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軽視できない!低栄養状態の理解と看護による質の高いアプローチ

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低栄養の看護

低栄養は、栄養バランスが不均衡な状態である低栄養は高齢者や寝たきりの闘病患者など、特別な状況下のみに起こる問題と考えられています。しかし現実は異なり、年齢を問わず体調不良や精神状態の変化などでも陥る可能性があります。

また、低栄養は様々な病気の起因となる恐れがあり、日々の気付きや注意が重要です。適切な情報や対策方法を知ることは、質の高い看護を提供していく上で非常に大切な要素となります。

 

1、低栄養とは

低栄養とは、栄養不良の一つで健康な体を維持するために必要なカロリーと必要栄養素が不足している状態を指します。主に低栄養は、全般的な食物接種不足であるカロリー不足、またはタンパク質の不足が原因していると考えられています。この状態のことをPEM(Protein energy malnutrition:タンパク質・エネルギー欠乏症)と呼びます。

低栄養は、年齢や性別、疾病の有無にかかわらず誰にでも起こりうる病気です。食欲不振や偏食などがしばらく続くと、自分でも気付かぬうちに栄養素が不足し、低栄養状態に陥ることも決して珍しくありません。

低栄養とは

出典:低栄養(栄養不良) 介護予防と医療の総合情報サイト ライフケア

 

低栄養状態の診断は、以下をおおよその基準値として行います。

・   血清アルブミン値3.8g/dlを基準として、それ以下である場合(※タンパク質を十分に摂取していない場合に減少する)

・   肥満度指数であるBMIが18.5未満の場合

・   血中コレステロール値150mg/dL未満の場合

・   半年より短い期間に2~3kg以上の体重減があった場合も可能性あり

 

2、低栄養の症状

必要な栄養量の不足や偏りによって低栄養の状態に陥ると、以下のような症状がみられます。

 

・   体重減少

・   貧血

・   骨格筋の筋肉量や筋力の低下

・   体脂肪の低下

・   風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい

・   皮膚の炎症

・   傷や褥瘡が治りにくい

・   下半身や腹部がむくみやすい

・   脱水症状

・   高齢者の「生活自立度の低下」や「要介護度の上昇」につながる

 

3、低栄養時のアセスメント

低栄養状態の患者は、順調な回復過程を辿ることが困難となります。したがって、栄養状態を良好に保つことが回復への支援となるため、栄養状態のアセスメントはとても重要になります。

血液検査によるデータがある際は、総蛋白やアルブミン、赤血球数、血糖値、脂質関連データ、電解質データなどの数値を参考に、栄養状態のアセスメントを行います。検査データが無い場合でも、BMIや体重の変動、皮膚の弾性、皮下脂肪厚、眼瞼結膜の色調、浮腫の有無などからアセスメントを行うことが可能です。

 

4、低栄養患者に対する看護計画

十分なアセスメントを行った後に、看護問題を提起し、患者それぞれに適した栄養ケアを提供するため看護計画(看護目標、OP-観察項目、TP-ケア項目、EP-教育・指導項目)を立案していきます。

 

■看護問題

食思の低下、適正食事摂取量の欠如、誤嚥リスク状態、褥瘡などの皮膚状態の悪化、筋力低下による運動機能の低下 など

 

看護目標

食思の改善、適正食事摂取量の安定、誤嚥を起こさず食事摂取ができる、褥瘡などの皮膚状態の改善、筋力回復による運動機能の向上と体動の増加 など

 

■看護計画

観察項目

(OP

・   食思が向上する状況や時間や患者の嗜好

・   患者のエネルギー消費量の測定による適切な食事摂取量

・   誤嚥の起こりやすい食品や食事摂取方法

・   栄養状態による皮膚状態の変化

・   筋力測定に関係の深いBMIやアルブミンの数値の推移

ケア項目

(TP

・   患者の食習慣や文化を尊重する

・   嗜好や食べやすさの工夫(一口量や形状の調整、とろみをつけるなど)によって適切量の完食を促す

・   誤嚥防止のため食前に喀痰の吸引や喉のアイスマッサージを行う

・   チューブ栄養が必要な際は、食べ物の逆流防止のため頭部を高くして摂取を行う

・   褥瘡改善のため、低蛋白血症に注意したメニューやサプリメントなどの補助食品追加の提案を行う

・   BMIやアルブミンの数値に注意し、変化が見られる際にはすぐに医師に相談する

・   食事の介助範囲を最小限にして患者本人による食事摂取を心がける

教育項目

(EP

・   患者と家族に対する低栄養の理解を促進する

・   回復の重要性について説明する

・   誤嚥の危険性と予防法を説明・指導する

 

5、高齢者の低栄養について

高齢者は老化にともなう消化機能の低下や嚥下障害などの身体的変化によって、低栄養状態に陥りやすい傾向にあります。また病気や機能低下が無い場合であっても、自宅に暮らす高齢者のおよそ7人に1人は、1日の摂取カロリーが1,000キロカロリー以下というデータがあり、適切な栄養摂取に十分とはいえない現状があります。

社会の高齢化が進む中、高齢者は低栄養症状が進むと寝たきりになりやすく、命にかかわる危険も高くなるため軽視することはできません。今後、低栄養は確実に社会問題化するであろうと懸念されています。

実際、高齢の入院患者や入所および在宅療養者の約3~4割に、低栄養状態の高齢者がいることが確認されています(下図)。

 

≪在宅療養患者の高齢者の栄養状態≫

在宅療養患者の高齢者の栄養状態

出典:食べやすく、おいしく、栄養管理を。 食べて元気に!スマイルケア食 政府広報オンライン

 

高齢者が慢性的に低栄養状態に陥ると、血液中のタンパクが低下する低アルブミン血症などを引き起こしやすく、むくみや腹水、貧血など様々な身体機能の低下の原因となります。このような症状が続くと運動機能が低下し、高齢者にとっては「生活自立度の低下」や「要介護度の上昇」につながり、結果的に寝たきり状態になりやすくなります。

高齢者にとって低栄養を予防するということは、QOLや自立度を維持するだけではなく、低栄養に起因する病気の罹患を予防することにもつながります。

 

まとめ

低栄養に関する知識を深めていくと、低栄養は年齢や病気の有無を問わず陥る可能性があることが見えてきました。また低栄養は、それに起因する病気のリスクを増大させる恐れがあり、決して軽視することができない問題であることがわかりました。

病気を治療中の患者にとって、正しい栄養管理による良好な状態というのは、全ての治療法の基盤となります。低栄養は日々の食事と深く関係しているので、適切な栄養指導など看護の力が患者の病状回復における大きな役割を担っています。

患者の意見を聞き、コミュニケーションを図りながら病状がより良い方向へ進んでいくよう、理解と知識を役立てていくことが必要です。


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