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感染症認定看護師の役割と入学・資格取得に際する試験対策

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感染管理認定看護師

感染症の予防や蔓延時に適切に対処できる能力を有する感染管理認定看護師は、すべてに医療機関にとって必要不可欠な存在であり、年々その需要は増加しています。

感染管理認定看護師になるためには、指定の教育機関で課程を修了し試験に合格しなければいけないため、中には高い壁を感じる人も多いのではないでしょうか。

当ページでは、教育機関への入学試験・課程修了後の認定審査(筆記試験)の対策について詳しく解説していますので、感染管理認定看護師を目指している方は、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

 

1、感染管理認定看護師とは

感染管理認定看護師は、1998年より日本看護協会によって認定され、感染管理において熟練した看護技術および知識を有する者(教育課程を経て)にのみ与えられる資格のことです。

認定が開始された当時、院内感染の発生率は非常に高く、感染の拡大が問題視されていました。

感染の予防対策や継続的な管理、再発予防における発生状況の検査・集計(サーベイランス)などの知識・技術は、看護経験の積み重ねだけでは習得し難く、それゆえ医療施設において感染管理におけるキーパーソンとなる人材の育成を目的として、他の領域に先駆けて早々に制定されたのです。

感染管理認定看護師は、「疫学」、「感染管理学」、「感染症学」、「微生物学」、「統計学」、「医療関連感染サーベイランス」、「医療管理学」、「職業感染管理」、「感染防止技術」、「感染管理指導・相談」、「洗浄・消毒・滅菌技術」、「ファシリティマネジメント」など、感染に関するさまざまな知識・技術を包括的に習得した上でなることができる感染管理のスペシャリストであり、院内感染が後を絶たない昨今、各医療機関における感染看護認定看護師の必要性はますます高まっています。

 

2、役割・活動内容

院内における感染リスクを低減するために、「実践」・「指導」・「相談」の3つの内容に則って、「①予防・対策」「②医療関連感染の発生の監視」「③職業感染対策」「④すべての職員への感染対策指導」「⑤病院環境のファシリテーター」「⑥感染管理システムの構築」、の6つの業務を包括的かつ実践的に行うのが感染管理認定看護師の主な役割です。

 

①予防・対策

すべての人の血液・体液・汗を除く分泌液・粘膜・排泄物・損傷のある皮膚は感染性があると捉え、手技時や術前・術後のみならず日常生活においても感染症の発症・蔓延に努め、感染時には迅速に標準予防策ならびに感染経路別予防策を実施するとともに、職員に対して適切な実施を促す。

 

②医療関連感染の発生の監視

全体的な院内感染の発生状況のみならず、中心静脈カテーテル関連血液感染、手術部位感染、人工呼吸器関連など、多方面から包括的にサーベイランスを行い、得たデータをもとに日常的な対策案を具体化・実施する。

 

③職業感染対策

針刺しによる医療従事者などへの感染を防止するために、リキャップの禁止や注射針専用の破棄容器の適切な配置、安全器材の活用など、感染予防対策を講じると共に、指導と監察を行う。

 

④すべての職員への感染対策指導

全病棟のラウンド・点検を行い、感染対策が適切に行われているか確認し、不備がある場合には院内感染予防の観点から指摘・改善指導・教育を行う。また、院内感染の重大性を周知させるために啓発活動や感染対策教育における企画・運営を行う。

 

⑤病院環境のファシリテーター

病院の衛生管理におけるファシリテーターとして、日常的な感染リスクの低減のために、集団による問題解決・知識創造活動など、率先して病院全体の環境改善を行う。

 

⑥感染管理システムの構築

各種マニュアルの作成、サーベイランスの方法、アウトブレイク時の対応など、院内感染対策における体制を整備し、問題発生時には迅速かつ適切な改変を行うとともに、すべての職員への周知を促す。

 

3、認定取得へ向けた取り組み

感染管理認定看護師になるためには、看護師としての経験・技術を有した上で、日本看護協会が認める教育機関での課程を修了し、認定審査(筆記試験)に合格する必要があります。

第一段階として、6か月(615時間以上)に及ぶ教育課程を修了することが必須となりますが、各教育機関への入学に際して以下のような入学要件が定められているため、誰でも入学・履修できるわけではありません。

 

教育課程の入学要件

①免許取得後、通算5年以上の実務実績を有すること。

②上記の実務期間のうち、通算3年以上、感染管理に関わる下記のような活動実績を有すること。

最新知見や自施設のサーベイラインスデータ等に基づいて、自身が中心となって実施したケアの改善実績を1事例以上有すること。医療施設において、医療関連感染サーベイランス(血流感染、尿路感染、肺炎、手術部位感染)について計画から実施・評価まで担当した実績を一つ以上有することが望ましい。

③現在、医療施設などにおいて、専任または兼任として感染管理に関わる活動に携わっていることが望ましい。

 

カリキュラム

科目 科目名 単位数 総単位数
共通科目 看護管理 15 105時間

(+30時間)

情報管理 15
看護倫理 15
リーダーシップ 15
文献検索・講読 15
指導 15
相談 15
対人関係(選択) 15
臨床薬理学(選択) 15
専門基礎科目 感染管理学 30 140時間
疫学・統計学 35
微生物・感染症学 60
医療管理学 15
専門科目 医療関連感染サーベイランス 45 120時間
感染防止技術 30
職業感染管理 15
感染管理指導・相談 15
洗浄・消毒・減菌と

ファシリティマネジメント

15
学内演習 総合実習 90 90時間
実習 臨地実習 180 180時間

※単位は教育機関によって異なる

 

教育機関

都道府県 教育機関名
北海道 北海道医療大学 認定看護師研修センター
東京都 国立看護大学校 研修部
日本看護協会看護研修学校
神奈川県 神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター
北里大学 看護キャリア開発・研究センター 認定看護師教育課程
石川県 石川県立看護大学付属看護キャリア支援センター
長野県 長野県看護大学 看護実践国際研究センター
愛知県 愛知医科大学 看護実践国際研究センター 認定看護師教育課程
三重県 三重県立看護大学 地域交流センター
兵庫県 日本看護協会神戸研修センター
山口県 山口県立大学 看護研修センター
福岡県 国際医療福祉大学 九州地区生涯教育センター
宮崎県 宮崎県立看護大学 看護研究・研修センター
沖縄県 沖縄県看護協会

 

3-1、教育機関への入学試験対策

教育機関にて課程を受けるためにはまず、各教育機関が実施する入試に合格しなければいけず、これは多くの看護師にとっての悩みの種と言えます。というのも、課程修了後に行われる認定審査(筆記試験)では、課程の中で勉強した問題が大半を占めるため、範囲を特定しやすいため、すべての領域において90%以上の合格率を誇っています。

しかしながら、教育機関への入学試験では範囲が非常に広く、年度ごとに大きく変更されることがあるため、合格率はおおよそ20%~50%程度(未公表)と低いのが実情です。

入学試験には主に「①学科試験(筆記)」「②小論文(800~1200文字程度)」「③面接」で構成されており、中でも難しく配点割合が高いのが「学科試験(筆記)」です。各教育機関によって出題範囲・問題は異なるため、入学を希望する教育機関の出題傾向をしっかりとリサーチしておく必要があります。

 

①学科試験(筆記)

学科試験で好成績を残すためには、まず感染に関連した看護師国家試験出題基準を再確認するとともに、各教育機関の過去問を入手することが第一となります。

看護師国家試験出題基準(感染関連)
必須問題 感染に関する問題
薬理学 おもな抗生物質の概要
微生物学 微生物に関する知識全般
公衆衛生学 保健活動、感染対策に関する法規(感染症法・予防接種法・学校保健衛生法)
関係法規 労働安全衛生法(伝染病患者における就業禁止関連)
基礎看護学

基礎看護技術

感染予防技術、看護の管理(安全管理)
成人看護学総論

成人看護学

人口静態・動態と成人の疫病(感染症関連)、血液(成人T細胞白血病・輸血)、呼吸器(肺炎・結核)、消化器(肝炎)、アレルギー・膠原病(抗原と抗体)、皮膚(感染症・皮膚の整理とスキンケア・帯状疱疹患者の看護)、目・耳鼻咽喉・歯(炎症性の疾患・口腔清掃)、女性生殖器(外陰炎・クラミジア感染症・真菌性膣炎・トリコモナス膣炎)など
小児看護学 感染症の小児の看護、小児の生理(免疫)、幼児の看護(予防接種)

※年次により改変

 

過去問に関しては、前年度分の過去問を一般公開している場合や入学説明会に参加することで閲覧できる場合など、各教育機関によって入手方法が異なります。おおむね、入学説明会に参加すれば入手できるため、入学を希望する教育機関の説明会には必ず参加しておきましょう。

 

②小論文

小論文では、テーマに対して自分なりに問題を提起し、その根拠を示すとともに読み手を納得させることが求められます。テーマは毎年、各教育機関で異なるため、とにかく書く練習をするしかありません。また、都度、小論文に精通した専門家に校正してもらう必要があります。

 

小論文で高得点をとるためのポイントは、

①テーマに込められた“意図”を読み取る

②自分の意見や考えを“論理的”かつ分かりやすく書く

③制限時間内にできるかぎり指定の“文字数”に近づける

④作文に求められるような感性豊かな“言い回し”を使わない

など、たくさんあります。

 

ただし、小論文で高得点をとるには多大な時間を費やすくことになり、さらに教育機関によって異なりますが、小論文の配点割合は全体の3割程度なので、時間がない場合には小論文はほどほどにし、配点割合が5割の学科試験に注力するのが効率的かつ効果的な勉強法と言えるでしょう。ただし、言うまでもありませんが、配点割合が3割だからと言って小論文を疎かにしすぎるのは論外です。

 

③面接

面接では、主に事前に提出した書類(志望理由など)をもとに質疑応答が行われるため、提出書類に書いたことは何を聞かれても矛盾なく的確に応えられるように準備してください。

面接では、感染管理における経験や知識ではなく“人間性”がみられます。経験はともかく、知識は教育課程を履修すること解決されるため、いかに自分が感染管理において豊富な経験・知識を有しているかを話しても効果は薄いと言えます。

それよりも、「なぜ認定看護師になりたいのか」、「認定看護師になって何がしたいのか」、「教育課程で何を学び、どのように活用していくのか」など、将来に対する姿勢・展望を具体的に伝えることが重要です。

また、社会人としての適切なマナーを身につけているかも見られるため、面接試験の対応やマナーの基礎もしっかりと復習しておきましょう。

 

3-2、認定審査対策

教育課程を修了した後に行われる認定審査(筆記試験)では、四肢択一・マークシート方式で行われ、計40の問題が出題されます(制限時間100分)。

出題方式 問題数 配点
問題1:客観式一般問題 20問 50点
問題2:客観式状況設定 20問 100点
40問 150点

また、合否の基準は、A評価:120点以上、B評価:120~105点、C評価:105点未満となり、A評価・B評価、つまり105点以上が合格となります。合格率は例年90%であるため、そこまで心配する必要はありません。

認定審査では、教育課程の範囲(感染管理カリキュラム)が出題されるため、教育課程でしっかり学び、復習をすれば容易に基準点を超えることができます。ただし、認定看護師を目指す方の多くは、教育課程修了後に職場復帰をし、学んだ内容を忘れがちなので、認定審査を受ける際は、しっかりと勉強しておきましょう。

なお、認定審査の過去問(前年度分のみ)は、課程を修了した後に受講した教育機関で閲覧することができます。

 

4、感染管理認定看護師の求人・転職について

認定看護師の数ある領域の中で最も需要が高いのが「感染管理」領域です。感染症は私たちにとって身近な疾患であり、さらに感染経路は多岐に渡り、一度院内感染が発生すると瞬く間に広がり収集がつかなくなる非常に厄介な疾患であることから、予防法や蔓延の対処法に精通した感染管理認定看護師は、すべての病院にとって無くてはならない存在なのです。

認定看護師制度は広く周知されるようになりましたが、それでも優遇面においては未だ確立されていなく、感染管理認定看護師になったとしても給料が大きく増加することはありませんが、転職に困ることはまずないと言っても過言ではありません。また、同一医療機関で長期的に働く場合にも優遇処置がとられることが多いため、安定的に仕事をすることができます。

 

まとめ

感染管理認定看護師の人数は2015年時点で1053人で、21領域中、最も多くの看護師が認定を受けています。しかしながら、それでもまだ不足状態にあるのが実情です。

感染管理認定看護師になるためには、6か月以上にもおよぶ教育課程を修了し、試験に合格する必要があり、また費用もかかりますが、必ず役に立つ資格ですので、患者や医療関係者のため、ご自身のために、ぜひ資格取得に向けて勉学に励んでくださいね。


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