いて治癒を図りますが、薬物にはそれぞれ適する回数・量・時期が定められています。これは、効能を最大限に発揮させるため、また、副作用の出現を抑えるためであり、遵守しなければさまざまな弊害が起こってしまいます。特に、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の場合、服薬を中止することで血圧上昇変化や二次的合併症の併発を招いてしまいます。慢性疾患は長期的に服薬しなければいけないため、現状では多くの患者がコンプライアンス不良状態であり、慢性疾患を患う患者の退院後のコンプライアンス不良は実に4分の3にものぼると言われています。それゆえ、医療従事者はより一層、患者の服薬コンプライアンスの推進に努めなければいけません。

 

行動制限の遵守

疾病の種類によって入院時・自宅療養時に関わらず医療従事者が患者に対して行動制限を設けることがあります。行動制限とは、たとえば禁煙・禁酒・塩分摂取の制限・運動の制限など、生活習慣において有する疾病症状の増悪を抑制するために設けられています。生活上における行動制限が主であるため、服薬と同様に、現状ではコンプライアンス不良が目立っています。

 

3、患者に対するコンプライアンスの推進

上述のように、特に慢性疾患を有する患者のコンプライアンス不良が顕著であり、コンプライアンス不良であれば治療が遅延するだけでなく、二次的合併症の併発を招く危険性があります。これは、患者のQOL低下を招くのはもちろん、経営という観点からみた病院組織の不利益にも繋がります。それゆえ、医師や看護師は患者のコンプライアンスの推進に努める必要があります。

 

コンプライアンスを推進するためには、「①多角的な患者情報の取得」「②インフォームドコンセントの徹底」「③信頼関係の構築」「④各患者に見合った実行可能な方法の確立」「⑤経済的負担の軽減」の5つが主であり、これらを包括的に実施することで初めて効果を示すと言っても過言ではありません。それほどコンプライアンスを向上させることは困難なことなのです。

 

しかしながら、コンプライアンス不良患者が目立つ現状を打破し、多方面に益となるよう医療従事者は高い意識を持って向上に取り組まなければいけません。

 

①多角的な患者情報の取得

継続的な指示内容・治療計画の遵守を達成するためには、身体的・心理的な情報のみならず、社会的・経済的情報など包括的かつ多角的に取得する必要があります。アセスメントがしっかり行えていないと、そもそものコンプライアンス要件(治療計画)が適切でなくなってしまうため、主観的・客観的に批判的思考(クリティカルシンキング)を行いながら、包括的かつ多角的に正しい患者情報を取得しなければいけません。

 

②インフォームドコンセントの徹底

インフォームコンセントとは、「十分な説明を受けた上での同意」という意味を持ち、コンプライアンス向上において最も重要な要件です。特に服薬に関しては、薬物の有効性の疑心や、服用に関する心配(副作用・薬物依存の恐れ)など、患者は薬物に対して負の心情を持っています。また、服用中止における弊害への理解度が乏しいのもコンプライアンス不良になる原因です。よって、薬物および服用に関して十分に説明した上で、確実な同意を得るとともに、不安・疑心の排除に努める必要があります。行動制限においても服薬と同様、インフォームドコンセントを徹底し、症状増悪に関する理解度を高めることが大切です。

 

③信頼関係の構築

患者の多くは受ける医療に対する不安が強く、医師や看護師を信頼できていないと、いくら適切にインフォームドコンセントを行ったとしても、満足のいく理解を得ることが難しく、長期的な視点からコンプライアンス不良に陥ってしまいます。長期的な治療を必要とする場合は特に、服薬・行動制限の遵守や継続的な通院を達成するために、医師・看護師と患者との間により良い信頼関係が非常に重要なのです。

 

④各患者に見合った実行可能な方法の確立

頻回の投薬・多数の薬剤など複雑な処方計画であったり、制限事項の多い緻密な行動計画であれば、継続的に実行するのが困難となり、やる気喪失により最終的には与えられた指示内容の中断に繋がってしまいます。有する疾病の種類や症状によっては綿密な処方・行動計画を要しますが、コンプライアンス不良歴のある(または予想できる)患者に対しては、服薬時間をやや曖昧にするなど、効能よりも継続的な服用を意識した説明を検討するなど、臨機応変に対処します。ただし、これには根拠のある優先順位をもとに決定しなければいけません。

 

⑤経済的負担の軽減

服薬や通院において、長期的な治療には多大な費用がかかり、特に高齢者の経済的負担は大きいと言えます。経済的負担により症状の緩和時に服薬を中止する患者が後を絶たないのが現状であり、医師や看護師はこの事実を深刻に受け止め、継続的な指示内容の遵守を達成するために、同様の効能を示すより安価な薬剤に切り替えるなど、適宜対応しなければいけません。

 

まとめ

このように、医療現場におけるコンプライアンスは病院組織・医療従事者・患者の3者すべてに当てはまります。医療従事者は、就業病院の利益となるよう、また、患者に最良の医療・看護を提供できるよう、一人一人がコンプライアンスに関して高い意識を持たなければいけません。

 

コンプライアンスは一種の“倫理”であり、やや難解ですが、患者により良い医療・看護を提供するという気持ちを持ち続け研鑽に励めば、自ずとコンプライアンスの概要や必要性がみえてきます。コンプライアンスとは何か、倫理とは何か、難解に感じる方は、まずは各患者にとって“最良となる医療・看護とは何か”を日々考えてみてください。

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