ICUの専門的治療室に位置付けられるCCU。重篤な患者を収容するCCUでの看護業務は非常にシビアであり、多忙を極めることが少なくありません。しかしながら、その分、一般病棟よりやりがいが多いのも事実です。
ここでは、①集中治療室の種類、②CCU病棟で行う検査・治療、③CCU内に設置(常備)されている機器、④CCU内における医療従事者の配置・役割、⑤CCU内における看護師の役割、⑥CCU看護師の一日の主な流れ、の6つの項目をもとにCCUに関して詳しくご説明しますので、CCUでの勤務を考えている看護師の方は最後までしっかりお読みください。
1、集中治療室の種類
重篤な患者を収容し、24時間監視体制で治療を行う集中治療室は、細分化すると非常に多く、その中でも代表的なのが「ICU」「SCU」「CCU」の3つです。それぞれがどのような役割を果たしているのかみていきましょう。
ICU
ICUは「Intensive Care Unit(集中治療室)」の略で、内科・外科系問わず、呼吸器や循環器、その他の重篤な急性機能不全の患者を集中的に治療・看護を行う病棟です。一般的に集中治療部と言えばICUの事を指し、下に挙げるHCUやCCUなどの“専門的集中治療室”が存在しない医療施設においては、ICUで全てを担い、重篤患者に対して集中的に治療・看護を行います。
≪入院対象となる疾患≫
弁疾患、冠動脈疾患、大動脈疾患(解離性大動脈瘤・腹部大動脈瘤・腹部大動脈瘤)、食道癌、肺癌、膵癌、肝癌、脳腫瘍、脳動脈瘤、頸椎疾患、腎移植、肺炎、敗血症など |
SCU
SCUは「Stroke Care Unit(脳卒中治療室)」の略で、脳梗塞などの脳血管疾患を有する患者の治療・看護を行う病棟です。ICUが集中治療の主体となることから、HCUが完備されている病院ではICUより軽度な患者(脳血管疾患以外も)を収容することが多いのが現状です。つまり、ICUと一般病棟の中間的存在として活用されています。
≪入院対象となる疾患≫
脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、痙攣、てんかんなど |
CCU
CCUは「Cardiac Care Unit(冠疾患治療室)」の略で、虚血性心疾患を中心とした心臓疾患の有する患者の治療・看護を行う病棟です。心疾患は死因の2位であり、CCUに収容される患者の多くは、急変を行うことがよくあることから、患者に対する適切な観察・モニタリング、急変時の迅速な対応が求められ、とりわけ困難な集中治療室に属します。
≪入院対象となる疾患≫
急性冠症候群、心筋症、心不全、重症不整脈、徐脈、弁疾患、大動脈疾患(大動脈解離)、感染性心内膜炎、肺動脈塞栓症など |
集中治療室と言えば一般的にICUの事を指しますが、大規模病院にはSICU(外科系集中治療室)、NCU(脳神経外科治療室)、KICU(腎疾患集中治療室)、RCU(呼吸器疾患治療室)、NICU(新生児集中治療室)、PICU(小児集中治療室)、MFICU(母体胎児集中治療室)、PICU(精神病集中治療室)などがあり、病状・疾患別に細分化されています。
なお、この医療施設の設備によってはこれら複数を統合する場合や、ICUしかない病院であればICUに全て統合するなど、医療施設によって集中治療の形態は異なります。
2、CCU病棟で行う検査・治療
CCUは重篤な心疾患(循環器疾患)を集中的に治療するところであり、CCU内で行う検査・治療は多岐に渡ります。中でも代表的なのが「CAG」「PCI」「IABP」「PCPS」「低体温療法」の5つであり、これらがどのような検査・治療法なのか確実に熟知しておかなければいけません。以下にそれぞれの概要をご説明します。
CAG
CAGとは「Coronary Angiography」の略で、心臓カテーテル検査のことを言い、カテーテルを心臓まで挿入し、心機能の測定や血管造影などを行い、心臓の状態を検査します。なお、CAGには「右心カテーテル法」と「左心カテーテル法」の2種類あります。
「右心カテーテル法」では、①心内圧測定、②心拍出量の測定、③各部位の採血と酸素緩和度の測定、④血管造影などにより心機能の評価を行います。
「左心カテーテル法」では、①心血管造影検査(冠動脈・左心室・大動脈)、②生体検査などにより形態・運動機能評価を行います。
PCI
PCIとは「Percutaneous Coronary Intervention」の略で、経皮的冠動脈形成術のことを言い、風船やステントなどを用いて狭窄した冠動脈を広げて血流を改善する治療法です。
レントゲンによる透視装置を見ながら治療を行い、上腕動脈・大腿動脈・橈骨動脈などからシースと呼ばれる管を挿入し、ワイヤーや風船(バルーン)、ステントを冠動脈に挿入して冠動脈を内側から拡げ血流を確保します。
IABP
IABPは「Intra Aortic Balloon Pumping」の略で、大動脈内バルーンパンピング術のことを言います。急性心筋梗塞などの重症冠動脈疾患や心不全などを有する患者に対して、心臓に近い大動脈に風船(バルーン)のついたカテーテルを留置し、心臓の動きに合わせて風船を拡張・収縮させることで、心臓の代替として補助的に心臓の働きを助けます。
PCPS
PCPSは「Percutaneous Cardiopulmonary Support」の略で、経皮的心肺補助法のことを言い、重症心不全や急性心筋梗塞などの患者に対して、また心肺停止患者に対する心肺蘇生措置として行われます。
遠心式人口心臓、ポンプコントロールユニット、膜型人工肺、酸素供給源、ヘバリンコーティング血液回路、ヘバリンコーティングカテーテルから成る装置を用い、心肺ならびに脳を迅速に蘇生・回復させます。PCRSは一時的な心肺脳蘇生法であることから、その後はPCIなど適切な治療を行います。
低体温療法
低体温療法とは、主に心肺蘇生後の処置として行われ、①再灌流障害を防ぐ、②脳代謝を抑制し酸素消費量を減らす、③脳内Ca2+の恒常性改善による脳神経障害を軽減する、この3つを目的として施行されます。
3、CCU内に設置(常備)されている機器
続いて、CCUに設置されている各機器・器具についてご説明します。CCUは特殊な治療室であることから生命維持に関わりの深い特殊な機器・器具が設置されています。いずれも使用頻度が高く、操作や管理を間違えれば大事に至るため、各機器・器具に関して熟知しておかなければいけません。
①救急蘇生装置・人工呼吸器
気管挿管器具、気管切開器具、用手人工呼吸バッグなど、蘇生法に用いる装置・器具ならびに、適切な換気量の維持、酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減などを図るための人工呼吸器(人口呼吸装置)。
②除細動器
ICD(植え込み型除細動器)やAED(自動体外除細動器)など、心室頻脈や心室細動などの致死的不整脈を止め、心臓の働きを回復させる装置。
③ペースメーカー
洞不全症候群や伝導障害などに対して心臓の調律を図るための機器。洞不全症候群かつ刺激伝導のない患者に適応となるAAIペースメーカー、徐脈が稀に起こる又は心房細動に合併した徐脈に対して適応となるVVIペースメーカー、洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者に適応となるVDDペースメーカー、幅広い症例に適応となるDDDペースメーカーなど、各モードを搭載したペースメーカー。
④輸血ポンプ・シリンジポンプ
点滴静脈注射を施行する際の体内への注入速度・輸液量を調節する機器。輸血ポンプだけでなく、微量に輸液できる(正確な輸注が可能)シリンジポンプも適宜用いる。
⑤心電計
血液循環に際する心臓の拡張・収縮時の微弱な活動電流の波形を記録し、視覚的に読み取ることができる装置。看護師は必ず心電図の読み方を熟知しておかなければならない。
⑥ポータブルX線撮影装置
X線発生器、制御ユニット、接続電源ケーブルから成るCCU内で簡易的にX線撮影ができる小型装置。組立式保持装置または移動式保持装置が設備されている病院も多い。
⑦生体情報連続モニター・心拍出力計
心電図・心拍数・血圧・体温など患者のバイタルサインを継続的に測定・記録(モニタリング)できる装置。
⑧混合静脈血酸素飽和度モニター
酸素消費量の増大、発熱・感染などの代謝亢進、呼吸の低下、ヘモグロビンの低下など、混合静脈血酸素緩和度をモニタリングできるカテーテル器具。
⑨超音波診断装置
超音波により頸部・胸部・腹部・泌尿器などの内臓・組織をリアルタイムに映し出す装置CCUでは循環器に特化した超音波診断装置が設置されていることが多い。
このように、CCUには蘇生装置、輸血機器、モニタリング機器など、特殊な装置・機器が設備されています。これらは患者の病態を観察できるだけでなく、急変時の早期発見のために無くてはならない非常に重要なものであるため、設備されている全ての装置・機器に関してしっかり熟知しておきましょう。
4、CCU内における医療従事者の配置・役割
当項では、CCU内で勤務する各医療従事者の役割についてご説明します。CCUでは概ね、統括を担う「医師」、各医療機器の操作・管理に特化した「臨床工学技士」、看護全般を担う「看護師」、造影などを行う「放射線技師」、リハビリテーションの執り行う「理学療法士」、薬剤の調整・管理を行う「薬剤師」など、さまざまな医療従事者がそれぞれの専門的な業務を行っています。
医師
CCU全体を統括する役割を担い、急変時の治療を行う。日本集中医療学会認定の集中治療専門医、もしくは日本循環器学会認定の循環器専門医など、CCUでの治療または指導的立場にある医師が1名以上従事していることが望ましい。
臨床工学技士
医療機器、特に生命維持装置の操作を担当するとともに、医療機器の保守・点検を行う。CCU内にCCUでの業務に関与できる臨床工学技士またはCCUに専従する臨床工学技士が1名以上従事していることが望ましい。
看護師
医師や臨床工学技士と連携を図り、患者の容態の観察、治療における医師の介助、患者の日常生活の援助、精神的苦痛の緩和など、看護全体の役割を担う。常時、患者2名に対して1名以上、必要時には患者3名に対して2名以上の看護師が従事していることが望ましい。
放射線技師
血管造影に際する造影剤の投与などを行う。CCUでは緊急造影が必要となることが多いことから、放射線技師が施設に常時勤務していることが望ましい。
理学療法士
心疾患から回復した患者に対する心臓リハビリテーション業務を行う。CCU病棟内に1名以上の理学療法士が勤務していることが望ましい。
薬剤師
CCUでの薬剤管理や薬剤調整を行い、DDI(薬物間相互作用)の発生数の減少を目的として、昨今ではCCUにおける薬剤師の必要性が高まっている。
5、CCU内における看護師の役割
CCUは一般病棟とは異なり、急変の可能性が高い患者が収容されていることから、観察(異常の早期発見)、診察補助、医療機器の操作などが看護師の主な役割を担います。
それゆえ、患者の生活援助の機会はそれほど多くはありませんが、一般病棟のようにQOL向上のために献身的に援助することも忘れてはいけません。また、患者家族の対応も重要な役割を担います。
このように、看護師は臨床工学技士や放射線技師など専門職員が通常行わない業務を幅広く実施し、看護全体の役割を担っているため、多角的な視点を常に持ち状況に応じて柔軟かつ迅速に行動する能力が求められます。
■観察(モニタリング)
心電図や生体情報連続モニターなどの装置により患者の状態を視覚的にモニタリングすることができますが、患者の“違和感”や疼痛などの“生理的反応”は見ることができません。
それゆえ、装置を介したモニタリングだけでなく、直に患者の状態を観察することが非常に重要です。特にCCUに収容される患者は急変を来すことが多いため、病態の変化を早期に発見できるよう常時適切な観察が必要不可欠です。
■診察補助、治療介助
X線撮影、混合静脈血酸素飽和度モニター、超音波診断など、医療機器を用いた診察の補助や、治療時の医師の介助などが看護師の主な業務内容と言えるでしょう。
それゆえ、CCUに設置されている装置や器具に精通しておく必要があります。また、患者への直接的な問診(コミュニケーション)も大切な業務の1つです。重篤な循環器疾患を有する患者の中には上手く喋れない場合があるため、積極的にコミュニケーションを図るとともに、患者の状態を適宜確認しなければいけません。
■QOL向上のための環境整備
多くの疾病、循環器系の重篤な疾病においても精神状態が生存率の向上や既有疾患の早期回復、早期離床に深く関係しています。また、精神状態は生活環境に大きく起因しています。それゆえ、看護師は患者のQOLを向上させ、早期回復・早期離床を図るために、環境整備が必要不可欠です。
上述のように、上手く意思疎通ができない患者が多々いるため、適切に観察した上で、患者のニードを満たすべく、清潔保持はもちろん、カテーテル・チューブなどの管や各医療機器のコードなどの場所の把握・着脱防止への工夫など、患者自身または患者の身の回りの環境整備を徹底しなければいけません。
■患者の日常生活の援助
CCUでは、診察や治療に際する補助が看護師の役割の大半を占め、一般病棟よりも頻度は少ないものの、清拭や食事介助などの日常生活の援助も看護師の役割です。また、苦痛や不安の緩和、倫理的葛藤・意思決定などにおける援助など、包括的な視点から患者の日常生活の援助を離床まで一貫して行います。
■患者家族への精神的ケア
重篤な循環器疾患を有する患者は急変の可能性が高く、医療機器に囲まれた状況や面会時間が制限されていることで、患者の今後起こりうる問題への不安、葛藤・混乱・心的不安、抑うつ・フラストレーションなど、患者家族の精神状態は不良と言えます。それゆえ、家族の不安の軽減に努めるともに、可能な限りにニードを満たせるよう支援していくことが必要です。
6、CCU看護師の一日の主な流れ
CCUでは基本的に「①情報収集」→「②患者カンファレンス」→「③KY活動」→「④備品確認」→「⑤処置」→「⑥患者へのケア」→「⑦夜勤専従者への引き継ぎ」という流れがルーティーンとなります。
①情報収集
電子カルテなどで今ある患者の情報を収集することから一日が始まります。
②患者カンファレンス
情報収集が終わった後、各医療従事者が集まり、夜間における患者の変化や当日の検査の内容・治療方針などの情報を共有します。
③KY活動
KY活動とは危険予知訓練のことで、患者や医療従事者における安心衛生の確保を目的として、事故や労働災害について話し合い、危険箇所を見極めた上で、対策立案・目標設定を行います。
④備品確認
CCUで使用する全ての備品を確認・補充など、必要な時に迅速に使用できるよう準備します。
⑤処置
患者の病態に合わせた処置を行います。この時、看護師は医師の介助を行うと共に、処置後の片づけを行います。
⑥患者へのケア
清拭や痛みに対する緩和ケアを行い、術前訪問、問題点や看護におけるカンファレンスなど、看護業務全般を行います。
⑦引き継ぎ
文書などを通して医師や夜勤従事者へ患者情報を引き継ぎ、一日が終了します。
基本的にCCU看護師の一日の流れはこのようになっており、主に⑤処置、⑥患者へのケアが一日の大半を占めています。急変時に迅速に対応できるよう常に神経を張り巡らせ、一日は慌ただしく流れます。それゆえ、看護師は事故防止や患者ケアだけでなく、自己管理も重要な業務の1つです。
まとめ
CCUでは主に重篤な循環器疾患(心疾患)の患者を収容するため、急変時の早期発見ならびに迅速に対応できるよう、観察力・集中力といった能力はもちろん、各機器の操作・管理に精通しておく必要があります。
多忙を極めることが多いものの、その分やりがいも多く、CCUで勤務し続ける看護師は非常に多いのが現状です。新人の頃は覚えることが多く、常に神経を張り巡らせた緊張感のある状況から、投げ出したくなる時も多々あるでしょうが、1つの壁を乗り越えると苦労は喜びへと変わるはずです。
上述のように新人の頃は覚えること(勉強すること)が非常に多いため、当ページを参考に就業前にある程度の知識を深め、今後の看護に役立てて頂ければ幸いです。