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くも膜下出血の看護計画|原因・症状・治療などの看護課程と看護問題

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くも膜下出血看護

くも膜下出血は毎年人口10万人に16人の割合で発症しており、原因の多くを占める破裂脳動脈瘤に対する手術件数は一般的な脳外科での1年間の手術件数の約10%を占めています。また、くも膜下出血により死亡したり、なんらかの後遺症が残り生活が不自由になる患者も多いため、くも膜下出血は非常に緊急性の高い疾患だといえます。

 

1、くも膜下出血とは

脳および脊髄は、外側から順に硬膜、くも膜、軟膜の3層の髄膜で覆われています。オブラート様をしたくも膜と軟膜の間にはくも膜下腔とよばれるスペースがあり、この中には脳脊髄液が灌流しています。

くも膜下出血とは
出典:くも膜下出血とは【1】(TERUMO 予防に、大切なこと、わかりやすく。くも膜下出血を防ぐための情報サイト)

 

しかし、なんらかの原因でくも膜下腔または隣接して走る血管が破裂すると、脳脊髄液に血液が混じり、くも膜下腔全体に広がっていきます。この状態をくも膜下出血といいます。くも膜下出血が起きると、くも膜下腔に広がった血液のために髄液の吸収部が閉塞し脳室内に髄液が貯留していき、脳室が拡大し水頭症を合併します。その結果脳実質が圧迫され頭蓋内圧亢進症状が出現し、さらには脳ヘルニアという重篤な状態に陥り急死することもあります。

その他の脳出血の症状についての病態と看護計画については、「脳出血の急性期、慢性期におけるポイントと看護計画」をご覧ください。

 

2、くも膜下出血の原因

くも膜下出血の原因疾患には、脳動脈瘤破裂、脳動静脈奇形の破綻、高血圧性脳内出血、脳腫瘍からの出血、もやもや病、白血病などの血液疾患などがあります。そしてこのうち脳動脈瘤破綻によるものは約70~80%、脳動静脈奇形によるものが約10%で、この両者がくも膜下出血の大部分を占めており、働き盛りの40~60歳代で特に起こりやすいです。また各疾患の詳細は以下の表を参照してください。

原因 脳動脈瘤の破裂 脳動静脈奇形 もやもや病 その他
割合 80%以上 約5~10% 数% 数%
好発年齢 40~60歳代

(女性に好発)

20~40歳代

(男性に好発)

10歳以下と30代 特になし
くも膜下出血の機序 動脈瘤が破裂する 異常血管が破裂する 側副路の血管が破裂する 外傷、出血性素因 等

出典:看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|J-36 2015/03/19)

 

3、くも膜下出血の臨床症状と検査

■頭痛

突然、今までに経験したことがないような、ハンマーで殴られたかのような激しい頭痛で発症し、悪心・嘔吐、意識障害を伴います。一般的に麻痺、失語症を伴うことは少ないです。

 

■眼瞼下垂

末破裂脳動脈瘤、特に内頚動脈―後交通動脈分岐部動脈瘤の場合、動脈瘤が動眼神経を圧迫し、動眼神経麻痺つまり眼瞼下垂が起こることがあります。

 

■血性髄液

くも膜下出血の診断を付けるための直接的な方法は、髄液が血性であることを証明することです。腰椎穿刺を行い髄液を採取し調べます。

 

■硝子体出血

眼底検査を実施すると、硝子体に出血が認められることがありますが、高血圧の患者でも出血することがあるので区別する必要があります。くも膜下出血の硝子体出血はターソン症候群と呼ばれ、出血が吸収されない場合視力障害が残ります。

 

■頭部CTに出血像(高吸収域)が見られる

頭部CTの正常所見では、くも膜下腔は髄液があるため低吸収域となりますが、くも膜下出血を起こすと血液が流入し高吸収域を認めるようになります。

くも膜下出血の症状と検査

出典:くも膜下出血(東海大学医学部脳神経外科)

 

■髄膜刺激症状

検査 項部硬直 ケルニッヒ徴候 ブルジンスキー徴候
方法 ・仰臥位の状態で頭部を前屈させる ・仰臥位の状態で足を持ち上げる ・仰臥位の状態で頭部を前屈させる
異常時の所見 ・頭部を前屈させると抵抗と疼痛がある ・抵抗により膝を135度以上進展できない ・股関節・膝関節が自動的に屈曲する

出典:看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|J-37 2015/03/19)

 

■脳血管造影

明らかにくも膜下出血であると証明された場合には、出血源を調べるため脳血管造影を行います。4本の血管(左右の内頚動脈、椎骨動脈)すべてを造影しても出血源がはっきりしなければ、発作直後の血管攣縮のために病巣が隠れているのか、もしくは脊髄の出血性病変を疑います。

 

4、くも膜下出血の看護アセスメント項目

■意識レベル

短時間の意識消失から持続的昏睡まで様々。

 

■視覚障害

・複視

・視野欠損

・視力低下

 

■髄膜刺激症状

・項部硬直

・ケルニッヒ徴候

・ブルジンスキー徴候

・てんかん

・易刺激性

・不穏

 

■自律神経

・心拍数増加

・血圧変動

・呼吸リズム変動

・悪寒

・発汗

 

■脳神経障害

・眼瞼下垂

・上方または下方への眼球運動障害

・乳頭浮腫

 

■運動機能

・失語

・不全麻痺の開始と悪化

・嚥下困難

・片側あるいは両側下肢の不全麻痺

 

■頭蓋内圧亢進

・意識レベル低下

・バイタルサインの変化

・クッシング症候群

・不穏

・瞳孔変化

・乳頭浮腫

・悪心嘔吐

・てんかん

・局所神経症状の出現

・呼吸パターンの変調

 

■てんかん発作

・悲鳴、呼び声

・転倒転落

・意識消失

・頻呼吸

・閃光、めまい、脱力、恐怖、喪失感、味覚・嗅覚・聴覚の異常

・筋肉痛

・誤嚥

・尿、便失禁

・強直

・四肢の反復性けいれん

・口から泡をふく

・倦怠感

 

■血管攣縮

・失語

・片麻痺出現

・局所性神経障害

 

■心電図の異常

・Q波の出現

・ST上昇

・ST-T変化

 

■疼痛

突発的で激しい頭痛(たいていは前頭部か側頭部に限局して始まり、全体に広がっていく)

 

5、くも膜下出血の治療

出血した原因・部位により治療困難な場合がありますが、血圧のコントロールが重要であることは言うまでもありません。

 

■脳動脈破裂が原因の場合

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対しては動脈瘤のクリッピング術を第一選択に行います。(最近では血管内手術により動脈内のコイル塞栓術を用いた治療も行われています。)未破裂の動脈瘤が発見された場合は、患者の状態と動脈瘤のサイズ、部位などの条件を勘案して治療の適応かどうかを判断します。

 

■脳動静脈奇形が原因の場合

異常血管塊(ナイダス)の摘出術、定位的放射線治療(ガンマ・ナイフ)を行います。

 

6、くも膜下出血の看護計画

■看護問題:脳組織循環の変調

 

■看護目標:脳組織への循環が良好である

 

■観察項目

・髄膜刺激症状の有無

・頭蓋内圧モニター

・24時間水分出納

・バイタルサイン

・室内の温度、照明

・頭蓋内圧亢進症状の有無

・頭部CT所見

・頭痛の程度

・意識レベル

・痙攣の有無

・視力障害の出現の有無

 

■ケア項目

・再出血を予防するため、指示に従い血圧をコントロールする

・排便時血圧上昇防ぐため、緩下剤使用する

・病室を暗くし刺激を避ける

・最初の出血から24時間以内は絶対安静

・頭蓋内圧モニタリング

・コーヒーや紅茶などの刺激物を制限する

・禁忌でなければベッドの頭部を少し上げる

・指示に従い高張利尿剤で脳内の水分を排泄する

 

まとめ

くも膜下出血の患者の状態は、くも膜下腔に広がっていく血液によって刻々と進行していき、治療が遅れると急死することもある、非常に緊急を要する疾患です。また脳疾患は観察項目がかなり多いため苦手意識を抱きがちですが、緊急時にも焦らずスムーズに動けるよう、何度も復習して臨んでください!

 

参考文献

クリニカルナーシング7神経疾患患者の看護診断とケア(石川稔生、樋口康子、小峰光博、中木高夫|株式会社医学書院|144-152 1990/09/01)

看護師・看護学生のためのレビューブック2016第17版|メディックメディア(岡庭豊|J-36-39 2015/03/19)

絵で見る脳と神経 しくみと障害のメカニズム第2版(馬場元毅|株式会社医学書院|196-199 203 2001/06/15)


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