病棟や施設で働いていると、褥瘡を持つ患者さんの看護をする機会は少なくないと思います。入院(転院)・入所時点で、既に褥瘡を持っている患者さんも多いですよね。
褥瘡は重症度に応じて治療方針が決まります。また、治癒に向かっているのかどうかもきちんと評価しなければいけません。そのために開発されたのがDESIGN-Rです。
DESIGN-Rの基礎知識や目的、分類の詳細などをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。
1、DESIGN-Rとは
DESIGN-Rとは日本褥瘡学会から発表された褥瘡状態判定スケールです。次の7項目から褥瘡の状態を判定します。
<DESIGN-Rの項目>
・Depth(深さ)
・Exudate(浸出液)
・Size(大きさ)
・Inflammation/Infection(炎症/感染)
・Granulation(肉芽組織)
・Necrotic tissue(壊死組織)
・Pocket(ポケット)
DESIGN-Rはこれらの項目の頭文字を取って名付けられたもので、RはRating(評価)を表します。
2002年に日本褥瘡学会学術教育委員会が開発し、DESIGN-Rの前身である「DESIGN」として日本褥瘡学会から発表されました。そして、2008年に改定されてDESIGN-Rとなり、2013年・2020年と改定を重ねています。
現在は、DESIGN-Rは診療報酬の入院基本料で褥瘡の状態評価に用いられていますし、療養病棟の褥瘡対策加算ではDESIGN-Rを用いたアウトカム評価が取り入れられています。DESIGN-Rは日本の医療現場・介護現場で幅広く使われている褥瘡状態判定スケールと言えるでしょう。
2、DESIGN-Rの目的
DESIGN-Rは主に次の2つの目的で作られた褥瘡状態判定スケールです。
・褥瘡の重症度を分類すること
・治癒過程を数量化すること
褥瘡の治療方針を決めるためには、その時点での褥瘡の重症度を適切に評価する必要があります。DESIGN-Rはその重症度を絶対的に評価することができます。主観が入らず客観的に、そして絶対評価で褥瘡の重症度評価できるようにしたのがDESIGN-Rなのです。
また、褥瘡の治癒過程を数量化することで、定量的に比較評価することができるようになりました。
引用:DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用|日本褥瘡学会
DESIGN-Rでは合計点数が高いほど重症度が高いことになりますが、治療期間内の点数の経過を追うことによって、治療やケアは適切かどうか、効果があり軽快しているのかを客観的に評価することができるようになります。
DESIGN-Rは褥瘡の今の状態・治療の効果を客観的に数字で評価することを目的として作られたスケールと言えるでしょう。
3、DESIGN-Rの分類の詳細
DESIGN-Rは7つの項目で褥瘡の状態を評価します。この7つの項目の分類を1つ1つ細かく見ていきましょう。重症度は小文字だと軽症、大文字だと重症になります。
■Depth(深さ)
Depthは創内の一番深い部分で評価し、改善に伴い創底が浅くなった場合、これと相応の深さとして評価します。
重症度 | 点数 | 評価内容 |
d | 0 | 皮膚損傷・発赤なし |
1 | 持続する発赤 | |
2 | 真皮までの損傷 | |
D | 3 | 皮下組織までの損傷 |
4 | 皮下組織を超える損傷 | |
5 | 関節腔・体腔に至る損傷 | |
DTI | 深部損傷褥瘡(DTI)の疑い | |
U | 壊死組織で覆われ深さの判定が不能 |
2020年の改定ではDTIが評価に加わり、U(深さの判定が不能)では評価内容に「壊死組織で覆われ」という文言が加わりました。
■Exudate(滲出液)
重症度 | 点数 | 評価内容 |
e | 0 | なし |
1 | 少量:毎日のドレッシング交換を要しない | |
3 | 中等量:1日1回のドレッシング交換を要する | |
E | 6 | 多量:1日2回以上のドレッシング交換を要する |
ドレッシング材は種類によってかなり吸水力が異なりますので、ガーゼを貼付した時をイメージして重症度・点数の判定を行います。
■Size(大きさ)
皮膚損傷範囲を測定します。【長径(cm)×短径(cm)】※短径とは長径と直交する最大径である。
重症度 | 点数 | 評価内容 |
s | 0 | 皮膚損傷なし |
3 | 4未満 | |
6 | 4以上16未満 | |
8 | 16以上36未満 | |
9 | 36以上64未満 | |
12 | 64以上100未満 | |
S | 15 | 100以上 |
褥瘡の大きさを測定する時には、毎回同一体位で測定する必要があります。また、褥瘡にポケットがある場合は、ポケット部位は測定せず、肉眼的に外から見える部位だけを測定します。
■Inflammation/Infection(炎症/感染)
重症度 | 点数 | 評価内容 |
i | 0 | 局所の炎症徴候なし |
1 | 局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤・腫脹・熱感・疼痛) | |
I | 3C | 臨界的定着疑い(創面にぬめりがあり、滲出液が多い。肉芽があれば、浮腫性で脆弱など) |
3 | 局所の明かな感染徴候あり(炎症徴候、膿、悪臭など) | |
9 | 全身性影響あり(発熱など) |
2020年の改定では、3Cの臨界的定着疑いが追加されました。記載が3Cの場合、点数は3点として計算します。
■Granulation(肉芽組織)
重症度 | 点数 | 評価内容 |
g | 0 | 創が治癒した場合、創の浅い場合、深部損傷褥瘡(DTI)疑いの場合 |
1 | 良性肉芽が創面の90%以上を占める | |
3 | 良性肉芽が創面の50%以上90%未満を占める | |
G | 4 | 良性肉芽が創面の10%以上50%未満を占める |
5 | 良性肉芽が創面の10%未満を占める | |
6 | 良性肉芽が全く形成されていない |
肉芽組織は良性か不良かの2つに大別されます。今まではg0は「治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない」という内容でしたが、2020年のDESIGN-Rの改定では深部損傷褥瘡疑いの場合も含まれるようになりました
■Necrotic tissue(壊死組織)
壊死組織が混在している場合には、全体的に多い病態をもって評価します。
重症度 | 点数 | 評価内容 |
n | 0 | 壊死組織なし |
N | 3 | 柔らかい壊死組織あり |
6 | 硬く厚い密着した壊死組織あり |
■Pocket(ポケット)
ポケットは毎回同じ体位で、ポケット全周(潰瘍面も含め)【長径(cm)×短径(cm)】から潰瘍の大きさを差し引いたものを測定します。
重症度 | 点数 | 評価内容 |
p | 0 | ポケットなし |
P | 6 | 4未満 |
9 | 4以上16未満 | |
12 | 16以上36未満 | |
24 | 36以上 |
ポケットの大きさを測定する時には、目視だけではポケットの大きさを正確に測定することができないので、ポケット部に鑷子や綿棒などを挿入して、ポケットの大きさ・開口範囲を確認する必要があります。
3-1、DESIGN-Rの表記方法と注意点
DESIGN-Rは合計点数は0~66点で判定します。
点数の表記方法は、次のような表記になります。
・Ⅾ点-E点S点Ⅰ点G点N点P点:合計点数
たとえば、次のような褥瘡があったとします。
・Depth:真皮までの褥瘡
・Exudate:少量
・Size:10㎠
・Inflammation/Infection:局所の明らかな感染徴候あり
・Granulation:良性肉芽は創面の60%
・Necrotic tissue:柔らかな壊死組織あり
・Pocket:3㎠
この褥瘡をDESIGN-Rで評価すると、次のように表記します。
・d2-e1s6Ⅰ3g3N3P6:22点
D(深さ)は創の重症度を評価することはできます。創の深さによって、重症か軽症かはわかります。でも、どれだけ良くなったかという重症度の改善の目安にはなりませんので、「Depth」の点数は合計点には含めません。そのためDのあとにはハイフンを入れる必要があります。
まとめ
DESIGN-Rの基礎知識や目的、分類の詳細と表記方法などをまとめました。褥瘡のケアはまずは重症度を正しく把握することから始まります。急性期病棟でも療養型病棟でも、そして介護施設でも褥瘡のケアをすることは多いですから、看護師はDESIGN-Rをきちんと理解して活用することで、より良い褥瘡ケアにつなげていきましょう。褥瘡の看護は「褥瘡(じょくそう)|予防、処置・治療における看護ケア」で詳しく説明していますので、参考にしてください。
参考文献
・褥瘡状態評価スケール 改定DESIGN-R2020 コンセンサス・ドキュメント|一般社団法人 日本褥瘡学会
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