Quantcast
Channel: ナースのヒント|明日のヒントが見つかるWebメディア
Viewing all 681 articles
Browse latest View live

骨粗鬆症の看護|治療における各種療法と骨折予防のための指導

$
0
0

骨粗鬆症

骨粗鬆症の多くは生活習慣が関与しているため、その場で治療が終わればそれで終わりというわけにはいきません。看護しているうちから食事内容や適切な運動について正しい知識と実践方法を伝え、患者に治療終了後も骨粗鬆症にならない生活を継続してもらえるように指導することが重要です。

本記事では、骨粗鬆症の基本的な知識や、治療法・治療薬、看護目標、生活指導、看護研究についてまとめました。骨粗鬆症を繰り返させないように、患者への適切な指導を行いましょう。

 

1、骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は骨の中の隙間が多くなって骨が脆くなる症状で、多くは加齢に伴い発症します。骨粗鬆症になると骨折をしやすくなり、また運動機能低下に繋がり、日常生活を困難にします。国内での罹患者は1,300万人近くにのぼります。

 

1-1、骨粗鬆症の骨について

骨は、外側を構成する硬くて緻密な「皮質骨」と、内側を構成する網目状でスポンジのように見える「海綿骨」から成り立っています。骨粗鬆症の骨は、この海綿骨の網目の隙間が多くなる病気で、骨の強度が低下し、骨折しやすくなります。

海綿骨と皮質骨健常骨と骨粗鬆症の椎骨

出典:女性の病気特集 骨粗鬆症 意気健康(学校法人日本医科大学)

 

2、骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症は、骨を作る働き(骨形成)と骨を壊す働き(骨吸収)のバランスが崩れることが原因です。

骨は日々「骨芽細胞」によって作られ、「破骨細胞」によって壊されることを繰り返し、新陳代謝を行っています。これを「骨のリモデリング」と呼び、一般には1年間に20~30%の骨が新陳代謝により入れ替わります。

骨の量は成長期とともに増加し、18歳でピークを迎えたあと、40歳を過ぎた頃から減少が始まり、高齢になるほど減少していくことが分かっています。

骨粗鬆症では何らかの原因で骨が作られる量よりも骨が壊される量の方が多くなってしまい、骨量が普通以上に減少してしまう状態にあります。

 

3、骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症の治療は、骨密度を維持するための食事療法、骨に刺激を与えるための運動療法、そして薬物療法にて行います。

 

■食事療法

食事療法は基本的には十分なビタミンD及びカルシウムの摂取です。看護する時は患者の食事内容、食事摂取量、身長・体重・BMIによる栄養状態の確認などを行います。

 

■運動療法

運動療法においては無理のない範囲で軽い運動を行います。骨粗鬆症患者は骨が弱くなっているので、骨に過度の負荷をかけるとそれが原因で骨折してしまいます。あくまで骨に刺激を与えることを目的に、患者の体格や骨密度を確認しながら適切な運動を実施してもらいます。

 

■薬物療法

薬物療法で用いる薬物は副作用が強いものが多いので、看護時に注意深く観察する必要があります。骨粗鬆症治療薬として治療効果の高いビスホスホネート系製剤は、継続して服用した患者が歯科の外科的処置を行うと顎の骨が壊死することが知られ、また消化器系に障害が発症する場合があります。

注射剤のテリパラチドは血中尿酸値上昇、頭痛、悪心、食欲不振などの副作用があります。あまりに副作用が強いようであれば、使用する薬物の見直しが必要になりますので、看護の際には患者の様子を注意深く観察することが重要です。疼痛がある場合は疼痛を和らげる指導、治療も行います。

 

4、骨粗鬆症の内服薬と注射剤

骨粗鬆症の薬物療法には、骨を作る骨芽細胞に働きかけて骨の形成を促進するタイプの薬と、骨を壊す破骨細胞に働きかけて骨の破壊を抑制するタイプの薬の2種類が使用されます。主に内服薬が使用されますが、寝たきりなどで内服が困難な患者には注射剤を使用します。

 

4-1、骨粗鬆症の内服薬

骨粗鬆症の内服薬としては、ビスホスホネート、ラロキシフェン、ビタミンD3製剤が用いられます。

 

■ビスホスホネート

ビスホスホネートは破骨細胞の活動を阻害する強力な骨吸収抑制剤であり、大腿骨頸部骨折の抑制や既存骨折のある骨粗鬆症に有効です。

 

■ラロキシフェン

ラロキシフェンは選択的エストロゲン受容体調節薬であり、閉経後の骨粗鬆症治療薬として第一選択に挙がる骨吸収阻害剤です。ラロキシフェンは大腿骨頸部骨折に対する抑制作用は弱いものの、脂質代謝改善、乳がん発症抑制、服用時間に制限がない、などビスホスホネートにはない利点があります。

 

■ビタミンD3製剤

ビタミンD3製剤は腸管からのカルシウム吸収を促進させる作用を持ち、カルシウムと天然型ビタミンDとの併用で骨粗鬆症治療に効果を示します。ビタミンDは筋力低下による転倒を防止する効果も報告されており、ビタミンDは筋力向上に働いている可能性が示唆されています1)

 

ビスホスホネートとラロキシフェンの比較≫

  ビスホスホネート ラロキシフェン
長所 ・   大腿骨頸部骨折抑制作用

・   既存骨折のある骨粗鬆症に有効

・   脂質代謝改善作用

・   乳癌発症抑制

・   服用時間に制限無し

短所 ・   消化器系副作用の発症

・   早朝内服

・   大腿骨頸部骨折抑制作用弱い?

・   血栓症、血栓性静脈炎、下肢痙攣のリスク

・   更年期障害(ほてり)の増強?

選択 既存骨折あり

主に骨折予防に期待

既存骨折なし

骨以外の作用にも期待

引用:骨粗鬆症治療薬の選択 日産婦誌58巻9号 2006年

 

4-2、骨粗鬆症の注射剤

骨粗鬆症の注射剤として適応があるデノスマブ、アレンドロン酸ナトリウム水和物、テリパラチドをご紹介します。

 

■デノスマブ

デノスマブは破骨細胞の形成・機能・生存に対して重大な役割を持つタンパク質(RANKリガンド)を標的とするヒト型モノクローナル抗体です。

 

■アレンドロン酸ナトリウム水和物

アレンドロン酸ナトリウム水和物はビスホスホネート製剤に分類される薬剤で、破骨細胞の活動を阻害して骨の吸収を抑制します。

 

■テリパラチド

テリパラチドはヒト副甲状腺ホルモン製剤であり、骨の形成を促進する働きを有しています。

骨粗鬆症に用いられる注射剤

出典:骨粗鬆症に用いられる注射剤について 鹿児島市医報 2013年

 

5、骨粗鬆症の看護目標

骨粗鬆症の看護目標は、骨粗鬆症の合併症である骨折の予防と治療を行い、骨格の健康を維持して日常生活の活動性を維持させることです。骨折してしまった場合は疼痛のケアも必要となります。

骨粗鬆症骨折は変形治癒してしまうと慢性の疼痛を発生させる要因になります。さらに骨折の変形治癒は骨格の障害となり、疼痛とは関係なくQOLを低下させることが明らかになっています2)

 

6、骨折防止のための生活指導

生活習慣病が起因している骨粗鬆症患者に対しては、生活習慣の見直しや注意点について詳細に指導を行います。

まず、毎日の食事で良質のカルシウムを十分量摂取することの重要性やリン、ナトリウム、カフェインなどカルシウムの吸収を阻害する成分の摂取を控えることを指導します。また、運動することで骨が刺激され、カルシウムの骨への吸着が促進されることを納得してもらい、定期的な運動を自律的にしてもらうようにします。

骨粗鬆症患者は骨折しやすいので、日常動作で骨折の危険がある行動は見直してもらいます。骨粗鬆症患者で発生しやすいのは、転んだ拍子にお尻をぶつけて太腿の付け根を骨折する「大腿骨頸部骨折」、転んだ拍子に手を付いて手首を折る「橈骨遠位部骨折」、重いものを持ち上げて腰の骨を折る「椎体骨折」などです。

骨粗鬆症と骨折

出典:骨粗鬆症と骨折 岐阜大学医学部 整形外科

 

転びさえしなれば「大腿骨頸部骨折」や「橈骨遠位部骨折」は滅多に起きないので、転ぶ危険のある雨天時の外出や足元が見えない状態(お盆を持っているなど)での移動などをしないように指導します。

「椎体骨折」を防ぐため、物を持ち上げる時は腰からでは無く膝を落として持ち上げるなどボディ・メカニクスに則した腰骨に負荷の少ない物の持ち方を教えるとともに、重いものは持ち上げないように指導します。

すでに骨折をしてしまった患者に対しては、骨折部位の疼痛を抑えるために疼痛の軽減を助ける寝具の使用や工夫、コルセットの使用などを薦めます。

「大腿骨頸部骨折」や「橈骨遠位部骨折」の患者の場合は痛みから身体の動作が制限され、運動不足になって便秘になることがありますので、その場合は便秘を解消・予防するための食品や、痛みの発生させずに可能な運動方法などを指導します。

 

7、骨粗鬆症の看護研究

骨粗鬆症の患者には治療の間、食事・運動・日常生活について医師や看護師などから改善指導が行われます。しかし、実際に日常生活で指導内容が生かされているかどうかは患者の自主性に任せるしかありません。

ここでは、骨粗鬆症患者の指導内容がどの程度日常生活で生かされているのか調査した研究3)をご紹介します。

当研究は骨粗鬆症で外来通院している患者にアンケート調査を行ったもので、骨粗鬆症教室の受講者73名(A群)と実受講者54名(B群)で比較しています。アンケート内容は「食事」「運動」「日常生活」についてで、50代、60代、70代の年代別に分析されています。

その結果、「食事」についてはA群の乳製品・小魚などカルシウムの多い食品を意識的に摂取している人数がB群に比べて有意に多いことが判明しました。「運動」については、B群が「スポーツジムに通う」「リュックサックを背負う」などの項目でA群に比べて人数が有意に多いという結果でした。「日常生活」については、A群が「約束の時間に余裕を持って行く」「道路の端を歩く」などの項目でB群よりも人数が有意に多いという結果でした。

下図は、「食事」「運動」「日常生活」の指導内容を自分の生活に生かしていた人数の割合を年代別に示したグラフです。

骨粗鬆症と骨折

出典:骨租擬症患者における教育後の継続性についての検討 上西祥子 他 1999年

 

調査の結果から、食事は指導が生かされていたものの、運動については指導が生かされていないことが判明しました。一方で、運動については下表のような結果も出ています。

骨租擬症患者における教育後の継続性についての検討

出典:骨租擬症患者における教育後の継続性についての検討 上西祥子 他 1999年

 

表を見ると、運動歴がある人は運動を継続している割合が高いことが分かります。食事のように食べる内容を変更するだけで実践できるものと違い、運動は気力と体力が必要なために実践の敷居が高いことが推測できます。

 

まとめ

骨粗鬆症は特に高齢の女性に発症しやすい病気で、骨折やその後の変形治癒による骨格の歪みなどで運動機能障害や疼痛を発生させ、QOLを低下させるやっかいな病気です。

原因は骨吸収と骨形成のバランスが崩れて骨密度が低下することにありますが、生活習慣病として発症するケースも多く、食生活や運動などを改善しないと予後不良となってしまいます。

治療する時は「食事」「運動」「薬物療法」を併用しますが、看護の時に食事量、適切な運動、薬物による副作用の有無などを細かく指導・観察することが求められます。

 

参考文献

1)Bischoff H, et al. Effects of vitamin D and calcium supplementation on falls : A randomized controlled trial. J Bone Miner Res 2003 ; 18 : 343―351

2)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版, ライフサイエンス出版, 2011年: p52

3)上西祥子:骨租擬症患者における教育後の継続性についての検討, 大阪市立大学看護短期大学部紀要, 1, P18~23, 1999.


WBCは野球じゃなく白血球|看護師あるある【vol.54】

$
0
0

看護師用語

WBCの季節がやってきた!世間では、WBC,WBCってにぎわっているみたい。

しかし、私たち医療従事者からするれば、WBC=ワールドベースボールクラシックではありませんから!!

WBC=ホワイトブラッドセル(白血球)なので、そこの所よろしくね!

 

世間が当たり前のように使っている言葉が、看護師たちにとっては全く違う意味になってしまう。

いちいち、糖尿病をDMと言ったり、虫垂炎をアッペと言ったり

もうね、一般人との会話に少し気を使ってしまって、頭の中で通じる言葉に変換するのが大変なのよ。

 

看護師などの医療従事者が、世間の常識とかけ離れて行くのがわかります。ええだって、医療界の日常はきっと非常識すぎて、世の中の人に伝わる気がしないもの・・。

クリティカルケア看護|定義や看護師の役割、キャリアアップ方法

$
0
0

クリティカルケア看護

クリティカルケア看護という言葉を聞いたことがありますか?クリティカルケア看護は、2000年以降になって注目を集めるようになった看護領域の1つです。

当ページでは、クリティカルケア看護の定義や意味、クリティカルケア領域での看護師の仕事、キャリアアップの方法について解説しています。また、クリティカルケア看護をさらに深めたい方のために、クリティカルケア看護学会の情報もまとめました。

 

1、クリティカルケアの定義や意味

クリティカルケアとは、疾病や外傷、侵襲の大きな手術などで生命の危機に瀕している患者への看護のことです。

「クリティカルケア」というとわかりにくいかもしれませんが、「重症集中ケア」というとイメージしやすいと思います。クリティカルケアは「急性期」かつ「重症な」患者への看護ですので、具体的には、ICUやCCU、救命救急センターで行われているような看護がクリティカルケアと言えるでしょう。

クリティカルケアは、日本よりも先にアメリカで発展した看護領域で、アメリカのクリティカルケア看護師協会(American Association of Critical-Care Nurses : AACN)は1969年に誕生しています。

その後、医療の発達とともに今までは助からなかった命が助かるようになり、集中治療の現場では、看護師にも高度先進治療や全身管理についての知識や経験が求められるようになったため、日本でも少しずつクリティカルケア看護の重要性が認識されるようになりました。

今まではICUやCCU、救命救急センターだけでクリティカルケアが行われてきましたが、急性期の一般病棟や手術室、救急外来、在宅医療の場でもクリティカルケア知識や経験が必要とされるようになってきています。

クリティカルケアは重症集中看護、急性期看護、周手術期看護、救急看護、在宅医療、終末期看護にまでまたがって、幅広く使われる看護領域なのです。

 

2、クリティカルケアの看護師の仕事と役割

クリティカルケアの看護師の仕事や役割を説明していきます。クリティカルケアが必要とされる場面では、患者は命の危機に瀕しています。そのような時、医師は患者の命を救うことだけに全力を傾けますが、看護師は違います。

患者の身体的な問題だけを扱うのではなく、全人的なかかわりを通してのケアが必要になりますので、精神面や社会面の問題への看護も行います。また、クリティカルケアでは命の危機に瀕した患者の看護だけではなく、その家族の看護もとても重要になるという特徴があります。

 

≪クリティカルケア看護の役割≫

・   異常の早期発見

・   患者の生命維持、生理的機能回復ための全身管理

・   苦痛の緩和

・   セルフケア能力の回復

・   家族への支援

・   患者や家族の倫理的な擁護者

 

クリティカルケア看護の役割を見てわかるように、クリティカルケアだからといって、特別な看護をするわけではありません。

患者の重症度は高く、命の危機に瀕しているために、異常の早期発見や全身管理の比重が大きくなるものの、基本的な看護師としての役割は、他の看護領域と同じで、看護の本質的な部分に変わりはありません。

 

3、クリティカルケア看護のキャリアアップ

クリティカルケア看護におけるキャリアアップの方法には、急性・重症患者看護専門看護師、救急看護認定看護師、集中ケア認定看護師の3つがあります。

 

3-1、急性・重症患者看護専門看護師

急性・重症患者看護専門看護師は、日本看護協会が認定している資格で、日本におけるクリティカルケア看護の頂点の資格であり、クリティカルケア看護の専門家と言える資格です。2004年に「クリティカルケア看護」分野として特定されましたが、2007年に「急性・重症患者看護」と名称が変更されました。

急性・重症患者看護専門看護師になるためには、実務経験が通算5年以上(うちクリティカルケア看護での経験が3年以上)あり、看護系大学院の修士課程で、専門看護師教育課程基準の所定の単位(26単位または38単位)を取得する必要があります。修士課程を修了後、認定審査に合格して登録すると、急性・重症患者看護専門看護師になることができます。

 

3-2、救急看護認定看護師

救急看護認定看護師は日本看護協会が認定している資格で、クリティカルケアの中でも救急看護の分野に興味がある看護師さんにおすすめです。救急看護認定看護師になるためには、5年の看護師経験があり、さらに次の3つの条件を満たす必要があります。

 

1.   通算3年以上、救急部門での看護実績を有すること

2.   救急部門において、CPA・重症外傷・意識障害・呼吸不全・循環不全・中毒・熱傷患者等の看護の中から5例以上担当した実績を有すること

3.   現在、救急部門で勤務していること、または救急部門での勤務が予定されていること

 

さらに、救急看護の認定看護師教育機関で6ヶ月以上660時間(+15時間)の研修を受け、認定審査に合格すると救急看護認定看護師になることができます。

救急の看護に必要な役割と資格|認定看護師とは

 

3-3、集中ケア認定看護師

集中ケア認定看護師は日本看護協会が認定している資格で、資格取得後は研究よりもとにかく臨床にこだわりたい方や、急性・重症患者看護専門看護師は修士課程を卒業しなければいけないのでハードルが高いと思っている方におすすめです。

集中ケア認定看護師になるためには、5年の看護師経験があり、さらに次の3つの条件を満たす必要があります。

 

1.   通算3年以上、集中ケア部門、または小児集中ケア部門(手術室・NICUは除く)での看護実績を有すること

2.   疾病、外傷、手術などにより高度に侵襲を受けた患者の看護を5例以上担当した実績を有すること

3.   現在、集中ケア部門で勤務していることが望ましい

 

この3つの条件を満たして、認定看護師教育機関で6ヶ月以上630時間(+30時間)の研修を受け、認定審査に合格すると、集中ケア認定看護師になることができます。

 

4、日本クリティカルケア看護学会について

クリティカルケアに関する知識を深めていきたい、さらに学びたいという看護師さんは、日本クリティカルケア看護学会の会員になることをおすすめします。(コチラから申し込みできます)

一般社団法人日本クリティカルケア看護学会は、2004年にクリティカルケアに携わる看護職が中心となって、クリティカルケア看護学の確立と発展を目的として設立された学会で、2016年8月時点で正会員数は1608名となっています。

年に1回の学術集会が開かれるだけでなく、クリティカルケアに関連する教育セミナーなどが開催されていますので、クリティカルケアについて学びたいと考えている看護師さんは、日本クリティカルケア看護学会の会員になって、積極的に学術集会や教育セミナーに参加すると良いでしょう。

学会に参加することで、専門的な知識を学べるだけでなく、他の病院でクリティカルケアに携わる看護師さんと交流できますので、いろいろな刺激を受けることができるはずです。

 

まとめ

クリティカルケア看護は、医療が進歩していく中で、今後さらにニーズが高まる看護領域と言えます。また、救急やICUなど医療施設内での勤務に止まらず、災害看護など外部でも非常に役に立つ知識・技術です。

クリティカルケア看護に関する書籍が数多く出版されていますので、認定看護師への挑戦や看護学会への入会において敷居が高いと感じている方は、まずは書籍で理解を深めてみてはいかがでしょうか。

自分の体調管理もできないのに、他人を看護なんてできない|看護師あるある【vol.55】

$
0
0

看護師体調管理
看護師業務の中に、患者の体調管理がある。

しかし、日々のハードワーク。そして、風邪などのウイルスをもらうリスクにさらされた環境によって、体調を崩してしまうこともちょいちょいある。

さらに、ギリギリの人数で回している医療現場は、休むことなんてそうそう許されない。

体調が悪くなったら、とりあえず病院(職場)で診察を受けに出勤しなければならないという、過酷な状況が待っている。

なので、仮病なんて通じない。「体調が悪くなったので休みます」なんて言うと、「とりあえず病院(職場)に受診して」と言われる。

「自分の体調管理が出来ていないのに、他人の体調管理なんてできるわけがない!!」

本当にこれは名言ですね。

実習中は過食になるか拒食になるか|看護師あるある【vol.56】

$
0
0

看護実習中食事
看護学生辛すぎる!

ストレスがたまり過ぎて、おかしくなりそう!

 

暴飲暴食でストレス解消するしかないよ。食べないとやっていけないよ。

こんなんじゃ、自分保てないからとにかく食べて、食べて、食べまくるしかないよ!

そして、実習が終わるころには確実に太ってしまう・・。

もしくは、過食に走れるのはまだマシで、食べる意欲まで失ってしまうと、もう本当に重症。

何もやる気がしない。ただただ自分を押し殺して、日々の実習を乗り越えていくようになると、もう食欲すらわかないから・・。

看護学生の病院実習が始まると、ストレスで過食に走るか、拒食になるか極端な事態が学生間で頻発してしまうので、どれだけ看護学生が大変なのか、理解して欲しい。

指導者の質問が恐怖|看護師あるある【vol.57】

$
0
0

看護指導者質問
看護師は仕事をしていく上で、先輩たちにいつ何を突っ込まれても良いよう、常に万全の体制を取っていなくてはなりません。

 

勉強不足=それは「死」にあたいするくらいの恐ろしい地獄が待っています。

「根拠は?」

「ちゃんと調べたの?」

これらに対抗するための万全な知識を持っていなければ、宿題が待っています。

そして翌日「昨日のあれ、ちゃんと調べてきた?」という質問が必ずやってきます。

家でちゃんと暗記して、この質問に上手く答えなければ、あとあとすごく気まずくなります。そして、あの子は勉強して来ない!あの子には仕事を任せられない!という恐ろしいレッテルが張られてしまいます。

質問に答えられないということは、ただただ地獄しか待っていないのです。なので看護師の仕事は、日々勉強だと思います。

落屑の看護|高齢者など落屑の多い患者に対する看護問題と皮膚ケア

$
0
0

落屑の看護

高齢の患者に多い落屑は、命にかかわる問題ではないものの、皮膚の損傷のリスクを上げるものですので、積極的な看護介入が必要です。

また、落屑とは乾燥で皮膚の角質が剥がれ落ちたものなので、皮膚の乾燥に対する看護計画を立てて、ケアを行うことで、皮膚の損傷を予防することができます。

 

1、落屑とは

落屑とは、皮膚の表面が剥がれ落ちたものです。皮膚の垢のようなものと思ってください。

皮膚の構造

出典:皮膚がんのお話 利根保健生活協同組合 利根中央病院

 

皮膚の構造は、皮下脂肪からなる皮下組織の上にコラーゲンやエラスチンなどから構成される真皮があり、さらにその上に表皮がある三層構造になっています。

表皮はたった0.3mmしかない薄い組織ですが、基底層、有棘層、顆粒層、淡明層、角質層という5つの層から成り立っていて、角質層はいちばん外側の組織になります。

角質層は皮膚の層が薄く重なり合っていて、まるでパイやクロワッサンのように積み重なっていますが、少しずつ剥がれ落ちていくことで、皮膚が生まれ変わっていきます。落屑はこの角質層が乾燥して、ポロポロと剥がれ落ちたものなのです。

 

2、落屑の原因

落屑の原因は乾燥です。落屑は角質層が剥がれ落ちたものですが、健康な人でも角質は少しずつ剥がれ落ちて、皮膚が生まれ変わります。しかし、健康な人は落屑のようにポロポロと剥がれ落ちることはありません。

健康な人の皮膚と落屑がある人の皮膚の最大の違いは、乾燥です。落屑がある人は皮膚が極度に乾燥しているため、ポロポロと角質層が剥がれ落ちてしまいます。肌が乾燥すると白く粉が吹いたようになることがありますが、落屑が起こる皮膚はそれがさらにひどくなった状態です。

皮膚が極度に乾燥しているために、パイのように積み重なった角質層はボロボロになって、どんどん剥がれ落ちていきます。そうすると、肌の表面を守る角質層が失われますので、肌のバリア機能が低下して、さらに乾燥が進み、どんどん落屑が起こるようになります。

 

落屑の原因 落屑を起こす疾患
年齢によるもの 高齢者 年齢による皮膚の乾燥、老人性乾皮症
新生児 新生児落屑
皮膚疾患 アトピー性皮膚炎、紅皮症、乾癬、脂漏性皮膚炎
小児疾患 川崎病(膜様落屑)

 

これらの落屑の原因の中で最も多いのが、高齢者の年齢による皮膚の乾燥や老人性乾皮症です。高齢者は加齢が原因で皮膚表面の皮脂膜や角質層の細胞間脂質、天然保湿因子が減少するので、皮膚が乾燥して、落屑が起こりやすくなるのです。

 

3、落屑の看護問題

落屑の看護問題は、皮膚が乾燥していることで、皮膚トラブルが起こりやすいことです。看護診断だと、「皮膚統合性障害リスク状態」になります。

落屑の原因は皮膚の乾燥です。皮膚の乾燥によって、落屑が起こると、角質層が徐々に剥がれていきます。角質層は皮膚の水分を閉じ込めると同時に、外部の刺激から皮膚を守る役割を果たしていますので、落屑で角質層が失われることで、皮膚のバリア機能が低下します。

落屑の看護問題

出典:皮膚そうよう症 上杉皮膚科医院

 

皮膚のバリア機能が低下することで、掻痒感が現れます。落屑によって皮膚のバリア機能が低下すると、ホコリや化学物質、ハウスダストなどのアレルゲンが刺激となって、炎症が起こるからです。掻痒感があると、かき壊してしまって、皮膚を損傷するリスクがあります。点滴やチューブ、ドレーン類を固定するテープが刺激になって、炎症が起こることも珍しくありません。

また、皮膚のバリア機能の低下で、皮膚の乾燥がさらに進むと、皮膚に浅い亀裂が生じることがあります。亀裂が生じることで、皮膚が損傷し、そこから感染が起こることもあります。そのため、落屑がある患者には「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として、看護計画を立てて、看護ケアを実践する必要があります。

 

4、落屑の看護計画

落屑は、「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として、目標を設定し、看護計画を立てていきます。

 

看護目標 ・   皮膚の損傷がない
観察項目

(OP)

・   落屑がある部位

・   全身の皮膚の状態(乾燥・発赤、創傷の有無)

・   疼痛、掻痒感の有無

・   感染の有無

ケア項目

(TP)

・   皮膚の保清

・   皮膚の保湿

・   皮膚の保護

・   皮膚の異常が見られたら、医師に報告する

教育項目

(EP)

・   皮膚の保清・保湿・保護の重要性を説明する

・   皮膚を傷つけないように指導する

・   皮膚に異常が見られたら、すぐに知らせるように説明する

 

5、落屑を呈する患者への看護ケア

落屑では、「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として看護ケアを行う必要があります。落屑で皮膚が乾燥した状態に対するケアは、保清・保湿・保護の3つが基本になります。

 

5-1、皮膚の保清ケア

保清は皮膚の表面についた感染源や異物、ホコリ、刺激物などを取り除くことを目的として行います。落屑がある患者は皮膚が乾燥して刺激に弱くなっていますので、保清をする時は丁寧に愛護的に行わなければいけません。

石鹸は弱酸性の刺激の少ないものを選んでください。一般的な石鹸はアルカリ性のものですが、アルカリ性は洗浄力が強く、皮膚の汚れや感染源、刺激物などをしっかり落とすことができますが、皮膚に必要な皮脂や保湿成分まで洗い流してしまいます。そのため、弱酸性の低刺激のものを選んでください。

そして、石鹸はしっかり泡立てて、泡で皮膚を洗うようにしましょう。皮膚についた落屑を無理に落とす必要はありません。ナイロンタオルなども刺激が強すぎるので使わずに、手と泡で愛護的に洗うようにします。

また、入浴後はしっかり洗い流してください。皮膚に石鹸成分が残っていると、いくら低刺激性の石鹸とはいえども、皮膚への刺激になって、炎症を起こす原因になります。この時にお湯が熱すぎると、さらに乾燥が進みますので、38~40℃のお湯を使いましょう。

 

5-2、皮膚の保湿ケア

落屑の患者の皮膚は極度に乾燥しており、皮膚のバリア機能が低下していますので、保湿剤を用いて皮膚のバリア機能を補う必要があります。

入浴後は必ず保湿を行いましょう。入浴すると、体温が上がって皮膚の水分が蒸発しやすくなっていますし、皮膚表面の皮脂も洗い流され、皮膚が乾燥しやすくなっています。

入浴後はできるだけ早く、15分以内には保湿剤を塗るようにしましょう。保湿剤にはワセリンやオリーブオイル、ヘパリン類似物質、尿素軟膏など様々なタイプのものがありますが、落屑がある時は保湿力が高く、刺激が少ないワセリンやヘパリン類似物質が良いでしょう。保湿剤を塗る時は、皮膚にまんべんなく、擦らずに優しく塗り拡げるようにしてください。

 

5-3、皮膚の保護ケア

落屑の患者に対しては、皮膚の保護も大切です。皮膚を保護は、刺激物や異物、感染源を取り除き、皮膚への刺激をできるだけ低減することが目的になります。

落屑の患者は皮膚が刺激に敏感な状態になっているので、紫外線やホコリ、花粉などのアレルゲンから遠ざけるようにします。また、点滴のルートやドレーンなどを固定するテープは低刺激性のものを使い、はがす時は専用のリムーバーを使うなど、できるだけ皮膚への刺激を少なくするように工夫してください。

患者の爪は短く切っておきましょう。落屑で皮膚が乾燥すると、掻痒感が起こりやすくなります。その時に爪が長いと、かき壊して皮膚を損傷してしまいますので、爪は短く切っておくようにしてください。下着や病衣は肌触りがよく、皮膚への刺激が少ないものを選ぶと良いでしょう。

 

まとめ

落屑の原因や看護問題、看護計画、ケアのポイントをまとめました。落屑は皮膚の乾燥が原因で角質がポロポロと剥がれ落ちる状態のことで、高齢者に多いという特徴があります。

落屑の看護ケアは、皮膚の保清・保湿・保護が重要になりますが、落屑がある皮膚は皮膚のバリア機能が低下していますので、愛護的にケアを行うようにしてください。

人によって言ってることが違う|看護師あるある【vol.58】

$
0
0

看護師指導
なんで先輩によって、言っていることが全然違うのだろうか。

何が真実で、誰を信じれば良いのだろうか・・。

「他の先輩は○○と言っていましたよ」なんて、歯向かってしまったら更に機嫌が悪くなってしまうんでしょ、どうせ。

本当に何が正しいか検証するために他の先輩も巻き込んで、3人で話し合いになることはちょいちょいあるけど、それが気まずいのなんの。

人によって言っていることが違い過ぎて、誰を信じれば良いのかわかりません。

結局、先輩の教えも全て鵜呑みにせず、何でも疑問に思ってから、ちゃんと自分で調べてなくてはいけないのですね。

色々なやり方があるので、自分のやり方を見つけて行きたいと思います。そして、先輩たち!どうか、言っていることを統一して下さい!私たち混乱してしまいますので。


CO2ナルコーシス患者の看護|観察項目と具体的なケアのポイント

$
0
0

CO2ナルコーシス看護

普段、私たちは無意識に呼吸をしています。息を吸って吐くことで、生命活動に必要な酸素を体内に取り入れ、不要となった二酸化炭素を排出しています。

通常、体内の酸素と二酸化炭素の濃度は呼吸によって調整されていますが、疾病等により酸素と二酸化炭素のバランスが崩れてしまうことがあります。呼吸機能の障害は、死に直結する可能性が高く非常に危険です。

ここでは、呼吸機能の障害により引き起こされるCO2ナルコーシスの病態や治療、看護ケアについて説明したいと思います。

 

1、CO2ナルコーシスとは

高炭酸ガス血症により意識障害や中枢神経障害を生じることを「Co2ナルコーシス」と言います。高炭酸ガス血症とは、何らかの原因により二酸化炭素の排出が不十分となり、血中の二酸化炭素濃度が上昇した状態のことです。

重篤の場合は自発呼吸が抑制され、呼吸困難に陥ることもあり、ナルコーシス(Narcosis)は昏睡状態を意味しています。

 

2、CO2ナルコーシスの原因

CO2ナルコーシスの原因は様々ですが、肺の器質的疾患を有している場合が多く、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)や気管支喘息、結核等が原因となる場合があります。また、呼吸器感染症や、うっ血性心不全、手術による侵襲、気胸等が誘因となり引き起こされることもあります。

 

肺気腫

酸素と二酸化炭素のガス交換を担う肺胞が破壊され、呼吸機能が低下し、体内に必要な酸素を取り込むことが困難になる疾患です。主な症状は、息切れ、咳、痰で体動時に呼吸困難を呈する場合もあります。最も多い原因は喫煙で、遺伝子的要素が重なり発症すると考えられています。

 

慢性気管支炎

持続性または反復性の痰を伴う咳が、少なくとも毎年3カ月以上続き、その症状が2年以上続いてみられる場合を慢性気管支炎と言います。喫煙や排ガス、大気汚染などが主な原因と考えられており、症状は咳や痰、悪化すると息切れや呼吸困難を引き起こすことがあります。

 

気管支喘息

気管支の慢性的な炎症により、発作性の咳や痰、喘鳴や息切れを生じるものを気管支喘息と言います。ダニやハウスダスト等のアレルギーが原因とされ、重症発作になると呼吸困難によるチアノーゼや意識障害を引き起こすことがあります。

気管支喘息患者に対する看護目標・看護計画と具体的なケアの方法

 

結核

結核菌により引き起こされる感染症で、咳や痰、発熱などの感冒様症状を呈します。感染しても症状を発症することは少ないですが、体力や免疫力の低下により発症する可能性があります。進行すると喀血や呼吸困難をきたし、死に至る場合もあります。

 

3、CO2ナルコーシスの症状

高炭酸血症になると、頭痛や振戦、傾眠等の症状が出現し、特に体温に関係なく著明な発汗がみられ、頭痛は頭蓋内圧が亢進されることにより引き起こされます。

高炭酸ガス血症により二酸化炭素濃度が高い状態が続くと、呼吸中枢や神経中枢を抑制し自発呼吸を弱めてしまうため、さらに換気機能が悪化し、血中の二酸化炭素が上昇するという悪循環となり、最終的には意識障害や昏睡状態に陥ってしまいます。

患者の症状や病歴、動脈血ガス分析、胸郭X線写真などにより診断が行われますが、慢性閉塞性肺疾患の患者では血中の二酸化炭素濃度が高くなっても、意識障害を伴わないケースもあるため注意が必要となります。

 

4、CO2ナルコーシスの治療

CO2ナルコーシスには以下の治療方法があります。

 

低濃度、低流量酸素投与

低濃度、低流量で酸素投与を行います。呼吸機能では通常、体内の酸素濃度が上昇すると換気が減少し、酸素濃度が低くなると換気が増加します。そのため、一度に高濃度の酸素を多量に投与すると、血中の酸素濃度が上昇し呼吸が抑制されてしまいます。さらなる呼吸状態の悪化を防ぐためにも、酸素濃度や流量に注意し投与する必要があります。

 

人工呼吸管理

鼻マスクや顔マスクにより人工呼吸を行います。意識障害や呼吸停止を伴う場合は、気管挿管による人工呼吸を行います。

 

5、CO2ナルコーシスの看護目標

CO2ナルコーシスにおける看護の目標は、呼吸状態が安定し、心身の苦痛が軽減されることです。呼吸状態が悪化すると、日常生活動作が制限されるだけでなく、生命の危機に陥る可能性も高いため、患者の精神的苦痛も増強されることが予測されます。

患者の全身状態を観察しながら、個々の患者に合った看護ケアを計画していきましょう。加えて、CO2ナルコーシスの原因となる基礎疾患や誘因となった疾患への治療も、薬物療法等により併せて行っていきます。

 

6、CO2ナルコーシスの観察項目

呼吸機能が低下すると生命の危機にさらされることになります。特に頭痛や発汗などの症状がみられた場合は、重篤な状態に陥る危険性があるため、迅速なアセスメントと対応が必要となります。

個々の患者の状態を十分に観察し、患者の全身状態を把握することが大切です。意識障害が出現している場合や全身状態が悪化している場合は、自覚症状を訴えることができないため、より全身状態の観察が重要となります。

 

観察項目 ・   バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、SPO2など)

・   呼吸状態(回数、リズム、深さ、胸郭の動き、肺音)

・   呼吸困難の有無(喘鳴、チアノーゼ、爪、粘膜の色調など)

・   発汗の有無

・   CO2ナルコーシスに伴う症状、自覚症状の有無

・   神経症状、意識レベル

・   検査データ(胸部写真、血液検査、血液ガス分析など)

・   精神状態

・   ADL、安静度

 

7、具体的な看護ケア

CO2ナルコーシスを発症した患者には、①酸素療法および人工呼吸管理、②薬物療法・点滴管理、③喀痰喀出のための援助、④室温調節等の環境整備、⑤安静保持や体位への援助、⑥不安の緩和、⑦ADLに対する援助、などのケアを包括的に行っていきます。

呼吸は生命に関わるものですので、綿密な観察の上、細やかなケアを実施していく必要があります。

 

①酸素療法および人工呼吸管理

医師の指示に従って、酸素濃度や流量、人工呼吸器の管理を行います。

人工呼吸器|適切な吸引実施のための看護計画と観察項目

 

②薬物療法・点滴管理

指示された薬剤が確実に投与されるよう管理しましょう。

 

③喀痰喀出のための援助

喀痰は喀出できないことにより、呼吸状態に影響を及ぼす可能性があるため、患者が自分で喀痰の喀出ができない場合は援助が必要です。

 

④室温調節等の環境整備

室温や室内環境も呼吸状態に影響を与える要素のひとつです。適宜換気を行いクリーンな環境を維持できるよう援助していきましょう。

 

⑤安静保持や体位への援助

呼吸や全身状態により安静度が制限されます。楽な呼吸ができるよう体位を保持し、少しでも安楽な姿勢を保てるよう援助しましょう。

 

⑥不安の緩和

呼吸は生命の維持に必要不可欠な機能です。呼吸状態の悪化による苦痛や死への恐怖などにより、不安やストレスが増強する可能性がありますので、精神的ケアにより不安やストレスの軽減に努めましょう。

 

⑦ADLに対する援助

安静度の制限や身体的状態によりADLが自分でできなくなることがあります。患者ごとにどのようなサポートが必要か、しっかりとアセスメントし患者に合った方法で呼吸状態に影響しないよう援助していきましょう。

 

まとめ

CO2ナルコーシスは重度になると意識障害や呼吸抑制を引き起こし、死に至ることもあります。呼吸状態が悪いからと言って不用意に高濃度の酸素を投与したり、CO2ナルコーシスを恐れるあまり酸素投与を怠ると、患者が危険な状態に陥ってしまう場合があります。

悪化を防ぐためにも、しっかりと病態を把握し患者の状態を見極めることが大切です。また、万が一のために呼吸抑制に備えた準備をしておくことも重要となります。迅速な対応と適切な看護が提供できるよう、Co2ナルコーシスへの知識を身につけ、理解を深めていきましょう。

4時間仮眠できる日もあれば、オールの時だってある夜勤|看護師あるある【vol.59】

$
0
0

看護師夜勤仮眠
4時間「よっしゃ!ぐっすり寝れたぞ!」

2時間「うん、まぁ、普通ですよね」

1時間「か、仮眠ができるぞ!」

オール「で、ですよねー…」

夜勤での仮眠なんて、全く期待してないよ。だって常に何があるかわからないからね。

もうね、最初からある程度は覚悟しているからさ、4時間仮眠ができるなんて奇跡に近いんだよ。労働時間には、休憩がちゃんと含まれているけど、そんなのいい加減であってないようなものが実態。

平和な夜勤だと、多めに休憩が取れるし、急変の連続に当たってしまったら、オールは覚悟するしかない。

そんなもんです、看護師の夜勤なんて。体力勝負の仕事ですよ。

私たちは、身を削って働いてます!もうオールには慣れていますから、仮眠に期待なんてしてません!

拘縮の看護|原因と種類ごとの特徴および介助者が可能な援助

$
0
0

拘縮の看護

拘縮は重度になると自立した生活がほぼ不可能になるため、介助者の役割が非常に大きくなります。拘縮患者が何に悩み、どんな問題を抱え、どのような援助を必要としているのかを知ることが大切です。

患者の病状次第では生活の全てを介助者に依存することもあるので、看護の質次第で患者のQOLは大きく左右されます。

 

1、拘縮とは

拘縮とは、関節が他動的にも自動的にも可動域制限を起こした状態のことです。拘縮になると、自力でも外部から力を加えても関節を本来の可動域まで動かすことが出来ません。拘縮はADL動作を著しく阻害し、自立した生活を困難にするために早期の治療が必要です。

 

2、拘縮の原因と種類

拘縮になる原因は複数あり、医学上の種類も分けて考えます。

 

種類 原因
皮膚性拘縮 皮膚が火傷や挫滅から回復した時に生じるケロイド・肥厚性瘢痕により引きつれるために関節の可動域が制限される。
結合組織性拘縮 皮下組織、腱、腱膜が損傷し、その後回復した時に損傷箇所が瘢痕になることによって関節の可動域が制限される。
筋性拘縮 筋肉が正常に伸縮しなくなるために関節の可動域が制限される。高齢者の寝たきりにより起きる廃用性の筋委縮、動脈の圧迫などにより筋組織に血液が行き渡らなくなるために筋肉や筋肉を動かす運動神経に障害が発生するフォルクマン拘縮などがある。
神経性萎縮 痙性麻痺や痛みによって起こる反射性の筋緊張により関節の可動域が制限させる。

参考:拘縮 痛みと鎮痛の基礎知識 滋賀医科大学

 

3、拘縮の治療・予防法

拘縮には様々な原因で起こりますが、全ての拘縮に共通しているのは関節の周囲の組織に異常があり、可動域が制限されているということです。したがって、拘縮の治療は関節周囲の組織の異常を取り除くことが中心になります。

 

■皮膚性拘縮と結合組織性拘縮の場合

原因となった箇所は損傷が回復した後であり、それ以上の生体組織としての回復は望めません。したがって、外科手術で拘縮の原因となってしまった組織を除去したり、不足分を補ったりして関節の可動域を広げます。

 

■筋性拘縮と神経性萎縮の場合

筋性拘縮や神経性萎縮においては、積極的に関節と周辺部を動かすリハビリが中心となります。筋性拘縮や神経性萎縮では筋肉や神経が萎縮や損傷した状態であるため、拘縮がある関節を無理のない範囲で動かすことを繰り返し、正常な状態に回復するように働きかけます。

 

3-1、関節可動域運動によるリハビリテーション

具体的な運動方法については医師や理学療法士が指導しながら行い、関節や筋肉を傷めないように注意します。なお、関節可動域運動を行う上での基本は、以下の通りです。(参考:拘縮って何だろう?

 

①拘縮のある関節を温めてから動かす

入浴後などの関節が温まった状態は、関節周りの組織が柔らかく動かしやすくなっており、また痛みを感じにくくなっています。

 

②関節を可動域いっぱいまで動かす

痛みが出ない範囲でゆっくりと可動域いっぱいまで動かします。関節が動かないところまでいったら、少しだけ力を入れて一定時間可動域を広げるように圧力をかけます。3~4回この運動を繰り返し、これを午前と午後の2回行うようにします。

 

③可動域をどこまで広げるか目標を定める

関節の可動域をどこまで広げるか目標を定めます。拘縮になる前の状態まで関節の可動域を広げられるのが最良ですが、拘縮の病状によってはそこまで戻せないこともあります。また目標によってリハビリ時の運動量も変わってきます。医師や理学療法士と相談の上、現実的な目標を定めます。

 

④毎日継続する

拘縮は関節を動かさなければ悪化する一方です。毎日関節を十分に動かすことで、拘縮の症状改善や予防に繋がります。

 

4、拘縮の看護計画

看護目標としては、関節可動域が広がり、痛みが軽減して自力で生活の基本動作ができるようになることです。看護目標の達成のためには患者の自立的な練習が不可欠で、看護師には辛いリハビリに挑む患者の精神ケアが求められます。

患者を看護する際には手足に麻痺は無いか、関節や骨に変形は無いか、その他身体の機能に異常はないか、リハビリの意欲は十分かなど、拘縮のある関節部だけでなく全身状態および精神状態までしっかり観察することが求められます。

なお、看護計画においては拘縮の発症部位や程度によって大きく異なります。以下に「自立した生活ができる場合」と「自立した生活が困難な場合」の2つのケースにおける看護計画を示します。

 

4-1、ほぼ自立した生活ができる場合

片手や片腕など身体の全身運動に関わらない部位に拘縮がある場合は、日常生活は多少不便になるものの歩くことは可能ですし、寝返りなども打てるので自立した生活はほぼ問題なくできます。食事や着替えなども時間をかければ援助なしでも可能です。この場合の看護計画は以下のようになります。

 

・   拘縮部位の疼痛緩和

・   リハビリ継続の精神ケア

・   適切な衣服の脱着支援

・   飲食支援

 

拘縮部位に疼痛がある場合は活動性が低下し、精神的な疲労も蓄積するので、疼痛緩和は緊急の課題です。

拘縮を改善するためのリハビリは時間がかかるもので、効果は少しずつしか現れませんから、患者がリハビリを継続できるように精神的に支え、意欲を持ってリハビリに取り組めるようにする必要があります。

 

4-2、自立した生活が困難な場合

寝たきりが原因で発症する全身の筋性拘縮では重度になると起き上がるどころか寝返りを打つことすらできなくなります。この場合は、食事、睡眠、排便、着替え、入浴など、人間が生きる上で必要なことがスムーズに行えるよう支援することが第一となります。

また、骨粗鬆症患者が転倒して起こしやすい大腿骨頚部骨折による股関節の神経性萎縮も、痛みから歩くことができず、また寝返りや着替えも困難になります。これらの患者の看護は多岐に渡りますが、大きく「生理活動の支援」、「合併症予防」、「QOL改善」、「精神ケア」の4つにまとめることができます。

 

生理活動の支援 ・   安らかな休息、睡眠

・   排尿、排便の介助

・   誤嚥対策

・   安楽な姿勢

・   清潔を保つ

合併症予防 ・   さらなる関節の拘縮

・   筋力の低下

・   運動量低下による骨粗鬆症

・   起立性低血圧

・   全身運動の不足による便秘

・   褥瘡

・   活動性低下による認知症、認知機能低下の進行

・   食事量低下による低栄養

QOLの向上 ・   疼痛軽減

・   補助器具、補助装具の提供

精神ケア ・   リハビリへの意欲維持

・   動けないことの不満解消

・   治療への不安解消

 

重要な点は、心身共に健康的な生活を送らせること、合併症を起こさせないこと、リハビリを継続させることです。特にリハビリの継続なしには回復は無く、症状は悪化する一方ですので、精神のケアは非常に重要です。

 

5、拘縮患者への看護ケア

拘縮の患者に対しては、体が自由に動かないことを前提として看護ケアを行います。

 

■体位変換

重度の筋性拘縮患者の場合は寝返りをうつこともできないので、2時間ごとに体位変換を行い、褥瘡(床ずれ)を防ぎます。患者によって関節部の可動域は異なるので、患者ごとに体位や姿勢を工夫します。

褥瘡(じょくそう)|予防、処置・治療における看護ケア

 

■環境の整備

患者の室内や行動範囲に危険なものが無いか確認し、安全に生活できる環境を整備します。患者に対しても関節が自由に動かないことで起りえる生活上の危険を伝え、患者自ら危険を回避できるように指導します。

環境整備|目標設定・観察をもとにした看護ケアの実践と手順

 

■器具・装具の使用における指導

拘縮患者は自立した生活が困難な場合がありますが、適切な器具や装具(特別な食器、車椅子など)を用いれば介助者なしで行える行動が増えますので、それらを揃え、適切に使えるように指導します。

 

■精神的ケア

リハビリを能動的に実地できるように精神面のケアを行い、拘縮の早期回復を援助します。

 

まとめ

拘縮患者をケアする場合は身体を自由に動かせないことで起りえる褥瘡や転倒などの危険を先回りして防ぐことに注力します。全身が拘縮して生活の全てを介助者に依存する患者の場合は、生きることで起りえる問題の全てに気を配る必要があります。

患者が安心してリハビリに専念できるように環境整備と精神ケアをするとともに、不自由な身体であっても自立した生活ができるように器具や装具などを揃え、患者のQOLを高めるとともに尊厳ある生活ができるよう看護していきましょう。

新人の時は敬意をもって接していたのに、慣れてくるとタメ口で話してしまう|看護師あるある【vol.60】

$
0
0

看護師タメ口

 

本当は良くないのだろうし、後輩の前では気をつけなくちゃいけない。

だけど、やっぱりタメ口の方が患者さんとの距離感が近くなるから、ついついこの口調になっちゃうんだよね。

看護師に成りたての頃は先輩も目を光らせていたし、患者さんとの距離感もよく分からなかった。ちゃんと敬意をもって、綺麗な言葉で接していたよ。

だけどね、この仕事に慣れてきた頃からはタメ口の方が気楽だし、患者さんによっては喜んでくれるから、今は時々使ってしまうんだよね。

親近感わくし、別に悪いだと思ってなんだけど、メリハリつけて使えば大丈夫だと思う。

患者さんも、フレンドリーに接して喜んでくれるし良しとしよう!うん大丈夫!きっとね

掻痒感の看護|掻痒感の原因や看護計画、看護ケアのポイント

$
0
0

掻痒感の看護

掻痒感は苦痛を感じますし、なかなか眠れないなどQOLを大きく低下させるものです。でも、掻痒感はポイントを押さえた看護ケアをすることで、薬剤を用いなくても軽減させることができます。

掻痒感の原因や看護計画、看護ケアのポイントをまとめましたので、これから掻痒感のある患者の受け持ちをする時の看護に活かしてください。

 

1、掻痒感(そうようかん)とは

掻痒感(そうようかん)とは、かゆみのことです。皮膚をこすりたくなる、掻きたくなるような不快な感覚のことですね。

掻痒感を感じると、その掻痒感をなんとかしたくて、皮膚を掻いてしまいます。そうすると、皮膚を傷つけてしまって、さらに掻痒感が強くなるという悪循環に陥ることもありますし、皮膚を傷つけてしまうことで痛みが出たり、炎症が悪化することもあります。

掻痒感はQOLを大きく低下させるものですから、看護介入をすることで、掻痒感を軽減させる必要があります。

 

2、掻痒感の原因

掻痒感の原因は、末梢性掻痒と中枢性掻痒、神経障害性掻痒、心因性掻痒の4つに大別できます。

 

■末梢性掻痒

末梢性掻痒

出典:皮脂欠乏性湿疹 (ひしけつぼうせいしっしん) 病名から探す| 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

末梢性掻痒は皮膚に限局して現れるかゆみのことで、皮膚にある肥満細胞からヒスタミンが分泌されることで起こります。

アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、接触性皮膚炎などが末梢性掻痒の代表的な疾患です。

また、疾患以外でも皮膚が乾燥したり、オムツで皮膚が湿潤することでも、掻痒感が起こります。加齢などが原因で、皮膚表面にある皮脂膜や角質層のうるおい成分である細胞間脂質や天然保湿因子などが減少すると、皮膚が乾燥します。

皮膚が乾燥すると、皮膚表面のバリア機能が低下しますので、ホコリやアレルゲンなどですぐに掻痒感が出てしまうのです。また、ルートを固定するテープや衣類の擦れなどでも掻痒感が出ます。

オムツをしている患者は皮膚が蒸れて浸軟することで、皮膚のバリア機能が低下しますので、オムツの擦れや排せつ物の刺激で掻痒感が出ることもあるのです。

 

■中枢性掻痒

中枢性掻痒は、肝臓での解毒機能の低下や腎臓での排泄障害が原因となり、内因性オピオイドがメディエータとなって、皮膚の真皮深層にある知覚神経を刺激して掻痒感が出てくるものです。

中枢性掻痒を引き起こす原因には、慢性腎障害や肝硬変、硬膜外腔・くも膜下腔オピオイド投与などがあります。

 

■神経障害掻痒

疾患によって神経障害が起こり、掻痒感が生じることもあります。神経障害掻痒は帯状疱疹、多発性硬化症、脳血管障害などが原因で起こります。

 

■心因性掻痒

精神的な問題が原因で、掻痒感が現れることもあります。この心因性掻痒を引き起こす疾患は、寄生虫症妄想や嗜好的掻破行動、うつ病、ストレスなどがあります。

寄生虫症妄想とは、寄生虫に感染している、昆虫やダニ、シラミが皮膚についていると思い込んでしまう病気のことです。寄生虫が皮膚についていると思い込むことで、寄生虫がついていて皮膚がかゆいと脳が勘違いしてしまうのです。

 

3、掻痒感の看護計画

掻痒感があると、皮膚の損傷リスクがあるだけでなく、QOLを大幅低下させるものですので、積極的に看護介入をして、掻痒感の軽減に努めなければいけません。

 

■看護問題

#1掻痒感による苦痛

#2皮膚の損傷による二次感染を起こす可能性

 

■#1掻痒感による苦痛

観察項目

OP

・バイタルサイン

・掻痒感の有無、程度

・痒みの部位

・発疹の有無、大きさ、形、色

・睡眠や日常生活のへの影響

ケア項目

TP

・皮膚の保清

・皮膚の保護

・皮膚の保湿

・リネン類や衣服を清潔に保つ

・環境の調整

・気分転換を図る

・冷罨法

教育項目

EP

・できるだけ掻かないように説明する

・手指を清潔に保つように指導する

・皮膚の保清・保湿方法を指導する

 

■#2皮膚の損傷による二次感染を起こす可能性

観察項目

OP

・バイタルサイン

・皮膚の感染兆候の有無

・血液データ(炎症所見)

・皮膚損傷の有無

・掻痒感の有無、程度

・掻痒感のある部位

・全身の皮膚の状態

ケア項目

TP

・皮膚の保清

・皮膚の保護

・皮膚の保湿

・リネン類や衣服を清潔に保つ

・環境の調整

・感染源からの隔離

教育項目

EP

・できるだけ掻かないように説明する

・手指を清潔に保つように指導する

・皮膚の保清・保湿方法を指導する

・皮膚の異常が見られたら、すぐに知らせるように説明する

 

3-1、掻痒感の看護ケアのポイント

掻痒感がある患者への看護ケアは、皮膚の保清と保護、保湿の3つが基本です。そして、この3つに加えて、患者への指導も大切になります。

 

①皮膚の保清

皮膚を清潔に保つことで、掻痒感を軽減させることができます。皮膚の保清をして、皮膚の表面からホコリやアレルゲン、化学物質など掻痒感の原因となるものを除去するのです。

皮膚の保清は入浴が基本です。入浴時は低刺激性の石鹸を使うようにしましょう。一般的な石鹸はアルカリ性ですが、アルカリ性の石鹸は洗浄力が強いので、皮膚表面の不要物を取り除くことができるのですが、皮脂膜まで洗い流してしまいます。

皮脂膜は皮膚の潤いを守るものですので、その皮脂膜を洗い流してしまうと、皮膚が乾燥し、さらに掻痒感が強くなることがあります。そのため、掻痒感がある時は低刺激性の石鹸を使うようにしましょう。

また、石鹸はしっかり泡立てて洗うようにして、お湯の温度はややぬるめの38~40℃にすると、皮膚に負担をかけることなく、清潔を保つことができます。

 

②皮膚の保護

掻痒感がある時は、皮膚を外部の刺激から保護するようにしましょう。皮膚を傷つけないように、爪は短く切っておくこと、ルート固定のテープは皮膚に刺激が少ないものを使うこと、テープをはがす時は専用のリムーバーを使うことなどを心がけてください。

また、リネン類や病衣は清潔を保つようにしてください。また、化学繊維の下着は、皮膚への刺激になることがありますので、木綿やガーゼなどの素材を選ぶと良いでしょう。

 

③皮膚の保湿

掻痒感は皮膚が乾燥することで、悪化しますので、皮膚の保湿はしっかりと行いましょう。保湿剤にはワセリンやヘパリン類似物質、オリーブオイル、尿素軟膏など様々なタイプがありますが、医師が処方したもの、または皮膚への刺激が少ないワセリンなどを用いて、皮膚にまんべんなく、愛護的に塗布するようにしてください。

特に、入浴後は皮膚が乾燥しやすいので、必ず保湿剤を塗布しましょう。そうすることで、掻痒感を軽減・予防することができます。

 

④掻かないように指導する

掻痒感のある患者は、どうしても掻きむしってしまうことがあるので、掻いてしまった時のリスクなどを説明して、掻かないように指導しましょう。

小児は指導しても掻いてしまうことが多いですが、大人であれば、きちんと説明することで、ある程度掻くことを予防できます。

痒みが強くてストレスになる時は、冷罨法が効果的です。掻痒感がある部位を冷やすことで、その部位の血流を減らして、痒みを一時的に緩和することができます。

ただ、冷やしすぎると低体温になってしまったり、血流障害が起こったり、冷罨法を中止した後に一気に血流が増えて、かゆみが増悪したように感じられることがありますので、冷罨法をする時も、きちんと患者に説明してから行うようにしましょう。

 

まとめ

掻痒感があると、患者が苦痛に感じて睡眠の質が低下するなどQOLに大きな影響がありますし、掻き壊してしまうことで皮膚が損傷し、感染リスクが上がりますので、看護計画を立てて、掻痒感を軽減できるようなケアを行いましょう。

掻痒感は看護ケアのポイントを押さえて、丁寧にケアをすれば、薬剤を用いなくても軽減することが可能ですので、掻痒感の原因をしっかりアセスメントして、看護ケアを行いましょう。

一番キレイな辞め方は寿退社だ!という結論に至るも相手がいない|看護師あるある【vol.61】

$
0
0

看護師退職理由
辞めたいけど、なかなか辞めさせてくれない職業。それは看護師。

わたしたち看護師は、人手不足や人間関係などいろいろなストレスをいつも抱えながら働いているのです。特別な理由がない限り、退職を申し出ようものなら看護部長、看護師長、事務長まで総出で引き止められ、結局、退職できないことも多いのです。

キレイに退職していった人たちはみんな「寿退社」だ!

よし、この方法で行くか・・・というひらめきも虚しく、結婚してくれるような相手がいない事に気づく。
まずは、婚活から始めなければいけないのか・・わたしたち看護師の退職までの道のりは遠すぎるのである。

あぁ本当に看護師辞めたいです!綺麗に辞めたいです!

誰か私を嫁にもらってくれませんかぁー!!

軽視できない!低栄養状態の理解と看護による質の高いアプローチ

$
0
0

低栄養の看護

低栄養は、栄養バランスが不均衡な状態である低栄養は高齢者や寝たきりの闘病患者など、特別な状況下のみに起こる問題と考えられています。しかし現実は異なり、年齢を問わず体調不良や精神状態の変化などでも陥る可能性があります。

また、低栄養は様々な病気の起因となる恐れがあり、日々の気付きや注意が重要です。適切な情報や対策方法を知ることは、質の高い看護を提供していく上で非常に大切な要素となります。

 

1、低栄養とは

低栄養とは、栄養不良の一つで健康な体を維持するために必要なカロリーと必要栄養素が不足している状態を指します。主に低栄養は、全般的な食物接種不足であるカロリー不足、またはタンパク質の不足が原因していると考えられています。この状態のことをPEM(Protein energy malnutrition:タンパク質・エネルギー欠乏症)と呼びます。

低栄養は、年齢や性別、疾病の有無にかかわらず誰にでも起こりうる病気です。食欲不振や偏食などがしばらく続くと、自分でも気付かぬうちに栄養素が不足し、低栄養状態に陥ることも決して珍しくありません。

低栄養とは

出典:低栄養(栄養不良) 介護予防と医療の総合情報サイト ライフケア

 

低栄養状態の診断は、以下をおおよその基準値として行います。

・   血清アルブミン値3.8g/dlを基準として、それ以下である場合(※タンパク質を十分に摂取していない場合に減少する)

・   肥満度指数であるBMIが18.5未満の場合

・   血中コレステロール値150mg/dL未満の場合

・   半年より短い期間に2~3kg以上の体重減があった場合も可能性あり

 

2、低栄養の症状

必要な栄養量の不足や偏りによって低栄養の状態に陥ると、以下のような症状がみられます。

 

・   体重減少

・   貧血

・   骨格筋の筋肉量や筋力の低下

・   体脂肪の低下

・   風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい

・   皮膚の炎症

・   傷や褥瘡が治りにくい

・   下半身や腹部がむくみやすい

・   脱水症状

・   高齢者の「生活自立度の低下」や「要介護度の上昇」につながる

 

3、低栄養時のアセスメント

低栄養状態の患者は、順調な回復過程を辿ることが困難となります。したがって、栄養状態を良好に保つことが回復への支援となるため、栄養状態のアセスメントはとても重要になります。

血液検査によるデータがある際は、総蛋白やアルブミン、赤血球数、血糖値、脂質関連データ、電解質データなどの数値を参考に、栄養状態のアセスメントを行います。検査データが無い場合でも、BMIや体重の変動、皮膚の弾性、皮下脂肪厚、眼瞼結膜の色調、浮腫の有無などからアセスメントを行うことが可能です。

 

4、低栄養患者に対する看護計画

十分なアセスメントを行った後に、看護問題を提起し、患者それぞれに適した栄養ケアを提供するため看護計画(看護目標、OP-観察項目、TP-ケア項目、EP-教育・指導項目)を立案していきます。

 

■看護問題

食思の低下、適正食事摂取量の欠如、誤嚥リスク状態、褥瘡などの皮膚状態の悪化、筋力低下による運動機能の低下 など

 

看護目標

食思の改善、適正食事摂取量の安定、誤嚥を起こさず食事摂取ができる、褥瘡などの皮膚状態の改善、筋力回復による運動機能の向上と体動の増加 など

 

■看護計画

観察項目

(OP

・   食思が向上する状況や時間や患者の嗜好

・   患者のエネルギー消費量の測定による適切な食事摂取量

・   誤嚥の起こりやすい食品や食事摂取方法

・   栄養状態による皮膚状態の変化

・   筋力測定に関係の深いBMIやアルブミンの数値の推移

ケア項目

(TP

・   患者の食習慣や文化を尊重する

・   嗜好や食べやすさの工夫(一口量や形状の調整、とろみをつけるなど)によって適切量の完食を促す

・   誤嚥防止のため食前に喀痰の吸引や喉のアイスマッサージを行う

・   チューブ栄養が必要な際は、食べ物の逆流防止のため頭部を高くして摂取を行う

・   褥瘡改善のため、低蛋白血症に注意したメニューやサプリメントなどの補助食品追加の提案を行う

・   BMIやアルブミンの数値に注意し、変化が見られる際にはすぐに医師に相談する

・   食事の介助範囲を最小限にして患者本人による食事摂取を心がける

教育項目

(EP

・   患者と家族に対する低栄養の理解を促進する

・   回復の重要性について説明する

・   誤嚥の危険性と予防法を説明・指導する

 

5、高齢者の低栄養について

高齢者は老化にともなう消化機能の低下や嚥下障害などの身体的変化によって、低栄養状態に陥りやすい傾向にあります。また病気や機能低下が無い場合であっても、自宅に暮らす高齢者のおよそ7人に1人は、1日の摂取カロリーが1,000キロカロリー以下というデータがあり、適切な栄養摂取に十分とはいえない現状があります。

社会の高齢化が進む中、高齢者は低栄養症状が進むと寝たきりになりやすく、命にかかわる危険も高くなるため軽視することはできません。今後、低栄養は確実に社会問題化するであろうと懸念されています。

実際、高齢の入院患者や入所および在宅療養者の約3~4割に、低栄養状態の高齢者がいることが確認されています(下図)。

 

≪在宅療養患者の高齢者の栄養状態≫

在宅療養患者の高齢者の栄養状態

出典:食べやすく、おいしく、栄養管理を。 食べて元気に!スマイルケア食 政府広報オンライン

 

高齢者が慢性的に低栄養状態に陥ると、血液中のタンパクが低下する低アルブミン血症などを引き起こしやすく、むくみや腹水、貧血など様々な身体機能の低下の原因となります。このような症状が続くと運動機能が低下し、高齢者にとっては「生活自立度の低下」や「要介護度の上昇」につながり、結果的に寝たきり状態になりやすくなります。

高齢者にとって低栄養を予防するということは、QOLや自立度を維持するだけではなく、低栄養に起因する病気の罹患を予防することにもつながります。

 

まとめ

低栄養に関する知識を深めていくと、低栄養は年齢や病気の有無を問わず陥る可能性があることが見えてきました。また低栄養は、それに起因する病気のリスクを増大させる恐れがあり、決して軽視することができない問題であることがわかりました。

病気を治療中の患者にとって、正しい栄養管理による良好な状態というのは、全ての治療法の基盤となります。低栄養は日々の食事と深く関係しているので、適切な栄養指導など看護の力が患者の病状回復における大きな役割を担っています。

患者の意見を聞き、コミュニケーションを図りながら病状がより良い方向へ進んでいくよう、理解と知識を役立てていくことが必要です。


NRSの看護|NRSスケールを用いた疼痛のアセスメントと看護計画

$
0
0

疼痛の看護

痛みは主観的なものですので、看護師は患者の痛みを正確に把握することができません。でも、疼痛緩和はとても重要な看護になりますので、できる限り患者の痛みを客観的に把握する必要があります。

患者の主観的な痛みを客観的に評価するためのものが、NRSという疼痛スケールです。NRSについて、またNRSを用いた疼痛アセスメントや看護計画をまとめました。

 

1、NRSとは

NRS(Numerical Rating Scale)とは疼痛スケールの1つで、患者の主観的な痛みを客観的に評価するために用いられます。

NRSは痛みを0から10までの11段階の数字を用いて、患者自身に痛みのレベルを評価してもらう方法です。このNRSを用いる時には、初診時や治療前の痛みを10とする場合もありますし、「今までに経験した最高の痛み」を10とする場合もあります。

治療前または最高の痛みを10とした時に、今の痛みのレベルは数字で表すとどのくらいかを患者自身に表わしてもらって、痛みを評価します。

0は痛みなし、1~3は軽度の痛み、4~6を中等度の痛み、7~10は強い痛みを表します。

このNRSは臨床の現場で最もよく用いられている疼痛スケールで、ほかの疼痛スケールと比べると最も信頼性が高いとされています。

痛みのレベルを11段階で細かく表すことができる、簡単に痛みを評価できる、痛みの変化を継時的に表しやすいなどのメリットがあります。

ただ、小児や意識がない患者には使うことができず、個性や環境に影響されやすいことや数字に個人の好みが表れることがあるというデメリットもありますので、NRSを使用する場合には、このデメリットは考慮しておかなくてはいけません。

 

1-1、NRS以外の疼痛評価スケール

NRS以外の疼痛評価スケールも確認しておきましょう。

NRS以外の疼痛評価スケール

出典:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine

臨床の現場で用いられる疼痛評価スケールはNRS以外に、VASやVRS、FPSがあります。

 

■VAS(Visual Analogue Scale)

VASは左端をまったく痛みがない、右端を最悪の痛みとして、今の痛みがどのくらいなのかを指してもらう疼痛スケールです。

VASはNRSと同じように、痛みのレベルを細かく評価できるというメリットがありますが、ほかの患者と比較検討しにくいというデメリットがあります。

 

■VRS(Verbal Rating Scale)

VRSは直線上に5段階などで、痛みの度合いを表す言葉を書いて、患者に選択させる疼痛スケールです。高齢者でも簡単に痛みを表せるというメリットがありますが、痛みが5段階と曖昧にしか評価できず、幼児には使いにくいというデメリットがあります。

 

■FPA(Faces Pain Scales)

FPAは言葉や数字ではなく、人の表情によって痛みを6段階に分類して評価する方法です。このFPAは子供や高齢者でも簡単に痛みのレベルを表現することができます。ただ、痛みの選択肢が6段階と少なく、その時の気持ちによって評価が左右されることがあるというデメリットがあります。

 

2、NRSスケールでの評価とアセスメントのポイント

NRSスケールを用いることで、患者の主観的な痛みを客観的に評価することができますが、痛みのアセスメントをする時には、NRSスケールによる評価だけでは不十分です。痛みをアセスメントする時には、NRSスケールでの痛みの程度以外の情報も収集する必要があります。

 

①痛みの部位

痛みのアセスメントをする時には、痛みの部位はとても大切な情報になります。痛みの部位は1ヶ所だけではなく、複数の部位に現れることも多いので、痛みの部位ごとにNRSスケールを用いて痛みを評価する必要があります。

関連痛による痛みの可能性も考慮に入れて、痛みの部位と痛みのレベルを観察するようにしましょう。

 

②痛みの性質

どのような痛みなのかも、痛みのアセスメントをする上ではとても重要なことになります。チクチク刺されるような痛み、鈍い痛みなど痛みの性質には様々なものがあります。

鈍い痛み、うずくような痛み、押されるような痛みは内臓痛や体性痛の可能性が高く、電気が走るような痛み、ピリピリするような痛みは神経障害性疼痛の可能性が高くなります。

 

③痛みの始まりと変化

痛みはいつから始まったのか、痛みが出るようになってから痛みのレベルや部位、性質はどのように変化していったのかも観察しましょう。

痛みは持続痛なのか間欠痛なのか、痛みは強くなっているのか、弱くなってきているのか、痛みの部位は移動しているかなどを観察して、痛みのパターンを把握する必要があります。

痛みのレベルが変化しているのであれば、NRSスケールを用いて、痛みの発現時から変化の度合いを0~10までの数字で表してもらいましょう。

 

④痛みに影響するもの

痛みの発現や増強・緩和に影響があるものはあるか、痛みの影響因子も把握しましょう。「体位によって痛みが軽減する」、「鎮痛剤を服用すると良い」、「こういうことをすると痛みが強くなる」、「温めると緩和する」などです。

このような痛みへの影響因子を把握することは、疼痛緩和のケアに役立ちます。鎮痛剤を飲んだ時には、痛みがどのくらい緩和するのかもNRSスケールを用いて、「服用前は8、服用して30分経つと4」のように痛みのレベルを表してもらうと良いでしょう。

 

⑤日常生活への影響

痛みがあることによって、日常生活にどのような影響があるのかも確認する必要があります。痛みは身体機能、社会機能、睡眠、精神状態に大きな影響を与えます。

痛みよって日常生活にどのような影響があるかを、患者さんから聴取しましょう。

 

⑥客観的な評価

痛みをアセスメントするためには、NRSスケールを用いての評価や患者さんからの主観的な情報だけでは足りません。看護師から見た客観的な情報もとても大切になります。

痛みが強ければ、血圧上昇、心拍数の増加、呼吸数の増加などバイタルサインに変化が現れます。また、表情や行動、睡眠状況も変化が出ます。それを客観的に評価して、痛みがどのくらいなのか、NRSスケールでの数字とマッチしているかを確認しなければいけません。

患者さんによっては、遠慮して痛みを過小評価することがありますし、看護師に心配してもらいたいからなどの理由で大げさに言う場合もあります。

そのため、NRSスケールなど患者さんの主観的な情報だけでなく、看護師から見た客観的な情報。評価も大切なのです。

 

3、NRSスケールを用いた急性疼痛の看護計画

NRSスケールを用いた急性疼痛の看護計画を立ててみましょう。

疼痛の看護|原因と種類、術後や骨折などにおける疼痛緩和の援助

 

■短期目標

・痛みが軽減したと述べることができる

・穏やかな表情で過ごすことができる

・疼痛緩和によって良眠できる

・痛み軽減することで食欲が出る

 

■OP

・痛み程度をNRSスケールを用いて評価する

・痛みの部位や持続時間

・疼痛による行動制限の有無

・創部の発赤・腫脹・熱感の有無

・バイタルサイン

・炎症所見(検査データ)

・睡眠状況

・食事摂取状況

・精神状態、不安の有無

・鎮痛剤使用状況とその効果

・痛みに対する認識

 

■TP

・疼痛のアセスメントをし、疼痛をコントロールする

・安楽な体位の提供

・温罨法や冷罨法を行う

・気分転換を図る

・マッサージを行う

・不眠時は指示によって睡眠薬を用いる

・声掛けやタッチングなど安心感を与え、不安を訴えやすい環境を作る

・患者の訴えを傾聴する

・車いすや歩行器などを用いる

・日常生活動作への援助

 

■EP

・疼痛は我慢せずに伝えるように指導する

・NRSスケールの使い方を説明する

・痛みの変化があった時はNRSスケールを用いて伝えてもらう

・痛みが強い時は頓用の鎮痛剤を用いることができることを説明する

・安楽な体位の摂り方を指導する

・鎮痛剤の効果を説明する

 

まとめ

NRSは臨床現場で最もよく使われている疼痛スケールです。このNRSを用いて、疼痛緩和のための的確な看護を行いましょう。

ただ、疼痛のアセスメントをするためには、NRSでの疼痛評価だけではなく、そのほかの患者の主観的な情報や看護師から見た客観的な情報も重要になりますので、痛みを総合的にアセスメントして、看護計画に活かしましょう。

採血の看護|採血の方法とコツ、内出血しないポイント

$
0
0

採血の看護

採血は看護師の基本となる看護技術ですが、どうしても苦手という人も多いと思います。採血が苦手だと、患者さんに苦痛を与えることになりますので、苦手意識を克服しなければいけません。

採血の血管の部位や血管の選び方、採血の方法とコツ、内出血しないポイントをまとめました。採血が苦手な看護師さんは、ぜひ参考にしてください。

 

1、採血をする血管の部位と選び方

採血を成功させるためには、どの血管で採血するのかがとても重要になります。採血をする部位は、基本的に前腕屈側の肘正中皮静脈が第一選択になります。

1、採血をする血管の部位と選び方

引用:採血時、末梢静脈ルート確保時の末梢神経損傷‐北海道訪問看護ステーション連絡協議会

もし、肘正中皮静脈が全く見えない、駆血帯をしても浮き出てこないという場合は、前腕の橈側皮静脈や前腕尺側皮静脈、前腕皮静脈などを選択します。

それでも、採血に適した血管が見つからない時は、手背の静脈や足背の静脈を選択することになります。

採血を成功させやすい血管を選ぶコツは、青紫色の血管が見えているかどうかではありません。太くて弾力性があるかどうかが、血管を選ぶ時の最大のポイントになります。

青紫色に浮き出ている静脈は皮膚表面の静脈で刺しやすいものの、弾力性があるとは限りません。弾力性がない血管は、刺そうとしてもすぐに逃げてしまって、採血を失敗しやすいのです。

駆血帯をしていると、深いところに位置する血管が浮き出てきます。その血管を触ってみて、プリッと弾力性があるのであれば、たとえ青紫色に見えていなくても、採血に適した血管ということになります。

採血をする時は、静脈が見えているかどうかで選ぶのではなく、太くて弾力性があるかどうかで選びましょう。

 

2、採血の看護技術・方法

採血の方法・手順を確認していきましょう。

 

①必要物品を準備する

まずは、採血に必要な物品を用意しましょう。

<採血の必要物品>

・シリンジ

・21~23Gの採血針

・ディスポーサプル手袋

・アルコール綿

・駆血帯

・肘枕

・採血管

・針捨て容器

・止血のためのテープやバンド

真空管採血の時は、シリンジの代わりに真空管ホルダーと真空管採血用の針を用意します。また、アルコール綿で皮膚がかぶれる患者さんには、イソジンやヒビテンなどの代わりの消毒用品を用意しましょう。

失敗した時のことを考えて、予備の針を1~2本用意しておくと安心です。

 

②患者に説明して、体位を整える

必要物品を持って患者のベッドサイドに行ったら、患者に採血の必要性を説明し、同意を得ます。また、患者にフルネームを名乗ってもらって、検査伝票や採血管に貼られたシールと合っているかを確認しましょう。

その後、仰臥位または座位を取ってもらって、肘枕の位置やテーブルの高さ等を調整して、採血しやすい状態にします。

 

③採血準備をする

シリンジに針を清潔操作で装着し、トレーの上で必要物品をすぐに使える状態にしておきましょう。

この時点できちんと準備をしていないと、真空管採血で採血管をスムーズに装着できない、抜針後にすぐに止血ができないという事態になってしまいます。

必要物品を適切な位置に配置しておくことは、とても重要なことですので、採血をする前には、必ず準備しておきましょう。

 

④血管を選択する

次に、採血する血管を選択します。採血する血管の選び方は先ほど説明したように、肘正中皮静脈が第一選択になります。

ただ、次のような部位はたとえ弾力のある血管が見つかったとしても、避けなければいけません。

・麻痺側

・シャントがある

・点滴をしている側

・疼痛部位

麻痺側では神経障害を確認できません。また、シャントがある部位はシャントを潰す可能性があります。

点滴をしている腕で採血をすると、採血した血液に点滴の成分が混ざって、正しい採決結果が得られません。また、疼痛部位から採血すると、疼痛を増強させる可能性があります。

血管を選択する時は、焦らずにじっくり左右の腕を観察しましょう。

 

⑤駆血帯をする

採血する血管を決めたら、駆血帯を巻きます。採血する部位よりも7~10cmくらい中枢側に駆血帯を巻きましょう。

駆血帯は患者に窮屈な感じは与えるものの、疼痛を与えるものではありませんが、1分以上経つと血液の性状が変性する可能性があるため、1分以内に採血を終わらせるようにしてください。

 

⑥消毒する

アルコール綿で、採血する部分を中心に縁を外側に描くようにして消毒をします。この時に、採血部位を伸展して、消毒しましょう。また、きちんと乾くまで採血するのは待ってください。

乾かないまま採血すると、きちんと消毒効果が得られませんし、溶血する可能性もあります。

 

⑦穿刺する

消毒が乾いたら、いよいよ穿刺します。穿刺部位が動かないように安定させてから、血管が逃げないように、穿刺部位の少し下の皮膚を手前に軽く引いておきます。

そして、穿刺予定部位の1cm手前から、皮膚と採血の針の角度を15~20℃に保ちながら穿刺しましょう。穿刺したら、2~3mmほどさらに針先を進めます。

穿刺する時は、迷わずに一気に行きましょう。「大丈夫かな?」、「この部位で良いかな?」と迷いながら穿刺すると、針先がぶれてしまって、患者に苦痛を与えることになります。この部位に穿刺すると決めたら、迷わず一気に刺してください。

穿刺したら、しびれなどがないかを必ず確認しましょう。もし、しびれや電撃痛があったら、神経を傷つけている可能性がありますので、すぐに抜針してください。

 

⑧採血をする

針を穿刺したら、その部位を動かさないようにして、シリンジを引いて、必要量を採血します。真空管採血の時は、採血管をまっすぐ完全に差し込んで、採血をしましょう。

翼状針を使えば、刺した時点で逆血がありますので、血管内に入っているかどうかがすぐに分かりますが、直針の場合はシリンジを引く、または採血管を差し込まないと、血管内に入っているかは確認できません。

 

⑨駆血帯を外す

必要量を採血したら、針が動かないように注意しながら、駆血帯を外します。

 

⑩抜針して止血する

駆血帯を外したら、抜針して、穿刺部をアルコール綿で押さえて止血します。意識のある患者なら、患者本人にしっかり押さえておいてもらうように指導して、看護師は針捨て容器に安全に針を捨てて、片付けをします。

アルコール綿をテープ等で止めて、5分ほど圧迫してもらうように伝えて、採血終了です。意識がない患者には、止血バンドを使うと良いでしょう。

 

3、採血のコツや内出血しないポイント

採血を成功させられるかどうかは、採血に適した血管を見つけられるかどうかにかかっています。でも、どうやってもなかなか血管が出てこない、駆血帯を巻いてから探しても、なかなか良い血管が見つからないということもあると思います。

そういう時の良い血管の見つけ方のコツ、血管の出し方のコツを確認しておきましょう。

 

■腕をダランと下げてもらう

採血に適した血管が見当たらない時は、腕をダラン下に下げてもらいましょう。心臓よりも下にすることで、腕に血液が集まりやすくなりますので、血管の怒張を促すことができます。

 

■親指を中にして握ってもらう

親指を中にして握ってもらうと、腕の筋肉が収縮して、血管が怒張しやすくなります。

手をグーパーグーパーと握ったり開いたりしてもらうことで、静脈血が腕に停滞しやすくなりますが、これはクレンチングといって筋肉のカリウムが流出して検査結果のカリウム値に影響が出ることがありますので、おすすめはできません。

 

■腕を温める

肘正中皮静脈付近を蒸しタオル等で温めると、血管が拡張して、見えやすくなることがあります。

 

■駆血帯をきつく締めすぎない

血管が見えないからといって、駆血帯をあまりきつく締めてしまうと、動脈まで締めてしまって、血流を悪くしてしまい、さらに血管が見えにくくなります。そのため、駆血帯は橈骨動脈が触れる程度のきつさで締めるようにしてください。

 

■焦らない

血管が見つからないと、焦ってしまいますが、焦っても血管は見つかりません。そのため、じっくりと両腕の血管を探してみてください。

 

■患者さんに聞いてみる

良い血管が見つからない時は、患者さんに「いつもどの部位で採血していますか?」と聞いてしまいましょう。血管が見つからない患者さんは、いつも採血で失敗されているので、「この血管なら取りやすい」という部位を把握していることが多いのです。

何度も失敗して、変な脂汗をかいて「すみません」と謝りながら採血するなら、患者さんに採血しやすい血管はどこかを聞いて見ると良いでしょう。

 

■叩くのはエビデンスがありませんが…

血管が見つからない時は、肘正中皮静脈の部位を指で軽くパンパンと叩くと血管が浮き出てくるのは、看護師の間で有名な方法です。ただ、これはエビデンスがないのです。

でも、実際に軽くたたくと血管がプリッと浮き出てくることが多く、看護師の間では先輩から後輩へと受け継がれているものです。

叩いてはいけないというエビデンスもないので、患者さんに痛みを与えない程度の強さで叩くのはOKだと思います。

 

3-1、採血で内出血をしないポイント

採血の時に内出血をしないポイントは、針先を動かさないこと、しっかり止血をすることです。

 

①針先を動かさない

採血の時には、針は動かさないようにしましょう。穿刺しても逆血がない場合、またはイマイチ血液が引けない場合は、針を刺した状態で針先を動かして血管を探す人がいますが、血管を傷つけてしまって、内出血を起こすことがあります。

また、シリンジ採血で内筒を引く時、真空管採血を差し込むときにも針先が動きやすいので、きちんと固定して注意しなければいけません。

 

②患者さんにはしっかり説明

抜針後は、患者さんにきちんと止血をするように説明してください。「5分間は揉まずにグッと押さえてください」と説明しないと、30秒程度で止血を止める人も多いですし、採血部位を揉んでしまう人も多いんです。

そのため、5分間は止血すること、揉まずに指でグッと圧迫しながら押さえることをきちんと説明しましょう。

 

③出血傾向がある人は止血バンドを

検査データで出血傾向がある人は、採血後に内出血しやすいので、止血バンドを使って、しっかり圧迫止血をしましょう。

止血バンドを使うと、看護師にとっても患者さんにとっても自分で止血するという必要がなく、しっかりと圧迫止血をすることができますので、内出血を予防できます。

意識がない患者さんにも止血バンドを使うと良いでしょう。

 

まとめ

採血は看護師としての基本技術の1つですが、難しく奥深いものです。また、患者さんに苦痛を与えるものですので、失敗をできるだけ少なくするように、準備とイメージトレーニングをしっかり行ってから、採血をするようにしましょう。

採血が成功するかどうかは、採血に適した血管を見つけられるかどうかと「絶対に成功させる」という強い意志が大きな割合を占めますので、血管を見つけるコツはもう一度復習しておきましょう。

観血的整復固定術の看護|術後合併症と術後の看護計画のポイント

$
0
0

観血的整復固定術

観血的整復固定術とは骨折の治療法の1つで、手術によって骨折のずれを治して、金属のピンなどを用いて、直接骨を固定する治療法になります。

観血的整復固定術は早期離床が可能であるというメリットがあるので、高齢の患者にもよく用いられる骨折の治療法になります。観血的整復固定術の基礎知識や合併症、術後の看護計画をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、観血的整復固定術(ORIF)とは

観血的整復固定術(ORIF)とは、簡単に言うと、手術で骨を固定する骨折の治療法です。麻酔をして皮膚を切開し、骨のずれを治して整復してから、金属のピンやワイヤー、スクリュー、プレートなどを用いて、皮下で骨を直接固定します。

観血的整復固定術は、手術で観血的整復と内固定を一気に行う治療法なのです。内固定の方法は、主にピンニングとプレート固定、髄内釘固定の3つがあります。

観血的整復固定術(ORIF)とは

引用:大腿骨の骨折観血的手術について | 手術について | ご利用案内トップ | 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院

固定の種類 固定の方法
ピンニング Kワイヤーという針金を骨に刺して、骨折した部位をつなげて固定します。
プレート固定 骨折した部位に金属製のプレートを当てて、スクリューを打ち込んでプレートと骨を固定します。
髄内釘固定 髄内釘は大きな骨の骨幹部が折れた時に行われる固定法で、骨の中心部に金属製のロッドを打ち込んで固定します。

観血的整復固定術の看護

引用:関節外科センター/外傷、関節外科、骨軟部腫瘍における関節再建専門治療センター 千葉西総合病院

観血的整復固定術は、他の整復法や固定法に比べて、早期にリハビリを開始できるというメリットがあります。外固定による保存療法では数ヶ月間の安静が必要であり、その後のリハビリが困難になることがあります。

また、高齢者の場合はそのまま寝たきりになり、QOLが大きく低下することもありますが、観血的整復固定術は手術翌日から車椅子への移乗が可能になりますので、早期離床、早期の日常生活への復帰が可能なのです。

 

2、観血的整復固定術の合併症

観血的整復固定術の合併症は、深部静脈血栓症と術後の創部感染です。

 

■深部静脈血栓症

手術前後はベッド上で安静にする必要がありますので、下肢の静脈に血栓ができることがあります。深部静脈血栓ができると、肺塞栓症を発症して、呼吸苦や胸痛、血圧低下を引き起こす可能性があります。

 

■術後の創部感染

観血的整復固定術は、手術で皮膚を切開して、骨を修復し、金属製のピンやスクリュー、プレートを体内に入れて骨を直接固定します。

固定するピンなどはきちんと滅菌していても、100%感染を防ぐことはできず、たとえ抗生剤を使用しても、まれに感染を起こすことがあります。

 

■筋力低下や関節拘縮

観血的整復固定術は、手術翌日から離床を始めることができ、大腿骨骨折の場合でも術後2~3日目には少しずつ体重をかけて歩行訓練を開始することができます。

ただ、すぐには骨折前のように歩くことはできませんし、術前はベッド上安静を保つことになりますので、どうしても筋力は低下します。

特に、高齢者の場合は筋力低下が著しいことがありますし、関節拘縮が起こるリスクもあります。

 

3、観血的整復固定術の術後の看護計画

観血的整復固定術の術後の看護問題は、以下の4つが挙げられます。

・術後の急性疼痛

・深部静脈血栓症

・創部感染のリスク

・転倒のリスク

この4つの看護問題に対する看護目標と看護計画、ケアのポイントなどを説明していきます。

 

■術後の急性疼痛

観血的整復固定術の術後の看護問題の1つ目は、急性疼痛です。術後は麻酔の効果が消えた後は、創部の痛みが出現しますので、看護師は疼痛のアセスメントをしっかり行って、適切な疼痛緩和を行う必要があります。

看護目標=疼痛緩和がされることで早期離床を進めることができる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・痛みの強さや部位

・検査データ

・患者の表情や言動

TP(ケア項目) ・冷罨法

・良肢位の保持

・レスキュー薬の使用

EP(教育項目) ・痛みが強い時はレスキュー薬が使えることを説明する

・痛みは我慢する必要がないことを伝える

・良肢位の保ち方を説明する

術後の疼痛があると、早期離床の妨げになります。通常の観血的整復固定術は手術の翌日から離床することができますが、疼痛があると離床がなかなか進まず、リハビリすることができません。

また、我慢できないほどの疼痛が続くことは、患者にとって大きな苦痛になりますので、適切なケアで疼痛を緩和させるようにしましょう。

 

■深部静脈血栓症のリスク

観血的整復固定術の術後の看護問題の2つ目は、深部静脈血栓症のリスクがあることです。下肢の静脈に血栓ができると、それが肺に飛んで肺塞栓症を起こすことがあります。

術後は臥床している時間が長いですから、深部静脈血栓ができるリスクが高いため、看護師は予防に努めなければいけません。

看護目標=深部静脈血栓ができない
OP(観察項目) ・呼吸困難感やSpO2、呼吸数などの呼吸状態

・下肢の腫脹や疼痛、発赤の有無

・爪や皮膚などのチアノーゼの有無

・飲水量

・足背動脈の蝕知

・採血データ(Dダイマー)

TP(ケア項目) ・早期離床を促すための疼痛コントロール

・弾性ストッキングの使用

・必要があれば間欠的空気圧迫法

EP(教育項目) ・早期離床の必要性を説明する

・症状での自動運動を促す

・下腿の腫脹や呼吸困難などの症状が現れたら、すぐに知らせるように指導する

・飲水を促す

深部静脈血栓症の看護|発症の原因、検査と治療、予防を含むケア

 

■創部感染のリスク

創部感染のリスクも観血的整復固定術の術後の看護問題の1つです。ただ、創部は術後すぐに開けないことが多く、創部を観察できるのは手術の数日~1週間後になりますので、基本的に術後数日間は処置をすることはありません。

看護目標=創部感染を起こさない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・血液検査のデータ

・創部の疼痛の程度

・創部周辺の腫脹や発赤、熱感の有無

TP(ケア項目) ・指示通りに抗生剤を投与する
EP(教育項目) ・創部の腫脹や熱感を感じたら、伝えてもらうように指導する

滅菌物とはいえ、観血的整復固定術はスクリューなどの金属を体内に入れているので、術後感染を起こすリスクがあります。もし、術後感染が起こった時は早期に発見できるようにケアをしましょう。

 

■転倒のリスク

観血的整復固定術の術後の看護問題には、転倒のリスクもあります。手術の翌日には離床できますが、術後の痛みやバランスの変化、筋力の低下などで転倒しやすくなっています。

術後に転倒すれば、固定した部分がまたずれてしまう可能性がありますし、別の部位を骨折する可能性もありますので、転倒しないように看護介入する必要があります。

看護目標=転倒しない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・疼痛部位や疼痛の強さ

・術後の活動状況・行動の観察

・ベッドの高さや周囲の環境

TP(ケア項目) ・疼痛コントロール

・低いベッドを用意する

・周囲の環境整備をする

・必要な歩行具を用意する

・ナースコールをすぐに届く場所に設置する

・必要に応じて見守りや介助を行う

・頻回に訪室する

・必要に応じて離床センサーなどを使う

EP(教育項目) ・転倒しやすく注意が必要であることを伝える

・必要時は必ずナースコールを押すことを指導する

・靴は踵のある滑りにくいものを用意するように伝える

・医師の指示通りの安静度・患肢への負荷を詳細に説明する

 

まとめ

観血的整復固定術の詳細や合併症、術後の看護計画についてまとめました。観血的整復固定術は早期離床が可能ですので、看護師は早期離床を促せるように疼痛コントロールを行いながらも、患者の転倒には注意を払いましょう。

特に高齢の患者は進んで離床をしようとしない人が多いので、離床の必要性を説明し、廃用症候群予防のためにも離床を進めていきましょう。

パーキンソン病の看護|症状や原因など基礎知識とケアのポイント

$
0
0

パーキンソン病看護

50歳以上に発症する場合が多い「パーキンソン病」。運動症状や自律神経症状、精神症状などが現れ、患者には多くの不安が伴うことがあります。また、その治療は長期にわたるため、看護師には適切な看護ケアが求められます。

今回は、パーキンソン病の症状や原因などの基礎情報と、看護計画の参考になるポイントをまとめてみました。ぜひ日々の業務の参考にしてください。

 

1、パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、振戦(ふるえ)や動作緩慢(動作の速さが遅くなり、運動量が減ること)、筋強剛(筋肉が固く硬直した状態)、姿勢保持障害(立位と歩行においてバランスを崩しやすく転びやすくなること)を主な運動症状とする病気です。

50歳以上で発症する場合が多い傾向にありますが、40歳以下で起こることもあり、その場合は「若年性パーキンソン病」と区別されます。

有病率は人口10万人当たり100~150人と推定され、日本では高齢化に伴い有病率は増加し、全国で約15万人の患者がいるとされています。中には、遺伝子異常が明らかにされた症例もあります。

 

2、パーキンソン病の原因と症状

パーキンソン病は、大脳の下にある中脳と呼ばれる部位の「黒質神経細胞」の数が減る(変性)ために起こります。黒質神経細胞の減少によって、2つの神経細胞の連接部であるシナプスを形成する大脳基底核の線条体で神経伝達物質のドーパミンの放出が減少し、身体が動きにくくなり、運動調節がうまくいかない状態に陥ります。

 

図:パーキンソン病における脳の障害部分

パーキンソン病の看護

出典:パーキンソン病と関連疾患の療養の手引き 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班

 

パーキンソン病は、先述した「振戦」「動作緩慢」「筋強剛」「姿勢保持障害」の4つの症状を中核症状(四主徴ともいいます)とする病気です。その他にも、仮面顔貌(固い表情)や早口の小声、手振りの少ない小刻み歩行、前傾姿勢などの臨床症状を伴います。また、精神症状や自律神経症状などが発症することもあります。

四主徴のうち2つ以上の症状を兼ね備えた病気を「パーキンソニズム」あるいは「パーキンソン症候群」と呼びます。パーキンソニズムの原因疾患は多岐にわたりますが、脳の変性疾患によるものと、何らかの原因がはっきりした病気によるものに大別されます。

脳の変性疾患の多くが神経難病に指定されています。パーキンソン病は変性性のパーキンソニズムの1種です。また、原因が特定できる病気は「二次性(症候性)パーキンソニズム」と呼ばれます。

 

3、パーキンソン病の診断

パーキンソン病の診断は、1995年に厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班によって作られた「パーキンソン病診断基準」を目安に行われます。

 

自覚症状 ・   安静時のふるえ(四肢または顎に目立つ)

・   動作がのろく拙劣

・   歩行がのろく拙劣

神経所見 ・   毎秒4~6回の安静時振戦

・   無動/寡動(仮面様顔貌、低く単調な話し声、動作の緩徐・拙劣、臥位からの立ち上がり動作など姿勢変換の拙劣)

・   歯車現象を伴う筋固縮

・   姿勢/歩行障害(前傾姿勢、歩行時に手のふりが欠如、突進現象、小刻み歩行、立ち直り反射障害)

臨床検査所見 ・   一般検査に特異的な異常はない

・   脳画像(CT,MRI)に明らかな異常はない

鑑別診断 ・   脳血管障害性のもの

・   薬物性のもの

・   その他の脳変性疾患

 

次の①~⑤のすべてを満たすものをパーキンソン病と診断します。(診断の判定)

 

①   経過は進行性である

②   自覚症状で、上記のいずれか1つ以上がみられる

③   神経所見で、上記のいずれか1つ以上がみられる

④   抗パーキンソン病薬による治療で、自覚症状、神経所見に明らかな改善がみられる

⑤   鑑別診断で、上記のいずれでもない

引用:厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班「パーキンソン病診断基準」

 

4、パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療法としては、少なくなったドーパミンを補う薬物療法が基本となります。レボドパ(L-ドーパ)を含む薬剤を投与します。最近では、外科治療として、電極を埋め込んで症状の改善を図る「深部電極治療」も行われています。しかし、治療の中心は対症療法であり、疾患の進行を止めるものではありません。

 

5、パーキンソン病患者の観察項目

パーキンソン病は、「手がふるえる」「つまづきやすくなる」「動作が緩慢になる」「疲れる」などの症状から始まることが多く、その後、徐々に歩行困難や構音障害(発音が正しくできなくなる)、嚥下障害、排尿障害、ADL(日常生活動作)の低下などが現れます。

パーキンソン病の観察項目には「運動症状」「自律神経症状」「精神症状」の3つに大別されます。

 

運動症状 ・   表情が乏しくなっていないか

・   声の抑揚はあるか

・   小字症(字が小さくなる)

・   寝返りができない

自律神経症状 ・   便秘の有無

・   起立性低血圧の有無

・   頻尿(過活動性膀胱)

・   発汗過多

・   性機能障害

・   手足のむくみの有無

精神症状 ・   睡眠障害(夜間の不眠)

・   抑鬱状態になっていないか

・   認知機能障害の有無

 

6、パーキンソン病における看護問題

パーキンソン病では、以下のような看護問題が挙げられます。

 

■転倒・転落

動作緩慢や歩行障害、前傾姿勢などがある場合、転倒・転落リスクが高くなります。上肢による保護伸展反応が出にくいため、特に大腿骨頸部骨折が起こりやすくなります。

 

■拘縮

前傾屈曲姿勢を放置すると、股や膝、肘関節などの完全伸展位を保持できなくなります。そのため、洗顔や洗髪などのADL動作ができなくなります。

 

■嚥下障害

嚥下障害が重症化していくと、誤嚥性肺炎の可能性が高くなります。

 

■褥瘡

無道で長期臥床の患者の場合、仙骨部に褥瘡を形成しやすくなります。また、栄養障害や感染症などが合併すると、褥瘡発生の可能性はさらに高まります。

褥瘡(じょくそう)|予防、処置・治療における看護ケア

 

■日常生活の不安

進行性の病気であることによって生じる日常生活に対する不安が発生することがあります。精神症状が悪化したり、意欲が減退したりすることもあります。

 

7、パーキンソン病患者に対する看護目標

パーキンソン病の治療は服薬やリハビリテーションが中心になりますので、コンプライアンスの向上を図ることや、ADLの維持・向上を目標に看護を提供します。

 

1.   薬効維持のため服薬コンプライアンスを良くしADLを保持できる

2.   リハビリテーションを行い、ADL機能の維持向上できる

3.   長期臥床による合併症予防のためADLの維持、向上を図る

4.   疾病と障害が受容でき、変化が認められ自分なりの「生き方」ができる

 

8、パーキンソン病患者に対する看護ケア

パーキンソン病は、運動症状、自律神経症状、精神症状など、発現する症状が多岐に渡るため、包括的な看護ケアが必要不可欠です。日常生活への基本的な援助や訓練はもちろん、二次的障害の予防、精神的不安への援助、さらには患者家族への支援も必要となります。

 

■発現症状に応じた援助

運動症状と自律神経症状など出ている症状に対して適切な看護ケアを提供しましょう。例えば、転倒リスクが高い場合は付き添い歩行や車椅子で対応します。また誤嚥のリスクが高ければ、食事見守りが必要となります。振戦が強い場合は食事介助をすることもあります。

 

■日常生活の安全と自立の援助

パーキンソン病では病気の進行に伴って運動機能が低下し、日常生活行動に徐々に影響を及ぼします。日常生活の安全と自立を目指して援助します。また、予後に不安を感じる患者も多くいます。抑うつ的になってしまうこともあるため、患者心理を理解して接することが重要です。

 

ADL・訓練の援助

拘縮・肺炎などの二次的障害を予防することも重要です。拘縮の場合は、歩行練習や姿勢の保持、筋力・関節可動域の運動、発声練習などを実施していきます。

 

■患者家族に対する援助

患者の家族に対しても身体的や精神的、経済的状況などを把握しましょう。そのための必要な対策を患者やその家族と共に検討します。

 

まとめ

パーキンソン病は対症療法が中心となり、患者の運動症状、自律神経症状、精神症状は長期わたり続いていきますので、生活援助から家族への支援まで、包括的な看護ケアが求められます。

発現症状や悩み・不安などは、患者によって大きく異なります。患者のQOLを向上させることが重要になりますので、まずは患者の観察をしっかりと行いましょう。

ベッドメイキングの看護技術|手順・注意点と看護のポイント

$
0
0

ベッドメイキング看護

入院患者にとってベッド上は、食事、睡眠、排泄、診療、治療の場でもあり、生活空間そのものです。患者は一日の大半をベッド上で過ごすことになります。安全で快適な環境は患者にとって非常に重要で、ベッドメイキングは患者の生活環境を整えるための必須項目です。

ここでは、ベッドメイキングの目的や注意点、具体的手順とポイントについて説明します。看護学生で初めて習得する看護技術「ベッドメイキング」についてあらためて復習してみましょう。

 

1、ベッドメイキングの目的

ベッドメイキングには、①安全、安楽な環境づくり②生活環境を清潔に保つという目的があります。

ナイチンゲールの「看護覚書」の中で、「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔、清寂さを適切に選択し管理すること」と定義されているように、衛生的な環境を患者に提供することは、看護の基本となります。

 

安全、安楽な環境づくり

患者が安心して入院生活を送れるよう、また、安全に診療を受けることができるよう環境を整備することが大切です。さらに、心身の苦痛を最小限にとどめ、安楽な状態を保つことができるような環境づくりが必要となります。

 

生活環境を清潔に保つ

清潔な環境は、患者に爽快感を与えるだけでなく、感染や褥創の予防にもつながります。患者の生活空間を清潔に保ち、気持ちの良い療養生活を送れるよう援助することが大切です。

 

2、ベッドメイキングの注意点

ベッドメイキングを実施するに当たり、患者の理解や協力が必要となります。事前に患者への説明を行い、ベッドメイキングの必要性を理解してもらうことが大切です。患者の同意を得られない場合は無理して行わず、タイミングをみながら声かけを行うように心がけましょう。また、以下の点に注意し、患者に快適な環境を提供できるよう援助しましょう。

 

患者の状態に合わせた環境づくり

患者の状態を把握し、患者に合った方法でベッドメイキングを行います。マットの硬さや種類なども、可能な限り患者の好みや状態に合わせて、適切なものを選択しましょう。物品の配置やベッドの高さなども個々の患者に合わせて設定し、使いやすさや安全への配慮が必要となります。

 

安全で効率的な操作

効率的に作業ができるよう、事前に必要な物品を準備してから行いましょう。始める前に、ベッドをストッパーで固定し、作業しやすい高さに調節します。ベッドメイキングは、実施者の腰に負担をかけてしまう場合があるため、ベッドの高さや作業する姿勢に注意する必要があります。

 

換気と感染対策

ベッドメイキングにより塵や埃が舞い上がるため、換気を行いながら実施するようにしましょう。

離床可能な患者は別の場所に移動してもらい、移動が困難な場合は、ベッドごとにカーテンを閉めて実施するなどの工夫が必要です。また、汚れたシーツから病原菌に感染する可能性もあるため、空気清浄とマスク、手袋の着用など感染への対策が必要となります。

 

物品の清潔な取り扱い

シーツは床に触れないように注意して取り扱いましょう。シーツのしわやたるみは褥創の原因となることがあります。しわを伸ばし外観を美しく整えるとともに、シーツのズレやよれを防ぐために角の始末をしっかりと行うことが大切です。

 

3、ベッドメイキングの手順

ベッドメイキングの方法は患者の状態によって異なりますが、ここでは基本的なベッドメイキングの手順について説明します。ベッドメイキングを実施する際には、患者に必要性を説明し、理解してもらったうえで実施するようにします。換気を忘れずに行いましょう。

 

1)必要物品

枕、枕カバー、スプレッド、毛布、上シーツ、横シーツ、防水シーツ、下シーツ、マットレスパッド

2)実施手順

①必要物品を準備、点検し、リネン類は使用する順番に重ねておきます。

②ベッドを作業しやすい高さに調節し、ストッパーをかけます。

③交換するシーツは埃などが飛び散るのを防ぐため、四隅から中央に向かって丸めていき、中央でまとめて外します。枕は椅子やワゴンの上に移動しておきます。

④マトレスの上にマットレスパッドを敷きます。

⑤下シーツをマットレスの中心に合わせて置き、枕もとのマットレスを十分に覆う分を残して足元へ伸ばします。

⑥枕元のマットレスを下シーツで包み、角を三角に処理します。三角に処理することで、シーツが崩れにくくなります。シーツのしわを伸ばし、足元も同様に三角に処理します。

⑦側面に垂れているシーツはマットレスの下に入れ込みます。

⑧患者の臀部や創部など汚れる可能性のある位置に合わせ、防水シートを敷きます。

⑨横シーツを中心の線に合わせて敷き、防水シートを覆います。側面の垂れた部分は、マットレスの下に入れ込みましょう。反対側も同じように行います。

⑩上シーツの裏を表側にし、頭側をマットレスの端に合わせます。中央の折り目を合わせて反対側に広げます。

⑪足の圧迫を避けるため、患者の足の位置に10~15㎝のタックを作ります。

⑫タックを崩さないよう、足元の角は四角に処理し、側面の垂れているシーツは、足元側の3分の1程度をマットレスの下に入れ込み、残りは垂らしたままにします。

⑬毛布の上端をマットレスから15㎝ほど下げて広げ、足元は上シーツと同様に四角に処理します。側面は足元側の3分の1程度をマットレスの下に入れ込み、残りは垂らしたままにしておきます。

⑭上シーツの上端を毛布の上に折り返します。

⑮スプレッドの上端をマットレスの上端に合わせ伸ばします。足元に三角の角を作り、側面はそのまま下げておきます。

⑯枕にカバーをかけ、カバーの口元が病室の入り口と反対側になるように置きます。

⑰しわやたるみ、汚れがないか、外観が美しく整っているかを確認します。

⑱必要時、ベッドの襟元を開けオープンベッドにし、患者がすぐに使える状態にしておきます。床頭台や椅子を移動した場合は元の位置に戻し、窓を閉めて終了します。

 

4、ベッドメイキングのポイント

ベッドメイキングを実施する際は、ボディメカニクスを活用しましょう。ボディメカニクスとは骨格や筋肉などの力学的相互関係を取り入れた技術のことで、①基底面積を広くする②重心を低くする③大きい筋群を使用する④重心を移動しやすい姿勢⑤患者を動かす場合は、対象に近づき小さくまとめるなどがポイントとなります。実施者が無理のない姿勢で、効率よく作業できるよう工夫しましょう。二人で実施する場合は、お互いに声をかけ合うなど協力しながら行います。

リネン類は清潔に取り扱い、しわやたるみがなく、崩れにくいベッドを作りましょう。

患者が臥床したまま行う場合は、患者に適宜声かけをし、無理のないよう状態を観察しながら行うことが大切です。

 

まとめ

普段とは異なる環境で療養生活を送っている患者は、それだけで不安やストレスを感じている場合があります。患者が少しでも快適な生活を送れるような環境を提供することは、とても大切なことです。ベッドメイキングは、清潔で居心地の良い環境を提供するだけでなく、感染や褥創の予防にもつながります。また、清潔な環境は患者に安眠や闘病意欲を与え、患者の疾病の回復に影響を与える可能性もあります。また、患者の状態を観察する機会にもなり、それによって患者の状態を把握する機会にもなります。

患者が安心して療養生活を送ることができるよう、崩れにくく快適性の高い環境を提供するための技術を習得しましょう。

Viewing all 681 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>