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指導看護師が、患者と接する時と学生と接する時のギャップ|看護師あるある【vol.42】

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看護師指導者
看護学生にとって、実習中の指導ナースほど怖いものはないですよね。冷たい態度をとられ、いつも怒られ、「姑か!」と思うようなあら捜しをされ。。。

そんな指導ナースも、患者さんには優しく接しています。患者さんと接している時は、まさに「白衣の天使」や「聖母」かと思うような優しい笑顔、穏やかな声。

患者さんにケアをしていた後に、私が話しかけた時のあの表情の変化。聖母から能面に切り替わる。あれだけ瞬時に表情が変わるのは見事としか言いようがないですが。。。

何だか看護師になる前から、「看護師の世界の厳しさ」を教え込まれたような気がします。看護師は、それだけ表と裏を使い分けないといけないんですね。それにしても、指導ナースは何であんなに看護学生が嫌いなのか。。。


腎盂腎炎の看護|原因、予防、治療と発症患者に対する看護計画

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腎盂腎炎

腎盂腎炎は大きく急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎に分けられます。急性で、適切な処置を受ければ、通常3~5日で症状が改善する一方、処置が遅れると入院が必要になったり、慢性化したりすることもあります。悪くすると腎不全から、透析導入の原因にもなります。患者と医療側の確実な判断と処置が求められる病気と言えます。

 

1、腎盂腎炎とは

腎盂腎炎は、尿路に起こる細菌感染症全般を指す尿路感染症の一種です。尿路は、尿をつくる腎臓から腎盂、尿管、膀胱を経て尿道で終わります。細菌感染が腎盂で起これば腎盂腎炎、尿道で起これば尿道炎、膀胱で起これば膀胱炎と呼ばれます。

急性腎盂腎炎の症状は、尿路感染症の中でもっとも強いものです。悪寒、ふるえ、高熱、わき腹や膝の痛みが主な症状であり、早期では悪寒、ふるえ、わき腹の痛みなどが現れます。

慢性腎盂腎炎においては、急性と比べて軽微で自覚症状がない場合もあります。ただし、尿路結石などの複合的な要因がある場合もあり、菌血症や敗血症を合併する恐れもあります。

 

2、腎盂腎炎の予防

急性腎盂腎炎の患者は、特に20~30歳代の若い女性に多い傾向があります。女性は男性と比べて尿道が短く、細菌が進入しやすいのが理由とされます。

細菌はほとんどの場合、大腸菌など大便由来のため、陰部を清潔に保つことが一番の予防策になります。入浴や排便後のシャワーも効果的です。排尿は、細菌が尿道を上るのを防ぐことにもなります。水分を多めにとるほか、尿意を我慢しないことも大切です。

免疫力の低下から発症することもあるため、免疫力を低下させる薬を使用しているときは普段以上の注意が必要です。免疫力を低下させる薬には、免疫抑制剤、抗がん剤、インフリキシマブ、エタネルセプトなどがあります。

 

3、腎盂腎炎患者への看護計画

腎盂腎炎の看護のポイントを、「観察項目」「ケア項目」「教育・指導」の3つのテーマで並べます。ケア項目は、治療の上での「安静」と「水分摂取と点滴による補液」の部分に当たります。他の多くの病気に共通する基本の看護を、しっかりと行うことが大切になります。

 

3-1、観察項目

■自覚症状

患者の自覚症状を把握する必要があります。治療の上でも患者の精神状態を落ち着かせる意味でも大切です。主なチェック項目は次の通りです。

①熱感、②悪寒、③背部痛、④腰痛、⑤肋骨脊椎角部の叩打痛、⑥吐き気、⑦嘔吐

 

■尿の状態

炎症部の状況をダイレクトに伝えるものとして、尿を観察しましょう。主なチェック項目は次の通りです。

①混濁・浮遊物・血尿・膿尿の有無、②尿沈渣(尿を遠心分離器にかけて行う検査)の所見、③尿培養(尿を培養して行う検査)の所見、④尿のPH値

 

■血液の状態

血液検査で炎症の状況が伺えます。CRP反応や、末梢血白血球の増多を測ります。

 

3-2、ケア項目

■発熱による悪寒・熱感への対応

発熱が起こる理由を踏まえつつ、保温や冷却など、状況に応じた看護が必要です。例えば、体温がぐんぐん上昇する上昇期は、熱を逃がさないことが大切です。上昇期の体では、「熱を作り出す」と「熱を逃さない」の2つの作業が続いています。体がぶるぶると震えるのもその作業の一つです。

患者が急に元気を失い、ふるえだしたら上昇期の可能性があります。また、体の末端である手足の温度が下がることも上昇期の特徴です。その後の顔が紅潮する「極期」から、多量の汗をかく「解熱期」に向けては、患者が楽なように熱をさます方向で看護します。

看護師が悩む発熱時のクーリングの効果と実施の可否について

 

■全身倦怠感への対応

治療が長引くと、原因不明の倦怠感を訴える患者が出てきます。食事、排泄、睡眠などの援助を基本通りに根気強くつづけることで改善することがほとんどです。

 

■水分の摂取

腎盂腎炎の治療では、炎症の原因となっている細菌を、尿とともに体外に排出するために、水分を多く摂取することが大切です。1日に1・5リットル以上が目安になります。

しかし、一口に水分摂取といっても、人により摂取方法に傾向や嗜好があり、言葉で促すだけではうまくいかない場合があります。傾向や嗜好を早めに見極めることは、スムーズな治療の為に大切です。傾向、嗜好は、朝一番に水を飲む人、午前より午後に水を飲む人、食事をとりながら水を飲む人、食後に水を飲む人などさまざまです。

 

■急性期の対応

特に急性腎盂腎炎の急性期の全身症状は強いものです。安静を保てる環境をつくり、体温や体位調整などの日常生活の援助も丁寧に行いましょう。

 

3-3、教育・指導

急性腎盂腎炎の症状は、早ければ3~5日で収まりますが、発病原因を取り除かない限り、再発を繰り返して慢性化することもあります。悪くすれば腎不全に陥ることもありますので、再発防止のための教育は大切な看護項目です。

・   陰部を清潔に保つ

・   水分の摂取を心掛け、尿の量を増やす

・   尿意を我慢しない

・   性交渉後に排尿をする

・   トイレットペーパーを使用する際は、前方から後方に向かって拭く

・   体を冷やさない

・   過労を避ける

 

また、尿管結石など構造上の原因で腎盂腎炎が発症する事もあります。それらの対策もしっかりと教育しましょう。

 

4、妊婦への対応

急性腎盂腎炎は、妊娠中にかかりやすい内科系合併症です。大きくなった子宮が尿管を圧迫することなどが理由とされ、妊婦のおよそ1%に起こります。

妊婦が腎盂腎炎にかかった場合は、セファロスポリン系の抗生物質で治療するのが一般的です。治療を始める前に、妊娠の有無を確実に確認しましょう。また、過去の妊娠の際に腎盂腎炎にかかったことのある人には、次の妊娠初期に細菌尿の検査をするよう促しましょう。

 

まとめ

患者と医療者側の適切な判断と処置が施されれば、3~5日で治るはずのものが、どこかで歯車が狂うと、最悪の場合では死に至るのが腎盂腎炎という病気です。

看護師に求められるのは、ほかのすべての病気にいえることですが、「凡事徹底」の姿勢でしょう。ここに説明した「観察項目」「ケア項目」「教育・指導」をしっかりと覚えて、看護に生かしてください。

探している時にいない、いなくていい時に現れる教員と実習指導者 |看護師あるある【vol.43】

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看護実習指導者
実習中にわからないことや困ったことがあって、相談したい時に限って、教員も実習指導者も見当たらない。病棟中をキョロキョロと走り回って、ようやく見つけることもしばしば。それなのに、来てほしくない時に限って現れるのはなぜ?

まだ記録が終わってない時に限って現れる。そして、「まだ終わってないの?サボっているの?」という小言。

患者さんとのおしゃべりが弾んでしまって、まだ清拭の準備ができていない時に限って現れる。そして、「なんで終わってないの?やる気ないなら、帰っていいのよ」という嫌味。

なんで必要な時は見つからなくて、来てほしくない時に現れるんだろう?「わざとじゃないの?」って疑っちゃいます。

整容における看護の目的と援助方法、実施に際する留意点について

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整容看護

整容とは、その文字の通り容姿や身だしなみを整えることを言います。健常な人であれば、身だしなみを整えるのは難しいことではありませんが、加齢や体調不良、さらには疾患などが影響して、自分で行うのが難しい場合があります。

また、整容を疎かにすると衛生面や生活の質(QOL)に影響を与える可能性がありますので、自身で行うのが難しい患者に対して、看護師は積極的に援助をしてあげる必要があります。ここでは、整容における看護の目的や手順、留意点などについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、整容における看護の目的

整容には洗顔、整髪、歯磨き、爪切り、髭そり、更衣などがあり、普段、人は当たり前のように自分自身で身だしなみを整え、清潔な状態を維持することができます。しかし、身体的状態や精神的状態などの影響で、それらが制限されたり困難になるなど、患者の状態により援助が必要となる場合があります。

では、なぜ日常的に身だしなみを整える必要があるのでしょうか。整容における看護には、以下の目的があります。

 

■生活習慣の維持と生活リズムの確立

疾患や安静度の制限により、これまでの生活習慣が制限されたりできなくなったりします。生活習慣や生活リズムが乱れることによって、ストレスの増強や意欲の低下を引き起こす可能性があります。それらを防ぐためにも、メリハリのある生活リズムを確立することはとても重要です。

 

■皮膚や粘膜の清潔保持

皮膚や粘膜を清潔にすることで、新陳代謝を促進し生理的機能を維持するだけでなく、感染の予防にもつながります。

 

■爽快感を与え、気分転換を図る

整容や身体を清潔にすることで気分を爽快にし、気分転換を図ることができます。また、それが意欲の向上や生活の質(QOL)の向上につながることもあります。

 

ヘンダーソンの看護理論である「14項目の基本的ニード論」の中にも、「身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する」という項目が挙げられているように、整容は人間の基本的な欲求のひとつです。その欲求の程度は患者個人によって異なるため、個々の欲求や状態を把握し、その人に合わせた方法で援助していくことが大切です。

 

2、整容における看護の手順

整容への援助を行う際には、環境やプライバシーに配慮し安全に援助を行えるかを事前に確認する必要があります。効率よく援助ができるよう、あらかじめ必要な物品を準備しておきます。必要な物品は患者の状況によって異なるため、柔軟に対応していきましょう。

整容には身だしなみを整えるための様々な行為がありますが、ここでは洗顔、整髪、爪切り、髭そり、歯磨きについてそれぞれの手順を説明します。

 

■洗顔

患者の状態により、ベッド上または洗面所で行います。洗顔が難しい場合は、濡れタオル等で顔を清拭するだけでも良いでしょう。洗顔が終わったら、鏡を見てもらい患者への意識付けを行いましょう。

 

■整髪

くしやブラシを使って髪をとかします。髪が絡まっている場合は、無理に引っ張ったりせず、根元をおさえながらやさしくブラッシングします。患者の好みに髪型を整え、必要な場合は髪を結います。終了したら、抜けた髪の毛をすぐに片づけます。洗顔同様、鏡を見てもらうことで患者への意識付けを行うとより効果的です。

 

■爪切り

深爪にならない程度に、爪切りで爪を切っていきます。切った爪が散らからないよう、手の下にティッシュやごみ箱を準備しておきましょう。爪を切った後は、できるだけやすりで爪を整えます。水虫などで爪が硬くなっている場合は、手浴や足浴で温めてから行うと、爪が柔らかくなり切りやすくなります。

 

■髭剃り

感染予防のため、患者ごとに専用のものを使用し髭を剃ります。安全カミソリを使用する場合は、石鹸やシェービングフォームを使用し、皮膚を傷つけないように注意しながら行います。終了後は必要に応じ洗顔や清拭を行い、患者の好みに合わせて化粧水やシェービングローションなどで肌を整えます。

 

■歯磨き

義歯の有無や咳嗽の可否などに考慮し、患者の状態に合わせて歯磨きを行います。歯ブラシを使うと出血する場合や乾燥がひどい場合は綿棒を湿らせて口腔内を清潔にします。

口腔ケアの看護手順とケアのポイント

 

3、整容に対する看護計画のポイント

整容に対する看護計画を立てる際は、患者の状態を把握することが非常に重要です。以下のポイントを押さえて情報収集し、それぞれの患者に合った方法で援助ができるよう計画を立てていきましょう。患者の状態を把握するためのポイントは以下の通りです。

 

■患者の疾患・病態

患者の疾患や病態は患者の安静度や自立度、精神的な状態に影響を与えます。病態を把握し、注意点や問題点を抽出しましょう。

 

■安静度・自立度

患者がどこまで自分でできるか、行動の制限の有無によって援助の範囲は異なります。患者が自分でできることは、できるだけ自分で行えるようサポートしていく方法を検討しましょう。

 

■理解度

患者がどの程度、整容の必要性を理解しているかを確認します。必要性を理解できていなければ、援助が押しつけになったり、一方的になったりします。必要性を理解したうえで援助できるよう働きかけましょう。

 

■痛みや障害の程度

痛みや障害により、自分でできる範囲が制限されます。痛みを増強させないよう、障害の程度に合わせて援助の方法を検討します。

 

■意欲の低下やストレスの有無等、精神的な状態

精神疾患により整容がおろそかになることがあります。患者の精神状態や、意欲、ストレスの有無を把握し、患者のペースに合わせた援助を行えるようにします。

 

あくまでも患者の状態に合わせた援助が基本となります。収集した情報をもとにアセスメントし、援助の方法を選択していきます。

 

4、整容に対する看護の留意点

整容は、人間の基本的欲求のひとつですが、整容の認識や欲求のレベルは様々です。なるべく患者の欲求に沿えるよう患者のペースに合わせ、援助が患者の苦痛にならないよう配慮する必要があります。

清潔の保持や、整容にとらわれすぎて、押しつけや無理強いにならないよう注意します。患者の心や置かれている状況に寄り添うことが大切です。また、整容への援助をする中で、コミュニケーションをとりながら、患者の皮膚の状態や精神状態を観察していきましょう。

援助中、不快なところがないか、気になる汚れがないかなど、患者の満足度を確認しながら行います。タッチングやマッサージにより、精神的なケアを行うことも重要です。

 

まとめ

整容は普段、当たり前のように行われていますが、入院やベッド上の生活ではおろそかになりがちです。また、精神的状態によっておろそかになる場合もあります。患者の状態を観察しながら、精神的なケアも同時に行っていきましょう。

身だしなみは、その人にとって「その人らしく」あるためのひとつの手段です。患者にとってのその人らしさを尊重し、個々の患者に合った方法で整容への援助を行うことが大切です。

患者の生活習慣やリズムを整え清潔を保持し、意欲や生活の質(QOL)の向上につなげていけるような援助を心がけていきましょう。

 

参考文献

1)山口 要子、永井 由美子、山川 正信「洗髪が患者のリハビリ意欲や身だしなみに及ぼす効果

2)永井 早苗、田中 夕紀 鈴木 有紀子 奥川 麻美「洗顔がもたらす覚醒への影響

3)牧山 恵美里、和田 広美、金子 祐子、乾 広貴、片山 由喜子「鏡を使った口腔ケア、整容を行なって

指導者「忙しいから後にして!」数十分後、指導者「何で早く報告しないの?」 |看護師あるある【vol.44】

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看護指導者報告
実習指導者の人に、「すみません。報告があるのですが、お時間いいですか?」と聞くと、「忙しいから、あとにして」との返事。そう言われてしまったら、仕方がないので、すごすごと引き下がるしかありません。

まぁ、これは仕方がないんです。看護師さんって忙しいもんね。「あとにして」って言われたら、あとで報告するしかないし。

でも数十分後に、もう一度報告すると、「なんで早く報告しないの!」と怒られるのは納得いかない!

「あとにして」ってあなたが言ったから、あとで報告したのに、「なんで早く報告しないの?」はないでしょ?と思ってしまいます。

実際は文句を言えるはずもなく、「あ…。はい、すみませんでした。気をつけます。」としか言えないんですけどね。

爪切りの看護|その目的と適切な援助のための手順・注意点

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爪切り看護

寝たきりで体が動かせないような自分で爪を切れない患者に対して、看護の一環として爪切りをする必要がありますが、適切な方法で行わなければ患者の負担になってしまいます。

自分の爪を切るのと他人の爪を切るのとでは勝手が違いますので、患者の負担にならないよう、しっかりと適切な方法で行わなければいけません。

 

1、爪切りの目的

爪は伸び過ぎると皮膚を傷つけたり、爪の間に汚れや垢が溜まって雑菌が繁殖し不衛生になって感染につながるなどの問題があります。特に足の爪は伸び過ぎたり切り方に失敗すると歩きにくくなったり、痛くて歩けなかったりします。

さらに、足が痛いと歩く気力や運動量が低下したり、足を庇って転倒しやすくなるなど大きな問題があります。また、適切な爪切りをしないと巻き爪や爪の変形に悩むことになります。

看護における爪切りはそれらを予防し、さらに爪を切ったことにより患者に爽快感をもたらすことです。

 

・   伸びた爪による皮膚の損傷、爪の剥離・割れ、巻き爪を防ぐ

・   指先の爪の間の汚れによる感染を予防する

・   爽快感をもたらす

 

2、爪切りに必要な物品

爪切りを行う際には以下の物品を揃えます。

 

物品名 用途
爪切り 爪を切る
爪やすり 爪の切断面を滑らかに整える
不織布 下に敷いて爪や爪の削りかすを受け止める
温タオル 爪の汚れを拭いきれいにする
アルコール綿 爪周りを殺菌する
洗面器など 爪の洗浄のための手浴・足浴を行う場合に使用する

 

3、爪切りの看護手順

看護における爪切りは以下の手順にて実施します。

 

①     患者に爪を切ることを説明し、同意を得る

②     爪の様子を観察する

③     爪をしっかりと洗う

④     爪を切る

⑤     やすりをかけて整える

 

①患者に爪を切ることを説明し、同意を得る

爪切りの前に必ず患者の同意を得るようにします。爪切りは身体の一部を切除する行為であり、場合によっては皮膚に傷をつけて出血させてしまうこともあるため、必要性の説明に加え、患者の同意を得た上で行ってください。

 

②爪の様子を観察する

まず爪の様子を観察し、異常がないかを確認します。爪には、爪の病気だけでなく身体のどこかの病気が爪の異常となって現れる場合があり、その場合は爪の全てに同じような変化が現れます。

例えば、肝硬変や慢性腎障害では爪がまるで擦りガラスのように白く濁ったようになります。心臓や肺に異常がある場合には、爪が丸く膨らみ、まるで太鼓を打つバチのようになります。貧血や甲状腺の病気になると爪の中央がくぼみスプーンのようになったり、爪の丸みが無くなって平になったりします。他にも栄養バランスが悪かったり爪の周囲の皮膚炎などが原因で爪に異常が出ます。

爪は健康のバロメーターとして機能しますので、看護で爪切りをする場合は患者の健康状態を確認するつもりでよく観察してください。

観察のポイント
・   色や形が変わっていないか

・   伸び過ぎていないか

・   割れ、はがれ、肥厚、巻き爪はないか

 

③爪をしっかりと洗う

可能であれば入浴後の爪が柔らかく清潔な状態で爪切りを行います。爪を洗う際は、爪ブラシで爪と皮膚の間を傷つけないように優しく洗います。入浴ができない場合は洗面器にお湯を入れて手先や足先をつけ、爪部分だけでも洗うようにします。または温タオルで爪の汚れを取り除いてしばらく温めて爪を柔らかくします。最後にアルコール綿で爪周囲を拭き、殺菌します。

 

④爪を切る

不織布を手や足の下に敷きます。入浴後の爪が柔らかいうちに爪を切ります。一度で切ろうとせず、何回かに分けて少しずつ切るようにします。厚くて硬い爪は始めにやすりで表面を削って薄くすると簡単に切ることが出来ます。爪の先には白い部分が1ミリ程度残るように、また爪が真っ直ぐなるように切ることが大切です。

爪を切る

出典:フットケアについて 医療法人社団 翔未会 金町腎クリニック

 

⑤やすりをかけて整える

爪を切り終わったら爪にやすりをかけ、爪の切り口が滑らかになるようにします。やすりは爪に対して一定方向に向かって動かし、爪が滑らかになるまで何度か繰り返します。爪がとがっていると皮膚をひっかいて傷を作ってしまうことがあるので、丁寧にやすりをかけて触っても引っ掛かりが無いようにきれいに整えます。やすりがけが終わったら温タオルなどで爪の表面を拭い、汚れを落としてきれいにします。

 

4、爪切りを医療行為として行って起きた裁判

看護の中で爪切りを医療行為として行った結果、裁判となって有罪判決が下されたことがあります。2審で無罪とされましたが、この事件の結果、看護師が爪ケアを萎縮するようになってしまったことがありました。この事件は看護現場における爪切り行為および看護行為全般に対して重要な示唆を与えるものだったので、ここに事件のあらましをご説明します。

 

事件の発端は看護課長がとある患者の右親指の肥厚爪に対して爪切りを行ったことでした。その時、看護課長は右親指にわずかに血が滲んだために綿花をあてました。翌日、患者の家族が綿花に気付き、看護師Aが看護課長に疑念を抱き、主任に報告します。

3日後、別の患者にて右足親指の肥厚爪を看護課長が爪切りをし、これを見た看護師Aが「課長が爪を剥いだ」と主任と同僚に報告し、一連の騒動を受けて看護部長が看護課長に自宅謹慎を命じました。そして看護師の誰かが新聞社に患者の爪の写真などを持ち込み、記者が病院に取材に来たところ、病院は急きょ記者会見を開いて爪切り騒動を「虐待」と発表しました。病院は翌日強制捜査を受け、看護課長は傷害罪で逮捕されてしまいます。

罪状は「当時70歳のFさんの右第1趾、右第3趾の各爪を、爪切り用ニッパーを使用するなどして剥離させ、よって、同人を全治まで約10日間を要する機械性爪甲剥離の傷害を負わせた」というものでした。

 

一審裁判所の判決で、看護課長は「懲役6ヶ月執行猶予3年」の有罪判決がおりました。爪切りは本来看護行為として認められていましたが、本件においては①患者が高齢の認知症である、②看護課長に出血や痛みが多少あっても構わないという考えがあり、爪を深く切った、③看護課長が爪切り自体に楽しみを覚え、看護行為ではなく爪切り自体を目的にした、④家族らに虚偽の説明をした、⑤看護師の間で爪切りがフットケアであるという認識が共有されていなかった、として看護行為といえないとされました。

ところが控訴審においては看護課長の爪切りが爪の状態に対する処置として適切であったことが証明され、一転無罪になりました。しかし、看護課長は逮捕された当日に病院を懲戒解雇され、医療虐待認定まで出されてしまっています。

 

本件の本質は、「医療現場における連携の問題」であって、爪切り行為自体には問題はありません。看護課長の爪切り行為は極めて適切な処置であったものの、患者の家族や他の看護師からは「爪剥ぎ」の虐待と認識されました。

看護課長は高齢患者の爪が放置されている状況を鑑み、独力に本件で問題となった爪切り技術を習得しましたが、それを知らない他者から見ると看護行為とは認識されなかったわけです。

看護課長が家族への説明をしっかり行い、また他の看護師・医師に対して爪の処置方法を共有し、看護行為の一環であると認識させていれば起こらなかった事件と言えます。看護の現場では独自の行為は自分では患者のためにしているつもりでも他者から見るとそうは見られない場合があると言うことを証明する事件でした。

 

患者・家族・他の看護師や医師との連携なしで行う看護行為は極めて危険な行為です。現場での連携を密に、情報共有の行き渡った看護を行うように常に心がけましょう。

 

まとめ

適切な爪切りは患者の衛生状態を改善し、無用な怪我の予防に繋がります。また、爪を観察することで患者の健康状態を知ることができるので、爪切りは現在の医療行為が適切なものか判断する良い機会でもあります。

一方で爪切りは患者の身体の一部を切除する行為ですので、爪を丸ごと切除するような処置をする時は患者・家族・他の看護師や医師にきちんと説明し、同意と理解を得て行うようにしましょう。

記録をやり始めるまで、かなりの時間を要する|看護師あるある【vol.45】

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看護記録
看護実習中は、記録さえ早く終わらせることができたら、その分、睡眠時間を確保できるんです。

でも、実習が終わって帰宅した後、記録をやり始めるまでに、かなりの時間を要します。疲れているから、帰宅後すぐにやりたくないし。というか、そもそも記録をやりたくない。

「夕食を食べたら記録をしよう。」、「お風呂に入ったらやろう。」、「このテレビ番組を見終わったらやろう。」とズルズルと記録を後回しにします。ある意味、現実逃避。

そして、「これ以上、後回しにしたら、睡眠時間が無くなる!」というギリギリの状態になってからようやく記録を始めるので、実習中の睡眠時間はいつも1~2時間。わかっていても、帰宅後すぐに記録を始められないんです。

見当識障害を持つ患者への看護の取り組みと声かけにおける留意点

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見当識障害の看護

いま居る場所や日付、曜日がよく分からない。見たことのある人みたいだけどいったい誰?それが見当識障害です。失見当識ともいい、認知症の初期症状です。

筑波大学附属病院の調査1)によると、認知症患者は2012年で462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人(15%)でした。また、内閣官房の2015年推定2)では、認知症の人は2025年に高齢者の5人に1人(700万人)、2040年に4〜5人に1人(800万人以上)としています。

このうちのかなりの人が見当識障害を通過していきます。認知症を根治する治療は定まっておらず、看護も症状に応じたケア的側面が強くなります。

 

1、見当識障害とは

見当識障害は認知症の初期からみられる中核症状の1つで、初期には「時」と「場所」に関する認識に障害が起きます。

認知症は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の2つで7割を超え、レビー小体型認知症、その他認知症(前頭側頭型認知症など)を合わせ、4大認知症ともいいます。

アルツハイマー型で4種類、レビー小体型で1種類の治療薬が認可されています(2016年現在。レビー小体型の薬はアルツハイマーの薬のうちの1つ)。根治薬ではありませんが、症状を緩和し、症状の進行を抑える効果があるとされています。

認知症|種類別にみる症状と看護計画・看護ケアのポイント

 

なお、高速道路での逆走事故(3年間で200人前後)3)や、全国の認知症の行方不明者(1年で5000人前後)など、認知症の増加は既に世の中に影響が出ています。

 

2、見当識障害の症状

見当識障害には初期には2つ、進行すれば3つの症状があります。「記憶」をつかさどる脳のどこかに障害が起きているとみられますが、原因ははっきり分かっていません。見当識障害の状態を診ることで認知症の進み具合を判定するための1要素になります。

 

■「時」の感覚が分からなくなる

例えば「あしたの夕方に出前を頼んでね」と頼んで「分かった」と答えたので安心していたらその日に頼んでしまうなどは、時間感覚に問題が生じたと考えられます。最も初期段階からあらわれる症状で「今日は何日?」に答えられないのは見当識障害でなくてもありますが「今日は何月?」に答えられないとなると、時間感覚にかなり問題が出てきたと考えられます。

レビー型ではカレンダーが見えていても、見えているものを正しく把握しにくいので、きちんと日付を読めないことがあります。老いれば次第にせっかちになりますが、予定に合わせて準備を順序よく重ねるとか、長時間待つのが難しくなると、見当識障害も疑います。

 

■「場所」の感覚が分からなくなる

通い慣れた場所に行くのが難しくなったり迷ったりします。迷うことは正常でもありますが、通い慣れた場所に行くのに迷うかどうか、が見当識障害のポイントです。

転居や、病気・けがによる入院など、自分をとりまく環境が変わると場所認識に混乱を起こす可能性があります。

 

この2つの症状は、進行すると、時間感覚では朝、昼、晩の区別がつかなくなり「昼夜逆転」がおきます。場所感覚では、自宅に居るのに自宅に帰りたいと言い張ることや、家の中でトイレの場所が分からなくなるなどの症状が出てきます。

 

■「人」が分からなくなる

早期段階では人の認識が難しくなることは少ないので、人の認識に問題が起きれば、かなり症状が進んできた可能性があります。アルツハイマーは時間や場所に比べ、人の認識はとりつくろう能力がありますが、症状が進めば家族に「どなたさんでしたかね?」と聞くようになります。

レビー型では早期から家族の認識ができなくなったり、子供の数を間違ってしまったりすることもあります。どの認知症でも病状が進めば、孫と娘と取り違えたりします。

 

3、見当識障害を呈する患者への看護

見当識障害に対しては、対症的な看護しかありません。認知症は、家族にとっては気の遠くなるような長い闘いですが、看護についても気の休まることの少ない難しい分野です。

 

看護目標
1.   患者とのコミュケーションが少しでもとれるようになる

2.   患者が規則正しい生活に少しでも近づけるように手助けをする

3.   患者が、少しでも落ち着いて行動できるようになる

つまり、

朝は、目覚めれば日を浴びて覚醒感覚をつかむ

昼は、散歩など外に出るようになる

夜は、持続した睡眠がとれるようになる

 

3-1、日課の意識づけと意欲向上への取り組み

■カレンダーを貼って毎日声に出してもらいましょう

見当識障害の出始めは、病室のベッドの横に大きな見やすいカレンダーを貼り、規則正しい生活を送るために毎日、今日の日付に印をつけてもらいます。それを日課に組み込みます。その時に「今日は、◯日、◯曜日です」と声に出してもらうと頭に残りやすくなります。

 

■時計を再三、見てもらいましょう

時計は、患者の人生経験によってアナログ・デジタルのどちらが良いかが異なります。本人にとって使いやすいもの、分かりやすいものがベストです。

いつも時計を持ち歩いてもらい「もうお昼ですね」「寝る時間が近いですね」と声かけを絶やさないようにしてください。認知症の患者に対しては、男女問わず声をかけることは大切です。

 

■生活リズムを定着させてあげましょう

朝は、日の光を入れて目覚め感をつけます。「今日はあたたかいですよ」など季節や日付を感じさせるような内容を意識して盛り込みます。

日中は、声かけ・働きかけを多くし、テレビや音楽、散歩などで活性化をはかります。夜は自然に眠くなるような活動量が望ましいでしょう。夜、眠れないときにはお茶やお菓子などもOKにします。

 

■散歩も大切な日課です

じっと病室にいることは脳への刺激が減って、認知症の進行を早めてしまうおそれがあります。病院内では限界もありますが、散歩は気分転換にもなります。

ただし、一度でも見当識障害の出た患者は、目を離さず一緒についてあげる必要があります。散歩のできない場合も窓を開けて日光を取り込み、明るさから昼夜の区別がつくようにしましょう。

 

3-2、不安・苦痛の緩和

■身体的不安の緩和

特に年配の患者にとってトイレの失敗は、精神的につらい経験として残ります。部屋やベッドをトイレの近くに変えてあげるなども1案です。ただし、変えることで混乱しないような工夫が必要です。ドアに大きく「トイレ」などと書いた紙を貼る等も大事です。

 

■精神的苦痛の緩和

不安や混乱をきたさないよう落ち着いて話を聞いて上げ、ゆっくりと行動しても構わないことを伝えて安心してもらうようにします。

 

4、声かけ・言葉における留意点

見当識障害は、認知症でも初期の症状です。患者自身も思い通りにならない心と身体に、不安や焦り、苦痛を覚えています。声かけするに当たっては2つの「決してしない」を大切にしてください。

 

■決して、怒ったり責めたりしない

見当識障害では、今日の日付や曜日が記憶から外れるため約束を取り違えたり、誰かと会う約束を忘れてしまったりします。場所の記憶が薄れるため、迷子になってしまいます。症状が進むと長年の知人すら「知らんな、こんな人」と平気で言います。

こうした症状は病気のために起きているのです。認知症の初期の人に怒ったり、責めたりすると、かえって興奮させてしまいます。自尊心を傷つけ、良いことはなにもありませんので、怒ったり責めたりすることのないよう注意して接するようにしてください。

 

■決して、本人を否定しない

自分の年齢を間違えたり、やがて介護士や看護師を家族と間違えたりするのは、見当識障害では当たり前の症状です。病院、施設にいるにもかかわらず「自宅にいる」と間違えることも多々あります。

患者の心のすべてが認知症になっているわけでありません。見当識が障害されていても正気な部分は残っていて、患者の側で無意識のうちに接する人が頼りになるか、ならないかをかぎわけているものです。決して患者本人の存在を否定したり、発言内容を頭ごなしに否定したりしてはなりません。

 

まとめ

認知症の初期症状である見当識障害は、数値で測れるものではなく、何気ない行動やしぐさから判断するしかありません。

認知症の根治治療が確立していない現在では、見当識障害についても対症的な看護しかありませんが、一人の高齢者の尊厳に重きを置いた上での対応が求められます。

 

参考文献

1)都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 筑波大学附属病院精神神経科

2)認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~の概要 内閣官房

3)高速道路における逆走の発生状況と今後の対策について NEXCO東日本


病棟に嫌な看護師が必ず一人は絶対にいる|看護師あるある【vol.46】

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嫌いな看護師
基本的に実習に行く病棟の看護師さんは怖い。特に、実習指導者は怖い。でも、時々は「この病棟の看護師さん、みんな優しい!」とか「この実習指導者さんみたいな看護師になりたい!」という時もあります。

そういう病棟での実習は、毎日そこまで憂鬱にはなりません。でも、でも、看護師さん全員が優しいという病棟は絶対にない!

必ず1人は「うわ、この人ムカつく!」とか「この人、無理。嫌い。」と思ってしまう看護師さんがいるんです。

なんででしょうか?どんな病棟にも必ず1人は、顔を見た瞬間にため息をついてしまう看護師がいるんですよね。

この世には全員が素敵な看護師さんという病棟は存在しないんでしょうか?全員が良い看護師さんという病棟は、患者さん以上に看護学生が必要としている気がします。

血圧低下時の看護|ショックなど各種症状と原因、ケース別の対処法

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血圧低下の看護

患者の正常血圧から大きく血圧が下がった状態を指す「血圧低下」。症状によっては生命の危機に至る可能性もあり、適切な患者観察と処置が鍵を握ります。

今回は、血圧低下の原因や、血圧低下によるショックの診断基準、血圧低下時の看護を実践する上での注意点をまとめてみました。ぜひ日々の業務の参考にしてください。

 

1、血圧低下とは

血管が動脈壁を押す圧力を意味する血圧(BP:Blood Pressure)。循環器系疾患の予防や疾患の可能性を図るため、広く計測されています。患者の生命に関する最も基本的な情報バイタルサインの1種です(その他のバイタルサインは「心拍数」「呼吸」「体温」)。

血圧を決める要因は、心臓の活動性を表す「心拍出量(血液量)」と、全身の血管の緊張度を表す「末梢血管の抵抗」です。これらが上がると血圧も高まります。

血圧は、血液を送り出すために心臓が収縮したときに最大となり、心臓が一番膨らんで弛緩したとき最小となります。前者を「収縮期血圧」、後者を「拡張期血圧」と言います。また、収縮期血圧と拡張期血圧の差を「脈圧」と言います。

 

≪血圧の基準値≫

  • 新生児:60~80/50mmHg
  • 乳児:80~90/60mmHg
  • 幼児:90~100/60~65mmHg
  • 学童:100~120/60~70mmHg
  • 成人:110~130/60~80mmHg

 

成人の血圧標準値は「収縮期血圧が130mmHg未満」、「拡張期血圧が80mmHg未満」とされています。これ以上の値になると「高血圧」と診断されます。また、血圧が基準値に満たない場合は「低血圧」と診断されます。一般に「収縮期血圧が100~110mmHg未満」を低血圧と定義しています。

血圧低下とは、患者の正常血圧から大きく血圧が下がった状態を指します。正常血圧は患者によって異なりますが、血圧低下では低下の幅がどれくらいかが重要な要素となります。急性的な血圧低下では、収縮期血圧が「20mmHg以上の急激な低下」を起こした場合を指します。

血圧低下では、全身に血液が循環しなくなることが問題です。全身に血液が循環しない場合は臓器や細胞に酸素、栄養が行き渡らなくなることで以下のような症状が現れてきます。

 

≪血圧低下時に発生する症状≫

  • 気分不快
  • ショック症状(※後述)
  • 意識障害(眠気から意識消失まで)
  • 四肢の痺れ
  • めまい
  • 全身倦怠感
  • 顔面蒼白
  • 冷や汗
  • 不整脈
  • 動悸、息切れ
  • 嘔気、嘔吐

 

必要十分な血圧を維持するために、体内では心拍出量や末梢血管の抵抗を変化させています。 血圧を上げるためには心拍出量または総末梢血管抵抗のいずれかを上げることが重要です。また、神経やホルモンは心拍出量や血管抵抗を変化させることができ、間接的に血圧を変動させることも可能です。

 

2、血圧低下の原因

急性的な血圧低下には、主に以下のような原因が考えられます。

 

■出血・脱水などによる血液量の急激な減少

切り傷や外傷による出血、事故や発作での鈍的外傷による出血、胃腸管や子宮外妊娠の破裂による内出血などによって循環血液量が減少し、血圧が低下します。また、過度の下痢 、重度のやけど、過度の発汗による脱水(体液喪失)も循環血液量が減少する原因となります。

 

■感染による敗血症性ショック

敗血症は、血流に細菌が存在する状態である「菌血症」や他の感染症に対する重篤な全身性の反応です。敗血症性ショックとは、敗血症によって引き起こされる低血圧症のことを指します。敗血症が悪化すると、心拍と呼吸が速くなり錯乱を来し内臓の機能不全が起こります。

敗血症の看護、観察するべきポイントと看護計画とは

 

■心機能の著しい低下

急性心筋梗塞や心筋炎、不整脈などによって心収縮力が低下し、心拍出量が低下することで血圧低下が引き起こされます。

 

■薬物の多量投与やアレルギーなど

精神安定剤や精神刺激剤、パ-キンソン病治療剤、降圧剤など服用している薬物の影響による場合も考えられます。また、昆虫毒などのアナフィラキシーショックでも血管拡張が起こり血圧低下を招く場合もあります。

アナフィラキシーの看護|症状と原因、発症患者への治療・対応

 

3、急性的な血圧低下によるショック症状

急性的な血圧低下は、ショックを引き起こす原因にもなります。ショックとは、循環が破綻することで全身性の組織灌流障害(脳や各臓器、抹消血管にまで血液が十分に行き渡らない障害)に陥り、組織の酸素代謝障害を来した病態を指します。

持続する組織灌流障害によっては、細胞死や臓器障害、多臓器不全となり生命の危機に至ることもあります。ショック時には迅速な処置・治療が必要です。

ショックの診断では、患者の低血圧状態を1つの基準とします。臨床所見と組み合わせて総合的に判断する必要があります。

 

3-1、ショックの特徴的な症状・判断基準

患者がショック状態に陥っているか判断する際には、ショックの特徴的な症状を理解しておく必要があります。その症状としては「ショックの5徴候(ショックの5P)」があります。特にショックの5徴候に加え、臨床症状で判断することが重要です。

 

ショックの5P ・  周囲に無関心で無欲状態(虚脱:Prostration)

・  皮膚が蒼白(顔面蒼白:Pallor)

・  冷汗をかいている(冷汗:Perspiration)

・  脈が弱く速い(脈拍触知不能:Pulselessness)

・  ・呼吸不全(Pulmonary deficiency)

ショックを見分ける臨床症状 ・  血圧低下(収縮期血圧90~100mmHg以下)

・  脈圧の減少(収縮期と拡張期圧の差が少なくなる)

・  静脈虚脱

・  呼吸促迫

・  尿量減少(25ml/hr以下)

引用:トリア-ジとは 2.トリア-ジと重症度判断 災害医学・抄読会 081107

 

■ショック図

ショック図

出典:検査や治療を必要とする低血圧とはどういうものですか 公益財団法人 日本心臓財団

 

4、ケース別にみる血圧低下時の看護ケア

以下、血圧低下時の看護ケアについて幾つかの具体的な例を紹介します。

 

■解熱剤を使用後に血圧低下が起こった場合

高熱のある患者に解熱剤を使用すると急激に血圧が低下することがあります。発熱による脱水によって血管が拡張することが原因です。特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が血圧低下しやすい薬剤です。この場合は、急速輸液も考慮するため、できるだけ太い留置針で静脈ラインを確保することが重要です。

 

■体位変換後、急激に血圧低下が起こった場合

体位変換による循環動態の変化は一時的なものですが、重症患者は身体維持機能が失われているため、体位変換でも急激な血圧低下が起こります。この場合は、元の体位に戻して経過を見ます。改善が見られない場合は、急速輸液を行ってバイタルサインが安定することを優先しましょう。

 

■輸血後に急激に血圧低下が起こった場合

代表的な原因としてTRALI(輸血関連急性肺障害)が考えられます。TRALIとは、輸血後数時間以内に非心原性の急激な肺水腫による呼吸困難が起こる重篤な輸血副作用です。この場合は、すぐに輸血を中止します。また、副作用が重篤な場合、できるだけ太い留置針で静脈ラインを確保し、急速輸液やステロイド、利尿剤などを使用します。

 

4-1、血圧低下に対する下肢拳上

これまで血圧低下の患者には「下肢を拳上し、静脈還流を増加させて脳血流を維持する」ことが応急処置として考えられていました。しかし近年では、下肢拳上することで血圧が変化するというエビデンスが得られないという論文が多く発表されています(参考:透析中の下肢挙上による生体反応の検討)。

 

■下肢拳上による収縮期血圧の変化図

下肢拳上による収縮期血圧の変化図

下肢拳上は鬱血性心不全には禁忌となっています。下肢を挙上させると、心臓から血液が送り出せない上に多くの血液が心臓に戻ってくるため、心臓に負担がかかります。閉塞性動脈性硬化症や糖尿病など下肢の血流が悪い患者の場合も、末梢の血流障害が悪化することもあります。

薬物投与や外傷出血などがない血圧低下の患者の場合、すぐに仰臥位にすることが望ましいでしょう。血圧低下時は循環血液量が急激に減少しているため、身体をフラットな姿勢にすることで循環動態が良くなります。

また、医師の指示に従い、看護師が補液をすることもあります。モニター管理をできるだけ行い、与薬量や与薬時間などを適切に管理することが重要です。呼吸困難や酸素飽和度の低下の症状がある患者には、酸素の投与が必要なこともあります。その際は、医師の指示を仰いでください。

 

まとめ

急性的な血圧低下には様々な要因が考えられますが、患者の生命を維持するためにも多くの看護師が適切な判断や処置を身につける必要があります。「3-1、ショックの特徴的な症状・判断基準」や「4、ケース別にみる血圧低下時の看護ケア」の各項目を踏まえて、最適な処置方法を理解、習得してください。

実習は、組まれたグループの人間関係によって変わる|看護師あるある【vol.47】

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看護実習グループ
実習が比較的楽なのか、地獄になるのかが決まる要素には、どんな患者さんの担当になるのか、実習指導者が誰なのかなどもありますが、一番重要なのは実習のグループ分けだったりします。

実習のグループ内の人間関係によって、実習が楽なのか地獄なのかが左右されるんです。仲良しの人が多い時は、もちろんテンションが上がります。面倒な患者さんの担当になったって、実習指導者がどんなにムカつく人でも、人間関係に恵まれた実習グループなら乗り越えられる!

でも、微妙なメンバーのグループに入ってしまった時の絶望感と言ったらもう。。。

実習の愚痴も言えないし、困ったことがあっても相談したり聞いたりできない。早くこのグループでの実習が終わることをひたすら祈る毎日です。

シバリングの看護|予防・処置上のポイントと、術中・術後の対応

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シバリング看護

シバリングは身体が体温を保つために起こす生理現象ですが、放置すると低酸素症や心筋虚血といった症状を引き起こすことにもつながりかねません。発生した際には速やかな処置を施す必要がありますが、その際にチェックすべき患者の状態や、避けるべき看護技術など、注意点を踏まえた上で対応することが重要です。

医療現場の中でシバリングが起こり得る場面として術後が挙げられることから、術中・術後におけるシバリング防止につながる看護のポイントも挙げてみましょう。

 

1、シバリングとは

シバリングは、寒冷環境下や発熱時に生じる震えで、日本語では悪寒戦慄とも呼びます。体温を保つために、筋肉を動かすことで熱を発生させる生理現象で、具体的には発熱した時に身体がガタガタと震えたり、寒くて口が震えている状態は、シバリングが起きていると言い表されます。予防としては、筋弛緩薬などの薬剤も用いられます。

 

2、シバリングの原因

シバリングが起こる要因としては前述したように、体温を保つために筋肉を動かして熱を発生させるというメカニズムが挙げられており、発熱した時などに発生します。

シバリングはその他、手術後の体温低下に伴う症状としても発現し、麻酔薬が残存している際に中枢神経系に作用して、上位の運動神経を抑制することから脊髄反射が亢進して起こるということも、要因として考えられています。

 

3、シバリングの危険性

心肺機能が低下している人や、高齢者にとっては、シバリングが発生すると特に危険な状態になり得ます。シバリングが発生した際には、酸素消費量が増加して混合静脈血の酸素含有量が低下することや、二酸化炭素や乳酸の産生量が増加することが指摘されており、分時換気量が増加しないと混合性アシドーシスに陥る可能性があります。

そして交感神経系が緊張を起こして、血圧や心拍数は上昇しますし、心筋酸素需給のバランスの乱れが生じると、心筋虚血や心室性不整脈を引き起こしかねない状態にもなります。

 

4、シバリング発生時の処置

シバリング発生時の処置法としては保温のほか、酸素投与と加温が挙げられています。加温は温風式加温装置などが用いられ、平均体温の上昇を試みる一方で、効果的な薬物としてペチジンなどの投与も行われます。

 

5、シバリングにおける看護のポイント

それでは、シバリングと関連する看護のトピックスについて、予防策や発生時の処置法などからポイントを紹介したいと思います。シバリング発生時に避けるべき看護技術もありますので、注意が必要です。

 

■シバリングの予防

シバリングが起こるケースとして、核心温と比べて末梢温が低い際に熱生産を目的として発生することが挙げられています。シバリングを防ぐため、患者の体温管理を手掛ける際には、核心温と末梢温が引き離されることのないように注意してあたることが、ポイントです。

 

■クーリングは悪化の原因に

発熱時における看護技術の1つであるクーリングについては、シバリングの憎悪につながる危険性が指摘されています。仮に安楽を目的としてクーリングを行う場合、体温上昇時には避け、解熱時に行うことが肝心です。

看護師が悩む発熱時のクーリングの効果と実施の可否について

 

■シバリングを抑制する薬物を使用する際の注意点

シバリングを抑制する薬物のペチジンを使用する際には、呼吸抑制や意識レベル低下、嘔気の出現に注意する必要があります。そのため、使用にあたっては、そのような状況が引き起こされていないかどうか、しっかりと患者の状態を観察することが重要です。

 

5-1、シバリング防止のための看護対応―術中・術後

前述したように、シバリングの発生が見られる場面の1つとして術後が挙げられます。全身麻酔の合併症と術前・術後における観察項目・看護計画におけるポイントの中でも、覚醒時のシバリングを防ぐために、手術中に体温変化を観察することが含まれています。

ここでは他に、術後のシバリング発生を防ぐ対策として、看護に関する研究結果から導き出された方法を2つ紹介したいと思います。

 

■手術時の装置を使った加温のタイミングと設定温度

手術時の温風式加温装置を使った加温法については、加温を始めるタイミングや設定温度の重要さを指摘する意見もあります。例として腹臥位で腰椎手術を受ける患者に対して、加温は腹臥位固定直後に始め、温度設定も統一する方法を採用した研究1)では、対象者に等しくシバリングの発生がなかったという結果が出されています。

 

■帝王切開手術後のベッドまでの移動方法

帝王切開手術後に手術室から病棟のベッドに移動する際の患者を対象とした研究2)では、保温されているベッドに手術台から直接移り、ベッド上で保温された寝衣を着て手術室を退室した患者に関しては、シバリングの発生率はなかったそうです。これに対し、手術台から保温されていないストレッチャーに乗った後に寝衣を着て、手術室出入り口でベッドに移動して退室した患者の中には、シバリングを発生する例が見られたということです。

このような患者には特異的な体温変動はなかったにもかかわらず、寒さを訴えるケースもあり、ベッドが変わる度に寒さを感じるという傾向も見受けられています。

このようなことから手術中の保温管理とは別に、ベッドの変更回数が多いことも、シバリングの発生要因になると考えられ、手術後は手術台から最小限の移動で保温されたベッドに移ることが効果的である、とも言える結果が導き出されています。

 

まとめ

医療の現場において患者のシバリングや発熱に対応したり、防止を図る機会は多様に設けられていると言えますが、その際には患者と身近に接する看護師ならではの細かい配慮や注意力が、大きな武器になると考えられます。

それは、今回紹介したシバリング予防の際の体温管理や対処のための薬物使用における十分な配慮や観察の必要性、およびシバリング防止につながり得る術中・術後の細部に渡った対策の研究結果などからも、うかがえるのではないでしょうか。

配慮の行き届いた看護対応や注意力、さらにシバリングの危険性や発生原因に関する知識や情報なども万全に備えた上で対処していくことが、突然の震えに襲われた患者の不安感を取り除き、容態の悪化を防ぐポイントとなるでしょう。

 

参考文献

1)水上結生、三浦恵美、田中怜史「腰椎手術における体温管理の評価―ベアーハガーによる加温方法統一の結果―」2014『第45回日本看護学会―急性期看護―学術集会抄録集』

2)葛川真里絵、井畑あゆみ「帝王切開手術後のシバリング発生減少への取り組み」2016『第47回日本看護学会―急性期看護―学術集会抄録集』

朝、学生同士で担当看護師の報告会。一日の運命が決まる瞬間|看護師あるある【vol.48】

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担当看護師
実習中、その日1日が天国になるか地獄になるかは、その日の担当看護師が誰なのかで決まります。

その日にならないと自分の受け持ちの担当看護師が誰なのかがわからないので、毎朝ドキドキしますし、担当看護師が誰なのかで一喜一憂します。

自分の担当看護師が怖いベテラン看護師だったら、その日は当然地獄のような1日。担当看護師が癒し系看護師だった時、その日は天国!

2年目3年目あたりの看護師さんは、まだ学生時代のことを覚えているからか、優しい人が多いけど、ベテラン看護師さんはたいてい怖い。

毎朝、担当看護師が誰なのか発表される時のドキドキ感は、看護学校の合格発表の時以上かもしれません。

実習中の避難場所は倉庫かカンファレンスルーム|看護師あるある【vol.49】

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看護実習
実習中、ふと暇になることがあります。受け持ちの患者さんが昼寝をしていたり、家族や友人が面会に来ている時などですね。

そういう時は、どこで待機しているか。それは物品倉庫や学生用のカンファレンスルーム。物品倉庫や学生カンファレンスルームは、看護師さんの目も患者さんの目もないので、少しだけくつろぐことができる癒しの場。

間違ってもナースステーションになんて行きません。ナースステーションに行ったら、看護師さんの視線が痛いじゃないですか!「何してるの?」とか「サボってないで、早く動きなさい」なんて言われるし、言われなくても目で語り掛けてくるし。

物品倉庫が癒しの場なんて、ちょっと切ないですけど、少し時間が空いた時は、ついつい足が向いてしまうんです。

「看護学生あるある」を見て、辛いのは自分だけではないと励まされる|看護師あるある【vol.50】

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看護学生あるある
看護実習中は本当に辛い。何度も、「もう看護師になるのを辞める!」、「看護学校なんて退学する!」と思うもの。というか、実習中は毎日思っているかも。

そんな辛い毎日の中、ついつい見てしまうものがある。それは、「看護学生あるある」のタグ。看護学生あるあるのタグで検索して、ズラッと出てきたものを、1つ1つ見ていく。

検索で出てきた看護学生あるあるは、「そうそう!」、「わかる~!」、「これ、私も今日経験した!」思えるものばかり。

看護学生あるあるのタグを見ていると、辛いのは自分だけじゃない、みんな辛い思いをしながら頑張っているんだなと励まされて、「もうちょっとだけ頑張ってみるか」、「明日も頑張ろう」と思えるようになるんです。


「根拠は?」あ、あえ、あ… っておかしな状態になる。|看護師あるある【vol.51】

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看護師根拠
先輩の「で、根拠は?」という一言の破壊力が強すぎる!

これを言われた時には、全ての思考回路が逆回転し、頭が真っ白になってしまい、言葉が何も出なくなります。

「えーと、えーと」私はつまり何が言いたかったのか、そもそも私という存在はいったいなんなのか、「根拠、根拠、エビデンス・・。」そんなのわかってる。だけど何も言い返せる言葉が思いつかない。

そして、冷や汗が半端なく流れ落ちる。

もう看護師辞めたいよ・・。

必ず突っ込まれる「根拠」という「エビデンス」

先輩との会話には、必ず根拠を用意しておく習慣が必要不可欠のようです。

そうしなければ、全ての思考回路が毎回ショートしてしまうことになるでしょう。

1次治癒・2次治癒の両面における創傷処置の看護のポイント

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傷創処置の看護

創傷への対応として挙げられる創傷処理と創傷処置。特に、感染症などの被害を防ぎながら患者の治癒機転を速やかにサポートするために、創傷処置を進める上では重要なポイントが数多く存在します。

それらのポイントの一部とともに、創傷の種類、創傷処理と創傷処置の役割についても紹介していきましょう。

 

1、創傷について

創と傷は同じような意味で解釈されるケースが多いですが、厳密な意味としては、創は開放性損傷であり、皮膚の連続性が保たれた状態での損傷を指します。傷は非開放性損傷で、皮下組織に損傷が及んだ状態です。

過度な外力により皮膚や皮下組織に損傷が及ぶと痛みが生じるだけでなく、放置すれば出血や臓器・機能障害、感染、瘢痕の形成などにもつながりかねません。

形成外科や救急外来などではそのような状態の患者に対して創傷処理や創傷処置が施されていますが、傷の性状や段階によって対応も異なってきます。創傷は原因や性状をもとに、次のような種類に分けられます。

 

≪創傷の種類≫

切創 鋭利な刃物による損傷が原因で発生する。組織の挫滅は少ない。
刺創 先端の尖った刃物による損傷で発生する。内部損傷を伴う場合もある。
割創 膝や頭皮などの皮膚が打撲をしたり、重いものに皮膚を打ち付けて発生する。線状に割れたような状態。
挫創・挫傷 鈍器による打撲が原因で発生する。皮膚だけでなく、皮下組織や筋肉、骨の損傷もある。
擦過傷 擦り傷。皮膚の損傷程度は小さい。
裂創 皮膚が引き裂かれるようにして傷ができる。

 

このほかにも、咬創、銃創、熱傷、凍傷、化学外傷、爆創などの種類があります。軽い切創や擦過傷の場合は特別に治療をしなくても治るケースが多いですが、傷が広範囲に渡った場合や、挫創のように重症に陥った場合は、積極的な治療が必要な事態にもなります。

 

2、創傷処理と創傷処置の違い

厚労省が創傷処理と創傷処置の役割について触れている資料として、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」があります。この中で、創傷処理については「切・刺・割創又は挫創に対して切除、結紮又は縫合(ステープラーによる縫合を含む。)を行う場合の第1回治療のこと」としています。

これに対し、第2診以後の手術創に対する処置は、創傷処置として算定されるとしています。生体には本来、炎症→繊維芽細胞増殖→繊維細胞による線維化といったプロセスを経た創傷治癒のプロセスが備わっていますが、創傷処置の目的は治癒機転を補助することに位置づけられます。

創傷治癒に関わる細胞増殖因子

出典:創傷治癒に関わる細胞増殖因子 – NPO法人創傷治癒センター

 

3、創傷処置を進める上での看護のポイント

生体の治癒機転をサポートする創傷処置は具体的には止血や創の浄化、創閉鎖を行います。看護技術としては褥瘡予防、ドレッシング剤の使用、ドレーン管理、消毒、ガーゼ保護などが挙げられます。処置を進める上で注意点とされているポイントについて、紹介していきましょう。

 

3-1、情報収集と共有

創傷処置をする際には局所だけでなく、全身の状態を把握することがポイントです。処置が必要と考えられる患者が搬送された際には、創傷を負ったきっかけや時間などをしっかりと把握した上で、現場スタッフ全体でそれらの情報を共有して対応する体制が不可欠となります。

その他にも破傷風予防接種や透析、糖尿病などの既往歴や、局所麻酔や薬物によるアレルギーがあるかどうかといった情報も収集・共有しておく必要がありますので、患者と医療従事者、医療スタッフ同士でコミュニケーションが円滑にとれている環境が整っていることも、円滑な処置を進める上で重要な前提条件となります。

 

3-2、創傷処置と消毒

前述したように創傷処置では消毒をすることもありますが、消毒薬の乱用はおすすめできません。消毒薬は細菌の増殖を抑える一方で、正常な組織を損傷する点が指摘されています。

1次治癒の場合では、消毒は治癒を遅らせる可能性が指摘されています。創や周囲の血液・分泌液は生理食塩水ガーゼでふき取りましょう。感染の疑いや悪臭、ガーゼの汚染がある場合は交換しますが、抜糸まではガーゼ交換は不要です。ガーゼ交換には、形成された上皮が剥がされる可能性があり、治癒遷延につながる場合もあります。

2次治癒の場合では、創縁以外の創面や肉芽には消毒薬をつけないことや、抗菌薬は耐性菌の出現につながる可能性があるため、局所投与は避けるなどの注意点が挙げられています。

 

3-3、感染予防

褥瘡や糖尿病性足潰瘍など慢性創傷は、創部に細菌の定着が発生している可能性も高く、創傷処置と感染予防をセットで考える必要もあります。

創傷処置やその介助をする際の格好としては、ディスポ手袋を着用して手洗いや手の消毒を徹底し、作業が広範囲に及ぶ場合は、飛散の程度を考慮した上でエプロン、マスク、アイシールドの着用を心がけることがポイントです。

手袋は最後に着用するようにして、そして作業が終わったらエプロンなどを脱ぐ前に手袋から外していくなど、着脱手順にも細かい注意が必要です。また、患者の排泄物を取り扱った後や、患者の体位や衣服を整える前、洗浄後に体液が飛散した際など、必要に応じて手袋やエプロンの交換を行うようにしましょう。

感染を防ぐため剃毛は制限すること、処置に使われる道具として絆創膏は剥がしやすいように、片端のみ折り曲げるなどの細工をしておくことも、重要です。処置で発生した感染性廃棄物は所定の廃棄物容器にきちんと捨てることも、忘れないようにしてください。

 

3-4、良好な治癒環境をサポート

適切な処理が施された創傷は、早く、きれいに治すためにも良好な治癒環境に置かれることが必要条件となってきます。そのためには、創を被覆するドレッシングを適切に行うことなどが、ポイントとなります。ドレッシングは創を外力や感染から守ったり、滲出液が過剰に出てきた場合に吸収するほか、「傷を見たくない」という患者の心理に配慮した看護法にもなります。

創傷は乾燥させるのでなく、湿潤環境に置くことが望ましいと考えられているため、1次治癒創に対して閉鎖ドレッシングによって湿潤環境を整えることが、治癒に向かった良好なサポートにつながると言えます。創は閉鎖後48時間ほどで上皮化すると言われており、以降はドレッシング不要となります。温めることで治癒環境が良好になるとして、シャワー浴も可能となります。

2次治癒創に対しても、洗浄とドレッシングで湿潤環境を整えることが、早い治癒につながります。傷を覆って湿潤環境を維持する創傷被覆材は、術後創や出血がなく浅い傷にはポリウレタンフィルム、滲出液が多い場合はハイドロコロイドやポリウレタンフォーム、受傷直後の出血創にはアルギン酸塩被覆材…など、創傷の状態によって適切な素材のものを扱うようにしましょう。

ハイドロコロイドドレッシング

出典:ハイドロコロイドドレッシング|医療衛生材料|株式会社ニトムズ

 

まとめ

多くの患者にとって、医療機関を受診するほどの創傷を負うことは衝撃的なダメージであり、創傷処理を受けている段階では心身ともにダメージが大きい状態にあることが想定されます。

そこで、良好な治癒環境を整え、速やかに快方に向かうサポートとして創傷処置を適切に進めることが、そんな患者の負担を徐々に和らげることにつながるのではないでしょうか。現場全体で患者をサポートしていける環境づくりも、医療や看護の場に求められていると言えます。

風邪引いて学校へ行くと、演習時に患者役で肺の音を聴かれる|看護師あるある【vol.52】

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看護師が患者
風邪を引いて看護学校へ行くと、それなりに心配はされます。

しかし、格好の患者約にも抜擢されます!

 

ゼーゼーと苦しかったり、痰が詰まっていたり、これが風邪を引いた患者の肺の音です。

「上葉の音を聞いてみましょう」

「少し狭窄したような音が聞こえるかも?」

「これがラ音かなぁ?」

みんな言いたい放題・・。こっちは、風邪引いて本当にしんどいんだってば!!!

 

肺の音なんて、みんな聞いたことないからよくわからないよね。何が正常で、異常なのか知りたいよね?

私も知りたいよ。

みんなのために体張るよ!でもね、こっちはリアルの患者だからさー。

本当にしんどいんだってばーーー!!!!

 

看護学生は病気にかかると、何かしらの患者役になることがあります。

関節リウマチの看護|寛解目指し、療養生活の局面のサポートを

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関節リウマチ

関節リウマチは膠原病の1つで、30~60代の女性に多く、薬物療法やリハビリを続けながら療養生活を送ることになる病気です。

進行すると関節の変形にもつながり、日常生活を送るのにも支障が生じる可能性もあり、早期発見して早めに治療を開始することや、円滑な薬物療法やリハビリを進めるために、患者自身への指導や働きかけが重要なポイントとなってきます。患者が少しでも前向きに治療に取り組めるように、局面的にサポートする姿勢が求められます。

 

1、関節リウマチとは

関節リウマチは膠原病の中では最も多い病気と言われており、かかると免疫細胞が身体の組織を攻撃して関節内に炎症を引き起こします。

炎症が発生してから変形に至るまで、10年ほどの年月を有すると言われており、早期発見をして早い時期から薬を投与すれば、進行を抑え、症状が軽減または消失する寛解状態を目指すことも可能です。症状を放置して関節に大きな変形が起こると、手術をする必要性が生じるケースもあります。

関節リウマチはどこの関節でも起こる可能性がありますが、症状の半数程度は、手首や手指の関節の腫れ、痛みが始まります。また、症状が左右対称に起こることも特徴に挙げられます。

関節リウマチ

出典:269号関節リウマチ – 社会医療法人 峰和会 鈴鹿回生病院

 

原因は未だ分かっていませんが、ホルモンの影響や感染症の病歴などが環境要因に挙げられており、そこに疲労やストレス、妊娠、出産などの刺激によって免疫の働きが活発化して発症すると考えられています。主に血液検査や画像検査を行い、結果をもとに診断します。

 

2、関節リウマチにおける看護ケアのポイント

関節リウマチの患者をケアする局面は多岐に渡ります。以下に、患者への応対や働きかけのポイントを示していきたいと思います。

 

2-1、初期症状を見極める

前述したように、関節リウマチは早期発見されることが重要です。ですが、関節リウマチの初期症状が起きていても「指を使いすぎている」と思い込んでリウマチにかかっているのに気づかないという問題点が指摘されています。

 

≪初期症状≫

・   目覚め直後の手のこわばり

・   腕が伸ばせない

・   階段の昇り降りがつらい

・   関節の腫れ

・   関節を押すと痛みが発生する

 

手がかじかんだようだ、朝食の支度や着替えがスムーズにできないほど手が動かない、といったことを患者が訴えている場合、関節リウマチに罹患している可能性を考慮して医師に伝えるようにしましょう。

 

2-2、薬物療法を受ける患者への配慮

関節リウマチの治療は、薬物療法が中心です。使われる薬のうち、腫れや痛みを抑えて骨の破壊を防いだり、関節を動かしやすくする効果を見込める抗リウマチ薬のうち、免疫抑制薬は妊娠中の患者には適用されません。

胎児の発育への影響があることから、妊娠中に限らず患者が妊娠を希望している期間も使用できませんので、そのような患者の事情を聞き取ったり、得た情報を現場スタッフ間で迅速に共有できるように体制を整えておくことが、治療をよりスムーズに進めるカギとなります。

一方、抗リウマチ薬には、生物を活用して人工的につくられたたんぱくから成る生物学的製剤もあります。生物学的製剤はバイオテクノロジーにより、遺伝子工学の手法でつくられており、関節リウマチ治療を飛躍的に進歩させた功労者とされていますが、感染症やアナフィラキシーを起こすなどの副作用があります。

感染症にかかったことがあったり、肺の病気に罹患している患者には、副作用の少ない種類の製剤を用いる必要がありますので、やはり患者情報の収集とスムーズな伝達を現場全体で進めていくことが重要です。

製剤の中には自己注射ができる種類もあり、病院に通う時間がなかなかとれない患者は自分で注射をして薬を体内に取り入れることもできます。自己注射を希望する患者に対しては、医療現場で事前にしっかりと指導をしておくことも肝心です。また、患者が副作用を恐れて薬の服用を中止したり、回数や量を加減してしまわないように、医師とともにきちんと指導しておくことも、治療を進める上で重要なポイントとなります。

患者は定期的に血液や尿の検査を受けますが、これは病気の状態だけでなく、薬の効果を確かめたり、副作用が出ていないかどうかをチェックする機会でもあります。検査データも十分に活用しつつ、患者の治療や薬に対する不安や疑問に応えられる機会を設けることが大切です。

 

2-3、医師と患者のコミュニケーションをサポート

関節リウマチの治療は、症状をコントロールする→関節破壊の進行を抑える→身体の機能障害を予防する→QOL(生活の質)を向上させ、職場に復帰するなど社会活動ができるようになる…という風に目標を掲げて段階的に進めていく流れが想定されます。

リウマチについて

出典:リウマチについて 医療法人社団星輝会松原リウマチ科・整形外科

 

各段階において目標を達成するために、腫れや痛みのある関節の数や血液検査の数値、医師の評価、患者の自己評価などから病気の活動具合を判断して、薬の調整などを図っていきます。

このような段階を踏んで治療を進める際には、医師と患者のコミュニケーションが円滑にとれていることが、不可欠となります。看護師には、両者のコミュニケーションを進めるためのサポート役を果たすことも、求められます。

 

2-4、チーム医療のコーディネート

関節リウマチの痛みを取り除くためには、薬物療法や手術のほか、地道なリハビリを続けていくことも重要です。生活動作をスムーズにする方法や関節への負担を軽くするための姿勢や道具などの取り入れ方など、自立した日常生活を送るための術は作業療法士が指導します。

少しでも円滑に療養生活を送れるように、このような専門の医療スタッフも巻き込んで患者をサポートするチーム医療の充実が求められます。

患者と身近に接する看護師として、患者がリハビリや日々の生活面について悩みを抱えていたり、困っている様子を察したら、きちんと相談に乗った上で的確な助言が期待できる専門スタッフに引継ぎができるように、コーディネートしましょう。

 

2-5、患者の精神面をサポート

リウマチは働き盛り世代の女性の罹患率が高く、リウマチになったことで戸惑い苦しみ、仕事や結婚など自身の人生設計に不安を感じるケースも見受けられます。このような患者の気持ちを汲み取った上でケアにあたることも、重要なことです。

関節リウマチは、患者が病気と向き合う姿勢によって治療の成否も影響されると言われます。関節リウマチと向き合いながら仕事や家事、子育てをこなしたり、社会生活に積極的に参加する患者もたくさんいますので、患者が冷静にリウマチと向き合い、付き合っていけるような心構えを持てるように、精神的サポートを心がけましょう。

 

まとめ

関節リウマチと闘うには、息の長い治療や地道なリハビリなどに取り組む姿勢が必要となりますので、治療面だけでなく患者の日常生活や社会生活、精神面など多様な分野でケアがカギとなってくる可能性があります。

時には患者と医師、チーム医療スタッフとのコーディネーター役になったり、時には相談役になったりと、看護師の果たす役割も多岐に渡ります。少しでも早く患者が寛解状態に近づけるように、そして身体的な機能の回復だけでなく社会的な復帰が実現できるように、さまざまな役割を買って出てサポートしましょう。

普通の大学生になりたい。バイトして好きなこといして、自分のQOL高めたい|看護師あるある【vol.53】

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看護学生の生活
看護学生って、なんでこんなに辛いんだろう。

 

学校で毎日みっちりと勉強して、課題して

病院実習なんて始まってしまったら、それこそ自由なんてないから。

早朝に病院へ向かい、今日やることの予習をあらかじめ行う。そして夕方長い実習がようやく終わり、家に帰るとレポート、明日の予習。

休みの日は、体力回復のために昼過ぎまで寝る。気づいたら休みが終わり、また月曜日から病院実習がはじまる。

これのどこにゆとりがあるのだろうか?

 

同級生だったみんなは、大学でサークルやらバイトやら恋愛、飲み会。なんだかすごく楽しそう!

マジで、自分のQOL(クオリティーオブライフ)高めたい!

自分のQOLが低すぎて、看護学生辛すぎる・・。

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