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3つのパフォーマンスステータス(PS)の適応と治療方針の決定の仕方

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がんの治療方針、治療効果の判定に用いられるパフォーマンスステータス。通称PSと呼ばれているこの指標は、病気による局所症状で活動性が制限されている場合に用い、臨床的に判断する有効な手段となっています。

 

1、パフォーマンスステータス(PS)とは

パフォーマンスステータス(通称Performance Status:PS)とは、全身状態の指標の一つで、がんの治療方針の決定、治療効果の判定などではパフォーマンス・ステータスの評価は必須となっています。パフォーマンス・ステータスには3種類あり、WHO PS 、ECOG PS 、KPSが代表的です。パフォーマンスステータスは、病気による局所症状で活動性が制限されている場合に用いることで、臨床的に判断する有効な手段です。

 

2、PSの種類と評価

パフォーマンスステータスには数種類の基準が存在します。以下で違いを見ていきましょう。

■ECOG PS: Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status

スコア 患者の状態
0 まったく症状なく社会的活動ができ、発病前と同じように日常生活ができる
1 激しい運動や肉体労働の制限をうけるが、歩行、軽い労働、座っての作業はできる
2 歩行ができ、身の回りのことはすべてできる。ただ時々少しの介助が必要なこともある。軽い作業はできないが、日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身のまわりのことしかできない。しばしば介助が必要で、日中の50%以上はベッド外で過ごす
4 身の回りのこともできず、全く動けない。常に介助が必要で、終日ベッドにいる

 

■KPS : Karnofsky Performance Status

スコア 患者の状態
正常な活動ができる。特別な看護が必要ない。 100 疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし。
90 臨床症状は軽くあるが、正常活動可能
80 臨床症状がかなりあるが、努力すれば正常の活動が可能である
労働することは不可能。自宅で生活を営むことができ、看護はほぼ個人的な要求によるものである。いろんな程度の介助を必要とする。 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
自分で身の回りのことができない。施設や病院の看護と同じような看護を必要とする。疾患が急速に進んでいる可能性がある。 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期がせまっている
0 死亡

KPSは、予後を予測するために、PaPスコア(Palliative Prognosis Score)、食欲不振や呼吸困難感、WBC、リンパ球の割合とあわせて用いられることがあります。

 

■WHO PS : World Health Organization Performance Status

スコア 患者の状態
0 問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行ができ、軽い作業や座っての作業を行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行はでき、身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 身の回りの限られたことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全に椅子またはベッドで過ごす。
5 死亡

出典:全身状態(Performance Status)(国立がん研究センター東病院)

 

ECOG PS、WHO PSはスコアが0から5に進むにつれ、状態が重くなるのに対して、KPSではスコアが0から100に細分化されているのがわかります。近年ではECOGPSが多く用いられていますが、脳外科の部門ではKPSが使われています。ECOG PSは,判断する者の主観が大きく影響する基準でもあるため,同一患者を異なる医療者で診断するとPSが変化する可能性が少なからずあると考えられます。

 

3、PSの適応とリスク

パフォーマンスステータス(PS)は全身状態を評価し、脳外科や化学療法で用いられる指標だとお話ししましたが、指標と治療方針を照らし合わせてどのように治療方針を変更していくのでしょうか。化学療法を参考に見ていきましょう。抗がん剤治療はどんな患者さんにも行っていいものではありません。というのも、抗がん剤治療は、がん細胞を攻撃するのと同時に、正常な細胞も攻撃してしまうという側面を持っているため、患者さんの状態が良くないと、有害事象を引き起こしてしまうこともあるからです。固形癌の抗がん剤治療では、ECOG-PSのスコア 3以上は有害事象が高度となるリスクが上昇し、治療による効果をリスクが上回ることがあるため、一概には推薦されません。一般的な化学療法の適応はECOG-PS スコア0または1であり、2以上の場合は癌の症例ごとに治療法の検討を要します。しかし例外もあり、たとえば卵巣がんや胚細胞腫瘍など、化学療法が極めて効果的な固形がんや血液腫瘍など、良い治療効果が見込まれる分子標的薬治療などでは、リスクよりも治療による全身状態の改善が見込まれる場合、ECOG-PSがたとえ不良でも化学療法を積極的に行うこともあります。

 

4、化学療法の効果と評価

化学療法では、治療によってどんな効果が現れているかを評価していく必要があります。効果があれば現在の治療を続行していけばいいですが、効果がないのであれば、他の治療法を検討する必要があります。

 

抗がん剤の効果の評価は、以下のように行っていきます。

1.完全寛解(CR=コンプリート・レスポンス)

腫瘍が全て消失し、4週間以上その状態が続いている場合。

この状態が長く続けば治癒に結びつく。

 

2.部分寛解(PR=パーシャル・レスポンス)

腫瘍の縮小率が50%以上かつ新しい病変の出現が4週間以上ない場合。

完全寛解したわけではないが、薬がよく効き、ほとんどの症状は消失している。

 

3.不変(SD=ステイブル・ディジィーズ)

腫瘍の大きさがほぼ変化しない場合(正確には、50%以上小さくもならず、25%以上大きくもならない場合)。癌は放置すればさらに大きくなるので、大きさが変わらないということは、治療の効果があったことを意味している。

 

4.進行(PD=プログレッシブ・ディジィーズ)

腫瘍が25%以上大きくなった場合、もしくは他の場所に新しい腫瘍ができた場合。

出典:抗がん剤の知識・抗がん剤治療の進歩と現状(がん研有明病院|2015年5月1日最終更新)

 

これらの4段階で評価しますが、1から3の段階、つまり完全寛解、部分寛解、不変の結果が得られた場合には、行った治療は「効果あり」であると考えます。効果がある場合は、その治療を継続していくのが基本となりますが、完全寛解の結果が得られた場合は、化学療法を中止し、あとは再発がないかのフォローを受けることとなります。

 

まとめ

いかがでしたか。普段化学療法や脳外科に精通しなければ、なかなかパフォーマンスステータス(PS)という言葉を耳にしない方もいらっしゃると思います。また、看護師はあまり治療方針に関わる機会が少ないというのも、あまりPSについて知らない原因かもしれません。PSは、化学療法治療や緩和ケアを受ける患者さんの治療方針を決めるために、非常に大事な指標となっています。患者さんに効果のある治療に、本人が積極的に臨めるよう援助していきましょう。

 

参考文献

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)(用語集|国立がん研究センターがん情報サービス)

がん治療の基礎知識 4.効果、安全性の評価方法 1)performance status(日経メディカル|門倉玄武|2013年10月7日)

P-616.PS不良患者に対する治療選択に影響する因子とは?(第55回日本肺癌学会総会|日本肺癌学会|2014年11月)

E.予後の予測(聖隷三方原病院症状緩和ガイド)

抗がん剤の知識・抗がん剤治療の進歩と現状(がん研有明病院|2015年5月1日最終更新)

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