成人の場合、肥満かどうかを表す指数はBMI(Body Mass Index)を用いますが、これは乳幼児には当てはまりません。乳幼児の栄養状態の確認や肥満判定に用いられる指数がカウプ指数です。乳幼児期の肥満は、将来の肥満につながります。
また、子どもの頃から動脈硬化が進行しますので、生活習慣病の原因になります。さらに子どもの肥満は日常生活にも影響をきたし、子どものQOLを下げる可能性もあるのです。カウプ指数の基礎知識や計算式・方法、基準値、評価や看護介入のポイントなどを知って、実際の看護に役立てていきましょう。
1、カウプ指数とは
カウプ指数とは、生後3ヶ月から5歳までの乳幼児の発育状態や栄養状態を確認するために参考にする指標の1つです。乳幼児の栄養状態は良いか、痩せすぎではないか、肥満ではないかなどを見る時に、このカウプ指数を用いることが多いです。成人はBMI(Body Mass Index)を用いますが、成人とは体型が大きく違う乳幼児にはBMIは当てはまらないため、カウプ指数が使用されます。
1-1、ローレル指数とは
子どもの発育状態を表す指数には、ローレル指数もあります。ただ、ローレル指数は学童を対象にした指数になります。高校生以上になると、BMIを用いて肥満かどうかの判定を行います。
2、カウプ指数の計算式・方法
カウプ指数の計算式は、次のようになります。
・カウプ指数=体重(g)÷身長(cm)2×10
これを見て気づいた人もいると思いますが、カウプ指数の計算方法はBMIと似ています。ただ、注意しなければいけないのは、体重と身長の単位が違うことです。カウプ指数の計算式では、体重の単位はグラム(g)、身長の体位はセンチメートル(cm)になります。
3、カウプ指数の基準値
カウプ指数の基準値は、厚生労働省では次のように明記しています。
<厚生労働省の基準値1)>
体型 | 基準値 |
やせぎみ | 14以下 |
ふつう | 15~17 |
ふとりぎみ | 18以上 |
3ヶ月の乳児と5歳の幼児では体型が全く違いますので、年齢によって基準値を設けていることもあります。
<年齢別の基準値2)>
年齢 | 普通体型の範囲 |
乳児(3ヶ月~11ヶ月) | 16~18 |
満1歳 | 15.5~17.5 |
満1~2歳 | 15~17 |
満3~5歳 | 14.5~16.5 |
ただ、このカウプ指数の基準値は、普通体型の範囲を超えたら絶対に肥満というわけではありません。カウプ指数はあくまで「目安」になります。
4、カウプ指数の評価や看護のヒント
カウプ指数は乳幼児の肥満判定に用いられることが多いです。一昔前は乳幼児の肥満はさほど問題視されていませんでしたが、現在は乳幼児期の肥満は、将来の肥満や生活習慣病の原因になり、さらに子どものQOLを低下させる要因になるため、早めに治療が必要であるとされています。
乳幼児期の肥満は、次のような問題が起こります。
・将来の肥満の原因になる
・子どもの頃から動脈硬化が進行して、生活習慣病になる ・膝や腰など筋骨格系の発達に影響が出る可能性がある ・骨折などの外傷が多くなる ・「肥満」がコンプレックスになり精神的抑圧を受けることがある |
このような問題があるため、カウプ指数で肥満と判定されたら、治療や看護介入をすべきなのです。
また、カウプ指数は肥満ばかりが取り上げられますが、痩せすぎかどうか、つまり栄養状態が良くない状態かどうかを評価することもできます。栄養状態が悪いと、今後の発育・発達に影響が出てきますので、看護介入をして行く必要があります。
4-1、カウプ指数の評価はあくまで目安
カウプ指数は、3ヶ月~5歳までの乳幼児の栄養状態を評価するものですので、肥満かどうかの目安となる指標です。しかし、カウプ指数だけで肥満かどうかを評価してはいけません。カウプ指数はあくまで肥満かどうかの目安であり、カウプ指数だけで評価できるものではありません。
肥満かどうかを評価するためには、カウプ指数以外に、肥満度も用います。
肥満度の計算方法は、次の計算式になります。
・肥満度=(実測体重-標準体重) / 標準体重×100(%)
幼児の場合、肥満度の基準は15%以上で「太りぎみ」、20%以上は「やや太りすぎ」、30%以上は「太りすぎ」になります。
また、痩せすぎかどうかを評価する時には、カウプ指数のほかに成長曲線で-2SDの曲線を下回っていないかどうかも確認しておく必要があります。
4-2、カウプ指数で標準ではない乳幼児への看護のヒント
カウプ指数で標準ではないと評価された乳幼児には、看護介入をしていく必要があります。太りすぎか痩せすぎかで具体的な看護計画は変わってきますが、看護のポイントは同じです。
■多角的なアセスメントが必要
カウプ指数で標準外(太りすぎ、または痩せすぎ)と判定された乳幼児に看護介入する時には、多角的なアセスメントが必要になります。
・患児の生活習慣
・親の生活習慣 ・食事量 ・運動量 ・親の理解度 ・親子関係 ・病気が原因ではないか |
子どもの肥満は、親の影響が非常に大きいですから、乳幼児本人だけでなく親や家族、生活環境に関するアセスメントもしっかり行う必要があります。多角的にアセスメントを行うことで、その子の肥満(痩せすぎ)の原因が見えてきますので、看護計画の立案に役立ちます。
また、子どもの肥満は食べ過ぎによる単純性肥満が多いですが、先天性異常などの二次性肥満の可能性もあります。痩せすぎの場合も、単純に食が細いだけでなく、何らかの疾患が原因のこともありますので、多角的なアセスメントを行うようにしましょう。
■支持的なかかわりをする
カウプ指数で標準範囲外だった場合、その親はとても不安になります。自分の育て方が悪いのか、普段の食事がいけないのかと悩み、親である自分が悪いのかと自分を責めるようになります。だから、看護師は親に共感し、寄り添い、支持的なかかわりをして、看護介入をしていかなくてはいけません。
「体重を増やす必要性(体重を減らす必要性)」を説明すると、親は責められていると感じます。そのため、必要性を説明するよりも、どうやったらカウプ指数で標準範囲に入るように体重をコントロールできるのか一緒に考えていくことが大切であり、親への精神的なケアも重要な看護になります。
■家族を巻き込んで看護介入をする
乳幼児の肥満(もしくは痩せすぎ)への具体的な対処法は、家族の協力が必要不可欠になります。そのため、食事療法や運動療法は家族を巻き込んで、家族が一緒に行えるものを提案し、指導しなければいけません。特に、母親だけでなく父親や家族全員を巻き込んで協力してもらうことが大切です。
例えば、肥満の子どもの食事療法を母親だけに指導して、父親の理解を得られていない場合、どんなに母親が頑張って食事療法をしても、父親が子どもにおやつを与えてしまうかもしれません。
また、母親だけに指導すると、母親だけに子どもの発育の責任を押し付けてしまうことになり、母親を精神的に追い込むことになりかねません。だから、家族全員を巻き込んで看護介入していく必要があるのです。
■継続的な看護介入が必要
カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児には、継続的な看護介入が必要になります。カウプ指数自体が、年齢によって基準値が変わってくるものですし、肥満や痩せすぎは一時的に解消するだけで良いというものではなく、それを維持していく必要があるものだからです。そのため、カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児とその家族には、継続的に看護介入をして子どもの発育を確認していかなければいけません。
まとめ
カウプ指数の基礎知識や計算式・方法、基準値、評価や看護のポイントなどをまとめました。カウプ指数は乳幼児の栄養状態・発育状態を判定でき、肥満や痩せすぎの評価に使える指数です。ただ、年齢によって基準値は変わりますし、あくまで目安の1つになる指標ですので、カウプ指数だけで「痩せすぎ」、「太りすぎ」と判定することはできません。カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児には家族を巻き込みながら、継続的に看護介入していくようにしましょう。
参考文献
1)21世紀出生児縦断調査(特別報告)結果の概況(厚生労働省|2009年3月18日)
2)BMI,ローレル指数,肥満度 の解説(Kodama’s tips page)