日々の医療現場では輸液や内服は必ずと言って良いほど日常的に行われる看護行為の一つです。小児から大人まで様々な疾患に対して行われる与薬を、安全かつ適切に患者さんに投与できるよう細心の注意を払って業務を行わなければなりません。輸液や内服といった患者さん毎に異なる薬剤の投与を正確に行うために看護師が行う確認作業に5Rというものがあります。中には6Rとして推奨している医療機関等もありますが、ここでは基本的な5Rについてのポイントを見ていきます。
1、5Rとは
5Rとは、輸液等の与薬を行う際、安全に投与するために行う確認事項のことを言います。『R』とは「Rⅰght」の略を指します。5つの確認項目に対して正しいものが準備・投与されようとしているのかをチェックするためのものですね。「Rⅰght=正しい」が重要なキーワードとなります。まずは意味を理解し業務に取り入れていきましょう。
2、5Rに基づく確認の方法
輸液や内服の指示が出たら、処方箋、注射指示書に記載されている薬剤を5Rに基づき要点をおさえて確認していきます。以下では誤薬を防止するため、何を確認していく必要があるかを見ていきましょう。
①Right・Patient:正しい患者
患者さんにフルネームで名乗ってもらい指示書と合っているかを確認します。氏名、診療科、病室番号、年齢や性別なども確認しましょう。同性あるいは同姓同名の患者さんがいる場合には細心の注意が必要です。同室に同性または同名の患者さんがいることもあるかもしれません。「フルネーム」で確認することが患者さん違いの防止になることを頭の中に入れておきましょう。
②Righ・Drug:正しい薬剤
指示書の薬剤との合致を確認します。薬剤を溶解・混合する前に看護師同士でダブルチェック、指示量をシリンジに吸った時にダブルチェックをします。また、患者さんに投与する前にも再度確認を行います。薬剤アレルギーの有無や禁忌薬剤ではないかの情報収集も前もってしておく必要があります。遮光性の薬剤や直前溶解の薬剤もあるのでこれも一緒に確認しておきます。他の医療者とのダブルチェックにより自分自身の思い込みの可能性を低下させることで誤薬を防止できます。内服薬に関しては薬剤部から上がってきたものを処方箋と照らし合わせながら内容が正しいか確認、その後与薬する看護師が再度確認します。
③Right・Dose:正しい用量
年齢・体重による適正な薬剤量、濃度であるかを確認しましょう。単位や桁数なども確認します。途中から薬剤量が変更になっている場合もあるため、指示量に変更はないか注意しましょう。処方事故で最も多いのが投与量の間違いです。指示書や処方箋をその都度チェックして疑問な点は必ずカルテを見る、医師に確認することが大切です。また、与薬における事故では、静脈注射・内服・末梢静脈点滴での過剰投与が多く、重複していることに気がつけない確認不足が原因に挙げられます。薬剤の取り違えや禁忌薬剤の投与と合わせて注意する必要があります。
④Right・Route:正しいルート、経路、用法
注射による与薬、座薬、内服、点眼、湿布などの貼付等の確認をします。注射であれば静脈注射だけでなく皮下注射・筋肉注射もあります。ワンショットでいくものなのか、時間をかけていくものかも確認が必要です。また、薬剤によっては単独で投与しなければならないものもあります。点滴ルート内の混濁や詰まりの原因となり、ルートの取り直しや最悪の場合には中心静脈ルートの入れ替えなど患者さんにも負担がかかりますので日頃から配合禁忌の薬剤を知っておくことも重要です。
⑤Right・Time:正しい時間
日付、投与時間や点滴の滴下速度(一定の時間をかけて投与するもの)を確認します。輸液においては抗生剤など、8時間毎や12時間毎等投与時間が決まっている物があります。これは薬剤の半減期や腎臓・肝臓機能障害を防止するために副作用を考慮した投与時間、滴下速度となっているためです。また、内服においても同様のことが言えます。食前、食直前、食後、眠前あるいは時間が指定されていることもあります。指示書や処方箋をきちんと確認し時間や速度を守った与薬を行いましょう。
3、5R確認のタイミング
薬を実際に患者さんに与薬する前に3回はこの5Rの確認を行う必要があります。
■1回目:薬剤を手にする時
指示書をもとに薬剤を準備する際に薬を出しながら一つ一つチェックしていきます。この時、患者さん毎に別々のトレーに準備していくことで事故防止に繋がります。同性の患者さんがいる場合にはトレーを離して準備するようにすることでミキシング時の入れ違いの防止対策になります。わかりやすいようマーキング等の対策を取るのも良いでしょう。
■2回目:薬剤を手に取って容器から取り出す時、詰める時
薬剤を容器から取り出す、混合させる時に確認を行います。ここでダブルチェックを行うことで用量の間違いや正しい患者さんのものであるかの確認ができます。特に小児の場合は年齢によって薬剤の使用量がかなり変わってきますので桁数や単位に十分注意しましょう。また、インスリンなどの微量に使用する薬剤の単位にも気をつけなければなりません。
■3回目の:患者さんに薬剤を投与する前
実際に患者さんのもとへ行き与薬をする直前です。患者さん本人が話せるようであればフルネームを名乗ってもらう、そうでなければ、ご家族やネームバンド・ベッドネームで本人確認を行い指示書と合わせて声出し確認・指差し確認をしながらルートをつなげていきます。特に点滴ルートが複数ある患者さんに対しては、どのルートからその薬剤を投与するのかをしっかり確認しなければなりません。
4、5Rの覚え方
5Rの覚え方には様々な方法があるようです。下図のような指を使ったもの、語呂合わせで覚える方法などです。覚えるまではメモを持ち歩き、項目ごとに一つずつ確認をしていくようにすると良いでしょう。ご自分に合った覚え方をインターネットや文献などから探して取り入れるのもひとつの方法ですね。また、それぞれの医療機関には看護業務に関するマニュアルが用意されていると思います。これらを参考に日々の業務の中で実践しながら覚えていきましょう。
引用元:一関病院|医療安全へのとりくみ
まとめ
医療に従事する者にとって薬剤の投与は常についてまわる業務の一つです。人の命を預かる私たちにとって決して間違ってはならない重要項目であり、常に緊張感を持っていなければなりません。過剰に体内に入ってしまった薬剤は抜くことができません。このことからも、輸液や内服を行う際には誤薬防止のため事前に必ずダブルチェックを行うことが必要不可欠です。いくつもの業務を並行して行うという忙しさの中で時間に追われつい確認を怠ってしまうことが事故の原因となります。自分自身の思い込みや見間違いに気付ける5Rはとても重要な作業の一つなのです。きちんとした確認作業を行うことで患者さんだけでなく自分自身をも守ってくれる5R、その必要性をきちんと認識・実践し医療事故の防止に努めていきましょう。
参考文献
看護師の内服与薬業務における確認エラー|日本看護管理学会(2005年12月)
注射業務における看護師の安全確認行動の分析|Nurses’Actionofthe(2003年1月)