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ECMOにおける看護|2つのECMOと看護のポイント

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みなさんはECMOを知っていますか。日本ではARDS(急性呼吸促迫症候群)に対するECMOの使用に否定派が多かったということもあり、なかなかECMOが普及しなかった過去があります。しかし、2009年 CESAR trialの結果により、可逆性の高い成人急性呼吸不全の症例に対してECMOが有用であったという結果が報告されました。さらに新型インフルエンザが大流行したことによりさらにECMOの使用が広まりをみせます。新型インフルエンザは、重症化はまれですが、ARDSに至るケース多くみられました。ARDSになった場合、呼吸不全で死に至るケースが多かったのですが、極期を乗り切ると経過は悪くないという特徴がありました。可逆的な呼吸不全が死因となりうるということが幸いし、ECMOの有用性が確認され認知度があがり始めたのです。海外でもECMOの救命例が多数報告され、今日では、日本でも広く行われるようになってきました。

 

1、ECMO(エクモ)とは

ECMO(エクモ)とはextracorporeal membrane oxygenationの略で、人工肺とポンプを利用した体外式膜型人工肺のことで、重症の呼吸不全や、循環不全の患者に対して行われる生命維持のための装置です。重症な呼吸不全患者に用いられる場合は、respiratory ECMO、重症な循環不全患者に用いられる場合はcardiac ECMOと呼ばれていて、心肺蘇生時に用いられる場合はextracorporeal cardio-pulmonary resuscitation(ECPR)と呼ばれています。ECMOは上記疾患に対する保存的療法で反応を示さない患者に対し、呼吸の補助、循環の補助、肺の安静化を図る目的で導入されます。

 

2、ECMOの原理

PCPS(Percutaneous cardio pulmonary support:経皮的心肺補助)という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれません。日本では時々PCPSという用語が用いられることもありますが、PCPSは ECMOとほぼ同義として使用されています。もともと海外ではPCPSという呼び方はせず、ECMOで統一されており、最近では日本と一部の国でしか使用されなくなっています。ECMOは静脈血を取り出し(脱血)、人工肺で酸素化した血液を患者の体内へ戻す(送血)働きをし、脱血と送血の方法によってVV ECMO(静脈から脱血し、静脈に送血する)とVA ECMO(静脈から脱血し、動脈に送血する)に分類されています。VV-ECMOのメリットは呼吸補助として有効で、循環導体への影響も少ないとされていて、VA-ECMOに比べて安全性も高く管理しやすいということです。デメリットとしては直接的な循環補助ができないこと、酸素化された血液が再循環され、酸素化の効率に影響を与える場合があることです。また、AA-ECMOのメリットとしては心機能の直接的な補助が可能であることで、デメリットは動脈穿刺が必要であること、空気塞栓や血栓のリスクがあること、体内の酸素が不均一となる可能性があることなどが挙げられます。

 

MDatl.com

引用:MDatl.com(2017年10月)

 

3、ECMOの適応とメリットデメリット

ECMOが導入される基準を確認していきましょう。

≪VV-ECMO≫

■適応

①重症の低酸素血症

・少なくても6時間以上15~20cmH20のPEEP(呼気終末陽圧)をかけていてもPaO2/FiO2比が80未満の呼吸不全患者など

②代償性の高二酸化炭素血症

・適切な人工呼吸管理を行っていてもpHが7.15未満のアシデミアを伴う場合

③プラトー圧高値

・適切な人工呼吸管理を行ってもプラトー圧(人工呼吸器の呼気弁と吸気弁を設定時間だけ閉鎖し、気道内圧を高く保つこと)が35~45cmH20

■相対的禁忌

・7日以上のプラトー圧が30cmH20を超える場合

・7日以上のFiO2が0.8超える場合

・血管のアクセスに制限がある場合

・ECMOを施行しても利益が得られない臓器の障害がある場合(重度の不可逆性脳傷害や治療困難な悪性腫瘍など)

■絶対禁忌

・抗凝固薬を使用できない患者

 

≪VA-ECMO≫

■適応

・心原性ショック

・急性心筋梗塞

・劇症型心筋炎

・慢性重症心不全急性増悪

・難治性不整脈

・開心術後心不全

・薬物中毒による心不全

■相対的禁忌

・抗凝固療法の禁忌患者
・重症大動脈弁閉鎖不全症
・大動脈解離
・多臓器不全

■絶対的禁忌

・回復の見込みのない心臓移植の患者やLVAD(Left Ventricular Assist Device/左室補助人工心肺)の候補とならない患者

 

4、ECMOにおける看護のポイント

ECMOにおける看護のポイントは以下の通りです。

■ECMOの管理

・ECMOの設定を確認する

・人工肺の酸素濃度、流量の観察

・送・脱血管の色調差の有無

・回路内血栓の有無

・送・脱血管の屈曲の有無

・刺入部の観察

■患者の観察

・血行動態:血圧、心拍数、SvO2、PCWP、CVP、RAP、不整脈、尿量など

・出血の有無

・血栓塞栓症に伴う症状の有無

・感染兆候の有無

・意識レベル、鎮静レベル

・末梢循環:足背動脈の触知、冷感や皮膚の色、疼痛の有無

・挿入部:出血や腫脹の有無など
・褥瘡の有無

 

5、ECMOからの離脱

ECMOを装着した場合、どのような状態になればECMOからの離脱を開始することができるのでしょうか。まず、原因が可逆的か非可逆的かという判断が必要になります。そして触知が可能な動脈圧が少なくとも24時間は維持されていて、平均血圧値が60 mmHg以上であることが重要です。さらに、肺機能障害が重篤ではないことが確認される必要があります。一般的には、ECMO装着後72時間以内に離脱できることはほとんどありません。そう言うと、いったんECMOを装着すると離脱するのは難しいと考える方もいるかもしれません。ECMOから離脱する場合は、ECMO離脱試験を行う方法があります。送血流量を少なくして、右室前負荷を増加させることで、左室後負荷を少なくさせた時に、心機能がどの程度回復するかを評価するために行われます。複数の患者でこの方法を検証した結果多くの患者がこの試験に耐え、ECMOから離脱できた症例がみられました。いずれにしても、離脱直後は、呼吸、循環のバランスがきちんととれているかを観察、評価することが重要であり、万が一の場合に備えECMOの再開も考慮に入れておくことが重要です。

 

まとめ

ECMO装着時の患者は、自分の声で症状や辛さを訴えることができません。そこで重要になるのは観察力です。ECMOの装置に関する機械的な知識はもちろん、患者の変化にいち早く気付くことができる観察力が必要となります。機械というだけで、複雑で取り扱いが難しいという印象を抱く方も少なくないと思います。しかし、ECMOは患者の命をつなぐ大事な手段です。ECMOの看護では安全な管理、患者の苦痛緩和、合併症の予防、環境整備などが目標となります。そのためには、ECMOについての知識を深め、日々の看護から、鋭い観察力を身につけておくことが大切です。

 

参考文献

体外式膜型人工肺 (ECMO)療法(日本医科大学付属病院集中治療室|青景聡之、竹田晋浩)

ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)(東京医科大学八王子医療センター救命救急センター|2018年3月8日)

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