血液内科では、クリーンルーム(無菌室)での治療・看護が行われることが多いです。でも、「クリーンルームって何?」、「無菌室ってどんな患者が入るの?」、「どんなことに気をつけて看護をするの?」という疑問を持っている看護師もいますよね。
クリーンルームの基礎情報と目的や適応、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。
1、クリーンルーム(無菌室)とは
クリーンルームとは、感染予防のために、特別な空調を用いて空気を清潔に保っている部屋のことです。無菌室とも呼ばれます。
クリーンルームでは、高性能の粉塵除去フィルターを使って、空気中の微生物を取り除いています。感染の原因となる細菌やカビは空気中のちりや埃に乗って、患者さんの体内に入り、感染を起こします。
空気中のちりや埃を取り除けば、病原菌となる細菌やカビも取り除くことができ、感染のリスクを下げることができるというわけです。
日本の大病院にあるクリーンルーム(無菌室)はクラス100のものが多いです。クラス100とは、1立方フィートの空気中に0.5μmのちりや埃が100個以下の状態を言います。
引用:脇 房子「血液疾患と無菌エリア」高松赤十字病院 血液内科
0.5μmとは、ウイルスよりは大きいけれど、カビやほとんどのバクテリアよりは小さいという大きさです。
通常の病室はクリーン度が30~50万と言われていますので、クリーンルームの空気の清潔度がいかに高いかは明白です。
ただ、クリーンルーム(無菌室)は完全な「無菌」というわけではありません。高性能フィルターによって、空気中のカビはほぼ取り除くことができますが、バクテリアの一部やウイルスを完全に取り除くことはできません。
2、クリーンルームの目的
クリーンルーム(無菌室)の目的は感染予防です。
疾患や治療によって免疫が低下している患者は、感染を起こしやすいです。一般的な免疫力では感染しないような常在菌による日和見感染を起こすこともあります。
そのため、免疫力が低下している患者は、空気中の病原体を除去したクリーンルームに入室し、感染を予防するのです。
3、クリーンルームの適応
クリーンルーム(無菌室)入室の適応となるのは、白血球が1,000/μL以下・好中球が500/μL以下になったケースです。白血球が1,000/μL以下・好中球が500/μL以下になると、易感染状態になりますので、クリーンルームの適応となります。
白血球が1,000/μL・好中球が500/μL以下になる可能性があるのは、次のような疾患・治療です。
・感染症:腸チフス(細菌性)、エイズや麻疹・風疹(ウイルス性)
・血液疾患:無顆粒球症、急性白血病、多発性骨髄腫、再生不良性貧血、悪性貧血
・脾機能亢進症:肝硬変、特発性門脈圧亢進症
・免疫性:全身性エリテマトーデス、自己免疫性好中球減少症
・薬剤性:抗がん剤や免疫抑制剤の投与
3-1、クリーンルームの適応が多い疾患
クリーンルーム適応となることが多い疾患には、次のようなものがあります。
・急性白血病
・慢性骨髄性白血病
・慢性リンパ性白血病
・再生不良性貧血
・特発性血小板減少性紫斑病
これらの治療には大量の抗がん剤が用いられます。抗がん剤治療により、免疫が低下しますので、クリーンルーム入室の適応になることが少なくありません。
また、造血幹細胞移植の患者もクリーンルームの適応になります。同種造血幹細胞移植前には、正常な造血細胞および悪性の腫瘍細胞を駆逐する目的で、大量の抗がん剤投与や全身放射線照射、免疫抑制剤の投与などが行われます。そうすると、腫瘍細胞と共に免疫細胞も抑制されます。
また、造血幹細胞移植後も生着するまでの2~4週間は、白血球が体内にほとんどない状態が続きます。そのため、移植後は生着するまでクリーンルームで生活し、感染を予防しなければなりません。
4、クリーンルームの看護のポイント
クリーンルーム(無菌室)に入室している患者への看護のポイントは、次の4つです。
・クリーンルームの感染管理
・患者と家族への感染予防の指導
・異常の早期発見
・精神的な援助
この4つの看護のポイントを1つずつ詳しく見ていきましょう。
4-1、クリーンルームの感染管理
クリーンルームは高性能フィルター(へパフィルター)で、常に清潔な空気が流れています。クリーンルームによってはアイソレーターという装置を用いているところもあります。
いくら高性能フィルターがあっても、きちんと感染管理ができていなければ、クリーンルーム内の清潔を保つことができません。
看護師はへパフィルターがきちんと作動しているか、アイソレーターは患者の頭側から足側に向かって流れるように作動しているか確認しましょう。
また、必ず1日1回はクリーンルーム内の室内清掃を行うようにします。
さらに看護師や医療職者のスタンダードプリコーションを徹底し、感染予防に細心の注意を払う必要があります。
<クリーンルームの4原則>
・持ち込まない
・発生させない
・排除する
・貯めない
看護師はクリーンルームの4原則を念頭に置いて、感染管理を行いましょう。
4-2、患者と家族への感染予防の指導
クリーンルームでは、患者と家族への感染予防の指導も重要な看護のポイントです。
患者には手洗いや手指衛生の方法、清潔ケアや口腔ケアの重要性などをきちんと説明する必要があります。また、床に物を落としてしまった時の対応法なども説明しておきましょう。
また、クリーンルームの面会については、病院によってルールが異なりますが、ほとんどの病院で家族のみに限定しています。また、1度に面会できる人数もきまっていることが多いです。
家族にはあらかじめクリーンルームの面会ルールとルールを守る必要性を説明し、面会時の注意点、手洗いの方法なども指導しておきましょう。
クリーンルームの感染管理・患者の感染予防のためには、看護師や医療職者たちの感染管理・スタンダードプリコーション遵守はもちろん、それと同じくらい患者と家族の感染予防順守が重要になります。
そのため、患者と家族の理解度を確認しながら、繰り返し何度も説明・指導するようにしてください。
4-3、異常の早期発見
クリーンルームの患者は免疫力が低下していますので、感染しやすい状態です。いくらクリーンルームで感染予防を徹底していても、感染症を発症することはあります。
クリーンルームではカビが原因のアスペルギルス肺炎は有意に減少しますが、口腔内や腸管内の常在菌による感染を防ぐことはできません。
そのため、看護師は感染予防を徹底すると共に、患者の感染兆候がないかどうかを観察していく必要があります。
また、クリーンルームに入室している患者は抗がん剤の大量投与を受けていることが多く、副作用に苦しんでいることも少なくありません。
抗がん剤の副作用には嘔気・嘔吐、口内炎、下痢、脱毛、全身倦怠感などがありますが、投与直後・投与中にはアレルギー反応や血圧低下、不整脈、呼吸困難などが現れることもあります。また、心機能・肝機能・腎機能障害が起こることもありますので、看護師は副作用の悪化がないかを観察しましょう。
造血幹細胞移植後は移植片対宿主病(GVHD)や移植片対腫瘍効果などの副作用が出現することもあります。
そのため、看護師は異常の早期発見に務めていくようにしてください。
4-4、精神的な援助
クリーンルームで入院することになった患者は、孤立感・拘束感を感じやすく、精神的なストレスを抱えています。
白血病や悪性リンパ腫などの疾患を抱えているだけでも不安が大きく、ストレスを感じているのに、さらに行動制限があるクリーンルームに行くことになると、自分1人だけが孤立したように感じます。また、クリーンルームに閉じ込められているような拘束感・閉塞感を感じやすくなるのです。
看護師はクリーンルームの患者に対して、クリーンルームで入院するおおよその期間、今後の治療予定などを説明すると共に、不安を傾聴していくようにしましょう。
また、孤立感を軽減するために、ケアをする時は感染予防に気をつけつつも、ゆっくりと患者と関わったり、患者・家族の要望にできるだけ寄りそうようなケアを心がけるようにしましょう。
まとめ
クリーンルーム(無菌室)の基礎情報や目的・適応、看護の4つのポイントを説明してきました。クリーンルームの患者は精神的なストレスを感じやすいので、感染管理をしながら、患者の精神的なケアを重視して看護をするようにしましょう。
参考文献
・「クリーンルームで治療を受けられるかたへ」大阪市立大学医学部附属病院 7 階病棟
・造血幹細胞移植|主な血液の病気の解説|診療案内|慶應義塾大学医学部 血液内科
・クリーンルームとは | 北福島医療センター
・柏木知香子 瀬寄有香理 坂田幸代「クリーンルームA入室患者への効果的なオリエンテーションの検討」奈良県立医科大学
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