ミエログラフィー(脊髄造影)は、脊柱管内の神経が圧迫され、しびれ、痛み、まひなどの症状が出ている患者に行う侵襲的な検査方法です。ミエログラフィーの看護は、施術方法や目的、副作用などについてよく知り、腰椎穿刺・後頭下穿刺に準じた処置や観察など、適切な看護が必要です。
患者がミエログラフィーを安全に安楽に受けられ、検査後の副作用を発生させないためには、検査前後の看護が重要となります。ミエログラフィーについて詳しく説明します。
1、ミエログラフィー(脊髄造影)とは
ミエログラフィーとは、脊髄腔の形状と交通性を診断するための臨床検査です。腰椎を穿刺して造影剤を脊髄腔内に注入し、X線で造影剤の拡散する様子を透視して撮影します。
出典元:藤元メディカルシステム
ミエログラフィーは脊髄の圧迫病変の評価に用いられ、今後の治療方針や手術部位、手術方法を決めるための参考に使われます。
MRIによっても脊柱脊髄の病変の診断は行われますが、ミエログラフィーは立位、側位など様々な動態撮影に優れていて、実際に姿勢を動かしての圧迫の状況を確認することができます。また、造影剤を使用してからCTを施行することができるため、神経根の近位の抽出が可能となり、圧迫病変の診断に有用性が高い検査ができます。
2、ミエログラフィーの目的と適応
ミエログラフィーは、様々な原因による脊柱管内の神経組織の圧迫や狭窄の位置、程度を評価するための検査です。
■ミエログラフィーで撮影した正面のX線画像
出典元:慶應義塾大学医療・健康情報サイト
■ミエログラフィーで撮影した側面のX線画像
出典元:慶應義塾大学医療・健康情報サイト
主に腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなど、脊椎脊髄病疾患の病態把握や、今後の治療方針を決定するために行います。
3、ミエログラフィーの方法と流れ
ミエログラフィーの検査時間は10分から20分ほどです。検査前からの流れをみていきましょう。
3-1、検査前
医師から検査の方法や目的、副作用について説明してもらい、同意の有無を確認し、同意される場合は同意書にサインをもらいます。また、検査当日は入院となり、検査前は絶飲食になります。
3-2、検査当日
検査当日は入院し、検査前に点滴を行います。検査室へ行き、患者に横を向いて背中を丸めながら寝ていただき、医師が細い針を用いて腰椎に穿刺して、神経組織を包む硬膜の中にヨード造影剤を注入します。その際に検査のため髄液を少量採取することがあります。
頚椎部の評価にはベッドを傾けて頚部へ造影剤を流します。その後、体を曲げたり伸ばしたりしていただき脊髄・馬尾神経の圧迫の評価をします。脊髄造影検査の終了後にCT室へ移動して、脊髄造影後CT検査を行います(検査所要時間約5-10分)。
検査後は自室へ戻り、床上安静となります。
4、ミエログラフィーの看護
ミエログラフィーは腰椎穿刺してヨード造影剤を注入して造影する検査なので、腰椎穿刺の看護と同様の看護が必要です。
4-1、検査前日
①穿刺部位を清潔にし、必要があれば剃毛を行い、検査前には絶飲食となることを説明します。
②検査後は頭部を30度ほど挙上して3時間ほど症状安静が必要であること、床上安静中は排泄を床上で行う必要があることを説明します。
4-2、検査前
①患者に上下に分かれた検査着に着替えてもらい、排泄を済ましてから血管ルート確保を行います。
②出棟時にはバイタルサインをチェックして、ストレッチャーにて造影室まで移送します。 検査中も適宜バイタルサインのチェックを行います。
③検査時は、病棟の看護師が介助に当たることもありますが、造影室の看護師が介助に当たることもあり、その場合は、病棟看護師は病棟での患者の様子を、造影室の看護師は検査中の患者の様子や検査状況などをお互いに申し送ります。
4-3、検査中
①造影前にバイタルサインをチェックし、問題がなければ、患者を左側臥位として膝を抱えるような姿勢と取り、腰椎穿刺の体位を保持します。
②医師が穿刺部を消毒し、局所麻酔を行います。患者には、動かないように説明し、また激痛が走る場合は伝えるように説明します。
③穿刺中は患者の体位の保持をサポートしながら、プロテクターを装着し、清潔操作で必要物品を授受するなど、医師の処置の介助を行います。
④穿刺後に髄液の流出が確認できたら、必要なら必要量の髄液を採取し保管します。
⑤造影剤の注入後、穿刺針を抜去し、穿刺部に消毒後に絆創膏を貼ります。患者の体位を仰臥位に戻し、頭部を下げないようにして造影を開始します。
4-4、検査終了後
①穿刺部位を清拭し、バイタルサインを測定します。
②問題がなければ、ストレッチャーで頭部を下げないよう45〜60度挙上しながらCT室へ移送し、検査後、病棟へ帰棟します。
③帰棟後、バイタルサインのチェックを行い、問題がなければ医師の指示のもとで飲食可とし、3時間頭部を30度挙上して床上安静とします。
④検査後3時間でめまいなどがなく、意識レベルに問題がなければトイレ歩行も可となりますが、めまいなどがあれば車椅子でのトイレ介助を行います。
⑤トイレ歩行以外は床上安静として、安静中は造影剤が頭蓋内に入らないように、頭部を10〜30度挙上します。
⑥飲水可となったら水分摂取を促し、水分摂取が少ない場合は医師に報告し、必要であれば造影剤を排泄させるために輸液が追加されることもあります。
⑦翌日から入浴が許可されることを説明します。
4-5、検査中、検査後の観察のポイント
脊髄造影の副作用(頭痛、嘔気、嘔吐、めまい、振戦など)の有無、穿刺部位の状態(出血、血腫、疼痛の有無)、意識状態、アレルギー性の発疹の有無、バイタルサインを時間ごとに観察を行うようにします。異常があれば、速やかに医師に報告します。
5、ミエログラフィーの副作用について
腰椎穿刺と同様の副作用に追加して、造影剤による副作用も考えられます。
■腰椎穿刺の副作用
頭痛、嘔気、めまい、感染症などがあります。頭痛、嘔気、めまいは低脊髄圧症候群と呼ばれ、腰椎の穿刺部位から髄液が漏れることで脳脊髄液が減り、脳の浮力が低下することで脳を支えている血管や神経が引っ張られることで起こります。
このような症状は、数日から1週間程度で改善されますが、ひどい場合は、点滴治療や自己血液による硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)という方法を行うことがあります。このブラッドパッチによって、硬膜外腔に血液が広がって徐々に血液が固まり、髄液が漏出している穴を塞いでくれるのです。
感染症は穿刺部位周囲のものもありますが、稀に髄膜炎が発症することもあります。
■ヨード造影剤の副作用
かゆみ、発疹、発赤、嘔気、息苦しさが検査直後から数日で起こる場合があります。ヨード造影剤の副作用は、造影剤が排泄されないことによって起こるので、検査後には水分を十分に摂取して造影剤を早期に排泄させることが副作用を発症させないために重要です。
まとめ
ミエログラフィー(脊髄造影)の目的、方法、看護、副作用について説明してきました。様々な造影検査がありますが、ミエログラフィーは腰椎穿刺を伴う検査のため、腰椎穿刺に対する看護も必要です。ミエログラフィーの検査中や検査後の管理で患者さんの安楽や、副作用の発生の有無にも大きく影響しますので、しっかりと観察して管理することが大切です。