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男性看護師の悩み|年収や将来への不安、恋愛・結婚の実態は?

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男性看護師

看護師と言えば「女性」のイメージが強く、実際に2012年度における看護師就業者総数のうち女性は93.1%、男性は5.9%しかいません。そのため、男性看護師は肩身が狭いのではないのか、将来性はあるのかなど、懸念点が多々あるのではないでしょうか。

男性看護師の需要は年々増えてきており、それに伴って、男性看護師の認知度も上昇していますが、その反面、男性看護師の直面する困難や問題、社会的イメージは未だ払拭されていないのも事実です。

ここでは、男性看護師の必要性や将来性に加え、年収や恋愛・結婚事情など、包括的に解説しますので、看護師を目指している男性の方、すでに看護師として就業している男性の方は、ぜひ最後までお読みいただき、男性看護師の現状をしっかりと把握しておいてください。

 

1、女性患者からみた男性看護師の必要性

男性看護師は女性看護師と比べて、行えるケアが限られているという問題に直面します。男性患者であれば問題はありませんが、女性患者の場合、特に日常生活援助におけるケアが限定的であり、女性看護師にケアしてもらいたいという患者が多いのが実情です。

2006年に大山祐介らによって行われた調査によれば、日常生活援助における男性看護師から看護を受ける女性患者の反応は以下のようになります。

男性看護師から看護を受ける場合の女性患者の反応 一日常生活援助項目について

  女性看護師に代わる 男性看護師でもやむを得ない 男性看護師の方がよい どちらでもよい 無回答
排泄 121(67.2) 8(4.4) 0 9(5.0) 42(23.3)
入浴 122(67.8) 8(4.4) 0 10(5.5) 40(22.2)
更衣 116(64.4) 10(5.6) 0 13(7.2) 41(22.8)
清拭 114(63.3) 11(6.1) 0 13(7.2) 42(23.3)
食事 32(17.8) 16(8.9) 2(1.1) 91(50.6) 39(21.7)
移動 14(7.8) 14(7.8) 20(11.1) 97(53.9) 35(19.4)
洗髪 47(26.1) 18(10.0) 0 73(40.6) 42(23.3)

 

日常生活援助項目では排池、入浴、更衣、 清拭、食事、移動、洗髪について患者の反応をみた。排泄では 「女性看護師に代わる」が121人(67.2%)、「男性看護師でもやむを得ない」は8人(4.4%)、「男性看護師の方がよい」は0、「どちらでもよい」は9人(5.0%)であった。入浴、更衣、清拭では「女性患者に代わる」がそれぞれ122人(67.8%)、116人 (64.4 %)、114人(63.3%)と最も多かった。また、食事、移動、洗髪では「どちらでもよい」がそれぞれ91人(50.6%)、97人(53.9%)、73人(40.6%)と最も多かった。排泄、入浴、更衣、清拭は蓋恥心にかかわるケアであり、「女性看護師に代わる」が多かった。また各項目間における有意差はなかった。

 

男性看護師から看護を受ける場合の女性患者の反応 一処置の項目について

  女性看護師に代わる 男性看護師でもやむを得ない 男性看護師の方がよい どちらでもよい 無回答
外陰部の剃毛 124(68.9) 5(2.8) 0 10(5.6) 41(22.8)
導尿 122(67.8) 5(2.8) 0 11(6.1) 42(23.3)
採血 18(10.0) 10(5.6) 0 (61.7) 41(22.8)
急変時の対応 15(8.3) 10(5.6) 1(0.6) 113(62.8) 41(22.8)

 

処置の項目では外陰部の剃毛、導尿、採血、急変時の対応について患者の反応をみた。外陰部の剃毛、導尿ではそれぞれ「女性看護師に代わる」が124人(68.8%)、122人(67.8%)であった。採血、急変時の対応ではそれぞれ「どちらでもよい」が111人(61.7%)、113人(62.8%)であった。日常生活援助項目と同様に羞恥心にかかわる外陰部の剃毛、導尿では「女性看護師に代わる」が多かった。各項目間における有意差はなかった。また同様に男性看護師が勤務している病棟としていない病棟で女性患者の反応との関連をそれぞれの項目別にみたが有意差はなかった。

引用:男性看護師に対する女性患者の認知度とニーズに関する研究 2006年

 

このように、やはり羞恥心が絡む援助に関しては、女性看護師に対するニーズが圧倒的に高く、男性看護師は敬遠される傾向にあります。その反面、羞恥心が絡まない援助行為においては男性看護師にも十分なニーズがあり、特に移動介助といった力仕事に関する援助行為のニーズは非常に高いと言えます。

 

2、女性看護師からみた男性看護師の必要性

次に、病棟内においての男性看護師の必要性についてみていきましょう。女性看護師が同じ職場で働く専門職として、男性看護に期待する職務や役割は多大であり、これに関する研究は多方面で広く行われ証明されています。

その中から、福島県立医科大学看護学部(貝沼 純ら)が行った調査結果を取り上げ、女性看護師からみた男性看護師の必要性の具体例を明示します。

 

女性看護師が男性看護師と一緒に働いて良かったこと

女性看護師が男性看護師と一緒に働いて良かったこと

 

患者のケアに関することの内訳

患者のケアに関することの内訳

女性看護師が男性看護師と一緒に働いて良かったことでは、患者のケアに関すること42.4%であり、その内訳は患者の不穏時の対応や患者の移動時など、力仕事が80.7%だった。

引用:女性看護師が男性看護師に期待する職務・役割に関する調査研究 2008年3月

 

また、同研究では、女性看護師が男性看護師に抱くイメージとして、「力強い」「頼りになる」「やさしい」など、肯定的な意見が多数寄せられています。その反面、女性が多い職場上、男性看護師との接し方など、懸念点は多々ありますが、業務においては頼れる存在として認知されています。

 

3、男性看護師に将来性はあるのか

上述のように、女性看護師よりも男性看護師の方が適する看護業務が多々あり、一昔前と比べて男性看護師の割合は高くなっていることから、職場内においても、また患者観点からみても男性看護師の認知度は高まりつつあります。年収においても一昔前と比べて増加しています。

未だ認知度が低く、看護業務が限定的であるために、経験年数が短い頃は、雑用を任されたりと下っ端のようなポジションに定着する人も少なくありませんが、経験年数を重ねると中堅の仕事が任され、さらに30代後半~40代には師長の任に就く人も少なくありません。

就業したての頃はさまざまな葛藤に苛まれるかもしれませんが、キャリアアップの道が閉ざされているわけではなく、経験や実績によっては十分にキャリアアップを図ることができます。

 

3-1、男性看護師の給与の実態

2015年時点における男性看護師(准看護師含む)の平均年収は、人事院の統計書調べによると462万円。女性看護師の平均給与は470万円であることから、現状においては女性看護師よりも低年収に止まっています。

しかし、男性看護師の受け入れを強化する医療施設が増えており、それに伴い年収も増加傾向にあります。また、看護師不足の風潮も相まって、経験やスキル次第では年収が大きく増加し、同程度の経験・スキルを持つ女性看護師より優遇されることも珍しくはありません。

男性看護師を積極的に受け入れていない医療施設や、看護行為が限定的な領域では平均年収を下回ることもあるため、現状では就業する医療施設や従事する領域の影響を受けやすい状況にありますが、一般的なサラリーマンと比較すると高収入であるため、財政的困難を経験することはほとんどありません。

 

3-2、キャリアアップを図るためには

女性患者への看護業務は限定的であるため、すべての領域において円滑にキャリアアップを図れるわけではありません。

男性看護師に適した配属

男性看護師に適した配属

参照:女性看護師が男性看護師に期待する職務・役割に関する調査研究 2008年3月

上表は、女性看護師が考える男性看護師の適する配置のアンケート結果ですが、この結果は実際に男性看護師を必要とする配置と相違はなく、「精神科」「整形外科」「手術室」「脳外科」「外科」「ICU」「救急科」といった、多忙を極めやすい領域や力仕事を必要としやすい領域において、男性看護師に期待が集まっています。

つまり、これらの領域においてはキャリアアップを図りやすく、また女性看護師と違い男性看護師は、就業後に勤務を中断しないで退職まで継続していくことが多いため、男性看護師を求める医療施設が増加傾向にあり、現在ではキャリアアップを図りやすい体制が整いつつあります。

また、男性看護師は“まとめ役”として適任であると認知されることが多いため、主任や看護師長、看護部長などへ昇格しやすい傾向にあります。もちろん、すべての男性看護師に該当するわけではなく、経験やスキル、人間性など、さまざまな要素が関連するため、昇給・昇格できない人がいるのも事実です。

 

4、男性看護師が抱える悩み・懸念点

女性が大半を占めているため、配属先によっては男性看護師が1人だけということも珍しくはありません。そのため、同僚や上司(女性看護師)とどのように接したらよいのか、いわゆるコミュニケーションにおける悩みを抱えている人が多いのが実情です。

また、女性患者に対する看護業務が限定的であることから、看護業務に対するジレンマも悩みの一つと言えます。さらに、現状では医師と看護師との格差は大きく、男性看護師を低く評価する医師(主に男性)が多いことから、医師との人間関係に悩む人も多いのが実情です。

 

女性看護師とのコミュニケーション

まず、看護職に関わる職場は女性社会と言っても過言ではありません。それゆえ、女性看護師とどのように接するべきか分からなかったり、慣れてきたとしても男女間での価値観が異なることで、業務の遂行上、府に落ちない点が多々出てくるものです。

中には時間が経っても馴染めずに、大きなストレスを抱える人も多くいらっしゃいます。男性看護師の離職理由で最も多いのが、この女性看護師とのコミュニケーションであり、女性社会の中で働く以上、避けては通れない悩みと言えるでしょう。

この打開策としては“慣れ”も大切ですが、女性を理解することが重要です。考え方や価値観などの思考回路は、男女間で大きく異なりますので、男性思考を抑制し、女性思考を理解することから始めてください。そうすれば、次第に女性看護師の考え方や価値観だけでなく、行動の意味などさまざまなことに納得できるようになり、自然と女性社会の中でも馴染めるようになります。

 

業務内容におけるジレンマ

次に、羞恥心が絡む看護行為をして欲しくないという声が、男性看護師に対して挙げられており、現状では男性看護師が円滑に行える看護行為は限定的です。

それゆえ、就業したての頃は特に、雑用を強いられることが多々あり、領域によっては経験を重ねていっても、重要となる看護行為に携われない場合もあります。

「患者のためにケアをしたい」と思っていても、患者側から拒否されることも珍しくはありません。このジレンマも多くの男性看護師が抱えるものであり、ストレスの原因にもなっています。

この場合の打開策としては、「割り切ること」が重要なのではないでしょうか。女性患者から物理的に嫌煙されるのは周知の事実であり、実際、女性看護師には難しい看護行為においては男性看護師に期待が集まっています。

特に移動介助や急患の運搬、不穏患者の対応(病室への移動)など、肉体的に負担の大きい業務においては女性看護師よりも男性看護師の方が向いています。嫌煙されることや出来ないことに対してジレンマを抱くではなく、男性だからこその業務を率先して実施していく、この心構えを持つことで多くは解決できるはずです。

 

男性医師との人間関係

皆が皆とは言いませんが、医師の多くはプライドが高く、中には男性看護師を低く評価し、下に見る医師が多いのが実情です。年齢的に年上であればまだ納得ができるかもしれませんが、自分よりも若い医師に見下されたような態度をとられると、次第にストレスが溜まっていくものです。

しかし、医師と看護師との格差は今でも存在しており、女性看護師に対してきつく当たる医師も少なくはないため、これに関しては信頼関係を構築するほかありません。

 

5、男性看護師の恋愛事情

看護師として働く男性で、恋愛や結婚について不安を感じる人もいらっしゃると思います。公式に発表されたデータはありませんが、一般的に同じ職場で働く女性看護師は男性看護師のことを男としてみていない傾向にあるため、職場内でモテるということはほとんどないようです。

また、女性社会の中に居続けることによって、女性の人間模様や本来の性格がみえてしまい、場合によっては幻滅してしまうことで、同じ職場内で女性看護師と恋愛に発展するケースは少ないようです。

しかし、調べてみると、男性看護師の多くが他の医療施設の女性看護師や他職種の女性と恋愛・結婚しているため、それほど不安に感じる必要はありません。

また、男性看護師の年収は一般的なサラリーマンよりも高く、ほとんどの医療施設は福利厚生がしっかりしているため、結婚・出産後に財政面で困難に陥るということはないような気がします。

 

まとめ

男性看護師として働く上で、さまざまな困難や葛藤に直面し、必要以上に悩んでしまうこともあるでしょうが、男性に適した業務もたくさんあり、男性看護師への期待は年々高まっています。

また、看護師不足が懸念される現在においては、男性看護師の将来は安泰であり、失業や財政的に困ることはまずありえません。

しかし、男性看護師の社会的認知度が低いために、キャリアアップを図るためには人一倍の努力が必要になります。より高みを目指すなら、またより安定した将来を望むのなら、認定看護師や専門看護師といった資格取得は必須と言えるでしょう。

参照・引用文献

大山祐介,戸北正和,小川信子,宮原春美:男性看護師に対する女性患者の認知度とニーズに関する研究.保健学研究,2006 ; 19 ( 1 ): 13 – 19.

貝沼純,斎藤美代,佐藤尚子,宍戸朋子,林正幸:女性看護師が男性看護師に期待する職務・役割に関する調査研究.福島県立医科大学看護学部紀要,2008-03 ; 10:23-30


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