解熱鎮痛薬にはいろいろな種類がありますが、それぞれどのような違いがあるのかいまいちよく分からないという人も多いと思います。
今回は解熱鎮痛薬の1つであるアセトアミノフェンについて、効果や副作用、NSAIDsとの違いなどを詳しく解説していきます。これで、アセトアミノフェンがどのような解熱鎮痛薬が簡単に理解できるはずです。
1、アセトアミノフェンとは
アセトアミノフェンとは、非ピリン系(p-アミノフェノール系)に属している解熱鎮痛薬です。
・解熱:熱を下げる
・鎮痛:痛みをとる
この2つがアセトアミノフェンの効果になります。
アセトアミノフェンは1877年に初めて臨床で使用された解熱鎮痛薬で、アメリカやヨーロッパでは最もよく使われています。日本でも小児から成人まで広く使われている解熱鎮痛薬の1つです。
日本で使われているアセトアミノフェンには次のようなものがあります。
<処方薬>
・カロナール:錠剤、シロップ剤、細粒剤
・アンヒバ:坐剤
・トラムセット:アセトアミノフェンとオピオイド鎮痛薬を配合した製剤
・SG配合顆粒:アセトアミノフェンとピリン系薬剤、無水カフェインなどを配合
・アセリオ:点滴(静注)
<市販薬>
・ノーシン
・ナロン
・タイレノールA
1ー1、アセトアミノフェンの用法・用量
アセトアミノフェンを内服する場合、次のような用法・用量になります。
<成人の鎮痛目的の場合>
・1回300~1000mg
・投与間隔は4~6時間以上あける
・1日の総量は4000mgを限度とする
・できるだけ、空腹時の服用は避けること
<小児の解熱鎮痛目的の場合>
・幼児・小児には1回10~15mg/kg
・投与間隔は4~6時間以上あける
・1日の総量は60mg./kgを限度とするが、成人の総量を超えないように注意する
・できるだけ空腹時の服用は避けること
がんの鎮痛目的の場合は、日本の場合は2400~4000mg/日の投与が妥当な鎮痛量1)と決められています。
1-2、アセトアミノフェンの作用機序
アセトアミノフェンはNSAIDs同様に、COX(アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ)を阻害することで、疼痛・炎症に関連した物質であるプロスタグランジンの合成を抑制しますが、NSAIDsに比べると、その作用は非常に弱いことが分かっています。
アセトアミノフェンがなぜ解熱鎮痛効果があるのかは、きちんと解明されていません。
ただ、下行性抑制系の活性化することで、鎮痛効果があると考えられています。疼痛は末梢神経終末から脊髄、脳へと上行性に伝わっていきます。それ以外に、脳から脊髄へ下行性に疼痛の抑制シグナルを伝える経路もあります。
アセトアミノフェンはこの下行性抑制系を活性化することで、鎮痛効果をもたらすと推測されています。
2、アセトアミノフェンの効果
アセトアミノフェンの効果は解熱と鎮痛です。
アセトアミノフェンは視床下部にある体温中枢に作用することで、末梢血管や汗腺を拡張させて、体内の熱を体外に逃がす熱放散を増大させます。そのことで、解熱効果が現れます。
また、疼痛を伝える下行抑制系を活性化することで、鎮痛効果をもたらします。
アセトアミノフェンは解熱効果はありますが、平熱時に服用・投与しても、体温にはほとんど影響を与えないという特徴があります。
2-1、アセトアミノフェンとNSAIDsの効果の違い
解熱鎮痛薬と言えば、まずはNSAIDsを思い浮べる人が多いと思います。
NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は非ステロイド性抗炎症薬で、解熱鎮痛薬として広く使われています。NSAIDsには次のようなものがあります。
・ボルタレン(ジクロフェナク)
・インダシン(インドメタシン)
・ロキソニン(ロキソプロフェン)
同じ解熱鎮痛の効果がありますが、アセトアミノフェンはNSAIDsには含まれません。なぜなら、アセトアミノフェンには抗炎症作用はほとんどないからです。
NSAIDsには解熱鎮痛剤に加えて、抗炎症作用もあります。NSAIDsは日本語で「非ステロイド性抗炎症薬」ですので、抗炎症作用がない薬剤はNSAIDsに含まれないのです。
2-2、アセトアミノフェンが用いられる疾患
アセトアミノフェンは鎮痛薬として広く処方されています。アセトアミノフェンが適応になる疾患には頭痛(片頭痛)や耳痛、筋肉痛、打撲痛、腰痛、捻挫痛、外傷、関節炎、神経痛、腰痛、歯痛、生理痛、分娩後痛、がん性疼痛、痛風、腎結石、尿路結石などがあります。また、小~中規模のオペ後の創部鎮痛に用いられることもあります。
アセトアミノフェンは、非常に幅広い疾患に用いることができる薬剤です。
3、アセトアミノフェンの副作用
アセトアミノフェンの副作用には、次のようなものがあります。
・アナフィラキシーショック(呼吸困難や血管浮腫、蕁麻疹など)
・中毒性表皮壊死融解症や皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症
・喘息の発作
・劇症肝炎、肝機能障害、黄疸
・顆粒球減少症
・間質性肺炎
・間質性腎炎、急性腎不全
・血小板減少や血小板機能低下
・嘔吐や悪心、食欲不振
ただ、アセトアミノフェンはほかの薬剤・解熱鎮痛薬に比べると、副作用は少なく、安全性が高い薬剤です。
3-1、アセトアミノフェンの副作用は肝障害に注意
アセトアミノフェンは副作用が少ない薬剤です。
ただ、肝障害には注意が必要です。アセトアミノフェンは大量服用すると、肝障害が起こることが分かっています。薬剤性肝不全の80%はアセトアミノフェンによるものというデータもあります。2)
肝障害がリスクが高まるのは7500mg/日以上または1回に150~250mg/kg以上のアセトアミノフェンを摂取した時です。過剰服用をすると、肝細胞壊死を招きます。
アルコールと一緒にアセトアミノフェンを服用したり、肝機能が低下している患者の場合、リスクが高まります。
3-2、アセトアミノフェンはNSAIDsより使いやすい
アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の中でも副作用が少ない薬剤です。
NSAIDsに比べて、消化管機能・腎機能・血小板機能への影響は少ないので、消化性潰瘍や腎機能障害、血小板凝集抑制などでNSAIDsが使いにくい患者さんにもアセトアミノフェンは使いやすいという特徴があります。
3-3、アセトアミノフェンは血圧低下に注意
アセトアミノフェンを投与すると、平均血圧が6.6±6.0 mmHg低下する3)というデータがあります。
特に、点滴でアセトアミノフェンを投与すると、血圧が低下しやすくなりますので注意が必要です。これは、熱放散のために末梢血管が拡張し、末梢血管抵抗が下がるためです。また、心係数も血圧低下に関係しています。
そのため、血圧が低めの患者にアセトアミノフェンを投与する時には、血圧の変化に十分に注意し、血圧を経時的に観察していく必要があります。
まとめ
アセトアミノフェンの基本情報や効果、NSAIDsとの違い、副作用などをまとめました。アセトアミノフェンは抗炎症作用はほとんどありませんが、副作用が少なく、NSAIDsを使いにくい患者さんにも使うことができるというメリットがあります。
アセトアミノフェンが処方された時には、なぜNSAIDsではなくアセトアミノフェンなのかを考えてみると、新しい気づきがあるはずです。
参考文献
1)ガイドライン|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine
2)痛みと鎮痛の基礎知識 – Pain Relief ーNSAIDs/ピリン系/ステロイド性抗炎症薬|大学病院医療情報ネットワークセンター
3)谷崎 隆太郎(市立伊勢総合病院内科・総合診療科副部長)「エビデンスに基づいた解熱鎮痛薬の使い方」|医学界新聞
・NSAIDsとアセトアミノフェン|日本ペインクリニック学会
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