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切迫早産の看護計画|原因・症状・予防の観察項目と看護目標

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切迫早産の看護

切迫早産は、早産しかかっている状態のことです。早産になると、胎児に重篤な後遺症が残るリスクがありますので、切迫早産になったら、妊娠を継続させるための治療を行います。

切迫早産の基礎知識や原因や症状、治療、看護目標、看護計画・ケアをまとめました。産科で働く看護師さんは、ぜひ参考にしてください。

 

1、切迫早産とは

切迫早産とは早産になりかかっている状態のことです。

切迫早産の看護

出典:早産・切迫早産:病気を知ろう|日本産科婦人科学会

 

日本の場合、早産とは妊娠22週0日から36週6日までに出産することを言います。正期産は妊娠37週0日から41週6日までの出産のことで、22週未満の場合は流産になりますので、早産とは区別されます。そのなかでも切迫早産は、子宮の収縮や子宮頸管の開大と展退が進行が起こり、早産になる可能性がある状態です。

日本の医療では妊娠22週以降での出産であれば、新生児の生存は可能ではあるものの、重篤な障害が残る可能性がありますので、切迫早産になった場合は、正期産に入るまで出産しないように治療をしていく必要があります。厚生省心身障害研究班周産期管理班24施設の調査では、35週までの早産率は4.1%1となっています。早産率が4.1%ということは、早産になりかける切迫早産率はもっと高いことが推測できます。

 

2、切迫早産の原因

切迫早産の原因はいろいろあり、切迫早産の原因のすべてが解明されているわけではありません。また、切迫早産が重症化する場合は、今から説明する原因の1つだけではなく、様々な原因が複雑に絡み合って起こると考えられています。切迫早産の主な原因には、次のようなものがあります。

・絨毛膜羊膜炎

・子宮頸管無力症

・合併症(妊娠高血圧症候群、糖尿病など)

・薬物

・ストレス

・高齢

・尿路感染症

・歯周病

・子宮筋腫

・羊水過多、過少

・多胎妊娠

・前置胎盤

特に、絨毛膜羊膜炎と子宮頸管無力症は、切迫早産の代表的な原因です。

 

■絨毛膜羊膜炎

膣内の細菌が増加して、炎症が子宮頸部や子宮内膜にまで達すると、子宮の収縮を促すプロスタグランジンが産出されるようになるため、子宮が収縮しておなかが張るようになり、子宮口が熟化して開大しやすくなります。細菌性膣炎から頸管炎、絨毛膜羊膜炎と上行感染することがほとんどで、原因となる細菌は、B群溶連菌や腸炎球菌、大腸菌、バクテロイデス、マイコプラズマ、クラミジアなどがあります。

 

■子宮頸管無力症

子宮頸管無力症は体質が原因で、陣痛が起こらないまま子宮口が開いてしまいます。

通常は陣痛が起こることで子宮口が開くのですが、子宮頸管無力症は陣痛が来る前に、内子宮口が開き始めて子宮頸管が短くなり、さらに外子宮口が開いて、胎児が入っている胎胞が出てきてしまいます。

 

3、切迫早産の症状

切迫早産の症状は、次の3つがあります。

 

・おなかが張る

・不正出血がある

・破水している

 

切迫早産は、早産しかかっている状態です。そのため、子宮が収縮することで、おなかが張るようになります。また、絨毛膜羊膜炎などの炎症が原因で出血を起こしたり、子宮が収縮することで、卵膜がずれて出血を起こすこともあります。

絨毛膜羊膜炎になると、卵膜がもろくなるため、卵膜が破れて破水することがあります。破水すると、24時間以内に陣痛が起こるのが一般的です。また、破水が起こると、子宮内感染が起こり、感染が胎児にも及ぶことがあるため、妊娠34週未満で破水が起こった場合は、入院管理をして、妊娠を継続させつつ、感染しないように治療をしなければいけません。

 

4、切迫早産の治療

切迫早産は、軽症の場合は自宅で安静を保ちながら、外来通院で経過観察をするのですが、破水があったり、感染兆候が見られるなど重篤な場合は、入院加療が必要になります。

切迫早産の治療法は、次の6つが基本になります。

 

■安静

切迫早産の治療は安静です。入院中はベッド上安静が基本になります。

 

■感染予防

抗生剤の投与や膣内洗浄などを行います。

 

■子宮収縮の抑制

塩酸リトドリンや硫酸マグネシウム、プロスタグランジン合成阻害薬などを投与します。

 

■頸管縫縮術

子宮頸管無力症の患者に対して行われる手術で、子宮頸管を縛ることで、子宮口が開大しないようにする治療法です。

 

■ステロイド投与

ステロイドを母体に投与することで、胎児の肺成熟を促し、早産になっても呼吸窮迫症候群を予防することができるため、早産が高確率で予想される場合は、ステロイドを投与します。

 

■胎児モニター

子宮収縮や子宮内感染は胎児ストレスになるため、厳重な胎児モニターが必要になります。

 

基本的には、これらの6つの治療法で正期産に入るまで出産しないように治療していきますが、母体や胎児の状態によっては、安全のために早産の進行をあえて止めずに、陣痛促進剤を投与するなど分娩誘導を行うことがあります。

 

5、切迫早産の看護目標

切迫早産で入院になった患者の看護目標を説明していきます。

 

■妊娠の継続ができる

切迫早産の患者の最大の看護問題は、早産のリスクが高いことです。早産になると、胎児に重篤な後遺症が残ることがありますので、看護師は妊娠が継続できるように援助していく必要があります。

 

■心身のストレスを軽減でき、苦痛なく入院生活を送れる

切迫早産の治療の基本は安静です。そのため、患者はベッド上安静を強いられます。排泄もベッド上で行わなくてはいけないこともあります。また、入浴もできません。切迫早産に伴う行動制限で、患者はストレスを抱えていることが多いのです。

看護師は患者のストレスを考慮して、そのストレスを軽減できるようにケアしていく必要があります。

 

■子宮収縮抑制剤の副作用を軽減できる

子宮収縮抑制剤の塩酸リトドリン(ウテメリン)は、動悸や頻脈、手指のふるえ、頭痛などの副作用が現れることがあります。患者によってはこの副作用が強く出て、苦痛に感じることがありますので、看護師は副作用を軽減できるように援助していく必要があります。

 

■切迫早産に対する不安を軽減できる

切迫早産になると、患者は「赤ちゃんは死んでしまうかも」とか「私は母親失格だ」のような不安を抱えてますので、看護師は精神的なケアをして、患者の不安軽減に努めていきましょう。

 

6、切迫早産の看護計画・ケア

先ほど説明した切迫早産の4つの看護目標に沿って、看護計画を立てていきましょう。

 

■妊娠の継続ができる

看護目標 妊娠の継続ができる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・腹部緊満の有無、程度

・下腹部痛の有無、程度

・性器出血の有無、量、性状

・胎児心音
・胎児心拍陣痛図(CTG=Cardiotocogram)の異常の有無

・破水の有無

・感染兆候の有無

・排便、排尿回数
・子宮収縮剤の効果や副作用の状態

TP(ケア項目) ・分娩監視装置の装着
・医師の指示に基づいた薬剤の投与
・性器出血や腹部緊満増強時、破水時は医師に報告する・安静度を守れるように援助する・安楽な体位の補助・排便コントロール
EP(教育計画) ・腹部緊満や下腹部痛、破水、性器出血等切迫症状について説明する

・異常時はすぐに伝えてもらうように説明する

 

■心身のストレスを軽減でき、苦痛なく入院生活を送れる

看護目標 心身のストレスを軽減でき、苦痛なく入院生活を送れる
OP(観察項目) ・食事摂取量
・睡眠状況
・言動や表情・排泄状況、便秘の有無・保清状況・安静度
TP(ケア項目) ・ベッド上排泄の場合は、プライバシーを配慮する
・全身清拭や陰部洗浄、ベッド上での洗髪などで保清を援助する・気分転換できるように室内環境を整える
EP(教育項目) ・安静の必要性を説明する

 

■子宮収縮抑制剤の副作用を軽減できる

看護目標 子宮収縮抑制剤の副作用を軽減できる
OP(観察項目) ・動悸や頻脈の有無

・手指の震えの有無

・頭痛の有無

・呼吸状態

・胎児心音

・血液検査データ

TP(ケア項目) ・安楽な体位の工夫

・副作用が強い時は医師に報告する

EP(教育項目) ・子宮収縮抑制剤の副作用について説明する

・副作用が強くなったら、報告してもらう

 

■切迫早産に対する不安を軽減できる

看護目標 切迫早産に対する不安を軽減できる
OP(観察項目) ・食事摂取量

・睡眠状況

・言動や表情

・胎児の状態

TP(ケア項目) ・患者の訴えを傾聴する

・不安を表出できるような関係を構築する

・医師による説明を適宜行う

・支持的な態度で接する

・家族への協力を求める

・医療者側で見解を統一しておく

EP(教育項目) ・処置や治療の説明をする

 

まとめ

切迫早産の基礎知識や原因、症状、治療、看護目標、看護計画・ケアをまとめました。

切迫早産は患者の不安が非常に大きいだけでなく、安静による行動制限でのストレスもありますので、看護師は「妊娠を継続できる」ための援助だけではなく、精神的なケアもしっかり行うようにしましょう。

 

参考文献

切迫早産,早産(以上妊娠,D.産科疾患の診断・治療・管理,研修コーナー)|山本樹生|日本産婦人科学会誌第59巻第11号


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