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アカウンタビリティの重要性と医療者の役割を事例で学ぼう

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アカウンタビリティ、通称説明責任は、医療現場において患者家族に対して行われる治療や処置の内容を説明する責任のことを意味しています。現在では情報開示やインフォームドコンセントの重要性が様々なところで話題になっており、患者の権利意識も高まるばかりです。患者にいかに主体性を持って治療に臨んでもらうかは、看護師や医師の支援にかかっているため、ますます重要性が高くなっています。

 

1、アカウンタビリティの意味とは

アカウンタビリティの意味は、どの業界で使うかによって異なります。一般的には、官公庁・自治体が国民や住民に、または企業が株主・顧客・従業員に対して負う説明責任の意味があり、政府が行う事業や政策についての議事録・話し合いの進行状況を公開するなど、アカウンタビリティを果たすための取り組みがなされています。一方看護業界においては、患者家族に対して行われる処置や治療の内容を説明する責任のことを意味しています。アカウンタビリティを実現することがなぜ大切なのかというと、説明をする側と受ける側の透明性を高め、互いのコミュニケーションを促進することで信頼関係の構築を促進することができるからです。

 

2、アカウンタビリティの看護界での使い方

医療業界では、アカウンタビリティを実現するため、インフォームドコンセントを行っています。

■インフォームドコンセント

インフォームドコンセントとは、説明を受けたうえでの同意を意味しており、本来では医学用語ではありませんが、日本では医療に関連して用いられることが多いです。医師は患者に対して、治療を行わないで放置した場合に起こりうる身体的な事態と、治療を受けた場合にもたらされる状態(治療法)の内容やその危険性、使用する医薬品の副作用や想定される合併症、それ以外の治療法についても十分説明し、患者がその内容を理解、納得したうえで患者の同意を得なければなりません。

 

インフォードコンセントの意味

出典:「説明と合意」だけ?インフォームドコンセントの意味(朝日新聞デジタル)

 

■インフォームドアセント

インフォームドコンセントは、本人だけでなく、家族も一緒に説明を聞くことが多いですが、説明を受ける側が小児であったり、精神障害者、救命中の患者である場合などは説明が行えないことがあります。そんな場合も、本人にとってできる限りの説明は行われるべきではあり、説明を受ける側が説明を受けることができるようになった状態で再度説明を行うことが望ましいです。とりわけ小児にとって、年齢に応じたインフォームドコンセントを行うことを、インフォームドアセントといいます。

 

3、アカウンタビリティの事例

今回は、病棟で扱うことが多い手術に関するインフォームドコンセント、術前オリエンテーションを事例にあげ、アカウンタビリティについて考えていきたいと思います。

 

3-1、術前術後のインフォームドコンセント

手術前後には、現在かかえている疾患に対して、どんな治療をしていくのか、病状と予後、手術の合併症などを患者に説明し治療を選択するインフォームドコンセントを行います。時には、医師からの一方的な説明のみで、患者に納得のいかない説明では同意は得られないことがあります。看護師は医師のインフォームドコンセントに同席することが多いため、患者の理解状況を確認し、理解が不足していると感じた時は、質問を引き出したり、補足したりして、患者が納得できるように援助していく必要がある。インフォームドコンセントを受ける前に、患者にあらかじめ質問したいことをまとめてもらうと良いです。質問票については以下の項目を参照してください。

 

・病名

・病状と予後

・受ける前の術式

・手術に要する時間

・麻酔の種類(全身麻酔か局所麻酔か)

・手術の安全性と危険度

・手術後の経過と入院期間

・手術による後遺症と危惧される問題

・手術に伴う経済的問題(諸経費など)

出典:臨床外科看護総論(株式会社医学書院 p190-191、251、258-259|矢永勝彦、小路美喜子|2011年2月)

 

3-2、術前オリエンテーション

インフォームドコンセントで手術が決定した後、看護師から術前オリエンテーションのパンフレットを渡し、それにそって説明することになっています。患者が自分の周術期がどのように進むのかを理解し、手術への過度の緊張や不安・恐怖心を緩和して、主体的に治療に参加できるように援助していきます。

 

■術前オリエンテーションの目的

術前オリエンテーションは、手術当日までに調整・準備すべきことや、手術に向けた呼吸訓練、術前日・当日に行われる処置や看護、術後の一般的な流れを計画に基づいて行うもので、目的は以下の通りです。

 

①患者自身が手術までに、生活上でどんなことに注意をすればいいのか、処置や訓練が何の目的で行われるのかが理解でき、主体的な行動が取ることができるようになること。

②手術や麻酔がどのように行われるのか、自分の手術についてのイメージが形成でき、安心して手術に臨めること。

③術後合併症を予防して順調な回復を促すために、手術前および手術後に患者が行わなければならないことを理解し、それに向けて努力することができること。

 

■不安の受け止め

病状や予後の診断結果によっては、事実を受け入れられず、大きな不安を抱える患者もいます。とりわけ癌に関しては、「死」というイメージが強いため、衝撃を受けることが多いようです。この時、私たち看護師は、その時々の患者の表情や言動に注目し、どのように病状を理解しているのかを知り、不安な気持ちを知ったうえで、共感的な態度で接することが望まれます。

 

■セカンドオピニオン

以前は、すべて医師にお任せといった風潮もありましたが、現在では患者が自分の意思を反映させて治療法を選択し、また積極的に治療に参加するようになってきています。その一例として、患者が十分に納得し、自分にあった治療法を選択する手段として、セカンドオピニオンを求める意識も高まっています。医療者として、患者の自己決定を積極的に行っていくためにも、セカンドオピニオンの利用は有用であると考えられています。

 

4、手術を受ける患者の術前看護計画

■看護問題:手術に関連する術前不安

■看護目標:術前の不安が軽減され、安心して手術に臨むことができる

観察項目

・表情、言動

・夜間睡眠状況

・食事摂取量

・術後を想定した訓練の習得状況

・治療や手術、検査の知識

ケア項目

・術前オリエンテーション実施

・不安な事柄があれば、我慢せず言葉にして伝えることを説明する

指導項目

・情報不足、理解不足な部分があれば補足する

・家族の協力が得られるよう、説明・指導には家族の同席を依頼する

 

まとめ

いかがでしたか。説明をするだけではアカウンタビリティは果たされないため、患者・家族に納得のいく説明をし、十分理解してもらった上で同意を得ることがいかに重要かがわかったかと思います。説明をするのは医師ですが、その後の理解不足に合わせた補足や、情報提供、協力の場を得るのは看護師の役割でもあります。積極的に、そして安心して治療に臨むため、少しでも患者・家族の不安の軽減に努めましょう。

 

参考文献

臨床外科看護総論(株式会社医学書院 p190-191、251、258-259|矢永勝彦、小路美喜子|2011年2月)


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