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肺炎の看護|間質性肺炎の症状と看護アセスメント、治療における観察項目

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肺炎看護

肺炎には細菌やウイルス感染による肺炎や、誤嚥性肺炎、間質性肺炎、マイコプラズマ肺炎などいくつか種類があり、それぞれ肺に炎症を起こす疾患ではありますが、発生機序が異なり、治療や症状も異なってきます。肺炎の種類によって看護ケアも異なるのでしっかりと理解しておく必要があるでしょう。ここでは、主に間質性肺炎についてとその看護についてご紹介します。

 

1、肺炎の概要

肺炎とは、気管支や肺(肺胞)が炎症を起こすことをいいます。細菌やウイルス感染によって発症される場合が多いと言われています。肺には直径0.1〜0.2mmほどの小さな袋状の肺胞というものがぶどうの房のようになっています。この肺胞が伸縮して酸素と二酸化炭素のガス交換を行なっています。一般的にいわれる肺炎がこの肺胞の炎症です。しかし、肺胞ではなく、肺胞の壁や周辺に炎症が起こる肺炎があり、それを「間質性肺炎」といいます。間質性肺炎について説明していきます。

 

1−1、間質性肺炎とは

間質性肺炎は、肺の間質つまり肺胞周囲の胞隔壁(胞隔)と呼ばれる間質肺胞を覆っている壁や、その周辺が様々な原因によって炎症や損傷が起こり、ここを病変の場としている状態で、壁が繊維化して厚く硬くなります。そして、肺の最小単位である小葉を囲んでいる小葉胞隔壁や肺を包む胸郭も繊維化して厚くなるということが起きます。そのため、肺の膨らみが悪くなり、ガス交換がうまくいかなくなるのです。繊維化が進んで肺が硬く縮むと、蜂巣肺といわれる穴ができるようになります。

肺炎の看護

出典元:KOMPAS

 

他の肺炎の種類として、肺胞が炎症して起こるものがあり、その主な疾患としては食べ物の誤嚥することによって起こる誤嚥性肺炎があります。間質性肺炎はいくつかの種類に分けられますが、一般的に原因不明といわれる特発性間質性肺炎、原因が明らかであるものは、塵肺、過敏性肺炎、薬剤性肺炎、放射性肺炎、ウイルスなどによる感染症(ウイルス肺炎、真菌症、カリニ肺炎)、全身性疾患(慢性関節リウマチ、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスなど)の肺病変である膠原病肺、サルコイドーシスなどがあります。原因不明である特発性間質性肺炎は、未だに原因を特定できてはいなく、難病にも指定されていています。

 

1-2、特発性間質性肺炎の国際新分類

■主要ⅡPs

①特発性肺腺維症(IPF)

②特発性非特異性間質性肺炎(特発性NSIP)

③呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD)

④剥離性間質性肺炎(DIP)

⑤特発性器質化肺炎(COP)

⑥急性間質性肺炎(AIP)

■稀なⅡPs

⑦特発性リンパ球性間質性肺炎(LIP)

⑧特発性pleuroparenchymal fibroerastosis(IPPFE)

■分類不能型ⅡPs

出典元:難病情報センター

 

日本では、特発性間質性肺炎の中で特発性肺線維症(IPE)が最も患者数が多く80〜90%を占め、次いで特発性非特異性間質性肺炎が5〜10%、特発性器質化肺炎が1〜2%となっています。特発性間質性肺炎以外の原因がわかっている間質性肺炎の原因としては、空気中に浮遊する微粒子(石綿などの粉塵)の吸入による塵肺、ホコリ、かび、ペットの毛などを繰り返し吸引したことによるアレルギー性の過敏性肺炎、抗がん剤や解熱性消炎鎮痛剤、総合感冒薬などによる薬剤性肺炎、放射線の照射による放射線肺炎、インフルエンザ、マイコプラズマなどによる感染症、関節リウマチなどの膠原病が原因となるものがあります。

 

2、間質性肺炎の症状

間質性肺炎に関してですが、こちらは病状が進行するまで症状がほとんどありません。病状の進行は、急激なものもなかにはありますが、基本はゆっくりと進行し、症状が出現するまでには数年かかります。病状が進むと主な症状として、呼吸困難、呼吸苦、息切れ、痰を伴わない空咳(乾性咳嗽)が出現します。このような症状は、運動をしたときや、階段を上るとき、坂道などの労作時に起こりますが、病状が進行すると安静時や日常動作時にも起こることがあり、日常生活に支障が出ることがあります。

 

3、間質性肺炎の診断

間質性肺炎は、診断基準として身体所見、一般的臨床検査、特殊検査があります。

 

3−1、身体所見

胸部の聴診でパチパチやパリパリという音が聴取できます。これは捻髪音という髪の毛をつまんで捻ると出るような音や、ベルクロ・ラ音というマジックテープを剥がす音に似ています。他には、発生機序は分かっていませんが、手足の指の末端が太鼓のバチのように丸みを帯びるような特徴であるバチ指が見られることもあります。

 

3−2、一般的臨床検査

①胸部画像検査(単純X線、CT)

胸部X線の場合、間質肺炎の初期には肺の下葉や肺全体が白っぽくぼんやりと写る「すりガラス様陰影」が特徴です。CTでは、どこの部分がどの様に変異しているかを読影し、どの病型であるかを見分けます。

 

②呼吸機能検査

肺活量を測定して、肺の膨らみや酸素を取り込む能力を調べます。体格や年齢から見て平均値との比較を%肺活量といい、肺機能の重症度の判定をします。

 

③血液検査

炎症の度合いを調べるために、LDH、CRPなどを調べますが、肺組織の破壊程度を調べるために、SP-A、SP-D、KL-6というマーカーを調べます。この数値が高いと間質性肺炎である可能性が高く、症状の進行具合や、治療の効果判定に信頼性があります。

 

3−3、特殊な検査

内視鏡で気管支や肺から細胞を採取する気管支鏡や胸腔鏡、また開胸によって肺組織を採取する外科的肺生検で病理検査を行います。他にアイソトープ検査という、ガリウム67という放射性物質を標識したクエン酸を注射して2日後に撮影するという検査があります。これは炎症が強い部位にクエン酸が集積するという性質を利用して病変の広がりを検査するものです。

 

4、間質性肺炎の治療

要因のはっきりしている間質性肺炎については、その原因となっている環境から離れることや、元の疾患に対する治療が行われます。間質性肺炎が発症している場合、その効果が認められているものとして、副腎皮質ステロイド剤と免疫抑制剤の2種が使われます。特発性配線衣装に対しては、抗線維化剤(ピルフェニドン)が使われますが、この薬剤が効きやすい病型とそうではない病型があり、間質性肺炎のすべてに有効な治療法ではありません。また、薬剤の副作用も強く出る場合もあり、使用には慎重な判断が必要なのです。

進み具合は比較的ゆっくりであることが特徴ですが、副作用が強く出てしまったり、薬剤の効能よりも負担が多くなる場合には、対症療法として、鎮咳剤や去痰剤を使用することもあります。ガス交換が何らかの原因によってうまくできないために、日常生活に支障が出ている場合には、酸素療法も行われます。自宅や外出時でも酸素吸入を行う必要がある場合も多いです。

 

5、肺炎の看護・アセスメント

5−1、アセスメントのポイント

間質性肺炎のアセスメントポイントのひとつ目としては、繊維化した肺胞によってガス交換がうまくできないことでの低酸素血症や呼吸苦の発生の有無と程度を観察します。

低酸素血症は、間質性肺炎の症状が徐々に進んでいくために、軽度なら自覚がなく気づかないことがあります。労作時の呼吸苦や息切れ、空咳などの症状がないかどうか、また、チアノーゼや血液検査データなどから、病状の進行具合と、日常生活で支障が起こっていないかをアセスメンントします。そして、間質性肺炎の原因をアセスメントして、病状の理解や、家族背景、生活環境での悪化が考えられるなら、看護計画を立案して関わるようにします。

 

5−2、看護問題と目標にすべきことについて

看護問題としては、次の4つを例に挙げます。

①呼吸苦、咳嗽がある(非効果的気道浄化)

②呼吸苦によって日常生活に支障をきたしている(活動耐性低下)

③患者、家族の疾患や予後に対して不安がある(不安)

④呼吸苦によって不眠である(不眠)

 

それぞれの看護目標は以下のようにするとよいでしょう。

①呼吸や循環状態が安定する

②病状を理解し、状態に合わせて日常生活を送ることができる

③疾患を理解し、心身の安定が図れる

④安楽な睡眠をとることができる

 

5−3、肺炎の看護計画について

①呼吸苦、咳嗽がある(非効果的気道浄化)

■観察項目(OP)

・呼吸苦や咳嗽の出現状況(安静時・労作時での違い)

・安静時と労作時の循環状態の変化

・使用薬剤の効果

■ケア項目(CP)

・症状の有無や程度に合わせてADLを介助する

・環境整備

・必要時、医師の指示により与薬を行う

■教育項目(EP)

・呼吸苦や咳嗽がある時は無理に行動しないように説明する

・必要な時は遠慮せずに介助を求めるように説明する

・自覚症状を観察して、症状に合わせて行動するように指導する

・薬の使用方法について説明する

 

②呼吸苦によって日常生活に支障をきたしている(活動耐性低下)

■観察項目(OP)

・バイタルサイン(脈拍、呼吸数、血中酸素濃度、血圧)

・自覚症状(呼吸苦、息切れ、倦怠感)

・活動に対する意欲

・活動することへの不安の有無

・自力でできるADLの範囲

■ケア項目(CP)

・必要時、酸素を吸入する

・呼吸が楽になる体位を工夫する

・必要時、ADLの介助を行う

■教育項目(EP)

・自覚症状を観察して、できる範囲で活動するように説明する

・自分でADLができるように環境を工夫するように指導する

 

③患者、家族の疾患や予後に対して不安がある(不安)

■観察項目(OP)

・不安の内容

・表情、行動

・イライラや焦燥感、無力感の有無

・病状の理解度

■ケア項目(CP)

・不安の訴えを傾聴する

・疾患の認識に応じて、情報提供を行う

・症状に応じて、コミュニケーションの時間や場所を配慮する

■教育項目(EP)

・疾患の経過や予後について説明する

・薬剤の正しい使用方法を説明する

・疾患を持ちながら生活する工夫を、患者や家族とともに一緒に考える

 

④呼吸苦によって不眠である(不眠)

■観察項目(OP)

・睡眠状況、中途覚醒の有無

・熟眠感の有無、程度

・日中の活動・休息の状況

・呼吸状態

・バイタルサイン

・不安の有無

■ケア項目(CP)

・安楽な体位の保持

・寝具や寝衣の工夫

・環境整備

■教育項目(EP)

・良い睡眠が取れるように生活のリズムを作るように説明する

・体位の工夫について患者とともに考える

 

まとめ

呼吸は健康である時は自然なことであり、無意識なものではありますが、疾患によって呼吸苦があると、とても辛く不安を伴うものです。肺炎の看護は、疾患を理解しての身体的な部分と精神的な部分へのアプローチが大切ですが、間質性肺炎は進行していく疾患なので精神面への関わりも重要なものなのです。

 

参考文献

検査と技術 vol.29 no.8 (大塚満雄,高橋弘毅,阿部庄作|2001/07/01)


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