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急性・慢性膵炎における看護の注意点と適切な看護計画

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急性・慢性膵炎の看護

症状のレベルなどによって、軽症から死亡の可能性も濃厚になるなど、幅広い病態をもつ膵炎。それぞれの症状の進行を食い止め、患者の回復のための適切な看護計画を実行するために、膵炎とは何かを改めて振り返ります。

 

1、膵炎とは

膵炎とは、何らかの要因により膵臓が炎症を起こした状態の総称を指します。症状としての代表的なものは嘔吐や下痢などの消化器症状や上腹部から左背部への痛みなどが主にあげられています。

この膵炎に対する看護処置ですが、まずは膵炎が臨床の発症状態において、急性膵炎と慢性膵炎によって大きく分けられる事を知っておくことが重要です。

いずれの状態かによって看護計画が全く異なる事を事前知識として認識しておく必要があります。

 

1-1、急性膵炎とは

急性膵炎とは、非活性型で分泌されていた膵消化酵素が何らかの要因で活性化され、膵臓自体を消化するという自己消化の症状が本態です。

悪心や嘔吐と共に激しい腹痛が特徴となっており、特に上腹部の激痛で発症します。その後に心窩部または左季肋部に持続痛がおこり、背部、左肩にかけて痛みは放散していきます。

圧痛も心窩部および左季肋部にあって、病変が進行すると腹部全体に広がっていきます。これら全ての症状に伴う痛みは激痛であるということが急性膵炎の大きな特徴です。

比較的予後の良い疾患ではありますが、重症になると多くの重要臓器が障害され、多臓器不全を呈します。また、全身病に進行すると死亡率が極めて高くなります。

 

1-2、慢性膵炎とは

慢性膵炎とは、膵実質の破壊と脱落がゆるやかなペースで進行し、その結果として生じた不規則な間質結合組織の増生が基本的な病変です。

病変の範囲としては広範なものから限局している場合などもあり、病態も症状も多彩なのが特徴と言えます。

要因となるものは一般的にアルコール性と非アルコール性、もしくは膵石の有無で石灰性、非石灰性のそれぞれに大別され、病期は代償期と非代償期に分けられます。検査、診断、治療方針は病期によってもそれぞれ違います

代償期の症状は腹痛の発症からスタートし、痛みが長時間にわたって起こります。疼痛は間欠的もしくは慢性的で、上腹部、心窩部、左季肋部に起こった後に背部に放散されます。

痛みの種類としては刺し込むような痛みとされており、鈍痛から激痛まで程度はさまざまです。また、嘔気や嘔吐、食欲不全も症状に含まれます。

非代償期の症状は代償期とは異なります。膵酵素が減少して消化器吸収障害が起こり、消化不良、下痢、脂肪便が出現します。膵内部の分泌機能が障害されることによって、糖代謝にも異常がみられるようになります。食欲不振や消化不良のほかに、治療に伴った長期にわたる食事制限などによる体重減少もみられます。

 

2、患者との信頼関係によって導き出される膵炎の看護計画

膵炎の症状における観察ポイントは、症状の発症した状況や経過時間、痛みの種類です。急性か慢性かを切り分ることが、今後の治療に大きな影響を及ぼすためです。そのためには患者から適切なヒアリングを行う必要があります。

また、膵炎はアルコールから遺伝性のものまで様々な起因が考えられます。起因の判別や退院後も再発を防止するために普段の生活習慣についてもヒアリングすることも看護の過程として必要なポイントになってきます。

 

2-1、急性膵炎と診断された場合の看護計画

急性膵炎は、急性腹症の代表的な疾患の一つです。激痛と共に急速に発症してくるため、看護や処置も早急な対応が求められます。

できるだけ早急に成因を含めて病態を正確に把握した診断ができるかと、重症度のレベルを判定した看護を行うことが急務となってきます。

症状によっては疼痛緩和のほか、絶対安静や絶飲絶食の対応が必要になる場合もあります。また、急性炎症を繰り返することにより慢性膵炎に移行しやすいのも特徴です。

急性炎症の症状が消失したあとの体調管理や、退院後の経過観察も含めた適切な看護援助が必要になります。

 

2-2、慢性膵炎と診断された場合の看護計画

慢性膵炎の病変は不可逆です。再発を防ぐために、薬物療法のほかに禁酒や食事療法、規則正しい生活などの生活管理が退院後も求められます。

患者は強い痛みや今後の病変への恐怖を抱いている事が多いため、常に不安を抱いているケースが少なくありません。そのため物理的な看護のほかに、精神的な看護、援助が不可欠です。

 

3、膵炎を理解することで見えてくる共通の看護ポイント

患者は急瀬・慢性にかかわらず痛みや今後の症状について強い不安を持っています。入退院の中で各症状に着目しながら、精神的なケアも並行して行うことが求められます。

 

3-1、入院中に注意すべき看護ポイント

絶飲食の指示が守られているかの確認や、嘔吐があった場合は吐物の性状、量、胃液分泌の性状、量の観察を行います。

膵炎において、痛みの状態は重要な着目点となります。鎮痛剤使用時の効果のヒアリングや痛みに対しての表情、動作、言葉の表現も観察が必要です。

衣服を緩め、腹壁の緊張を取り、腹圧をかけない体位を工夫します。嘔吐を伴う場合は口腔の清潔も保つようにしましょう。不安を軽減できるような落ち着いた口調での声かけも患者にとって精神的な支えになりえます。

また、気分転換を図ったり落ち着いた静かな環境を提供することや、疼痛時には鎮痛剤を使用することができることを伝えることで患者のストレスを和らげます。

 

3-2、退院にむけて、退院後に注意すべき看護ポイント

入院時や退院後も患者が医師や看護師を信頼でき、病状の急変時に適切な処置が受けられる体制を整えておくことが大切です。

また、患者が疾患の経過を適切に理解でき、食事制限や生活習慣改善などの予防手段をとったり、日常の行動をコントロールできるようになることも看護目標として挙げられます。そして、膵炎は継続的治療の必要性があるということもきちんと認識してもらうことも重要な看護目的のひとつです。

再発防止のために、医師が本人や家族に病気の説明を行うときはなるべく同席し、病気について理解できていない部分があれば補足します。不安を表出しやすい雰囲気作りをして思いを傾聴することや心身ともに休める環境の提供を提案しましょう。

また、膵炎の病識がないことは再発のリスクも高めます。日常生活を患者本人が自らコントロールできるよう、飲酒が原因であれば禁酒の指導を行い、患者に実現可能な食事制限などの指導を心がけましょう。

いずれにしても、継続的な治療や経過観察、食事制限などを行うためには、看護師と患者本人との信頼関係の構築が必要不可欠になってきます。

 

まとめ

軽度から重篤な症状まで、様々な症状がみられる膵炎は、状況に応じて様々な対応が求められます。また、患者の精神状態や医師・看護師への信頼度によってもヒアリングの精度が左右され、病態への対応速度も変化します。

また、食事制限などの継続的治療も必要です。病気への理解を深め、再発を防止するためにも、患者との信頼関係の構築を常に心がけ、病状の変化を見落とさない看護を心がけましょう。


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