ポートとは血管内にカテーテルを留置して、ポートと呼ばれる部品を皮下に埋め込むことで、確実に血管内に薬剤を投与できる医療機器のことです。
ポートはIVHや抗がん剤の投与に使われますが、看護師はポートの管理方法をきちんと知っておかないと、ポートが閉塞したり、感染が起こりやすくなります。
ポートの基礎知識や造設手順、管理(穿刺)方法、看護計画をまとめましたので、ポートの患者を看護する時の参考にしてください。
1、ポートとは
ポートとは血管内に薬剤を確実に注入するための医療機器のことです。CVポートやIVHポートと呼ばれることもあります。
出典:ポートって何?|がんの化学療法について|患者様・一般の皆様|株式会社メディコン
ポートはカテーテルを血管内(中心静脈)に留置し、ポートを皮下に埋め込むことで、確実に静脈に薬液を投与することができると共に、中心静脈内にカテーテルを留置ししながらも、普段通りの日常生活を送ることができるというメリットがあります。
従来はIVH(高カロリー輸液)を投与するために使われるのが一般的でしたが、近年では抗がん剤の投与目的でも使われるようになっています。
抗がん剤投与目的で使用する場合は、血管が脆く、すぐに薬液が漏れてしまうなどルート確保が難しい患者が適応になります。
ポートの留置部は鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈、肘静脈(前腕部または上腕部)などがありますが、服に隠れることや大きな関節を通らないことなどから、鎖骨下静脈を選択するのが一般的です。
2、ポートの造設手順と観察項目
ポートを造設する手順と観察項目を確認しておきましょう。ポートの造設は30分~1時間程度で終わります。
■必要物品
・CVポートキット
・メス
・縫合糸
・縫合セット
・滅菌ガウン、滅菌手袋、滅菌ドレープ、マスク、キャップ
・剥離鉗子
・滅菌ガーゼ
・綿球、消毒液
・局所麻酔薬
・ヘパリン、生理食塩水
・10mlシリンジ、注射針(18G、23G)
■ポートの造設手順(鎖骨下静脈に埋め込む場合)
①ポートを埋め込む部位を消毒する
②埋め込む部位に穴あきドレープをかける
③穿刺部・埋め込み部位に局所麻酔薬を注射する
④鎖骨下静脈に穿刺し、ガイドワイヤーを挿入する
⑤ガイドワイヤーに沿わせてカテーテルを挿入する
⑥カテーテルを中心静脈まで進める
⑦剥離鉗子でポートを埋め込む場所(皮下ポケット)を作成する
⑧皮下ポケットに向かって、皮下にトンネルを作ってその中にカテーテルを進める
⑨カテーテルとポートを接続する
⑩ポートを皮下ポケットに埋め込む
⑪皮下ポケットとカテーテルを挿入した部位を縫合する
⑫胸部レントゲンでカテーテルとポートの位置を確認して終了
■ポート造設中の観察項目
ポート造設中は気胸や動脈損傷、神経損傷などのリスクがあるので、看護師はポート造設の医師の介助をするだけではなく、これらの合併症が起こっていないかどうかを観察しなければいけません。
<ポート造設中に観察すること>
・バイタルサイン(血圧、SpO2、HR等)
・患者の訴え、苦痛表情の有無
・呼吸状態(皮下気腫の有無、呼吸数、SpO2、呼吸のリズム、チアノーゼの有無)
・しびれや脱力感などの神経症状の有無
・穿刺部や皮下ポケットの観察(出血、腫脹、発赤、血腫の有無)
鎖骨下静脈からのアプローチは気胸や動脈損傷のリスクが大きいので、呼吸状態とSpO2を注意して観察するだけではなく、継時的に血圧を測るようにしてください。
3、ポートの管理(穿刺)方法
ポートの管理方法を説明していきます。ポートが造設された後は、医師の指示に基づいて、看護師がポートを管理します。きちんと管理しないと、ポートが閉塞してしまうことがありますので、看護師は正しい管理方法を知っておく必要があります。
ポートを正しく管理するためには、まずはポートの種類を知らなければいけません。
■ポートの種類
ポートには、グローションタイプとオープンエンドタイプの2種類があります。カテーテルの先端の構造に違いがあります。
種類 | 構造の特徴 |
グローションタイプ | ・カテーテルの先端の側面にスリットが入っている。
・普段はスリットが閉鎖していて、輸液をする時だけスリットが開く ・カテーテル内に血液が逆流しにくく、血栓ができにくい |
オープンエンドタイプ | ・カテーテルの先端が開放されている
・カテーテル内に血液が逆流して、血栓ができることがある ・生食ロックでは不十分なことがあり、ヘパリンロックが一般的 |
出典:Q&A:Central venous portの適応、挿入法、合併症について教えてください。 | 乳癌診療Tips&Traps
■穿刺の際の必要物品
・綿球、消毒薬、攝子
・20mlのシリンジ
・生理食塩水20ml
・固定用テープ
・ドレッシング材
・ヒューバー針(ポート専用の針)
・ディスポーサブル手袋、マスク、エプロン
・針捨て容器
出典:MRIポート(ヒューバープラスノンコアリングニードル) | 静脈アクセス・胃瘻関連 | 医療関係者の皆様 | 株式会社メディコン
ヒューバー針とは、先が折れ曲がっているポート穿刺の専用針です。ポートの穿刺をする時には、必ずこのヒューバー針を用います。
■穿刺手順
手順 | 詳細 |
①薬液の準備 | 投与する薬剤の準備をして、ルート内に薬液を満たし、すぐに接続できるようにしておく |
②ヒューバー針の準備 | ヒューバー針を生理食塩水で満たしてクランプする |
③ポート部の確認 | ポート部に硬結や発赤、腫脹等の異常がないかを確認する
|
④穿刺 | ヒューバー針でポート部を穿刺する。この時、ポートの底に針先が当たって、コツンという感触があるまでしっかりと奥まで穿刺する。針が浅いと薬液が皮下に漏れ出す可能性があるので注意する |
⑤血液の逆流を確認する | ヒューバー針のクランプを開放し、シリンジでポート内の液体を吸引して、逆血を確認する。逆血を確認した後、10~20mlの生理食塩水をゆっくり注入して洗浄する。 |
⑥固定 | 空気混入や抜去を防ぐために、ドレッシング材で穿刺部を覆い固定する |
⑦薬剤の投与 | ヒューバー針に薬剤のルートをつないで、投与する |
⑧ロックする | ヒューバー針のクランを閉じてから、ロックをする
・グローションカテーテルは生理食塩水を注入しながらクランプする ・オープンエンドカテーテルはヘパリン生食を注入しながらクランプする |
⑨抜針 | ヒューバー針を抜針し、絆創膏を貼る |
穿刺する場所は、毎回少しずつずらして行うことで、皮膚へのダメージを最小限にしましょう。また、投与中は薬液が皮下に漏れ出していないかを確認するようにして下さい。特に、化学療法で抗がん剤を投与している場合、皮下に漏出すると重大な合併症となりますので、注意して観察する必要があります。
3-1、ポートの看護計画
ポートの患者の看護問題は、感染リスクがあることと、閉塞リスクがあることです。この2つの看護問題を基にして、看護計画を立案しましょう。
■感染リスク状態
看護目標 | 感染を起こさない |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン
・ポート部の皮膚の観察(発赤、腫脹、疼痛など) ・血液データ |
TP(ケア項目) | ・穿刺時は消毒をしっかり行う
・清潔操作を心がける ・持続投与の場合はヒューバー針は週に1回は交換する ・入院中は清拭や入浴介助などの援助で清潔を保つ |
EP(教育項目) | ・ポート部に疼痛や発赤などの異常が出たら、すぐに伝えてもらうように説明する
・ポートが入っていても、入浴可能であり、清潔を保つように説明する |
■閉塞リスクがあること
看護目標 | 閉塞などポートトラブルが起こらない |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン
・ポート部の皮膚の観察(発赤、腫脹、疼痛など) ・皮下への薬剤の漏出の有無 ・血液データ ・逆血の有無 ・ピンチオフの徴候の有無 |
TP(ケア項目) | ・穿刺の時はポート部の底に届くように奥までしっかり穿刺する
・ポートの種類を確認する ・ポートの種類に応じた適切なフラッシュを行う ・フラッシュ時に抵抗を感じたら、無理にフラッシュしない ・ピンチオフの徴候が見られたり、フラッシュ時に抵抗を感じたら、速やかに医師に報告する ・投与中はルートが屈曲しないように注意する |
EP(教育項目) | ・投与中はルートに触れないように説明する |
ピンチオフとは、留置しているカテーテルが疲弊した状態のことです。ポートは造設したら、ずっと永久に使えるわけではなく、少しずつ劣化していきます。
ピンチオフのカテーテルを放っておくと、カテーテルが断裂してしまうことがありますので、早めに気づいて、必要であればポートを入れ替える必要があります。
仰臥位では逆血確認やフラッシュができないのに、体位を変えると逆血確認やフラッシュができるという場合は、ピンチオフの可能性が高いので、速やかに医師に報告してください。
まとめ
ポートの基礎知識や造設手順、管理(穿刺)方法、看護計画をまとめました。ポートは確実に血管内に薬剤を投与することができるものですが、適切に管理しないと、すぐに閉塞したり、感染を起こしたりしますので、看護師は看護計画を立案して、適切に管理を行うようにしてください。