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肋骨骨折の看護|基礎知識や原因、治療方法、4つの看護計画

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肋骨骨折は、交通事故など外傷で起こることが多いですが、咳やゴルフスイングなどによる疲労骨折で起こることもあります。高齢者は肋骨骨折をちょっとしたことで起こしやすいので、整形外科の看護師だけでなく、その他の診療科や介護施設の看護師も、適切な看護ができるようにしておきましょう。肋骨骨折の基礎知識や原因、治療法、看護計画をまとめました。実際の看護の参考にしてください。

 

1、肋骨骨折とは

肋骨は胸椎から前胸部の胸骨までを囲っている骨のことで、左右対象で12対になっていることが特徴です。ただ、第11肋骨と、第12位肋骨は胸骨とはつながっていません。

 

肋骨骨折

出典:肋骨骨折(一般社団法人日本骨折治療学会|正田 悦朗)

 

この肋骨が折れてしまうと、肋骨骨折と診断されます。第4肋骨から第9肋骨が肋骨骨折の好発部位となっています。肋骨骨折が起こると、疼痛や圧痛、皮下出血、腫脹などの症状が現れます。身体を動かしたりすると痛みが強くなります。呼吸するだけで疼痛が増強することもありますし、くしゃみや咳をすると激痛が走るため、くしゃみや咳をするのが困難になります。

 

日々の症例150肋骨骨折

出典:日々の症例 150 肋骨骨折(寺元記念病院画像診断センター)

 

肋骨骨折の診断は、触診とX線撮影が基本になりますが、X線画像だけでは肋骨骨折を判別しにくいことが少なくありません。また、前方の肋軟骨部分の肋骨骨折はX線画像だけでは診断ができません。X線画像だけでは診断が難しい肋骨骨折は30~50%程度あるとされています。

 

2、肋骨骨折の原因

肋骨骨折の主な原因は外傷です。

・交通外傷

・転落

・転倒

これらが原因で肋骨に強い外力がかかることで、肋骨骨折は発症します。

また、これらのような明らかな事故だけではなく、「テーブルの角に間違ってぶつけた」のように日常的に起こり得る軽い外力でも肋骨骨折が起こることはあります。さらに、骨粗しょう症が進んだ高齢者の場合、勢いよく挙手したり、床に落ちたものを拾おうとしただけでも、肋骨骨折は起こります。

肋骨は疲労骨折が起こりやすい部位でもありますので、ゴルフのスイングや咳を長期間続けた結果、肋骨が疲労骨折を起こすこともあるのです。これは稀なケースですが、救命処置中の胸骨マッサージが原因で肋骨が折れるケースもありますね。肋骨は四肢の骨や骨盤に比べると、骨折が起こりやすい部位であり、しかも日常生活内のちょっとした原因で骨折してしまう部位と言えるのです。

 

3、肋骨骨折の治療

肋骨骨折の治療は、基本的には保存療法になります。

通常の肋骨骨折は完治までに4~6週間ほどかかりますので、4週間ほどバストバンドや絆創膏で固定します。

また、疼痛の程度によっては、NSAIDsの座薬や内服薬、湿布を処方することもあります。これが肋骨骨折の基本の治療方法ですが、肋骨骨折によってフレイルチェストを起こしていたり、肺や血管の損傷を起こしている場合は、緊急処置が必要になります。フレイルチェストとは、2本以上の連続する肋骨が2ヶ所以上で骨折した状態です。フレイルチェストが起こると、胸郭の運動が不安定になりますので、奇異呼吸が生じてしまいます。フレイルチェストや血気胸がある場合は、開胸手術や人工呼吸管理、胸腔ドレーンの挿入などの治療が行われます。肋骨骨折の疑いがある場合は、まずはフレイルチェストや血胸、気胸などの合併症がないかどうかを確認することが大切です。合併症がないことを確認してから、保存療法を行います。

 

4、肋骨骨折の看護計画

肋骨骨折を起こした患者の看護計画を見ていきましょう。肋骨骨折の患者の看護問題は、次の4つがあります。

1.血気胸による全身状態の悪化のリスクがある

2.肋骨骨折による疼痛がある(急性疼痛)

3.バストバンド固定による褥瘡発生のリスクがある

4.便秘になるリスクが高い

この4つの看護問題に沿って、看護計画を立案していきましょう。

 

①血気胸による全身状態の悪化のリスクがある

レントゲンやCT画像で血気胸は見られず、バストバンドで固定する保存療法が選択されたとしても、血気胸が起こるリスクはゼロではありません。受傷直後には血気胸が確認されていなくても、その後にじわじわと出血するケースがあります。

また、交通事故などの高エネルギー外傷の場合、受傷1ヶ月以上経ってから、遅発性血胸を起こして、ショック状態となるケースも報告されています。1だから、看護師は肋骨骨折で血気胸はないと診断されても、今後起こるリスクはあることを視野に入れて、異常の早期発見に努める必要があります。もちろん、血気胸の合併が既にあり、胸腔ドレーンなどが挿入されている場合も、出血量が増加したり、呼吸状態が悪化するリスクがあるので、注意して観察しなければいけません。

看護目標 異常の早期発見ができる
OP(観察項目) ・バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸回数、SpO2)

・呼吸状態

・呼吸苦の有無

・X線画像
・胸痛の有無
・チアノーゼの有無

・胸腔ドレーンの排液量や排液の色、性状

EP(教育項目) ・呼吸苦などの異常を感じたら、すぐに報告してもらう

異常の早期発見のためには、とにかく観察が重要です。「ただの肋骨骨折」と考えずに、血気胸のリスクを考慮しながら、看護をしていきましょう。

 

②肋骨骨折による疼痛がある(急性疼痛)

肋骨骨折は、動くだけで疼痛を感じますし、呼吸をするのすら辛いこともあります。肋骨骨折の患者には、疼痛緩和のケアをしていかなければいけません。

看護目標 ・疼痛が緩和したという言葉が患者から発せられる

・良眠できる

OP(観察項目) ・バイタルサイン

・痛みの部位

・痛みの程度(ペインスケールを用いて)

・食事量

・睡眠の状況

・言葉による疼痛の表現

・痛みが増悪するきっかけや体位など

TP(ケア項目) ・安楽な体位の工夫

・医師に指示された鎮痛薬の投与

・冷罨法

・気分転換を図る

・不安の傾聴

EP(教育項目) ・レスキュー薬が使えることを伝える

・痛みは我慢しなくて良いことを伝える

 

③バストバンド固定による褥瘡発生のリスクがある

肋骨骨折の保存療法でバストバンド固定をしていると、バストバンドが原因で褥瘡ができてしまうリスクがあります。看護師は、バストバンドをしていても褥瘡が発生せず、皮膚が正常な状態を保つことができるようにケアをしていきましょう。

看護目標 褥瘡が発生しない
OP(観察項目) ・バストバンドが当たる部分の皮膚の状態

・血液検査データ(栄養状態)

・皮膚の湿潤の有無

・疼痛や掻痒感の有無

TP(ケア項目) ・バストバンドは定期的につけ直す

・締め付け過ぎないように注意する

・必要時は皮膚保護剤を塗布する

・必要時は予防のためのフィルムドレッシング材を使用する

EP(教育項目) ・皮膚の発赤や掻痒感、痛みを感じたら、すぐに報告してもらう

・バストバンドの固定の仕方を指導する

・栄養状態が良いと褥瘡ができにくいことを伝え、食事をしっかりとるように指導する

 

④便秘になるリスクが高い

肋骨骨折の患者は、高頻度で便秘になります。疼痛によって運動量が減る、スムーズにトイレに行けなくなる、いきめなくなるなどの要因があるので、どうしても便秘になりやすくなります。そのため、看護師は便秘になるリスクが高いことを考慮して、便秘にならないように看護をしていかなくてはいけません。

看護目標 ・便秘にならない

・便秘による悪心や食欲不振などの症状が現れない

OP(観察項目) ・バイタルサイン

・疼痛の程度

・食事量、食欲

・悪心や腹部膨満感の有無

・普段の便通の頻度

・水分摂取量

TP(ケア項目) ・温罨法

・水分摂取を促す

・医師に指示された鎮痛薬の適切な投与

・腹部マッサージ

・トイレが近い病室を用意する

・車イスや歩行器などでトイレに行きやすいようにする

・医師に相談して必要時は便秘薬を処方してもらう

・痛みの程度に応じて、安静度の範囲内で体を動かしてもらう

EP(教育項目) ・水分摂取の必要性を説明する

・便意は我慢しないように伝える

 

まとめ

肋骨骨折の基礎知識や原因、治療方法、看護計画をまとめました。肋骨骨折は、あまり重症なイメージはないかもしれませんが、血気胸でショック状態に陥ることもありますし、痛みで日常生活を送ることができないことも多いです。肋骨骨折の患者は、整形外科に多いですが、それ以外の診療科でも適切な看護ができるようにしておきましょう。

 

参考文献

1)肋骨骨折に伴う横隔膜損傷による遅発性血胸の1例(日本呼吸器外科学会雑誌25巻7号|奥谷大介、森山重治|2011年11月)

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