出生直後の新生児は、体温や呼吸、循環が不安定な状態ですから、看護師は異常の早期発見に重点を置きながら、新生児の看護をしていく必要があります。
新生児の基礎知識や看護過程、看護問題、観察ポイント、看護目標・看護計画をまとめました。新生児のケアをするときの参考にしてください。
1、新生児とは
新生児とは、生後28日未満の子どものことです。生後28日以降になると、乳児と呼ばれるようになります。
世界保健機構(WHO)では、新生児を早期新生児期と後期新生児期の2つのに分けて定義しています。早期新生児期は生後7日未満、後期新生児期は生後7日から27日までとなります。
日本の場合、基本的に早期新生児期は病院や施設で過ごすことになりますから、看護師は早期新生児の看護を行うことになります。
2、新生児の看護過程
新生児は分娩を境にして、胎内の環境から胎外の環境で生活することになります。看護師は、新生児がその環境の変化に適応できるように援助していかなければいけません。
また、正常分娩の新生児でも、出生直後は呼吸や体温、循環が不安定ですので、異常の早期発見に努めていく必要があります。
新生児の状態に合わせて適切な看護を行うためには、次のことを情報収集して、看護問題を抽出し、看護計画を立案しなければいけません。
・出生時の新生児の状態
・分娩経過や分娩様式、分娩状態
・新生児や母体の全身状態
・出産後の母親の状態
・妊娠中の母親の状態
・母乳育児に対する母親の考え方
・母親の育児に対する知識
・母親の新生児に対する愛着
これらの情報収集を行いながら、看護過程を進めていきましょう。
3、新生児の観察項目
新生児の看護をするときには、次のようなことに注意して観察をすると、異常の早期発見をすることができます。
■呼吸
新生児の呼吸は、40~50回/分が正常範囲ですが、20回/分以下、または60回/分以上の場合は呼吸障害があることが疑われます。新生児は肺機能が確立していないので、浅く不整な呼吸になります。
呼吸は呼吸数だけでなく、吸気時の胸壁の陥没の有無、うなり声の有無、下顎の沈下、シーソー呼吸の有無も観察する必要があります。
■体温
新生児は体温調節機能が未熟なので、低体温に注意しなければいけません。出生直後は35~36℃に低下するものの、保温をすることで少しずつ上昇し、皮膚温で37℃前後、直腸音で37.5℃前後になります。
皮膚音で36.0℃以下になったら、それ以上体温が下がらないように保温・加温する必要があります。
■循環
新生児の脈拍数は120~140回/分が正常範囲で、100回/分は徐脈、200回/分は頻脈になります。血圧は出生24時間後には収縮期血圧60~80mmHg、拡張期血圧30~50mmHgに安定することが一般的です。
■排尿・排便
尿は生後24時間以内に初回排尿があります。基本は無色または淡黄色の透明ですが、一時的に黄色が強く混濁することがあります、
便は生後24時間以内に初回の胎便を排泄します。粘稠の暗緑色の胎便は生後2~3日で終わり、生後3~4日で移行便となり、その後は泥状の黄色便になります。
生後24時間たっても排便がない場合は、鎖肛や先天性消化管閉鎖症が疑われます。
■皮膚
新生児黄疸は生後2~3日ごろから出現します。また、生後2~3日ごろから表皮落屑が現れます。表皮落屑があり、皮膚の乾燥が強いと出血のリスクがあるため、注意しなければいけません。
また、浮腫や皮下出血、チアノーゼ、紅斑の有無などを観察しなければいけません。
■体の各部位
新生児のケアをするときには、次の体の部位にも注意して観察してください。
・大泉門の有無
・産瘤や頭血種の有無
・胸鎖乳突筋の血腫の有無
・顔面の奇形の有無
・四肢の状態
・外陰部の異常の有無
大泉門が大きくなり、膨瘤してくる場合には水頭症が疑われます。頭部以外にも、生児のケアをするときには、全身をくまなく観察するようにしましょう。
4、新生児の看護問題
新生児は正常分娩で生まれてきたとしても、様々な問題を抱えています。新生児の看護問題は、主に4つあります。
■体温・呼吸・循環が安定しない
新生児は胎内から胎外へ環境が大きく変化すると同時に、体の機能がまだ未発達ですので、出生後は体温・呼吸・循環が安定しません。すぐに低体温や呼吸停止が起こります。
また、生後は体重が5~10%減少する生理的体重減少や血中のビリルビン値が上昇することで現れる生理的黄疸などが現れますが、これらの生理現象を正常範囲内で経過できるかなども重要なポイントになります。
新生児の看護をするときには、この体温・呼吸・循環が安定させること、生理現象を正常範囲内で経過できることを中心にケアをしなければいけません。
■感染リスク状態にある
出生直後の新生児は、細菌やウイルスに対する感受性が高く、簡単に感染症を発症します。特に、新生児はエンテロウイルスや大腸菌、黄色ブドウ球菌などに感染するリスクが高く、新生児は抵抗力が弱いため、すぐに命の危険に陥ることになります。
また、出産時に母親から産道感染するB群溶血性レンサ球菌、単純ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、クラミジアなどの感染リスクもあります。
B群溶血性レンサ球菌は、生後7日以内に発症する早発型の場合は死亡率が高いので、異常がないかどうか、発症していないかを観察しなければいけません。
■母乳で必要な栄養が摂取できないリスクがある
新生児は不感蒸泄や排尿、胎便の排出があるにもかかわらず、それを補う栄養や水分を十分に摂取できないため、生後3~4日で出生時の体重の5~10%が減少します。
そして、7~10日後には体重は元に戻ります。ただ、母乳の分泌が不十分だったり、新生児の哺乳力が弱いと、体重は減少し続けてしまいます。
また、初乳には分泌型グロブリンのIgAを豊富に含んでいますので、初乳を新生児に飲ませることで、新生児の免疫力を上げることができますが、母乳を摂取できないと、新生児の免疫力を上げることができません。
そのため、新生児が母乳で必要な栄養を摂取できるようにケアしていく必要があるのです。
■母子関係を確立できない
出産を終えた母親は、みんな生まれてきた新生児に愛着を持っていると決めつけることはできません。分娩による疲労や育児に対する不安感を持つことで、マタニティーブルーに陥って、母子関係をうまく確立できないことがあるのです。
新生児の看護をする看護師は、適切な母子関係を確立できるように、新生児だけでなく、母親にもアプローチしていく必要があります。
5、新生児の看護目標と看護計画
新生児の看護目標と看護計画を、先ほどの看護問題に基づい立案していきましょう。
■体温・呼吸・循環が安定しない
看護目標 | 体温・呼吸・循環が安定し、異常がない |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン ・全身状態(上記参照) |
TP(ケア項目) | ・頻回にバイタルサインのチェックを行う ・着衣や室温で体温調節を行う ・湿度に留意し、乾燥しすぎないようにする |
EP(教育項目) | ・母親に体温調節について指導する ・異常が見られたら、すぐに報告してもらうように伝える |
■感染リスク状態
看護目標 | 感染を起こさない |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン ・全身状態(上記参照) |
TP(ケア項目) | ・新生児に使用するリネンや器具は消毒したものを使う ・1行為1手洗い、1患者1手洗いを徹底する ・感染源となりうるものはすべて取り除く |
EP(教育項目) | ・母親や家族に手洗い・手指消毒を指導する ・風邪を引いているような面会者は遠慮してもらう |
■母乳で必要な栄養が摂取できないリスクがある
この看護計画は新生児だけでなく、褥婦の看護計画にもなるものです。
看護目標 | 必要な栄養を摂取できる |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン(新生児) ・体重の増減(新生児) ・吸啜力(新生児) ・乳腺の発育状態 ・乳頭の形や大きさ ・乳頭の状態 ・乳房緊満の有無 ・授乳間隔や時間、手技 ・母乳の分泌状態 ・母乳育児に対する母親の考え方や意欲 |
TP(ケア項目) | ・乳房マッサージ ・乳管開口術 ・乳房の温罨法 ・搾乳介助 ・しっかり休息をとるように促す ・精神的なケアを行う ・必要であれば人工乳を与える |
EP(教育項目) | ・自分で行う乳房マッサージ法や搾乳法を指導する ・休息や精神的な安定の必要性を説明する |
■母子関係を確立できない
この看護問題も母親側のケアに重点を置くものですが、新生児の看護問題としては重要なものになります。
看護目標 | 母子関係を確立できる |
OP(観察項目) | ・疲労感の程度 ・新生児への接し方 ・家族関係 ・睡眠状態 ・不安の訴えや表情 |
TP(ケア項目) | ・母親の訴えを傾聴する ・ゆっくり休める環境を整える ・沐浴や授乳等で不安や焦りを抱かせないようにする |
EP(教育項目) | ・休息の重要性を説明する ・マタニティーブルーはホルモンバランスによるもので、心配ないことを伝える ・不安や心配があれば、何でも言ってもらうように説明する |
まとめ
新生児の基礎知識や看護過程、看護問題、観察項目、看護目標、看護計画をまとめました。新生児はまだ状態が不安定ですので、たとえ出生時に異常がなくても、しっかり観察をして、異常の早期発見に努めましょう。
また、新生児の看護は母親への看護にもつながりますので、母親の状態を考慮しながら、ケアをしていきましょう。