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看護研究(看護論文)の文献を効果的に検索する方法とコツ

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看護研究(看護論文)

看護研究は、多くの医療関係者の参考資料となり、看護全体の質の向上を図る上で非常に役に立ちます。現在では、さまざまなテーマが取り上げられており、各領域において何か分からないことがある際に先行研究を参考にすれば、疑問を払拭することが出来ます。

また、看護研究実施者として、研究内容を濃いものにするために、先行研究の内容を把握しておく必要があります。ただし、先行研究を探すのはインターネットに慣れていない方にとって少し難しいかもしれません。

ここでは、先行研究を検索するコツなどについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、先行研究を知る必要性

まず、冒頭で述べたように、これまでに実施されてきた先行研究を読むことで、早期に疑問を解決することができます。看護研究で取り上げられているテーマは、実施者が疑問に感じること、つまり多くの看護師ならびに医療従事者が疑問に感じていることであり、それまでに確実な“根拠”がなかった事柄なのです。

要するに、「解決への新たな糸口」がその研究で明確にされているため、看護研究実施者だけでなく、すべての医療従事者にとって有益となる情報なのです。

患者に対してケアを行うに当たって、「この状況化でどのように行動したらいいか」、「これは本当に患者のためになるのか」、など疑問に感じることがあれば、その疑問点について書かれている文献を読むことで疑問点を取り除くことができる(解決の糸口を見つけられる)ため、文献の必要性は非常に高いと言えます。

また、看護研究実施者にとって文献は必要不可欠な資料と言えます。看護研究では、「①テーマ」「②序論」「③方法」「④結果」「⑤考察」「⑥要約」「⑦文献」の構成が一般的であり、「⑦文献」が無ければ根拠のない研究になってしまいます。

テーマ(タイトル)

・誰にどんな目的で何を明らかにしたのか

序論

・背景:対象者の特徴、現状、社会情勢

・動機:なぜ研究をしようと思ったのか

・意義:研究する理由、研究のメリット

・文献検討:先行研究がどこまで進んで、どこがまだか

・研究目的:研究疑問に合わせて何を明らかにするか

方法

・対象者:対象者の条件、事例紹介

・データ収集:データの収集方法、項目の作成方法

・分析方法:データをまとめた具体的な分析方法

・研究期間:データを収集した期間

・倫理的配慮:対象者の権利擁護、実施した安全確保の対策

結果

・対象者:性別や年齢など基本属性、対象者数

・分析の結果:図や表をもとにした分かりやすい分析結果

考察

・結果までの内容の概略を示す

・結果の解釈や私的・個人的な意見

・先行文献との比較

・結果からみる今後の課題

要約

・研究で明らかになったことを簡潔にまとめる

文献

・本文で引用した文献のリスト

 

看護研究を行う上で、先行研究を参考にすることは、「①用語の定義を明確にする」「②先行研究の内容を知る」「③研究テーマの知識を深める」などの役割があり、必ず読んでおく必要があるのです。

 

①用語の定義を明確にする

看護研究において、読み手にとって疑問を感じさせないよう、普段なにげなく使っている用語においても、意味や範囲をしっかりと明確にしなければいけません。たとえば、「口腔ケア」という用語に対して、“狭義の口腔内清掃と口腔機能維持・回復のための技術およびそれらを目的とした口腔内アセスメントのこと”というように定義づけます。同じ領域またはテーマの先行研究には、これから書こうとしている研究内容に含まれる用語が多数出てきますので、この用語の定義づけにおいて非常に役に立つのです。

 

②先行研究の内容を知る

先行研究の内容を知ることで、重複を避けることができます。既に行われた研究をそのまま再度行うのは無意味であり、同様の場合は違う角度から実施する必要があります。また、似たような内容であれば、先行研究を参考にすることで時間と労力を割くことができ、研究に注力することができます。余計な時間と労力を費やしてしまうと、実施している研究の内容が稀薄になってしまうため、同じ領域・分野の先行研究の内容を把握し、反映させる必要があります。

 

③研究テーマの知識を深める

研究に精通している専門家は当然、同じ分野の先行研究を熟知しています。同じ分野の先行研究を「どこまで正確に把握しているか」、「第一人者は誰なのか」、「起源はいつなのか」など、深い知識を有しておかなければ、根拠がなく正確性に欠ける研究であると受け止められてしまいます。ゆえに、同じ分野の先行研究はもちろん、他分野でも関係の深い先行研究があれば必ず目を通しておかなければいけません。

 

2、先行研究をどのくらい熟知しておくべきか

まず、同じ分野または関係の深い分野の先行研究に対する知識量が多ければ多いほど、実施する研究の質は高くなります。それゆえ、時間が許す限り、多くの先行研究に熟知しておくことを強くお勧めします。

 

同分野の先行研究が少ない場合

同じ分野の先行研究が少ない場合には、存在する論文をすべて読破すると共に内容を完全に把握することが必須です。また、関係の深い先行研究(または類似用語が多発している研究)においても、ある程度熟知しておきましょう。

 

同分野の先行研究が多い場合

同じ分野の先行研究が大量にある場合には、質の高いものを“精選”することが大切です。質の高い論文は何度も引用されているため、先行研究を読む際には必ず“文献”・“引用文献”と書かれている項目に注目し、必要あれば書き留めておきましょう。

 

また、「考察」の項目もしっかりと読んでおきましょう。「考察」は“解決のための課題”、すなわち“研究によって明るみになった問題点”であり、参考にする上で最も有益な情報ですので、どの項目よりも時間をかけて熟読することをお勧めします。

 

3、文献の種類と信頼度

看護研究の文献の種類には、大別すると「会議録・レター論文」「原著論文」「総説」「大系書・教科書」があります。これらはインターネットで無料閲覧できるものから、有料でしか見られないもの、書籍として購入または図書館でしか読めないものなどさまざまです。

 

会議録・レター論文

学会や研究会で発表された内容が要約されているもので、研究内容や方法、結果、考察などが書かれていますが、主に口頭で述べられた要約文書であり、1ページにも満たない場合が多く、文献の中で最も信憑性が低いため、看護研究の参考文献としては不適切とされています。

 

原著論文

原著論文とは、一般的に認識されている論文のことであり、方法や結果、考察など、研究実施者がまとめ上げた最終の研究結果が細かく記述されています。多くはインターネット上で無料閲覧が可能で、主に雑誌に掲載されています。研究結果のすべてが記述されているため、信憑性は会議録・レター論文より高いものの、データが不十分など内容に不備のあるものも多く、参考にする際には精選する必要があります。

 

総説

総説とは、各分野・領域における権威者が、先行研究を批判的視点で多角的に内外の知見を集めた上で、総合的に学問的状況を概説・考察したものであるため、会議録・レター論文や原著論文よりさらに信憑性が高く、精選しなくても参考文献として選択できます。総説はインターネットで有料閲覧または雑誌(購買)で読むことができます。

 

大系書・教科書

大系書・教科書は知見としてすでに定着しているものであるため、文献の中では最も信憑性が高く、同分野・領域の研究において欠かせない情報源です。ただし、原著論文や総説に比べて最新の情報を得にくいため、大系書・教科書のみを参考にせず、各文献を包括的に読む必要があります。なお、大系書・教科書は基本的にインターネット上で無料・有料閲覧が不可能で、大学や医療機関等の図書館、または書籍を購入しなければ読むことができません。

 

このように、看護研究の文献の種類はさまざまあり、下にいくほど信憑性が高いため、参考または引用する際には、総説や大系書・教科書など信憑性が高い文献を選んでください。原著論文は最新の研究結果が多く、知識を増やす上で非常に役に立ちますが、内容に不備があるものもあります。参考・引用する際には他で多く引用されている質の高い文献を率先して選びましょう。

 

4、文献検索のコツ

先行研究の文献を検索する際、インターネットが主な媒体になると思いますが、インターネットに慣れていない方は、目当ての文献に辿り着かないことがあるでしょう。この問題のほとんどは、“検索にかけるキーワード”に不備があるためです。

キーワード検索のコツを知れば、どなたでもお目当ての文献に辿りつくことができますので、以下に解説する「検索アルゴリズムを理解する」「シソーラスを活用する」Google・Yahooで検索する際の裏ワザ」の3つのポイントをしっかりお読みください。

 

4-1、検索アルゴリズムを理解する

GoogleやYahoo、医中誌などのwebサイトでは、検索アルゴリズムが使用されています。アルゴリズムというのは、いわゆるコンピュータが計算を行う時に「計算方法」のことを言いますが、検索をかける際に使用するキーワードと同様、または類似のキーワードが記述されている情報のみがピックアップされるシステムが構築されています。

たとえば、GoogleやYahooで「医療事故」というキーワードを検索すれば、「医療事故」について書かれているページがすべてピックアップされます。主にサイトのタイトルに書かれているキーワードが対象となり、「医療事故」の場合、”約1,540,000件”もの「医療事故」について書かれている(タイトルに使われている)ページがピックアップされるのです。

google

「医療事故」というキーワードは非常に大きいため、「医療事故に関する看護研究」をなかなか見つけることができません。それゆえ、たとえば「医療事故 看護研究」というように、スペースを用いて2つ以上の連続したキーワード使用して絞り込むことで、検索結果が”479,000件”にまで減り、より容易に目当ての情報を探し出すことができます。

google

4-2、シソーラスを活用する

検索アルゴリズムを踏まえた上で、シソーラスを活用することで、さらに容易にお目当ての情報を探し出すことができます。シソーラスとは、いわゆる「同類語」のことであり、検索にかけたキーワードと同様または類似の意味を持つ言葉群のことを指します。

GoogleやYahooには数多のサイトが掲載されていますが、医中誌などの文献検索WEBサイト(以下、データベース)に掲載されている看護研究の文献数は少ないため、“適切なキーワード”で検索をかけなければ、目当ての文献を見つけることができません。

ここで役に立つのがシソーラスであり、「医療事故」についての文献を調べたい場合に、「医療事故」と検索しても見つからない場合には、同義語または類似語である「事故」「アクシデント」「看護事故」「医療過誤」「看護過誤」というキーワードを使うことで、見つかることが多々あります。

看護研究が掲載されている医中誌などのデータベース上では、論文や雑誌など“タイトルに使われているキーワード”が主な検索対象であることから、1つのキーワードだけでなく、関連するキーワードを駆使し検索する必要があるのです。

 

4-3、Google・Yahooで検索する際の裏ワザ

看護研究を探す際の主な媒体は医中誌などのデータベースを主体として活用しますが、学会を通していない、たとえば病院独自の研究文献が多々存在します。これらの文献は、看護研究の引用・参考資料としては不足な部分もありますが、多角的に知識を増やす上で非常に役に立ちます。

これらの文献を探す際には、GoogleやYahooを使用することになりますが、医療に従事していない者が執筆したもの(ブログ)なども検索に引っかかるため、必ず精選しなければいけません。

精選の方法として最も有効なのは、「目当てのキーワード」+「ac.jpまたはor.jpで検索することです。「ac.jp」は「Academic Japan」の略で日本の教育機関にのみ取得が許されたURLのことで、「or.jp」は「Organization Japan」の略で日本の法人組織にのみ取得が許されたURLです。

大学や病院などの教育・医療関係機関の多くは、ac.jpまたはor.jpがサイトのURLとなっているため、目当てのキーワードにac.jpまたはor.jpを加えることで、教育・医療関係機関のみが検索結果としてピックアップされます。それゆえ、質の高い文献をより簡単に見つけ出すことができるのです。

例:「医療事故 ac.jp」、「医療事故 or.jp」、「医療事故 事例 ac.jp」、「医療 事例 or.jp」

google

看護研究の参考文献としてだけでなく、日々の業務で感じた疑問点などがあれば、上述のような方法で検索してみてはいかがでしょうか。

 

5、文献検索のデータベース

看護研究の文献を検索できるデータベースは「医中誌」CINAHLCiNii ArticlesPubMedなど数多く存在します。特に、「医中誌」・「CINAHL」は多くの大学・医療機関が組織単位で契約しており、各機関の図書館に設置してあるパソコンから無料で検索・閲覧することができるため、多くの医療従事者にとって身近なデータベースと言えます。

その他、日本看護研究学会や日本看護協会など独自に発行している論文・学会誌も各サイトから閲覧することができます。網羅的に調べたいという場合には、複数のデータベースを活用しましょう。

ただし、個人利用においては、基本的に有料(登録制・従量制など)であるため、無料で全文閲覧したい場合には、各大学・各病院の図書館を利用するのが良いでしょう。

 

5-1、医中誌

医中誌(NPO医学中央雑誌刊行会)は、日本で最も権威のある文献検索データベースと言っても過言ではなく、多くの大学・医療機関の図書館に設置してあるパソコンに導入されています。

個人で利用する場合には登録が必須で月額がかかるものの、図書館などのパソコンからは無料で利用することができます。医中誌から閲覧できる全ての文献は日本のもので、日本語で書かれているため、文献検索において第一選択となるデータベースです。

対象分野 医学、薬学、歯学、看護学、獣医学などの関連分野
対象資料 日本で発行される学研究会誌、業界誌、商業誌、大学や病院などの紀要・研究報告
対象文献 会議録、学会抄録、原著論文、総説、症例報告など(約5000誌)
収録期間 月2回(毎月1日・16日)

 

医中誌パーソナルWeb (個人で利用する場合)

 

5-2、CINAHL(シナール)

CINAHLは、Cinahl Information Systemsが運営する、全世界の看護・保健・医療分野の文献情報を網羅的に収載したデータベースです。通常のCINAHLの収録誌数3000誌以上ですが、上位版のCINAHL Plusは5000誌以上、最上位版のCINAHL Completeは5200誌以上の雑誌論文を収録しています。

医中誌と同様、多くの大学・医療機関に設置してあるパソコンから無料で利用することができます。すべての文献は英語で書かれており、日本語に翻訳されていませんが、英語を理解できる方は医中誌以上に役立つデータベースになるかもしれません。

対象分野 看護・保健・医療
対象資料 全世界
対象文献 論文の書誌情報・抄録、健康管理に関する書籍情報、看護学系学位論文情報など(約3000誌以上)
収録期間 毎週

 

5-3、その他

医中誌やCINAHLのほかにも、文献を検索できるデータベースは多々あるため、実施するテーマに関係の深い先行研究が少ない場合や、多角的に情報を取得したい場合には、ぜひ以下のデータベースを利用してみましょう。

料金形態 概要
CiNii Articles 有料

一部無料

国立情報学研究所が運営する学術論文や雑誌・図書など、約1800万件の学術情報を検索できるデータベースで、看護・医療関係の論文も数多く収録している。
メディカルオンライン 有料 株式会社メテオが運営する、医師や看護師など医療関係者に向けた医療情報の総合WEBサイト。医療情報に加え、文献・論文などを検索・閲覧することができる。
日本看護研究学会 基本無料 日本看護研究学会が開催する年1回の学術集会、年間5号の学会誌、5つの地方会での研究活動報告などを閲覧することができる。
日本看護協会 有料 日本看護協会図書館に所蔵されている国内発行の看護の実践・研究・教育に関する文献や雑誌を数多く検索・閲覧することができる。ただし、会員登録が必須。
MedicalFinder 有料 医学書院ならびに提携するその他の出版社・学会が発行する医学・看護領域の学術雑誌を掲載している。全文閲覧には個人購読契約またはPPVでの購入が必要。
PubMed(MEDLINE) 基本無料 米国国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する学術文献検索データベース。世界中の主要医学系雑誌に掲載された記事・論文を検索・閲覧できる。すべて英語表記。

 

まとめ

このように、文献を参考にする意義は非常に大きく、日常業務を行う看護師など医療従事者ならびに看護研究実施者にとって有益な情報です。

検索にはややコツがいりますが、当ページで解説した方法を駆使し、効率的に目当ての文献を見つけてください。検索方法やデータベースの種類など分からなくなったら、ぜひまた当ページにお越しくださいね。


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