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【ペースメーカー看護まとめ】看護計画、観察、指導

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ペースメーカーペースメーカーは一種の精密機械であり、さらに植え込むためには手術が必要になるため、患者さんの負担は大きいものです。また、合併症の予防、精神的・肉体的負担の緩和、社会復帰後のための指導など、実に多くのケア項目が存在します。

 

ここでは、ペースメーカーのさまざまな情報に加え、看護計画やアセスメントなど、看護過程についても詳しく紹介していますので、ペースメーカー装着患者さんへの看護に自信のない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識の習得に励んでください。

 

 

1、ペースメーカーとは

私たち人間の心臓は、1日に約10万回の拍動を繰り返しています。拍動は血液を体内に循環させるポンプの役割を果たしているため、生命維持にとって心臓の活動は必要不可欠です。

 

このように心臓が収縮と弛緩を繰り返すことによって体内の血液を循環させるわけですが、心臓が力強く収縮・弛緩するためには、心臓の細胞が電気的に活動(興奮)しなければいけません。この興奮信号が正常に作られない病気のことを「洞不全症候群」と言い、心臓が正常に活動しないために、身体上のさまざまな症状が出現します。

 

また、興奮信号の伝導率が悪くなる病気を「伝導障害」、心臓内で興奮信号の流れがぐるぐる回転し脈拍が異常に遅くなる「除脈」など、心臓が正常に働かない病気はさまざまあり、息切れや全身倦怠感といった軽度症状から始まり、心臓が正常に働かない状態が継続すると心不全など重篤な循環器疾患を発症します。

 

心臓の興奮信号を正常にし、心臓の正常な活動を促すためにペースメーカーが用いられ、心臓から送られる信号をペースメーカーが受け取り、ペースメーカーから電気刺激を心臓へ伝えることで、心臓の調律を図ります。それゆえ、ペースメーカーは「心臓の調律師」とも呼ばれており、現在では日本人の約1000人に1人が装着しています。

 

 

2、ペースメーカーの適応

ペースメーカーが適応になる疾患はさまざまあり、心臓の拍動や機能に何らかの異常があれば、植え込み(留置)が検討されます。また、疾患だけでなく、合併症の併発などによる心臓機能低下を防ぐために予防的処置として適応になる場合もあります。

 

適応となる疾病 概要
洞不全症候群 洞房結節の細胞に異常が生じることで徐脈を起こす
房室ブロック 心臓の刺激伝導系において、心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する
徐脈性不整脈 洞不全症候群や房室ブロックなどにより発症し、1分間の心拍数が50回未満になる
頻拍性不整脈 ある狭い範囲の異常な心筋の興奮、何らかの異常による興奮信号の旋回によって、1分間の心拍数が100回以上になる
心室性不整脈 心室頻拍や心室細動(心室粗動)など、心室の異常な興奮による不整脈
先天性心疾患 心室機能不全や心拍出力低下などにより、心機能に異常がある場合に適応
過敏性頸動脈洞症候群 反復する失神発作があり、頸動脈圧迫により長い心停止が誘発される場合に適応
肥大型心筋症 心臓の壁が厚くなり、内腔が広がりにくくなるために、心室内へ血液が流れ込むのが制限される
拡張型心筋症 心筋の細胞性質の変化により、心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気

 

このほかにも、何らかの病気により、「意識障害」「めまい」「立ちくらみ」「ふらつき」「心停止(3秒以上)」など、心機能の調律が必要な場合に、恒久的または一時的に植え込み(留置)が適応されます。

 

 

3、ペースメーカーの仕組み

ペースメーカーというのは、心臓の電気信号の調律を図るための電子回路と、それを稼働させるための電池を収めたケースに、コネクター部分が装着され、心房や心室に留置するためのリードが接続されています。

 

ペースメーカーは、これら各部位が一体化となって構成されていますが、適応となる疾患によって、大きく分けてAAIVVIVDDDDDの4つの種類が使い分けられます。

 

①AAIペースメーカー

主に洞不全症候群を発症し、刺激伝導系に関して異常のない患者に適応。心房に1本のリードを留置し、※ペーシングを行う。

 

②VVIペースメーカー

主に徐脈性不整脈や房室ブロックに適応。AAIと同様に、心房に1本のリードを留置し、ペーシングを行う。

 

③VDDペースメーカー

主に洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者に適応。心室に1本のリードを留置し、心房の活動を※センシングし、その信号をトリガーとして心室の刺激を行う。

 

④DDDペースメーカー

洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性不整脈など、適応となるほぼすべての疾患に対応。心室・心房にそれぞれ1本(計2本)のリードを留置し、センシング(心室・心房)、ペーシング(心室のみ)を行う。

 

※ペーシングとは

心臓を刺激して収縮させること。自身の心臓収縮がない場合に適応。

 

※センシングとは

心臓の動き(収縮)や脈、呼吸、体温など感知すること。

 

 

4、ペースメーカーの合併症

ペースメーカーは体内(皮下)に留意させるため、以下のような、感染症をはじめとした様々な合併症が存在します。

 

術中の合併症 気胸・血胸、リードの移動・脱落、血管損傷、心室穿孔、心房穿孔、感染、横隔膜刺激、空気、塞栓
術後の合併症 術後出血、皮下出血、血腫、血栓症・塞栓症、感染、不整脈、循環調節障害、ペーシング・センシング閾値の変化
慢性期の合併症 皮膚圧迫壊死、リード断線、リード皮膜損傷、感染、オーバーセンシング

 

 

5、ペースメーカーの注意点

ペースメーカーは電気信号により心臓に働きかける装置であるため、電磁波を発生する機器や場所に特に注意しなければいけません。また、合併症を発症リスクは比較的高いため、少しでも体に変化がみられる場合には、合併症の発症を疑い、直ちに処置を行う必要があります。

 

医療機関において 電気メスを使う手術、結石破砕療法、放射線照射療法、超音波療法、経皮的電気刺激(TENS)などの電気療法、ジアテルミー治療、      電気利用の針治療、高周波治療、低周波治療、MRI(核磁気共鳴イメージング)、X線CTなど
日常生活において 電気・電磁波機器:携帯電話、IH調理器、IH炊飯器、電動工具、肩こり治療器等の低周波治療器、電気風呂、医療用電気治療器等、高周波治療器、筋力増強用の電気機器(EMS)、体脂肪計など
磁気治療器:貼付用磁気治療器、磁気ネックレス、磁気マット、磁気枕など
電磁波の強い場所:誘導型溶鉱炉、溶接施設、発電施設、レーダー基地、 そのほか強い電磁波を発生する施設など

 

このように、電気や磁気、電波を発生する機器や場所に注意する必要がありますが、医療技術の発展により、昨今のペースメーカーの電磁干渉における耐性は以前よりも強くなっているため、各機器の使用を強制排除する必要はありません。

 

近代化により、電気や磁気、電波を発生する機器は増加の一途を辿っているため、強制排除すれば、安楽な生活を遠ざけてしまいます。それゆえ、強制排除ではなく、“注意点”と説明・指導し、何か体調に変化があれば、早急に来院するよう伝えておきましょう。

 

 

6、ペースメーカー患者への看護計画

 

ペースメーカーを装着する患者さんは、手術における恐怖、誤作動の可能性や生活の行動抑制、審美など、さまざまな心理的負担を感じています。それゆえ、合併症のことだけでなく、精神的な要因も合わせて包括的に看護計画を立案する必要があります。

 

また、入院中の身体的・精神的な看護ケアはもちろん、退院後においても安楽な生活を送れるよう、ペースメーカーへの正しい理解の促進、危険になりうる事柄への指導など、多岐に渡る事柄をもって看護ケアを行ってください。

 

 

6-1、看護目標

ペースメーカーの看護には、術前と術後で異なる点が多く、特に術後~社会復帰までの看護が重要になります。術前はペースメーカーへの正しい知識の把握を促進したり、疾病や手術に対する不安の緩和、手術に向けたコンディションの調整などが主な看護目標です。

 

術後においては、合併症の予防や苦痛・不安の緩和に加え、社会復帰に向けた様々な指導が主となりますが、患者さんによって症状や精神状態などはさまざまですので、各人にあった看護計画を立案するようにしましょう。

 

 

≪術前≫

  • 疾患やペースメーカーの仕組み・目的を理解する
  • 頻脈など適応症状に対して適切な処置を行なうことができる
  • 疾患や手術に対する不安を軽減し、手術における精神的準備ができる
  • 合併症について知り、手術に向けてコンディションを整える

 

≪術後≫

  • 合併症の早期発見と予防に努める
  • ペースメーカー作動不全に迅速に対応する
  • 患側上肢固定による身体的苦痛を緩和する
  • 行動制限を強いられることへの精神的苦痛の緩和と理解を促進する
  • 退院後の生活に対する不安の軽減、安楽な生活のための指導を行う

 

 

6-2、アセスメント・観察項目

ペースメーカーの装着患者さんへのアセスメントには非常に多くの観察項目があります。術前においては、手術までの日数が短くなればなるほど細かく観察し、術後まもなくは体調の変化が起こりやすいため、1週間程度は注意深く観察するようにしましょう。

 

また、社会復帰後の安楽な生活のために、自己検診の必要性やペースメーカーへの正しい情報を有しているかも細かく確認し、不十分であれば説明・指導してください。

 

 

≪術前≫

自覚症状・発作 動悸や息切れ、眩暈、頭痛、胸部不快感などの自覚症状と、失神発作の有無(程度や時期も)を確認し、出現時には迅速に対処すること。
健康レベル 術後の健康レベルな変化を把握するために、心機能、血液データ、バイタルサインといった健康状態に加え、腎機能や糖尿病の有無など、生活習慣における各項目・データを確認すること。
心電図モニター 入眠時、覚醒時、体動時における、心拍数、P波、波形など、各種項目に異常がないか観察し、異常があれば迅速に対処すること。
行動・運動制限 行動や運動など、心臓に負担をかけないよう、制限される範囲を守れているか確認し、必要あれば指導すること。
薬物の服用 各症状の緩和を目的として指示される内服薬などの薬物を確実に服用しているか確認すること。
生活水準 しっかりとした食事や睡眠(熟睡感)がとれているか、また、入院に際するストレスがないか観察すること
精神的不安 疾患や手術に対する不安・恐怖など、心理的負担の有無を観察し、過度にある場合には、緩和に努めること。

 

≪術後≫

創部状態 出血や皮下血腫、発赤、腫脹、嘴開、ガーゼ汚染など、創部における状態の定期観察、出現時には早急に対処すること。
合併症 血栓症・塞栓症、感染、不整脈、循環調節障害など、術後におこりうる合併症の予防のための全身症状の観察。兆候を素早く察知し、早急に対処すること。
自覚症状 創部痛、悪寒戦慄、しびれ、頭痛など、自覚症状の観察を行い、軽度なものでも軽視せず緩和に努めること。
動脈の触知 足背動脈や橈骨動脈、その他動脈の触知を確認し、術前と比較すること。
健康レベル 術前の健康レベルな変化を把握するために、心機能、血液データ、バイタルサインといった健康状態に加え、腎機能など、生活習慣における各項目・データを定期観察すること。
行動・運動制限 患側上肢固定や床上安静など、行動・運動制限をしっかり守っているか確認し、制限における苦痛やストレスの緩和に努めること。
薬物の投与 抗生物質などの薬剤投与は確実に行う。患者自身での投与の場合は、自身で適切かつ確実に投与できているか確認すること。
作動不全 血圧低下、動悸、胸痛、尿量減少、呼吸困難、冷汗など、ペースメーカーの作動不全における症状の有無を観察し、継続するようであれば、医師に報告すること。
ページング状態 心電図や脈拍測定から心拍数などを確認。また、正しく自己調律ができているか心電図の波形で確認すること。
社会復帰 ペースメーカー留置による審美や、誤作動、電磁干渉の不安・恐怖など、社会復帰に対する心理状況を観察し、芳しくなければ、指導と共に緩和に努めること。
自己検脈 心筋の状態変化、リードの移動・断線などのトラブルの早期発見のために、正しく自己検脈ができるか確認・指導し、各種異常があれば、受診するよう指導すること。
理解と把握 電気や磁気などの電磁干渉、電池の消耗、定期検診、異常時の来院、運動などの行動制限、手帳や診察券の常備など、ペースメーカー留置における注意点に対し、正しい理解把握ができているか確認し、不十分であれば指導すること。

 

 

まとめ

ペースメーカーは精密機械であり皮下に留置するため、日々、合併症のリスクを伴います。特に術中や術後まもなくに発症することが多く、それゆえ看護師は注意を払って患者さんの観察を行う必要があります。

 

また、退院後の患者さんの安楽な生活のために、看護師は細かな説明・指導も怠ってはいけません。ペースメーカーにおける看護ケアは多岐に渡りますが、当ページで紹介した各事項をしっかりと把握し、患者さんの安全・安楽な生活のために、よりより看護ケアを実践していってください。

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