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吐血の看護|喀血の原因と対応方法、患者の看護計画について

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吐血看護

吐血とは、大量の出血になりやすく、誤嚥による窒息、ショックバイタルと急変しやすい疾患の一つに上げられます。また、検査も苦痛を伴うものが多く患者さんの負担が大きいので看護として支えていかなければならない症状です。ここでは、吐血の症状や原因、考えられる病気などについて再度確認し、今後の治療に活かしていけるようにしましょう。

 

1、吐血と喀血の違い

■吐血

消化器の出血によって口腔から吐き出すものです。十二指腸にあるトライツ靭帯から上部の出血は、吐血となってでてくる事がほとんどです。また、胃~トライツ靭帯の間での出血は、コーヒー状の出血として確認できます。

 

■喀血

呼吸器から出血し口腔からでてくるものです。肺や気管から出血した場合は、空気を多く含みながら排泄される為に泡沫状に喀血することがほとんどです。新鮮血であることが多く、大量の場合は、出血による窒息が起こります。咳や痰が混入していることも多く血液の中に含まれているものも観察していく必要があります。

 

2、出血の性状

■吐血

胃潰瘍からの出血がもっとも多く、胃より下で出血した場合は、コーヒー残渣様嘔吐と言われるように黒色です。しかし、100ml程度では吐血することは稀であるためにジワジワと出血するものでは、下血として出てくることが多いです。血の色がコーヒー色になる理由として、血液にあるヘモグロビンが胃酸によってヘマチンに変化されてしまうことで鮮やかな赤色が暗褐色~黒色に変化します。しかし、吐血の中にも新鮮血ででてくるものがあります。それは、食道からの出血および胃の中で大量の出血の場合には、ヘマチンに変化する前に吐血が起きてしまうことがあるために新鮮血(変色前の赤色の血)が出血することがあります。

 

■喀血

喀血呼吸器からでてくる為に、空気が多く混入し泡沫上の新鮮血が確認できます。大きな動脈が破綻した場合は、泡沫状の血液は少なくなりますがありますので出血部位の特定で見逃せないサインです。

 

3、吐血の原因

吐血の原因にはいくつもの原因があります。胃潰瘍、胃がん、食道静脈瘤、マロリーワイス症候群、十二指腸潰瘍などありますが割合が多く出血しやすいものを説明していきます。

 

■胃潰瘍

胃潰瘍の原因もいくつかあります。ピロリ菌によるものやNSAISの多用によるもの、ストレスによるものなど多くの因子が関わっています。胃粘膜の破綻が潰瘍となります。その状態を胃潰瘍と言いますが、胃潰瘍が進行していくと血管を巻き込みながら潰瘍を形成します。その形成する時に血管が破たんし、出血が起きます。動脈を巻き込んでいた場合には、大量の出血が起き吐血となります。大きな動脈が破綻して大量出血した場合だと吐血が新鮮血の場合があります。特に胃には様々な動脈があり、胃潰瘍の場合は注意が必要です。

 

■胃がん

胃がんは、喫煙や飲酒、食生活、ヘリコバクター・ピロリ菌が関与しています。40代以上の方になると7割の方がピロリ菌を保有していると言われています。胃がんや胃潰瘍の予防には、ピロリ菌の除菌が必要です。胃がんも胃潰瘍と同じように血管を巻き込んで細胞異常を起こしていくので血管が破綻した時には、出血してしまいます。これが、動脈の場合には、大量出血となることがあります。

 

■食道静脈瘤

食道でも下部食道にできやすいです。下部食道にできる原因では、基礎疾患に肝臓の疾患がある事が多いです。肝疾患によって門脈の圧が高まることで食道側の静脈の方に大量の血液やアンモニアが流れます。その為に大きな圧がかかった静脈では、変形し静脈瘤が形成されます。門脈が閉塞傾向にあると門脈の静脈圧と全身血圧差がおおきくなります。これが12mmHg以上だと食道静脈の方に大きな負担として流れ始め静脈瘤が発生し出血のリスクが非常に高まります。下部食道以外にも胃底部にもできやすいです。静脈瘤の発生割合としては、胃底部よりも下部食道の方が多い傾向にあります。下部食道の静脈瘤が破裂した場合は、胃液にさらされることがないので新鮮血ででてきます。静脈瘤の破裂の場合は、出血が時折、大量になることがありますので注意が必要です。しかし、静脈瘤の出血の場合は自然に40%程度は、止血されると言われています。

予後は、肝臓の重症度に左右される事が多く、肝臓のケアも大切なものとなります。

 

4、吐血の治療と看護

治療の前に多くの吐血があった場合は、回復体位をとり吐血しないように配慮します。喀血の場合は、肺にとどまらないように出来るだけ気道を確保する事が優先されます。しかし、吐血の場合には吐血しないようにすることが大切です。吐血することで気管に入り窒息を防ぐためです。

右側臥位で顔を横に向けて嘔吐しにくい体位にします。また、吐血後の場合だと口腔内が血液で不快になっているので嘔吐を誘発しないように口腔ケアも必要となります。

治療では、胃がんや胃潰瘍の原因であるヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することや出血源の特定を行います。必要であれば、硬化療法やクリッピングを行います。出血量が多い場合には、二重管を挿入し胃内洗浄およびドレナージを行うことが推奨されており、治療に対して患者さんには、大きな不快を招きます。また、緊急でやることがほとんどの為に患者さんの精神負担は大きく、精神的なケアも必要となります。

 

5、バイタルサインでは見抜けない出血

バイタルサインを適宜図ることで出血性ショックの前兆を見逃さないようにします。しかし、出血性ショックでの状態でも頻脈のみの場合もあるためにバイタルサインのみを指標にすることはさけた方がいいです。

 

5-1、ショック症状

脈緊張の低下、頻呼吸、蒼白、発刊、乏尿、錯乱、意識レベルの低下が挙げられます。これらに加えて貧血の症状も認められます。バイタルサインのみではなく、排尿の量や排便の性状など全身状態の観察が大切となります。

 

■出血性ショックの重症度

ごく軽症:750ml バイタルサインに変化なし

軽症:750~1500ml頻脈100~120回/分、収縮期血圧80~90mmhg 尿量30~40ml

中等度:1500~2500 頻脈120回/分 以上 収縮期血圧 60~80mmhg 尿量:乏尿

重症:2500ml以上 脈拍の触知不可 収縮期血圧60mmhg以下 無尿

 

■出血時の対応

早い段階でラインを留置することが望ましいです。これは、出血とともに末梢循環が少なくなり血管が縮小していきます。そうなると、ラインが取りづらくなります。出血による血圧低下時には、輸液(生食の場合が多い)での負荷も行います。出血量が多いと判断された場合には、早めに22G以上のラインを取ることが必要です。

22G以上で取る必要があるのは、輸血時に22G以上でないとヘモグロビンや赤血球が破壊される可能性があるためです。なので、ラインを取る際には22G以上が好ましいのです。なるべく太い針を留置することで急速投与の時も多くの量が早く体内に入ることができます。

また、循環血流量の低下は、末梢組織の低酸素状態を招きます。そうすると代謝性アシドーシスをきたすことがあります。緊急時の処置として酸素投与、輸液や輸血での末梢循環の改善を優先されます。酸素量の吐血を繰り返すと胃液を喪失するためにアルカローシスに陥ることもあります。その場合には、ガス分析が重要となりますが、嘔吐を誘発させる口腔内の不快感の除去および回復体位をとる必要があります。

 

■酸素投与量

末梢循環が悪くなると酸素の循環も悪くなるために酸素飽和度も高める必要があります。

必要が始めの投与量は、10Lが望ましいです。10Lの場合だと、成人が吸入する換気量を90%程度はカバー出来ると言われていますので10Lから開始して酸素飽和度を見ながら減量していく必要があります。

 

まとめ

吐血は患者にとっても看護師にとっても心身ともにショックの大きいことです。看護側としても視覚的に思わず焦る症状ではありますが、考えられる病気と患者の状態を見極めて治療にあたり、合併症の防止や緊急治療後のケアに努めましょう。

 

参考文献

消化器マニュアル プロフェッショナル版

消化器学会

救急医学会

出血性ショック-特集 救急疾患の診断基準と重症度判定-|石川 雅健(1998/01)

Transcatheter Arterial Embolizationにて救命しえた胃十二指腸仮性動脈瘤破裂を伴った十二指腸潰瘍出血の1例|渡辺 栄一郎、田中 潔 、高安 肇、渡邊 昌彦(2017/01/01)


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