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関節可動域(ROM)の看護|測定法・テスト、ROM訓練や看護のポイント

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関節可動域(ROM)とはどのくらい関節が動くのかを角度で示すものです。看護師は患者の関節可動域がどのくらいかを正しく測定し、正しくROM訓練を行うことで、リハビリや廃用症候群予防につなげることができます。

関節可動域(ROM)の基礎知識や測定法・テスト方法、ROM訓練や看護のポイントをまとめました。整形外科の看護師も、それ以外の診療科の看護師もぜひ参考にしてください。

 

1、関節可動域(ROM)とは

関節可動域(ROM=Range Of Motion)とは、体の各関節が生理的に運動することができる最大範囲を角度で示すものです。関節可動域を測定することで、関節に異常がないかを調べることができます。関節可動域(ROM)を測定すると、次の3つのメリットがあります。

①障害の程度を判定できる

②関節可動域が狭くなっている原因を発見できる

③治療の効果を判定できる

関節可動域は、関節を取り巻いている靭帯や腱、筋肉、関節包が柔軟か強固かで決まってきます。靭帯や腱、筋肉、関節包が柔軟であれば、関節可動域は大きくなり、強固であると小さくなります。リウマチや骨折の後遺症などで関節可動域が小さくなると、日常生活動作に支障が出てくるため、関節可動域が小さい場合は、関節可動域訓練(ROM訓練)を行って、関節可動域を広げる必要があります。

 

2、関節可動域(ROM)の測定法・テスト

関節可動域(ROM)を測定するためには、自然に立っている状態での体幹や四肢の位置や向きを解剖学的0°として、角度計を用いて関節可動域を5°刻みで測定します。日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が提唱する関節可動域(ROM)の測定・テスト方法をご紹介します。

 

■肩甲骨

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲 20° 両側の肩峰を結ぶ線
伸展 20°
挙上 20° 背面から測る
引き下げ 10°

 

■肩

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(前方挙上) 180° 肩峰を通る床への垂直線 前腕は中間位とする。

体幹が動かないように固定する。

脊柱が前後屈しないように注意する。

伸展(後方挙上) 50°
外転(側方挙上) 180° 体幹の側屈が起こらないように90°以上になったら、前腕を回外する。
内転
外旋 60° 肘を通る前額面への垂直線 上腕を体幹に接して、肘関節を前方に90°屈曲した姿勢で行う。

前腕は中間位とする。

内旋 80°
水平屈曲 135° 肩峰を通る矢状面への垂直線 肩関節を90°外転位とする。
水平伸展 30°

 

■肘

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲 145° 上腕骨 前腕は回外位とする。
伸展

 

■前腕

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
回内 90° 上腕骨 肩の回旋が入らないように肘を90°に屈曲する。
回外 90°

 

■手

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(掌屈) 90° 橈骨 前腕は中間位とする。
伸展(背屈) 70°
橈屈 25° 前腕の中央線 前腕を回内位で行う。
尺屈 55°

 

■母指

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
橈側外転 60° 示指(橈骨の延長上) 運動は掌面とする。
尺側内転
掌側外転 90° 運動は掌面に直角な面とする。
掌側内転
屈曲(MCP) 60° 第一中手骨
伸展(MCP) 10°
屈曲(IP) 80° 第一基節骨
伸展(IP) 10°

 

■指

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(MCP) 90° 第2~5中手骨
伸展(MCP) 45°
屈曲(PIP) 100° 第2~5基節骨
伸展(PIP)
屈曲(DIP) 80° 第2~5中手骨
伸展(DIP)
外転 第3中手骨延長線
内転

 

■股

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲 125° 体幹と平行な線 骨盤と脊柱をしっかり固定する。

屈曲は背臥位、伸展は腹臥位で行う。

伸展 15°
外転 45° 両側の上前腸骨棘を結ぶ線と垂直な線 背臥位で骨盤を固定する。

下肢は外旋しないようにする。

内転 20°
外旋 45° 膝蓋骨より下ろした垂直線 背臥位で股関節と膝関節を90°に屈曲させて行う。
内旋 45°

 

■膝

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲 130° 大腿骨 屈曲は股関節を屈曲した状態で行う。
伸展

 

■足

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(底屈) 45° 腓骨への垂直線 膝関節を屈曲した状態で行う。
伸展(背屈) 20°

 

■足部

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
外がえし 20° 下腿軸への垂直線 膝関節を屈曲位で行う。
内がえし 30°
外転 10° 第1、第2中足骨の間の中央線 足底で足の外縁または内縁で行うこともある。
内転 20°

 

■母指(趾)

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(MTP) 35° 第1中足骨
伸展(MTP) 60°
屈曲(IP) 60° 第1基節骨
伸展(IP)

 

■足指

出典:上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(MTP) 35° 第2~5中足骨
伸展(MTP) 40°
屈曲(PIP) 35° 第2~5基節骨
伸展(PIP)
屈曲(DIP) 50° 第2~5中節骨
伸展(DIP)

 

■頸部

出典:関節可動域の測定要領|あい湖法律事務所

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(前屈) 60° 肩峰を通る床への垂直線 頭部体幹の側面で行う。

腰かけ座位で行う。

伸展(後屈) 50°
左回旋 60° 第2~5基節骨 腰かけ座位で行う。
右回旋 60°
左側屈 50° 第2~5中節骨 体幹の背面で行う。

腰かけ座位で行う。

右側屈 50°

 

■胸腰部

出典:関節可動域の測定要領|あい湖法律事務所

 

運動方向 参考角度 基本軸 注意点
屈曲(前屈) 45° 仙骨後面 体幹側面より行う。

立位、腰かけ座位、側臥位で行う。

伸展(後屈) 30°
左回旋 40° 両側の後上腸骨棘を結ぶ線 座位で骨盤を固定して行う。
右回旋 40°
左側屈 50° ヤコビー線の中点に立てた垂直線 体幹の背面で行う。

腰かけ座位または立位で行う。

右側屈 50°

 

3、関節可動域(ROM)の訓練方法や看護のポイント

関節可動域(ROM)の訓練は、看護師が行うこともあります。看護師は、関節可動域を広げるための訓練方法を確認しておきましょう。

ROMの訓練方法は、自動運動と他動運動の2つがあります。自動運動は患者さん自身で動かしてもらう方法で、他動運動は看護師などの第三者が動かす方法です。ここでは、他動運動の方法を説明します。

 

■準備

看護師は関節可動域(ROM)の訓練をする前に次のことを確認しておきましょう。

・患者のバイタルサイン

・関節可動域の標準角度

・患者の関節可動域

・衣服は適切かどうか

 

この4つを確認して、ROM訓練が可能な状態だったら、患者にROM訓練を行うことを説明し、排尿などを済ませてもらい、点滴やバルーンカテーテルなどのルートを整理して、テンションがかからないようにしておきます。また、時間があれば、ROM訓練前に訓練をする部位を温めておくと、訓練時の疼痛が軽減できますし、可動域を広げやすくなります。

 

■訓練方法

ROM訓練をする時には、次のポイントに注意して看護を行うようにしてください。

・無理に力を入れて関節可動域を広げようとしない

・疼痛が強くならないように、患者の表情やバイタルサインなどに注意する

・1つの動作に5~10秒かけて、ゆっくり行う

・1つの訓練は10回程度行う

 

<肩関節>

①前方挙上=片方の手で患者の肘を上から持ち、もう片方の手で手首を下から持って、腕を挙上させる。

②内旋・外旋=腕を下した状態で、腕を側方に広げて、ゆっくりと頭上まで挙上させる。

 

<肘関節>

①内旋・外旋=腕を90°外転させて肘を曲げて前腕を立てる。そこから、頭側と足側に前腕を倒すように動かす

②屈曲・伸展=掌を上にして腕を伸ばす。手の指を肩につけるように肘を曲げてから、肘を伸ばす。

 

<手関節>

①掌屈・背屈=肘を立てた状態で、片方の手で手首を固定する。もう片方の手で指を曲げながら手首を前に曲げ、指を伸ばしながら手首をそらす。第2~5指までの指の屈曲・伸展運動も一緒に行います。

 

<母指>

①屈曲・伸展=手関節を固定して、母指の曲げ伸ばしを行う。手指全体で丸めるように曲げ、掌全体で伸ばすようにする。

 

<股関節・膝関節>

①伸展挙上=膝を伸ばしたまま、下肢を挙上させる。

②内転・外転=踵と膝を下から持って、下肢全体を数㎝持ち上げる。その後、外へ開いていく。このとき、つま先が常に上に向くように(外旋しないように)気を付ける。

③内旋・外旋=股関節と膝関節を90°で曲げ、足部を内側へ(内旋)、外側へ(外旋)と動かす。

④屈曲・進展=踵と膝を下から持って、下肢全体を持ち上げる。膝を曲げて、胸に近づける。その後、脚を伸ばして元の位置に戻す。これで、膝と股関節の屈曲・伸展を同時に行うことができる。

 

<足関節>

背屈=片方の手で踵をつかみ、そのまま前腕で足底を支える。もう片方の手で、下腿を上から持って固定する。踵を引っ張り、前腕で足底を押しながら背屈させる。

 

3-1、CPM運動

他動運動でのROM訓練には、CPM(Continurous Passie Motion=持続的関節他動運動器)で行う方法もあります。主に股関節と膝関節の屈曲・伸展用のものが用いられますが、肩用や肘用、手指・手首用のものもあります。

このCPMを用いると、看護師はCPMをセットするだけで良いので、体力的には楽ですが、自動で関節の屈曲・伸展を行いますので、看護師が行う時のような加減ができません。そのため、無理な角度でCPMをセットしてしまうと、患者に大きな苦痛を与えることになりかねません。よって、CPMを用いるときには、患者の関節可動域は現在どのくらいなのかを確認し、患者には停止ボタンを必ず渡すようにしましょう。また、CPM開始後数分は、ベッドサイドで異常はないか、無理なく適切な角度でROM訓練が行われているかを確認してください。

 

まとめ

関節可動域(ROM)の基礎知識やテスト・測定方法、ROM訓練や看護のポイントをまとめました。ROM訓練は整形外科では必須のスキルですし、そのほかの診療科でも廃用症候群予防のために看護師が行うことが多いので、きちんと正しい知識・技術を身につけておくようにしましょう。

 

参考文献

上肢(肩・ひじ・手首)手指の関節機能障害(可動域制限)|交通事故弁護士による後遺障害相談

関節可動域の測定要領|あい湖法律事務所

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