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喘鳴の看護|原因や呼吸音、看護ケアと大切なポイント

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喘鳴の看護

人は生きるために呼吸することは必要不可欠なものですが、呼吸時に何らかの障害があるときに喘鳴(ぜんめい)が聴かれ、呼吸困難をきたしていることがあります。喘鳴の強さによっては緊急を要することもあり、その判断はとても重要なものです。喘鳴について、原因や基本的な喘鳴音の聴取方法を知り、適切に看護できるようにしましょう。

 

1、喘鳴とは

読み方はぜんめいと言います。気道は、鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、肺胞からなり、呼吸をつかさどっています。喘鳴とは、何らかの原因によってこの気道が狭窄し、呼吸のたびに狭窄した気道を空気が通ることで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」というような狭窄音が聴かれる状態のことをいいます。この音は、聴診器を用いなくては聞くことができないような音から、聴診器を用いなくても聴こえる音まで様々で、音が強く大きいからといって狭窄の程度が強いとは限りません。

 

上気道と下気道

上気道と下気道

出典:原田耳鼻咽喉科

 

喘鳴には、息を吸う時(吸気時)に喘鳴が聴こえる吸気性喘鳴と、吐く時(呼気時)に喘鳴が聴こえ、時には息を吸う時も聴こえる呼気性喘鳴の2つの種類があります。前者は上気道の太い部分に狭窄が起こり、後者は下気道の細い部分に狭窄が起こっています。正常時は吸気時に気管支は広がり、呼気時に気管支が細くなるため、喘鳴は呼気時に発生しやすいのですが、狭窄が起こっている場所や原因によっては、吸気時にも発生することがあるのです。

子どもの場合、大人に比べて気管が狭いため、軽症な気管の炎症でも喘鳴が聴かれることがあります。

 

2、喘鳴の原因

喘鳴は気道が狭くなることで発生しますが、疾患によって気道内に気道壁がせり出してくる場合や、気道の外から圧迫されて気道内が狭くなる場合、アレルギーや炎症によって気道壁が浮腫むことで気道が狭くなる場合、痰や異物によって気道内が狭くなる場合が喘鳴の原因となります。吸気性喘鳴と呼気性喘鳴とでは、その発生の場所と原因となる疾患が異なります。それぞれについてみていきます。

 

2−1、吸気性喘鳴

吸気性喘鳴は、主に上気道(鼻から咽頭)の狭窄が原因となって発生します。吸気時に上気道に陰圧がかかり、気道が塞がれるために狭窄することによって喘鳴が吸気時に起こるというメカニズムです。その原因となる主な疾患は次のようなものがあります。

①アデノイド

②口蓋扁桃肥大

③舌根沈下

④咽喉頭腫瘍

⑤喉頭炎

⑥喉頭クループ

⑦声帯麻痺

⑧喉頭外傷

⑨咽頭痙攣

⑩異物

 

2−2、呼気性喘鳴

呼気性喘鳴は、下気道(気管から肺)の狭窄が原因となって発生します。時に吸気時だけではなく呼気時にも喘鳴が起こることが多くあります。その原因となる主な疾患は次のようなものがあります。

①気管支喘息

②気管支炎

③肺癌

④気管支拡張症

⑤うっ血性心不全

⑥塵肺

⑦慢性肺気腫(COPD)

 

喘息発作時の気管支

喘息発作時の気管支

出典:一般社団法人 日本呼吸器学会

 

3、喘鳴時の呼吸音

喘鳴時には、発生部位によって特徴的な呼吸音が聴取できます。喘鳴時には聴診器を用いなくても「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が聴こえるものです。さらに聴診器を用いることで、呼吸副雑音である連続性ラ音(ラッセル音・呼吸副雑音)が聴取でき、発生部位や疾患が特定されます。

 

3−1、吸気性喘鳴の呼吸音(stridor)

吸気性喘鳴では吸気時に鼻腔や咽頭などの上気道で痰やアデノイドなどによって閉塞が起こるため、主に頚部で低音性の「ゼー」「ピー」という連続音を聴取でき、舌根沈下時の「ゴー」という低音性なものが代表的で、上気道の太い気道で発生していることがわかります。200〜250Hz以下の周波数がいびき音とされており、吸気性喘鳴時はいびき音が聴かれる。

この呼吸音は、連続性の雑音ではありますが、胸郭外の由来のため、連続性ラ音には分類されません。

 

3−2、呼気性喘鳴の呼吸音(wheeze)

呼気性喘鳴では、肺から空気を押し出す時に横隔膜が上がって胸郭が縮むので、下気道の胸郭内の気道が狭くなることによって胸部で高音声の「ヒューヒュー」という笛声音を強く聴取できます。聴診器で聞こえるのは、主に呼気時ですが、吸気時にも聴こえることもあります。この音は気管支喘息の時に聴取させることが多く、喘息呼吸音とも呼ばれています。周波数では、300〜400Hz以上の笛音とされています。

また、下気道の閉塞の場合には、呼気延長も見られることがあります。呼気を努力して吐き出そうとするために呼気相が延長するのです。

 

3−3、呼吸音の周波数

呼吸音は吸気性喘鳴と呼気性喘鳴で周波数は異なりますが、250Hz前後の周波数になると連続音の区別がつかないこともあります。よって、周波数だけでは吸気性喘鳴と呼気性喘鳴の区別が難しいこともありますが、聴取できる場所によって原因疾患を把握することに役立てることができます。この呼吸音の低音と高温の違いは、気道径の大きさによるものであり、太い気道が狭窄していれば低い音、細い気道が狭窄していれば高い音となり、笛や窓を少しだけ開けた時に風が通る時の音がなるような原理と同じです。

 

4、喘鳴時の看護ケアとポイント

喘鳴患者の看護ケアを適切に行うために、次の項目をアセスメントし、ケアを行なっていきます。

 

4−1、アセスメント

①喘鳴の原因部位:喘鳴を引き起こしている原因は上気道にあるのか、下気道にあるのか

②背景疾患:喘鳴の原因となる疾患の有無

③バイタルサイン:血圧、心拍数、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)

④呼吸苦の有無

⑤顔色・チアノーゼの有無(末梢、全身)

⑥呼吸音

⑦自覚症状の有無:気分不快、胸部症状など

⑧喀痰の有無、量、状態

⑨咳嗽の有無、程度

⑩薬剤の使用状況

⑪疾患の理解度

⑫その他の呼吸状態(陥没呼吸、呼気延長、起座呼吸、チアノーゼ、呼吸数など)

⑬意識レベル

⑭外部環境

 

4−2、看護ケアのポイント

喘鳴時には呼吸困難をきたしていることがあるため、緊急を要することもあります。また、呼吸困難時は不安も強くなり、生命の危機を感じることもあることからパニックや錯乱状態など、精神的な苦痛も出現します。そのため、喘鳴の状況を適切にアセスメントし、呼吸困難による身体的苦痛と精神的苦痛を緩和することが看護ケアの最も重要なポイントになります。

喘鳴が強く、呼吸困難が著しい場合は、低酸素状態となっていることもあり、意識障害を起こしていることもあります。医師の指示により、次のことを行います。

①酸素療法

②呼吸・心電図モニターの装着

③吸入や輸液などの薬物療法

 

看護ケアとしては、次のようなケアを行います。

①呼吸しやすいような安楽な体位を工夫する

②喀痰喀出を図り、必要時ドレナージや吸引を行う

③喘鳴を起こす原因となる因子を除去する

④呼吸困難時は会話しなくてもいいことを伝える

⑤呼吸困難時は、患者のそばに寄り添い安心感を与える

⑥必要時、医師に報告し指示によって適切な処置を行う

⑦呼吸困難時の薬剤の使用方法を指導する

⑧環境整備と、アレルゲンなどの喘鳴を引き起こす原因の除去方法を指導する

 

まとめ

喘鳴は、呼吸の状況を把握するための症状のひとつです。呼吸は人が生きていくために必要不可欠なものなので、呼吸困難による苦痛は身体的な苦痛だけではなく、生命の危機を感じてしまうほどの精神的な苦痛でもあります。看護ケアとして、喘鳴の強さや呼吸状態を観察するだけではなく、精神的なケアも必要なのです。

 

参考文献

日本呼吸器学会 医学教育用呼吸器病学コアカリキュラム|社団法人日本呼吸器学会教育委員会|2012年

成人気管支喘息診療のミニマムエッセンス|成人気管支喘息診療のミニマムエッセンス作成ワーキンググループ|2012年


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