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【胃ろう看護まとめ】看護計画、観察、管理、手術、介護ケア

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胃ろう

 

 

胃ろうは安全性が確立されているものの、リスクが多く存在していることも事実です。胃ろうの患者さんに、より良い看護をするために、また合併症を引き起こさないために、造設手順や観察、管理など、さまざまな事を知っておく必要があります。

胃ろうに関して、どう看護していけば良いのか等、分からないことがあるという方は、最後までしっかりとお読み頂き、胃ろうに関する知識を深めておいてください。確実な知識があればあるほど、より良い看護を行うことが出来るので、少しでも不明なことがある方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

1、胃ろうとは

胃ろうとは、「PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)」と呼ばれる内視鏡を用いた手術によって造られた胃の穴のことを指します。食物・飲料・医薬品などを口から摂取することが困難な人に適用され、腹壁を通して胃と体外をチューブで繋ぎ、そこから食物・飲料・医薬品などを流しこむという、直接的に胃に栄養を入れる栄養投与法のことです。

 

 

1-1、胃ろうの歴史

胃ろうを造るPEGが初めて行われたのが1979年のこと。アメリカの外科医ポンスキー氏と小児科医ガウデュラー氏らによって、嚥下障害の小児を対象とし行われました。PEG技術の進歩に伴い、適応性が広がったことで、梗塞や脳出血など、さまざまな病気による嚥下機能障害患者にも行われるようになりました。

全身麻酔を必要とする外科的手術よりも体にかかる負担が少なく、医療費が抑えられるということで、欧米で急激に普及し、1990年代後期頃から日本でも注目され、今では嚥下機能障害患者に対する一般的な療法となったのです。

 

 

1-2、胃ろうの問題点

小児の場合は、あまり問題視されていないのが現状です。しかしながら、認知症で寝たきりの高齢者の場合には、一種の”無駄な延命処置”として問題視されています。多くの場合、患者の家族がPEGを希望するため、患者の「生命の尊厳」が失われてしまう可能性があるのです。

それゆえ、アメリカでは胃ろうを、人工的な栄養投与はほとんどの症例において患者のためにならないとし、水分補給する程度の範囲で処置が行われることが多いのが実情です。

2012年に日経メディカル主催のもと行われた「胃ろうの造設、是か非か」というアンケートでは、31.7%の賛成に対し、反対は68.3%。このことから分かるように、胃ろうは非常にシビアな施術となっているのです。

 

 

1-3、胃ろうのメリット

しかしながら、胃ろう造設には多くのメリットがあるのも事実です。”延命処置”という枠組みの中では非常にシビアとなっていますが、回復の余地がある人、つまりリハビリとしてや嚥下障害の患者に行う場合には適切な処置なのです。以下に大まかなメリットを記載します。

 

・栄養状態が保たれる

リハビリを行う人にとって、栄養状態を維持することは非常に大切です。チューブを通して胃の中に流し込まれるのは栄養価の高い流動食であるため、健康な状態を維持しながらリハビリを行うことができます。

 

・体にかかる負担が少ない

胃と体外をチューブを用いて連結されているだけなので、体にかかる負担や痛みが少なく、生活に支障がないことから、通常の生活を送ることが出来ます。

 

・点滴、栄養チューブから解放される

人工的に栄養を補う方法には、胃ろうを造設するほかに、からチューブを入れる方法や、首などの静脈や手足の細い血管に点滴する方法など、さまざまあります。神経的にみても敏感ではない腹部にチューブが通っていることで、生活における支障がなく、また外見が気にならないというメリットがあります。

 

 

1-4、胃ろうのデメリット

このように、胃ろうを造設することに対するメリットは様々ありますが、やはりデメリットがあるということも忘れてはいけません。「生命の尊厳」が失われるほか、以下のようなデメリットが存在します。

 

・合併症のリスクがある

胃ろうを造設する際や造設した後に、腹腔内の出血や皮膚潰瘍など、さまざまな合併症のリスクが伴います。

 

・栄養剤の値段が高い

専用の栄養剤が用いられますが、一般的に用いられている「ディムベストバック」は、10000円ほどかかり6日で消費してしまうことから、1か月あたり5万円ほどの費用がかかってしまいます。

 

・肺炎はなくならない

胃ろうを造設すれば誤嚥性肺炎にはならないというのは間違い。口の摂取を必要としないため、確かにリスクは減りますが、胃に入れた栄養剤が、食道に逆流して喉までのぼり、誤嚥することがあります。それゆえ、胃ろうを造設したからといって誤嚥性肺炎がなくなるわけではないのです。

 

 

2、胃ろうの手術

胃ろうを造設する手技には、「プル法」「プッシュ法」「イントロデューサー原法」「イントロデューサー変法」の4通りの方法があります。病院医師、患者の状態によって使い分けられるので、それぞれの手技について知っておきましょう。

 

 

2-1、プル法(Pull)の方法

プル法は「1-1、胃ろうの歴史」で紹介した、小児外科医のガウデュラー氏と内視鏡外科医ポンスキー氏によって、考案された手技です。それゆえ、4通りの手技の中で最も歴史があります。

プル法は腹壁から挿入したループワイヤーを口から外に出し、同ワイヤーに結び付けたカテーテルを口から胃の中に引き入れ、腹壁外へと引き出して胃ろうを造設します。2度の内視鏡挿入が必要となるため、現在ではあまり用いられていません。

 

①内視鏡を挿入した後、胃の中に空気を送り、膨らませた後に胃ろうを造設する位置を確認・決定します。

胃ろう

 

②胃ろう造設位置に局所麻酔をした後、皮膚を切開し、針を刺しループワイヤーを胃内へ挿入します。そして、そのループワイヤーをスネアで掴み、内視鏡と一緒に口外まで出します。

胃ろう

③口外に出したループワイヤーに、胃内に留置するためのカテーテルチューブを結びつけます。

胃ろう

 

④カテーテルチューブに結びつけられたループワイヤーを腹壁側から引き、カテーテルチューブを胃内に送り込みます。

胃ろう

 

⑤再び内視鏡を挿入した後、カテーテルが留置されているかしっかりと確認します。

胃ろう

 

 

⑥ストッパーを装着後、手術終了となります。

胃ろう

 

 

 

 

2-2、プッシュ法(Push)

プッシュ法はサックスバイン法とも呼ばれ、プル法と似た手技です。口から出したガイドワイヤーに沿って、カテーテルを胃から腹壁外に押し出す方法で、”押し出す”という点でプッシュ法と名付けられました。プル法と同様、内視鏡を2度挿入する必要があります。

 

①内視鏡を挿入した後、胃の中に空気を送り、膨らませた後に胃ろうを造設する位置を確認・決定します。

胃ろう

②胃ろう造設位置に局所麻酔をした後、皮膚を切開して針を刺し、ガイドワイヤーを胃内に挿入します。

胃ろう

 

③口外に出したガイドワイヤーを胃内に留置するためのカテーテルチューブ内に通します。

胃ろう

 

 

④口側と腹壁側のガイドワイヤーの両端を引き、ガイドワイヤーを伸ばした状態で、口側からカテーテルチューブを挿入していきます。

胃ろう

 

⑤再度、内視鏡を挿入した後、カテーテルが留置されているかしっかりと確認します。

胃ろう

 

 

⑥ストッパーを装着後、手術終了となります。

胃ろう

 

 

 

 

2-3、イントロデューサー原法(Introducer)

イントロデューサー法は日本の上野氏やラッセル氏によって考案された手技です。腹壁にトロッカーと呼ばれる太い針を介してカテーテルを胃内に挿入する方法で、咽頭部を通す必要がないため、感染の危険が少なく、内視鏡の挿入が1度で済むことから多用されています。

 

①内視鏡を挿入した後、胃の中に空気を送り、膨らませた後に胃ろうを造設する位置を確認・決定します。

胃ろう

 

②胃ろう造設位置に局所麻酔をした後、胃壁固定行い、皮膚を切開してからトロッカーを刺入します。

胃ろう

 

③トロッカーの外筒シースが胃内にあることを確認した後、内針のみを抜去します。

胃ろう

 

④外筒を介してカテーテルチューブを挿入し、カテーテル先端のバルーンを滅菌精製水で充満させてから、外筒シースを分割して取り除きます。

胃ろう

 

⑤ストッパーを装着後、内視鏡を口から抜いて手術終了となります。

胃ろう

 

 

 

2-4、イントロデューサー変法(Introducer)

イントロデューサー変法は、イントロデューサー原法の改良版として、日本の井上氏らによって考案された手技です。

イントロデューサー原法と同様、咽頭部を通す必要がないため、感染の危険が少なく、内視鏡の挿入が1度で済みます。日本で考案されたということもあり、多くの病院で用いられています。

 

①内視鏡を挿入した後、胃の中に空気を送り、膨らませた後に胃ろうを造設する位置を確認・決定します。

胃ろう

 

②胃ろう造設位置に局所麻酔をした後、胃壁固定行い、皮膚を切開してから針を刺しガイドワイヤーを胃内へ挿入します。

胃ろう

③ガイドワイヤーを胃内に残した状態で針を抜去し、ガイドワイヤーに沿わせてダイレータを挿入します。

胃ろう

 

④ダイレータを抜去した後、ガイドワイヤーに沿ってカテーテルを胃内に挿入します。

胃ろう

 

 

⑤カテーテルが留置されているかしっかりと確認し、内視鏡を口から引き抜いて手術終了となります。

胃ろう

 

参照元:オリンパスPEG(胃ろう)情報サイト

 

 

2-5、各手技の違い

  プル・プッシュ法 イントロデューサー法
カテーテルの太さ 太い 細い
カテーテルの種類 バンパー型 バルーン型
内視鏡挿入回数 2回 1回
カテーテルの咽頭通過 あり なし
清潔手技 困難 可能
胃壁固定 必要に応じて 必須
交換時期時期 遅い(4~6か月) 早い(1~2か月)

 

 

 

3、カテーテルの種類

胃ろうカテーテルには「バルーン・ボタン型」「バルーン・チューブ型」「バンパー・ボタン型」「バンパー・チューブ型」の4タイプがあり、病院や医師、患者・家族の希望などによって使い分けられます。それぞれに長所と短所が存在するので、しっかりと覚えておきましょう。

参照元:PDN NPO法人 PEGドクターズネットワーク

胃ろう

 

 

4、術後の栄養投与の方法

PEG手術が終わった後、患者さんは通常の生活を送ることができます。食事は主に栄養剤を胃内に直接流し込みますが、どのように栄養剤を投与すればいいのか、その際の注意点など紹介していきます。

 

 

投与前:

①上体を起こす

栄養剤を注入する際には、上半身を30度~90度に起こしてから行います。寝たまま注入すると、注入された栄養剤が逆流して気管に入り、肺炎を起こすことがあるため、必ず上体を起こしてから注入しましょう。90度が最も適切であるため、可能なら90度に。また、痰がゴロゴロしている時には、注入の前に痰を取るようにしましょう。

 

②クレンメの開閉を確認する

栄養剤が入っている容器から繋がっているチューブの途中に開閉式のクレンメがあります。容器に栄養剤を入れる前に、完全にクレンメが閉まっていることを確認しましょう。

 

③容器に栄養剤を入れる

バッグやボトルなどの容器に栄養剤を入れます。

 

④チューブを接続する

容器から接続されているチューブと胃ろうカテーテルを繋ぎます。この際、栄養剤のリーク(漏れ)を防ぐために、栄養剤の注入口以外はキャップを閉めておきましょう。

 

 

投与中:

⑤注入速度を調節する

クレンメを開けることで栄養剤がチューブとカテーテルを通って胃の中に流れ込みます。急激な速度で流れ込まないよう、注入速度に気を付け、1秒間に1滴の速度を目安にします。また、200mlであれば約1時間を目安に注入していきます。

 

⑥薬を注入する

患者の病状・病態に応じて薬の投与を行います。薬は約40度のお湯で完全に溶かしてからチューブとカテーテルを通して注入します。この際、薬がチューブに残らないよう、専用の注射器に20~30mlのぬるま湯を入れ、注入します。

 

⑦水分を補給する

クレンメが閉まっていることを確認し、適量の水分を容器に入れます。患者によって水分量・注入速度は異なるため、医師の指示通りの水分量・注入速度を守り、容器に入れてクレンメを開けます。

 

 

投与後

⑧チューブを外す

注入が終わったら、チューブとカテーテルを外し、キャップを閉めます。

 

⑨しばらく上半身を起こして安静にする

投与後は食道への逆流の危険性があるため、約30分~1時間ほどは状態を起こしたまま安静にしておきます。

 

⑩容器と接続チューブを洗浄する

熱湯を用い殺菌してから、手揉み又は柔らかいブラシなどで洗浄します。一日の最後には、消毒薬を用い、約30分~1時間ほど浸して、殺菌した後に、水道水で十分洗浄してから、自然乾燥を行います。

 

 

4-1、栄養剤の種類

栄養剤には様々な種類があり、患者やご家族の意思、または医師の判断などにより決定されます。「粉末タイプ」、「液状タイプ」、「ゼリータイプ」のものがあり、最近では逆流や下痢に対して効果があるということで、ゼリータイプの栄養剤が普及しています。

 

  消化態 半消化態 特殊疾患用
粉末タイプ エレンタール ツインライン アミノレバノンENヘパンED
液状タイプ ペプチノール ラコールエンシュアリキッドハイネテルミール など グルセルナプルモケアリーナレンレナウエル など
ゼリータイプ ハイネゼリーPGソフト など

保険適用(医薬品)は赤文字、保険適用外(食品)は黒文字で記載しています。

 

 

5、胃ろうの看護計画、観察

胃ろうの安全性は確立されているものの、観察を怠ると重大な合併症を発症する可能性があります。それゆえ、術後は特によく観察する必要があります。以下に、術後~抜去までの観察項目を記載します。観察するのは主に栄養剤投与時となるため、投与中もしくは投与後によく観察しておきましょう。

 

 ・栄養剤リーク

接続チューブもしくは胃ろうカテーテルの損傷・接続不良などにより、栄養リーク(漏れ)を起こしていないか確認します。

 

・胃ろう周辺の皮膚トラブルの有無

胃ろうが造設された周辺の皮膚は損傷しやすく、清潔が保たれていなければ皮膚トラブルの原因になります。清潔状態が保たれているか、または皮膚疾患がみられるか確認しておくようにしましょう。

 

・注入中の体位

「3、術後の栄養投与の方法」で述べたように、30度~90度に上体を起こした上で栄養剤の投与を行います。在宅においては、ご家族が投与を行うため、必ず適切な体位で投与するよう指導しましょう。

 

・嘔気・嘔吐の有無

注入速度が早い、体位の不適当による逆流、胃腸の蠕 動(ぜんどう)運動の低下、胃の出口で ある幽門( ゆうもん)の狭窄など、嘔気・嘔吐の原因は様々です。注入中の嘔気・嘔吐は、注入速度と体位を疑い、注入後には身体的要因を疑い、それぞれの原因を特定した上で、半固形栄養剤に変更するなど、各原因における処置を行います。

 

・腹部不快の有無

腹部膨満や腹痛、または下痢など、さまざまな症状が起こることがあります。原因としては、栄養剤の注入速度が早い、栄養剤の温度が低い、栄養剤と一緒に空気が流れ込んでいるなど、多岐に渡るため、原因を1つ1つ対処していきましょう。

 

・自己(事故)抜去の有無

不快感などの理由で、患者さん自身が胃ろうチューブを抜去してしまう他、入浴中などで引っかけて不意に抜去してしまうことがあります。穴が塞がると、また造設する必要があるため、ただちにリーダーナース、もしくは医師に報告してください。

 

 

6、胃ろうの管理

胃ろうの管理上、最も大切なことが“手入れ”です。胃ろう周辺の皮膚や口の中を常に清潔に保つこと、カテーテルや使用器具にもしっかりと配慮しておく必要があります。

 

①胃ろう周辺の手入れ

胃ろうの周りを生理食塩水やぬるま湯で毎日綺麗に洗うようにしましょう。この際、ガーゼや綿棒を用い、ろう孔周辺に付着した粘液や汚れも取り除きます。石鹼を使用する際には必ず弱酸性のものを使用するように。石鹼の成分が残っていると皮膚トラブルの原因になるため、最後に必ずぬるま湯で洗い流すようにします。

 

②入浴

胃ろうを造設してから約1週間後にシャワーが許され、約2週間後には浴槽に浸かれるようになります。入浴する際は、胃ろうの周囲を弱酸性の石鹼を用い、綺麗に洗った後、水気をしっかりとふき取り乾燥させるようにします。

 

③口内のケア

口内には無数の雑菌が存在し、胃ろうを介して食事を摂る方は容易に口内の雑菌が繁殖し、それが原因となって肺炎や気管支炎など、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。それゆえ、湿らせたガーゼやスポンジなどで、優しく口内を拭き取り、ブラシを用いて歯や舌の汚れも同時に取ってあげます。

 

④カテーテルの確認

抵抗感なく胃ろうカテーテルが360度以上回転するか、1日1回以上確認します。もし回転しない、もしくは回転が良好ではない場合には、担当医に報告するようにしましょう。

 

⑤使用器具の洗浄

「3、術後の栄養投与の方法」で述べたように、栄養剤の容器やチューブ、そのほか注射器など、使用する全ての器具を常に清潔な状態を保つようにします。雑菌が繁殖したものを使い注入を行うと、容易に合併症を引き起こしてしまうため、必ず注入後は洗浄を行ってください。

 

 

7、在宅における看護・介護ケア

基本的には入院時と同様に、栄養剤の投与や使用器具の洗浄など行っていきます。しかしながら、在宅の場合には主に患者さんのご家族が援助するため、必ずしっかりと「3、術後の栄養投与の方法」と「5、胃ろうの管理」事項を、患者さんとご家族に指導してください。

また、在宅看護を行う看護師は、適切に管理できているか都度確認し、不適切なことがあれば指導を行いましょう。胃ろうカテーテルの交換時期に関してもしっかり把握した上で、説明・指導しておきましょう。

 

 

まとめ

胃ろうの安全性は確立されているものの、合併症のリスクは常に付きまといます。少しでも合併症のリスクを減らすためには、栄養剤摂取における適切な体位衛生状態が非常に大切です。

当ページで紹介した観察項目や管理などをしっかりと熟知した上で、患者さんが安全・快適に生活を送ることができるようサポートしていきましょう。また、胃ろうに対して不満を抱える患者さんは少なくないため、心のケアも非常に大切です。コミュニケーションをしっかりと取り、患者さんがより良い生活を送ることができるよう最善を尽くしましょう。

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【手術室看護のまとめ】認定看護師、役割、給料・年収

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手術室

 

 

これから手術室で勤務しようと考えている看護学生転職を考えている看護師の方のために、業務の内容や給与、求人など、さまざまな観点から詳しく説明していきたいと思います。

勤務先によって良い点・悪い点があるのは当然ですが、手術室勤務の場合、それが顕著であると言えるため、希望する前に全てを知っておきましょう。

 

 

1、手術室の看護師について

手術室勤務の看護師は、業務内容や必要なスキルなど、病棟勤務とは異なる点が非常に多く、特殊な仕事と言えます。主な業務内容は医師の補助」となりますが、円滑に手術が行えるよう、医師が次に何を必要としているのかを察知する能力が必要になります。

 

また、心臓血管外科や消化器外科、泌尿器科脳神経外科など全ての診療科目の手術を扱うため、各手術の流れを把握しておかなければいけません。

 

このように、決して簡単な仕事ではないのです。

 

しかしながら、やりがいが多いのも事実。努力次第では、1年目や2年目でも容易に信頼を得ることができ、優秀な看護師として認知されることも多くあるのです。

 

 

1-1、必要なスキル・知識

手術室勤務の場合、手術を円滑に行えるよう、多くの専門的なスキルが求められます。どのようなスキル・知識が必要なのか、下記にて紹介します。

 

・使用器具や器械の知識

上述したように、診療科目に応じた特殊な器具・器械を扱うことから、それらの名前はもちろん、どのような時に使用するのか、役割は何かなど、熟知しておかなければなりません。場数を踏めば自然と覚えるものですが、初勤務の時に慌てることがないよう事前に覚えておく必要があります。また、医療技術の発展に伴い、新しい器具・器械がどんどん増えていくため、常に勉強する意欲と記憶力が必須となります。

 

・流れを把握し、次を予測する能力

手術の進行度を見ながら、医師が次に何を必要とするのか予想する能力が問われます。医師が要求した瞬間に差し出すことが不可欠。さらに、「ハサミ」と言われた時には”メッツェン”、”クーパー”、”直剪”なのか、看護師側が判断しなければならないため、確実に手術の流れを把握しておかなければいけません。

 

・医師や他の看護師との連携能力

手術室においてチームワークは非常に大切で、周りを見る能力「観察力」が問われます。他の看護師がどこにいて何をしようとしているのかを把握するのはもちろん、自分の最善の役割は何なのか等、常に周囲を見ながら適切な行動が必要となります。

 

・閉鎖空間における総合的な体力

心臓血管外科などの場合、8時間立ちっぱなしということがザラにあります。さらに、閉鎖空間におけるストレスにも耐えなければなりません。手術を行うのは医師ですが、同等の体力・精神力を持っていなくては手術室勤務は勤まりません。

 

 

2、手術室における看護師の役割

手術室勤務の看護師は主に「器械出し」「外回り」の2つの役割が存在します。それぞれの業務は異なるため、各業務がどのような役割を果たすのか具体的に説明していきます。

 

 

器械出しの役割:

器械出しは、手術で使用する器具を適切なタイミングで医師に手渡すのが主な役割となりますが、簡単な補佐処置を任されることもあるなど、手術における医師のサポートがメインとなります。

 

・診療科目に応じた器具の判断

手術前に医師との打ち合わせにより、必要な物品や器具を確認します。術中においては医師の要求する器具を素早く渡すことができるよう配置。緊急時に備えた各器械の準備も看護師の役割です。

 

・医師への手術器具の手渡し

最も重要な役割となるのが医師へ器具を差し出すことです。必要な器具を要求された時に探すのではなく、あらかじめ予想・判断した上で、瞬間的に手渡すことが必要です。

 

・術中の減菌状態の保持

術中は全ての物品・器具を減菌状態に保っておかなければいけません。医師のサポートだけでなく、各器具における減菌状態の保持も看護師の重要な役割です。

 

・器具を用いた疾患部への直接援助

新米看護師には無縁ですが、熟練の看護師の場合は医師から直接的な援助を求められることがあります。

 

 

外回りの役割:

医師のサポートである器械出しに対し、外回りの役割は手術室全体のサポートとなります。手術における全体像をしっかりと把握しておく必要があるため、主にベテランの看護師が行うことが多いのが特徴です。

 

・出血量の確認

出血量や出血によるガーゼの枚数のカウント、各種バイタルのチェックも行います。

 

・輸血の準備・指示

出血量が多い際には、輸血の準備と指示を行います。適切なタイミングで輸血の指示をする必要があるため、豊富な知識と経験が不可欠です。

 

・術中の体位交換

長時間の手術による褥創の予防や患者さんの負担軽減のため、特殊な手術における体位固定など、負担を軽減した上で円滑に手術ができるよう患者さんの体位交換を行います。

 

・ライトの調節

疾患部位へのライトの明るさや焦点の調節なども外回りの役割となります。

 

・薬剤や器械類の補充

手術前に予想される必要な物品や薬剤、器具、器械を準備しますが、進行具合や病態によっては不足品が出てくることがあります。これら不足品を補充するのも役割の1つです。

 

・看護記録の作成

術中における記録には、執刀医が行う「手術記録」、麻酔医が行う「麻酔チャート」、そして看護師が行う「看護記録」があります。出血・輸血量や体位など、看護師として行ったデータを記録し、手術後に病棟へ渡します。

 

・術前・術後訪問

手術を受ける患者さんの不安を少しでも解消できるようメンタルケアを行い、術後にはアフターケアを行います。術中だけでなく手術全体を通したマネージメントが、器械出しと大きく異なる点と言えます。

 

 

3、手術看護における認定看護師

日本看護協会が行う認定看護師の中に「手術看護」分野が存在します。2015年時点では約320人が当該分野において認定を受けていますが、特殊な分野であるため、他と比べると未だ認定人数が少ないのが現状です。しかしながら、手術看護における認定看護師の必要性は年々高くなっており、手術室勤務においてのエキスパートとして、多くの病院が求めているため、キャリアアップを目指すなら是非とも認定を受けたい資格です。

 

 

3-1、手術看護分野における役割

まず、認定看護師としての役割には「実践」、「指導」、「相談」の3つがあります。これは、全分野において共通した役割であり、患者や家族、看護師に対する指導や相談などコンサルテーション業務も加わることで、高度な看護知識と熟練の技術をもとに質の高い看護ケアを提供することを役割としています。

 

実践 特定の看護分野において、個人、家族及び集団に対し、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。
指導 特定の看護分野において、看護実践を通して看護者に対し指導を行う。
相談 特定の看護分野において、看護者に対しコンサルテーションを行う。

 

 

≪手術看護分野における役割≫

続いて、手術看護分野にのみ特化した役割を紹介します。「器械出し」や「外回り」はもちろんのこと、患者さんの安全管理や手術全体を通したケアに加え、他看護師の育成・指導など、幅広く効果的に実践することが手術看護における認定看護師の役割となります。

 

・徹底した安全管理

手術侵襲を最小限に抑え、二次的合併症を予防するために、体温・体位管理、手術機材・機器の適切な管理など、徹底した安全管理を行います。

 

・手術全体を通した看護ケア

周手術期(術前・中・後)における継続看護を行い、術前には患者さんに対する的確なメンタルケア、術後間もなくは病棟看護師と連携した上で、総合的に看護ケアしていきます。

 

・他の看護師の指導

全ての分野共通の役割にあるように、手術看護においても指導は大きな役割を担っています。手術を安全かつ円滑に遂行できるよう、また、周手術期における効果的な継続看護ができるよう、他の看護師に指導を行います。

 

 

3-2、認定看護師になるためには

手術看護における認定看護師になるためには、特定の教育機関で6か月以上(615時間以上)の研修を受けなければなりません。研修が終了すると、認定看護師試験を受けることができ、それに合格すれば晴れて認定看護師になることが出来ます。

 

≪研修における入学条件≫

保健師助産師、及び看護師のいずれかの免許を保有していること

②実務経験5年以上(うち3年以上は手術看護の経験)

③現在、手術看護部門で勤務していることが望ましい。

 

≪手術看護の教育機関≫

都道府県 教育機関名
東京都 東京女子医科大学
福井県 福井大学
兵庫県 学校法人 兵庫医科大学

 

 

≪認定看護師試験≫

上記の教育機関で実施される教育過程を終えた後、認定看護師試験を受けることができます。試験内容は経験に基づいた基本的な問題が多いため、そこまで難しくはないものの、教育過程をしっかりと受講しておく必要があります。

 

 

4、手術室勤務の求人

手術室勤務の看護師の求人の絶対数は、病棟や外来などと比べて少ないのが特徴です。しかしながら、看護師不足である上、特殊な仕事であることから、手術室勤務を希望する看護師数より求人数の方が多いため、人気の病院でない限り採用は確実と言えるでしょう。

また、覚えることが非常に多いため、新卒や若い人の方が採用されやすいという特徴もあります。病院によって、日勤のみ、交代制など勤務形態が異なり、常勤・パート・契約社員といったように雇用形態も異なるため、よく確認しておきましょう。

 

 

4-1、手術室勤務のメリット・デメリット

 

≪メリット≫

・スキルアップに繋がる

病棟では経験することが出来ない解剖の知識、器具・器械の知識、観察力・洞察力、精神力・体力など、手術室は看護師としてスキルアップを図るのに最適な場と言えます。もちろん、病棟に移った後もこれらのスキルは必ず役に立ちます。

 

・残業がない

手術室勤務の場合、多くは残業がなく日勤となるため、規則的な生活を送ることが出来ます。それゆえ、子育てしながら働くということも可能です。

 

・基本給が高い

後述しますが、年収という観点からみれば病棟勤務とほぼ同額と言えます。しかしながら、病棟勤務は残業手当により年収が高くなっているのに対し、手術室勤務は残業がなく(または少ない)ほぼ年収が同額なので、基本給そのものが高く設定されているのです。もちろん、病院によって異なりますが、比較的良い給与条件だと言えます。

 

 

≪デメリット≫

・オンコールがある

手術室勤務の懸念点となるのがオンコール。土日祝日に24時間のオンコール体制をとっている病院は多く、オンコールが入ると休日を返上して出勤しなければいけません。病院の規模や看護師数によって異なりますが、オンコールは平均して月に3回程度とみていいでしょう。

 

・精神的ストレスが多い

患者さんの命を預かる立場にあるため、緊張感があり罵声が飛び交うこともあります。それゆえ、精神的なストレスは必然とのしかかってきます。これが原因となって辞めていく看護師は少なくありません。

 

・コミュニケーションが少ない

密閉された手術室においては、患者さんとコミュニケーションをとる機会がほとんどありません。それゆえ、話すことが好きな人にとっては大きなデメリットと言えるでしょう。しかしながら、話すことが苦手な人にとってはメリットとも言えます。

 

 

4-2、手術室勤務の給料・年収

手術室勤務と病棟勤務では、年収に大きな差はありません。看護師の平均年収は約470万であり、病棟勤務の場合も同等と言えます。ただし、年収の中で大きな割合を持っているのがオンコールであるため、日数が少ない場合には平均年収を下回ることもあります。

オンコールの場合、土日祝は24時間体制をとっているため、待機料という名目で出勤の有無に関わらず2000円~4,000円が支払われます。休日に出勤した際には超過勤務扱いとして実働分が支給されます。

このように、オンコールの日数によって年収が上下しますが、看護師の平均年収分はもらえると考えてよいでしょう。ただし、約470万というのは全看護師に対する平均であるため、新卒や経験が浅い方はこれよりも安くなります。

 

 

4-3、求人探しのポイント

何をもって勤務先を選ぶかによって求人探しのポイントは変わってきますが、手術勤務の場合、「年収」「オンコール・日直の回数」「診療科目数」がポイントとなるのではないでしょうか。病院によって条件は様々ですが、基本的には病院の規模によって、下記のような特徴があるため、これらを基に求人を探してみてはいかがでしょうか。

 

 

≪大規模病院≫

・給料が高い

・オンコール・日直回数が多い

・診療科目が多い、または全て

 

≪中小規模病院≫

・給料が安い

・オンコール・日直回数が少ない、または無い

・診療科目が少ない

 

特にオンコールや日直に関しては、求人情報欄には詳しく記載されていないケースがほとんどであるため、応募もしくは面接の際に尋ねてみることをお勧めします。

 

 

まとめ

手術室勤務は少し特殊な労働環境であり、病棟勤務と比べて体力・ストレスの負担は大きいと言えます。しかしながら、残業が無い(少ない)という点や、スキルアップという点では非常に有意義な仕事であるのも事実です。

手術室で働きたい看護学生や転職を考えている看護師の方は、当ページに記載してある手術室勤務の概要をしっかりと踏まえた上で、希望の勤務条件にあてはまる求人にどんどん募集していきましょう。

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【気管切開の看護計画まとめ】観察、チューブ/カニューレの種類・交換

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気管切開

気管切開術は様々な病状・病態に適応されるため、気管切開の手術や、カニューレなどの管理・吸入・交換などを熟知しておく必要があります。曖昧な知識では感染症や合併症を起こさないため、患者さんの安楽な生活を援助するためにも、気管切開に関して自信がない方は、最後までしっかりとお読みください。

 

 

1、気管切開とは

気管切開というのは、気管とその上部の皮膚を切開してカニューレと呼ばれる太い管を挿入する気道確保法のことを言います。

気管切開の歴史は紀元前3000年前の古代エジプト文明にまで遡ると言われており、数ある救命処置の中でも非常に長い歴史を持ちます。中世ヨーロッパになると気管切開の技術が急速に進歩したことで、現在に至るまで多くの手技が考案され、安全性が確立された救命法として、呼吸不全の患者などに用いられるようになりました。

 

 

1-1、気管切開の目的

気管切開には大きく分けて、「気道閉塞の予防」「下部気道の分泌物貯留の予防」「呼吸不全」の3つの目的があります。

 

①気道閉塞の予防のため

喉頭狭窄や口腔の咽頭の炎症、顔や頸部外傷など、さまざまな原因により、気管が閉塞した場合、または閉塞の危険性がある場合に気管切開を行います。

 

②下気道分泌物・貯留物の排除のため

重症筋無力症や意識障害など、気管内に唾液や食物などが気管内に貯留する恐れがある場合に、貯留物を吸引排除するために気管切開を行います。

 

③呼吸不全の呼吸管理

肺炎や敗血症など、呼吸不全を発症した際に呼吸を確保する目的で気管切開が行われます。呼吸不全はさまざまな病気により発症し、長期的な治療を必要とするため、多くの場合はカニューレの留置が長期的に行われます。

 

 

1-2、気管切開の適応

気管切開が適応となる病気・症状は以下の通りです。

 

・ アナフィラキシー

・気道の先天性欠損

・顔面や気道の火傷

・ 頸部がん

・慢性肺疾患

・昏睡

・横隔膜の機能障害

・感染症

・喉頭の怪我や腫瘍

・胸壁の損傷

・閉塞性睡眠時無呼吸

・異物による気管閉塞

・嚥下を行う筋肉の麻痺

・重度の首と口の損傷

・声帯麻痺

 

 

1-3、気道確保法の種類

気管切開というのは、気道確保法の1つであり、他にも「気管挿管」があります。また、気管挿管の中にも「経口気管挿管」「経気管挿管」があります。

気管切開を語る上で、気管挿管は非常に重要であり、それぞれは状況によって使い分けられるため、当項ではその違いを解説していきます。

 

≪気管挿管≫

気管挿管は、口から細い管を気管に挿入する「経口気管挿管」と、鼻から挿入する「経鼻気管挿管」の2種類があり、①意識がない、②人工呼吸などの緊急処置が必要、③手術のために全身麻酔が必要など、短期的に気道を確保しなければならない時に行われます。

 

≪気管切開≫

それに対して気管切開は、長期的に気道確保を必要とする場合に用いられ、気管挿管と比べて侵襲が少なく、長期的に留置した場合に合併症が起きにくいため、緊急時でない限り、気道確保には気管切開が行われます。

 

 

1-4、気管切開の利点・欠点

気管切開の安全性は確立されており、現在では多くの患者に適応されていますが、欠点があることも覚えておかなければいけません。以下に気管切開の利点と欠点を紹介します。

 

≪利点≫

・気管内吸引が容易

・カニューレの挿入・固定が容易

・患者の侵襲が少ない

・口腔内が解放される

・口からの食事が可能

・口腔内の清潔保持が可能

・声が出せる(場合による)

・事故抜管の危険性がなくなる

 

≪欠点≫

・手術による出血や感染などの可能性

・合併症の可能性(気管感染・壊死など)

・刺激による気管麻痺

・誤嚥の危険性

 

 

1-5、気管切開の合併症

気管切開は人工呼吸としてや貯留物の排除に非常に有効ですが、多くの合併症が存在するため、細心の注意を持って手術・看護しなければいけません。

 

・出血(創部、気管内)

・損傷(動脈、反回神経、食道、気管粘膜)

・気腫(頸部皮下、縦隔)、気胸

・低酸素血症

・気管食道瘻

・創部からの感染

・肺炎

・自然抜去

・閉塞

 

これらはカニューレの留置または抜去により発症する合併症であり、カニューレを用いる以上起こり得るため、術中や交換の際には高い意識を持って取り組み、術後の安静期には指導・観察など少しでも合併症のリスクが減るようケアしていかなければいけません。

 

 

2、気管切開の手術

気管切開の手術は執刀医が行いますが、看護師は執刀医のサポート役を担います。手術時間はおおむね30分、準備や観察を含めると約1時間~2時間ほどで終了します。気管切開の手術操作は比較的単純ですが、円滑に行えるよう必要物品や手順をしっかりと把握しておきましょう。

 

 

≪気管切開の必要物品≫

・減菌用具(手袋、ガウン、ドレープ、ガーゼ、各種消毒セット)

・麻酔道具(麻酔薬、注射器など)

・各種器具(メス、鉗子、セッシ、剪刃、二爪鉤、筋鉤など)

・縫合道具(持針器、縫合針、縫合糸)

・挿管器具(気管カニューレ、カフ用注射器、吸引管、吸引チューブ、バイポーラなど)

 

 

≪気管切開法の流れ(介助)≫

①上記の必要物品を準備する

②気管切開に適した体位を確保する

③仰臥位となった状態で頭部を円座枕で固定

④肩枕をいれて前頸部を伸展する

⑤切開予定部分にマーキングする

⑥手洗いの後、滅菌ガウン・滅菌手袋を装着

⑦術野を消毒し、滅菌ドレープをかける

⑧ 気管カニューレを準備

⑨カフ用注射器でカフにエアリークがないことを確認

⑩局所麻酔を行う

⑪マーキング部分を切開する

⑫甲状腺を上部に持ち上げ、気管軟骨を切開。

⑬気管カニューレを挿入する

⑭吸引カテーテルの挿入の可否を確認する

⑮気管カニューレのカフを膨らませる(カフ付きの場合)

⑯止血処置を施し、消毒・縫合する

⑰創部にガーゼを詰め固定する

⑱手術終了

 

 

3、気管切開カニューレの種類

気管切開カニューレには主に「カフ付き」「カフなし」があり、その中にも「単管」「複管」があります。さらにサイズも様々あり、患者の年齢や病態などによって使い分けられます。

どのカニューレを用いるかは医師が決定するため、看護師は熟知していなくても構いませんが、少なからず知識は持っておいた方が良いため、簡潔にカニューレの種類をご紹介します。

 

≪カフ付き≫

カフは気管壁とチューブの隙間を埋め、エアリークを防止する役割を果たしています。痰が多い、嚥下困難、誤嚥、人工呼吸器装着などの場合に用いられますが、カフ圧の調節が必要となり、カフ圧が高くなると管壁を圧迫し血流の途絶や壊死、カフ圧が低くなると誤嚥による人工呼吸器関連肺炎を引き起こします。それゆえ、カフ圧の調節が非常に重要となります。

 

≪カフなし≫

カフなしのカニューレは、人工呼吸を必要とせず自発呼吸ができる患者や、嚥下機能に障害がなく、誤嚥のリスクが低い場合に使用されます。カフ圧の調節を必要としないことから、カフ付きよりも危険性は少ないため、主に自発呼吸が可能な小児に使用されます。空気が声帯を通るため、発声できることが大きな特徴となっています。

 

≪単管≫

カニューレの内腔には痰が付着するため、それを吸引によって除去しなければいけません。単管の場合、付着した痰を洗浄する際にチューブごと交換する必要があるため、痰の量が少なく、閉塞のリスクが低い患者に使用されます。

 

≪複管≫

複管は内管(内筒)のみを一時的に抜去し、清掃・洗浄・消毒ができるため、痰の量が多く、頻繁に閉塞する患者に使用されます。単管と比べて内径が狭くなるというデメリットはあるものの、手入れが容易であるため、現在では痰の量が少ない患者にも複管が使用されています。

 

 

3-1、人工鼻について

人工鼻はカニューレの先端に取り付ける道具で、加温加湿の役割を果たしてくれます。気管切開を行った患者さんは鼻からの通気が無くなり、カニューレを通して気管から呼吸を行います。

鼻は吸った空気に加温加湿し、気管や肺を守る機能を持っていますが、カニューレを通して呼吸する場合にはこの機能が働きません。そこで、鼻の機能を代用してくれる人口鼻をカニューレの先端に取り付けて、温度と湿度の調節をするのです。

 

≪人工鼻の種類≫

人口鼻には大別すると、単独で用いる「単独タイプ」と呼吸器に接続する「接続タイプ」の2種類があります。さらにこの中でも各個人の状態に応じて、サイズや最低・最高換気量など機能性により使い分けられます。

 

・単独タイプ

単独タイプの人工鼻はチューブなど一切ついておらず、5gほどと非常に小さな物です。人工呼吸器に接続する必要がないことから、自発呼吸が可能な患者に用いられます。

 

・接続タイプ

接続タイプは人工呼吸器に接続し、チューブを通して空気が送り込まれます。自発呼吸が出来ない患者に用いられます。

 

≪人工鼻の費用≫

人口鼻は1つあたり約600円程度で、換気機能が高いものはより高額になります。1日~2日程度の交換が必要であり、排痰が多い場合には交換時期も短縮されるため、費用はバカになりません。

 

≪人工鼻の代用品≫

人工鼻の費用が高く、毎日のように交換を必要とすることから、人口鼻を用いず加湿器を代用とする人や、使い捨てマスクに細工を施し使用している人がいます。しかしながら、代用品は加湿が弱くなり、感染など合併症の可能性が高まります。よって安全性を確保するためにも、代用品ではなく人工鼻を使用するようにしてください。

 

 

4、気管切開カニューレの吸引

経過によりカニューレ内には痰がつまり呼吸が苦しくなるため、定期的に吸引してあげる必要があります。また、肺のガス交換の役割も担っています。吸引操作は比較的単純ですが、効率的に行えるよう、また合併症を起こさないよう、以下にて紹介する手順や注意点をしっかりと読んでおいてください。

 

≪吸引の手順≫

①開始の旨を伝える

②手洗いの後、清潔な手袋をはめる

③接続管を持ち、吸引器の電源を入れる

④親指で接続管の先端を塞ぐ

⑤吸引器の吸引圧を20~26KPaに調節する

⑥サイドチューブがあれば吸引する

(ない場合は、吸引カテーテルを接続管に接続する)

⑦指で吸引カテーテルを軽く折り曲げ、陰圧をかけずに気管内に挿入する

⑧折り曲げた手を緩めて陰圧をかけながら吸引する

⑨吸引終了の旨を伝える

⑩接続管の内側を水で洗い流す

⑪吸引器の電源を切って終了

 

≪吸引における注意点≫

・無菌操作が不可欠

吸入の際は感染症予防のため無菌操作が要求されます。吸引カテーテルの先端10~13cmの範囲は絶対に触れないようにしてください。

 

・迅速かつ効率的な吸引が必要

吸引が長引くと患者さんの負担になってしまいます。迅速かつ効率的に10秒以内に吸引を終了するようにしてください。

 

・挿入深度に注意すること

カテーテルを気管内に深く挿入してしまうと、気管の粘膜に接触し、粘膜の損傷や咳を発現させてしまいます。それゆえ、約12~15cmを目安とし、深く挿入しないように注意してください。

 

 

≪吸引時のトラブルシューティング≫

状況 判断 対処
・何も引けない 吸引チューブの挿入が短すぎる 適切な長さで挿入する(目安:12~15cm)
・顔色が悪い 吸引による低酸素症の可能性がある 吸引を中止し、必要であればアンビューバッグを用い酸素を投与する
・チューブが引っかかる カニューレ内で痰が乾燥し固まっている可能性がある 水分摂取量を増やし、痰が柔らかくなってから吸引する。または、吸引頻度を多くする
気管内に肉芽が形成されている可能性がある 無理に挿入せず、医師に報告し、レーザーで排除する

 

 

 

5、気管カニューレの交換

気管カニューレは衛生上、定期的に交換する必要があります。汚染具合などにより時期はさまざまですが、一般的には1週間~2週間程度で交換します。なお、交換は基本的に看護師が行います。

 

≪必要物品≫

・新しい気管カニューレ

・固定用ひも

・キシロカインゼリー

・消毒薬・綿棒

・Yガーゼ

・気管吸引セット

 

≪交換手順≫

①手を洗う

②分泌物の程度、呼吸状態を観察

③仰向けにして肩枕をいれる

④使用中のカニューレの紐を切りYガーゼを外す

⑤カニューレを抜去する

⑥気管切開部の皮膚の状態を確認する

⑦消毒薬をつけた綿棒で切開部周辺を消毒する

⑧新しいカニューレにキシロカインゼリーを塗り挿入する

⑨胸や気切口から呼吸の状態を確認する

⑩Yガーゼをあてて紐をカニューレに通す

⑪固定用紐を固結びに結びYガーゼを挟む

⑫呼吸状態を再度確認し、問題がなければ終了

 

≪注意点≫

・エアリークの有無の確認

カフ付きカニューレの場合は、事前にカフが確実に膨らむか、空気が漏れていないかを確認してください。

 

・消毒液の気管内侵入に注意

消毒液を切開部に塗布する際、気管内に入らないよう注意してください。場合によっては気道粘膜の損傷や呼吸障害の原因になります。

 

・交換頻度は1つの目安とする

約1週間~2週間が一般的な交換時期となっていますが、汚染進度が速い場合には3日~1週間で交換するようにしてください。また、カニューレ留置により皮膚炎症が生じる場合は、消毒の塗布日数を短縮し、Yガーゼの交換回数を増やしてください。

 

≪交換時のトラブルシューティング≫

状況 判断 対処
・吸引時に血液が混入 ①気管粘膜の炎症②吸引圧の上げすぎ③気道粘膜等の損傷 すぐに止血するようなら様子をみる持続的に出血する場合は、医師に報告する
・カニューレが挿入不可 ①体位が不適切②気切口の狭窄 呼吸状態の悪化がみられなければ体位・気切口を確認し、再度トライする
・気切口周囲に発赤や肉芽がある カニューレ留置の刺激または汚染により皮膚損傷・感染を起こしている可能性がある 損傷の場合にはYガーゼの位置確認またはカニューレのサイズ変更感染の場合には薬の塗布または衛生状況を再確認する

 

 

 

6、気管切開の看護計画

気管切開を行った患者さんに対する取り組みとして、合併症の予防だけでなく、精神的なケアや家族の指導など包括的なケアを目標に掲げ実践していきましょう。

また、看護の上で最も重要となる合併症を発症させないために、入念な観察が不可欠です。合併症が進行し重度化すると死に至ることもあるため、異常があればすぐに対処できるよう、細やかな部分までしっかりと観察しましょう。

 

≪目標≫

・合併症を起こさず、異常の早期発見ができる

・発声不可または発声困難によるストレスを軽減させる

・患者本人の不安の表出など、自己表現できるようになる

・患者本人と家族が適切に管理できるよう指導・援助する

 

≪観察項目≫

・カニューレ内の出血の有無

・カニューレ留置による気道の痛みの有無

・カニューレの固定状態

・カニューレのカフ圧の適正具合

・カニューレのエアリークの有無

・カニューレの交換時期

・感染の有無(出血、浸出液など)

・切開部位周辺の皮膚の異常

・排痰の有無、吸引頻度

・人工鼻の加湿状態

・人工呼吸器の適正値

・口腔内の清潔具合

 

 

6-1、気管切開の看護ケア

気管切開後の看護は、患者が安楽に生活できるよう様々な点に配慮しながら取り組まなければいけません。中でも合併症のリスクを最小限に抑えることが課題となります。また、カニューレの留置によるストレスの緩和など、精神的なケアも行う必要があります。

 

・カニューレの重要性を説明する

初めて気管切開をしてカニューレを留置する患者さんは、事前に説明はあるものの、カニューレがどのような働きをするのか正確に理解していない場合がほとんどでしょう。カニューレの重要性について理解していない状態では、事故のリスクが増えると共に、安楽な生活を送ることができません。それゆえ、術後には再度カニューレの重要性を入念に説明することが非常に大切です。

 

・ストレス軽減

カニューレ留置による行動抑制はもちろん、外見上の変化、声の喪失によるコミュニケーション制限、生活の変化などにより、大きなストレスがのしかかります。ストレスの原因となる様々な事柄に関する対処法を提案し援助することも看護師ケアの1つです。

 

・合併症・事故の防止

気管切開は合併症・感染症のリスクが高く、さらにカニューレの自己(事故)抜去の事例が多くあります。これらを未然に防ぐためにも、高い意識を持って観察しなければいけません。特に小児の場合には自己(事故)抜去の可能性が高いと言えるため、看護師の入念な観察はもちろん、ご家族にもしっかりと指導する必要があります。

 

・家族に操作や管理を指導する

入院中はもちろん、在宅療養・介護に向けて、カニューレの管理や吸引器・吸引チューブの取り扱いなど、ご家族にしっかりと指導しておきましょう。看護師や医師が近くにいないため、操作や管理を間違えば、最悪の場合、死に関わる合併症を引き起こしてしまう可能性があります。口頭指導だけでなく、可能性であればパンフレットを作成するなど、ご家族が完全に理解し実践できるよう援助してください。

 

 

まとめ

気管切開を行った患者さんに対する看護ケアは、観察が最も重要となります。呼吸は生命に関わる生体運動であるため、合併症を発症し、重症化すると容易に死に至ってしまいます。そのため、合併症を引き起こさないために十分な観察の上、異常があればすぐに対処することが非常に大切なのです。

また、退院後に在宅療養に移る場合には、主に患者のご家族がケアを行うため、ご家族のサポートにも全力で取り組まなければいけません。看護師は患者の命を守ることが仕事であるため、入院中だけ看護すれば良いという考えでは看護師失格と言えます。

気管切開に関して包括的にご説明してきましたが、手術の手順やカニューレの吸引・交換、さらには観察項目など、少しでも不安な項目は何度も読み、しっかりと熟知した上で、看護ケアに取り組んでいってください。

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【輸血の看護技術まとめ】手順、観察、認定看護師、副作用

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輸血

輸血は移植の1つとして考えられているため、看護師は患者さんの命を守るために様々なことに留意しなければいけません。特に、起こりうる副作用や合併症の種類や対処法に関する深い知識を持っておく必要があります。

輸血に関して不安な点があるという看護学生や看護師の方は、適切かつ迅速な輸血ができるよう、最後までしっかりお読み頂き、輸血に関して自信が持てるよう深い知識を身につけてください。

 

 

1、輸血とは

輸血とは、血液成分を体内に入れる臓器移植の一つであり、血中の細胞成分や蛋白成分が減少した時、また機能が低下した時に、その成分を補充し臨床症状の改善を図る目的で行われます。日本輸血・細胞治療学会により、以下のような輸血療法の原則が定められています。

 

1、補充療法であり、根本的治療ではない

2、ヒト血液(同種の細胞)を入れることは臓器移植と同様の医療行為である

3、必要な血液成分のみを使用することが原則である

4、治療目標を設定し、補充量と補充間隔を決め、臨床症状・検査値から有効性を評価すること

5、輸血を安全に行うためには実施管理体制の整備、輸血実施手順書を遵守すること

 

 

1-1、輸血用血液の種類

輸血時には、患者さんの病態によって特定の成分が入った血液製剤を使用します。輸血用血液製剤には「赤血球製剤」「血漿製剤」「血小板製剤」「全血製剤」があります。

以前は、採血されたままの「全血製剤」が主流でしたが、不必要な成分を輸血することで循環器への負担がかかるため、赤血球や血漿など必要な成分だけを輸血する手法が今や一般的となりました。

また、特定の患者さんには「血液凝固第VIII因子製剤」「アルブミン製剤」「免疫グロブリン製剤」から成る血漿分画製剤が用いられます。

 

≪血液製剤≫

種類 使用環境 使用用途
赤血球 保存温度:2~6℃有効期間:採血後21日間 出血および赤血球が不足する場合や、機能低下による酸素欠乏のある場合に使用されます。
血漿 保存温度:-20℃以下有効期間:採血後1年間 出血または出血傾向により複数の血液凝固因子の欠乏がある場合に使用されます。
血小板 保存温度:20~24℃有効期間:採血後4日間 血小板数の減少もしくはその機能低下による出血または出血傾向にある場合に使用されます。
全血 保存温度:2~6℃有効期間:採血後21日間 大量出血などにより、全て成分が不足する状況下で、赤血球と血漿の同時補給が必要な場合に使用されます。

 

 

≪血漿分画製剤の種類≫

血漿分画製剤は、血漿中に含まれる血液凝固因子やアルブミン、免疫グロブリンなどのタンパク質を抽出・精製したものです。有効期間が長く、輸送や保存が簡便というメリットがあります。

 

種類 使用環境 使用用途
血液凝固因子製剤 保存温度:10℃以下有効期間:2年間 血友病など、血液中の血液凝固第VIII因子が不足している場合や、早急な止血が必要な場合に使用されます。
アルブミン製剤 保存温度:室温有効期間:2年間 事故などにより、大量の出血がありショック状態に陥った時や、熱傷、肝臓病、腎臓病などの治療に使用されます。
免疫グロブリン製剤 保存温度:10℃以下有効期間:2年間 B型肝炎ウイルスを含む血液による針刺し事故後の発症防止や、B型肝炎撲滅のための母子間感染の予防のために使用されます。

 

 

 

2、輸血の準備

輸血を実施する患者さんに対し、看護師は同意書の取得や血液検査、血液製剤の請求など、実施に際する準備をしなければいけません。医療機関によっては準備の手順や方法が異なる場合がありますが、以下の手順・方法が主となっています。

 

①輸血同意書を取得する

輸血を必要とする患者または、手術に際して出血が予想される患者に輸血の必要性を説明した後、同意書に署名してもらいましょう。その後、同意書はカルテに保存し、コピーを患者さんに渡してください。

 

②血液検査を実施する

輸血同意書が得られた後、患者さんの血液型を検査するために採血を行います。異なる時期に2回採血を行います。取り違えリスクを回避するために、2回分の検体を1回の採血で提出しないようにしてください。

 

③血液製剤を請求する

血液検査により適合する血液が判明した後、必要な血液製剤を請求します。請求時期は医療機関によって異なりますが、赤血球製剤(投与開始1~72時間前)、血漿製剤(投与開始0~24時間以内)、血小板製剤(投与開始3から72時間以内)となります。

 

④受取・搬送・保管を行う

緊急時には検査室から直接受け取り、緊急時でない場合はメッセンジャー便などで受け取ります。この際、以下の項目をしっかりと確認してください。

患者氏名、血液型、製造番号、クロスマッチの検査結果、放射線照射の有無、必要血液の種類と単位数、有効期限、外観の異常の有無

 

また、適正温度を保ち破損を防止するために、輸送には血液製剤専用運搬バッグを使用し、受取後は出来るだけ早く輸血を行ってください。

 

≪適切な運搬・保管方法≫

血液製剤の種類 適正温度 適正使用法
赤血球製剤 4~6℃ 保冷剤を入れて運搬。製剤が直接触れないように注意すること。
血漿製剤 -20℃ 保冷剤を入れて運搬。衝撃を与えないように注意すること。
血小板製剤 20~24℃ 常温で運搬すること。

 

 

⑤輸血を実施する

輸血実施前に必ず複数の医師または看護師で以下の項目をしっかり確認してください。

患者氏名、血液型、製造番号、クロスマッチの検査結果、放射線照射の有無、必要血液の種類と単位数、有効期限、外観の異常の有無

 

 

 

3、輸血の手順

輸血の実施は看護師が担当します。必要物品を揃えた後、適切な手順で正確に輸血するようにしてください。輸血に必要な物品と実施手順は以下の通りです。

 

≪輸血実施に必要な物品≫

・輸血同意書

・血液型判定

・交差試験適合票

・必要に応じた血液パック

・輸血関係伝票

・輸血セット

 

≪輸血の手順≫

①血液パックを左右上下に振り、内容物を混和する。

②差し込み口を露出させる。

③輸血セットを準備し、クレンメをしっかり閉じる。

④輸血針のキャップを外し、血液パックに差し込む。

⑤点滴スタンドに血液パックを吊り下げる。

⑥点滴筒を指でゆっくり押しつぶして話、筒内に半分程度まで血液を満たす。

⑦クレメントを徐々に緩め、筒の先まで血液を導く。

⑧穿刺し、輸血を行う。(最初の10~15分間1ml/分、その後5ml/分)

⑨輸血開始後、副作用出現の有無を確認する。

⑩輸血開始から15分後にバイタルサイン測定を行う。

⑪30分間隔で患者さんの状態を観察する。

 

 

4、輸血に際する注意点

輸血というのは主に他人の血液を体内に入れるため、徹底した安全管理が必要です。輸血中の事故を防ぐために、また輸血後の病状管理を徹底するために、以下の事項に留意してください。

 

・輸血同意書を確認する。

入室時には、患者さんの同意書を確認し、トラブルを確実に予防すること。

 

・徹底したダブルチェックを行う。

輸血の受け渡し時や受領した輸血を実施する際には、「患者氏名」「血液型」「製造番号」「クロスマッチの検査結果」「放射線照射の有無」「必要血液の種類と単位数」「有効期限」「外観の異常の有無」などを、複数名でしっかりと確認すること。追加輸血が必要な場合も都度ダブルチェックを行うこと。

 

・保管法を厳守する。

使用までに時間がある場合には、製品ごとの温度・管理方法で保管し、他の患者と共有する場合には取り違えないよう、しっかりと管理すること。

 

・副作用の出現を観察する。

アレルギー反応やショック症状、血液型不適合など、輸血開始後5分間は患者の側から離れず、注意深く観察を行い、異常があった場合には直ちに輸血を中止すること。また、輸血開始後15分経過した時点でも再び入念に観察し、その後も適宜観察をすること。

 

・看護記録を書き綴る。

実施した輸血の種類や輸血量、開始・終了時刻、副作用の有無など、輸血に際した看護記録を細かく書き綴ること。

 

 

≪事故が起こりやすい状況≫

・大量・多種類の輸血を使用する手術

・外回り看護師が何度も交代する手術

・緊急手術

・術中に急変事態が起きた手術

・口頭により指示を受けている

・複数の患者の血液製剤を持ち込んでいる

・出血に伴う多重課題がある

・被覆されているため身体の観察制限がある

・全身麻酔と薬剤により副作用の発見の遅れがある

 

 

5、輸血の副作用

体内に他人の血液が混入することで、必然と多くの副作用が存在します。また、管理ミスによる事故も多数報告されているため、看護師は細心の注意を持って観察しなければいけません。以下に代表的な副作用・合併症を紹介します。

 

≪即時型≫

病名(発症時期) 症状 概要
ABO不適合(輸血開始直後~数日) 発熱、悪寒、腹痛、胸痛 、穿刺部位の熱感、疼痛 、浮腫 、息切れ など 血液製剤や患者の取り違えにより起こる人為的ミス。血液中の抗体を破壊することで、重篤になるケースが多い。
アナフィラキシー(輸血後10分以内) チアノーゼ 、血管浮腫、皮膚の高潮、腹痛、喘息症状、頻脈、血圧低下 など 体内に異物(他人の血液)が侵入したことで、強い抗体反応の結果により生じるショック症状。軽度の場合には、輸血関連急性肺障害に似た症状であるため注意が必要。
輸血関急性肺障(輸血後1~2時間以内、あるいは6時間以内) 呼吸困難、低酸素症 、両側肺水腫、血圧低下 など 抗白血球抗体と白血球との抗原抗体反応により補体が活性化され、好中球が肺の毛細血管に損傷を与えることで発症する。敗血症、肺炎、急性膵炎など、重篤になりやすい。
輸血関循環過負(輸血後6時間以内) 呼吸困難、頻脈、血圧上昇 など 輸血の容量負荷により起こる心不全。輸血関連急性肺障害と似た症状であるが、比較には血圧の「低下・上昇」を参考にすると良い。
細菌感染(輸血後4時間以内) 発熱、悪寒、頻脈、嘔気、背部痛、血圧上昇、血圧低下 など 血液製剤の不適切な管理・保管によってパック内で細菌が繁殖し、輸血時に感染する。菌血症やエンドトキシンショックなどがある。

 

≪遅発型≫

病名(発症時期) 症状 概要
輸血後移植片対宿主(輸血後1~2週間) 発熱、紅斑、下痢、肝機能障害、汎血球減少症 など 輸血後に体内でリンパ球が増殖し、増殖したリンパ球が組織を攻撃することにより起こる。
ウイルス感(輸血後数か月~) 発熱、悪心、腹痛、肝障害、リンパ節腫大、体重減少など、各感染症の症状 血液製剤内に存在するウイルスにより感染。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、HTLVなど、さまざまな感染症が存在する。

 

 

 

6、症状別にみる対処法

上記の各副作用が発症した際、慌てることなく医師の指示のもと、適切に対処する必要があります。遅発型の場合には術中に発現しませんが、即時型の場合、一刻を争う事態になるケースが多々あるため、迅速かつ適切な対処が不可欠です。

 

 

6-1、即時型

 

・ABO不適合

輸血開始直後に「発熱」「悪寒」「腹痛」「胸痛」「穿刺部位の熱感」「疼痛」「浮腫」「息切れ」など、さまざまな症状が一挙に発現する場合、ABO不適合の可能性が高いと言えます。患者の血液型と血液製剤の血液型の組み合わせによって、治療法は異なりますが、基本的には以下の手順に沿った治療が行われます。

 

 

①輸血を中止

②針は残したまま接続部で輸液セットを新しいセットに交換

③乳酸リンゲル液をつなぎ、最速で点滴

④導尿

⑤10mlヘパリン採血を行い、血液型を再検

⑥酸素吸入(場合によっては挿管)

⑦ラクテックを大量に急速輸注

⑧ドパミン投与(3-5μg/kg/分)

⑨ソルメドロール1000mgを静注

⑩ヘパリン5000単位、その後10000単位/日で持続静注

⑪ハプトグロビン10000単位で持続静注

⑫ラシックスなど利尿剤を投与(1ml/kg/時を確保)

 

 

・アナフィラキシーショック

輸血後、数分~30分以内に「呼吸困難」「全身紅潮」「血管浮腫」「血圧低下」などのショック症状がみられる場合は、アナフィラキシーショックと考え、以下の手順に沿って治療してください。

 

① 直ちに輸血中止

② バイタルサインのチェック

③ 気道確保、O2投与

④ 気道狭窄にはエピネフリン0.3mgを注射

⑤ 大量の輸液

⑥ドーパミンなどの昇圧剤の投与

⑦ ステロイド、抗ヒスタミン薬の投与

⑧ 気道狭窄が続く時はアミノフィリン (5mg/kg) を投与

 

 

・輸血関連急性肺障害

輸血後、6時間以内(多くは1~2時間)に「呼吸困難」「発熱」「血圧低下」「低酸素血症」などの症状が発現する場合には、輸血関連急性肺障害(TRALI)が疑われます。

 

① 直ちに輸血中止

② 治療開始時に患者血液を採取

(抗HLA抗体、抗顆粒球抗体などの検索のため)

③ 気管内挿管、酸素投与、機械的人工呼吸

④ 昇圧剤投与

⑤ 輸液

⑥ステロイドの投与

 

 

・輸血関循環過負

輸血開始後、6時間以内に「呼吸困難」「チアノーゼ」「頻脈」「血圧上昇」などの症状が発現する場合、過剰輸血や休息輸血による輸血関連循環過負担(TACO)の可能性が考えられます。

 

①輸血中止

②酸素投与

③利尿剤の投与

④座位に体位を変更

⑤瀉血を行う(250ml程度)

 

 

・細菌感染

輸血開始後、4時間以内に「発熱」「悪寒」「頻脈」「嘔気」「背部痛」「血圧上昇」「血圧低下」などの症状があり、ABO不適合や輸血関連急性肺障害(TRALI)ではない場合、血液製剤による細菌感染が疑われます。

細菌感染が認められる場合には、輸血を中止し、患者血液培養 と製剤残余 の細菌培養 を行い、抗生剤投与を開始します。

 

 

6-2、遅発型

 

・輸血後移植片対宿主

輸血後、1~2週間後に「発熱」「紅斑」「下痢」「肝機能障害」「汎血球減少症」などの症状が発現する場合には、輸血後移植片対宿主症(輸血後GVHD)の可能性が高いと言えます。

出現時期には多くの場合、すでに重篤であるため死に至るケースが少なくありません。対処法としては、免疫抑制剤やステロイドの継続投与や増量、パルス状投与により改善がみられる場合があります。

 

 

・ウイルス感染

輸血後、数か月~十数年の間に「発熱」「悪心」「腹痛」「肝障害」「リンパ節腫大」「体重減少」などの症状が発現する場合には、B・C型肝炎やHIVなどのウイルス感染の可能性が高いと言えます。

各感染症に応じた治療法を実施しますが、B型肝炎は核酸増幅検査、C型肝炎はHCVコア抗原検査、HIVはHIV抗原検査など、各種検査を必ず実施するようにしてください。

 

 

7、輸血に関する認定資格

看護師の認定資格として日本看護協会が様々な分野で認定を行っていますが、輸血に関しては日本輸血・細胞治療学会を中心とした計5学会が2012年に「臨床輸血看護師」の認定制度を導入しました。輸血は移植の一種と考えられ、副作用や合併症が伴いやすいため、安全な輸 血に寄与することのできる看護師の育成を目的として制定され、年間約150人の看護師が試験に合格し、認定を受けています。

 

≪認定対象≫

・看護師免許を保有していること

・輸血治療を行っている施設の看護師であること

・輸血分野において3年以上の臨床経験を有していること

・所属長と輸血責任医師の推薦を得えていること

 

≪認定までの道のり≫

①各書類(受験申請書、推薦書など)の提出

②資格審査合格後、事前講習会を受講

③筆記試験を受験

④合格後、指定研修施設で研修

⑤研修後、審査次第で認定取得

 

 

まとめ

輸血は副作用・合併症が発症しやすく、重篤になるケースも多々あります。患者さんの命を守る施術が、反対に命を奪う施術になってしまう可能性があるということを忘れないでください。

医療事故を起こさないよう、血液製剤はしっかりと確認・管理・保存し、副作用や合併症に迅速に対処できるよう、集中的な観察を行いましょう。患者さんの命を守り、より良い治療が行えるよう、まずは輸血に関する不安材料がゼロになるまで知識を深めてください。

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【誤嚥性肺炎の看護計画まとめ】食事、問題目標、口腔ケア、原因予防

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誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、全ての高齢者に起こりうる病気です。誤嚥性肺炎に関する深い知識を習得することは、患者さんの看護はもちろん、アナタのご家族の死のリスクも減らすことができるのです。

観察を怠ることなく予防策を講じれば誤嚥の可能性はかなり低くなるため、より良い看護ができるよう誤嚥性肺炎に関する知識を深めていってください。

 

 

1、誤嚥性肺炎とは

食べ物や飲み物を飲みこむ動作を生理学的に「嚥下(えんげ)」と言い、この動作が正常に働かないことを「嚥下障害」と言います。

食べ物や唾液というのは、口腔から咽頭と食道を経て胃へ送り込まれます。嚥下が正常に行われない場合や、何らかの理由により、食べ物などが誤って喉頭と気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言い、気管を通って肺に入った異物に含まれる細菌が原因となって起こる肺炎のことを「誤嚥性肺炎」と呼びます。

 

 

1-1、誤嚥性肺炎の死亡率

日本人の死亡原因として、1位の癌、2位の心疾患、3位の血管疾患に続き、4位に肺炎があります。肺炎による死亡者の96.5%が65歳以上だと言われており、高齢者であればあるほど死亡確率が高くなります。

肺炎は様々な原因により発症しますが、誤嚥が原因で起こる肺炎は全体の約70%を占めており、年齢と共に嚥下機能が低下するため、高齢者全てに起こりうる病気なのです。

 

 

1-2、誤嚥性肺炎が起こりうる病気

誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下により起こるため、嚥下機能の低下がみられる病気を発症することで誤嚥を起こし肺炎になる可能性が高くなります。

嚥下機能低下がみられる病気としては、脳梗塞や口内出血などの脳血管障害、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆症、その他にも口腔・咽頭・喉頭の疾患や食道疾患も挙げられます。

 

 

2、誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎は飲食物を口腔から摂り入れた際、嚥下機能の低下により誤って気道を通って肺に入ることで肺の内部で炎症を起こすことが第一原因となっていますが、実はそれ以外にも誤嚥性肺炎になり得る原因が存在しています。

 

・細菌を含む分泌物の誤嚥

口腔内には「嫌気性菌」と呼ばれる細菌が、歯や舌の表面に住み着いています。嫌気性菌を含んだ唾液などの分泌物を誤嚥し、肺に入ることで炎症を起こします。虫歯や歯周病がある人ほど嫌気性菌の数が多くなるため、誤嚥性肺炎の予防として、口腔内を清潔に保つことが挙げられます。

 

・胃食道逆流による内容物の誤嚥

胃内容物が逆流を起こし誤嚥することでも肺炎になります。胃内容物には酸や消化液が含まれていることから、粘膜を損傷させやすいため、ひとたび肺に到達すると瞬く間に炎症を起こします。主に夜間睡眠中に多く、高齢者が誤嚥性肺炎を発症する多くの原因が睡眠中による胃内容物の逆流によるものです。

 

 

2-1、高齢者が誤嚥しやすい理由

誤嚥の可能性は高齢になるほど高くなります。その理由は加齢に伴う嚥下機能または呼吸機能の低下によるもので、主に以下のような事項が関係しています。

 

・歯牙の欠損

・嚥下反射の遅延

・嚥下関連筋群の筋力低下

・咳反射の低下

・食道入口部開大時間の短縮

・喉頭位置の低下(C7相当まで低下)

・唾液分泌量の減少

 

 

2-2、注意が必要な人とは?

高齢者になれば誰もが発症する可能性のある誤嚥性肺炎ですが、20代・30代・40代の方でも十分起こる可能性があり、現に若年層の発症率は年々高くなっています。特に次のような方は注意が必要です。

 

・泥酔して寝ることが多い

泥酔した状態で寝ると、胃内容物が逆流を起こしやすくなります。また、肺炎に限らず、逆流によりや各器官に胃内容物が詰まることで窒息により死に至るケースもあります。

 

・強い睡眠薬を常用している

睡眠薬の多くは嚥下反射を低下させる作用を持っています。睡眠に対する効能が強ければ強いほど嚥下反射が低下する傾向にあるため、強い睡眠薬を常用している人は注意が必要です。

 

・虫歯や歯周病がある

口腔内の細菌が原因で誤嚥性肺炎を発症することがあり、細菌の数が多ければ多いほど発症確率は高くなります。虫歯や歯周病は細菌が繁殖した状態であるため、早期治療が得策です。

 

・急いで飲食する

口腔内から飲食物を素早く摂取すると、誤嚥する確率が高くなります。また、一度の摂取が多いと、むせることにより胃内容物または摂取中の食べ物が逆流を起こすことがあります。

 

・椅子にもたれて食事をする

前かがみの体勢で食事をするのではなく、椅子などにもたれた状態で食事をする場合、頭が上向きになり飲みこみにくい上に、気道の蓋が閉まる前に食べ物が滑り落ちてしまうため、誤嚥の危険性があります。

 

・食後すぐに横になる

食後すぐに臥床(床について寝ること)すると、胃内容物が逆流を起こすことがあります。中でも仰向けの場合に起こりやすいと言えます。

 

 

3、誤嚥性肺炎の診断基準

誤嚥性肺炎には臨床診断基準をもって発症の有無を特定します。その診断基準は以下の通りです。

 

≪肺炎の診断基準≫

①胸部X線または胸部CT上で肺胞浸潤影を認める。

②37.5℃以上の発熱、CRP異常高値、末梢血白血球数9000/µL以上の増加、喀痰など気道症状のいずれか2つ以上存在する。

 

≪確実例≫

①明らかな誤嚥が直接確認され(食物・吐物等)、それに引き続き肺炎を発症した例。

②肺炎例で気道より誤嚥内容が吸引などで確認された例。

 

≪ほぼ確実例≫

①臨床的に飲食に伴って、むせなどの嚥下機能障害を反復して認め、肺炎の診断基準①および②を満たす例。

②確実例の①または②に該当し、肺炎診断基準のいずれか一方を満たす例。

 

≪疑い例≫

①臨床的に誤嚥や嚥下機能障害の可能性を持つ、以下a~hの基礎疾患または疾患を有し、肺炎診断基準のいずれか一方を満たす事例

 

a.陳急性ないし急性の脳血管障害

b.嚥下障害をきたしうる変性脳疾患または神経筋疾患

c.意識障害や高度の認知症

d.嘔吐や逆流性食道炎をきたしうる消化器疾患(胃切除を含む)

e.口腔咽頭、縦隔腫瘍およびその術後、気道食道ろう

f.気管切開

g.経鼻管による経管栄養

h.その他の嚥下障害をきたす疾患

 

 

4、誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎には大きく分けて下記の5つの症状があります。

 

・38℃以上の高熱がでる

・激しい咳と膿性痰が出る

・呼吸が苦しい

・肺雑音がある

・チアノーゼがでる

 

また高齢者の場合は普段の生活で、肺炎とは無関係のような次の症状が見られる場合でも、肺炎の可能性があります。

 

・元気がない

・ぼーっとしていることが多い

・食事時間が長くなる

・食後に疲れてぐったりする

・口の中に食べ物をため込んで飲み込まない

・失禁するようになった

・体重が徐々に減ってきた

・夜間に咳込む

 

 

5、誤嚥性肺炎の予防・治療法

誤嚥性肺炎を予防するためには、「嚥下反射の改善」「口腔の清潔保持」「胃液の逆流防止」の3つの対策があります。これらは、日々の生活の中で少し気をつけることで多大な効果があり、特にお年寄りの方に有効な手段です。

また、治療法としては「薬物治療」がありますが、効率的に治療していくためには3つの予防策との同時進行が不可欠です。以下にそれぞれの予防法・治療法を詳しく紹介しますので、しっかりお読みください。

 

 

5-1、嚥下反射を向上させる

誤嚥性肺炎の大元となる原因が、食べ物を上手く飲みこめない、つまり嚥下反射が悪い場合です。嚥下がうまくいかない状態を「嚥下障害」と言い、加齢に伴い嚥下反射が悪くなるため、高齢者には避けては通れないものですが、食事姿勢や食事内容の改善を図ることで嚥下反射が良くなり、誤嚥性肺炎を発症する可能性が大幅に低くなります。

 

①食事姿勢に配慮する

口から物を食べる際、気道が広がっている状態が望ましいため、少し前かがみになって食事を摂ることが大切です。椅子にもたれかかった状態で飲食すると、気道の蓋が閉まる前に飲食物が滑り落ちて誤嚥する危険性があります。正常に座るのが難しい場合には、腰元にクッションを置くなど工夫しましょう。

 

②食事内容に配慮する

高齢になると食事がスムーズにいかないことにより誤嚥が起こることがありますが、これは大まかに3つのプロセスの内のどれかが原因となっています。そのプロセスというのは「咀「食塊形「嚥下」から構成されており、まずはどのプロセスが原因であるか突き止めた上で、それに応じた対処をしていかなければなりません。

しかしながら、全てのプロセスはスムーズに食事するために非常に重要であるため、特定が難しい場合には3つのプロセス全てに配慮して食事の改善を図ってください。

 

・咀嚼に問題がある場合

咀嚼(そしゃく)というのは物を噛砕く動作のことを指し、顎の力が弱くなると咀嚼力が低下します。咀嚼力が低下すると唾液の分泌量も低下し、さらに舌の運動機能も低下するため、物を飲む込む力が減退し誤嚥する可能性が高まります。それゆえ、食べやすいように細かく刻んだり、柔らかくするという配慮が大切です。

 

・食塊形成に問題がある場合

食塊形成とは、口腔内において噛んだ物を再びまとめる動作のことを指します。舌というのは物を飲み込む前に塊にし、それを歯側から食道側へ押し出す働きがあります。この機能が低下すると、咀嚼によってバラバラになった物が広範囲に食道を通るため、むせやすくなり、むせた際に胃内容物が逆流し肺に入ることがあります。食塊形成を助ける方法としては、一口大に切る、軟らかい状態にする、とろみをつけるなどが有効です。

 

・嚥下機能に問題がある場合

咀嚼や食塊形成も嚥下機能と深い関わりがありますが、身体自体が弱っている場合や脳卒中などの後遺症がある場合には、飲みこむ力そのものが低下し、特に水分摂取が上手くいかず、すぐにむせてしまいます。水分は気道に入りやすく、また、むせることによる胃内要物の逆流により誤嚥性肺炎を発症しやすいため、お茶などの飲み物、味噌汁、スープ類はとろみをつけてあげましょう。

また、嚥下機能を向上させる訓練として“嚥下体操”が効果的であるため、可能であれば下図の体操を実施しましょう。

誤嚥性肺炎

(放送大学教材 リハビリテーション 放送大学教育振興会、2007年から引用)

 

 

5-2、口腔の清潔を保つ

次に、口腔内の細菌が原因で誤嚥時に肺炎を起こすこともあるため、口腔内を清潔に保つことも非常に大切です。下図にあるように、口腔ケア実施の有無で10%以上も誤嚥性肺炎の発症率を下げることができます。

誤嚥性肺炎

(要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究、日本歯科医師学会会報誌2001 より引用)

 

口腔は肺や胃腸の入り口であり、適度な湿度と温度が保たれているため、細菌にとって非常に居心地がよい場所です。歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖し、細菌の数が多ければ多いほど、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

専門的な口腔ケアを実施するのが最適ですが、専門的な口腔ケアを受けなくても歯磨きや義歯の手入れをしっかりすることで雑菌の繁殖が大幅に抑えられるため、出来る範囲で口腔ケアを実施するようにしてください。

 

 

5-3、胃液の逆流を防ぐ

食後すぐに横にならず、最低30分~1時間ほど座って身体を起こしているだけで逆流の多くは予防することができます。また、ゲップ(げっぷ)を抑えることでも胃液・胃内要物の逆流を防ぐことができます。ゲップというのは空気を飲み込み、胃内に溜まった空気が気道へ逆流し口腔から体外へ排出されます。

ゲップは生理現象であるため完全に防ぐことはできませんが、急いで啜り込むように食べると、空気が食べ物と一緒に飲み込まれやすくなるため、急いで食べる傾向にある人はゆっくりと食事することで当該のゲップを防ぐことが出来ます。

 

 

5-4、薬物を用いる

薬物治療には2種類あり、誤嚥性肺炎を発症する可能性のある患者さんには「嚥下機能を向上させる薬」を、肺炎が発症している患者さんには「肺炎を治療する薬」が用いられます。

 

①嚥下機能を向上させる薬

嚥下と咳の反射を司っている神経伝達物質はドパミンとサブスタンスPで、これらの物質を増やす、あるいは分解を抑制する成分により嚥下機能を向上させ誤嚥を予防します。

 

・ACE阻害剤

ACE阻害剤は降圧剤であるため主に高血圧の患者に用いられますが、サブスタンスPの分解を阻害する作用も持っているため、誤嚥性肺炎の防止にも有効です。主に、タナトリル錠(5mg)が使用されます。

 

・シロスタゾール

抗血小板薬であるシロスタゾールは、血管拡張作用を持ち、ドパミンの合成を維持します。また、サブスタンスPの産生も維持されるため、誤嚥性肺炎の予防に効果があります。

 

・葉酸

葉酸は神経伝達物質の合成に重要な役割を果たすことから、嚥下・咳反射の向上を促します。葉酸は緑黄色野菜などに多く含まれており、高齢者では不足がちになるため、栄養管理の上でも葉酸は非常に大切です。積極的に緑黄色野菜を摂取しましょう。

 

・漢方薬

漢方薬の1つである半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、嚥下反射時間を短縮する効果があります。また、神経障害の改善にも効果を示しているため、やパニック、不眠症などにも効果的です。

 

②肺炎を治療する薬

誤嚥性肺炎を治療する場合には、患者の病態に応じて慎重に実施しなければいけません。経口摂取ができる場合や点滴で治療する場合、グラム陰性桿菌が原因である場合など、それぞれの状況に応じて各種抗菌薬が選択されます。

 

・経口摂取ができる場合

経口摂取が可能な場合には、クリンダマイシン(ダラシン®)またはクラブラン/アモキシシリン(オーグメンチン®)などにAMPC(サワシリン®)を併用して治療を行います。

 

・点滴で治療を行う場合

点滴で治療を開始する場合には、スルバクタム/アンピシリン(ユナシン®)またはクリンダマイシン(ダラシン)を用いて治療を行います。

 

・グラム陰性桿菌が原因の場合

緑膿菌などのグラム陰性桿菌による肺炎が考慮される場合には、タゾバクタム/ピペラシリン(ゾシン®)またはセフェピム(マキシピーム®)とメトロニダゾール(フラジール®)を併用。あるいはセフェピムとクリンダマイシンを用いて治療を行います。

 

 

6、誤嚥性肺炎の看護計画・目標

誤嚥性肺炎を発症する可能性がある患者さん、または既に発症している患者さんに対する看護計画・目標で第一となるのが“予防”です。「4、誤嚥性肺炎の予防・治療法」で述べたように、まずは初発・再発を予防することが最も大切です。

①嚥下反射の向上、②口腔清潔保持、③胃液の逆流防止、を主体とし、「2-2、注意が必要な人とは?」で挙げた例に当てはまる場合は、それらを考慮して看護していきましょう。

なお、患者さんの誤嚥性肺炎の発症を未然に防ぐためには、在宅におけるご家族の介護が非常に重要となります。入院時だけでなく、患者さんがより良い生活ができるよう、ご家族に予防策をしっかりと指導していきましょう。

 

 

7、誤嚥性肺炎の観察ポイント

最後に、誤嚥性肺炎の看護における観察のポイントをご説明します。誤嚥を起こす可能性が高いのは“食事時”であるため、ここでは主に「食事前」「食事中」「食事後」に分けて、重要となる観察項目を紹介します。これらは「6、誤嚥性肺炎の看護計画・目標」に通じるため、重複事項がありますが、どれも非常に大切であるため、各セクターにおける観察ポイントをしっかりと熟知しておいてください。

 

 

7-1、食事前の観察ポイント

 

・覚醒状況の観察

患者さん、特に高齢者の方は覚醒せず朦朧とした状態では、嚥下反応や咳反応が鈍り、誤嚥する可能性が高くなります。眠気がある中、食事するのは危険であるため、完全に覚醒しているのを確認してから食事を摂らせてください。

 

・姿勢の観察

座位が上手く保てない患者さんは、前後左右にゆらゆらと揺れ、姿勢を保つために肩や首に余計な力が入っています。この状況下では嚥下機能が低下するため、安定した座位で食事が摂れているか観察してください。

 

・口腔内の観察

口腔内が汚染していると細菌量が増えるため誤嚥時に肺炎を起こす確率が高くなります。また、乾燥していると舌や頬、唇が動作しにくいため誤嚥の可能性が高くなります。

 

 

7-2、食事中の観察ポイント

 

・声質の観察

うがい時のようなゴロゴロという声に変化するのは、喉に飲食物が溜まっている証拠です。この状態で息を吸うと喉に溜まった飲食物が気道に流れこみ誤嚥します。水分が主な原因であるため、とろみをつける対応が必要です。

 

・鼻水の有無の観察

喉と鼻の間の閉まりが悪いと、嚥下圧が鼻に 漏れて鼻へ逆流し、鼻水となって出てきます。この鼻水が気管に入ることがあるため、水分にとろみをつけてあげましょう。

 

・食事時間の観察

食事時間が短い場合、いわゆる早食い傾向にある場合、窒息や誤嚥の危険があります。また、食事時間が長い場合には、味や風味が損なわれると共に、姿勢の維持が難しくなるため、同じく誤嚥の危険があります。よって、患者さんに合った適度な食事時間を見極めることが大切です。

 

・むせの観察

むせが嚥下前、嚥下中、嚥下後のいつ出 現するのかを観察します。また、嚥下反射がしっかりと起こっているか、喉仏が上下する動きをよく観察してください。

 

①嚥下反射が起こる前にむせる場合

口の中で食べ物や飲み物を保持できないと起こります。水分にとろみをつけて誤嚥を予防してください。

 

②嚥下反射の最中にむせる場合

嚥下の動きが不十分で喉頭蓋という気道の蓋が閉まらず、飲食物が隙間から気道に流入した場合に起こります。嚥下機能を向上させることで誤嚥を予防することができます。

 

③嚥下後にむせる場合

嚥下の力が弱い場合、息を吸った時に飲みこみきれなかった飲食物が気道に流入し、むせが起こります。交互嚥下を行う、咳をさせて喀出させる、まとまりやすい食形態を選択するなどの工夫が必要です。

 

 

7-3、食後の観察ポイント

 

・口腔内の観察

食後には口腔内に食べカスが残る場合が多く、残った状態が続くと細菌が繁殖し、誤嚥時の肺炎のリスクが高まります。それゆえ、食後には入念な口腔ケアが必要になります。

 

・逆流の有無の観察

ゲップ時の胃液の逆流、咳き上げなどの少量の嘔吐などがないか観察します。胃ろうなどの経管栄養を実施している場合でも胃内要物の逆流は起こるため、食後2時間、最低でも30分~1時間は座位を保つようにしましょう。座位が無理な場合には臥床時にヘッドアップさせた状態で安静な体勢を保つようにしましょう。

 

 

まとめ

高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥によるものです。特に認知症などの精神疾患を患っている方は誤嚥のリスクが高いと言えます。それゆえ、看護師は的確かつ効率的な看護ケアが不可欠なのです。

患者さんの誤嚥の危険性を最小限に抑え、より良い生活を支援できるよう、誤嚥性肺炎に関する知識を深めて最大限の努力をもって看護ケアを行いましょう。患者さんによって状態は様々であるため、しっかりと観察を行い、少しでも誤嚥の可能性がある場合には早急に対処できるよう努めていってください。

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【透析の看護計画まとめ】血液/腹膜、研究、患者、観察、認定看護師

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透析

透析に用いられるシャントやカテーテルは、患者さんの命を繋ぐ非常に大切なものです。また、事故や合併症のリスクが高いため、看護師は入念かつ正確な観察が要求されます。

これから透析科で働こうと考えている看護学生転職を考えてる看護師の方は、患者さんにより良い看護を提供できるよう、透析に関する知識を深めていってください。

 

 

1、透析とは

透析とは、腎臓疾患の影響により腎臓の働きが著しく低下し、体内の余分な水分や老廃物などを体外に排出することが出来ない患者さんに行う治療法です。

腎臓は、背中側の腰の高さに左右1個ずつある臓器で、血液中の老廃物をろ過して尿をつくる「排水処理場」としての働きを持ちます。心臓が1回の拍動で送り出す血液の4分の1が腎臓に送りこまれ、約150~180リットルもの尿のもと(原尿)が作られ、ろ過が繰り返された後、最終的に約1.5リットルまで減って尿として排出されます。

この機能が正常に働かない病気を「腎不全」と言い、腎臓の働きを外部から助ける療法が「透析」なのです。

 

なお、透析には、血液を体内から取り出し、血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化された血液を体内に戻す「血液透析」と、お腹の中に透析液を入れ、体内で血液を浄化する「腹膜透析」の2種類があります。

 

 

1-1、血液透析

血液透析では、ダイアライザーと呼ばれる透析器を用い、血液の浄化を行います。血液を体外に取り出すためには、腕の動脈と静脈を繋ぎ合わせる(シャント)手術が必要になります。なお、血液透析は1回あたり約4~5時間の治療時間を要し、週に2~3回ほどの頻度で行われます。

 

 

1-2、腹膜透析

腹膜透析は、自分の身体の腹膜を透析膜として使用し、カテーテルを通して透析液を入れ、血液を浄化する治療法です。腹膜透析にはAPD(自動腹膜透析)」CAPD(連続携行式腹膜透析)」の2種類があります。

 

・CAPD(連続携行式腹膜透析)

CAPDの透析液のバック交換は6~8時間毎に行い、1日4回30分程度(朝、昼、夕方、寝る前)行います。交換の時にバックとカテーテルを繋げて血液の浄化を行います。カテーテルを腹帯にしまうことができるため、通常の生活を送ることができます。

 

・APD(自動腹膜透析)

APDは、1日に1回、就寝中に自動腹膜透析装置を用いて腹膜透析を行います。就寝時のみの透析法であるため、時間的拘束や負担が少ないものの、事故の発生率はCAPDを上回ります。

 

 

1-3、血液透析・腹膜透析の比較

上で紹介したように、透析には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。患者さんの病態や生活環境など、さまざまな点を考慮して、どちらか1つの療法を選択します。どちらもメリット・デメリットがありますが、管理上、安全であるという点で、現在の日本では96%が「血液透析」が採用されています。

 

  血液透析(HD 腹膜透析(CAPD
治療場所 透析医療機関 自宅・会社など
治療する人 医療スタッフ 本人や家族
通院回数 週3回程度 月1~2回程度
治療にかかる時間 1回4~5時間 約30分/回、4~5回/日(APDは就寝時に8~10時間程度)
導入前の準備 シャント増設手術 カテーテルの埋め込み手術
尿量(残存腎機能) 短時間で減少 比較的長く維持される
食事制限 塩/水、カリウム、リン、たんぱく質 塩/水、リン
日常生活 時間的拘束が多い 時間的拘束が少ない
旅行・出張 長期の場合は 透析施設の予約が必要 薬剤等があれば、旅行可能
入浴 透析のない日に入浴 お腹のカテーテルをカバー するなど多少の注意が必要
注意事項 シャント部の感染 カテーテル周囲や 腹腔内の感染

 

 

≪血液透析のメリット≫

・余分な水分や老廃物を確実に濾過・排出できる

・医療スタッフによる確実な管理のもと行われる

・歴史的裏付けにより普及率が圧倒的に高い

 

≪血液透析のデメリット≫

・時間的拘束が長い

・厳重な食事管理、水分制限が必要

・透析に伴い副症状が多い

 

≪腹膜透析のメリット≫

・残存腎機能が保たれやすい

・食事や飲水がある程度自由

・透析に伴う副症状が少ない

・CAPDもAPDも基本的には自宅で行える

・旅行や出張など気軽に遠出できる

 

≪腹膜透析のデメリット≫

・体液量の管理があまり厳格ではない

・自己管理尿力が要求される

・長期の治療ができない可能性がある

 

 

1-4、日本における透析の現状

腎臓の障害にはさまざまな原因がありますが、昨今では高血圧や糖尿病といった生活習慣病の患者数が軒並み増え続けているため、それに伴って透析療法を行う患者数も着実に増え、2012年時点では30万人以上に増えています。これは、国民全体の約400分の1にあたり、高齢者に限ると約100人に1人の割合となっています。

 

≪慢性透析患者数の推移≫

新しい画像

(日本透析医学会統計調査委員会『図説 わが国の慢性透析療法の現況より)

 

 

1-5、透析導入に際する適応基準

腎臓の機能が低下した患者に透析療法が行われますが、どのような状態になると透析が適応となるのか、厚生労働省から基準が提示されています。以下の項目に対する点数の合計が60点以上である場合に透析導入が推奨されています。

 

A:臨床症状

①水の貯留(むくみ・胸に水が溜まる)

②酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)

③消化管の症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)

④心臓の症状(呼吸困難・息切れ・心不全・高血圧)

⑤神経の症状(意識混濁・けいれん・しびれ)

⑥血液の異常(貧血・出血が止まりにくい)

⑦目の症状(目がかすむ)

 

当てはまる項目数 点数
3項目以上 30点
2項目 20点
1項目 10点

 

 

B:腎機能

①【30点】持続的に血清Cr8mg/dl以上(あるいはクレアチニンクリアランス10ml/min以下)

②【20点】血清Cr 5~8mg/dl(Ccr 10~20ml/min未満)

③【10点】血清Cr 3~5mg/dl 未満(Ccr 20~30ml/min未満)

 

血清クレアチニン(mg/dl クレアチニンクリアランス (ml/分) 点数
8以上 10未満 30点
5~8未満 10~20未満 20点
3~5未満 20~30未満 10点

 

 

C:日常生活障害

日常生活における障害 点数
尿毒症状のため起床できない(高度) 30点
日常生活が著しく制限される(中等度) 20点
通勤・通学・家庭内労働が困難(軽度) 10点

 

これらの合計が60点以上である場合に、透析適応となります。

 

 

2、透析の看護

透析療法を実施している患者さんにより良い看護ができるよう、看護師は様々な点に配慮する必要があります。急性腎不全や軽・中度の糖尿病、高血圧の患者さんに対しては短期的な透析療法を行いますが、慢性腎不全の患者さんには永年実施されるため、透析は体の一部、生活の一部として扱わなければなりません。

それゆえ、看護師は透析療法を実施する患者さんに対し、安楽な生活を支援できるよう、観察を怠ることなく、また、事故や様々な危険因子を最小限に抑えるべく指導していく必要があります。

 

当項では、「看護目標」「観察項目」「看護ケア」など、透析の看護に関する重要事項について書いていきますので、看護学生や看護師の方はしっかりとお読みください。

 

 

2-1、透析の看護目標

より良い看護を行うためには、まず看護目標を設定しておかなければいけません。透析を実施する患者さんは、シャントやカテーテルの留置、時間的拘束など、さまざまな要因により大きなストレスがのしかかります。さらに、合併症の危険性や副症状の出現もあるため、それらを予防・軽減することが重要な看護目標となります。

 

①不安や悩みなど精神的苦痛が解消され、より良い社会生活が送れる

②透析治療を受け入れた今後の自分の人生に希望が見いだせる

③合併症による苦痛や不安が軽減され、安楽に透析治療が受けられる

④ 合併症や自己管理の知識を深め予防的行動がとれる

 

 

2-2、透析患者の観察項目

透析を実施する患者さんの観察項目は細かく分けると実にたくさんありますが、事実上すべてを意識的に観察することは困難であるため、ここでは重要となる観察項目(主に血液透析)だけ紹介します。

 

・シャント

シャントの音が「ザーザー」「ゴーゴー」としっかり聞こえない場合や、※スリルが弱い場合にはシャントの狭窄の可能性があるため、すぐに医師に報告してください。また、シャント部の皮膚が赤く腫れていたり熱感がある場合には感染症の疑いがあります。

また、シャントを圧迫したり、傷がつくと出血を起こすことがあります。いずれにせよ、異常があればすぐに医師に報告し対処してください。

 

※スリルとは

シャント部に手を当てた際に伝わる、血液が流れる振動のこと。

 

・バイタルサイン

脈拍、心拍数、呼吸、体温などのバイタルサインはもちろんのこと、特に血圧に配慮しましょう。透析中は、水分除去による血管内容量の低下や急激な体重増加、心機能の低下などにより、血圧が低下します。あくび、倦怠感、頭痛、胸痛、腹痛、動悸などの症状が現れ始めると、低血圧に陥っている可能性が高いと言えます。

なお、透析中における血圧低下の対処としては、まずドライウエイト(基礎体重)の適正値を再チェックし、体重管理を徹底するとともに、生理食塩水などの補液で対処していきます。

 

・一般症状

主に透析開始時に、血管と細胞の間に水分や成分濃度の大きな差が生まれる「不均衡症候群」になることがあります。だるさ、四肢のふるえ、吐き気、嘔吐、意識障害、筋肉の痙攣、中でも頭痛を訴える患者さんは少なくありません。

また、これらの症状は透析中にも生じることが多々あり、身体が透析に慣れていないために起こる場合や、合併症の兆候である場合など様々ですので、注意深く観察し、原因を特定するともに、原因に応じた対処を早急に行ってください。

 

・合併症

透析の合併症は実に多く、「心不全」「血管障害」「高リン血症」「透析アミロイド症」「腎性貧血」「感染症」など様々です。

いずれの病気も必ず前兆といえる症状が発現するため、見逃さないよう注意深い観察を行いましょう。特に、死亡率の高い「心不全」「脳血管障害」「感染症」には注意が必要です。

 

 

2-3、透析中に起こりうる合併症

上述したように、透析を実施している患者さんには多くの合併症のリスクがつきまといます。看護師は、これらの合併症に熟知し、兆候がみられる場合には早急に対処しなければいけません。

 

・心不全

尿量の減少、高血圧の長期化、貧血など、さまざな原因によって起こります。体重・血圧の管理、塩分・リンのコントロールなどにより予防を行います。なお、動悸や息切れ、呼吸困難、浮腫がみられる場合には、心不全になる可能性が高いと言えます。

 

・脳血管障害

脳出血や脳梗塞など、脳の血管に関わる病気の多くは高血圧が原因です。主に、降圧薬の投与や生活習慣の改善をもって予防に努めます。痺れ、ろれつが回らない、手足の運動が不自由になると、脳血管障害を発症する前兆です。

 

・高リン血症

リンが透析で十分に除去されず血液に貯留してしまい動脈硬化を引き起こします。また、高リン血症の影響で、副甲状腺ホルモンが増え、骨がもろくなる「二次性副甲状腺機能亢進症」を発症する可能性があります。リンの摂取を抑える食事療法に加え、リンを便と一緒に排出する薬の服用を持って対処していきます。

 

・透析アミロイド症

体内に蓄積した尿毒素がアミロイドという繊維に変化して骨や関節に付着し、指関節のしびれ・痛み、肩の痛みなどが生じます。新しいダイアライザーで十分に透析を行い、薬剤を用いて治療していきます。

 

・腎性貧血

腎機能の低下により造血ホルモンであるエリスロポエチンが不足することで貧血を起こします。疲労感、倦怠感、食欲不振、動悸・息切れなどの症状が伴う場合には、腎性貧血の可能性が高いと言えます。なお、ヒトエリスロポエチン型製剤を注射し治療を行います。

 

・感染症

栄養不足や尿毒素、他の疾患による免疫力の低下、シャント部の汚染などによって感染症が起こります。予防としては、徹底した食事管理やシャント部の清潔維持はもちろん、免疫力を高めるために精神ストレスの排除なども大切です。なお、治療には抗生剤などの薬物療法を行います。

 

 

2-3、透析の看護ケア

 

・安楽な生活の支援

透析導入により、多くの患者さんは生活の変化や時間的拘束などによりストレスがのしかかります。透析と長く付き合っていく場合が多いため、少しでも早く透析ありきの生活に慣れるよう、精神的なケアと共に、透析の注意点など細かく説明し、安楽な生活を送れるよう援助していきましょう。

 

・徹底した食事管理

透析導入における注意すべき食事は、カリウムやリンを摂りすぎないことです。また、免疫力の低下を防ぐためにバランスの良い食事を心掛けなくてはいけません。病院食によりある程度は栄養管理ができるものの、お見舞い品の摂取で栄養状態が崩れる可能性があるため、食事管理はもちろん、食事制限の必要性も指導しておく必要があります。

 

・透析に伴う苦痛の軽減

透析患者の多くは頭痛や吐き気など副作用症状が現れます。これらが透析によるものであれば、体位の変更や薬剤を用いて苦痛を軽減させます。なお、多くの症状が一度に出現し、重度の場合には合併症の可能性があるため、異常を発見したら早急に対処してください。

 

・合併症の予防

合併症の予防のためには、徹底した食事管理、清潔維持、発現症状の早期発見など、入念な観察や的確な指導が重要となります。

 

・在宅療養に関する指導

腹膜透析の場合は在宅療養が一般的であり、血液透析でも体制が整っていれば可能です。入院から在宅に切り替わる際には、必ず透析における注意点など必要事項をしっかり説明・指導するようにしてください。

 

 

3、透析の認定看護師

透析分野では、日本看護協会が認定している認定看護師資格があります。透析看護におけるエキスパートとして、多くの病院が求めているため、キャリアアップを目指すなら是非とも認定を受けたい資格です。

なお認定看護師になるには、①取得条件のクリア→②教育機関での研修→③認定試験合格、の手順を踏まなければいけません。

 

≪業務内容・実践項目≫

①安全かつ安楽な透析治療の管理

②長期療養生活におけるセルフケア支援および自己決定の支援

 

≪取得・入学における条件≫

保健師助産師、及び看護師のいずれかの免許を保有していること

②実務経験5年以上(うち3年以上は透析看護の経験)

③現在、手術看護部門で勤務していることが望ましい。

 

≪透析看護の教育機関≫

東京都:東京女子医科大学

 

≪認定看護師試験≫

東京女子医科大学での教育過程を終えた後、認定看護師試験を受けることができます。試験内容は経験に基づいた基本的な問題が多いため、そこまで難しくはないものの、教育過程をしっかりと受講しておく必要があります。

 

 

4、人工透析科の仕事内容

人工透析科はルーティーンワーク化するため、仕事内容を覚えてしまえば、スムーズにこなすことができますが、機械操作など専門知識を要します。人工透析科で働く看護師の大まかな仕事内容は以下の通りです。

 

①透析療法に関する説明

まずは、透析の必要性や注意事項、利点・欠点などを患者さんに詳しく説明します。この際、体調に関する質問や体調管理、家族の理解を得るなど、万全の体制で透析を導入できるよう細かく説明・指導を行います。

 

②機械の準備・透析室への誘導

次に、透析を導入するために必要な機械や薬剤を準備し、患者さんを透析室へ案内します。多くの患者さんは導入に対して不安を抱えているため、精神的なフォローも看護師の役割の1つです。

 

③患者さんへの透析導入

穿刺・抜針・止血など、透析導入に関する業務を行います。また、医療機械の操作も必要になり、一般科と大きく異なる点がこれに当たるため、操作法や手順、技術を覚えるために多くの時間を要することになります。

 

④透析中のバイタルチェック

透析を導入した後は、患者さんのバイタルチェックが主となります。血圧や脈拍、呼吸状態など、細やかな観察を行い、合併症を未然に防ぐために努めていきます。

 

⑤患者さんとご家族へのサポート

主な透析管理は医師や看護師の仕事ですが、日常に際する管理は患者さんやそのご家族が行います。食事制限や清潔維持など指導や、精神的なサポートなど、包括的に支援していきます。

 

 

5、人工透析科の給料・年収

一般科の看護師の場合、残業や夜勤、休日出勤などの手当てにより平均年収は約470万に達しますが、人工透析科の場合は、残業や夜勤などが無いため、看護師全体でみる平均年収を下回ります。

首都圏や地方、病院の規模など、様々な要因により給料は変わってきますが、透析科看護師の平均月給は30程度、平均給料は430円程度となっています。

しかしながら、基本的に残業や夜勤がないため、時給換算にすると一般看護師より高く、さらに土日祝が休日であるため、良い労働条件と言えます。

 

残業・夜勤がない場合・・・・年収430

残業・夜勤がある場合・・・・年収450

 

なお、透析科に勤務する看護師の多くは他と比べて年齢層が高いため、新卒の場合はもっと安いということを考慮しておきましょう。

 

 

6、透析科の求人

都市圏や病院の規模に関わらず、透析科の求人は非常に多くあります。人気の病院や給料の高い病院は、会員登録後に見ることができる非公開求人として募集していることが多いため、勤務条件を考慮して求人先を探す場合には会員登録することをお勧めします。

 

≪勤務先選びのポイント≫

募集要項は端的であるため、全ての情報が記載されているわけではありません。それゆえ、勤務を希望する病院の情報を事前に調べた上で、応募・面接の際に疑問に思っていることをしっかり聞くことが大切です。

病院側としても看護師不足だから誰でも良いというわけではなく、真面目に働いてくれる看護師を採用したいと考えています。競争率の高い人気病院の場合は特に、質問を投げかけることで真面目だと認識され、採用率が大幅に上がるため、該当病院に関する情報を集め、分からないことはどんどん質問しましょう。

 

 

まとめ

透析に関する合併症は多く、透析を実施する患者さんのほとんどは免疫力が低下しているため、合併症が発症する可能性が高いと言えます。また、透析を実施する患者さんにとって、シャントやカテーテルは命綱であるため、管理を怠れば容易に死に繋がってしまいます。

透析科はルーティーンワーク化しており、一人の患者さんも長期的な看護を必要とすることから患者さんへの看護意識が薄れてしまうことがありますが、患者さんのより良い生活のために、観察・管理を徹底し、少しでも事故や合併症のリスクを減らすべく、高い意識を持って看護していきましょう。

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【小児看護まとめ】看護技術、計画、専門看護師、学会

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小児看護

小児の看護ケアは非常に難しく、また奥が深いものです。熟練の看護師でも的確かつ効率的にケアを行うのは困難であるため、幾度となく壁にぶちあたる人もいるでしょう。特に看護学生の方は、どのようにケアしていけばいいのか分からないことばかりなのではないでしょうか。

そこで、今回は的確かつ効率的な小児看護ケアを紹介したいと思います。また、スキルアップやキャリアアップを図る上で必要となる情報もあわせて紹介するので、最後までしっかりとお読みください。

 

 

1、小児看護とは

小児というのは0歳の乳児期~16歳前後の思春期のことを指し、幅広い年齢の子供を対象に、病気や怪我などの疾患治療や、健康状態を維持するための予防治療、子供の権利が侵害される虐待の早期発見や防止、親権者に対する育児や養育などのアドバイスなど、患児が健やかに成長していくために援助していくことが、小児看護の役割です。

 

小児看護の特徴

小児看護は0歳~16才前後の子供を対象としているため、家族(保護者)の協力が必要不可欠です。この点において成人看護と大きく異なり、通常の看護スキルだけでなく、子供の心の問題の理解や、家族への指導など、さまざまな点に配慮していかなければいけません。

患児と家族への十分な関わりを持つことが、小児看護の役割であり、健全に成長するために不可欠であるため、負担・苦痛を最小限に抑えるための迅速・的確な観察はもちろん、患児への病気に対する理解の促進や家族の援助も同時に行っていきます。

 

 

1-1、小児看護の目標・計画

小児看護では、「迅速・的確な観察」、「患児への理解促進とQOLの向上」、「子供への家族の援助指導」を3つの事項を目標とし、それに準じた目標を立てていきます。これら3つの事項を十分に把握・実践することで、質の高い小児看護を行うことができます。

 

迅速・的確な観察

小児は生理機能が未熟であり、外界の刺激を受けやすいため、呼吸や脈拍、心拍、血圧、体温といったバイタルサインは変動しやすく、さらに乳児であれば言語機能が未熟なため、訴えが不明確。

それゆえ、看護師は患児の異常を素早く発見し処置しなければいけません。免疫機能が弱い小児は、異常発見が遅れると容易に病状を悪化させてしまうため、迅速かつ的確な観察が必要不可欠です。

 

患児への理解促進とQOLの向上

小児看護で最初にすべきことは、病気に対する患児の理解を促すことです。小児で死亡要因の多くは事故によるものであり、病気に対する理解度が低ければ低いほど事故率が高くなります。それゆえ、まずは病気や入院生活における注意点などを分かりやすく説明し、理解を促すよう試みることが大切です。

また、子供は発達段階において、理解や判断、意思の表現方法が変化していきます。特に3歳~6歳の小児は短期間に急速に成長するため、気持ちの変化を敏感に察し、接し方などにも気をつけていかなければなりません。

これらを包括的に実践していきながら、家族がいない間は一緒に遊んだり、コミュニケーションを図るなど、QOLの向上にも配慮し、健やかに成長できるようサポートしていくことが非常に大切です。

 

子供への家族の援助指導

患児は病気や入院において不安・心配があるため、適切に治療していくためには家族の援助が必要です。法律上、未成年の子供は親権者に服する立場であるため、受ける治療の選択や意思決定、その他の責任は親権者にあります。

それゆえ、小児看護では、親が子供の病気や障害に対して確かな理解を持ち、治療における意思決定をしていくための情報の提供や、不安・心配・恐れなどに対する共感者としてのコミュニケーションなど、患児をサポートするために家族へ適切な指導をすることが大切。

また、在宅療養時のことなど、先を見据えたサポートを効率的に行えるよう、また、子供の健全な成長のために、細かなところまでしっかりと話し合っていく必要があります。

 

 

2、小児看護のポイント

小児看護

小児看護で最も難しいのが患児の成長を援助することです。大人の看護では治療を主体としたケアを行っていきますが、小児の場合は、治療ケアはもちろん、心のケアや健全な成長のための援助も同時進行で行う必要があり、発達段階における心の変化には個人差があるため非常に難しいのです。

小児の看護ケアには各患児によって個人差があるため、熟練の看護師でも一筋縄にはいかないところもありますが、まずは患児が入院に際してどのような不安・恐れを抱えているのかを知ることから始め、入院生活に慣れてくれば、遊びなどを通したコミュニケーションで、健やかに成長できるように支援していきます。

 

2-1、患児の不安・ストレス

入院直後の患児は、親から離れ、不慣れな環境下にいることに対し、大きな不安を抱えています。また、入院に慣れた後も検査や処置、苦痛などにより、ストレスが大きくのしかかります。これらは患児にとって負の要素であるため、看護師はまず患児の不安やストレスを取り除いてあげなければいけません。

 

親・家族との分離不安

入院直後には必ずと言っていいほど分離不安が起こります。親や家族と離れ、慣れない環境下にいるということで不安が募り、周りを拒絶することがあります。これは、「第一期」「第二期」「第三期」に分けられ、特に乳幼児の多くが経験するものです。

 

第一期(入院直後~約1週間)

看護師の声かけに一切反応することなく、ひたすら親や家族を追い求め取り戻そうと、面会時には泣き叫び、しがみついて離しません。

 

第二期(約1週間~1か月)

親や家族と離れて生活する環境に多少慣れたことで、落ち着きを取り戻し、看護師の声かけにも素直に応じます。しかしながら、未だ親や家族を追い求める気持ちは続いている状態で、患児によっては第一期と変わりなく、面会時には泣き叫び、離さないといった行動をとります。

 

第三期(約1か月~)

入院生活に慣れてきたことで、笑顔を取り戻し、自ら他者と話したり遊んだりと、精神が安定します。しかしながら、決別意識が強くなったことで、面会時には親や家族を拒否したり、関心を示さなくなるなど、態度が急変することがあります。

 

不安・ストレスによる行動反応

小児は精神的な不安やストレスを自ら打破する力を持っていないため、さまざまな行動反応を示します。

 

身体症状:発熱、腹痛、食欲減退、脱力感、浅眠

感情の発現:ひたすら泣く

うつ的反応:発声・発語の低下、反応低下、欲求低下

過度の依存:一人で いることを嫌う

拒否的行動:親を含めた全ての大人を拒む

攻撃的行動:つばを吐く、物を投げる、叩く

退行現象:排泄機能の退行

習癖の出現:指しゃぶり、チック

 

不安・ストレスの対処法

不安やストレスを取り除くために必要となるのは“コミュニケーション”です。親や家族と離れ、一人だけでの生活を強いられる患児にとって支えとなるのが看護師。入院後すぐは看護師や医者など大人の言うことを一切聞かない患児もいますが、コミュニケーションを図っていくにつれ、閉ざしていた心が開いていきます。

会話や遊びを通してコミュニケーションを図り、仲良くなれば、自然と入院生活に慣れ、積極的・社交的になるため、入院直後は邪険にされても、どんどんコミュニケーションを図ることが何より大切です。

 

 

2-2、遊びを通したコミュニケーション

患児とコミュニケーションをとる最も良い方法が“遊び”です。一緒に楽しく遊ぶことで、信頼関係が築けるだけでなく、効率的な治療や患児の健全な成長にも貢献します。一緒に遊ぶ場合には、大人の立場から世話をするのではなく、子供の立場に立って自ら楽しむことが、遊びを通すコミュニケーションの上で最も重要なポイントとなります。

 

遊ぶことによる成長効果

子供は遊ぶことで様々なことを覚え、これは健全な成長にとって不可欠な要素となります。具体的には下記のような成長効果が期待できます。

 

①心理的緊張から解放される

②検査・処置によるストレスが緩和される

③治療やリハビリテーションが促進される

機能や運動機能の発達を促す

⑤心が豊かになり情緒が養われる

⑥社会性・自主性が発達する

⑦他児との仲間意識が形成される

⑧創造性が発達し想像力が豊かになる

⑨やる気、集中力、ねばり強さが身につく

 

遊びに際する看護ポイント

看護師は通常業務があるため、多くの時間を患児との遊びに費やすことができません。それゆえ、補佐的な役割で健全な遊びの支援をしていくことが、看護師にとっての小児看護のポイントとなります。以下に挙げる点を考慮しながら、補佐的に支援を行ってください。

 

①他の患児との交流

1人遊びももちろん有効ですが、同室の子供たちが一緒に遊べる環境は非常に大切です。一緒に遊ぶことで、言語能力だけでなく社交性や積極性の向上を図ることができ、何より大きな満足感を得ることができます。用いるおもちゃの選択や、他の患児との遊びへの誘導など、同室の子供たちが互いに楽しく遊べる環境を作ることで、患児は家族や看護師の直接的な援助がなくても充実した入院生活を送ることができます。

 

②遊び道具の提案

小児は同じもので遊び続けると次第に飽きが来て、満足感を得ることができません。また、一人でいる時間を退屈せずに過ごせるよう、各患児が好むおもちゃを家族に提案する他、新たな趣味を見つけられるよう、また既存の趣味を伸ばしていけるよう援助してあげることが大切です。

 

③危険因子の排除

病状によっては危ない行為、控えるべき行為が必ず存在します。看護師にとってその行為が分かっていても小児には分かりません。プレイルーム内であればまだ安心ですが、特に病室にいる間には、行動やおもちゃなど、病状を悪化させる危険因子を取り除かなければいけません。小児の事故は非常に多いため、危険となりうる可能性のある物(事)は、最大限に規制してください。

 

 

3、小児看護の専門看護師

小児看護

小児看護専門看護師は、日本看護協会が認定している専門看護師11分野の中の1つで、指定の教育機関において単位を取得後、認定試験に合格した後に晴れて認定を受けることができます。つまり、高い看護実践能力を有する看護師のみが与えられる資格なのです。

 

小児看護専門看護師の役割

日本看護協会では、専門看護師に6つの役割を求めています。小児看護の分野においては、次のようになります。

実践 小児やその家族、または集団に対して卓越した看護を提供する
相談 看護職や母親など、ケアを行う人にコンサルテーションを行う
調節 円滑にケアができるよう、小児・家族・医療機関・学校間のコーディネーションを行う
倫理調節 小児や母親、家族など、その権利を守るために倫理的問題の解決に努める
教育 小児看護に携わる看護職に対し、スキル向上のための教育・指導を行う
研究 小児看護領域で専門的スキルを向上させるための研究活動を行う

 

 

求められる専門的能力

子どもの成長・発達、健康状態を専門的方法を用い独自に判断できる。

②子どもやその家族の生活状況、セルフケア能力を判断できる。

③子どもやその家族の必要としている看護を高度な技術を用いて実践できる。

④小児看護領域における援助および方略などを開発できる。

⑤他領域との調整を図り、ケアを推進することができる。

⑥この領域において倫理的判断能力を発揮し、相談にのることができる。

⑦小児看護の発展を考え、研究成果を活用する。

 

資格取得に際する条件

①日本の看護師免許を持っていること

②実務経験5年以上(うち小児看護分野3年以上)を有していること

③看護系大学院修士課程修了者で専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得していること

 

日看協が指定する教育機関

都道府県 教育機関名(大学院) 単位数
北海道 札幌医科大学 26
札幌市立大学 26
青森県 青森県立保健大学 26
岩手県 岩手県立大学 26
宮城県 東北大学 38
山形県 山形大学 26
福島県 福島県立医科大学 26
茨城県 茨城県立医療大学 26
栃木県 自治医科大学 38
埼玉県 埼玉県立大学 26
千葉県 千葉大学 26
順天堂大学 26
東京都 聖路加国際大学 38
東京医科歯科大学 26
東京女子医科大学 38
日本赤十字看護大学 38
首都大学東京 26
神奈川県 北里大学 38
長野県 長野県看護大学 26
石川県 石川県立看護大学 38
岐阜県 岐阜県立看護大学 26
静岡県 聖隷クリストファー大学 26
愛知県 名古屋大学 26
藤田保健衛生大学 26
日本赤十字豊田看護大学 26
大阪府 大阪府立大学 38
大阪医科大学 38
兵庫県 兵庫県立大学 38
神戸市看護大学 38
広島県 日本赤十字広島看護大学 26
高知県 高知県立大学 38
福岡県 久留米大学 38
沖縄県 沖縄県立看護大学 38

 

 

認定審査・試験

小児看護専門看護師の認定を受けるためには、上記の各教育機関にて単位を取得後に、第一次審査である書類審査、第二次審査である筆記試験に合格しなければいけません。

 

第一次審査(書類審査)

7月中旬の10日間に、WEB上で申請を行います。そして、大学院の履修単位や勤務証明書、推薦書など必要書類を7月下旬~9月頃までに日看協に提出し、規定の教育を受けているか、経験を有しているか審査が行われます。

 

第二次審査(筆記試験)

書類審査が通ると、10月の後半もしくは11月初めに筆記試験が行われます。筆記試験は、事例問題100点、総合問題100点から成る計200点満点のうち7割以上の正解率であれば合格になり、認定を受けることができます。

 

なお、第一次・第二次ともに審査日は各年によって異なるため、詳しくは日看協の「審査に関するご案内 専門看護師」で確認してください。

 

 

4、日本小児看護学会

日本小児看護学会は、小児看護に関する「実践」「教育」「研究」の発展と向上に努め、それらを通して子供の健康増進に寄与することを目的として活動している団体です。「実践者」「教育者」「研究者」から構成される会員が、小児看護の問題の改善に取り組み、その知識を社会に発信し、小児看護分野全体における貢献を果たしているため、小児看護分野において高みを目指したい、自らが発信者となって貢献したいという方は、ぜひ入会しましょう。

 

事業活動

①学術集会の開催

②学会誌等の発行

③研究活動の推進

④地方会開催による地域貢献活動

⑤小児看護に関する実践、研究及び教育についての情報交換

⑥その他、本法人の目的達成に必要な事業

 

学術集会

日本小児看護学会では、毎年7月に、大規模な学術集会が行われます。講演、エキスパートパネル、テーマセッション、セミナーなど、小児看護に関して様々な知識を得ることができます。演者は会員の中から選出され、参加は誰でも可能であるため、日本小児看護学会に興味がある方は、一度参加されてみてはいかがでしょうか。

 

入会方法

日本小児看護学会の会員になるためには、ある一定の条件をクリアしなければいけません。小児看護分野において、突飛した知識・経験を有していなければ会員になることができないため、少なからずハードルは高いと言えます。

①小児看護を実践・研究・教育している方で、原著、調査・実践報告、著書、学位論文、学会発表、学術雑誌等掲載論文、院内研究発表、事例報告などの業績が1つ以上ある方。

②会員2名の推薦を得た方。

 

 

5、小児看護に関する書籍

ここまで小児看護に関して様々な事項を紹介してきましたが、より詳しい知識を得るためには、書籍を用いるのが効果的です。特に看護技術においては書籍を用いることで早く修得できるため、小児看護に不安があるという方は、ぜひ活用してください。以下に、お勧めの書籍をご紹介します。

 

小児看護:総合

ナースのミカタ

ナースのミカタ 小児看護: 知っておきたい53の疾患

 

発達段階からみた 小児看護過程+病態関連図

発達段階からみた 小児看護過程+病態関連図 第2版

 

 

小児看護;技術

やさしくわかる小児看護技術

やさしくわかる小児看護技術 第2版

 

写真でわかる小児看護技術

写真でわかる小児看護技術 改訂第3版

 

 

小児看護:学生用

小児看護実習ガイド

小児看護実習ガイド

 

看護師・看護学生のためのなぜ?どうして?

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小児看護:論文・学術誌

日本小児看護学会誌

 

 

 

まとめ

子供の心の変化を敏感に察知すると共に、健全に成長できる環境を整え、家族間の意義のある交流を支援することができれば、適切かつ効率的な小児看護ケアを行うことができます。小児看護は非常に難しく奥が深い領域ですが、人の役に立ちたいという想いがあれば、誰でも質の高いケアができます。

小児看護に関して不安があっても、常にどのように対処・支援していけば良いのか考えることで、必然とスキルアップしていくため、患児の健全な成長のために日々精進していきましょう。

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【蜂窩織炎の看護まとめ】看護計画、症状、原因、抗生剤、診断

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蜂窩織炎

蜂窩織炎は誰にでも起こりうる一般的な感染症であり、多くの場合、抗生物質を用いた安静治療によって完治するため、看護においては軽視しがちです。

しかしながら、合併症の併発率が高く、バイタルサインが激しく変動する場合もあるため、看護師は蜂窩織炎を発症している患者に対して、適切な看護ケアを行っていかなければいけません。

蜂窩織炎は非常に奥が深い病気であるため、適切な看護ができるよう、当サイトに記載の各事項をしっかりと読み、蜂窩織炎に関する知識を深めていってください。特に臨床経験がない、または少ない方(看護学生など)は、最後までしっかりとお読みください。

 

 

1、蜂窩織炎とは

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、傷口などから細菌が入り込み、皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細胞感染症であり、蜂巣炎(ほうそうえん)またはフレグモーネと呼ばれることもあります。

細胞の周りにある細胞間質を広い範囲に融解しながら細胞そのものを壊死させるため、重度化すると生命に危険をもたらすことがあります。

多くの場合、四肢に発症し、うち9割は膝下に発症しますが、顔や背中、手足の指の先端、口内にも発症することもあり、部位別に異なる名称がつけられています。

 

手足の先端:ひょう疽(ひょうそ)

口内:口底蜂窩織炎(こうていほうかしきえん)

眼の周り:眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)

表皮全般:伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)

 

なお、蜂窩織炎は発症部位によって様々な固有名称が与えられているため、以下に紹介しておきます。

 

該当部位 名称
手指・足指 ひょう疽、化膿性爪囲炎、手指ひょう疽、爪囲炎、爪下膿瘍、爪床炎、趾ひょう疽
四肢のその他の部位 下肢蜂巣炎、下腿蜂巣炎、肩蜂巣炎、股関節部蜂巣炎、手蜂巣炎、上腕蜂巣炎、前腕蜂巣炎、足蜂巣炎、腋窩蜂巣炎、膝部蜂巣炎、足関節部蜂巣炎、足背蜂巣炎、大腿部蜂巣炎、肘部蜂巣炎、手関節部蜂巣炎
顔面 顔面蜂巣炎、下顎部蜂巣炎、頬部蜂巣炎
体幹 会陰部蜂巣炎、胸壁蜂巣炎、体幹蜂巣炎、殿部蜂巣炎、背部蜂巣炎、腹壁蜂巣炎、臍部蜂巣炎、鼡径部蜂巣炎

 

 

1-1、他人に感染するのか

蜂窩織炎は皮膚の深いところに発症し、細菌による炎症性の病気であるため、他人に感染することはありません。しかしながら、蜂窩織炎は水虫の延長線上で発症することがあるため、水虫が原因であれば、水虫自体が感染することはあります。

また、蜂窩織炎は細菌が原因となっているため、感染の可能性は限りなく0ですが、衛生面においては、気を使う必要があります。

なお、蜂窩織炎の1つである「丹毒」は、通常の蜂窩織炎よりも皮下の浅いところで炎症を起こしますが、これも同様に他人に伝染することはありません。

 

 

1-2、合併症

蜂窩織炎にはさまざまな合併症が存在します。これらの多くは蜂窩織炎の症状が進行し、重症化することで併発し、時には死に至ることもあるため、重症化させないために早期治療が不可欠です。以下に蜂窩織炎の代表的な合併症を紹介します。

 

敗血症、菌血症、敗血症性ショック

髄膜炎、筋膜炎

リンパ管炎、リンパ節炎

皮膚の膿瘍

海綿静脈洞血栓症

(眼窩蜂窩織炎のみ)

頭蓋内続発症

(眼窩蜂窩織炎のみ)

 

これらの合併症は、蜂窩織炎の重症化に伴い併発しますが、軽度・中度においても併発のリスクはあるため、バイタルサインや治療経過をしっかりと観察し、早期発見・早期治療していく必要があります。

 

 

1-3、再発の可能性

蜂窩織炎は細菌が皮下深くに住み着いて繁殖を繰り返し、炎症を起こしているため、完治しなければ際限なく発症します。

また、完治した後でも、傷などからは容易に細菌が入り込むため、日常における衛生管理に問題がある場合にも繰り返し再発します。

特に免疫力が低下している時には容易に発症するため、怪我や虫刺されなど傷を防ぐこと、常に清潔状態を保つことが大切です。

 

 

2、蜂窩織炎の症状

蜂窩織炎を発症すると様々な症状が出現しますが、これは人によって、また症状の進行具合によって異なります。一般的には以下に挙げるような症状が出現します。

 

部位症状 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫
全身症状 発熱、寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、低血圧、錯乱

 

これらの症状、またはその他の症状が強く発現し、なおかつ細菌による感染が拡大すると、「敗血症」「髄膜炎」「筋膜炎」「リンパ管炎」「リンパ節炎」などの合併症の併発を疑います。

 

 

3、蜂窩織炎の診断

蜂窩織炎の診断は基本的に所見によって行われます。

所見では、患部の温度(熱い)、色調(赤色)、状態(オレンジの皮様)の他、リンパ節腫脹などから判断します。皮膚や創傷から培養を行っても原因菌を特定できることは稀であるため、培養は通常、適応になりません。

それゆえ、鑑別が難しい場合には、血液検査をもって、白血球数やCRP(炎症検査項目)で鑑別します。白血球が増え、CRPが上昇していれば蜂窩織炎と診断し、そうでない場合には、他の感染症を疑います。

 

なお、蜂窩織炎と似た症状を持つ壊死性筋膜炎は、致死率が高いことから、確実に鑑別しなければなりません。しかしながら、初期段階においては特に、蜂窩織炎と壊死性筋膜炎が難しいのが現状であるため、細部までしっかりと対照鑑別し、誤診を防がなければいけません。以下に一般的な鑑別基準を紹介しておきます。

 

  蜂窩織炎 壊死性筋膜
全身症状 寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、血圧低下、錯乱 寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、血圧低下、錯乱、激しい筋肉痛・関節痛
患部症状 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫、紫斑、水庖、血庖、壊死
発熱 38~39℃ 39℃~
患部の痛度 中度の痛み 激しい痛み
患部の色調 オレンジ、赤 茶、黒

 

壊死性筋膜炎は蜂窩織炎とほぼ同様の症状を示し、痛みなどは比較が非常に困難であることから、最終的には患部の色調をもって鑑別します。患部が茶色または黒色(壊死状態)に変化すれば、壊死性筋膜炎を疑い、同病の治療を優先的に行っていきます。

 

 

4、蜂窩織炎の原因

蜂窩織炎は、傷口から黄色ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌が入り込むことで起こる「自然原因」と、乳がんや子宮頸がんなどの術後に発現しやすいリンパ浮腫による「病的原因」の2つが主な原因となっています。

 

自然原因

やけど、外傷(刺し傷、ひっかき傷など)、人咬傷、犬・猫咬傷、虫刺され、皮膚炎など、傷口から細菌が侵入し発症します。傷からの細菌侵入のみならず、汚染水により、毛穴や汗腺経路で細菌が侵入することがあり、この場合には免疫力の低下している高齢者に発現傾向があります。

 

病的原因

乳がん、子宮頸がん、子宮体がんなど術後におけるリンパ浮腫。または、日頃から”むくみ”がみられる人は、リンパの流れが悪く、細菌・ウイルスに対する防衛機能低下により、蜂窩織炎を引き起こす可能性があります。

また、脂肪吸引、薬物の皮下注射によっても発症することがあり、さらに子どもの場合はインフルエンザ菌、糖尿病患者の場合には緑膿菌などによっても引き起こされる場合があります。

 

 

5、蜂窩織炎の治療

蜂窩織炎の治療は抗生剤を用いて行い、通常は1~2週間の継続投与を行います。蜂窩織炎は原因菌を完全に死滅させなければ再発するため、場合によっては1か月以上の継続投与を敢行します。

多くの場合、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が原因となっていますが、嫌気性菌やインフルエンザ菌の場合や、人咬傷、犬・猫咬傷など特殊症例においては、通常と異なる抗生物質を用いて治療を行います。

ただし、特に初期段階においては原因菌の特定が非常に難しいため、蜂窩織炎の主な原因となる黄色ブドウ球菌、連鎖球菌を死滅させる抗生物質の投与から始め、症状の改善がみられない、または悪化傾向にある場合には、他の原因菌を疑い、抗生物質の変更を行っていきます。

 

抗生物質による治療

原因菌 抗生物質
黄色ブドウ球菌・連鎖球菌 静脈:セファメゾン、ロセフィン経口:ケフレックス、サマセフ、アニフラジン
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 静脈:バンコマイシン経口:サイボックス
嫌気性菌 ・ユナシンS・メロペンまたはチュナム・ダラシン+シプロキサンまたはクラビット・フラジール+シプロキサンまたはクラビット

 

特殊症例 抗生物質
頬部蜂窩織炎 ロセフィン、またはメロペン
人咬傷 オーグメンチ
犬・猫咬傷 オーグメンチ
海水内での傷 クラフォラン、またはシプロキサン
真水内での傷 シプロキサン
肉屋・魚屋での傷 サワシリン、またはペニシリンG

 

 

安静治療

原因菌、症例ごとの抗生物質投与と並行して、以下のような安静治療を行います。

 

1 、 患肢挙上と安静

2、 生食ガーゼで膿を吸収

3、ストッキング、皮膚ケアなどによる浮腫の抑制

4、飲酒、マッサージ、運動、入浴の禁止

 

 

6、蜂窩織炎の予防

蜂窩織炎は主に傷口から細菌が侵入することにより発症するため、傷をつけない、または清潔状態に保つことが何より大切です。また、免疫力が低下していればいるほど感染が起こりやすく重症化しやすいため、免疫力を高める努力も必要です。

 

外傷防止

蜂窩織炎の原因となる傷の多くは虫刺されやケガによるものです。これらは常日頃から起こりうるものであるため、防ぎようがないのも事実ですが、ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌を皮下に侵入させないために、外傷の予防はもちろん、清潔状態を保つことが必要不可欠です。

また、水虫による蜂窩織炎の発症率は年々増加しており、これも大きな原因となっているため、特に梅雨や夏場における清潔維持、水虫の早期治療が大切です。

 

免疫力の向上

特に乳児・幼児、高齢者など、免疫力が低い、または低下している人は蜂窩織炎の発症率が高く、場合によっては毛穴や汗腺からの細菌の侵入を許してしまいます。それゆえ、バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活を心がけると共に、風邪など他の病気を素早く治すことが大切です。

病気を発症していると、細菌やウイルスと闘い、免疫力が低下するため、蜂窩織炎といった感染症にかかりやすくなります。これは乳児・幼児、高齢者はもちろん、免疫力のある成人も対象であるため、免疫力を向上させるための生活環境改善に加え、発症している病気を早急に治療していきましょう。

 

 

7、蜂窩織炎の看護計画

蜂窩織炎は感染症であるため、薬物投与による治療を行っていきますが、看護の際にはバイタルサインの確認や、局部における観察をもって、合併症・その他感染症の発現を早期に発見しなければいけません。

重度化もしくは合併症により死に至るケースもあるため、薬物投与による安静治療だからといって適切な看護を怠ってはいけません。以下に蜂窩織炎の看護における重要なポイントを紹介します。

 

抗生物質による副作用の出現

治療を始める前に抗生物質のアレルギーの可能性を考慮し、最善となる抗生物質を用い治療を行いますが、早期に原因菌を特定するのは難しいのが実情です。それゆえ、効果が合らわれない場合には異なる抗生物質を使用することになり、この時に抗生物質の交換、継続投与によるアレルギー、消化器系(特に下痢)などの副作用症状が現れることがあるため、副作用を早期発見・早期対処しなければいけません。

 

疼痛の管理

炎症部位は熱を帯び、自発痛・圧痛がみられることが多く、中には該当部位を動かすことができないほどの痛みに襲われることがあります。それゆえ、疼痛による負担・ストレスを緩和させるべく、局部の冷却や非ステロイド系鎮痛剤の投与を行います。痛みを我慢している患者さんもいるため、なるべく我慢させず早めに対処していきましょう。

全身・局部の安静

早期改善・治療において局部の安静は不可欠です。局部を疲労させないようにするのはもちろん、局部の挙上も必要です。また、発熱、寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、低血圧、錯乱など、さまざまな全身症状が発現し、この場合には免疫力が低下傾向にあるため、局部だけでなく全身を安静にすることが必要です。

 

栄養管理

さまざまな全身症状による食欲低下、開口障害・嚥下痛などにより、食事摂取困難となる場合があります。この場合には食事形態の変更や輸液による補正を行なうことで改善を図っていきます。免疫力が低下している状態では、蜂窩織炎の早期治療は難しいため、適切な食事を阻害している原因を早期解決していくことが大切です。同時に良質な睡眠にも配慮してください。

 

精神的サポート

入院の適応時には感染が拡大していることから、激しい疼痛が伴います。また、眼窩蜂窩織炎など顔面の腫脹による審美性の問題により、不安やストレスが大きくのしかかることがあります。それゆえ、治療ケアだけでなく、治療に際する十分な説明はもちろん、励ましなどコミュニケーションを通して不安の軽減を図ることも大切です。

 

合併症の早期発見

蜂窩織炎の合併症には、敗血症、髄膜炎、筋膜炎、リンパ管炎、リンパ節炎、皮膚の膿瘍など多岐に渡り、多くは蜂窩織炎の重症化によって併発します。症状が改善されない、または悪化傾向がみられる場合には、適切な検査を行い、同時進行で治療を行っていきますが、悪化傾向を早期発見することで重症化を防ぐことができるため、観察が何より重要となります。バイタルサインや局部の状況などの経過をしっかり把握しておかなければいけません。

 

他の感染症の有無

免疫力低下時には蜂窩織炎だけでなく、さまざまな感染症を引き起こし、蜂窩織炎と併発することがあります。この場合には気づきにくく悪化させてしまうケースが多々あるため、局部の状態だけでなく、呼吸器系、消化器系など、全身における感染症の有無にも配慮しておきましょう。

また、蜂窩織炎の診断は所見が主であり曖昧のため、蜂窩織炎とは異なる感染症だったということも稀にあります。蜂窩織炎だと思い込まず、経過をしっかりと把握した上で、改善がみられない、または悪化傾向にある場合には早急に医師と相談し、適切な検査のもと該当の感染症を特定し、早期治療を図ってください。

 

 

まとめ

蜂窩織炎は一般的な病気であり、抗生物質を用いた安静療養により、ほぼ100%完治する感染症です。それゆえ、多くの看護師は蜂窩織炎に対して安易な考えを持っているのが実情です。

しかしながら、蜂窩織炎は合併症の発症率が高く、誤診による他の感染症の悪化を招くことも少なからずあるため、患部の状態だけでなく、バイタルサインの変化や、全身症状など細かく観察し、患者の負担軽減と早期改善をサポートしていってください。

また、乳児や幼児、高齢者は十分な免疫力を有していないため再発の可能性が高いと言えます。それゆえ、当人または家族に対する再発防止の指導も看護師の重要な役割であるため、入院看護だけでなく退院のことも考えたケアを行っていきましょう。

 

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【廃用症候群の看護まとめ】看護計画、治療

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廃用症候群

看護ケアを適切に行うためには、弊害や対象となる疾病、リスク因子やリハビリの意義・手段など、廃用症候群に関する様々な知識を深める必要があります。また、長期的な安静保持によって、誰にでも起こりうる病気であるため、細心の注意を払った観察が重要です。

臨床経験が少ない看護師は特に、どのようにケアしていけば良いのかと悩むことが多々あると思いますが、知識を深めることで対処法が自然とみえてくるため、当ページをしっかりと熟読して、廃用症候群に関する知識・理解を深めていってください。

 

 

1、廃用症候群とは

廃用症候群とは、長期に渡って安静状態が続くことにより起こる、心身の機能低下など、身体に異常をきたす病気のことを言います。中でも高齢者に多く、廃用症候群にかかることで、梗塞や骨粗しょう症など、さまざまな病気の発症リスクが高まり、さらにQOL(Quality of Life)が著しく低下します。

重篤な疾病や精神障害などにより、安静状態をを強いられる状況下において発症するため、避けることは非常に難しく、やっかいな病気として知られています。

中でも筋委縮や筋力低下などの身体機能の低下が著しく、1週間~2週間の安静状態でも廃用症候群を発症することが多々あり、全身の身体機能に悪影響をもたらすことにより、最悪な状態では、寝たきりとなってしまうことがあります。

 

 

2、廃用症候群の弊害

廃用症候群を発症することによって、以下のような身体機能の低下や異常、精神的症状が発現します。

身体的弊害 筋骨格系 筋力低下、筋萎縮、骨粗鬆症、拘縮
心血管系 心機能低下、循環血液量低下、起立性低血圧、持久力低下、血栓塞栓症
呼吸器系 換気障害、荷重側肺障害、上気道感染
代謝系 成長ホルモン、アンドロゲン、上皮小体ホルモン、電解質、インスリン、タンパクの変化
泌尿器系 排尿困難、尿路結石、尿路感染
消化器系 体重減少、食欲不振、便秘、誤嚥
神経系 不安、抑うつ、感覚障害、錯乱、知的低下、協調運動障害
皮膚 褥瘡
精神的社会的弊害 情緒不安定、うつ病態、家庭生活・対人生活の不調、経済的損失、社会復帰の不調

 

 

3、廃用症候群の対象疾患

廃用症候群は、重篤な全身性疾患、重症の神経疾患、意識障害、多発外傷、開胸術・開腹術後、低栄養状態などの場合に発症しやすく、特に、歩行障害、悪性腫瘍、呼吸器障害、心臓機能障害に発症しやすい病気です。

また、ステロイド、神経筋阻害剤、鎮静剤といった薬物治療によっても発症リスクがあります。高齢者で特に気をつけなければいけないのが、術後による発症であり、免疫力の低下やストレスにより容易に合併症を併発してしまいます。それゆえ、特に術後における廃用症候群の発症には十分な注意が必要です。

 

 

4、廃用症候群の診断

廃用症候群の診断基準は開発されておらず、臨床経験に基づいた主観的診断に頼らざるを得ません。それは廃用症候群が厳密な病気ではなく、筋力低下などによる機能低下全般のことを指すからです。

それゆえ、正確な判断は困難ですが、一般的には以下のような場合において、廃用症候群と診断され、リハビリ実施による改善を図ります。

 

長期的な休養による著しい心身の機能低下がみられ、リハビリ無しでの改善の余地がない場合

 

 

5、廃用症候群のリスク因子

廃用症候群には様々なリスク因子が存在します。これらは発症原因によって異なりますが、程度の具合・状況によって具合によって発症の可能性を見極めることができます。

 

リスク因子 水準 評価の基準
年齢 70歳未満
70歳~80歳
80歳以上
悪性腫瘍による障害 悪性腫瘍なし / 家庭内と近隣では制約なし
自宅内での限られた生活:骨髄抑制・易疲労・体重減など
身辺処理に介護が必要 / 終末期
心臓機能障害(心不全) 通常の社会生活の活動が可能
社会生活の活動に著しい制限あり(EF:30~40%)
家庭内の日常生活が著しく困難(EF:30%以下)
呼吸機能障害(呼吸不全) 社会生活が可能(自己ペースで階段や坂の昇降が可能)
自宅ないし近隣の生活が可能(1Kmの平地歩行が可能)
在宅酸素療法ないし自宅内での限られた生活
腎臓機能障害(腎不全) 社会生活の活動が可能(Cr:2.0mg未満)
社会生活の活動に制限あり(Cr:2.0~3.0mg以上)
血液透析または腹膜潅流
疼痛による障害 社会生活の活動が可能(疼痛コントロールが良好)
自宅内生活や近隣での活動が可能(疼痛コントロールが可能)
疼痛が著しく、身辺処理に介助が必要(疼痛コントロールが困難または不可)
歩行能力の障害 自宅内歩行と近隣の散歩が自立
自宅内歩行が自立(歩行器や伝い歩き)
介助歩行または歩行不能(車椅子での室内自立)
精神機能障害 障害なし、または支援を受けて社会生活が可能
日常生活で支援が必要
日常生活が困難であり介助が必要
知的能力障害  正常から境界域の知的能力(支援を受けて社会生活が成り立つ)
軽度・中度の知的能力障害(日常生活に支援が必要)
重度の知的能力障害(日常生活に介助が必要)
認知症による要介護状態 要支援(16≦HDS-R≦19)
要介護1~2(11≦HDS-R≦15)
要介護3以上(HDS-R≦10)
Body Mass Index(BMI 18.5~24.9
13.5~18.4または25.0~29.9
13.5未満または30.0以上

※水準における数字はリスク度を示し、1:低リスク、2:中リスク、高リスクとなる。

 

 

6、廃用障害度評定

さらに発症時にも軽度・中度・重度といったように、程度を評定することができます。

 

判断基準 軽度 中度 重度
活動度・安静度 制約なし ベッド上で制約なし未離床 ベッド上で制約あり
基本動作能力 ・起き上がり・座位・移乗自立・支持で立ち上がり可能 ・起き上がり介助・静的座位バランス可・立ち上がり介助/不可 ・臥床状態・介助にて座位・座位バランス不安定・立位不能
精神心理機能 ・認知症であっても覚醒良好・身体拘束なし ・覚醒良好・指示にぼぼ従命可・身体拘束あり(せん妄/危険行動防止) ・意識障害/低覚醒/せん妄・従命不十分・身体拘束
機能訓練の場 機能訓練室 ベッドサイド ベッドサイド

 

 

 

7、廃用症候群の治療(リハビリ)

発現症状によって廃用症候群の治療はさまざまですが、主にリハビリで改善を図っていきます。廃用症候群は、筋力の低下が顕著であるため、筋力の増加または関節稼動の広域化を主とした運動機能向上を図ります。

また、リハビリによって精神的な安定化も図ることができるため、重篤な病気ではない患者さんに対しては積極的にリハビリを実践していきます。

 

≪リハビリの目的≫

1、機能障害の回復促進

2、残存能力の強化

3、日常生活動作の訓練

4、心理的立ち直りの促進

 

■筋萎縮(筋力低下)

筋力の維持には最大筋力の20%~30%の筋収縮を行う必要があり、それ以下である場合には、筋力が低下していきます。リハビリとしての筋力の維持・増加には「等尺性収縮」と「等張性収縮」を利用した筋肉トレーニングが一般的であり、最初は負荷の少ないトレーニングから始めます。なお、このトレーニングは1日数回行い、筋持久力を高めるために各部位が疲労するまで行います。

使用する機械は施設によってさまざまですが、設備の整っている施設ではBIODEX(等速性筋力評価・トレーニング装置)が用いられます。

 

■関節拘縮(柔軟性低下)

関節可動域は関節の運動によって維持・増加しますが、不動の状態が2週間程度続くと減少していきます。関節可動域は、股関節・肩関節・足関節など、各関節を1日10回程度、ゆっくりと全方向にゆっくり動かすことによって維持・改善できるため、看護師の手のもと、患者さんの各関節を十分に稼動させてあげます。

それゆえ、関節稼動域の維持・増加を図るリハビリでは、機械を用いることが少ないため、設備の整っていない施設でも積極的に行われています。

 

■骨萎縮(骨粗鬆症)

骨の生産や吸収速度とは適度な刺激によって維持されますが、安静療養時には刺激が著しく減少するため、骨吸収率が産生率を上回り、骨萎縮が生じます(廃用性骨萎縮)。骨萎縮の改善には、「臥床筋力増強訓練」や「座位訓練」が主に行われます。また、「立位保持」や「歩行訓練」など可能な場合には、それらを積極的に行っていきます。

 

■循環機能低下

安静臥床や身体の不動により、起立性低血圧をはじめ、さまざまな循環機能低下が起こります。これは心拍出量が減少することにより最大酸素摂取量が減少するために起こり、臥床期間を短くすることで予防につながりますが、長期臥床を必要とする場合には循環機能低下は避けられないため、「斜面台」などを用いて段階的な「起立訓練」を行います。

 

■末梢循環障害

末梢循環は、筋活動の低下に伴って減少し、関節拘縮や外圧により血管が狭くなることで静脈血栓症が発症しやすくなります。末梢循環は主に、膝下の下肢の筋活動に強く関わっているため、「立位保持」や「歩行訓練」が有効です。

 

■呼吸機能障害

安静臥床では、深い吸気の頻度低下により呼吸効率や肺活量が低下し、呼吸機能障害を起こすことがあります。これにより肺の一部にうっ血が生じ、沈下性肺炎が発症しやすくなります。安静臥床による呼吸機能障害の発症時には、定期的な「深呼吸訓練」や「咳訓練」、「体位ドレナージ」をもとにリハビリが行われます。

 

 

8、廃用症候群の看護計画

廃用症候群の看護では、「QOL(生活の質)の向上」、「ADL(日常生活動作)の向上」、「個別基礎的機能の向上」、「社会交流・参加レベルの向上」、「精神的ストレスの緩和」の5つの観点からアプローチをかけ実施していきます。

 

QOL(生活の質)の向上

廃用症候群を発症することで、行動の制限や身体機能の低下などにより、QOLが低下します。この状況下では廃用症候群の発症原因となっている病気や障害などの治癒速度が著しく減速します。また、廃用症候群の各症状における進行速度の増速に伴い重度化する可能性があります。それゆえ、室内での快適な雰囲気作りや、趣味の実施、可能であれば車椅子を利用した外出などにより、QOLの向上に努めなければいけません。

 

ADL(日常生活動作)の向上

トイレに行く、料理を作るなど、日常生活における「できること」「していること」の質や量を高めることも重要です。また意欲があれば「したいこと」への援助も忘れてはいけません。これら日常生活動作を向上させることで、QOLの著しい向上を図ることができ、早期改善を大きく促進するため、可能な範囲内で自立支援を行っていきましょう。

 

個別基礎的機能の向上

身体機能、心機能、呼吸機能などが低下することで、それら以外にも様々な弊害が出現します。リハビリなどを積極的に行い、これら個別基礎的機能を高めることで、廃用症候群の進行が止められ、改善へと向かわせることができます。定期的なリハビリの実施が困難である場合でも、簡易的な訓練によって各基礎的機能の向上は可能であるため、いかなる場合でもあっても積極的な実施が必要です。

 

社会交流・参加レベルの向上

長期臥床は、外界との交流が遮断されやすく、コミュニケーションの時間も激減します。これにより、身体症状だけでなく気分消沈などの精神症状が出現することがあります。デイサービスへの自発的通所や、外部との交流、社会活動への参加などにより精神的安楽を獲得することができるため、実施・参加の援助を行い、社会交流・参加レベルの向上を図っていきましょう。

 

精神的ストレスの緩和

長期と言わず、安静期間が3日~1週間程度でも精神的ストレスは蓄積します。実は、廃用症候群の症状においては、身体機能の低下よりも精神障害の方が厄介であり、特に高齢者の場合には致命的になりうる精神疾患を併発しやすいため、早期にストレスの緩和に努める必要があります。

 

 

9、廃用症候群の看護における注意点

廃用症候群は長期臥床により、高齢者に関わらず誰しもが発症の可能性を持っていますが、廃用症候群を改善させるために最も重要なのは「長期臥床の早期離脱」であるということを忘れてはいけません。

発症症状をいかに早く改善させるかではなく、長期臥床の早期離脱が看護の主であるため、「頑張りすぎ」「頑張らせすぎ」は禁物です。高齢者の場合には特に、基礎体力が低下していることで、訓練のしすぎ・刺激の与えすぎによって、体力の消耗や意欲の低下など、逆効果になってしまうことがあります。

この場合にはQOL、ADLともに著しく低下し、最悪の場合には寝たきりになってしまいます。それゆえ、高齢者の場合には特に注意を払い、可能な範囲内で無理なく看護していかなければいけません。

 

 

まとめ

廃用症候群は筋力低下だけでなく、様々な症状が発現し、これらは患者さんによって異なります。それゆえ、各人に合わせた看護が必要になってきます。各人に合った適切な看護ケアを実施するためには、臨床経験は非常に重要ですが、廃用症候群に対する理解の深さが何より大切です。

廃用症候群は頻度の高い病気であるため、仕方がないと安易に考えがちですが、患者さんのQOLに大きく関わってくるだけでなく、最悪の場合には重篤な合併症の併発、または寝たきり状態になることもあります。

これらを予防し、発症時にはQOLの向上と共に早期治療を図るためには、各人に合った看護プランが重要となり、それを実施するためには知識と理解が不可欠なのです。それゆえ、まずは知識を深めることに努め、得た知識をもとに各人に合った看護プランを設計・実施していきましょう。

 

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【統合失調症の看護まとめ】看護計画、症状、陰性

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統合失調症

 

 

統合失調症はさまざまな症状が存在し、患者さんによって発現する症状が異なり、さらに原因もさまざまであるため、各患者さんに合わせた看護が必要になります。それゆえ、統合失調症の看護ケアは非常に難しく、経験豊富な看護師であっても悩むことが多々あります。

しかしながら、統合失調症という精神疾患に関する深い知識と理解を持つことで、各患者さんに合った看護ケアを行うことができるため、臨床経験の浅い方は特に当記事を熟読し、統合失調症に関する理解を深めていってください。

 

 

1、統合失調症とは

統合失調症は、幻覚や妄想といった症状が特徴的な精神疾患であり、現在では80万以上の人が統合失調症にかかっていると言われています。

これは日本人の全人口のうちの約0.7%であることから、実に約100人に1人が発症する頻度の高い精神疾患なのです。人口割合では10代後半~20代の思春期・青年期が特に多く、男女割合では男性の方が約1.5倍高い傾向にあります。

統合失調症には大きく分けて「前駆期」「急性期」「消耗期」「回復期」「安定期」の5つの発症期間が存在し、それぞれの期間における適切な看護が必要であるため、統合失調症の看護ケアは非常に難しいものなのです。

 

 

2、統合失調症の症状

統合失調症は大きく分けて「妄想・幻覚症状」「意識・感情症状」「生活障害症状」の3つに分けられます。これら内訳において、非常に多くの症状が存在し、患者によってさまざまです。以下に具体的な統合失調症の症状を紹介します。

 

妄想・幻覚症状(陽性症状)

妄想
・被害妄想 自分は嫌われている、悪口を言われている、といった思い込み。
・関係妄想 全ての周囲の出来事を自分と関連付けて考えること。
・注察妄想 盗撮・盗聴など、常に誰かに見張られているという思い込み。
・追跡妄想 誰もいないにも関わらず、誰かに追われていると感じること。
・心気妄想 何かしらの病気にかかっていると思い込むこと。
・誇大妄想 自分が他者より優れている、偉大だと思い込むこと。
・宗教妄想 自分はこの世の神であると思い込むこと。
・嫉妬妄想 恋人や配偶者が不倫や浮気など、不貞行為があると思い込むこと。
・恋愛妄想 接した異性に好意をもたれている、愛されていると思い込むこと。
・被毒妄想 飲食物に毒薬が入っている、もしくは誰かが毒薬を混入したと思い込むこと。
・否認妄想 自分の家族は本当の家族ではない等、否定的な思い込みをすること。
・迫害妄想 誰かに攻撃されていると思い込むこと。
・没落妄想 自分または世界が滅びゆく感じがすること。

 

幻覚
・幻聴 外界から何の刺激もないのに、何かが聞こえるように感じること。
・幻視 実際には無いものが、存在するかのように見えること。
・幻嗅 実際には臭わないのに臭いを感じること。
・幻味 実際には何も味を感じないに関わらず、変な味がする等と感じること。
・知覚過敏 音や匂いに敏感になり、光が眩しく感じること。

 

 

意識・感情症状(陰性症状)

意識
・思考操作 心理的に操られているなど、他人の考えが入ってくると感じること。
・思考奪取 自分の考えが他人または何かの力によって奪われていると感じること。
・思考伝播 テレパシーなど、自分の考えが他人に奪われていると感じること。
・思考察知 自分の考えが他人に知られていると感じること。

 

感情
・興奮 有頂天になる、自分は天才であると考え、極度の興奮状態になる。
・昏迷 外界からの刺激や要求に全く反応しない状態。
・拒食 食欲がない、食べることへの意味の拒絶など、拒食状態になる。
・感情鈍麻 喜怒哀楽といった感情が鈍化し、外部に現れない状態。
・心的遮断 他人に心を許さず、平面的な関係構築しか出来ない状態。
・カタレプシー オウム返しなど、受動的にとらされた姿勢を保ち続け、自分の意思で変えようとしない状態。
・緘黙 一言も話すことができない、話す意欲がない状態。
・拒 言われたこと全ての対し、拒絶反応を示す状態。
・自閉 自己の内界に閉じ込もり、他人との接触を拒む状態。
・抑う 気分の低下、不安感の発現、睡眠時間の減少といった症状が現れる。
・パニック 激しい動悸や発汗、頻脈、ふるえ、息苦しさ、胸部の不快感など、パニック発作が出現する。
・自己喪 自分の過去への達成・過程に対する疑問による心理的な危機状況に陥る。

 

 

生活阻害症状(陰性症状)

・論点相違 話のピントがずれる、話題が飛ぶなど、会話における論点の食い違いが生じる。
・能率低下 作業のミスが多い、行動の能率が悪いなど、仕事における効率の低下。

 

 

2-1、統合失調症の診断基準

統合失調症は、症状が曖昧かつ多岐に渡る精神病であるため、断定することが難しいのが実情です。しかしながら、断定する上で参考となりうる診断基準は、上記の各症状に基づくDSM-IVと呼ばれる多軸評価法によって定められており、一般的にはDSM-IVを基に診断が行われています。

 

上記の「妄想・幻覚症状」「意識・感情症状」「生活阻害症状」のいずれかの症状が2つ以上、1か月以上存在する。

 

※DSM-IVの判断基準は厳密に定められていますが、一見で把握するのは難しいため、簡略化しています。

 

 

2-2、統合失調症の経過

上記のように統合失調症には様々な症状が発現しますが、これらの発現時期は病態の経過により異なります。統合失調症の経過には大きく分けて「前駆期」「急性期」「消耗期」「回復期」「安定期」の5に分けられます。

 

前駆期

前駆期は、急性期を前にして様々な統合失調症の症状が出現する時期で、焦り・不安感・感覚過敏・集中困難・気力の減退・不眠・食欲不振・頭痛といった症状が出現します。これらの症状は鬱病や不安障害と類似しているため、当該期においてはや不安障害として診断されることが多いのが実情です。

 

急性期

幻覚や妄想などの、統合失調症に特徴的な症状が出現する時期で、幻覚や妄想は、患者本人にとって不安・恐怖・切迫感といった負の感情が強く引き起こされます。それゆえ、睡眠や食事リズムの乱れ、行動・コミュニケーションの欠落など、日常生活における対人関係に支障をきたします。

 

消耗期

心身とも疲れ切った状態で、心身のエネルギーが落ちて、活動が鈍くなる時期です。 疲れやすい、物事が続かない、集中力の低下など、急性期における反動としてエネルギーの消失症状が発現します。また、甘えや受身的行動が発現する場合もあります。この時期に差し掛かると、エネルギーを蓄えることにより回復するため、よく寝る、よく食べるなど、基本的な生活改善を行うことで、同時期の症状は自然になくなり、回復期へと向かいます。

 

回復期

現実感を取り戻す時期であり、疲労感や意欲減退を覚えつつ将来への不安と焦りを感じ、周囲からは結構よくなったように見えるものの、未だ元気がない状態であり、完治一歩手前といった時期です。各症状が緩和、もしくは消失しますが、一時的に強く発現する場合もあります。

 

安定期

この期間においては完治と認識され、社会復帰への基準となります。リハビリテーションにより治癒へと向かうため、看護において最も大切な時期であり、適切な看護・治療が行われないと、前駆期に再移行する可能性、つまり再発を迎えてしまうことがあるため、慎重かつ適切な看護が必要となります。

 

 

3、統合失調症の原因

統合失調症の原因は大きく分けて「脆弱」「ストレス」「病気」の3つに分けられます。これらの原因すべてを100%とした時、「脆弱」は約50%、「ストレス」は約40%、「病気」は約10%の割合で統合失調症を発症します。

 

脆弱

脆弱とは、外界からの刺激に弱く、心理的な病気になりやすい本人の弱さのことを言います。ドパミンなどの神経伝達物質の失調も当該原因の1つであり、これらの多くは親からの遺伝によるものです。

遺伝が統合失調症の原因に関わっているというのは、この脆弱の事を指し、統合失調症の発症歴がある親から子へ同病が遺伝するということではありません。つまり、親の心理的要因による脆弱性が子に遺伝するというわけです。

また、養育環境による脆弱も原因の1つです。親や親族に甘やかされて育った子供は、外界の刺激(叱責など)に弱く、こうした環境的な要因も含まれています。

 

ストレス

転校・転居・親の離婚といった環境の変化、卒業といったライフイベント、その他、失恋や過労など、多大なストレスがのしかかることでも統合失調症は発症します。上記のように外界からの刺激に弱い人はもちろん、ストレスに対する耐性が強い人も該当します。特に10代~20代に多くみられるのがストレス要因であり、中でも10代後半~20代前半に多い傾向があります。

 

病気

妊娠母体のインフルエンザ感染、周産期障害(低体重出生)、発達障害などの病気によっても統合失調症は発症します。中でも脳発達障害による発症率が高く、遺伝因子と環境因子が相互に作用することで発症し、統合失調症だけでなく、他の精神疾患の発病リスクも高まります。

 

 

3、統合失調症の治療

統合失調症は主に「薬物療法」「精神療法」「心理社会的介入」の3つを基に治療を行っていきます。これらは発症経過によって治療が異なるため、早期改善のためには各段階における適切な治療が必要です。

なお、治療段階においては「前駆期・急性期・消耗期」「回復期」「安定期」の3過程により、適切な治療を行っていきます。

 

前駆期・急性期・消耗期

薬物療法 精神症状を改善するのに十分な投薬を行う。
精神療法 治療関係の構築、支持的な態度で接する。
心理社会的介入 安心して治療に専念できる環境を作り、症状が激しければ入院治療も考慮。

 

回復期

薬物療法 症状の再燃防止に必要な服薬量の決定。
精神療法 支持的な態度で接する。
心理社会的介入 再燃防止のためストレスを少なくし、社会参加・社会復帰のための準備を進める。

 

安定期

薬物療法 再発防止に必要な服薬の継続。
精神療法 支持的療法。病名告知、疾患に対する教育など。
社会的介入 ストレス過剰にならないよう配慮し、リハビリテーションを通じた社会参加・社会復帰を支援する。

 

 

3-1、薬物治療

統合失調症の治療に用いる基本薬剤は抗精神病薬です。抗精神病薬には,従来型タイプの「定型抗精神 病薬」と、副作用が少ない新型タイプの「非定型抗精神病薬」の2つがあり、さらに注射剤・液剤・錠剤・細粒剤な ど、さまざまな剤型があります。これらは患者さんの症状や生活環境・生活リズムなどによって使い分けられます。

 

定型抗精神病薬の特徴

フェノチアジン
クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)   特徴:ドパミン受容体遮断による抗精神病作用統合失調症における興奮状態を抑制

 

副作用:

血圧降下、縮瞳など

悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジアなど

レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
チオリダジン(メレリル)
フルフェナジン(フルメジン、フルデカシン)
プロペリシアジン(アパミン、ニューレプチル)
ペルフェナジン(ピーゼットシー)

 

ブチロフェノン
ハロペリドール(セレネース、ハロステン) 特徴:ドパミン受容体、セロトニン受容体遮断による抗精神病作用精神運動興奮や幻覚に有効 副作用:

血圧降下、頻脈、錐体外路症状など

悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジアなど

ブロムペリドール(インプロメン)
チミペロン(トロペロン)
スピペロン(スピロピタン)

 

ベンズアミド系
スルピリド(ドグマチール、アビリット) 特徴:ドパミン受容体遮断による抗精神病作用統合失調症における興奮状態を抑制副作用:

パーキンソン症候群、発疹、ジスキネジア、アカンジア、乳汁分泌・月経異常など

悪性症候群、遅発性ジスキネジア

スルトプリド(バルネチール)
ネモナプリド(エミレース)

 

非定型抗精神病

セロトニン・ドパミン遮断薬
リスペリドン(リスパダール) 特徴:セロトニン受容体遮断、ドパミン受容体遮断作用幻覚、妄想などの陽性症状や感情的引きこもり、情動鈍麻などの陰性症状に有効副作用:

パーキンソン症候群、ジスキネジア、月経異常、高プロラクチン血症など

悪性症候群、遅発性ジスキネジア,麻痺性イレウス

パリペリドン(インヴェガ)
ペロスピロン(ルーラン)
アリピプラゾール(エビリファイ)

 

MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬
クエチアピン(セロクエル) 特徴:セロトニン、ドパミンアドレナリン、ヒスタミン受容体に同程度の拮抗作用陰性、陽性症状、不安症状、うつ状態等の多様な精神症状に効果を有す 副作用:

体重増加、アカンジア、プロラクチン上昇など

高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、悪性症候群、遅発性ジスキネジア

クロザピン(クロザリル)
オランザピン(ジプレキサ)

 

これらの薬物は、患者さんの性格や状態、周囲の環境と精神症状を考慮し、薬物療法の対象となる症状(幻覚・妄想・興奮 など)と、心理社会的治療が有効な症状を大まかに分けて治療薬剤を選択します。

また、症状が強く発現していない場合には、副作用の少ない「非定型抗精神病薬」、症状が強く発現している場合には「定型抗精神病薬」を選択し、薬剤は混同・早期変更をせず、約4週間~6週間かけて同一薬による治療を行い、効果を判定します。

 

【薬物における副作用】

上記で各系統の薬物に関する簡略的な副作用を紹介しましたが、抗精神病薬すべてにおける身体的特徴は非常に多いため、同項で詳しく紹介します。統合失調症治療で用いられる薬物すべてに共通する副作用は以下の通りです。

精神神経系: 眠気、ふらつき、倦怠感
消化器・循環器系: 口の渇き、排泄障害、貧血、不整脈
その他: 体重増加、糖尿傾向、乳房の張り、生理不順、発疹

 

 

3-2、その他の治療法

統合失調症の治療には主に薬物が使用されますが、薬物治療により改善されない患者さんもいます。その場合には、「修正型電気けいれん療法」「心理社会的治療」により改善を図ります。

 

修正型電気けいれん療法

修正型電気けいれん療法とは、麻酔をかけた状態で、頭部に通電することにより人工的にけいれん 発作を起こして、精神症状を改善する治療法のことです。昏迷や興奮、抑うつなどの症状が発現している場合に特に効果的であり、身体状態の悪化や自傷・他害の危険が切迫している場合にも適応されます。

 

心理社会的治療

心理社会的治療には、互いに良好な関係を構築した上で共感を示すことで苦しみを緩和させる「支持的精神療法」、妄想的信念や幻聴に対する思考パターンを修正する「認知行動療法」、複数の患者が集まってそれぞれの抱える心の問題を話し合う「集団精神療法」の 3つの療法があります。これらは鬱病患者にも適応され、高い効果を示すことが多いため、多くは薬物療法と共に行われます。

 

 

4、統合失調症の看護計画

統合失調症を持つ患者さんの看護は非常に難しいものですが、薬物による治療が主であるため、看護師は患者さんの興奮度を上昇させないために、また早期に回復期・安定期に移行できるようで、急性期においては特にさまざまな事に気を配りながら看護ケアを行わなければいけません。

しかしながら、過度に援助すると自己解決能力が低下してしまい、再発のリスクが高くなるため、看護師はサポート役に徹し、患者さん自身で解決できるよう努めていくことが重要となります。

 

看護目標

・症状をコントロールし、暴力が回避できる

・自ら適切な服薬・症状管理ができる

・症状とうまく付き合いながらセルフケアが行える

・自ら適切な活動・休息が行える

・知覚障害、思考障害に適切に対処しながら生活できる

・自己と外界が区別できる

・円滑な対人関係を形成することができる

・社会復帰時において社会生活を維持することができる

・ストレスに対して効果的な対処法がとれる

 

 

4-1、患者本人に対する看護

統合失調症の症状は多岐に渡り、患者さんによって発現する症状は実にさまざまです。また、精神的な要素が非常に強いため、統合失調症の看護にはこれといった正解がないのが現状です。

それゆえ、「言って良いこと・悪いこと」、「して良いこと・悪いこと」というのは患者さんによって異なるため、症状を緩和させ早期に回復期へ移行できるよう、ストレスに対する自己解決の支援が看護師の大きな役割となります。

また、コミュニケーションを図る際には、「否定も肯定もしない」という態度で接し、何が禁句なのかを把握し、急性期においては特に、それらを避けながら接してあげることが大切です。

 

 

4-2、患者の家族に対する看護

統合失調症を早期に改善し、再発を防止するためには家族の支援が必要不可欠です。家族に対し、統合失調症の理解促進に加え、ストレスに関する心理教育も重要です。

特に回復期・安定期においては、症状が緩和され、病気が治ったと考えてしまいがちですが、良好な心理的・物理的環境の構築や、服用といった継続治 療が必要不可欠であるため、このことも家族に対し指導していく必要があります。

また、患者と家族の関係が良好でない場合には、レクリエーションや自助グループの参加など、家族間の良好な関係が構築できるよう、看護師が間に入って促進していきましょう。

 

 

まとめ

統合失調症は実に奥が深い精神疾患です。統合失調症の看護ケアは非常に難しいものですが、統合失調症に関する深い知識をもって、各患者さんの想いや悩みを考慮しながら、献身的にケアを行うことで、早期治療に向けた適切な看護を行うことができます。

統合失調症を持つ患者さんの臨床経験が少ない方や、看護に関する壁にぶち当たっている方は、今一度、統合失調症に関する知識を深め、患者さんの立場に立った献身的な看護を行うよう努めてください。

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鬱になり、月給23万円の看護師を退職しました

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看護師の退職

この度、なかなか辞められなかった看護師の職を、鬱病になり、念願かなって退職することができました。在職中の給与は月給23万円でした。

(看護師は、入職より辞める時の方がエネルギーを使う)

 

東京ではじめてのクリニック勤務で学んだこと、経験したこと、これからを活かしたいことを自戒の念を込めて時系列でまとめたいと思います。

 

入職経緯「脳神経外科でバリバリ働きたいと思った」

当時、専業主婦になるつもりでしたが、私の性分がじっとしていられないところがあり、専業主婦1週間を経過したところで再就職活動をすることとしました。

(今まで体力の限界まで働いてたから、家に居ても何していいかわかんない)

 

年齢的にまだ若いこともあって、子どもの計画はなく急性期でバリバリ働きたいと思っていたところ、家から車で5分程度の脳神経外科のド急性期と噂されるクニックが見つかりました。

早速、東京を地元とする看護師の友人に評判などを聞きました、中には「人間関係がよくない」という人もいました。

が、「自分ならこの職場でも大丈夫

と友人のアドバイスを突っぱねて、面接を受けました。

 

入職0~3ヶ月「理想の上司とめぐり会う」

面接は、その場で合格、何時から来れますか?とても好印象の看護師長と事務長で、私のこれまでの経験をみて、給与的にも好条件(とこの時は思っていました。あんな激務になるなんて想像もできなくて)で入社出来ることとなりました。入職直後は、まさに理想の上司だと思っていました。

 

面接の翌々日の入社となり、一日明けて出勤すると、制服はきちんと用意され、ロッカーや自分に必要なもの物を不足なく用意され、とても良い職場に入職出来たと思いました。

 

脳神経外科で必要なペンライトや必要知識の書いてある冊子なども頂けました。教育体制は、クリニックのため公立病院のようなしっかりとしたものではありませんが、アットホームな感じでもともと居る職員が、一緒に業務に当たり教えてくれるといった感じです。プリセプターなどはいませんでしたが、なんとなくフォローある不満のない環境でした。

 

次の月より夜勤等も開始し、仕事にも慣れてきました。このクリニックは、師長も夜勤をしていて、月に7回程度、私も夜勤をしていました。

 

入職4ヶ月~1年①「理想の上司が”すぐキレる人間”だと判明」

入職して慣れてきた頃、少しずつ不穏な空気がでてきました。

看護師長は改革派というか、なんでも取り入れてダメなら止めればいいという考え、自分の思い通りにならないと「キレる」一面が見えてきました。理想の上司は”すぐキレる人間”だとわかってしまったのです。

(ヒステリックな、上司ってどこの病院でも必ずいるけど、看護師長のキレ方は私の想像を超えていました)

 

例えば、固定チームナーシングだった看護方式は、急に機能別看護に変更、「今日から、仕事の担当を決めて、残業を減らす努力をします」と言ったのはいいものの、急に職員がそれに対応する事は難しく、、、

 

入職4ヶ月~1年「ナースコールを無視する師長」

上手くはかどらなくなり、残業減に至らないと「何で時間内にできないの!!」とその日のリーダーを叱責しはじめ、座って記録をしていたリーダーの椅子を蹴り飛ばし、床をダンダンと踏みしめる始末!!

 

初めてその光景を見た私は、衝撃を受けました。

 

その後、同僚の看護師に聞くと、そんなの日常茶飯事。あなたが入職してきたから少なくなっていたけど

「猫かぶる我慢の限界だったんじゃない?」

といわれました。

(猫かぶり??嫌な予感・・・)

 

その後も、カンファレンス中にナースコールが鳴ると「何?なんですか?今は、行けません」と意味不明な対応、「私行きます」と言うと、「なら行って」という始末。

(ナースコールに行けないなんて、言っちゃダメっしょ)

 

そして、患者さんの転院先が上手く決まらないと連携室より連絡が来ると「はぁ、なんで!!ちゃんと仕事してよ」と言いながら電話を切り、また、床を鳴らしています!!

(またかよ・・・)

 

入職4ヶ月~1年 ③「師長に対して患者からクレームが入る」

しかし、気分のいい時は、ものすごく人柄の良い師長で、「患者さんの為に笑顔で、明るく頑張ろう」と言います。

でも、その豹変ぶりは患者さんや患者さんの家族にも知れ渡り、「なんでいつも叫び声が聞こえるの?」「怖い」「早く退院させてほしい」と家族からも相談を受けたこともありました。

 

夜勤のとき、院長に「どうしてあんなに感情起伏が激しいのか、家族からのクレームもあります」と伝えると、院長自身、師長が怖くて意見出来ないそうなのです。

(家族からクレームくる師長って、一体なんなんだろ)

 

入職1年〜2年半「退職者4名。私は心療内科に通うようになった」

私が入職して、師長の猫かぶり期間が終了した時点で退職した看護師は4名、そのうち心療内科に通うようになった看護師は2名。

(この師長のせいで歴代のスタッフたちは精神崩壊したのか・・・)

心療内科に通うようになったうちの一人は私です。

 

とはいえ、知識的には尊敬できる部分もあり、たくさん学ばせて貰う事が出来ました。

 

しかし、その傲慢ぶりで、知識は活用される事無く、彼女の看護はゴーイングマイウェイと言った感じで、手荒で厳しいものでした。

(固定チームナーシングのはずが)

 

私も、2年半勤務したものの、心と身体が疲弊し、今はその職場を離れています。

(でも、看護師という職が嫌いになったわけではありません。看護師に復職したい気持ちももちろんあります。いやになったらまた、専業主婦になるという手で退職できるし、復職してみよっかなしようかな)

 

正看護師:東京都、25才の匿名投稿

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【アセスメント看護まとめ】書き方、例、看護過程、ゴードン

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アセスメント看護

看護学生だけでなく現職の看護師にとっても悩みの種であるアセスメント。一度、骨組みやコツを覚えるとスラスラ書くことができますが、そこまでには多大な時間を要するため、現職看護師のうちの多くがアセスメントを適切に行えていないのが現状です。

 

しかしながら、アセスメントは非常に重要で、治療方針を決める際の重要な材料となるため、アセスメントが適切でなければ、早期治療が難しくなり、患者の負担が大きくなってしまいます。

 

当ページでは、どのようなアセスメントをすればいいのか、骨組みや参考なる情報をまとめて紹介していますので、アセスメントが苦手な方はぜひ参考にしてください。各患者に合った最適な看護ケアを行えるよう、頑張ってコツを掴みましょう。

 

 

1、アセスメントとは

アセスメント(Assessment)は、評価・査定という意味合いを持ち、看護実践のための前段階に行われる過程のことを指します。同じ病気を持つ患者でも、発現症状や程度、進行具合など、人によって異なります。それゆえ、各患者に合った最適な看護を実践する必要があり、そこで重要となるのが各患者の状態を正しく評価することなのです。

 

アセスメントは看護過程の一つとして数えられ、看護過程には大きく分けて以下の5つの項目が存在します。

 

①看護アセスメント バイタルサインや病歴など患者の情報収集と判断
②看護診断 看護アセスメントによる情報の確認とデータの分析
③看護計画 問題解決のための看護計画の立案
④看護介入 看護計画に基づいた看護行為
⑤看護評価 看護行為による成果および看護計画変更の必要性の評価

 

看護を行う上では上記の5つの過程が存在し、アセスメントは“情報収集”と“判断”、つまり「観察」することが大きな役割であり、各患者に合わせた最適な看護を決定するために最も重要となる項目であるため、アセスメントがしっかり出来ているかどうかで、看護ケアの質が決定づけられると言っても過言ではないのです。

 

 

2、アセスメントの必要性

アセスメントは5つの看護過程のうちの第一段階に位置づけられており、主に、バイタルサインや病歴など患者の情報収集と、患者本人からの主訴を基に、患者の状態(全体像)を的確に分析することが役割です。

 

患者の状態を適切に見極めることが出来なければ、適切な看護実践が不可能になり、場合によっては病気に対する早期治療が難しくなるだけでなく、合併症の発症リスクが高まってしまいます。

 

患者の状態(全体像)を把握することにより、早期治療、合併症のリスク低下のみならず、患者の苦痛・ストレスの軽減、さらに早期治療による病床の回転率UPなど、患者だけでなく病院にとっても良好に作用するため、アセスメントは非常に重要な役割を担っているのです。

 

 

3、アセスメントの実践と理論

アセスメントを行うために、最も重要となるのがコミュニケーションと分析です。バイタルサインにおいては診察することで容易に把握できますが、症状や生活習慣など、適切な看護実践のために、さまざまな情報を収集しなければいけません。

 

そのために、患者からそれらの情報を聞き出す必要があり、うまく聞き出すためにはコミュニケーション能力が不可欠になります。しかしながら、これは慣れの部分が多いため、現段階でコミュニケーション能力が低いと自覚している方でも心配する必要はありません。

 

しかしながら、情報をうまく収集できたからと言って、適切なアセスメントが行えるというわけではなく、得た情報をまとめる能力(分析力)も必要になってきます。このまとめる過程が最も重要であり最も難しいものですが、

 

  • ヘンダーソン:14の基本的欲求
  • ゴードン:11の機能的健康パターン
  • マズロー:5つの人間のニードの階層構造(欲求5段階説)

 

などの看護理論を枠組みとして考えれば、論理的かつ素早くまとめあげることが出来るため、看護実習などでアセスメントを書く際には、参考にしておくと良いでしょう。

 

 

3-1、ヘンダーソン:14の基本的欲求

 

ヘンダーソンは、「人間は14の基本的欲求を持ち、その人が必要なだけの体力と意志力と知識を持っていれば基本的欲求を自立して充足することができる」と定義しています。病気を患う人は、行動の制限がされることが多く、これら14の基本的欲求のうちのどれかが制御されてしまい、欲求の自立的充足が損なわれ、早期治療の弊害になる場合があります。

 

これら14の欲求が出現するよう、常に念頭に置き、アセスメントをまとめる際に活用しましょう。

 

 

14の基本欲求 基本的欲求の充足した状態
①正常に呼吸する ・ガス交換が正常に行われている・安楽に呼吸ができる
②適切に飲食する。 ・必要な栄養が取れている・楽しく食べられ満足感がある
③身体の老廃物を排泄する。 ・生理的で正常な排泄である・尿意・便意的快感がある
④移動する、好ましい肢位を保持する。 ・歩行、立つ、座る、眠るなどの姿勢が適切である・よい姿勢のとり方を理解している
⑤眠る、休息する。 ・休息や睡眠が自然にとれる・ストレスヤ緊張感からの開放感がある
⑥適切な衣類を選び、着たり脱いだりする。 ・適切な衣類を身につけている・きちんと身づくろいができる
⑦衣類の調節と環境の調節により体温を正常範囲に保持する。 ・体温が生理的範囲内である・・体温調節に努めることができる
⑧身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する。 ・皮膚や粘膜が清潔になっている・清潔の基準が保たれている・他人に受け入れられやすい身だしなみである
⑨環境の危険因子を避け、また、他人を傷害しない。 ・自分で自分の環境を自由に調整できる・周囲に危険な物がない・知らずに他人に危険をあたえない
⑩他者とコミュニケーションをもち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する。 ・自分の欲求、興味、希望などを十分に自分の身体の上に表現できる・まわりの人々に理解してもらえる
⑪自分の信仰に従って礼拝する ・誰もが(聖人も罪人も)ひとしく医療従事者の援助を受けられ、かつ自分の信じる教義・思想に従う権利が守られる・自分の宗教に基づいた生活の仕方ができる
⑫達成感のあるような仕事をする。 ・身体的あるいは精神的に仕事(生産活動)ができる・自分が社会に受け入れられているという満足感がある
⑬遊び、あるいは種々のレクリエーションに参加する。 ・遊びを通したコミュニケーションによる満足感の獲得ができる環境にある
⑭正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる。 ・回復、あるいは病気の進行阻止のための、十分な健康教育を行うための意欲を持っている

 

 

3-2、ゴードン:11の機能的健康パターン

カルテや患者から得た情報を整理するために活用する理論として、アメリカの博士マージョリー・ ゴードンが説く、「11の機能的健康パターン」も有効です。これは、ヘンダーソンのそれと似ており、どちらも非常に実用的であることから、看護師によって、ヘンダーソン派、ゴートン派に分かれるほどです。

 

得た情報を整理する整理し、適切にアセスメントするために、一種のテンプレートである、このゴードンの機能的健康パターンは非常に有用であるため、しっかりと暗記しておきましょう。

 

11の機能的健康パターン 項目
①健康知覚・健康管理 -既往歴、現病歴、健康状態、病気への理解-喫煙・アルコール・薬物・アレルギーの有無
②栄養・代謝 -身長、体重、BMI、体温の変動・悪寒、発汗の有無-嗜好・偏食・間食・食欲・食事制限の有無-爪・毛髪・皮膚・体液の状態と、感染の兆候
③排泄 -排便の回数・性状・量、不快感や残便感の有無-排尿の回数・性状・量、不快感や残尿感の有無-ドレーンからの排液(量・性状・皮膚の状態)
④活動・運動 呼吸、脈拍、血圧など、バイタルサインの正常確認歩行状況と姿勢、身体の障害・運動器系症状の有無セルフケア行動・移動動作など運動機能の正常確認
⑤睡眠・休息 睡眠時間・熟眠度、入眠障害・睡眠中断の有無健康時の休息の有無と休息の仕方
⑥認知・知覚 視力・聴力・味覚・嗅覚・触覚・知覚など感覚器の状態疼痛・掻痒感・眩暈・しびれの有無と程度意識レベル・言語能力・記憶力・理解力の状態
⑦自己認識・自己概念 表情・声・話し方、疾病や治療に対する想い・感情不安・絶望感・無力感の有無自己尊重、家庭や社会における役割遂行と自立
⑧役割・関係 家族の構成や家族に対する想い、キーパーソンの有無職業(学校)における内容・役割・満足度
⑨性・生殖 月経事情、生殖器の状態、妊娠・分娩回数性関係に対する問題の有無と満足度
⑩コーピング・ストレス耐性 ストレス因子の有無、ストレス発散方法家族や友人など、身近な相談相手の有無
⑪価値・信念 宗教・宗教的習慣の有無とその内容家族のしきたり・習慣の有無とその内容

 

 

3-3、マズロー:5つの人間のニードの階層構造(欲求5段階説)

人間の欲求は段階的に存在し、①生理的欲求→②安全欲求→社会的欲求→尊厳欲求→自己実現欲求の順に、ピラミッドのように5段階で構成され、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲する性質を持つ、というのがアメリカの心理学者、アブラハム・マズローの欲求5段階説です。

 

フェーズ 欲求 解説
第一段階 生理的欲求 食べる、寝るといった生活活動における欲求
第二段階 安全欲求 自分の健康、生活や経済的な安定に対する欲求
第三段階 社会的欲求 集団に属したい、仲間が欲しいなどの帰属に対する欲求
第四段階 尊厳欲求 認められたい、尊敬されたいなど心理的充実に対する欲求
第五段階 自己実現欲求 自分の能力を引き出し、創造的活動がしたいという欲求

 

例えば、自力排便ができない患者は、①生理的欲求の段階におり、それより高次である②安全欲求、③社会的欲求、④尊厳欲求、⑤自己実現欲求に、現状では達することができません。

 

この状態では、心理的に負担が大きく、不安や緊張状態が持続していくことになります。よって、自己排便ができるような優先的看護が必要となるのです。マズローの欲求5段階説は、あくまでも心理的影響に関する説ですが、看護において当てはまる点が多く、アセスメントにおいても役に立つことが多いため、頭の隅に置いておきましょう。

 

 

4、「SOAP」形式での考え方

 

看護過程において、患者から主観的・客観的な情報を収集した後、それらをアセスメントとし、今後の看護における計画を立てるといった、一連の流れが存在します。これを「SOAP」形式と呼び、SOAPを基にカルテなどに記載することがよくあります。

 

SOAP形式は、いわば論理であり、上手なSOAPは論理的であると言えるため、SOAPを把握することは非常に大切で、適切な看護過程のために不可欠な要素なのです。

 

 

 

・[S]ubject(主観)

Subjectというのは主観的見解を意味し、患者本人や家族の訴えのことを指します。

 

・[O]bject(客観)

Objectは、客観的見解を意味し、誰がみても分かる事実のことを指します。よって、ここには“たぶん”や“だと思う”などの曖昧な記述がNGであり、確かな情報のみを記載します。

 

・[A]ssessment(アセスメント)

Assessmentは、評価を意味し、入手した客観的な事実、それに対する援助者の評価、課題分析を記載します。要するに、得た情報をもとにした専門的な判断結果のこと。

 

・[P]lan (計画)

Planは、上記の事実に基づいた計画のことを指します。今後どのように治療を行うのかなど、今後の展望を記載したり、必要な修正事項などもここに記載します。

 

 

5、アセスメントの書き方と具体例

上記のようにSOAP形式を基に、ヘンダーソンやゴートンなどの看護理論を活用して、アセスメントを行います。ただし、適切にアセスメントするためには、相応の情報が必要になります。

 

つまり、SOAPの「S」「O」にあたる部分で、特に「O」である客観的な事実は非常に重要です。この情報が多ければ多いほど、質の高いアセスメントが可能であり、情報が少なければ充実しません。それゆえ、いかに多くの情報を得られるかがポイントになってきます。また、アセスメントに繋げるために、1つの情報を掘り下げていく必要があります。

 

 

5-1、Objectの考え方

「O」には客観的な情報を記載していきますが、可能な限り詳しく記載することを心がけましょう。その際、誰にでも分かるように端的かつ要点をついた情報を記載していくことがより良い「O」に繋がり、アセスメントにも非常に役に立ちます。

 

例1、疼痛(①発生時期、②箇所、③程度、④継続期間、⑤症状)

例2、浮腫(①発生時期、②箇所、③程度(痛みの有無・膨張具合、熱感など)

例3、末梢冷感(①箇所、②程度[色・動脈触知など]、③自覚の有無、④全体症状)

 

このように、それぞれの症状に対して、幅広く観察することが大切です。

 

 

5-2、Assessmentの導き方

 

「A」は、「S」と「O」の情報を整理・分析して、ケアを行う上での対策案を発案します。この際、必ず「S」または「O」の項目に触れておかなければいけません。“まとまりのないアセスメント”、“具体的でないアセスメント”は、「S」と「O」に触れていないことが多く、いわゆる脱線したSOAPになってしまうため、必ず、1つの症状につき1つのSOAPを完成させるようにしてください。

 

SOAPの中で最も難しい「A」は、「S」と「O」の情報をまとめ、問題点や改善点、注意点などを提起し、「P」に繋げなければいけません。そこで重要となるのが、“原因”“予測”“理由”の3項目です。

 

具体的なアセスメントを行うためには、まず以下の3つのポイントを抑えておきましょう。

 

原因(なぜその症状が出現しているのか)②予測(ケアを行わないと、今後どうなってしまうのか)③理由(各症状に対して、なぜそのケアが必要なのか)

 

上記の3つのポイントをもとに、「足背の浮腫」を例にとった、具体的かつ的確なアセスメントは以下の通りです。

 

例:足背に浮腫がある場合

腎機能の低下に伴い、アルブミンが低下し、浮腫が出現している。現時点では未だに、腎機能の基準値は逸脱しているため、今後も浮腫が持続する、または悪化する可能性が高い。靴を脱ぐと、靴の跡が足背にみられることから、靴による圧迫で、皮膚損傷を起こす可能性がある。

 

 

このように、“なぜ”という疑問から派生させていき、それらを根拠と結びつけることにより、的確なアセスメントを行うことが出来ます。経験も重要ですが、何より論理的思考ができるかが重要になってくるため、日頃から“なぜ”という疑問を持っておくようにしておきましょう。

 

 

まとめ

適切なアセスメントを行うためには、慣れも重要ですが、骨組み(看護理論)への理解と把握、各症状における観察力・分析力が重要となってきます。また、“~だから○の結果になる”というような論理的思考が必要不可欠です。

 

看護学生だけでなく、現職の看護師の中でも適切にアセスメントできない人は多いものの、的を得た正確なアセスメントを行うことで、患者の負担軽減や早期治療に繋がるため、的確なアセスメントができるよう、看護理論やSOAPに対する理解はもちろん、病気や症状に関する知識も深めておきましょう。

 

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【ペースメーカー看護まとめ】看護計画、観察、指導

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ペースメーカーペースメーカーは一種の精密機械であり、さらに植え込むためには手術が必要になるため、患者さんの負担は大きいものです。また、合併症の予防、精神的・肉体的負担の緩和、社会復帰後のための指導など、実に多くのケア項目が存在します。

 

ここでは、ペースメーカーのさまざまな情報に加え、看護計画やアセスメントなど、看護過程についても詳しく紹介していますので、ペースメーカー装着患者さんへの看護に自信のない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識の習得に励んでください。

 

 

1、ペースメーカーとは

私たち人間の心臓は、1日に約10万回の拍動を繰り返しています。拍動は血液を体内に循環させるポンプの役割を果たしているため、生命維持にとって心臓の活動は必要不可欠です。

 

このように心臓が収縮と弛緩を繰り返すことによって体内の血液を循環させるわけですが、心臓が力強く収縮・弛緩するためには、心臓の細胞が電気的に活動(興奮)しなければいけません。この興奮信号が正常に作られない病気のことを「洞不全症候群」と言い、心臓が正常に活動しないために、身体上のさまざまな症状が出現します。

 

また、興奮信号の伝導率が悪くなる病気を「伝導障害」、心臓内で興奮信号の流れがぐるぐる回転し脈拍が異常に遅くなる「除脈」など、心臓が正常に働かない病気はさまざまあり、息切れや全身倦怠感といった軽度症状から始まり、心臓が正常に働かない状態が継続すると心不全など重篤な循環器疾患を発症します。

 

心臓の興奮信号を正常にし、心臓の正常な活動を促すためにペースメーカーが用いられ、心臓から送られる信号をペースメーカーが受け取り、ペースメーカーから電気刺激を心臓へ伝えることで、心臓の調律を図ります。それゆえ、ペースメーカーは「心臓の調律師」とも呼ばれており、現在では日本人の約1000人に1人が装着しています。

 

 

2、ペースメーカーの適応

ペースメーカーが適応になる疾患はさまざまあり、心臓の拍動や機能に何らかの異常があれば、植え込み(留置)が検討されます。また、疾患だけでなく、合併症の併発などによる心臓機能低下を防ぐために予防的処置として適応になる場合もあります。

 

適応となる疾病 概要
洞不全症候群 洞房結節の細胞に異常が生じることで徐脈を起こす
房室ブロック 心臓の刺激伝導系において、心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する
徐脈性不整脈 洞不全症候群や房室ブロックなどにより発症し、1分間の心拍数が50回未満になる
頻拍性不整脈 ある狭い範囲の異常な心筋の興奮、何らかの異常による興奮信号の旋回によって、1分間の心拍数が100回以上になる
心室性不整脈 心室頻拍や心室細動(心室粗動)など、心室の異常な興奮による不整脈
先天性心疾患 心室機能不全や心拍出力低下などにより、心機能に異常がある場合に適応
過敏性頸動脈洞症候群 反復する失神発作があり、頸動脈圧迫により長い心停止が誘発される場合に適応
肥大型心筋症 心臓の壁が厚くなり、内腔が広がりにくくなるために、心室内へ血液が流れ込むのが制限される
拡張型心筋症 心筋の細胞性質の変化により、心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気

 

このほかにも、何らかの病気により、「意識障害」「めまい」「立ちくらみ」「ふらつき」「心停止(3秒以上)」など、心機能の調律が必要な場合に、恒久的または一時的に植え込み(留置)が適応されます。

 

 

3、ペースメーカーの仕組み

ペースメーカーというのは、心臓の電気信号の調律を図るための電子回路と、それを稼働させるための電池を収めたケースに、コネクター部分が装着され、心房や心室に留置するためのリードが接続されています。

 

ペースメーカーは、これら各部位が一体化となって構成されていますが、適応となる疾患によって、大きく分けてAAIVVIVDDDDDの4つの種類が使い分けられます。

 

①AAIペースメーカー

主に洞不全症候群を発症し、刺激伝導系に関して異常のない患者に適応。心房に1本のリードを留置し、※ペーシングを行う。

 

②VVIペースメーカー

主に徐脈性不整脈や房室ブロックに適応。AAIと同様に、心房に1本のリードを留置し、ペーシングを行う。

 

③VDDペースメーカー

主に洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者に適応。心室に1本のリードを留置し、心房の活動を※センシングし、その信号をトリガーとして心室の刺激を行う。

 

④DDDペースメーカー

洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性不整脈など、適応となるほぼすべての疾患に対応。心室・心房にそれぞれ1本(計2本)のリードを留置し、センシング(心室・心房)、ペーシング(心室のみ)を行う。

 

※ペーシングとは

心臓を刺激して収縮させること。自身の心臓収縮がない場合に適応。

 

※センシングとは

心臓の動き(収縮)や脈、呼吸、体温など感知すること。

 

 

4、ペースメーカーの合併症

ペースメーカーは体内(皮下)に留意させるため、以下のような、感染症をはじめとした様々な合併症が存在します。

 

術中の合併症 気胸・血胸、リードの移動・脱落、血管損傷、心室穿孔、心房穿孔、感染、横隔膜刺激、空気、塞栓
術後の合併症 術後出血、皮下出血、血腫、血栓症・塞栓症、感染、不整脈、循環調節障害、ペーシング・センシング閾値の変化
慢性期の合併症 皮膚圧迫壊死、リード断線、リード皮膜損傷、感染、オーバーセンシング

 

 

5、ペースメーカーの注意点

ペースメーカーは電気信号により心臓に働きかける装置であるため、電磁波を発生する機器や場所に特に注意しなければいけません。また、合併症を発症リスクは比較的高いため、少しでも体に変化がみられる場合には、合併症の発症を疑い、直ちに処置を行う必要があります。

 

医療機関において 電気メスを使う手術、結石破砕療法、放射線照射療法、超音波療法、経皮的電気刺激(TENS)などの電気療法、ジアテルミー治療、      電気利用の針治療、高周波治療、低周波治療、MRI(核磁気共鳴イメージング)、X線CTなど
日常生活において 電気・電磁波機器:携帯電話、IH調理器、IH炊飯器、電動工具、肩こり治療器等の低周波治療器、電気風呂、医療用電気治療器等、高周波治療器、筋力増強用の電気機器(EMS)、体脂肪計など
磁気治療器:貼付用磁気治療器、磁気ネックレス、磁気マット、磁気枕など
電磁波の強い場所:誘導型溶鉱炉、溶接施設、発電施設、レーダー基地、 そのほか強い電磁波を発生する施設など

 

このように、電気や磁気、電波を発生する機器や場所に注意する必要がありますが、医療技術の発展により、昨今のペースメーカーの電磁干渉における耐性は以前よりも強くなっているため、各機器の使用を強制排除する必要はありません。

 

近代化により、電気や磁気、電波を発生する機器は増加の一途を辿っているため、強制排除すれば、安楽な生活を遠ざけてしまいます。それゆえ、強制排除ではなく、“注意点”と説明・指導し、何か体調に変化があれば、早急に来院するよう伝えておきましょう。

 

 

6、ペースメーカー患者への看護計画

 

ペースメーカーを装着する患者さんは、手術における恐怖、誤作動の可能性や生活の行動抑制、審美など、さまざまな心理的負担を感じています。それゆえ、合併症のことだけでなく、精神的な要因も合わせて包括的に看護計画を立案する必要があります。

 

また、入院中の身体的・精神的な看護ケアはもちろん、退院後においても安楽な生活を送れるよう、ペースメーカーへの正しい理解の促進、危険になりうる事柄への指導など、多岐に渡る事柄をもって看護ケアを行ってください。

 

 

6-1、看護目標

ペースメーカーの看護には、術前と術後で異なる点が多く、特に術後~社会復帰までの看護が重要になります。術前はペースメーカーへの正しい知識の把握を促進したり、疾病や手術に対する不安の緩和、手術に向けたコンディションの調整などが主な看護目標です。

 

術後においては、合併症の予防や苦痛・不安の緩和に加え、社会復帰に向けた様々な指導が主となりますが、患者さんによって症状や精神状態などはさまざまですので、各人にあった看護計画を立案するようにしましょう。

 

 

≪術前≫

  • 疾患やペースメーカーの仕組み・目的を理解する
  • 頻脈など適応症状に対して適切な処置を行なうことができる
  • 疾患や手術に対する不安を軽減し、手術における精神的準備ができる
  • 合併症について知り、手術に向けてコンディションを整える

 

≪術後≫

  • 合併症の早期発見と予防に努める
  • ペースメーカー作動不全に迅速に対応する
  • 患側上肢固定による身体的苦痛を緩和する
  • 行動制限を強いられることへの精神的苦痛の緩和と理解を促進する
  • 退院後の生活に対する不安の軽減、安楽な生活のための指導を行う

 

 

6-2、アセスメント・観察項目

ペースメーカーの装着患者さんへのアセスメントには非常に多くの観察項目があります。術前においては、手術までの日数が短くなればなるほど細かく観察し、術後まもなくは体調の変化が起こりやすいため、1週間程度は注意深く観察するようにしましょう。

 

また、社会復帰後の安楽な生活のために、自己検診の必要性やペースメーカーへの正しい情報を有しているかも細かく確認し、不十分であれば説明・指導してください。

 

 

≪術前≫

自覚症状・発作 動悸や息切れ、眩暈、頭痛、胸部不快感などの自覚症状と、失神発作の有無(程度や時期も)を確認し、出現時には迅速に対処すること。
健康レベル 術後の健康レベルな変化を把握するために、心機能、血液データ、バイタルサインといった健康状態に加え、腎機能や糖尿病の有無など、生活習慣における各項目・データを確認すること。
心電図モニター 入眠時、覚醒時、体動時における、心拍数、P波、波形など、各種項目に異常がないか観察し、異常があれば迅速に対処すること。
行動・運動制限 行動や運動など、心臓に負担をかけないよう、制限される範囲を守れているか確認し、必要あれば指導すること。
薬物の服用 各症状の緩和を目的として指示される内服薬などの薬物を確実に服用しているか確認すること。
生活水準 しっかりとした食事や睡眠(熟睡感)がとれているか、また、入院に際するストレスがないか観察すること
精神的不安 疾患や手術に対する不安・恐怖など、心理的負担の有無を観察し、過度にある場合には、緩和に努めること。

 

≪術後≫

創部状態 出血や皮下血腫、発赤、腫脹、嘴開、ガーゼ汚染など、創部における状態の定期観察、出現時には早急に対処すること。
合併症 血栓症・塞栓症、感染、不整脈、循環調節障害など、術後におこりうる合併症の予防のための全身症状の観察。兆候を素早く察知し、早急に対処すること。
自覚症状 創部痛、悪寒戦慄、しびれ、頭痛など、自覚症状の観察を行い、軽度なものでも軽視せず緩和に努めること。
動脈の触知 足背動脈や橈骨動脈、その他動脈の触知を確認し、術前と比較すること。
健康レベル 術前の健康レベルな変化を把握するために、心機能、血液データ、バイタルサインといった健康状態に加え、腎機能など、生活習慣における各項目・データを定期観察すること。
行動・運動制限 患側上肢固定や床上安静など、行動・運動制限をしっかり守っているか確認し、制限における苦痛やストレスの緩和に努めること。
薬物の投与 抗生物質などの薬剤投与は確実に行う。患者自身での投与の場合は、自身で適切かつ確実に投与できているか確認すること。
作動不全 血圧低下、動悸、胸痛、尿量減少、呼吸困難、冷汗など、ペースメーカーの作動不全における症状の有無を観察し、継続するようであれば、医師に報告すること。
ページング状態 心電図や脈拍測定から心拍数などを確認。また、正しく自己調律ができているか心電図の波形で確認すること。
社会復帰 ペースメーカー留置による審美や、誤作動、電磁干渉の不安・恐怖など、社会復帰に対する心理状況を観察し、芳しくなければ、指導と共に緩和に努めること。
自己検脈 心筋の状態変化、リードの移動・断線などのトラブルの早期発見のために、正しく自己検脈ができるか確認・指導し、各種異常があれば、受診するよう指導すること。
理解と把握 電気や磁気などの電磁干渉、電池の消耗、定期検診、異常時の来院、運動などの行動制限、手帳や診察券の常備など、ペースメーカー留置における注意点に対し、正しい理解把握ができているか確認し、不十分であれば指導すること。

 

 

まとめ

ペースメーカーは精密機械であり皮下に留置するため、日々、合併症のリスクを伴います。特に術中や術後まもなくに発症することが多く、それゆえ看護師は注意を払って患者さんの観察を行う必要があります。

 

また、退院後の患者さんの安楽な生活のために、看護師は細かな説明・指導も怠ってはいけません。ペースメーカーにおける看護ケアは多岐に渡りますが、当ページで紹介した各事項をしっかりと把握し、患者さんの安全・安楽な生活のために、よりより看護ケアを実践していってください。

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慶應卒の私より、アラサー看護師の友人がリッチなバリキャリになっていた

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バリキャリ

「久しぶりに飲もうよ」

 

アラサーになってから、こんな風に誘われる機会が増えている。結婚ラッシュが一山来て、飲み仲間が減ると寂しくなる時期なのかもしれない。私もまたその一人だ。急に疎遠になる既婚者の女性たちをまぶしい目で見つめながら、「でも私には仕事があるから」と奮い立たせる。

 

そのくせ会ったら話すのは「次の彼氏とは絶対結婚したい」「気になる人が私より年収低くてどうしよう」と、結婚を意識した会話ばかり。どんなにバリキャリでも、周囲が結婚していくにつれ焦りは募る。20代前半で結婚した主婦友達は「世田谷区だと3LDKのマンションが高くて」なんて何百歩も先の会話をしているのに、20代から変わらない、私たちの恋愛トーク。

 

久しぶりに看護師の友人から連絡が来た時も、これまでの恋愛のアップデートと、結婚トークでもするのかなと思っていた。結婚報告だったらどうしよう!なんて、一人でわくわくしていた。

 

その友人が看護師になる道を選んだとき、正直私は「そこまで結婚を意識しなくても」と止めた。看護師には結婚願望が強い人が多いと聞くが、彼女もそんなひとりだった。「結婚しても働けるから」と看護師資格が取れる道を選んだ彼女。理学部で研究職を選ぶことも、民間企業でバリキャリになることもできたはずなのにもったいない、と私は思っていた。そんな彼女だからきっとアラサーの今、結婚を前提にした彼がいるといったところだろう。パートタイム看護師なのかな、と思いはめぐる。

 

違和感は待ち合わせ場所で感じた。

 

「せっかくだし恵比須の美味しいお店で」と指定してきたレストランは、お酒を飲めば9000円くらいの予算。これくらいの金額を怖気づかずに払える女性を、私は商社かITでしか見ない。無理させていい店を彼女が選んでいたらどうしよう、いや正直私にも高い。おろおろしているうちに当日になってしまった。

 

彼女はシンプルながら、上質な私服でやってきた。そして、メニューの値段を見ずにホイホイ注文していった。私の看護師年収イメージが崩壊した。こいつの頼み方、絶対に年300万円で暮らしている生き方じゃない。

 

ワインのボトルを空けながら医者の愚痴を聞く。てっきり看護師は医者と結婚すると思ってたよ、と呟いたら「そんなこと絶対にない。あんな変な人たちと」と愚痴が始まった。しかし、医師に対する愚痴を話す彼女はまったく「一般職の私にセクハラをしてくる男」という口調ではなかった。「私のキャリアの邪魔をする邪魔な人材」として、彼女は医師を嫌っていた。

 

同じ「職場の嫌なやつ」の愚痴でも、キャリア志向の女性とそうでない女性では内容が変わる。キャリア志向の愚痴は「私のキャリアを邪魔する嫌な奴。さっさとこいつを潰して出世したい」という内容になる。非キャリアの女性は「平穏を脅かすヤツ。さっさと出世か異動で去ってほしい」が論旨になる。キャリア女子は、男子が去るのを待たずに潰さねばならないのだ。

 

「研修医のころはあんなにいい子たちなのに、どうして医師になると付け上がるのかしら」とののしる彼女はまぎれもなく、キャリアに属している人間だった。

 

「そういえばさ、最近ってどんな仕事してるの?」

 

ジャブのような質問に彼女はさらっと「主任っていって、下から数えてすぐの管理職。とりあえず年500~600万くらいもらえてるから、まあまあかな」と流した。

 

びっくりした。外資系や日系メーカーで総合職として働いて、ようやくもらえる金額だった。その頃の私は毎日24時まで働いていた。仕事に誇りを持っていた。そのうえで振り込まれるなけなしの給与はプライドのひとつだった。「女子でもまっとうに稼いで、食べていけるぞ」「いざとなったら相手を養えるぞ」という自負。

 

目の前の彼女は、それを当たり前のように、月数回の夜勤を引き換えに得ている。私ときたら、社会人になってもう数年になるのに、いまだに社会人の遊びを知らない。レストランが開いている時間になんて帰れない。コンビニのヤンキーが「そろそろ帰ろうぜ」と解散する深夜のコンビニに現れる亡霊のような自分。

 

対して、恵比須でさらっと美味しいお店を予約できて、仕事に同じくらい誇りをもって挑むことができる、高年収の彼女。結婚したければ、いつでもパートタイムに切り替えてゆるふわキャリアにも転換できる、彼女。

 

どこで間違ってたんだろう?と思ったところで「自分は間違っていた」と考えている自分に気づいてゾッとした。間違っていたなんて、思いたくない。

 

夜が明ければ、看護師の彼女は、白衣で戦うバリキャリ女子になるだろう。私もまた、スーツで戦うバリキャリ女子に戻るだけなのだ。きっとどっちも間違っていない。彼女も、私も。

 

☆個人の特定を避けるため、事実を一部改変しています。あらかじめご了承ください。

 

著者:トイアンナ(東京都在住)

就活・転職活動支援ライター。学生や転職希望者のキャリアを400名以上へコンサルティングしてきた実績から、ブログ『外資系OLのぐだぐだ』を中心にキャリア論を執筆し、月間50万PVを記録。

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【NICU看護まとめ】役割、家族、新生児、ストレス

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NICU

 

NICUとは、知っての通り特殊な部署で新生児を対象にしています。

NICUはどこの病院でもありそうですが、必ずあるわけではありません。総合病院であったり、産婦人科がある病院ではNICUがあります。

このように、病院によっても、NICUがある場所とない場所があります。

新生児や家族にとってなくてはならない場所です。

看護師としてどのように看護していくのかが重要になっていきます。

今回は、NICUの基本的なことを振り返り、自分の役割を見つけてみましょう。

 

1.NICUとは

NICUとはneonatal intensive care unitの略です。日本語で言うと、新生児集中治療室です。

生まれたばかりの新生児の生きようとしている命をサポートし、看護をする場所、それがNICUです。

 

・NICUの役割

生まれたばかりの新生児は、急変しやすいのでNICUでしっかり全身看護することが大切です。

新生児のためすぐに状態がみれたり何かあった時にすぐに駆けつけられるようにワンフロアになっています。

また、新生児の場合必ず家族がいます。

家族、特に母親と離れている時間が長いこともあり、愛着形成がつきにくいことや育児について何もできないことから技術がなかなか習得できなかったりすることがあります。

そして、離れていることから児の状態を知ることが出来ず、今の状態が分からず不安な思いをしている家族に対してのケアも必要となります。

このように、新生児と家族との愛着形成をサポートしたり、育児技術の習得、心理的なことなどをサポートする役割も持っています。

 

・NICUの特徴

NICUに入院する新生児は、早産や小さく生まれた、出生週数や体重は問題ないが、心疾患や染色体異常など何らかの疾患や障害を持ったなどさまざまな理由のある新生児がいます。

新生児も家族も不安に感じている中で、安心できる環境を作ることや看護師の言葉や行動などは重要となってきます。

 

2.NICUでの経験を看護研究にしてみよう

看護師にとって看護研究は、切っても切り離せないことです。

どのようなことを研究テーマにしたらいいのかわからなくなります。

では、どのような研究テーマにするといいのでしょうか。

考えてみましょう。

 

2-1.看護師と家族に関した内容

NICUの看護師は、新生児を看護するうえで新生児のことを理解することも重要ですが、家族との信頼関係がとても重要となってきます。

家族とどのようにかかわって信頼関係を築けたのか、工夫したことは何なのかなど自分の経験を踏まえ、他の人はどのように関係を築いたのかなどを調べることが出来ます。

自分の今までを振り返り、どのようにしたらいいのかを参考にすることが出来ます。

 

2-2.新生児と家族の関係性についての内容

新生児と家族の間には、愛着形成があります。

その愛着形成を築くためには何が必要なのか、看カンガルーケアをすることで効果はあるのかなど、看護師が新生児と家族に対してどのように関わることがいいのかを研究することで、自分がしている行動を見直すことが出来ます。

 

2-3.NICUに入院している新生児に関した内容

NICUに入院した新生児に注目して、入院中のケアや採血などの痛みケア、新生児の落ち着く体位の工夫の仕方、自分で予防出来ない新生児の感染防止方法、退院後の生活のサポート体制のことなど、自分が体験したことや難しかったことなどを研究すると今後の参考になります。

 

2-4.精神的なサポートに関した内容

新生児のストレス緩和のためのディベロップメントケアの効果や心疾患や障害を持った児の家族にどのように精神的サポートをしたらいいのかを研究することで、学ぶことが出来ます。

 

2-5.NICUに入院中の育児に関した内容

NICU入院中には、直接母乳をあげることが出来ないことがあります。どのように指導したらいいのかや家族への育児指導はどのようにしたらいいのかなどを研究すると、家族に分かりやすい育児指導をすることが出来るようになります。

 

紹介したように、色々な看護研究があることが分かると思います。

研究内容としては、自分が看護師としてどのように家族や新生児と関わったのか、どのようなケアをしてどのように感じたのかなどについて調べ研究をすると取り組みやすいです。

 

3.NICUでの看護師のストレス

看護師のストレスとしては、ワンフロアというどこにいても人の目に見られているということが大きいのではないでしょうか。

どのようなケアをしていても色々な人に見られているという感覚になります。

見られていても気にしない人もいると思いますが、毎日見られて自分には聞こえない声で話をしているのを見ると自分のことを話しているのではないかというような思い込みまで出てきてしまいます。

またその他にも、家族が面会時間中はほとんど来ることもあるので、疾患の軽い児は家族の都合に合わせてケアをしなくてはいけないこともあります。

そのため、家族が来る時間が遅くなってしまうとその分自分たちの仕事もずれてしまい、なかなか仕事が終わらないということもあります。

一日の計画を何度も立て直しながらケアをしていきます。

そして、新生児の状態も常に観察しなくてはいけません。モニターや全身状態、泣きすぎやミルク量の調節など、新生児の1つ1つを気にしなくてはいけません。

また、少しのことで、状態が急変しそうな児にはストレスのかからないようにケアしなければいけないので神経質になりすぎてしまい、看護師自身がストレスになります。

時には、焦らず気分を落ち着かせながらケアをすることも大切です。

 

4.まとめ

自分の看護師としての行動を振り返ることが出来たでしょうか?

NICUで働いている看護師は、新生児という命の誕生とともに、状態によっては死を見なければいけない場所です。

嬉しさと悲しさの混じった部署ですが、新生児の全身管理や家族のサポートなど幅広い知識が必要となります。

その分やりがいがあり、退院する時の喜びや家族からの言葉でやる気が出る部署です。

児のために知識を身に付け、自分なりの最適な看護が出来るように努力していきましょう。

 

 

 

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ルンバールの検査手順と副作用(頭痛など)発現時の看護ケア

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ルンバール

ルンバールはありふれた検査の一つですが、数多くある検査の中でも合併症のリスクが高く、軽度なものはもちろん、死に至るような重篤な合併症のリスクも高いため、安直な考えで看護を行ってはいけません。

 

合併症を予防する、患者さんの症状を緩和させるためには、まずルンバールについてや、介助の方法について詳しく知る必要があります。当ページでは、適応疾患や禁忌、合併症、検査、穿刺手順など、さまざまな情報を詳しく紹介していますので、ルンバールの看護に自信のない方は、ぜひ参考になさってください。

 

 

1、ルンバールとは?

ルンバールは、腰椎部で行う脳髄液採取または検査のことであり、一般的には「腰椎穿刺(ようついせんし)」と言います。背中から腰椎と腰椎の間に針を刺し、脊髄くも膜下腔に存在する髄液を採取する手技であり、主に髄膜炎、脳腫瘍、くも膜下出血などの診断・検査に行います。

 

穿刺後に髄液の圧力を計り、糖や細胞数、蛋白などの各種データを測定するために5~6ml程度の髄液を採取しますが、この手技は難しいものではなく、15分~20分程度で終わる簡単なものです。

 

しかしながら、侵襲を伴う検査であるため、軽視してはならず、穿刺箇所や穿刺深度により合併症を発症することもあります。また、髄液を採取することで、髄膜や神経、静脈が下方に牽引され、鈍い頭痛を伴うことがあるため、注意深く観察し、状況に応じた適切な看護が求められます。

 

 

2、ルンバールの適応

ルンバールが適応となるのは主に脳疾患や神経疾患です。これらの疾患の発症時には、髄液の値(圧・蛋白・糖など)が変化するために、髄液を採取し検査することで、病気の判別を行います。なお、一般的に適応となるのは以下の疾患です。

 

・髄膜炎

・くも膜下出血

・クモ膜下腔閉塞

・脳腫瘍

・特発性頭蓋内圧亢進症

・ギランバレー症候群

・多発性硬化症

・神経梅毒

・神経ペーチェット病

 

また、上記の疾患の判別だけでなく、場合によっては抗癌剤の髄注や脊髄造影のための造影剤注入の際にも行われます。

 

 

3、ルンバールの禁忌

ルンバールを行うにあたって、以下の4つの禁忌が存在します。

 

・頭蓋内圧亢進が著しい場合

(脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア)をきたすような頭蓋内圧亢進のみ禁忌)

・著しい出血傾向のある場合

・穿刺部位に感染巣がある場合

・脊髄の動静脈奇形がある場合

 

中でも気をつけなければいけないのが、頭蓋内圧が亢進している場合。腫瘍や出血、膿瘍などによって頭蓋骨の中が圧迫された状態を「頭蓋内圧亢進」と言い、髄液を採取することで、脳圧が一気に下がり、大後頭孔を通って脳が外に飛び出す「脳ヘルニア」を発症する可能性があります。

 

ただし、髄膜炎などで頭蓋内圧が亢進している場合でも、腫瘍や出血、膿瘍などが原因で脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア)をきたす“可能性がない”場合には禁忌とはなりません。

 

 

4、ルンバールの合併症

ルンバールの合併症は以下の通りです。

 

・低髄液圧症候群

・脳ヘルニア

・局所の神経根損傷と背部痛

・感染症

・出血性合併症

・類上皮腫

 

ルンバールの合併症は多岐に渡り、特に怖いのが脳ヘルニアと感染症です。脳ヘルニアは上記で説明したように事前に細心の注意を払って穿刺実施の選択を行い、完全無菌操作を徹底して感染症の予防に努めます。

 

これら合併症のうち、最も発症リスクが高いのが「低髄液圧症候群」です。穿刺による髄液の漏出や、採取による髄液圧の低下により頭痛や吐き気といった症状が発現します。なお、これを完全に予防する手立ては現在のところありません。

 

 

4-1、術後の頭痛

手術後の合併症として、最も多くの症例があるのが頭痛です。上記で挙げた合併症の一つである低髄液圧症候群や非血管性頭蓋内疾患、穿刺角度の不一致、針穴から髄液が漏れるなど、さまざまな原因があり、約20%の患者が術後に激しい頭の痛みを伴います。

 

これは術後まもなくから72時間以内に発症することが多いものの、通常は数日で改善されます。また、頭痛と言っても発現部位や症状は人それぞれであり、起立時に悪化する頭痛、後頭部痛、頚部痛、目の奥の痛みなど多岐に渡ります。

 

特に起立時の頭痛の割合が高いため、術後まもなくから約2時間程度は仰臥位で安静状態を維持するよう指導します。手術は約20分で完結しますが、術後の起立を防ぐために、術前にお手洗いを済ますよう指導するなど、頭痛の緩和に貢献できるよう看護を行ってください。

 

なお、術後における頭痛緩和の対処は以下の通りです。

 

・仰臥位での安静状態の維持

仰臥位とは、いわゆる仰向けの状態ですが、枕を用いて頭を拳上すると頭痛が激しくなる場合が多いため、枕を用いず、腰と同等の高さを保ったまま安静を保持します。

 

・鎮痛薬の投与

疑いのある病気に対する禁忌になりえない鎮痛薬を用いて頭痛の緩和を図ります。

 

・水分補給

血液中の水分を十分補給することにより、骨髄液が速く補充され、頭痛の緩和を図ることができます。飲水による水分摂取も効果的ですが、即効性を考慮する場合、穿刺後すぐに1リットル程度の水分を点滴で補充する方がより効果的です。

 

・自血パッチの使用

腰椎硬膜外腔に患者の凝固静脈血を数mL注入することにより、頭痛の緩和を図りますが、通常、激しい頭痛が長期的に持続する場合にのみ適応となります。

 

 

また、頭痛予防の対処は以下の通りです。

 

・ルンバール時の適切な体位

背中を丸めて膝を抱え、ベッドに鉛直に立て、背中がのめり込まない体位が適切。体位が適切でないと穿刺箇所や深度に影響を及ぼす可能性があることから、しっかりと調整・確認しておきましょう。

 

・穿刺針の変更

穿刺針は1mm以下の太さのものを使用しますが、ルンバールを多く経験している患者の中で、術後に頭痛を起こすことが多い患者には、穿刺針をより細いものに変更することを検討します。穿刺針を細くすることで、髄液の漏出量が減る、又はなくなる可能性があるため、医師との相談のもと変更を検討します。

 

・穿刺技術の向上

術後の頭痛発生には医師の穿刺技術が大きく関係します。看護師には直接関係のない事項であるものの、体位や穿刺箇所・深度など、細かくチェックしておきましょう。

 

・採取髄液の減量

一般的にルンバールで採取する髄液量は20mlで、4本の試験管にそれぞれ5mlずつ採取します。この基準量よりも多く採取している場合には減量しましょう。小児は成人よりも髄液量や産出量が少ないため、発育具合によっても検討する必要があります。

 

 

5、ルンバールの検査

脳の病気は主にCTやMRIなどの検査を行いますが、その際に異常がない場合、精密検査として髄液の成分値(蛋白・IgG・糖・CLなど)を詳しく調べ、病気の判別を行います。

 

髄液の化学的検査①

総蛋白(mg/dl) IgG(mg/dl) 糖(mg/dl) CL(mEq/l)
基準値 10~40 0.8~4.1 50~80 120~125
ウイルス性髄膜炎 ± ±~↓
細菌性髄膜炎 ↑↑ ↓↓ ↓↓
真菌性髄膜炎 ↑↑ ↓↓
結核性髄膜炎 ↑↑ ↓↓
クモ膜下出血 ↑↑↑ ±
クモ膜下腔閉塞 ↑↑↑ ±~↑ ± ±~↓
ギランバレー症候群 ↑↑ ± ±
脳腫瘍 ±~↑ ±~↑ ±~↓ ±
多発性硬化症 ±~↑ ↑↑ ± ±
神経梅毒 ± ±
神経ペーチェット病 ↑↑ ± ±

 

また、外観や液圧、細胞数など、あらゆるデータを基に該当疾患の判別を行います。以下はルンバール適応の主となる「髄膜炎」と「くも膜下出血」の性状データです。

 

髄液の検査結果②

正常 ウイルス性髄膜炎 細菌性髄膜炎 くも膜下出血
外観 水様透明 水様透明 水様透明~混濁 血性~黄
液圧 70~180mmH2O ↑↑ ↑↑ ↑↑↑
細胞数 0~5/mm3(おもにリンパ球) ↑↑(おもにリンパ球) ↑↑↑(おもに多核球) ↑(おもにリンパ球)

 

 

5-1、液圧(初圧)

ルンバール時には髄液の採取だけでなく、髄液圧(初圧)の測定も同時に行います。くも膜下腔に穿刺針を刺入した後、穿刺針と圧棒を連結させて初圧を測定し、髄液採取後に再度測定します。(終圧測定)

 

この測定結果により、初圧が高い場合には「髄膜炎」、「くも膜下出血」、「脳腫瘍」、「脳血管障害」、「脳膿瘍」などの病気を疑い、測定に不備がある、または測定値が不明瞭の場合には、“※クエッケンシュテット兆候(試験)”を行い、詳細に検査します。

 

※クエッケンシュテット兆候(試験)とは
頭蓋内の静脈とクモ膜下腔、それに脊柱管内のクモ膜下腔が正常に交通しているかどうかをみる試験で、左右の頸静脈を軽く圧迫すると、正常であれば100~300mmH2O程度の上昇がみられ、くも膜下腔に閉塞があると50mmH2O以下となり、これにより詳細な病気判別が可能となります。ただし、初圧が高いときには脳圧亢進を避けるために通常は行いません。

 

 

6、ルンバールの手順

ルンバールは20分程度で完結するものの、合併症のリスクが高いため、看護師は各手順の中で、説明や観察など、適切な看護ケアが求められます。

 

穿刺を行うのは医師であるため、穿刺に際する全責任は医師にありますが、患者さんの安楽を支援できるのは看護師だけ。それゆえ、適切な看護ケアが行えるよう、手順やポイントをしっかりと把握しておきましょう。

 

 

≪準備≫

・検査の必要性・リスクなどについて説明する

ルンバールは比較的容易な検査ですが、侵襲を伴うものであるため、検査内容や合併症などルンバールに際する詳細を説明し同意・了承を得ます。

 

・術前3時間は禁食する

穿刺後に嘔気・嘔吐が起こることがあるため、術前3時間程度(医療機関によっては延長)、食事を摂らないようにします。

 

・排尿・排便を済ませてもらう

穿刺自体は20分程度で完結するものの、穿刺後は頭痛などの合併症の予防・緩和のために、安静状態を維持する必要があるため、穿刺前に排尿・排便を済ませてもらいます。

 

 

≪穿刺時≫

①必要物品を揃える

スパイナル針(穿刺用)、注射針(18G、局麻用23G)、注射器(局麻用、5ml)、局所麻酔薬、エクステンションチューブ、防水シーツ、定規、滅菌試験管、滅菌ガーゼ、イソジン綿球、穴あき覆布、滅菌手袋、マスク(医師用)、手袋、マスク(自分用)、圧迫固定用テープ、絆創膏

 

②体位の調節

側臥位をとって両膝を抱え、エビのように前屈してもらう。この際、介助者(看護師)は、患者の前面に立ち、患者の膝・首を抱えて腰椎骨間腔を広くすること。

 

③.防水シーツを敷く

シーツの汚染を防止するために、体幹部の下に防水シーツを敷きます。

 

④穿刺部位の消毒

汚染による細菌感染を防ぐために、医師が穿刺部位に消毒を行う。消毒液が乾燥するまでに、マスクや滅菌手袋、帽子を着用します。

 

⑤局所麻酔を行う

穿刺は痛みを伴うため、まず滅菌ドレープで患者の体を覆った後、医師により局所麻酔を行います。この際、看護師は安全に行えるよう腹側で患者の体位を固定すると共に、麻酔時・麻酔後の患者の変化(意識レベルの変化、呼吸・心停止・痙攣・悪心・嘔吐・ショック症状の有無)を観察します。

 

⑥穿刺針を刺入する

医師が穿刺針を第3~4腰椎間(または第4~5腰椎間)に刺入しますが、この際、患者に刺入する旨を声掛けし、患者の意識状態や痛みの有無を観察します。また、看護師は髄液が適切に流出していることを確認します。

 

⑦髄液を採取する

医師が穿刺針と圧棒を連結させて髄液圧(初圧)を測定。初圧の正常値は70-180mmH2Oであり、これにより概略的に病気の判別を行います。採取した髄液は試験管に入れ、量や性状などを記録。また、初圧測定後、終圧も測定した後、抜針します。

 

⑧圧迫止血を行う

髄液の漏出や出血を防ぐために、しっかりと刺入部位を圧迫し、止血を行います。

 

⑨安静時間を確認する

穿刺後は頭痛などの合併症のリスクがつきまとうため絶対安静が不可欠。医師に安静時間を確認し、患者へ安静の必要性や合併症などについて説明します。

 

 

≪穿刺後≫

・安静を維持する

穿刺後は頭痛や吐き気などの症状が出現しやすいため、仰臥位で2時間~3時間程度(場合によってはそれ以上)、安静を維持します。この際、頭部を腰の高さと水平にするために、枕を使わず仰臥位の状態で安静にしてもらいます。

 

・合併症の有無・程度を確認する

低髄液圧症候群、局所の神経根損傷と背部痛、感染症、出血性合併症、類上皮腫など、穿刺後に起こりうる合併症の有無と程度を確認・観察します。少しでも異常がある場合には、直ちに医師に報告し処置を講じます。また、激しい頭痛の発現時には、水分の投与など、状況に応じて処置を行います。

 

・バイタルサインなど確認する

血圧、脈拍、呼吸状態といったバイタルサイン、そのほか表情や顔色など、多岐に渡る項目を観察し、異常があれば直ちに医師に報告します。

 

 

まとめ

ルンバールは合併症が起こりやすい検査の一つであり、時には重篤な病気を発症し、死に至ることもあります。それゆえ、穿刺前・穿刺時・穿刺後と、すべての過程において細心の注意を払って患者の状態を観察し、異常時にはすぐに対処できる体制を整えておく必要があります。

 

患者さんの安楽を援助できるのは医師ではなく看護師です。20分程度で終わる簡単な検査だからと言って軽視するのではなく、しっかりと観察し、適切な看護ケアを行ってください。

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アンギオ検査(血管造影法)の手順や合併症・副作用への理解

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アンギオ

アンギオグラフィーは、さまざまな疾病の特定に非常に有効な検査であるものの、副作用や合併症のリスクが常につきまといます。リスクを回避するためには、アンギオグラフィーに関する深い知識が必要不可欠です。

 

また、検査前、検査中、検査後、すべての過程において、患者さんのバイタルサインや健康状態を注意深く観察し、異常時には迅速かつ適切に対処しなければいけません。

 

当ページでは、アンギオグラフィーに関して参考になる、さまざまな情報を記載していますので、アンギオグラフィーの検査や看護に不安のある方は、しっかりとお読みいただき、知識を深めてください。

 

 

1、アンギオグラフィーとは

アンギオグラフィーとは、血管造影検査のことで、「アンジオ」または「アンギオ」とも呼ばれています。一般的に、手首や大腿鼠径部などの血管からカテーテルと呼ばれる管を挿入して、肝臓や腎臓、腸管、脳や心臓まで、カテーテルを血管の走行に沿って進めていき、目的の位置に達したところで、血管の内部を高精度に撮影するために必要な造影剤を流し、目的部位をX線透視撮影することで、血管の形状や走行などを視覚的に検査することができます。

 

X線撮影による検査は1895年にドイツのレントゲン博士に考案され、骨折や肺の病気など、さまざまな分野で大きな貢献を果たしたものの、X線撮影のみでは血管の状態をみることはできませんでした。

 

1929年になり、ドイツのフォルスマン医師によって、現アンギオグラフィーの元となるカテーテル法が考案され、さらに1953年にはセルジンガー博士によって当初のカテーテル法を改良したセルジンガー法が考案されました。セルシンガー法の登場で、従来の課題であった合併症のリスクが大幅に減り、さらにカテーテルやガイドワイヤーの品質が向上したことで、血管の検査だけでなく、治療も行えるようになりました。

 

現在では、クモ膜下出血や脳梗塞などの脳血管障害のほか、動脈瘤などの脳血管の病変、脳腫瘍、冠動脈・下肢動脈の閉塞・狭窄など、さまざまな疾病の検査・治療に用いられ、最近では、さらに容易かつ安全な三次元血管撮影法、「CT血管撮影法(CTアンジオグラフィ;CTA)」と「MR血管撮像法(MRアンジオグラフィ;MRA)」の2つが考案され、カテーテル法に変わり、この三次元血管撮影法が主流になりつつあります。

 

 

2、アンギオグラフィーの種類

上記で軽く紹介したように、アンギオグラフィーには大きく分けて「カテーテル血管造影法」と「三次元血管撮影法(CTA・MRA)」があります。それぞれ、検査法が異なるため、しっかりと理解しておきましょう。

 

・カテーテル血管造影法

血管の状態や流れを調べるために、腕や鼠径部などの動脈からカテーテルを挿入し、目的の血管まで通した後、造影剤を流し込んで撮影する技法です。適応部位は、脳、心臓、腹部、下肢と、ほぼ身体全体を網羅しており、血管の狭窄部位や腫瘍を栄養している血管を調べるのに用いられます。また、腫瘍を栄養している血管を塞栓したり、狭窄している血管を広げる治療も同時に行うことができます。

 

なお、目的部位ごとに「脳血管造影検査」、「冠動脈造影検査」、「腹部血管造影検査

」、「下肢動脈造影検査」の4つがあり、適応疾患や穿刺部位などの違いによって区別されます。ただし、根本的な検査法はどれも大きな違いはありません。

 

①脳血管造影検査

肘動脈または股の付け根の大腿動脈からカテーテルを挿入し、頸動脈あたりで造影剤を流し込んでX線撮影を行い、血管の状態や流れを検査します。くも膜下出血、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などさまざまな疾患の検査・治療を目的として行われます。

 

②冠動脈造影検査

冠動脈にカテーテルを挿入し、造影剤を流し込んで狭心症や心筋梗塞など心疾患の原因となる血管の閉塞・狭窄を検査します。閉塞・狭窄している場所があれば、バルーンカテーテルを用いて膨らませたり、ステントと呼ばれる網目状の金属の筒を該当箇所に留置して血管を広げるといった治療も行われます。

 

③腹部血管造影検査

主に足の付け根にある動脈にカテーテルを挿入し、肝臓や腎臓、胆嚢、腸などの臓器の血管の状態と流れを検査します。腹部大動脈瘤、腎動脈瘤、肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、など、さまざまな疾病の検査に用いられ、大動脈瘤に対してはステントの留意・コイルによる止血、がんに対しては抗がん剤の投与といった治療も行われます。

 

④下肢動脈造影検査

下肢動脈造影検査では主に、閉塞性動脈硬化症が適応疾患であり、下肢動脈の閉塞・狭窄の有無を検査します。閉塞・狭窄がみつかった場合には、バルーンカテーテルやステントを用いて治療を行います。

 

・CT血管撮影法(CTA)

CTとは、身体の検査部位に対し、さまざまな角度からスリット状態にX線を照射し、それで得たデータをコンピュータで処理して、体のX線輪切り像を作る検査法です。従来は血管の詳細な情報を得ることができなかったものの、医療技術の発展に伴い、カテーテル法と同質の情報を持つ血管の画像を得ることができるCT血管撮影法(CTA)が登場しました。

 

CTAはカテーテルを用いることなく、静脈注射によって造影剤(ヨード)を流しこむことで検査ができるため、侵襲性が低く、合併症のリスクが大幅に減ったことで、医療設備が整っている病院では、カテーテル法ではなく、CTAが主流となっています。しかしながら、CTAでは治療を行うことができないため、治療が必要な際はカテーテル法が用いられます。

 

・MR血管撮像法(MRA)

MRIとアンギオグラフィーが組み合わさった検査法をMR血管撮像法(MRA)と言います。従来、MRIは脳や脊椎、膝、肩、子宮、卵巣などにおける、さまざまな疾病の早期発見を目的として行われていましたが、CTと同様、医療技術の発展に伴い、詳細な血管情報を得ることができるようになりました。

 

MRAにはガドリニウム造影剤が用いられ、CTAのヨード造影剤よりも取得画像のコントラストが強いため、より鮮明に血管情報を得ることができます。

 

 

2-1、カテーテル法と三次元血管撮影法の違い

上記でカテーテル法と三次元血管撮影法の特徴を記載しましたが、それぞれには「侵襲性」、「診断域」、「検査部位」「治療の実施」の4つの大きな違いがあります。

 

・侵襲性

カテーテル法は、カテーテルを動脈から挿入することで、血管を傷つける・破る、出血する、血栓が飛ぶなどの合併症のリスクが常につきまといます。それに対して、三次元血管撮影法(CTA・MRA)は動脈注射により、直接的に造影剤を血管内に流し込むため、血管を損傷させる危険性がありません。

 

・診断域

カテーテルによる造影法は、上部からのみの血管情報しか取得できません。それに対し、三次元血管撮影法は、①血管を様々な角度から見ることができる、②周囲の組織・臓器の位置関係の把握・評価が容易にできる、③血管壁の様子がわかる、など、3D撮影により色々な見方ができるため、病気の治療・手術のアプローチがしやすいという特徴があります。その反面、特にMRAは検査時間が長いなどの欠点も存在します。

 

・検査部位

カテーテル法は「脳」「心臓」「腹部」「下肢」と身体全体に適応されるのに対し、三次元血管撮影法は脳血管の検査を主とします。ただし、場合によっては心臓や腹部、下肢にも適応となるため、明確な相違点ではありませんが、カテーテル法は全身、三次元血管撮影法は脳と覚えておいても良いでしょう。

 

・治療の実施

カテーテル法は、バルーンカテーテルやステントを用いた治療が可能であるのに対し、三次元血管撮影法は検査のみしか行うことが出来ません。それゆえ、血管の閉塞・狭窄の検査とともに治療を行う際は、カテーテル法が用いられます。この点が、カテーテル法と三次元血管撮影法の大きな違いと言えるでしょう。

 

 

3、アンギオグラフィーの適応疾患

アンギオグラフィーは主に血管の閉塞・狭窄による疾病の判別のための検査であり、脳・心臓・腹部・下肢において、閉塞・狭窄が招くさまざまな疾病が検査・治療の適応となります。

 

脳腫瘍、脳動脈瘤、くも膜下出血、脳出血、血管腫、血管閉塞、動脈硬化、脳動静脈奇形、硬膜内・外血腫など
心臓 心筋梗塞、狭心症、冠動脈狭窄、先天性心疾患、心臓弁膜症、大動脈バイパス術後の評価など
腹部 がん(肝臓・胆嚢・胆管・膵臓・腎臓など)、肺梗塞、気管支疾患、縦隔腫瘍、肝腫瘍、肝硬変、門脈圧亢進症、膵腫瘍、腎臓・泌尿器系腫瘍、骨腫瘍、腹部大動脈瘤、消化管出血など
下肢 閉塞性動脈硬化症、四肢血管狭窄など

 

 

4、アンギオグラフィーの禁忌

アンギオグラフィーを行う際の禁忌は数多く存在し、その多くは造影剤との相性が大きく関係しています。副作用や合併症を未然に防ぐために、各検査における禁忌事項をしっかりと覚えておきましょう。

 

■絶対禁忌となる患者

カテーテル CTA MRA
ヨード過敏症の既往歴のある患者
ガドリニウム過敏症の既往歴のある患者
重篤な甲状腺疾患のある患者
ビグアナイド系経口血糖降下剤を服用している患者
金属・電子機器を体内に留意している患者

※禁忌は○、禁忌でないものは空白で示しています。

 

■原則禁忌となる患者

カテーテル CTA MRA
一般状態が極度に悪い患者
気管支喘息のある患者
重篤な肝障害のある患者
重篤な腎障害(無尿など)のある患者
重篤な心障害のある患者
急性膵炎の患者
褐色細胞腫のある、または疑いのある患者
多発性骨髄腫のある患者
マクログロブミン血症の患者
テタニーのある患者

※禁忌は○、禁忌でないものは空白で示しています。

 

■慎重になるべき患者

カテーテル CTA MRA
薬物過敏症の既往歴のある患者
高血圧症の患者
動脈硬化のある患者
糖尿病の患者
脱水症状のある患者
甲状腺疾患のある患者
腎機能が低下している患者
肝機能が低下している患者
痙攣、てんかん、及びその素質のある患者
小児、妊産婦、高齢者

※禁忌は○、禁忌でないものは空白で示しています。

 

 

≪主な禁忌の解説≫

造影剤過敏症 ヨード・ガドリニウムの造影剤アレルギーにより、副作用を起こすため
重篤な甲状腺疾患 甲状腺機能に悪影響を与える可能性があるため
気管支喘息 副作用の発生頻度が高いため
重篤な腎障害 急性腎不全など、症状が悪化する恐れがあるため
重篤な心障害 頻脈、不整脈、血圧低下など、症状が悪化する恐れがあるため
重篤な肝障害 症状が悪化する恐れがあるため
マクログロブミン血症 静脈性胆嚢造影剤で血液のゼラチン様変化をきたし、稀に死に至るケースがあるため
多発性骨髄腫 脱水症状のある方は特に、腎不全を起こす恐れがあるため
テタニー 血液中のカルシウム濃度が低下することにより、症状が悪化する恐れがあるため
褐色細胞腫 脈、不整脈、血圧上昇などの発作が起こる恐れがあるため

 

 

5、アンギオグラフィーの主な合併症

医療技術の発展に伴い、現代のアンギオグラフィーは比較的安全ですが、特にカテーテル法においては血管にカテーテルを挿入することにより、血管損傷などの合併症の発症リスクが高い傾向にあります。また、侵襲を伴う検査であるため、発疹や吐き気、めまい、悪寒、咳など、さまざまな副作用も存在します。

 

・血管穿刺部からの出血

カテーテル法のみ、穿刺部から出血が起こることがあります。通常は少量の出血が短期間で収まりますが、場合によっては大量出血により、輸血が必要となることもあります。

 

・血管損傷

カテーテル法のみ、カテーテルを血管に沿って移動させる際に、血管を傷つける・破る、出血する、血栓が飛ぶなどの合併症が起こる場合があります。

 

・脳梗塞

カテーテル法のみ、脳血管造影検査において、カテーテル移動時に血管内部に血の塊が形成され、それが脳の血管に飛ぶことで、脳梗塞を発症する可能性があります。その結果、感覚障害や失語症、手足の痺れなど、さまざまな症状が発現し、場合によっては命に関わることもあります。

 

・腎機能障害

造影剤の使用により、腎機能の悪化を引き起こす場合があり、ヨード造影剤においては造影剤腎症、ガドリニウム造影剤においては腎性全身性硬化症などの発症リスクがあります。

 

・薬剤などによるショック

ヨードやガドリニウム造影剤にアレルギー反応を起こすことで、呼吸困難や血圧低下、蕁麻疹、潮紅など、さまざまな症状が出現することがあります。また、麻酔や抗生物質などの薬物ショックなど、各薬剤には合併症のリスクがあるため、既往歴がない場合には、投与以降、患者さんの状態を注意深く観察してください。

 

・感染症

穿刺時に細菌が侵入し、感染症を引き起こすことがあります。医療機関では、無菌操作によって検査を行いますが、現在の医療水準からは100%の無菌操作を行うのは不可能であるため、非常に稀ではあるものの、感染症の発症リスクも伴います。

 

・循環障害

カテーテル法は特に、検査後に穿刺部位を圧迫する必要があるため、これにより圧迫部位の抹消血液の流れが悪くなることで、循環障害を起こすことがあります。

 

その他

他にもコレステロール塞栓症や肺塞栓症、神経麻痺、各種副作用など、さまざまな合併症が起こる可能性があり、軽度なものから重篤なものまで多岐に渡ります。それゆえ、検査時・検査後は特に、患者さんの状態を注意深く観察する必要があります。

 

■副作用

軽度 発疹、かゆみ、じんましん、発赤、吐き気、嘔吐、血圧低下、めまい、しびれ、咽頭浮腫、喉の違和感、舌の違和感、悪寒、熱感、咳、充血など
重度 呼吸困難、意識障害、血圧低下(ショック)、痙攣、神経麻痺、血小板減少など

 

 

6、アンギオグラフィーの検査手順

アンギオグラフィー(カテーテル法)を行う際の一般的な準備・手順は以下の通りです。なお、治療に際する手順は疾病によって異なるため、検査の準備・手順のみ記載します。

 

≪準備≫

 

・検査の目的や方法、合併症の可能性を説明する

・バイタルサインを確認する

・検査前に飲食制限を行う

・排尿・排便を促す

 

 

≪検査≫

 

①点滴による水分投与を行う

造影剤には利尿作用があり、それにより脱水の可能性があるため、脱水予防のために点滴による水分補給を行います。

 

②検査室(アンギオ室)へ移動する

アンギオ室へ移動する際は、安静保持のため車椅子もしくはストレッチャー(搬送用ベッド)を使用します。

 

③心電図・血圧計を装着する

アンギオ室に入ると、まず心電図と血圧計を装着し、5分ごとに測定します。検査中の異常に速やかに対処できるよう、患者の全身状態のチェックも怠ってはいけません。

 

④穿刺部位を消毒する

感染症の予防のために、脳・心臓・腹部・下肢における検査部位に応じて穿刺部位を決定し、消毒します。

 

⑤穿刺部位に局所麻酔を行う

カテーテル挿入による痛みが伴わないよう、穿刺部位に局所麻酔を行います。検査中、痛みがある場合には、都度、局所麻酔を行い、苦痛の排除に努めます。

 

⑥カテーテルを挿入する

まず、カテーテルより一回り大きいシースと呼ばれる管を挿入し、カテーテルを挿入します。脳、心臓、腹部、下肢など、ガイドワイヤーを用いて目的の位置までカテーテルを誘導していきます。

 

⑦体位を固定する

レントゲン撮影の準備として、撮影時の乱れを防ぐために体位の固定を行います。特に頭部の場合は、額をバンドなどで固定するなど、不動の状態を維持させます。

 

⑧レントゲン撮影を行う

体位固定の後、レントゲン撮影を行いますが、特に腹部の場合は呼吸により画像に乱れが生じてしまうため、撮影時には息を止めてもらいます。

 

⑨カテーテルを抜き取る

レントゲン撮影が終了したら、カテーテル、シースの順番に抜き取ります。この際、止血のために医師が10分~15分間、手で穿刺部分を圧迫します。

 

 

6-1、検査後の注意点

アンギオグラフィーを行った後、注意すべき点は副作用や合併症です。それゆえ、確実な止血、安静保持、移動制限、水分補給など、さまざまな事項に留意しなければいけません。

 

・穿刺部位を圧迫する

カテーテルの抜去直後に医師が穿刺部位を圧迫しますが、完全に止血するために、帰室した後、さらに4時間程度、穿刺部位を圧迫します。

 

・ベッド上で安静にする

大腿動脈穿刺の場合は特に、合併症・副作用の発症を防ぐために、検査後の安静保持が不可欠です。立ったり座ったりせず、4時間程度、仰臥位で安静状態を保持します。

 

・関節の屈折を控える

さらに、穿刺した腕や足の屈折にも注意が必要です。4時間程度、曲げないように、または動かなさないように安静状態を保持します。

・十分に水分補給を行う

造影剤の排出を促すために、十分に水分を摂るようにします。

 

 

6-2、検査後の看護のポイント

アンギオグラフィーは比較的安全な検査ですが、カテーテル法は特に副作用や合併症のリスクが高いため、バイタルサインなど患者さんの状態を注意深く観察し、異常時には迅速に対処できるよう準備しておく必要があります。

 

・バイタルサインの確認

血圧、脈拍、体温、呼吸状態など、バイタルサインを確認し検査前と比較。異常がある場合には注意しておき、継続するようであれば対処してください。

 

・副作用の有無の確認

発疹、かゆみ、吐き気、めまい、喉・舌の違和感、悪寒、咳など、副作用の有無を注意深く確認・観察します。多くは一過性であるものの、呼吸困難や意識障害など、重度の副作用出現時には、すぐに医師に報告し、処置を講じてください。

 

・合併症の有無の確認

副作用と共に、合併症の有無もしっかりと確認・観察してください。特に、穿刺部位の出血や血腫、皮膚状態を注意深く観察してください。

 

 

まとめ

アンギオグラフィー自体は、カテーテル法、三次元血管撮影法ともに、簡単に行える検査法であるものの、副作用や合併症のリスクは常につきまといます。それゆえ、看護師は患者さんの体調の変化や症状の発現に注意し、医師との連携のもと、速やかに対処できる体制を整えておかなければいけません。

 

アンギオグラフィーに関する深い知識・理解をもつことで、副作用・合併症の予防や苦痛の緩和など、患者さんの安楽を支援することができます。患者さんの負担を少しでも軽減できるよう、確かな知識・理解をもとに、看護を行っていきましょう。

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ケモの看護計画 –手順と注意点のまとめ

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ケモ

ケモはがん治療においての1つの治療法であり、看護師はその治療が確実、安全、適切に行われるための看護の責務に努めなければなりません。

最後までしっかりお読み頂き、ケモに関して正確な知識を身につけましょう。

 

1、ケモとは

化学療法(chemotherapyの略)。のことで、俗に言う抗がん剤治療のことを指します。

化学療法とは抗がん性のある薬物あるいは化学物質を用いて治療することです。

 

1‐1、抗がん剤の種類

化学療法に用いられる薬剤は、がんの種類、進行度(病期)、これまで受けた治療などによって異なります。主な種類は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、微小管作用薬、白金製剤、トポイソメラーゼ阻害剤などがあります。効果はさまざまですが、主にがん細胞の増殖を抑制や破壊をする効果や、DNAと結合することによりがん細胞の分裂を抑える効果があります。

 

2、ケモの看護計画

ケモの看護で重要なことは、その患者さんにもっとも適した看護計画を立てることです。

どのような点に注意して看護計画を作成するか表にまとめたものをみていきましょう。

■抗がん剤投与前のチェック項目
①治療計画の確認と調整
治療目的と目標効果判定の方法と時期
②使用する薬剤のアセスメント
それぞれの毒性、安全性、器材の選択に影響する特徴をアセスメントし、投与上の注意点や副作用対策を考えられます。
③患者の全身状態の確認
薬剤の減量や中止が考慮される既往歴や状態はないか?検査データの確認をします(治療方針決定前、前日)。
④患者の治療に対する理解とその内容の確認
初めての治療の場合、説明内容の配慮が必要です。治療目的・目標と治療計画の理解の確認をします。
⑤投与スケジュール
予測される副作用と対応策についての説明をします。2クール目以降の患者さんの過去の治療中の副作用と対応を行います。
⑥投与中の急性症状に対応するための準備
救急カート・血管外漏出時の処置物品の準備をします。急性の悪心・嘔吐に対する対応物品と追加投与薬の指示確認を行います。

看護の際にはバイタルサインの確認や、局部における観察をもって、副作用の・合併症に注意して看護計画を立てましょう。

 

3、ケモの看護手順

抗がん剤投与時には正確な看護手順を行う必要があります。

≪抗がん剤投与時の看護手順≫

①医師の指示と搬送された薬、患者さんの確認を行います。

②薬剤の準備を行います。

③静脈投与ラインの確保(血管確保)を行います。

※血管外漏出のリスク因子を十分に考慮し、血管を選択します。

④静脈ラインの開通性の確認を行います。

※必ず血管の逆流と自然滴下の確認をします。

⑤投与を行います。

※必要な前投薬は投与されたか、指示された投与速度厳守の確認を行います。

投与終了までの時間にも注意します。

⑥輸血ラインを清潔に管理します。

⑦抗がん剤特有の急性反応のモニタリングを行います。

※過敏症/アナフィラキシー、血管外漏出、インフュージョンリアクション

急性の悪心・嘔吐がないか観察をします。

⑧急性反応への適切な対処について患者さんに説明を行います。

 

4、ケモの注意点

ケモは、薬剤によっては血管外にわずかでも漏れた場合、壊死を招く可能性があり、漏出しなくても血管炎などで強い痛みを生じることもあります。

また年齢・肝腎機能などによっては、強い副作用がでる可能性があります。

このような点を踏まえ、これでよいのか?

『治療適応・投与方法・投与量』の再確認をしましょう!

 

まとめ

化学療法中の患者さんは、副作用によってナーバスになっていることが多いため、その心情をよく考えて応対することが大切です。副作用の種類、程度、発生時期は患者さんによりそれぞれ違うため、看護師は家族にもしっかりと経過の状況を説明し理解して頂き、家族から患者さんへの対応が治療を受ける患者のメンタルを支えるキーとなることをしっかり理解し適切な看護を行いましょう。

 

寺澤ふみえ 著者情報:寺澤文枝(神奈川県在住の看護師)外科のオペ室で勤務をして現在リハビリ中心の医療に携わっています。患者様,御家族様に納得して安心して頂ける医療提供を常に心掛けて業務に取り組んでいます。

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在宅介護の看護計画|訪問看護師の病院、地域との連携と役割

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在宅看護

在宅看護とは、人々が生活している居宅において看護を行うものであり、予防的ケアから健康の維持回復をめざすケア、そして安らかな死に至るまでの終末期ケアまで、幅広い健康レベルを対象とした看護です。

また、在宅看護を行う居宅は、人々の生活の場であることから、気候・風土・文化・政治・経済・教育といった地域の特殊性によって影響を受け、非常に多様です。

一方、地域には在宅看護を提供する訪問看護ステーションや診療所などの組織のほかに、さまざまな保健・医療・福祉にかかわる機関が点在します。そのため、各機関はネットワークを広げ、一人ひとりの患者を支えていくことが求められます。

このような視点からは、患者のみならず、在宅看護を提供する組織を含む地域ケアサービスのシステムもまた在宅看護の一部です。

しかし、在宅看護は、施設内看護と異なる点が多いです。看護全般との共通性を保ちつつ、在宅看護の特殊性を十分理解し、社会の変化に応じた在宅看護を創造し続けることが求められています。

 

在宅看護の歴史とは

わが国の在宅看護は、明治時代の「派出看護婦」がその原型とされ、その後、貧困者への巡回看護や結核患者への訪問看護事業といった公衆衛生看護に引き継がれました。現在の在宅看護の形態は、1970年代に病院から退院する患者への継続看護として、先駆的な医療機関が取り組み始めた活動が元になっています。

1980年代に入ると時代は高齢化に突入し、1982年、老人保健法が制定され、ここに訪問看護活動が制度化されました。その後、1992年に老人訪問看護ステーションが創設され、1994年の健康保険法改正により高齢者にかぎらず、すべての年代に訪問看護が実施できるようになりました。

こうして在宅看護は飛躍的な変化を遂げ、在宅看護の対象者は小児から高齢者まで幅広くなり、医療機関から離れた地域であっても、訪問看護ステーションがあれば在宅看護が可能になったのです。

 

介護保険施行後に訪問看護はこう変わった

発展を経た在宅看護は、2000年の介護保険法施行とともに次のステップを迎え、それまで医療保険により行われていた訪問看護は、介護保険での実施が可能になりました。

介護保険サービスは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が計画した居宅介護支援計画に基づいて提供されます。介護保険による訪問介護では、ケアマネジャーとの連携が必須となります。

また、介護保険法の施行は、これまで家族内のものであった介護を社会化する大きな動きとなりました。在宅重視の政策により、訪問介護、訪問入浴介護などの、患者の居宅で行われる介護保険サービスが拡大し、患者はサービス内容や費用などの条件から、利用するサービスを選択できるようになりました。

そのため、改めて訪問介護の独自性が問われ、各介護保険サービスとの違いを利用者が理解できるように伝える責任が課せられたといえます。

在宅看護の視点として考慮しなければならない特徴は、①医療従事者と患者の位置関係、②看護師の責任、③患者を支える在宅ケアチームの連携、の3つです。

 

医療従事者と患者の位置関係

在宅看護では、医療従事者が居宅にいる対象者の生活の場を訪れます。そのため在宅看護においては、患者にとって看護師が訪問者(ゲスト)になるのです。

 

看護師の責任

看護師が居宅を訪問するときには多くの場合一人であり、その場には他の医療従事者は通常いません。つまり、1人の看護師の観察や判断、それに伴う看護実践に対する責任が非常に重いのです。

 

患者を支える在宅ケアチームの連携

施設内のケアチームと異なり、一般に多職種・多機関で構成されます。しかもチームメンバーが時間や場所を共有することが大変難しいです。そのため、チームメンバーとの連携が重要であり、関係調整能力が求められています。

 

在宅看護における看護師の役割

在宅看護は、患者の健康回復と維持増進、または平和な死に寄与します。そのために、患者が必要とする医療とその人自身の生活が、共存できるように援助することが必要です。これは他の看護領域と共通する点ではありますが、在宅看護の場合、行われる場が医療機関ではないことから、まずは必要な医療が在宅で適切に実施できるための医療専門家でなければなりません。

また、これらの在宅医療はその人の生活の一部であるため、看護師は日常生活の援助者の役割ももちます。日常生活の援助は、その人の能力を最大限に発揮し、QOLを高めるように行ないます。

日常生活は24時間絶え間なく続くことから、日常生活の援助の直接的実施者は看護師ではない場合が多いです。したがって、看護師は家族や他のチームメンバーを指導・支援しながら、生活の援助を行うことが大切です。

多職種が関与する在宅ケアチームのなかで、看護師は診療の補助と日常生活の視点をもつことができる職種です。したがって、在宅看護では、看護師はチーム全体の調整者としての役割が大きいのです。

在宅看護では、看護師が療養者に接する機会は断続的になります。このとき、前回と今回の訪問の間に患者に変化が起きていないかどうか、次の訪問まで安定して生活できるかどうかを判断することが重要となります。また、急に苦痛となる症状が現れれば、緊急に訪問することもあり、このときにも身体に何が起こっているのかを判断しなくてはなりません。

在宅看護を受ける患者は、複数の疾患を抱える患者や、苦痛な症状を有することも多く、さらには、運動機能やコミュニケーション能力に障害がある場合には、身体に不調が出現したとしても、自ら外来受診ができないことも多いです。

そのため、在宅ケアチームにおいて、ただちに患者を訪問することができ、どのような医療が必要であるかを判断できる訪問看護師は、患者の安心に重要な役割を果たします。

つまり、在宅看護では、看護師が患者の身体に起きたことを判断し、それを的確に、かつすみやかに医師に伝える能力は必要不可欠です。在宅看護に携わる看護師にとってフィジカルアセスメントは必須の技能(スキル)といえます。

 

フィジカルアセスメント(身体的判断)

フィジカルアセスメントは患者が訴える症状や兆候をきっかけとして、それに看護師の五感から得た情報を加えて、患者の身体にどのようなことが起きているのかを判断していく過程全体です。

そのため、数多くの疾患について、症状や観察項目を基礎知識として知っておかなければなりません。そのうえで、患者が訴える症状を十分聞き出すコミュニケーション能力と、身体に起こっている徴候を的確に把握するフィジカルイグザミネーションの2つのスキルが必要です。さらに、この2つから得られた情報を分析し、結論に導く、判断(思考過程)が必要となります。

 

フィジカルアセスメントの思考過程として、例えば、腹痛を訴えている大腸がん術後で肝転移のある患者の場合を考えてみましょう。問診にフィジカルイグザミネーションを加え、そこから得られた情報に沿ってアセスメントを行ないます。アセスメントによって身体の状況についていくつか想定される候補を挙げ、さらに、そこからもっとも該当しやすいものに絞っていく思考過程です。

 

フィジカルイグザミネーションには、問診、視診、触診、聴診、打診の5つが挙げられます。看護師は、問診、視診、触診は比較的よく用います。しかし、聴診、打診については十分な技術を習得していないこともあります。聴診と打診によって、身体の内部に起きている変化についてより多くの情報収集が可能となるため、必ず習得しておくようにします。

 

他の医療職との地域連携

年をとっても障害をもっても、自分らしく、住み慣れた地域で療養生活を送りたい、というニーズをもつ人々は多いです。そのため、家族が介護の負担を担って当然という考えではなく、社会全体で介護リスクを支え合うという「リスクの共同化」の視点が明確になり、2000年に介護保険制度が創設されました。

これにより在宅医療の現場も大きく変わり、「施設から在宅へ」の大きな流れのなか、医療依存度の高いがん、難病や小児、精神疾患をもつ人々も地域で療養できるようになってきています。

さまざまなニーズをもった療養者と家族を支えるために、その人に合った適正な援助が行えるよう、有効な連携を行う保健、医療、福祉の仕組みづくりが必要となってきました。

 

地域包括ケアシステムとは、地域住民に対し保健サービス、医療サービスおよび在宅ケア、リハビリテーションなどの介護を含む福祉サービスを、関係者が連携、協力して、地域住民のニーズに応じて、一体的、体系的に提供する仕組みです。

すなわち、ソフト面では、その地域にある保健・医療・介護・福祉の関係者が連携してサービスを提供するものであり、ハード面では、そのために必要な施設が整備され、地域のサービスの資源が連携、統合されて運営されていることです。言い換えれば、医療、介護、生活支援のサービスが切れ目なく提供されることを目指しています。

 

病院・施設との連携

継続看護とは、1969年にICN(International Council of Nurses:国際看護師協会)において「その人にとって、最も適切な時期に最も適切なところで、最も適切な人によってケアされるシステムである」と定義されました。

在宅看護に移行する退院時は、療養者、家族とも在宅生活に対する不安は強いです。療養者が望む療養生活を送るためには、病院と訪問看護ステーション双方の看護師の役割が重要になってきます。

診療所に対しては、その機能を高め、病院と連携して在宅医療を推進し、看取りや認知症への対応を含めた訪問診療を実現させる方向を目指しています。すなわち、「治す医療」から「治し支える医療」へとこれまでの医療の考えを見直す時期に来ています。

病院に対しては、従来の臓器治療中心の機能に加え、「生活能力の回復」という視点の強化が必要です。

診療所と病院が連携し、生活者としての療養者の日常を家族も含めて支える機能を強化します。これらのことを通して、人生の最期をその人らしく迎えることができる在宅医療の普及を推進することができます。

 

病病連携(病院・病院の連携)

病院は規模や機能により、地域支援病院(急性期病院)、慢性期病院、療養型施設などに分類されています。病病連携とは、病院同士で個々の役割分担を行って療養者にふさわしい医療サービスを提供するための情報交換のシステムです。たとえば、リハビリが必要な患者に対しては、病院から回復期のリハビリ病院へ転院させ、適切なリハビリを提供した後は在宅での療養に移行する、という連携がなされています。

 

病診連携(病院・診療所との連携)

病診連携とは、病病連携に対し病院と診療所の連携を言います。在宅医療では診療所の医師と病院の医師との連携が重要です。普段は近くのかかりつけ医師が診察し、精密な検査や入院が必要な症状になった場合は病院へ送ります。また、患者の退院の際に近くの診療所を紹介する、という連携もあります。このように双方の医師が連携をとりながら、在宅療養者を支えることが重要です。

 

看護計画はケアマネジャーとの連携が必須

要支援、要介護と認定された場合、ケアマネジャー(介護支援専門員)が居宅・施設サービス計画を作成します。計画書を作成するにあたって、ケアマネジャーは利用者の生活課題(生活ニーズ)を明確にし、解決すべき問題を把握します。これを課題分析(アセスメント)といいます。この課題分析をもとにケアプランの原案を作成し、サービス担当者会議にて検討します。会議にて決定されたケアプランを利用者に説明して同意が得られたら、プランに基づいたサービス事業所と調整を行ないます。これらの手順をふみ、サービス利用開始となります。

介護保険下での在宅サービスの調整はケアマネジャーが行っています。また、訪問看護は医療保険で利用し、ほかのサービスを介護保健で利用している場合でも、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて訪問計画書を作成し、訪問看護を実施します。

訪問看護師は、看護師の立場から適切にアセスメントし、ケアマネジャーを中心に他職種と連携を取り合いながら、利用者の状態に応じた訪問介護を提供します。また、日常生活の援助を通じて家族関係や介護状況の情報を入手したり、介護者の身体的および精神的な疲労に関する観察を行ない、必要に応じてケアマネジャーに情報を提供します。このような連携によって、利用者に必要なサービスが導入されるように調整することも訪問看護師の重要な役割です。

 

まとめ

医療機関の在院日数の短縮化が進むなか、今後は在宅においても医療依存度の高い利用者が増えると予測されます。訪問看護師は、利用者の病状を的確に把握、アセスメントし、今後の病状変化を予測した情報提供や看護を行う必要があります。

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新人看護師あるある|先輩によって言うことが違う場合の対処法

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新人看護師

筆者は新人看護師です。世の中いろんな病院があるといえど、新人の、そして看護師の楽しみ苦しみは多くの方々に共通する部分があるのではないかと思います。

 

「これはきっと私だけじゃなくて新人なら経験するだろう…!」と思うエピソードをご紹介させてください。

 

新人看護師は患者よりも、先輩の目が気になる

 

医療職以外の皆様には大変申し訳ないのですが、新人看護師が入職直後に1番気にすることは、まず間違いなく患者様の体調では無く先輩看護師の目です。極限に意識高い新人看護師を除いたごく普通の新人看護師の皆さん、そうですね。

新人看護師は、病棟に配属されて数ヶ月は先輩看護師に見守られながら日々の業務を覚えます。先輩に質問したりされたり、新しいことを教えていただいたり自分の勉強不足を叱られたりしつつ1日を終えるわけです。

 

そんな時に新人が毎朝何を考えているかといえば、

・今日の指導者さんは佐藤さん(仮名)だから検査値のこと詳しく訊かれるな…ちゃんとみておかなきゃ…。

・今日は山田さん(仮名)だからほぼ全部やってくれる…よっしゃ…!

・今日は北野さん(仮名)だから何やっても怒られるわ…帰りたい…。

 

ざっとこんな感じでしょうか。ベテラン看護師の方々が覚えているかどうかは分かりませんが、新しい環境、それも病院という、ルールでがらんじめにされている場所に慣れることは、最初の2ヶ月間くらいは毎晩深夜に目を覚まして「明日もきっと何もできない…叱られる…」と泣き出すくらいに大変なことです。少しでも自分が追い詰まらない環境を求めてしまうことを、この時期だけはどうか批判しないでください。

 

新人看護師が一番困る場面とは?

 

さて、そんな私達新人看護師にとっての困り度No.1の状況は、

 

先輩によって言うことが正反対

 

だった時でしょう。

 

例えばこんなシチュエーション。

 

輸液ポンプを使って患者様に投与しているTPN(栄養剤)の交換の時間です。私は輸液ポンプを患者様の前で使うことも、TPNの交換も初めてです。今日の指導者は佐藤さんです。

 

佐藤さんは輸液ポンプの電源を切らずに一旦停止ボタンを押して、それまで繋いでいたTPNの横に新しいTPNを引っさげてルート(点滴に繋がっているチューブ)を差し替え、交換の時間を短縮するよう教えてくださいました。なるほどこれは合理的だと思いながら私はその方法を覚えました。

 

翌日、同じ患者様のTPNの交換の時間になりました。今日の指導者は北野さんです。

私は昨日佐藤さんに教えていただいたように、輸液ポンプの電源を切らずに一旦停止ボタンを押し、TPNを繋ぎかえようとしました。

 

すると、佐藤さんの「何やってんの!横着しないで!」という鋭い声が後ろからとんできました。私、プチパニック。

 

佐藤さんによれば、一度ポンプの電源を切り、それまで繋いでいたTPNを点滴スタンドから外し、輸液バッグの口が横向きになるよう電子カルテワゴンの上に新しいTPNと並べて置いてから差し替え、改めてルート付きの新しいTPNを点滴スタンドに下げるべきで、

「輸液バッグ下向きにしたままルート外したら、中に残った薬液がドボッと出てきてポンプも、下手したら床も汚染されるじゃない」とのことです。それはそれでなるほどと思うのですが、

 

昨日教わった方法と正反対だ!どうしよう!!

 

と私の頭の中はもうパニック。昨日の教わった方法を伝えるべきか黙っておくべきか、さてどうしましょう。なんて。

 

新人生活、こんな矛盾は日常。

 

オムツ交換ひとつ取ったって、お尻は股の間から拭くと教えられた数分後には別の先輩から横向きにした時に拭くと教えられます。

 

電子カルテで抗癌剤投与の看護記録を書く時に「薬のグラム数とか流量とか書かないで!逆に記載ミスの元になるでしょう!『レジメン(医師からの、抗癌剤の量の指示が書いてある紙)に従って』って書けばみんなレジメンみればいいんだなって分かるから!」と叱られた3日後に“レジメンに従って”とカルテに書けば他の先輩から「投与量何mgだったっけ?時間何mlで落としたっけ?そんなことも覚えてないわけ?」と叱られる。“正しい方法とエビデンスを覚えなきゃ”と必死な新人であればあるほど、そういった矛盾にいちいち焦る。

 

先輩によって指導内容が正反対の時の対処法

 

私はありがたいことに、個人的な気分や感情で新人を叱る先輩があまりいないチームに配属されているので、昨日言われたことと違うな?と思う度に「昨日は〇〇さんにこういう方法で教えていただいているのですが、どちらが正しいのでしょうか?」と訊けるし、むしろ矛盾していたらその場で訊けとチームの先輩全員から言われているので訊かなくてはいけないのですが、おそらくそうではない、板挟みになりながらもどうしたって訊けない新人看護師もいると思います。

 

とりあえず同期と飲みながら「理不尽!!」と叫んでみるも良し、

「新人のうちだから」とぐっと堪えてひとり立ちしたら自分のやりやすいようにするも良し(良いのかな?)、

2年目の先輩に「去年どうしてましたか?」と訊いてみるも良し、

なにかと良くしてくれるベテランさんに「どうしたら良いでしょう」と相談してみるも良しでしょう。

 

職場の先輩からは、「分からないことだらけだと思うし今が1番大変な時だけど、とにかく患者さんに危害与えなければ良いから!そこだけ必死になって後はちょっとくらい手抜きしても良いから!!」と指導されています。やはり1番大切なのは患者様の安全ですね。守るべきこと、勉強するべきことの優先順位がようやく見えてきかけている程度の、まだまだ新人の私達ですが、患者様にとっては新人だろうがベテランだろうが看護師は看護師だということは常に忘れないように心掛けていかねばと思います。

 

ストレス過多な新人看護師の仲間達よ、こんな原稿を書いている私も毎日辛いです。ほんの時々遭遇する素敵な出来事を大切に大切に温めながら毎日を過ごしています。

 

いつまでこんな気持ちが続くのかはわかりませんが、「看護師になって良かった」といつか言えるよう、とにかくこの時期を一緒に乗り切りましょう。

 

IMG_4989 著者情報:依里楓(東京都出身の看護師)東京から電車で2時間くらいの場所にある総合病院の、内科系の病棟で1年目看護師をしています。看護師の仕事に慣れることに必死です。プロセスレコードというブログを書いています。

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