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クレブシエラ属とは?クレブシエラ属の原因や症状・治療法を解説

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院内感染の原因菌にはいろいろなものがありますが、その中の1つにクレブシエラ属があります。「クレブシエラ属」と言われても、どのような細菌でどのような感染症の原因になるのかいまいちイメージできない人も多いと思います。クレブシエラ属とはどんな細菌なのか?その特徴や種類、感染の原因、症状や治療法を解説していきます。

 

1、クレブシエラ属とは

引用:腸管系細菌| 細菌の検査 各論|神奈川県衛生研究所

クレブシエラ属とは、水中や土壌など自然界に広く分布しているグラム陰性の通性嫌気性桿菌です。人間の鼻腔・口腔・腸管にも生息していて、正常細菌叢を形成している細菌の1つです。弱毒性であり、本来は非病原性の細菌です。ドイツの細菌学者であるEdwin Klebsにちなんで名づけられました。

大きさは2.0×0.5~1.0μmで腸内細菌科の中で大型であり、大腸菌よりもやや大きめです。赤痢菌と同じように非運動性の細菌で、鞭毛はありませんが、線毛を持っています。また、乳糖分解能を持っていること、さらに大量の莢膜物質を産生し、菌体の2~3倍の莢膜を持っているクレブシエラ属の細菌もあります。

クレブシエラ属は本来は弱毒性であり、正常細菌叢を形成している細菌ですが、多剤耐性が問題になっています。また、抗生剤を投与したことで、正常細菌叢が乱れ、菌交代現象(菌交代症)を引き起こし、免疫低下患者・入院患者で日和見感染を起こし、院内感染の原因となることがあります。

クレブシエラ属には主に、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)とクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)の2種類に分けることができます。クレブシエラ・ニューモニエとクレブシエラ・オキシトカは、厚生労働省院感染対策サーベイランスJANISによると、4:1の割合で分離されることが分かっています。

 

■クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)

クレブシエラ・ニューモニエは、肺炎桿菌と呼ばれる細菌です。クレブシエラ・ニューモニエはインドール非産生の細菌で、生来的にペニシリン耐性を持っています。

クレブシエラ・ニューモニエの中にはESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)を産生することで、第三セフェム系を分解し、耐性を示す株もあります。

 

■クレブシエラ・オキシトカ

クレブシエラ・オキシトカは、インドール産生陽性のグラム陰性桿菌です。クレブシエラ・オキシトカはβラクタマーゼの遺伝子を持っていますが、基質特異性が広いために、第二セフェム系と一部の第三セフェム系に耐性を示すものもあります。

 

2、クレブシエラ属が原因となる感染症

クレブシエラ属は弱毒性であり、鼻腔や口腔、腸管内に生息して、正常細菌叢を形成している細菌です。そのため、健康な人にとっては脅威となる細菌ではありません。

しかし、免疫力が低下している人は日和見感染を起こすことがあり、院内感染の原因菌になることがあります。

感染の原因となる感染経路には次のようなものがあります。

・尿路

・気道

・カテーテル
点滴ルート

・気管チューブ

やけど
・手術の創部

・血液

また、次のような人がクレブシエラ属による感染を起こしやすいです。

・免疫力低下患者

・入院患者

糖尿病患者

アルコール依存症患者

慢性閉塞性肺疾患患者

高齢者

 

3、クレブシエラ属の症状

クレブシエラ属の細菌は次のような感染症・疾患の原因となります。

・尿路感染

・肺炎

・菌血症

・出血性大腸炎

症状はそれぞれ異なりますので、1つ1つ症状を説明していきます。

 

■尿路感染

クレブシエラ属による尿路感染は、主に入院患者に起こり、クレブシエラ属の中でもクレブシエラ・ニューモニエが原因になることが多いです。クレブシエラ属は腸内に生息していますので、それから上行性尿路感染を起こします。

尿路感染症の症状は次のようなものがあります。

・頻尿

・排尿時の疼痛や灼熱感

・尿意切迫

・切迫性尿失禁

・尿の混濁

・血尿

・発熱

尿管から腎臓で尿路感染を起こした上部尿路感染症(腎盂腎炎)では、38℃以上の高熱や腰部・背部痛、嘔気嘔吐、食欲不振などの症状が出ることもあります。

 

■肺炎

クレブシエラ属は院内感染で肺炎の原因となることがあります。クレブシエラ・ニューモニエとクレブシエラ・オキシトカのどちらも肺炎を起こします。

また、アルコール依存症患者、糖尿病患者など基礎疾患を持っている人や高齢者は市中肺炎を起こすこともあります。

クレブシエラ属による肺炎の症状は、次のようなものがあります。

・痰

発熱

・悪寒

・呼吸困難感

・喘鳴

・全身倦怠

・胸痛

クレブシエラ属の肺炎は、重症化すると、大葉性肺炎や壊死性肺炎、肺壊疽、肺膿瘍や膿胸を起こすこともあります。

 

■菌血症

クレブシエラ属のクレブシエラ・ニューモニエは、菌血症の原因になります。入院中にカテーテル感染を起こすと、菌血症を発症します。また、肺炎や尿路感染症からクレブシエラ属の菌血症を起こすこともあります。

菌血症の主な症状は発熱ですが、そこから症状が悪化すると、敗血症に移行し、次のような症状が起こることもあります。

・悪寒

シバリング

・体の疼痛

・皮膚の湿潤

・息切れや頻呼吸

・頻脈

意識レベルの低下(見当識障害など)

血圧低下

敗血症がさらに悪化すると、敗血症性ショックに陥り、生命の危機に瀕することがあります。

敗血症性ショックとは、十分な輸液負荷をしても、平均血圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、さらに血清乳酸値>2mmol/L(18mg/dL)の状態を言います。

 

■出血性大腸炎

クレブシエラ属のクレブシエラ・オキシトカは出血性大腸炎を引き起こすこともあります。

抗生剤が投与された後に、血性の水様便の症状が1~8日間続きます。

抗生剤が投与されたことで、腸内の正常細菌叢が崩れ、クレブシエラ属の細菌が増殖して起こりますが、症例数は多くありません。

 

4、クレブシエラ属の治療方法

クレブシエラ属はペニシリン系の抗生剤には自然耐性を持っていますので、使用することはできません。

クレブシエラ属による感染症の治療に用いるのは、基本的に第3世代セファロスポリン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系の抗生剤です。第3世代セファロスポリン系は、β-ラクタマーゼを産生する菌にも分解されにくいという特徴を持っています。

ただ、これらの第3世代の抗生剤にも耐性を持つクレブシエラ属もありますので、抗生剤を処方・投与する前には、必ず感受性試験を行わなくてはいけません。

また、多剤耐性のクレブシエラ属にはβ-ラクタマーゼ阻害剤を用いた治療が行われることもあります。

しかし、それでも多剤耐性のクレブシエラ属は抗生剤の効果が現れないことも少なくなく、そのような症例では有効な治療法がなく、死亡率が高くなる傾向にあります。

 

まとめ

クレブシエラ属の基礎知識(特徴や種類)、原因や症状、治療方法などを解説してきました。クレブシエラ属は体内に生息し、正常細菌叢を形成している細菌であり、弱毒性ですので、健康な人が感染症を起こすことはほぼありません。

しかし、免疫力が低下している入院患者や基礎疾患を持つ人には感染症の原因になる細菌ですし、多剤耐性の性質を持つものもあり、厄介な病原菌となります。院内感染の原因菌の1つですから、まずは院内感染を起こさない・広げないようにスタンダードプリコーションを徹底して、感染予防に努める必要があります。

 

参考文献

孫野直起 福田光輝 加藤友美 小野健太郎 齊藤隆一 竹田知史 上田哲也 長谷川吉則 坂東憲司「Klebsiella ozaenae による壊死性大葉性肺炎を生じた大酒家の 1 例」  日本呼吸器学会誌第2巻第1号

腸管系細菌| 細菌の検査 各論|神奈川県衛生研究所

藤元メディカルシステム – 先端医療講座 –  Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)

大腸菌、クレブシエラの薬剤耐性に関する調査報告|滋賀県病院協会

名古屋市立大学大学院医学研究科 先進急性期医療学 松嶋麻子「敗血症の定義と診断の変更について」

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