Quantcast
Channel: ナースのヒント|明日のヒントが見つかるWebメディア
Viewing all articles
Browse latest Browse all 681

環境整備|目標設定・観察をもとにした看護ケアの実践と手順

$
0
0

環境整備_看護

環境整備は看護の初歩中の初歩であり、適切な環境整備が出来ない人は、いくら経験を積んで多くの手技が出来たとしても、良い看護師とは言えません。それほど環境整備は重要な看護ケアなのです。

 

ここでは、環境整備の概要はもちろん、問題点や手順例、看護計画、観察項目など、適切な環境整備のための情報を包括的かつ詳しく紹介していますので、どのように環境整備を行えば良いのか分からない方は、最後までしっかりお読み頂き、理解した上で実践していってください。

 

1、環境整備とは

環境整備とは、簡潔に言えば、“安心・安全・安楽のための環境を作る”ということであり、患者のケガ・事故・感染症の防止や、居心地のよい入院生活のために、さらに早期治療のために、徹底した環境整備が必要です。

 

イギリスの有名な看護教育学者、フロレンス・ナイチンゲールは、看護の基本となる考えとして、自然が病人に対して最も働きかけやすい状態にすること、つまり、自然治癒力を高める手段の一つとして、環境を整えることが看護実践において重要である、と述べているように、環境整備は看護ケアにおいて非常に大きな役割を持っているのです。

 

1-1、環境整備の目的

環境整備は、患者の安心・安全・安楽のための非常に重要な看護ケアの一つです。また、患者だけでなく、医師や看護師など病院で働く人にとって、働きやすい環境を作るという目的もあります。

 

・患者に快適で安全な療養環境を提供する

・治療と看護がより効果的に行われ、質の高い医療の提供の一環を担う

・感染症やケガ・事故、二次的障害を防ぐ

・医療従事者や病院関係者に安全で良好な労働環境を保障する

・建物の維持保全をする

 

1-2、環境整備の問題点

多くの病院では環境整備を徹底しているものの、大きな病院ほど実施内容や成果に“ムラ”が生じてしまいます。これは、医療における体制・連携や看護師(または看護助手)の意識が問題となっており、良質な環境を提供するためには、下記のような問題点を1つ1つ解決していかなければいけません。

 

・手順書がない

多くの病院では環境整備に関する手順書がないため、どのように行えばよいのか分からない。

 

・看護師と看護助手の連携が不足している

環境整備は主に看護師の業務であるものの、労働状況や病院によっては看護助手が代わりに行うことがあるが、この際、看護師と助手との間で連携がとれていないことで、清掃状態にバラつきが生じる。

 

・質に個人差がある

手順書がなく、さらに一斉に行うのではなく、個人の業務スケジュールに基づいて空いた時間の中で行うことが多いため、環境整備における実施内容や質に個人差があり、日によって清潔状態にバラつきが生じる。

 

・個人的な満足で終わっている

環境整備における満足度は看護師と患者では異なり、看護師の主観的な満足で終わっていることで、質の高い環境を患者に提供できていない可能性がある。

 

・後回しにする

看護師不足が顕著な病院は特に、業務の忙しさから、環境整備を後回しにすることが多く、質の高い環境を提供できていない。

 

・看護としての認識がない

看護師の中には、環境整備は看護業務の中に位置付けておらず、疎かにすることがある。

 

2、環境整備の一般的な手順例

病院によって環境整備の手順は異なりますが、基本的には大差はありません。以下に、病室における環境整備の一般的な手順例を紹介しますので、手順書がない病院に勤務している看護師は、ぜひ参考にしてください。

 

①環境整備を行う旨を患者に説明し了承を得る

まずは、患者やご家族に、環境整備の目的や必要性を分かりやすい言葉で説明し、同意を得ます。

 

②窓を開け空気の循環・換気を行う

窓を開けることで自然換気を行いますが、患者に外気を直接当てない、その日の気温や風量を考慮する、排泄後すぐに開けないなど、様々な配慮を持って行う必要があります。

 

③照明の点灯確認と、ほこりを除去する

室内照明やベッドランプがつくかどうか確認し、ほこりがついていれば除去します。この際、ベッド上にほこりが落ちないように注意しながら除去するようにしてください。

 

④ベッド上・シーツを整える

ベッド上に衣類やタオルなど必要のない物があれば片付け、シーツのしわを直す、または汚染されていたら取り替えてベッドメイキングを行います。

 

⑤ベッド周辺の整備・整頓を行う

床頭台やオーバーテーブル上を整理し、必要最小限の物だけを置くようにします。また、引き出しや衣類棚も同時に確認し、必要あれば整理整頓を行います。なお、床には物が一切ない状態が望ましく、ベッド下に靴とスリッパ以外の物は置かないようにします。

 

⑥ベッドの設置機材や周辺器機の清拭を行う

ベッド棚、床頭台、オーバーテーブル、面会用の椅子など、ベッドの設置機材や周辺器機を水道水またはアルコールで清拭します。

 

⑦ベッドの設置機材などの正常作動を確認する

ベッド棚の歪み、床頭台、オーバーテーブルなどの車輪・調節部位が故障していないか確認します。

 

⑧カーテンの状態を確認・交換を行う

カーテンの破れ、ほつれ、汚れなどを確認し、必要あれば交換します。

 

⑨カーテンフック・レールの状態を確認する

カーテンの状況を確認すると同時に、フックやレールの外れがなく、スムーズにスライドするか確認します。

 

⑩ギャッヂハンドの収納などを確認する

ケガや事故防止のため、ギャッヂハンドが収納されているか、車輪のストッパーがかかっているか、外側に向いていないか確認します。

 

⑪プライバシーに配慮する

尿器やポータブルトイレ内の排泄物の処理や、カバーをかけるなど同室者や面会者の目に触れないようにします。また、面会者がいる時にはカーテンを閉めるなど、プライバシーに配慮するようにしてください。

 

⑫通路や廊下の整備を行う

車椅子やストレッチャーなどが通路や廊下に置いたままになっていないか確認し、あれば適切な場所に移動させます。また、床が濡れているなど、歩行における安全性が保たれているか確認します。

 

3、環境整備の看護計画

環境整備は看護の初歩中の初歩であり、きちんとした環境整備を行えるということは、“できる看護師”の指標となります。基本的に、環境整備はすべての患者が対象となりますが、患者の症状や体調、病室の構造など、幅広い視点で実施する必要があるため、看護の中でも最も難しい実践内容と言っても過言ではありません。

 

以下に、一般的な看護目標と観察項目を記載しますので、1つの指針として、参考にしてください。

 

3-1、看護目標

環境整備における看護目標は、大きく分けて「安心」「安全」「安楽」「コミュニケーション」の4つの項目を基準に計画を立てます。

 

・肉体的・精神的な安らぎを与える

・感染症や転倒・転落インシデントを未然に防止する

・居心地の良い室内空間と安楽な入院生活を提供する

・コミュニケーションにより意欲向上・情報収集の促進を図る

 

上記4つの計画のうち、注目すべきは「コミュニケーション」であり、環境整備の時間には、患者と話す機会が多く、コミュニケーションを図ることで、患者の意欲向上など精神的な好影響を与えるだけでなく、さまざまな情報を収集することができます。

 

これにより、患者の症状はもちろん、入院生活や治療における“想い”や“考え”なども知ることができるため、より良い看護ケアを行うことが出来ます。

 

3-2、観察項目

環境整備の観察項目は多岐に渡ります。一般的に、「環境調節」、「清潔管理」、「事故防止」、「整理整頓」、「医療機器・物品の管理」、「プライバシー管理」の6つが大まかな観察項目であり、細分化すると計32もの項目があります。

 

これら全ての項目を考えることなく実践できるまで、しっかりと把握しておきましょう。

 

環境調節

・騒音が防止できているか ドアやカーテンの開閉、ワゴンや足音、看護師の会話など、強い騒音が発生していないか確認する。
・臭気管理ができているか 尿器やポータブルトイレ、オムツなどにより病室内に悪臭がただよっていないか確認する。
・湿気は適正値に保たれているか 居心地の良い湿度(夏季は45%~65%、冬季は40%~60%)が保たれているか確認する。
・室内温度は適正値に保たれているか 居心地の良い温度(夏季は20℃~24℃、冬季は17℃~21%)が保たれているか確認する。
・室内明度は適正値に保たれているか 居心地の良い明度(昼は50~200ルクス、夜は1~2ルクス)が保たれているか確認する。ただし、主観的な範囲で良い。

 

清潔管理

・シーツや寝衣が汚れていないか 交換時に限らず、シーツ・寝衣に血液や尿・便、飲食物による汚れがないか確認する。
・食器類が汚れていないか 箸やスプーン、湯呑み茶碗など、患者用食器が汚れていないか確認する。
・ベッド周辺が汚染していないか オーバーテーブルや床頭台などが汚れていないか確認する。
・ベッド周囲にゴミは落ちていないか 患者または面会者の飲食物などのゴミがベッド周囲に散乱していないか確認する。
・ゴミ箱のゴミは定期的に捨てられているか ゴミ箱のゴミの量が多いなど、高い頻度で廃棄されているか確認する。
・尿排泄物が滞留していないか 尿器や便器、ポータブルトイレなどに排泄物が適切に処理・消毒されているか確認する。

 

事故防止

・ライン類は安全に管理されているか ライン類がしっかり固定されているか、適切に配置されているか確認する。
・コード類が整理されているか 電気コード類がまとめられているか確認する。
・ベッドは適切な高さに保たれているか ベッドの傾きや高さが、患者各人に合っているか、適切な状態を維持できているか確認する。
・ベッド柵は固定されているか ベッド柵(落下防止)がしっかりと固定されているか、破損箇所がないか確認する。
・針や刃物など危険物はないか ベッド上またはベッド周辺に、針や刃物、火気類など、ケガや事故の元となる物品がないか確認する。
・床に水がこぼれていないか 病室や廊下の床が濡れていないか、ベッドサイドに水がこぼれていないか確認する。
・ギャッチアップのレバーがしっかり収納されているか 電動式ベッドに装着されているギャッチアップのレバーが収納されているか確認する。

 

整理整頓

・ベッドサイドの履物が整理されているか ベッドサイドの履物が揃っていて邪魔になっていないか、散乱していないか確認する。
・患者の私物が整理されているか 床頭台やオーバーテーブル、ベッド周囲の患者の私物が整理されているか確認する。
・患者の使用済み品が散乱していないか タオル類、リネン類、オムツ、T字帯など、患者が使用した物がそのままになっていないか確認する。
・使用後の器機が放置されていないか 歩行器や車椅子など、使用後の器機がそのままに置かれていないか確認する。
・ナースコールが適切な位置に配置されているか 緊急時に備え、ナースコールが押しやすい位置に配置されているか確認する。
・ベッド周囲のスペースが患者のADLに適しているか 日常生活動作において、ベッド周囲のスペースがしっかりと確保されているか確認する。

 

医療機器・物品の管理

・医療機器が適切に設置されているか 病室備え付けの心電図モニターや人工呼吸器などの医療機器が適切な位置に配置されているか確認する。
・医療機器が正常に作動しているか 心電図モニターや人工呼吸器などの医療機器が正常に動作しているか確認する。
・ベッド周囲の医療物品が業務しやすい位置に配置されているか ベッド周囲の医療物品が不足・散乱していないか、作業・業務を迅速に行える位置に配置されているか確認する。

 

プライバシー管理

・ドアの開閉によってプライバシーが保たれているか 適切な時間に病室のドアが開閉されているか確認する。
・カーテンの開閉におけるプライバシーが保たれているか 適切な時間にカーテンが開閉されているか確認する。
・ブラインドの開閉におけるプライバシーが保たれているか 適切な時間にブラインドが開閉されているか確認する。
・会話の筒抜けにおけるプライバシーが保たれているか 同室患者間で会話の筒抜けが無く、プライバシーが保たれているか確認する。
・同室患者間に対人トラブルはないか 大声、不穏など、同室患者間における対人関係に問題はないか確認する。

 

まとめ

看護師にとって環境整備は最も大切な看護ケアと言っても過言ではありません。環境整備の質=看護の質と言えるほど環境整備は大切なケアであるため、毎日のルーティーン業務だからと言って疎かにしてはいけません。

 

看護師1人1人が高い意識を持って、細かなところにも配慮しながら徹底した環境整備を行うことで、すべての患者が安心・安全・安楽な療養生活を送ることができます。当ページで記載した各項を参考にして、患者のためにぜひ徹底した環境整備を実施してください。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 681

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>