悩み解決のために欠かせないコンサルテーション。現在では多くの職業で実施され、看護領域でも広く実施されています。
コンサルテーションとは何か、看護師が受けることができる領域、コンサルテーションの効果や依頼の手順などについて、当ページでご説明しますので、コンサルテーションに興味のある方はぜひ最後までしっかりお読みください。
1、コンサルテーションとは
コンサルテーションとは、「内外の資源を活用して問題を解決したり、変化を起こすことができるよう、当事者やグループを手助けしていくプロセス」のことで、「相談」と言い換えてもいいでしょう。
コンサルタント(コンサルテーションを行う者)は、コンサルタンティ(他の専門知識を有する者、たとえばスタッフナース)に対して、ある専門分野における相談を受けるわけですが、コンサルタントは専門看護師や認定看護師である場合が多いのが実情です。
というのも、専門看護師や認定看護師は1つの分野に特化しており、より具体的かつ実践的な看護ケアの方法を情報提供できるからです。
専門看護師や認定看護師が従事していない病院・病棟においては、従事する者だけでより効果的な看護ケアの方法を研究しなくてはなりません。それに伴い、研究評価の妥当性を図るのが困難であり、さらに実践に際しても導入が困難であるため、コンサルテーション(相談)を行うことにより、それまで不明瞭だった問題を解決でき、知識の取得や実践への導入をスムーズに行うことができるのです。
2、コンサルテーションの相談事例
コンサルテーションでは、看護ケアの方法、臨床の現場で体験する出来事(倫理的問題を含む)によるストレスや葛藤、対人関係、自己のキャリアアップなど、さまざまな問題についての支援が行われています。
どのような専門分野に関するコンサルテーションが行われているのか、以下にてその一例をご紹介します。
救急看護 | ・救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術
・患者の重症度に基づく治療の優先順位の決定(トリアージ) ・災害時における急性期の医療ニーズに対するケア |
皮膚・排泄ケア | ・マットレスの選択、脆弱皮膚の患者への褥瘡予防
・長期ステロイド使用患者、浮腫のある患者へのスキンケア ・テープによる皮膚トラブルの予防と対処 ・失禁による肛門周辺の皮膚トラブルのケア ・装具交換、装具選択、合併症などストーマのケア ・胃瘻チューブの管理、瘻孔の創部周辺のスキンケア |
集中ケア | ・人工呼吸器を装着した患者への看護ケア方法
・呼吸、循環不安定な患者の体位管理・変換方法 ・呼吸不全患者のアセスメントと呼吸理学療法について ・周手術期患者の早期離床への取り組み |
緩和ケア | ・病状説明後の患者、家族に対する精神的支援
・看取りにおける患者家族への精神的支援 ・痛み、全身倦怠感、呼吸困難など症状の緩和 ・エンゼルケアやメイクの対応 ・抑うつ症状を呈する患者へのコミュニケーション方法 ・死を間近に迎える患者の発言(死にたい等)への対応 |
がん化学療法 | ・抗がん剤の血管外漏出に際する対応
・患者、家族、医療従事者への抗がん剤の曝露(ばくろ)予防 ・悪寒、嘔吐、脱毛などの症状マネジメント |
がん性疼痛 | ・鎮痛補助剤の副作用症状の緩和
・がん性疼痛のコントロール ・予後についての患者からの質問に対する対応 |
訪問看護 | ・援助関係者とのパートナーシップの構築
・苦情発生時の対応 ・在宅療養者の主体性を尊重したセルフケア支援の方法 |
感染管理 | ・耐性菌などに関する基礎知識
・洗浄、消毒、滅菌の方法 ・感染経路別(血液、尿路など)にみる感染予防対策 ・針刺しによる医療従事者の職業感染、患者への院内感染の対策 |
糖尿病看護 | ・自己管理(食事療法、運動療法、薬物療法)についての患者への指導方法
・フットケアなど疾病管理、療養生活支援の方法 |
※認定看護師、専門領域の一例
このほか、「不妊症看護」「新生児集中ケア」「透析看護」「手術看護」「乳がん看護」「摂食・嚥下障害看護」「小児救急看護」「認知症看護」「脳卒中リハビリテーション看護」「がん放射線療法看護」「慢性呼吸器疾患看護」「慢性心不全看護」など、専門分野の知識を有するコンサルタントがコンサルテーションを行っています。
また、看護師へのコンサルテーションだけでなく、患者や家族にも行われることも多々あります。
3、コンサルテーションの効果
「1、コンサルテーションとは」で述べたように、コンサルティはコンサルテーションを受けることにより、それまで疑問に抱えていた問題を解決することができ、迅速に自身の看護に生かすことができます。
これまで、コンサルテーションに関する効果の検証・研究はあまり行われていなかったものの、ここ10年で多くの検証・研究が行われ、コンサルテーションの効果が実証されています。以下に、実証されたコンサルテーションの効果の一例をご紹介します。
- 不明瞭な問題を解決できる
病棟内で統一して実施されているケア方法すべてが正しいとは限らず、本当にそれは患者のためになるのかなど、業務の遂行にあたって円滑化が図れているのかなど、各ケアが適切であるか否かを常に感じながら業務を行っている方は多いことでしょう。
このような状態ではケアに対して不信感が募るばかりか、技術の向上も望めません。しかしながら、コンサルテーションを受けることで疑問に感じている問題を迅速に解決することができ、またケアに対する自信や技術の向上を図ることができるのです。
- 知識習得に伴う自己洞察力・視野の拡大
知識量が増えれば増えるほど物事を見る目が養われ、また患者への理解が深まり、状況に応じた対処を迅速に行うことができます。また、豊富な知識をもとにケアの応用法を編み出すことができるなど、独自の視点から研究に着手する能力も養われます。
- ストレスの緩和
コミュニケーションに関する不安や状況に応じた対処など、業務の中で多大なストレスを感じることが多い看護師ですが、コンサルテーションを通して同じ境遇に立つ者との語り合いにより共感を得ることができます。また、不安や心配事に関する対処法を教授してもらうことで、今後の業務での精神的負担が軽減され、ストレスの緩和ならびにストレスの溜まらない業務運びを行うことができます。
- 周囲への関心・キャリアアップ思考の拡大
コンサルテーションを一度経験すると、疑問に対する迅速な解決、自己洞察力・視野の拡大、ストレスの緩和などコンサルテーションの利点や、相談・教育・指導の有効性に気づき、周囲(他の看護師が行うケア)への関心が高まります。これにより、自身の看護ケアの振り返りや技術向上への姿勢が前向きになり、キャリアアップ思考が拡大されていきます。
このように、コンサルテーションは何も疑問の解決だけでなく、自身のストレスが緩和できたり、業務に対する姿勢が前向きになったりと、さまざまな効果があり、これらはここ10年の検証・研究で実証されたものです。
特に精神看護領域の効果は凄まじく、専門看護師であれば「精神看護」、認定看護師であれば「緩和ケア」や「認知症看護」と、現在では多くの専門看護師・認定看護師がコンサルテーションを実施しています。
4、コンサルテーションの道のり
コンサルテーションは1人でもグループ(病棟)単位でも受けることができます。自身で応募することもできますが、どこで誰が何の領域のコンサルテーションを行っているのか分からないと思いますので、看護師長または院長を通して応募すると良いでしょう。
①自部署の所属長へ報告する
まずは、自部署の所属長(看護師長や院長)にどのような領域のどのような問題について相談したいのか、その旨を報告しましょう。院外のコンサルテーションに関しては、内外ネットワークを通して情報が共有されていますので、まずは報告することから始めましょう。
②依頼書を記入・提出する
報告すると、所属長よりコンサルテーションの依頼書が手渡されます。依頼書には、氏名・電話番号・Email・所属部署・相談内容などの記載項目がありますので、すべて埋めて所属長に提出してください。
③所属長が依頼書を送付する
依頼書の提出後、所属長が記載項目を確認し、依頼したい専門看護師・認定看護師(主に事業所)へ依頼書を送付します。
④依頼者が直接連絡をとる
依頼した専門看護師・認定看護師より返事が返ってきます。それが依頼書を通した返信(再送付)なのか、記載した電話番号・Email・FAX経由なのか分かりませんが、基本的には電話番号・Email・FAXを通して連絡をとります。また、多くは依頼者と専門看護師・認定看護師の間で直接連絡を取り合い、相談内容の確認や相談日の決定など行います。
⑤相談を受ける
人によって、また事業所によってコンサルテーションの実施内容は異なります。一対一の面談の場合や、グループでの面談の場合などさまざまです。グループの場合は特に、あなた以外にも相談したい看護師がいますので、相談内容を事前にしっかりとまとめておきましょう。
基本的にはこのような流れでコンサルテーションを受けることができます。所属病院内に専門看護師や認定看護師がいる場合には時間を割いてもらって直接相談に乗ってもらうのが効率的ですが、いない場合にはぜひコンサルテーション行っている事業所を活用し、疑問を解決へと導いてください。
まとめ
コンサルテーションは、疑問を解決できるだけでなく、自身の看護の振り返りや今後の看護への意欲向上など、受けるメリットは多大にあります。
また、自身が専門看護師や認定看護師の資格を取得して、コンサルタント(コンサルテーションを行う者)として活動する日が来るやもしれません。
それゆえ、専門看護師や認定看護師の資格取得を考えている方は、コンサルティ(コンサルテーションを受ける者)の気持ちを理解するという意味でも、一度受けておくと良いでしょう。