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腎機能評価の基本である、クレアチニン(Cr)が低い患者へ求められる5つの看護

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腎機能は臨床現場の様々な場面で必要となります。そして腎機能の評価として最初に上がるものといえば、クレアチニン・BUNあたりではないでしょうか。クレアチニンとBUNは基本となる生化学の採血項目に必ず含まれています。今回は、この基本となるクレアチニンを重点的に学んでいきましょう。

 

1、クレアチニン(Cr) とは

腎機能は看護師が臨床現場でよく目にする検査です。腎機能が低下して腎不全に陥れば数日と命はもちませんし、造影CTをするにしても腎機能が低ければできません。たかが熱中症も、重症になると腎機能が悪化して人工透析が必要になります。では、腎機能を評価するための検査にはどんなものがあるでしょうか。

 

<腎機能の指標となる検査は?>

・Cr(クレアチニン)

・BUN(尿素窒素)

・eGFR(推算糸球体濾過量)

・BUN/Cr比

・Ccr(クレアチニンクリアランス)

・シスタチンC

・Na(ナトリウム)

・K(カリウム)

 

腎機能を評価するものにも、いろいろな項目がありますね。最近よく使われるようになったe-GFRはクレアチニンあってこその指標ですし、シスタチンCは腎機能が悪いことがわかってから初めてオーダーする項目です。(やたらと調べても保険適応がありませんし、検査にも時間がかかります。)それに対し、Crはこれだけで腎臓の状態を良い・悪いを判断することができるため、ぜひ覚えておきたい検査です。

 

簡単に腎機能を知ることのできるCrですが、そもそもCrとはどんなものを調べた値なのでしょうか。クレアチニン(Cr)は、教科書的には「筋肉の収縮に必要なクレアチンの最終代謝産物」と言われています。しかし、なぜ筋肉の代謝産物で腎機能がわかるのでしょうか?

 

<Crの体内動態>

①肝臓で生成されたクレアチンが、筋細胞に取り込まれる。

②その中の一部が最終代謝産物であるCrとなる。

③血液を介して腎臓に送られる。

④糸球体で濾過され、尿となる。

⑤尿と一緒に対外へ排泄される。

 

Crは腎臓の糸球体で濾過された後には、尿細管で再吸収されない上、分泌量もごくわずかです。つまり、「血中にあるCr=腎臓(糸球体)で濾過されずに血液循環に戻ってしまったもの」となります。よって腎機能が悪い=糸球体濾過率が悪い=血清クレアチニンが上昇するという図式ができるわけです。Crがどのように産生されて身体の中を流れているのかがわかると、腎機能の評価をするにふさわしい検査項目であることがおわかりいただけるでしょう。

 

2、クレアチニン(Cr) 基準値

Crは筋肉の最終代謝産物で腎機能を評価する項目ですから、必然的に筋肉量の違う男性と女性では、基準値が異なります。一般的に男性の方が女性よりも筋肉量が多いので、女性よりも正常とされるCrの値も高めになっています。

<Crの基準値>

男性:0.61~1.04mg/dl

女性:0.47~0.79mg/dl

細かい数値は施設基準に多少の違いがありますが、おおよそ「Crは1.0以内が基準値」と覚えておくとよいでしょう。

 

3、クレアチニン(Cr) 異常と原因

筋肉の量が多くなれば、腎機能が正常であっても代謝産物であるCrは当然高くなります。ですから、筋肉量の違いによって下のように影響を受けることがわかっています。

性別による影響 →男性>女性
年齢による影響 →成人(青年)>小児・高齢者

 

そしてこれらを考慮すると、異常値とその原因は以下のようになります。注意しなくてはならないことは、Crが異常値を示す原因としては腎機能低下と筋肉量によるものだけではなく、血液疾患や肝疾患も関与することです。

〇Crが上昇している場合

・腎臓でのCr排泄低下  →腎機能低下

・筋肉量が多い      →スポーツ選手、末端肥大症

・赤血球内のCr遊出     →溶結性疾患(血栓性血小板減少性紫斑病etc.)

〇Crが低下している場合

・腎臓でのCr排出上昇   →尿量増加(尿崩症など)

・筋肉量の著しく少ない  →高齢者、長期臥床、神経筋疾患(筋ジストロフィーetc.)

・クレアチン生成低下   →肝障害

 

4、クレアチニン(Cr) 看護

近年、生活習慣病の増加に伴い、人工透析を未然に防ぐためにCKD(慢性腎臓病)を健康診断でいち早く見つけようとする動きが出ています。CKDには糖尿病を始めとした生活習慣病だけではなく、ネフローゼ症候群など病状がかなり進行して浮腫が顕著になるまで自覚症状のない病気を早くに発見して適切な治療を受けることで、透析に至ることなく現在の腎機能を維持させることが目標です。

看護師は、まずCrの異常が出た患者に対してなぜ起こっているかを考える必要があります。糖尿病なのか、それともネフローゼなのか、高度な脱水(熱中症)なのか・・・などなど、目の前の患者さんの病態生理を考えなくてはなりません。Crの値を受けてどのような治療をしていくか、問題が腎臓にあるのか腎臓以外にあるのか、より詳しい検査(Ccrや腎生検など)を行うのかによって、必要な検査の介助や入院の予定を組むことになります。状態によっては透析導入を視野に入れたシャント増設術を行うかもしれません。

 

<Crの低い患者に対して求められる看護とは?>

・腎機能低下の原因検索、必要な検査の施行(Ccr、蛋白尿検査、腎生検、)

・腎機能が悪化するとどうなるのか、患者に病態を説明する。

・腎機能を悪化させる要因にアプローチする(栄養指導、糖尿病治療)

・医師の指示により、水分制限の設定と説明を行う。

・医師の指示により安静が必要とされる場合(腎血流量を増加させるため)、指導を行う。

まずは正しい検査を行うことで、一過性の問題(脱水など)なのか、進行していくのか、その原因はどこにあるのかを調べることが重要です。看護師は突然腎臓に問題があると言われた患者に対して、十分な病態や今後の生活についての説明が求められます。

 

5、クレアチニンクリアランス(Ccr)

Crというと、一般的には腎臓の糸球体で濾過されず、血液中に戻ってきてしまった血清に含まれるCrを意味します。しかし、Crの弱点である筋肉量による誤差を失くしてもう少し腎機能を細かく調べることができる方法があります。それが、クレアチニンクリアランス(Ccr)です。

最近ではCrや身長・体重などからCcrを推算することができる便利なツールもありますが、Ccrは筋細胞に取り込まれたクレアチンの産生量による検査結果への影響を減らすため、採血と検尿を併用して行うのが一般的です。

 

<Ccrの検査手順>

①検査の開始前に排尿し、それまでに膀胱内に溜まっていた尿を出し切る。

(この分はカウントしない)

②畜尿を開始(24時間蓄尿)する。

③畜尿中(一般的には翌日早朝、空腹時)に採血を行う。

③24時間後、尿意がなくても排尿を促す。(この分はカウントする)

④畜尿量を測定し、記録する。

⑤畜尿瓶に溜まった検体を混ぜて内容を均一にし、一部を採取してスピッツへ入れる。

⑥尿量・採血・検尿(スピッツに採取したもの)をそろえて検査部門へ提出する。

⑦以下の計算式に基づいて、Ccrを求める。

計算式:尿中CRE(mg/dl)×蓄尿量(ml/min)/血清CRE(mg/dl) ]×[ 1.73/体表面積(m2)

 

ただし、24時間畜尿はときには入院を要したりと患者の負担が大きいため、簡便に2時間尿で検査を行ったり、近年はCKD(慢性腎臓病)の初期評価としてはCrの値と年齢からeGFRを計算して求める方法が主流になってはいますが、本当に腎機能の低い人の評価としては24時間畜尿と採血を合わせて行う従来のCcrが優れています。

 

まとめ

CKD(慢性腎臓病)という概念が生まれてから、CrやCrから計算するeGFR(推算糸球体濾過量)が注目されるようになりました。看護師はただCrの結果を確認するだけではなく、Crの仕組みを理解した上でその結果が何を意味するのか病態生理を考え、患者の腎機能を守るための治療・サポートという役割を担っています。

 

参考文献

Ccr(クレアチニンクリアランス) (中国労災病院中央検査部生化学検査)

eGFR・Ccrの計算(日本腎臓病薬物療法学会)

病気がみえる vol.8 腎・泌尿器(MEDIC MEDIA|2014年9月)


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